JP3724196B2 - 銅製錬の操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅精鉱を熔錬炉、転炉、及び精製炉を用いて製錬して、銅電解精製に適した精製粗銅とする銅製錬の操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、硫化物を主体とする銅精鉱を原料とし、銅電解精製に適した精製粗銅とするまでの銅製錬では、まず銅精鉱が熔錬炉で酸化・溶解されて、銅、鉄、硫黄を主体とするカワと、鉄や珪酸を主体とするカラミとに分けられる。熔錬炉で生成したカワは、熔錬炉から抜き取られて転炉に装入される。
【0003】
転炉では、反応用空気又は反応用酸素富化空気が羽口から吹き込まれ、更にフラックスが装入され、カワ中のFeSからFe2SiO4を主体とするカラミと、SO2ガスが生成される。この工程を造カン期といい、生成したカラミは炉外へ排出される。引き続いて、再び反応用空気又は反応用酸素富化空気が羽口から吹き込まれ、銅品位が98%以上に濃縮した粗銅とSO2ガスが生成されるが、この工程を造銅期という。
【0004】
この転炉で産出された粗銅は、通常は硫黄を0.02〜0.5%含有しており、この状態では銅電解精製に適さない。即ち、電解精製用アノードとして鋳造するとき、SO2ガスによるアノード表面の膨れなどの形状悪化が起こったり、次の電解精製工程でアノードの不働態化やスライム量の増加といった不都合が発生するからである。このため、転炉で産出された粗銅は精製炉に装入され、更に硫黄を0.005%以下まで酸化除去することが行われている。
【0005】
この精製炉では、まず酸化工程により、空気や工業用酸素が粗銅中に吹き込まれ、硫黄が酸化されて、SO2ガスとして除去される。しかし、酸化工程での硫黄の減少に伴って銅の酸化が進行するうえ、粗銅は元々0.5〜1.0%程度の酸素を含有している。そこで、この酸化工程に続いて、炭化水素ガス、アンモニアガス、重油等の還元剤を粗銅中に吹き込み、酸素を0.1〜0.15%程度まで脱酸する還元工程を行い、硫黄品位が0.005%以下の電解精製に適した精製粗銅を製造している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
通常の銅製錬における精製炉の操業では、還元工程と共に、硫黄除去のための酸化工程が必要とされている。しかし、還元工程が約80〜180分程度かかるうえ、酸化工程も通常は30〜180分程度かかるため、この酸化工程によって精製炉の操業スケジュールが圧迫されることが多かった。また、酸化工程を行うことによって、その排ガスの持ち去り熱のため粗銅温度が下がり、後のアノード鋳造に支障を来しやすいとう大きな欠点があった。
【0007】
そのため、精製炉での酸化工程を省略することが検討され、例えば粗銅中に窒素ガスを吹き込むことにより、酸化工程を省略する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、酸化工程を省略できても、その代わりに窒素ガスを吹き込む工程が増えるだけであるうえ、窒素ガスの持ち去り熱によって粗銅温度も下がるため、従来の欠点は何ら解決されていない。
【0008】
尚、転炉の操業方法には、特にAs、Sb、Pb、Zn等の不純物品位が高い原料の場合、これらの不純物の酸化除去を目的として、転炉で通常の粗銅を得る場合より余分に吹錬(オーバーブローと称す)する方法があり、この場合には結果的に粗銅中の硫黄品位が0.01%程度まで低下する。従って、このような場合には結果として精製炉での酸化工程を省くことができるが、特殊な原料事情の場合にのみ行われる特異な方法に過ぎない。
【0009】
しかも、このようなオーバーブロー操業の場合、必然的に粗銅中の酸素品位が1〜2%まで上がるため、後の精製炉で酸素を除去するための還元工程に要する時間が大幅に延長され、通常の酸化工程を行う精製炉の操業と比べても効率が極端に低下するという欠点があった。また、オーバーブローにより銅の一部が酸化銅にまで酸化され、Fe2O3やSiO2と融点の低いカラミを生成するため、このカラミが転炉からの粗銅排出時に障害となったり、次にカワを装入するときカワと反応して、多量のSO2ガスやPd等のヒュームを発生させ、環境面を著しく悪化させるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、精製炉での酸化工程を省略することができ、しかも余分な工程が増えたり、粗銅温度の低下や還元工程に要する時間の延長を来すことがなく、電解精製に適した精製粗銅を得ることができる銅製錬の操業方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明が提供する銅製錬の操業方法は、硫化物を主体とする銅精鉱を原料とし、熔錬炉、転炉、及び精製炉で製錬して、銅電解精製に適した精製粗銅とする銅製錬において、転炉から産出される粗銅中の硫黄品位を0.015〜0.050%の範囲に制御し、この粗銅を精製炉に装入した後、酸化工程を省略して、還元剤の吹き込みにより粗銅中の酸素を除去する還元工程のみを行い、硫黄品位が0.005%以下の精製粗銅を得ることを特徴とするものである。
【0012】
実際の操業においては、転炉での粗銅中の硫黄品位が0.015〜0.050%の範囲まで低下したところで転炉の吹錬を終了し、この粗銅を転炉から精製炉に移した後、直ちに炭化水素ガスやアンモニアガス等の還元剤を粗銅中に吹き込んで、酸素品位が0.1〜0.15%程度になるまで溶存酸素の還元除去を行う。精製炉で得られる精製粗銅は硫黄品位が0.005%以下となり、その後アノードに鋳造され、電解精製工程に供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
上述したように、従来から、転炉から産出される粗銅中の硫黄品位が、目標とする電解用アノード中の硫黄品位の0.005%より高いときは、この硫黄品位となるまで硫黄を除去するために、精製炉において空気や工業用酸素を粗銅中に吹き込む酸化工程が必要であると考えられ、現実に通常の銅製錬操業においても精製炉での酸化工程が実施されていた。
【0014】
かかる従来技術に対して、本発明では、精製炉での酸化工程をなくし、還元剤を吹き込む還元工程のみによって、粗銅中の酸素が還元除去されると同時に、硫黄が酸化されて電解精製に適した硫黄品位にまで除去される。即ち、転炉からの粗銅中の硫黄品位を0.050%以下に制御すれば、この粗銅が精製炉での還元ガスの吹き込みにより撹拌され、粗銅中に熔存している酸素や大気中から巻き込まれる酸素によって硫黄の酸化が進行し、還元工程だけで硫黄品位0.005%以下まで硫黄を除去することができるのである。
【0015】
しかも、本発明によれば、精製炉での酸化工程を省略する代わりに特別な工程を付加する必要はなく、従来から行われている還元工程のみによって代替えすることができる。また、この精製炉での還元工程に要する時間は、一般的には従来の酸化工程を行った後の還元工程に要する時間を越えることはなく、粗銅中の硫黄品位が比較的低い場合でも従来の酸化工程と還元工程の合計時間よりも短くなる。精製炉での粗銅温度は、酸化工程と還元工程を行う場合よりも高くなり、後の電解精製用アノードの鋳造にとって好都合である。
【0016】
しかし、転炉から産出される粗銅中の硫黄品位が0.050%を越えると、粗銅中の硫黄品位が高すぎるため、もはや還元工程だけでは硫黄を0.005%以下まで除去することはできず、通常のごとく酸化工程が必要となる。逆に、粗銅中の硫黄品位が0.015%未満になると、酸化工程は省略できるが、転炉でのオーバーブローにより粗銅中の酸素品位が高くなり過ぎるため、精製炉での還元時間が大幅に長くなり、かえって精製炉の効率が著しく低下する。
【0017】
【実施例】
転炉での操業条件を変えることにより、転炉から産出する粗銅の硫黄品位を下記表1に示す各ケースのように変化させた。これら各ケースの粗銅を転炉から精製炉に移し、重油燃焼保温バーナーで保温しながら精製炉が満杯になるまで、各精製炉に500トン装入した。
【0018】
その後、ケース3では2本の羽口から1200Nm3/Hの空気を吹き込む酸化工程に続いて還元工程を行ったが、他のケースでは酸化工程を経ることなく、直ちに800〜1000kg/時間の還元剤(プロパンガス)を同じ2本の羽口から吹き込んで還元工程を実施した。各ケースごとに、精製炉で得られた精製粗銅(酸素品位0.1〜0.15%)の硫黄品位と温度を表1に併せて示した。
【0019】
【表1】
【0020】
この結果から分かるように、転炉で得られる粗銅中の硫黄品位を0.05%以下に制御すれば、精製炉で酸化工程を実施しなくても、還元工程だけで精製粗銅中の硫黄品位を0.005%以下にすることができ、しかも精製粗銅中の硫黄品位は粗銅中の硫黄品位に大きく依存することもなかった。しかし、オーバーブローにより転炉での粗銅中の硫黄品位を0.015%未満にまで低くすると、精製炉で所望の酸素品位の精製粗銅とするために必要な還元時間が著しく長くなり、極めて不経済である。
【0021】
また、ケース3では、還元工程に先だって0.5時間の酸化を行ったが、得られる精製粗銅中の硫黄品位は酸化工程なしのケース2と変わらず、逆にケース3では精製粗銅の温度が低下したり、還元剤であるプロパンガスの使用量が増加する結果となっている。ケース5では転炉で得られる粗銅中の硫黄品位が0.05%を越えているため、精製炉での還元工程だけでは硫黄品位を0.005%以下に下げることができず、後の鋳造工程においてアノードの表面が膨れ、鋳造工程を継続することができなかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、精製炉での酸化工程を省略して、還元工程だけで硫黄品位が0.005%以下の後の電解精製に適した精製粗銅を製造することができる。しかも、精製炉の操業において、余分な工程が増えたり、粗銅温度の低下や還元工程に要する時間の延長を来すことがないので、極めて効率的に銅製錬を行うことができる。
Claims (1)
- 硫化物を主体とする銅精鉱を原料とし、熔錬炉、転炉、及び精製炉で製錬して、銅電解精製に適した精製粗銅とする銅製錬において、転炉から産出される粗銅中の硫黄品位を0.015〜0.050%の範囲に制御し、この粗銅を精製炉に装入した後、酸化工程を省略して、還元剤の吹き込みにより粗銅中の酸素を除去する還元工程のみを行い、硫黄品位が0.005%以下の精製粗銅を得ることを特徴とする銅製錬の操業方法。
Priority Applications (1)
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JP16451698A JP3724196B2 (ja) | 1998-06-12 | 1998-06-12 | 銅製錬の操業方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP16451698A JP3724196B2 (ja) | 1998-06-12 | 1998-06-12 | 銅製錬の操業方法 |
Publications (2)
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JPH11350050A JPH11350050A (ja) | 1999-12-21 |
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ID=15794659
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP16451698A Expired - Lifetime JP3724196B2 (ja) | 1998-06-12 | 1998-06-12 | 銅製錬の操業方法 |
Country Status (1)
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- 1998-06-12 JP JP16451698A patent/JP3724196B2/ja not_active Expired - Lifetime
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