JP3921455B2 - マグネトロンスパッタリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はスパッタリング装置に関し、特に、ターゲットボートの背面に磁石を設けて往復運動を行い、形成される薄い膜の堆積と速度を均一化させるマグネトロンスパッタリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリングは、半導体の製造工程において、金属を沈降させて薄い膜を形成するために応用される。その原理は、プラズマイオンをスパッタリング装置の反応室で流動させ、イオンを加速させてスパッタリングターゲットに衝突させて、ターゲット表面の原子を弾き出して堆積させ、基板の表面に金属の薄い膜を形成する。
【0003】
図1に従来のマグネトロンスパッタリング装置(10)の説明図を開示する。図面によれば、マグネトロンスパッタリング装置(10)は、反応室(11)と、スパッタリングターゲット(18)と、ベース(13)と、及び磁石(14)とを含んでなる。スパッタリングターゲット(18)はターゲットボード(12)とターゲット材(16)とによってなる。反応室(11)は真空ポンプ(図示しない)を利用して内部の気体を抽出して真空状態にする。また、電荷を帯びるプラズマイオンを反応室(11)で流動させる(好ましくは正電気を帯びるアルゴンイオンを用いる)。また、スパッタリングターゲット(18)とベース(13)は、それぞれ陽極と陰極とにそれぞれ電気的に接続する。
【0004】
マグネトロンスパッタリング装置(10)は、スパッタリングターゲット(18)とベース(13)との間に形成される電位によって正電気を帯びるアルゴンイオンをスパッタリングターゲット(18)の表面に設けられたターゲット材(16)に衝突させ、弾き出されたターゲット材(16)の原子をベース(13)上に沈降させ堆積させる。ベース(13)は、表面にスパッタリングを行う基板(15)を載置する。このため、弾き出されたターゲット材(16)の原子が基板(15)上に堆積し、薄い膜が順調に形成される。
【0005】
磁石(14)は、長条形状に形成され、スパッタリングターゲット(18)の背面に設ける。その構造を図2に開示する。また、磁石(14)はマグネトロン方式を利用して基板(15)の表面に形成される薄い膜の堆積と速度を均一化させるために、スパッタリングターゲット(18)の背面において往復運動を行い、走査を行う。
【0006】
図3、4に開示するように、スパッタリングを行った基板の表面に堆積した薄い膜に分析を加えるとともに、スパッタリングターゲット表面のターゲット材の腐食、消耗状況を分析することによって従来の技術におけるスパッタリング装置の欠点が分かる。すなわち、従来の技術においては次に掲げる欠点を有する。
1.パッタリングによって形成される膜は、厚さが均一性に欠ける。形成される薄い膜の抵抗値Rsを測定した結果、基板上の磁石両端に対応する両側面領域の抵抗値が、中央の領域に比して明らかに低かった。抵抗値と膜厚さの関係を表わす次の式、式:抵抗値(Rs)=抵抗係数(e)/膜厚さ
から分かるように、基板の両側面領域に堆積した膜の厚さは、中央領域に比して厚い。これは、基板表面の抵抗値Rs、もしくは厚さが均一でないことを表わし、スパッタリングによって形成される膜の品質に影響を与えるものである。
2.スパッタリングターゲットの利用率が低すぎる。スパッタリングターゲットはターゲットボードとターゲット材とによって構成される。未使用のスパッタリングターゲットの表面には厚さが均一なターゲット材が設けられる。係る厚さが均一なターゲット材は、プラズマイオンの衝突によって徐々に腐食(Erosion)し、消耗する。仮に、スパッタリングターゲット表面のターゲット材がイオン衝突の仮定において均一に腐食、消耗すれば、スパッタリングターゲットの利用率は好ましい状態が得られる。但し、従来の技術におけるスパッタリングターゲットは、イオンが衝突した結果を分析したところ、磁石両端に対応する両側面領域におけるターゲット材の腐食、消耗が特に速い。ターゲット材は一旦局部が腐食、消耗し、ターゲットボードに接近するとスパッタリングターゲット全体が使用できなくなり、廃棄せざるを得なくなる。
【0007】
上述する欠点が発生する主な原因は、長条形状の磁石両端の磁場が強すぎるため、スパッタリングターゲット両側面領域におけるターゲット材にイオン衝突による高い腐食率が発生するためであり、このため、基板の両側面領域に堆積する膜の厚さが厚くなり、基板表面の抵抗値の分布が不均一になる。
【0008】
この発明は、スパッタリングターゲットの利用率を高め、基板表面に堆積して形成される薄膜の厚さと、抵抗値の分布を均一にするマグネトロンスパッタリング装置を提供することを課題とする。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、スパッタリングターゲットの消耗を均一化して利用率を高めることができるとともに、スパッタリングによって形成される薄い膜の厚さと抵抗値が均一化できるマグネトロンスパッタリング装置を提供することを課題とする。
【0010】
そこで、本発明者は従来の技術に見られる欠点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、反応室にスパッタリングターゲットと、ベースと、該スパッタリングターゲットの背 面に設けられる磁石とを具えてなるマグネトロンスパッタリング装置において、該磁石の長手方向の両端縁部に磁場の強度を減少させる消磁手段とを具えてなる構造によっ て課題を解決できる点に着眼し、かかる知見に基づいて本発明を完成させた。
【0011】
以下、この発明について具体的に説明する。
請求項1に記載するマグネトロンスパッタリング装置は、表面にターゲット材を設けてなるスパッタリングターゲットと、
該スパッタリングターゲットに対応して設けられ、該ターゲット材から弾き出る原子を沈降させ、堆積させるベースと、
長条形状を呈し、該スパッタリングターゲットの背面に設けられ、往復運動を行って、該ターゲット材のベース表面に対する沈降を制御する磁石と、
該磁石の両端縁部に設けられ、該磁石の長手方向の両端縁部の磁場の強度を減少させる消磁手段とを具えてなり、
これらを反応室内に設けてなる。
【0012】
請求項2に記載するマグネトロンスパッタリング装置は、請求項1における反応室は、真空ポンプを利用して内部の真空状態を保持する。
【0013】
請求項3に記載するマグネトロンスパッタリング装置は、請求項1におけるスパッタリング装置は、スパッタリングを行う場合、正電荷を帯びるプラズマイオンを流動させる。
【0014】
請求項4に記載するマグネトロンスパッタリング装置は、請求項3におけるプラズマイオンが、アルゴンイオンであって、かつ濃度が95%を超える。
【0015】
請求項5に記載するマグネトロンスパッタリング装置は、請求項1におけるベース表面に、スパッタリングを行う基板を載置し、該ターゲット材から弾き出る原子を、該基板の表面に沈降させ、薄い膜を形成する。
【0016】
請求項6に記載するマグネトロンスパッタリング装置は、請求項5における基板が、ウエハか、もしくはガラス基板である。
【0017】
請求項7に記載するマグネトロンスパッタリング装置は、請求項1における磁石の両端縁部に設けられる消磁手段が、強磁性材料によってなり、該強磁性材料が鉄か、コバルトか、もしくはニッケルである。
【0018】
請求項8に記載するマグネトロンスパッタリング装置は、請求項7における磁石の両端縁部に設けられる消磁手段の表面にクロムメッキを施して防錆処理を行う。
【0019】
請求項9に記載するマグネトロンスパッタリング装置は、請求項1における消磁手段は、該磁石の両端縁部にそれぞれ設けられ、段差を形成するか、もしくは勾配を形成して厚さが磁石中央に向かって薄くなるように形成する。
【0020】
【発明の実施の形態】
この発明は、ターゲットボートの背面に磁石を設けて往復運動を行い、形成される薄い膜の堆積と速度を均一化させるマグネトロンスパッタリング装置を提供するものであって、反応室にスパッタリングターゲットと、ベースと、該スパッタリングターゲットの背面に設けられる磁石とを内設し、かつ該磁石の両端縁部に磁場の強度を減少させる消磁手段を設けて構成する。
かかるスパッタリング装置の構造と特徴を詳述するために、具体的な実施例を挙げ、図示を参照にして以下に説明する。
【0021】
図5にこの発明によるマグネトロンスパッタリング装置(30)を開示する。図面によれば、反応室(31)と、スパッタリングターゲット(38)と、ベース(33)と、磁石(34)とによって構成する。スパッタリングターゲット(38)は、ターゲットボード(32)と、ターゲット材(36)とによってなる。反応室(31)は、真空ポンプ(図示しない)を利用して内部の気体を抽出し、真空状態にする。スパッタリングターゲット(38)と、ベース(33)と、磁石(34)は、それぞれ反応室(31)内に設ける。磁石(34)は、略矩形を呈する。磁石のS極、N極については、該磁石(34)の長手方向の両端縁部のいずれか一方がS極となり、他方がN極となるように、適宜に磁石を設ける。
【0022】
上述のマグネトロンスパッタリング装置において、スパッタリングの工程を実行する場合、電荷を帯びたプラズマイオン(例えば、正電気を帯びたアルゴンイオンであって、濃度が95%を超えるものが好ましい)を反応室(31)内で流動させ、同時にスパッタリングターゲット(38)とベース(33)とをそれぞれ陰極と陽極に電気的に接続し、スパッタリングターゲット(38)とベース(33)との間に電位を形成して、プラズマイオン(例えば、正電気を帯びたアルゴンイオン)をスパッタリングターゲット(38)表面のターゲット材に衝突させる。
【0023】
スパッタリングターゲット(38)の表面に設けたターゲット材(36)は、イオンの衝突によって原子が弾き出されてベース(33)上に沈降し、堆積する。よって、スパッタリングを行う時は、スパッタリングのワークである基板(35)をベース(33)上に載置してターゲット材(36)から弾き出された原子が基板(35)上に沈降し、表面に薄い膜が順調に堆積されるようにする。基板(35)は、例えば、ウエハか、もしくはガラス基板である。
【0024】
磁石(34)は、スパッタリングターゲット(38)の背面において水平方向に往復運動を行うように設ける。すなわち、マグネトロン方式で基板(35)の表面に形成される薄膜の厚さと、沈降の速度とを均一にするために左右対称の往復運動によって走査を行う。
【0025】
但し、長条形状の磁石(34)は面積単位の磁力線密度が両端縁部に密集して分布し、中間に向かって密集の度合いが減少する。これが磁石(34)の磁場の強度分布が不均一になる主要な原因であって、同時に従来の技術において、スパッタリングターゲットの利用率が低く、かつ基板に形成される薄膜の厚さと抵抗値の分布が不均一になる原因である。
【0026】
上述の欠点を改善するために、この発明においては、図6,7に開示するように、磁石(34)の両端縁部にそれぞれ消磁手段(37)を設ける。すなわち、消磁手段(37)を設けることによって、磁石(34)の両端における磁場の強度を減少させる。磁石(34)の両端における磁場の強度を減少させると、磁石(34)全体の磁場の強度が均一に分布し、ターゲット材(36)がスパッタリングの過程において発生する部分的な過度の腐食、消耗を防ぐことができる。このため、従来の技術に見られるように、スパッタリングターゲット(38)を早めに廃棄することなく、かつ基板表面に堆積し、形成される薄膜の厚さと、抵抗値が均一に分布し、スパッタリングの品質を高めることができる。この発明における消磁手段(37)は、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどのいかなる強磁性材料であってもよく、その表面にクロム(Cr)メッキを施して防錆処理とする。また、その構造は図6、7に開示するように、磁石(34)の両端縁部に冠着し、厚さが磁石(34)の中央部に向かって薄くなるように形成する。よって、図6に開示するように、段差を形成してもよく、また図7に開示するように、勾配を形成してもよい。
【0027】
この発明によるマグネトロンスパッタリング装置(30)を利用して基板(35)にスパッタリングを行った場合、その表面に沈降し、堆積する薄膜に分析を加え、得られた抵抗値の分布を図8に開示する。図3と比較して明らかなように、平均抵抗値が略同様の状況下にあって、この発明においては、基板(35)の抵抗値の変異係数が比較的少ない。これは、この発明における基板(35)全体の抵抗値、もしくは薄膜の厚さが均一であって、スパッタリングの品質が効率良く、かつ確実に改善されたことを表わす。
【0028】
この発明と、従来の技術におけるスパッタリングターゲットのターゲット材の残留する厚さ、及び利用時間の関係を図9に開示する。この発明において提供される磁石(34)は、磁場の強度が平均しているため、スパッタリングターゲット(38)は、それぞれの領域において腐食、消耗が従来の技術に比して平均的である。このため、スパッタリングターゲット(38)の利用率を高めることができる。また、図示から明らかなようにターゲット材(36)は、この発明と従来の技術における残留する厚さが同一の条件下において、この発明におけるスパッタリングターゲット(38)を利用できる時間は、従来の技術に比して明らかに長い。よって、この発明はスパッタリングターゲット(38)の消耗量を減少し、スパッタリング工程のコストを低減することができる。
【0029】
以上は、この発明の好ましい実施例であって、この発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、この発明の精神の下においてなされ、この発明に対して均等の効果を有するものは、いずれもこの発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【0030】
【発明の効果】
この発明によるマグネトロンスパッタリング装置は、スパッタリングターゲットの腐食、消耗が均一化して利用率を高める効果を有するとともに、基板表面に堆積して形成される薄膜の厚さと、抵抗値の分布を均一にしてスパッタリングの品質を高め、さらに製造コストを低減させる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来のマグネトロンスパッタリング装置の説明図である。
【図2】 従来のマグネトロンスパッタリング装置における磁石の側面図である。
【図3】 従来のマグネトロンスパッタリング装置において形成された膜の抵抗値分布を表わす説明図である。
【図4】 従来のマグネトロンスパッタリング装置におけるターゲット材の消耗の状態を表わす説明図である。
【図5】 この発明によるマグネトロンスパッタリング装置の説明図である。
【図6】 この発明によるマグネトロンスパッタリング装置における磁石の側面図である。
【図7】 この発明によるマグネトロンスパッタリング装置における他の形態の磁石の側面図である。
【図8】 この発明によるマグネトロンスパッタリング装置において形成された膜の抵抗値分布を表わす説明図である。
【図9】 ターゲット材の残留する厚さと使用期間に関する従来の技術と、この発明との比較図である。
【符号の説明】
10 マグネトロンスパッタリング装置
11 反応室
12 ターゲットボード
13 ベース
14 磁石
15 基板
16 ターゲット材
18 スパッタリングターゲット
30 マグネトロンスパッタリング装置
31 反応室
32 ターゲットボード
33 ベース
34 磁石
35 基板
36 ターゲット材
37 消磁手段
38 スパッタリングターゲット

Claims (9)

  1. 表面にターゲット材を設けてなるスパッタリングターゲットと、
    該スパッタリングターゲットに対応して設けられ、該ターゲット材から弾き出る原子を沈降させ、堆積させるベースと、
    略矩形を呈し、該スパッタリングターゲットの背面に設けられ、往復運動を行って、該ターゲット材のベース表面に対する沈降を制御する磁石と、
    該磁石の長手方向の両端縁部に設けられ、該磁石の長手方向の両端縁部の磁場の強度を減少させる消磁手段とを具えてなり、
    これらを反応室内に設けてなることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
  2. 前記反応室は、真空ポンプを利用して内部の真空状態を保持することを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
  3. 前記スパッタリング装置は、スパッタリングを行う場合、正電荷を帯びるプラズマイオンを流動させることを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
  4. 前記プラズマイオンが、アルゴンイオンであって、かつ濃度が95%を超えることを特徴とする請求項3に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
  5. 前記ベース表面に、スパッタリングを行う基板を載置し、該ターゲット材から弾き出る原子を、該基板の表面に沈降させ、薄い膜を形成することを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
  6. 前記基板が、ウエハか、もしくはガラス基板であることを特徴とする請求項5に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
  7. 前記磁石の長手方向の両端縁部に設けられる消磁手段が強磁性材料によってなり、該強磁性材料が鉄か、コバルトか、もしくはニッケルであることを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
  8. 前記磁石の長手方向の両端縁部に設けられる消磁手段の表面にクロムメッキを施して防錆処理を行うことを特徴とする請求項7に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
  9. 前記消磁手段は、該磁石の両端縁部にそれぞれ設けられ、段差を形成するか、もしくは勾配を形成して厚さが磁石中央に向かって薄くなるように形成することを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
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