JP3921511B2 - 銅転炉の操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅製錬の転炉操業に関するものである。詳細には、転炉操業の造カン期に、溶体温度を上昇させることにより、カワとカラミの分離効率を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
銅精鉱を、例えば、自溶炉や反射炉を用いて製錬すると、通常、硫化銅と硫化鉄を含むカワと、酸化鉄と酸化珪素等を含むカラミとに分離されて産出される。カワは、次工程の転炉で処理される。カラミは普通水で冷却され、水砕カラミとしてセメント原料等に用いられたり、別な用途に用いられる。
【0003】
ところで、転炉でカワを処理するさいには、通常、次の2段階の操業が行われる。第1段階は、溶剤として硅石等を添加して羽口から酸素富化空気を吹き込み、硫化鉄を酸化させてカラミとして分離する段階で造カン期と呼ばれる。第2段階は、さらに酸化反応を行って硫化銅を粗銅とする段階で造銅期と呼ばれる。
【0004】
近年、生産性をあげるため、転炉で受け入れるカワの銅品位を高める傾向にあり、不純物である鉄品位は下げる傾向にある。また、転炉の造銅期には、熱負荷低減のために、例えば黄銅のような故銅類の処理量が増えてきている。そのため、故銅に含まれる不純物がスラグを形成する。このようなスラグは、別途処理される。上記スラグを転炉から抜き出す際に用いたレードルに付着したスラグは、銅分を回収するため造カン期に繰返し処理されるので、冷材類の添加量としても増えることになる。
【0005】
ところで、造カン期の反応や炉の温度維持に必要な熱エネルギーは、カワ中の鉄の酸化反応、すなわち、カワ中の硫化鉄が酸化するさいの反応熱によってまかなわれている。ところが、カワ中の鉄品位が低くなっていることと、冷材類の繰返し量が増えていることから、転炉操業の造カン期には熱不足となりやすい。
【0006】
熱不足のために転炉の温度が下がると、造カン期終了後に転炉からカラミを排出するさいにカワとカラミとの分離不良が生じる。そのため、カラミ中への銅ロス分が増加することと、カラミが造銅期へ持越されることにより、操業度が低下するといった生産性の悪化を招いていた。
【0007】
このような問題に対処するため、従来技術では以下のような方法がとられていた。
(1)転炉に吹込む空気の酸素濃度を高める、いわゆる酸素富化率を向上させることにより、吹込み空気や排ガスの顕熱による熱ロスを低減させる。
(2)転炉に吹込む空気量を増やし、カワの酸化反応による単位発熱量を増加させることにより発熱量を確保する。
(3)冷材を直接転炉に添加しないで、例えば転炉の前工程の自溶炉で処理することにより転炉温度の低下を防ぐ。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術の対処方法により造カン期の熱不足は解消できる。ところが、転炉の空気吹込み用羽口周辺の熱負荷が増加して、羽口周辺のレンガの溶損速度が速まって修理に要する手間と時間が増えたため、逆に転炉稼働率が低下する問題点が生じた。
【0009】
本発明者らは、上記の問題点に対処すべく様々な検討を行った。その結果、造カン期の熱不足、およびカワとカラミとの分離不良については、次のことが原因であろうと考えられた。
(1)カワ中の鉄品位が低下して発熱量不足になること。
(2)発熱量不足による溶体温度低下にともなってカラミの粘性が増加すること。
(3)転炉造カン期に、いわゆる空気吹込みオーバー(吹き過ぎ操業)となったため、カラミ成分中のマグネタイト(分子式:Fe3O4あるいはFeO・Fe2O3)生成量が増加すること。
【0010】
マグネタイトは、通常の操業では30%程度含有されている。ところが、過酸化の状況となると生成しやすくなり、生成量が増す傾向にある。カラミ中のマグネタイト量が増えてカラミの粘性が高くなり、カワとカラミの分離が不充分となる。
【0011】
本発明は、上記原因の検討結果によるものであり、次に示す方法を採用することにより問題点を解決することができる。すなわち、造カン期に不足する鉄分は金属鉄を含有する冷材を添加する。金属鉄を含有する冷材を用いることにより、造カン期のマグネタイト生成を抑制できる、また、添加した鉄の酸化反応熱により溶体温度を上げることができる。
【0012】
発明の第1の態様は、銅製錬工程の転炉操業時における造カン期の始めにおいて予め金属鉄を含む添加剤を添加することを特徴とする転炉の操業方法である。
【0013】
発明の第2の態様は、前記金属鉄を含む添加剤を、更に転炉の第2造カン期の初めに添加して操業を行うことを特徴とする転炉の操業方法である。
【0014】
発明の第3の態様は、前記金属鉄を含む添加剤は、鉄スクラップ、産業廃棄物処理炉から産出され金属鉄を60%以上含有する溶融状態または固体状態の金属であることを特徴とする転炉の操業方法である。
【0015】
発明の第4の態様は、前記金属鉄を含む添加剤は、鉄分を60%以上含有する材料であることを特徴とする転炉の操業方法である。
【0016】
発明の第5の態様は、前記金属鉄を含む添加剤の添加量は、カワに対して金属鉄換算量として20〜100kg/t(カワ)となるように添加することを特徴とする転炉の操業方法である。
【0017】
【実施の形態】
硫化鉱精鉱を乾式製錬して銅を得る方法は、おおまかに、自溶炉、反射炉等を用いて鉱石を溶解する溶錬工程と、溶錬工程で産出された銅を主体としたカワを転炉で処理する製銅工程とからなる。転炉でカワを処理するさいには、通常、次の2段階で操業が行われる。
【0018】
第1段階は、溶剤として硅石等を添加して羽口から酸素富化空気を吹き込み、硫化鉄を酸化させてカラミとして分離する段階で造カン期と呼ばれる。第2段階は、さらに酸化反応を行って硫化銅を粗銅とする段階で造銅期と呼ばれる。本発明は、上記転炉の製銅工程造カン期の改良技術に関するものである。
【0019】
本発明では、転炉造カン期に金属鉄を用いる。本発明に用いる金属鉄は、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(1)金属加工業者、金属スクラップ処理業者等から回収される、鉄スクラップを用いることができる。
(2)産業廃棄物を焼却処理するさいに発生する、鉄を60%以上含む溶融金属の冷却固化金属を用いることができる。
(3)その他、鉄を60%以上含む材料を用いることができる。
【0020】
金属鉄は、鉄を60%以上含んでおれば良い。鉄以外の成分は、安定した状態、例えば、酸化物であることが望ましいが、限定される必要はない。鉄の含有率を60%以上とした理由は、必要な発熱量を確保する為である。なお、マグネタイトを多く含むものは害となるので、例えば鉄酸化物が含まれるものは好ましくない。
【0021】
金属鉄の添加量としては、カワに対して、20〜100kg/t(カワ)とする。望ましくは、カワに対して30〜70kg/t(カワ)とする。添加量が少なすぎると、必要な発熱量が確保できず、必要な効果が得られない。添加量が多すぎると、鉄の酸化による発熱量が多くなって過熱状態となる。そのため、転炉の耐火物等の損傷を早めるので、経済的に不利である。
【0022】
金属鉄を含む添加剤は、転炉の造カン期の始めにあらかじめ添加しておくことが望ましい。あらかじめ添加しておくことで、転炉内のカラミに銅が懸垂することを防ぎ、また効率よく鉄が酸化され、同時に鉄不足とならないため、マグネタイトの生成を抑制でき、熱量を確保できる。あらかじめ添加するさいの転炉の温度は、例えば、炉が空の状態か、繰り返し冷材類(故銅等)と一緒に入れる。
【0023】
前記金属鉄を含む添加剤は、前記造カン期を第1造カン期とした場合に、前記第1の造カン期の終了後に転炉からカラミを排出し、カラミを排出した転炉内に、さらにカワを再添加して造カンする第2の造カン期の初めに添加することでさらに効果が期待できる。
【0024】
第2造カン期に金属鉄を添加すると、第1造カン期で生成したカラミ中のマグネタイトを還元して、カラミの粘度が増加することを抑えることができる。また、添加する金属鉄に応じて、例えば硅石も(鉄量の1/2程度)添加することが望ましい。
【0025】
金属鉄の添加量としては、カワに対して、20〜100kg/t(カワ)とする。望ましくは、カワに対して30〜70kg/t(カワ)とする。添加量が少なすぎると、必要な発熱量が確保できず、必要な効果が得られない。添加量が多すぎると、鉄の酸化による発熱量が多くなって過熱状態となる。そのため、転炉の耐火物等の損傷を早める。
【0026】
その他、転炉操業時の条件として、酸素吹きこみ量、酸素吹込み時間などは従来の操業条件そのままでよい。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
転炉の造カン期初期に鉄スクラップ3.7tを添加し、自溶炉から92tのカワを受け入れて吹錬を行った。すると、造カン期当初の転炉中の溶体温度が1176℃であったものが、造カン期終了時には1249℃となった。この時の転炉カラミ中の銅品位は8.7重量%であり、マグネタイト品位は25重量%となった。なお、転炉からカラミを抜き出すさいのカラミの流れは良好であった。なお、鉄スクラップの鉄含有量を調べたところ、60〜99重量%であった。
【0028】
(実施例2)
転炉の造カン期初期に鉄スクラップ5.2tを添加し、自溶炉から88tのカワを受け入れて吹錬を行った。すると、造カン期当初の転炉中の溶体温度が1168℃であったものが、造カン期終了時には1238℃となった。この時の転炉カラミ中の銅品位は6.8重量%であり、マグネタイト品位は18重量%となった。なお、転炉からカラミを抜き出すさいのカラミの流れは良好であった。
【0029】
(実施例3)
転炉の造カン期初期に産業廃棄物処理炉から産出され金属鉄を60%以上含有する溶融・固化金属(以下溶融炉メタル)3tを添加し、自溶炉から95tのカワを受け入れて吹錬を行った。すると、造カン期当初の溶体温度が1200℃であったものが、造カン期終了時には1278℃となった。この時の転炉カラミ中の銅品位は5.7重量%であり、マグネタイト品位は14重量%となった。なお、転炉からカラミを抜き出すさいのカラミの流れ良好であった。
【0030】
(実施例4)
転炉の造カン期初期に溶融炉メタル5.6tを添加し、自溶炉から86tのカワを受け入れて吹錬を行った。すると、造カン期当初の溶体温度が1185℃であttものが、造カン期終了時には1280℃となった。この時の転炉カラミ中の銅品位は3.8%であり、マグネタイト品位は10重量%となった。なお、転炉からカラミを抜き出すさいのカラミ流れは良好であった。
【0031】
(比較例)
転炉の造カン期に鉄を含むものを添加せず、通常のまま自溶炉からカワを90t受け入れて吹錬を行った。すると、造カン期当初の転炉中の溶体温度が1228℃であったものが、造カン期終了時には1244℃となった。この時の転炉カラミ中の銅品位は10.5%であった。転炉カラミ中のマグネタイト品位は30重量%であった。また、転炉からカラミを抜き出すさいのカラミの流れは非常に悪かった。
【0032】
【発明の効果】
銅精錬の転炉造カン期に不足する鉄分は金属鉄を含有する添加剤を添加する。金属鉄を含有する添加剤を添加することにより、鉄の酸化反応熱により溶体温度を上げることができる。そのため、転炉内のカラミに銅が懸垂することを防ぎ、また効率よく鉄が酸化され、同時に鉄不足とならないため、マグネタイトの生成を抑制でき、熱量を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1として示した表1であり、本発明の実施例および比較例結果である。
Claims (5)
- 銅製錬工程の転炉操業時における造カン期の始めに予め金属鉄を含む添加剤を添加することを特徴とする転炉の操業方法。
- 前記金属鉄を含む添加材を、更に転炉の第2造カン期の初めに添加して操業を行うことを特徴とする請求項1記載の転炉の操業方法。
- 前記金属鉄を含む添加剤は、鉄スクラップ、産業廃棄物処理炉から産出され金属鉄を60%以上含有する溶融状態または固体状態の金属であることを特徴とする請求項1又は2記載の転炉の操業方法。
- 前記金属鉄は鉄分を60%以上含有する材料であることを特徴とする請求項1又は2記載の転炉の操業方法。
- 前記金属鉄を含む添加剤の添加量は、カワに対して金属鉄換算量として20〜100kg/t(カワ)となるように添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の転炉の操業方法。
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