JP3747155B2 - 錬銅炉の操業方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、銅製錬において溶錬炉から供給されるカワを吹錬し、粗銅を生成するための錬銅炉の操業方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、銅を製錬する際、その方法の一つとして、溶錬炉において原料である銅精鉱を溶錬炉においてCu2S、FeSを主体とするカワとし、その後、錬銅炉においてカワから粗銅を得る方法が知られている。錬銅炉としてPS転炉が一般的に用いられている。
【0003】
PS転炉では、まず銅品位50%〜66%、温度1150〜1180℃のカワにSiO2を主体とする溶剤を加え、羽口から酸素富化空気を吹き込み、造カン期を行う。造カン期終了後、生成したスラグは炉外に排出されるが、この時、スラグ温度は流動性が十分に得られる1300℃〜1330℃であることが必要である。1150〜1180℃から1300〜1330℃への温度上昇の熱源として、主に、カワ中の溶融状態のFeSの酸化反応熱が利用される。
【0004】
生成したスラグを炉外へ排出した後、Cu2Sを主体とする白カワに羽口から空気あるいは酸素富化空気を吹き込み、造銅期を行い、粗銅を生成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
錬銅炉に供給されるカワの銅品位は高い方が、錬銅炉の生産能力は向上する。しかし、カワの銅品位を高めるとカワ中のFeSが減少し、造カン期において、FeSの酸化反応熱だけではスラグの流動性が十分に得られる1300〜1330℃まで上昇できず、不足する熱量をCu2Sの酸化反応熱で補うこととなる。
【0006】
本来、Cu2Sの酸化反応は造銅期に起こすべき反応であり、造カン期にCu2Sの酸化反応が多量に起こると、スラグ中にメタルCuが増加し、スラグ中のCu含有率は飛躍的に増大する。
本発明は、スラグ中のCu含有率を上げることなく、錬銅炉に供給されるカワの銅品位を高め、錬銅炉の生産能力を向上させることを可能とする、錬銅炉の操業方法を提供することを目的とするものである。
【0007】:
【課題を解決するための手段】
そこで、以下の発明を提案する。
(1)錬銅炉に供給されるカワ品位を通常操業の55〜65%から67%〜69%に上げ、錬銅炉の造カン期に一般廃棄物或いは、産業廃棄物又は、産業廃棄物から産出したもの等を溶融還元した銅を含む銑鉄粒を添加することにより、スラグ中のCu含有率を上昇させることなく、錬銅炉の生産能力を3.9%以上向上させる錬銅炉の操業方法。
【0008】
(2)固体の銑鉄粒の粒径が3〜50mmφである前記(1)の錬銅炉の操業方法。
(3)固体の銑鉄粒のCu品位が20%以下である前記(1)の錬銅炉の操業方法。
【0009】
(4)上記(1)記載の固体の銑鉄粒が一般廃棄物或いは、産業廃棄物又は、産業廃棄物から産出したもの等を溶融還元した銅を含む銑鉄である上記(1)〜(3)記載の錬銅炉の操業方法。
【0010】
以下、本発明の構成を詳しく説明する。
転炉反応は、炉内に供給される空気あるいは酸素富化空気中の酸素量により律速される。吹き込み酸素1Nm3あたりの反応熱量からカラミ・ガス等の反応生成物質の顕熱量を差し引いた値を有効熱量とすると、送風酸素濃度28%の場合、溶融状態のFeSの吹き込み酸素1Nm3あたりの有効熱量は、1、750Kcal/Nm3−O2、また、溶融状態のCu2Sの吹き込み酸素1Nm3あたりの有効熱量は650Kcal/Nm3−O2である。
【0011】
一方、固体の銑鉄粒、たとえば、一般ゴミの「直接溶融・資源化プラント」から発生した銑鉄粒で、組成がFe80%、C 4%、Si 4%、Cu 4%の銑鉄粒の、送風酸素濃度28%での吹き込み酸素1Nm3あたりの有効熱量は3,020Kcal/Nm3−O2と、溶融状態のFeSの約1.7倍、溶融状態のCu2Sの約4.6倍となっている。
【0012】
PS転炉では吹込み酸素量が律速であり、吹き込み酸素1Nm3あたりの有効熱量が大きい固体銑鉄粒の利用により、錬銅炉に供給されるカワ中のFeSの減少、すなわち、カワ中の銅品位の上昇が可能となる。
【0013】
PS転炉にカワ装入口から固体銑鉄粒を投入する場合、装入口付近のガス速度は8〜10Nm/secであり、銑鉄粒を飛散させないためには経験的に粒径3mmφ以上が必要である。また、銑鉄粒を溶湯中に漂わせ、炉底への滞積を防止するためには、経験的に50mmφ以下が必要である。
【0014】
Cu等有価物が含まれるものであれば、有価物の回収に繋がり、更に好適である。しかし、Cu品位が20%以上、銑鉄分が80%以下となると、発熱量が減少し、溶融状態のFeSに対しての優位性がなくなる。
【0015】
【作用】
本発明により、錬銅炉に供給されるカワの銅品位を上げ、固体の銑鉄粒を添加することにより、スラグ性状を悪化させることなく、PS転炉の生産能力を高めることができる。
【0016】
【実施例】
実施例(1)
PS転炉操業では造カン期は第一、第二に分けられており、例えば第一造カン期にカワ品位65%のカワを160tを処理している。カワをCu2SとFeSの混合物と単純化すると、このカワの内訳は
カワ量160t Cu2S 130.2t FeS 29.8t
(Cu 65% Cu量 104.0t)
となる。
【0017】
このカワを送風空気量580Nm3/minと酸素濃度90%の酸素 70Nm3/minを混合した酸素濃度28.3%の送風650Nm3/minで吹錬した場合、カラミ温度の上昇は表1の通りで、送風時間40分でカラミが良好な流動性となる1310℃に達した。(カラミ温度は、転炉羽口より消耗型熱電対を差し込み、測定した。)スラグ中Cu品位は7.2%であった。
【0018】
【表1】
Figure 0003747155
【0019】
カワ品位67%のカワ160tの吹錬時に、銑鉄粒3.2tを投入した実施例を示す。投入した銑鉄粒は、一般ゴミの「直接溶融・資源化プラント」から発生した銑鉄粒で、組成がFe82%、C3.8%、Si4.6%、Cu4.2%であった。このカワの内訳は、
カワ量160t Cu2S 134.2t FeS 25.8t
(Cu67% Cu量 107.2t)
となり、造カン期の主要な発熱源であるFeSは、カワ品位65%での29.8tから25.8tへ4.0t減少している。FeS減少分の熱量を、酸素1Nm3あたりの有効熱量が大きい固体銑鉄粒で補充すると、銑鉄粒3.2tが必要である。
【0020】
送風開始18〜20分に銑鉄粒3.2tを投入し、カワ品位65%と同じ、送風空気量580Nm3/minと酸素濃度90%の酸素 70Nm3/minを混合した酸素濃度28.3%の送風650Nm3/minで吹錬した場合、カラミ温度の上昇は表2の通りである。カラミが良好な流動性となる1310℃に達する送風時間は、カワ品位65%の場合の40分に対して、本実施例では36分に短縮した。スラグ中Cu品位は6.9%であった。
【0021】
【表2】
Figure 0003747155
【0022】
カワ品位の65%から67%へのアップと造カン時間短縮の効果により、PS転炉能力は3.9%のアップとなる。
【0023】
実施例(2)
カワ品位68%のカワ160tの吹錬時に、銑鉄粒4.8tを投入した実施例を示す。
このカワの内訳は、
カワ量160t Cu2S 136.2t FeS 23.8t
(Cu68% Cu量 108.8t)
となり、造カン期の主要な発熱源であるFeSは、カワ品位65%での29.8tから23.8tへ6.0t減少している。FeS減少分の熱量を、酸素1Nm3あたりの有効熱量が大きい固体銑鉄粒で補充すると、銑鉄粒4.8tが必要である。
【0024】
送風開始18〜20分に銑鉄粒4.8tを投入し、カワ品位65%と同じ、送風空気量580Nm3/minと酸素濃度90%の酸素 70Nm3/minを混合した酸素濃度28.3%の送風650Nm3/minで吹錬した場合、カラミ温度の上昇は表3の通りである。カラミが良好な流動性となる1310℃に達する送風時間は、カワ品位65%の場合の40分に対して、本実施例では34分に短縮した。スラグ中Cu品位は7.1%であった。
【0025】
【表3】
Figure 0003747155
【0026】
カワ品位の65%から68%へのアップと造カン時間短縮の効果により、PS転炉能力は6.0%のアップとなる。
【0027】
実施例(3)
カワ品位69%のカワ160tの吹錬時に、銑鉄粒6.4tを投入した実施例を示す。
このカワの内訳は、
カワ量160t Cu2S 138.2t FeS 21.8t
(Cu69% Cu量 110.4t)
となり、造カン期の主要な発熱源であるFeSは、カワ品位65%での29.8tから21.8tへ8.0t減少している。FeS減少分の熱量を、酸素1Nm3あたりの有効熱量が大きい固体銑鉄粒で補充すると、銑鉄粒6.4tが必要である。
【0028】
送風開始17〜20分に銑鉄粒6.4tを投入し、カワ品位65%と同じ、送風空気量580Nm3/minと酸素濃度90%の酸素 70Nm3/minを混合した酸素濃度28.3%の送風650Nm3/minで吹錬した場合、カラミ温度の上昇は表4の通りである。カラミが良好な流動性となる1310℃に達する送風時間は、カワ品位65%の場合の40分に対して、本実施例では32分に短縮した。スラグ中Cu品位は7.2%であった。
【0029】
【表4】
Figure 0003747155
【0030】
カワ品位の65%から69%へのアップと造カン時間短縮の効果により、PS転炉能力は7.8%のアップとなる。
【0031】
【発明の効果】
以上の結果から、PS転炉に供給されるカワ品位を65%から68%にアップした場合、減少する溶融状態のFeSの有効熱量を、酸素Nm3当たりの有効熱量が大きい固体の銑鉄粒で補うことにより、スラグ中Cu含有率を悪化させることなく、PS転炉の生産能力を6.0%アップすることが可能となる。

Claims (3)

  1. 錬銅炉に供給されるカワ品位を通常操業の55〜65%から67%〜69%に上げ、錬銅炉の造カン期に一般廃棄物或いは、産業廃棄物又は、産業廃棄物から産出したもの等を溶融還元した銅を含む銑鉄粒を添加することにより、スラグ中のCu含有率を上昇させることなく、錬銅炉の生産能力を3.9%以上向上させることを特徴とする錬銅炉の操業方法。
  2. 固体の銑鉄粒の粒径が3〜50mmφである請求項1記載の錬銅炉の操業方法。
  3. 固体の銑鉄粒のCu品位が20%以下である請求項1記載の錬銅炉の操業方法。
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