JP3921102B2 - フォトニック結晶を用いた光導波路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上にコアとクラッドを形成した光導波路に係り、特に、コアの一部をフォトニック結晶で構成して伝搬損失の低減を図ったフォトニック結晶を用いた光導波路に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、フォトニック結晶について簡単に説明する。フォトニック結晶とは、屈折率が異なる2種類の透明媒質を、媒質内平均波長の1/2程度の格子間隔で1〜3次元の周期構造としたものである。3次元の場合で大まかに言うと、ナノスケールの3次元市松模様である。1次元〜3次元のフォトニック結晶を模式的に示すと、それぞれ図7(a)〜(c)のようになる。図7(a)の1次元フォトニック結晶90aの場合はz方向にのみ屈折率の周期性を有し、図7(b)の2次元フォトニック結晶90bの場合はx,z方向に屈折率の周期性を有し、図7(c)の3次元フォトニック結晶90cの場合はx,y,z方向に屈折率の周期性を有する。図7中の屈折率が異なる2種類の透明媒質は、低屈折率媒質91と高屈折率媒質92である。
【0003】
従来のフォトニック結晶を用いた光導波路の代表的な例として、図8に示すようなSOI基板を用いた円孔型のフォトニック結晶からなる光導波路100がある。この光導波路100は、2001年春季第48回応用物理学関係連合講演会講演予稿集30a−YK−2に記載されているものである。
【0004】
従来の光導波路100は、Si基板101上にSiO2 層を形成し、SiO2 層上にSi層103を形成し、そのSi層103に、直径が0.23〜0.24μmの複数個の円孔104を、隣接する円孔の中心間距離(格子定数)aが0.42μm間隔となるように2次元三角格子状に配列形成すると共に、一列のみ円孔104を形成しないようにし、下部のSiO2 層を取り除いた構造である。
【0005】
円孔104を形成しないようにした部分が光導波路コア105となる。円孔104はフォトリソグラフィーとドライエッチングにより作製され、下部のSiO2 層はウエットエッチング法により取り除かれる。それによって、光導波路コア105の下部は空気(air)からなる光導波路クラッド106dとなる。また、光導波路コア105の上部も空気からなる光導波路クラッド106uであることから、光導波路コア105が空気からなる光導波路クラッド106u,dでサンドイッチされた構造となる。この光導波路100は、エアブリッジ型と呼ばれている。
【0006】
図9に光導波路100の伝搬損失の波長依存性を示す。通信波長1.50μm帯での光導波路100の伝搬損失は10dB/mmである。すなわち、1cmあたり100dBである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題 】
しかしながら、従来の光導波路100の伝搬損失は100dB/cmと非常に高く、実用上必要とされる1dB/cm以下の低損失のものを作製するのが困難であるという問題がある。
【0008】
その主要因は、円孔104作製においてフォトリソグラフィーの精度が約±5%、ドライエッチングによる精度が約±4%と精度が悪いことであり、その要因を取り除くためにプロセス精度を上げることは容易ではない。その大きな伝搬損失によって、さまざまな光回路への応用の道が閉ざされている。
【0009】
また、円孔フォトニック結晶からなる従来の光導波路100とは異なり、下部クラッド、コア、上部クラッドの全領域を、石英系光ファイバとの屈折率差が小さい誘電体多層膜型のフォトニック結晶で作製した格子変調型フォトニック結晶からなる光導波路が報告されている(2001年春季第48回応用物理学関係連合講演会講演予稿集30p−YK−2)。
【0010】
この光導波路では、後述する自己クローニング法により、誘電体多層膜を作製しているが、その厚さを10μm以上とする必要があるので、作製が非常に困難であるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、作製容易で、伝搬損失が低いフォトニック結晶を用いた光導波路を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、基板上にコアとクラッドを形成した光導波路において、コアの一部を、スパッタデポジッションと同時あるいは交互にスパッタエッチングを行う際、デポジッションとエッチングの比率を適正化する自己クローニング法により作製した2次元あるいは3次元のフォトニック結晶で構成すると共に、そのフォトニック結晶で構成したコア以外のコア領域を、誘電体の単層膜で形成し、クラッドを単層膜で形成したフォトニック結晶を用いた光導波路である。
【0014】
請求項2の発明は、クラッドを誘電体の単層膜で形成した請求項1記載のフォトニック結晶を用いた光導波路である。
【0015】
請求項3の発明は、コアを誘電体多層膜型のフォトニック結晶で構成した請求項1記載のフォトニック結晶を用いた光導波路である。
【0016】
請求項4の発明は、光の伝搬方向に沿う屈折率の周期性を有するフォトニック結晶で構成されるコアを、基板上の2箇所以上に配置して光共振器の機能を有する請求項1記載のフォトニック結晶を用いた光導波路である。
【0017】
請求項5の発明は、光の伝搬方向に沿う屈折率の周期性を有するフォトニック結晶で構成されるコアを、基板上の2箇所以上に配置させることにより、基板面と平行方向に伝搬する入射光に対して光波長フィルタの機能を有する請求項1または4記載のフォトニック結晶を用いた光導波路である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0020】
図1は、本発明の前提技術であるフォトニック結晶を用いた光導波路の斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の前提技術であるフォトニック結晶を用いた光導波路1は、石英からなる基板2上の中央部に、誘電体多層膜型のフォトニック結晶3で構成される矩形体状のコア4を形成し、コア4とコア4が形成されない基板2上とを、SiO2 からなる誘電体の単層膜で形成したクラッド5で覆ったものである。コア4の長さは、基板2の長手方向の長さと同じである。コア4の両端面4f,4bは露出しており、一方の端面4fが基板2の正面2fと一致し、他方の端面4bが基板2の背面2bと一致している。基板2としては、通信波長帯1.3μm〜1.7μmで透明な石英(SiO2 )を用いているが、Siを用いてもよい。
【0022】
フォトニック結晶3は、高屈折率媒質膜3aと低屈折率媒質膜3bとからなる2次元のフォトニック結晶である。このフォトニック結晶3は、各膜3a,3bが、基板2の長手方向に沿って凹凸形状が繰り返されて形成されると共に、基板2上に交互に積層されて形成されたものである。高屈折率媒質膜3aとしては、例えば、Ta2 O5 膜を使用している。低屈折率媒質膜3bとしては、例えば、SiO2 膜を使用している。
【0023】
フォトニック結晶3に用いる材料は、上述したものに限らず、Ta2 O5 、Nb2 O5 、SiO2 などの酸化物、Ge、Siなどの半導体を使用することができる。例えば、現在すでに製品化されている誘電体多層膜フィルタには、Ta2 O5 /SiO2 、Nb2 O5 /SiO2 などの酸化物を組み合わせた材料が用いられているので、光導波路の低損失化のために、それらの材料を用いることができる。
【0024】
光導波路1のコア4の屈折率は、約1.7〜1.8である。光導波路1のクラッド5の屈折率は、約1.4〜1.5である。この光導波路1では、コア4の一方の端面4fから入射した入射光は、フォトニック結晶3で構成されるコア4内を、基板2の上面2uおよび下面2dに対して平行に伝搬し、コア4の他方の端面4bから出射する。
【0025】
次に、光導波路1の製造方法を説明する。
【0026】
図2に示すように、まず、基板20の上面20uを、電子ビーム露光によるフォトリソグラフィーとドライエッチングにより、基板2の長手方向(x方向)に沿ってLine&Spaceパターン状となるように加工する。ここで、Line&Spaceパターンとは、凹凸に加工された形状のことである。図2では基板2の上面2uに、凸部(Line)21と凹部(Space)22が交互に形成されている。すなわち、予め基板20上に面内の1次元初期格子を形成しておく。x方向のピッチ間隔Lxは、Line&Spaceパターンの一つのLine幅と一つのSpace幅を加えた値であり、x方向のLine幅およびSpace幅をLine−x、Space−xとすれば、Lx=(Line−x)+(Space−x)となる。ここでは、Lx=0.5μmとした。Line&Spaceパターンが形成された基板20は、ダイシングにより数mm×数mmにチップ化される。
【0027】
図3(a)に示すように、チップ化した基板2上に、バイアススパッタリング法により、高屈折率媒質膜(Ta2 O5 膜)3aと低屈折率媒質膜(SiO2 膜)3bとを交互に積層させる。バイアススパッタリング法を簡単に説明すると、ターゲットにR.F.(高周波)電力を印加させるだけではなく、基板にもR.F.電力を印加しながらスパッタデポジッションと同時あるいは交互にバイアススパッタエッチングを可能とする方法である。膜厚は目的とするデバイスの仕様により決められる。それぞれの膜を堆積させる際、後述する自己クローニング法により、ある一定の断面形状を保ちながら膜が堆積される。
【0028】
バイアススパッタリング法は、例えば、図4に示すようなバイアススパッタリング装置40を用いて行われる。
【0029】
装置40は、真空排気されたチャンバ41内の下部に設けられるターゲット電極42a,42bと、各ターゲット電極42a,42bの上方を覆うシャッター43a,43bと、チャンバ41内の上部に設けられる基板電極44と、基板電極44に取り付けられ、シャッター43bと対向して設けられる基板ホルダー45と、チャンバ41側部に設けられるガス導入部46およびガス排気部47とを備えたものである。ターゲット電極42a,42bと基板ホルダー45には、整合器48a,48b,49を介して13.56MHzのR.F.電源50a,50b,51が接続されており、反射波がほぼゼロとなるように整合器48a,48b,49のマッチングが制御される。
【0030】
この装置40では、2種類のターゲット52a,52bは、ターゲット電極42a,42b上にそれぞれ配置される。チップ化された基板2は、基板ホルダー45内に配置される。作動ガスとしては、例えば、アルゴン、酸素を使用している。
【0031】
ここで、自己クローニング法について詳しく説明する。自己クローニング法については、例えば、川上彰二郎、花泉修、佐藤尚、大寺康夫、川嶋貴之、信学論(C),vol.J80−C−I,pp.296−297,1997.や、特開平10−335758号公報に記載されている。
【0032】
上述したバイアススパッタリング装置40を利用することにより、ターゲット52a,52bだけでなく基板2へもR.F.電力を印加することができる。一般的なスパッタリング法では、ターゲット材がAr+ イオンによってスパッタされてターゲットを構成する中性原子やそのイオン、多原子分子(クラスター)などになり、それらを基板上に拡散入射させてデポジッションを行う。バイアススパッタリング法によれば、基板2に積極的にAr+ イオンを打ち込み、スパッタデポジッションと同時あるいは交互にスパッタエッチングを行うことができる。その際、デポジッションとエッチングの比率を適正化する自己クローニング法により、ある一定の断面形状を維持しながら膜を堆積していくことが可能である。
【0033】
自己クローニング法を用いると、デポジッションとエッチングとがバランスよく行われるので、図3(a)に示したように、基板2の上面2uに形成した凹凸形状に応じて、各膜3a,3bが、基板2の長手方向に沿って凹凸形状が繰り返されて形成されると共に、基板2上に交互に積層されて形成された2次元のフォトニック結晶3を作製することができる。下地の形状を自動的に複製するので、川上らは、この技術あるいは現象を「自己クローニング」と命名した。自己クローニング法を用いずに、ただ単にターゲットのみにR.F.電力を印加して成膜していくと、デポジッションのみが行われることから、図3(b)示すように、基板表面の凹凸形状がその形を保てず、断面の上方でやがてならされて平坦になってしまう。
【0034】
より詳細な一例を説明する。まず、チップ化した基板2をチャンバー内に入れ真空引きを行う。基本圧力(Base pressure)は1.33×10-3Pa(1×10-5 Torr)以下とする。Ta2 O5 膜3aの膜厚Daは、190.5nmである。成膜条件はR.F電力:300W、基板側R.F電力:90W、成膜ガス:Ar(9.0sccm)+O2 (1.0sccm)、成膜圧力:0.133Pa(1.0×10-3Torr)とした。成膜速度が16.8nm/minであるので成膜時間を11.3minとした。SiO2 膜3bは、膜厚Dbが272.5nmである。成膜条件はR.F電力:300W、基板側R.F電力:90W、成膜ガス:Ar(72.0sccm)+O2 (4.0sccm)、成膜圧力:0.8Pa(6.0×10-3Torr)とした。成膜速度が3.1nm/minであるので成膜時間を87.9minとした。
【0035】
Ta2 O5 膜3aの厚さDaとSiO2 膜3bの厚さDbとの合計の厚さDを、1周期(463.0nm)として9周期成膜する。フォトニック結晶3の厚さ、すなわちコア4の膜厚は4.167μmとなる。
【0036】
次に、フォトニック結晶3をフォトリソグラフィーとドライエッチングによって加工し、両端の断面が約4μm×4μmのほぼ正方形となるように矩形化する。この断面が正方形である矩形体状のフォトニック結晶3がコア4となる。コア4の側面および上面の全ての面と、コア4が形成されていない基板2上とを、SiO2 からなる誘電体の単層膜で形成したクラッドで覆うと、図1で示したようなフォトニック結晶を用いた光導波路1が完成する。クラッドは、例えば、通常のスパッタデポジッションを行って作製すればよい。このSiO2 からなる誘電体の単層膜のクラッドを用いることにより、コアとクラッドの屈折率差を大きくすることができ、それによってコア内に光を閉じ込めやすい構造とすることができる。
【0037】
本発明の前提技術である光導波路1は、通信波長帯である1.3〜1.7μm(1330〜1700nm)の全範囲に亘って、伝搬損失が1.0dB/cm以下、あるいは0.1dB/mm以下である。これは、図8および図9で説明した従来の光導波路100の伝搬損失100dB/cm(10dB/mm)に比べると、約2桁も低い伝搬損失である。
【0038】
このように、本発明の前提技術であるフォトニック結晶を用いた光導波路1は、フォトニック結晶のみで構成される従来の光導波路100とは異なり、コアの少なくとも一部をフォトニック結晶で構成していることから、クラッドの実効屈折率がコアの実効屈折率よりも低くなり、しかも、クラッドを単層膜で形成しているので、コアとクラッドの屈折率差を大きくすることができる。したがって、コア内への光の閉じ込めが十分となり、光導波路の伝搬損失を1.0dB/cm以下と非常に低くすることができる。
【0039】
ここで、特に、クラッドを誘電体の単層膜とすることにより、光導波路の伝搬損失が低くなる理由について説明する。
【0040】
一例として、誘電体単層膜をSiO2 、誘電体多層膜をTa2 O5 とSiO2 からなる多層膜とする。クラッドをTa2 O5 /SiO2 誘電体多層膜とした場合には、その平均屈折率差が約1.7〜1.8となり、コアもTa2 O5 /SiO2 の構造を持つことから、コアの屈折率とクラッドのそれがほとんど同程度になる。一方、クラッドにSiO2 誘電体単層膜を用いると、SiO2 の屈折率が1.4〜1.5であるからTa2 O5 /SiO2 コアに比べて小さくすることができる。すなわち、クラッドの屈折率を小さくすることにより、コア内への伝搬光の閉じ込めを効果的に行うことができ、低伝搬損失となる。
【0041】
このように、クラッドを誘電体の単層膜とすることにより、コア、クラッドの双方とも誘電体膜で形成されるので、それによって石英系光ファイバと同程度の屈折率とすることができ、光ファイバとの接続損失を低減することができる。
【0042】
また、コアを誘電体多層膜型のフォトニック結晶とすることにより、石英系光ファイバと同程度の屈折率とすることができ、それによって光ファイバとの接続損失が低く、かつコア内の伝搬損失が低い光導波路を実現することができる。
【0043】
従来技術では、従来の光導波路の一例として、格子変調型フォトニック結晶からなる光導波路を説明した。この従来の光導波路では、自己クローニング法での誘電体多層膜を10μm以上の厚膜で維持させなければならず、作製が難しかったが、本発明の前提技術である光導波路1では、フォトニック結晶となるのはコア領域に限られるので、作製プロセスが大幅に簡略される。しかも、コア4の膜厚は約4μmという薄膜であるので、作製が容易である。
【0044】
さらに、本発明の前提技術である光導波路1は、誘電体多層膜型のフォトニック結晶から構成されるコアを自己クローニング法を用いて作製しているので、工業的に量産が容易である。
【0045】
さて、本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0046】
図5は、本発明の第1の実施の形態であるフォトニック結晶を用いた光導波路の斜視図である。
【0047】
図5に示すように、光導波路60は、石英からなる基板2上の中央部の正面側と背面側の2箇所に、誘電体多層膜型のフォトニック結晶3で構成される矩形体状のフォトニック結晶コア61f,61bを形成し、これらフォトニック結晶コア61f,61b間に、GeO2 −SiO2 膜からなる矩形体状の誘電体の単層膜コア62を形成したものである。単層膜コア62の基板2との比屈折率比Δは、1.5%である。ここで、比屈折率比Δは、単層膜コア62の屈折率をncore、基板2の屈折率をnsub.として、(ncore−nsub.)/ncoreで表される。この光導波路60は、図1で説明した光導波路1のように全てのコア領域をフォトニック結晶3で構成するのではなく、コア領域の一部をフォトニック結晶で構成したものである。光導波路60のその他の構成は、光導波路1と同じ構成である。
【0048】
光導波路60では、フォトニック結晶コア61f,61bと単層膜コア62とからなる光共振器を構成している。ここでは、光共振器の機能を有する光導波路60を構成するため、図5に示すように、フォトニック結晶コア61f,61bが光の伝搬方向(図5では、基板2を下にした場合に右斜め上方向あるいは左斜め下方向)に沿う屈折率の周期性を有するように形成する。この構成によって、フォトニック結晶コア61f,61bが誘電体多層膜フィルタのDBR(分布ブラッグ反射器)に相当し、単層膜コア62が誘電体多層膜フィルタのキャビティ(cavity)に相当するので、光フィルタを構成しているとも言える。
【0049】
この光導波路60では、入射光をフォトニック結晶コア61fの一方の端面61fpに入射させ、フォトニック結晶コア61bの他方の端面61bqから出射される出射光を測定すると、ある波長の光のみを透過する光フィルタ特性が得られる。すなわち、光導波路60は、基板面と平行方向に伝搬する入射光に対して光波長フィルタの機能を有する。
【0050】
次に、光導波路60の製造方法を説明する。
【0051】
まず、基板2の中央部上の正面側と背面側の2箇所に、フォトニック結晶コア61f,61bを、図1で説明した光導波路1のコア4と同じ要領で作成する。これらフォトニック結晶コア61f,61b間に、スパッタデポジッション法により、単層膜コア62を成膜する。このとき、SiO2 に添加するGeO2 の量を制御し、基板との比屈折率比Δが1.5%となるようにする。矩形化はフォトリソグラフィーとドライエッチングを用いて両端の断面が4μm×4μmとなるように加工される。これらフォトニック結晶コア61f,61bと単層膜コア62を、SiO2 からなる誘電体の単層膜で形成されるクラッド5で覆うと、図5で示した光導波路60が完成する。
【0052】
このSiO2 からなる誘電体の単層膜のクラッドを用いることにより、コアとクラッドの屈折率差を大きくすることができ、それによってコア内に光を閉じ込めやすい構造とすることができる。
【0053】
本光導波路60の光学測定を行ったところ、1560nmに透過中心波長を持つ光フィルタが得られた。透過中心波長における伝搬損失は1.0dB/cm、あるいは0.1dB/mm以下と非常に低く、精度の高い波長選択型の光フィルタを実現できたことが分かる。この光導波路60も、従来の光導波路100に比べて約2桁低い伝搬損失である。
【0054】
このように、本発明に係る光導波路60は、フォトニック結晶で構成したコア以外のコア領域を誘電体の単層膜とすることにより、フォトニック結晶を用いた光導波路の伝搬損失をさらに低減することができる。
【0055】
また、フォトニック結晶で構成されるコアを2箇所以上に配置することにより、光共振器を実現することができる。この光共振器を応用することにより、精度が高い光波長フィルタを実現することができる。この光波長フィルタとは、特に波長選択型の光フィルタのことである。
【0056】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。フォトニック結晶からなるコアを分散配置し、それぞれ分散配置されたフォトニック結晶部で各種機能部品を形成し、それらを単層膜コアからなる光配線で結ぶといった光機能部品のモノリシック化することもできる。一例として、フォトニック結晶を用いた光導波路で共振器、分散制御、レンズ、ミラー、モードフィールド変換等の光機能部品を構成し、それら光機能部品を光配線で結ぶという構成が考えられる。
【0057】
第2の実施の形態を説明する。
【0058】
図6は、本発明の第2の実施の形態であるフォトニック結晶を用いた光導波路の斜視図である。
【0059】
図6に示すように、光導波路80は、図5で説明したフォトニック結晶コア61f,61bと誘電体単層膜コア62からなる共振器で構成した光フィルタの入力導波路の入力側および出力導波路の出力側の2箇所に、モードフィールド変換導波路を設けたものである。
【0060】
この光導波路80は、基板2上の中央部の正面側と背面側の2箇所に、GeO2 −SiO2 膜からなる略立方体状の誘電体の単層膜コア81f,81bを形成し、これら単層膜コア81f,81b間に、図5で説明したフォトニック結晶コア61f,61bと誘電体の単層膜コア62を形成したものである。
【0061】
単層膜コア81f,81bの基板2との屈折率比Δは0.3%である。単層膜コア81f,81bも、単層膜コア62と同様、スパッタデポジッション法により成膜される。このとき、SiO2 に添加するGeO2 の量を制御し、基板との比屈折率比Δが0.3%となるようにする。各単層膜コア81f,81bの両端面の寸法は7μm×7μmとした。単層膜コア81fの一方の端面81fpには、モードフィールド径が10μmのシングルモード光ファイバ82fが接続され、単層膜コア81bの他方の端面81bqには、モードフィールド径が10μmのシングルモード光ファイバ82bが接続されている。光導波路80のその他の構成は、光導波路60とほぼ同じ構成である。
【0062】
光導波路80では、シングルモード光ファイバ82fから入射される入射光L1は、そのモードフィールド径を保ったまま、単層膜コア81fに入射され、単層膜コア81fとフォトニック結晶コア61fの境界面でモードフィールド径が10μmから4μmに変換される。フォトニック結晶コア61f,61bと単層膜コア62は、図5で説明したように光波長フィルタを構成するので、モードフィールド径が10μmから4μmに変換された入射光のうち、特定のスペクトルのみが透過する。光波長フィルタを透過したスペクトルは、フォトニック結晶コア61bと単層膜コア81bの境界面でモードフィールド径が4μmから10μmに変換され、モードフィールド径を10μmに保ったまま単層膜コア82bを伝搬し、シングルモード光ファイバ82bに出射され、出射光L2として伝搬する。
【0063】
この光導波路60では、損失が図5で説明した光導波路60と同程度かそれ以上低いスペクトルが得られる。また、単層膜コア81f,81b、フォトニック結晶コア61f,61b、単層膜コア62などの各種光機能部品がモノリシック化されているので、機能性を向上させることができる。
【0064】
上記実施の形態では、フォトニック結晶として、2次元のフォトニック結晶を用いた例で説明したが、必要であれば3次元のフォトニック結晶を用いることもできる。3次元のフォトニック結晶を使用した場合、2次元のフォトニック結晶を使用した場合に比べると構造がやや複雑になるものの、コア内への光の閉じ込めがより強くなり、光導波路の伝搬損失がより低くなるという利点がある。
【0065】
本発明は、フォトニック結晶を用いた光導波路に関するものであるが、フォトニック結晶を用いた光部品およびフォトニック結晶を応用した光デバイス、あるいはそれら光部品ならびに光デバイスを適用した光システムに幅広く適用することが可能である。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
【0067】
(1)フォトニック結晶を用いた光導波路の伝搬損失を0.1dB/cm以下とすることができる。
【0068】
(2)フォトニック結晶で構成したコア以外のコア領域を誘電体の単層膜とすることにより、光導波路の伝搬損失をさらに低減することができる。
【0069】
(3)石英系光ファイバとの接続損失を低減することができる。
【0070】
(4)石英系光ファイバとの接続損失が低く、かつコア内の伝搬損失が低い光導波路を実現することができる。
【0071】
(5)光共振器を実現することができる。
【0072】
(6)光フィルタを実現することができる。
【0073】
(7)工業的に量産が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の前提技術であるフォトニック結晶を用いた光導波路の斜視図である。
【図2】 基板の斜視図である。
【図3】 図3(a)は、自己クローニング法を用いて作製したフォトニック結晶の断面図である。図3(b)は、自己クローニング法を用いずに作製したフォトニック結晶の断面図である。
【図4】 バイアススパッタリング装置の概略図である。
【図5】 本発明の好適な第1の実施形態を示すフォトニック結晶を用いた光導波路の斜視図である。
【図6】 本発明の第2の実施の形態を示す斜視図である。
【図7】 フォトニック結晶の模式図である。
【図8】 従来の光導波路のSEM写真である。
【図9】 図8に示した従来の光導波路の波長に対する伝搬損失特性を示す図である。
【符号の説明】
1 フォトニック結晶を用いた光導波路
2 基板
3 フォトニック結晶
3a 高屈折率媒質膜
3b 低屈折率媒質膜
4 コア
5 クラッド
Claims (5)
- 基板上にコアとクラッドを形成した光導波路において、コアの一部を、スパッタデポジッションと同時あるいは交互にスパッタエッチングを行う際、デポジッションとエッチングの比率を適正化する自己クローニング法により作製した2次元あるいは3次元のフォトニック結晶で構成すると共に、そのフォトニック結晶で構成したコア以外のコア領域を、誘電体の単層膜で形成し、クラッドを単層膜で形成したことを特徴とするフォトニック結晶を用いた光導波路。
- クラッドを誘電体の単層膜で形成した請求項1記載のフォトニック結晶を用いた光導波路。
- コアを誘電体多層膜型のフォトニック結晶で構成した請求項1記載のフォトニック結晶を用いた光導波路。
- 光の伝搬方向に沿う屈折率の周期性を有するフォトニック結晶で構成されるコアを、基板上の2箇所以上に配置して光共振器の機能を有する請求項1記載のフォトニック結晶を用いた光導波路。
- 光の伝搬方向に沿う屈折率の周期性を有するフォトニック結晶で構成されるコアを、基板上の2箇所以上に配置させることにより、基板面と平行方向に伝搬する入射光に対して光波長フィルタの機能を有する請求項1または4記載のフォトニック結晶を用いた光導波路。
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