JP3920404B2 - 音声再生モジュール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はステレオ音声再生装置に関し、特に、ステレオ音声処理を採用したステレオシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
高度にリアルな3次元音声イメージを生成するためのバイノーラル(binaural)信号の処理はよく知られている。例えば、国際特許出願第WO94/22278号参照のこと。バイノーラル技術はいわゆる「人工ヘッド」マイクロフォン・システムを用いてなされる録音に基づいており、その録音は続いてディジタル的に処理される。人工ヘッドの使用は、自然な3次元音声キュー(脳がこれを使用して3次元空間における音声ソースの位置を決定する)がステレオ録音に取り込まれるのを確実化する。バイノーラル信号の後続する信号処理は、スピーカを介して録音を聴いている時に生じるトランスオーラル・クロストークを予測し、このトランスオーラル・クロストークが打ち消されることを確実化する。クローストークはリスナーの1つの耳に向けられたオーディオ信号が他の耳にも受け取られると発生し、その打ち消しは3次元キューが媒体の再生に有効で、それにより脳が正確にキューを解釈することを確実化する。このような処理なしでは、録音音声は音色的に不正確であり、それらの3次元属性をスピーカによるオーディションで再生しない。
【0003】
本明細書の目的のために、「バイノーラル信号」という用語は、空間的に離れた1対のマイクロフォンの間に位置する人工ヘッド手段により生成されるオーディオ回折効果を表す1つ以上のコンポーネントを含む、2チャンネル又はステレオ信号を意味することを意図している。人工ヘッド手段は、一般に、耳の構造をしたマイクロフォンを持つ、人間の頭と胴の正確なモデルでよい。これに替えて、それははるかに不正確であるが、音声信号源からの回折信号を生成する、例えば空間的に離れた1対のマイクロフォンの間に位置するシート又は木のブロックでよい。それは、そのような信号成分を生成しステレオ信号に印加する電気的合成回路又はシステムであってもよい。バイノーラル信号は人工ヘッド手段から直接送信されてもよい。これに替えて、これらは録音から再生されてもよい。上記したように、そのような信号がスピーカを介して再生するときに、その信号はクロストーク打ち消しのための処理を経ることが必要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リスナーがスピーカではなくてヘッドホンを採用して再生音声を聴く場合は、ヘッドホン・スピーカは互いに分離されている時は、トランスオーラル・クロストークは生じないので、クロストーク打ち消しは不要である。ヘッドホンは例えば雑音擾乱をつくることなしに電子楽器を演奏したい場合又は雑音環境で録音をモニタするために、電子楽器とともに使用できる。これは明らかにユーザがスピーカ又はヘッドホンのいずれかを介して聴くことを望む場合に問題を生じる。本発明の目的はこの問題を克服することである。
【0005】
リアルな3次元音声イメージを再生するために、スピーカ及びヘッドホンのいずれを聴いているかに依存して、クロストーク打ち消しをオン及びオフに切り換ることができることが望ましいだけではなく、国際出願第WO94/22278及びWO95/15069に説明されているように、両モードの聴取に対して「トワイス・スルー・ザ・イヤー」(twice through the ears)効果を補償することが有利である。
【0006】
「トワイス・スルー・ザ・イヤー」効果の補償は、人工ヘッドを介して録音された音声のスペクトル応答を整形し、又は等化するためにオーディオ・フィルタを使用する。この整形のために使用される伝達関数は様々な方法で計算できる。ヘッドホンにより聴く場合は、ヘッドホン−耳伝達関数が計算され、これらの関数はヘッドホンの種類により異なり、これらの関数はスピーカからの音声の耳に対する入射角とスピーカから耳までの距離の両方に依存している。
【0007】
本発明のさらなる目的は、所望であれば、スピーカからの音声を聴いているときのインターオーラル・クロストークの打ち消しに加えて、加えられるイコライゼーションを変更して、ヘッドホンからの音声を聴くために使用される伝達関数に比べて異なる伝達関数が、スピーカからの音声を聴いているときに使用されることを可能にする手段を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様によれば、バイノーラル信号を生成する入力モジュールと、ラウドスピーカ出力部とヘッドホン出力部とを有する出力モジュールと入力モジュールを出力モジュールに接続しクロストーク打ち消しモジュールを有する信号処理モジュールと、第1の状態で入力モジュールからのバイノーラル信号をクロストーク打ち消しモジュールを介してラウドスピーカ出力部通過させ、第2の状態でクロストーク打ち消しモジュールを動作停止にして入力モジュールからのバイノーラル信号をヘッドホン出力部通過させるスイッチモジュールとを備え、ヘッドホン出力部はジャック・プラグを受け取るソケットを含んでおり、ソケットはジャック・プラグがソケットに挿入されたことを検出するように動作するディテクタに接続されて、その検出に応答してスイッチモジュールを第2の状態に入らせる、音声再生モジュールが提供される。
【0010】
好ましくは、左右のバイノーラル信号を生成するためのバイノーラル・プレースメント・フィルタを含む信号処理手段が設けられており、入力手段はモノフォニックな出力オーディオ信号を生成するように作用し、信号処理プロセッサは前記出力信号を受け取り、前記左右のバイノーラル信号を前記クロストーク打ち消し手段を介して、前記スイッチ手段が前記第1の位置にあるときにスピーカ手段のそれぞれ左右のスピーカに送るか、又はスイッチ手段が第2の位置にあるときにヘッドホン手段のそれぞれ左右のヘッドホンに送るように作用する。
【0011】
本発明の更なる態様においては、信号処理プロセッサはさらに、イコライゼーション・フィルタ手段を含み、イコライゼーション・フィルタ手段は、スイッチ手段により、スイッチ手段が前記第1の位置にあるときにイコライゼーション・フィルタ手段の伝達関数がスピーカ手段からの音声を聴いているリスナに対する機能に対応している第1の状態と、イコライゼーション・フィルタ手段の伝達関数がヘッドホン手段からの音声を聴いているリスナに対する機能に対応している第2の状態とに選択的に切り換え可能である。
【0012】
イコライゼーション・フィルタ手段はスピーカ手段により再生された音声を聴いているリスナに対する機能に対応している伝達関数を用いる「正規化された」伝達関数を有し、スイッチ手段が第2の位置にある時に動作してスピーカ手段に供給されるバイノーラル信号を受け取って訂正信号を印加し、それによりバイノーラル信号を変更して訂正されたバイノーラル信号をヘッドホン手段に供給する訂正手段が設けられている。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明が明瞭に理解され、容易に実施するために、本発明の2つの実施例を添付の図面を参照して記載する。
本発明の好ましい実施例は、本出願人による国際出願第WO94/22278号に記載のタイプの3D音声再生システムからのヘッドホンとスピーかの両方にフォーマットされた信号を与える手段を提供する。本発明によれば、このシステムは、ヘッドホンがシステムに結合されたことを適切に検出する検出手段と、適当なヘッドホン-コンパチブルな信号がシステムの出力に生成されるようにディジタル信号処理アルゴリズムを変形するコントローラ手段とを備える。ヘッドホンの使用が検出されると、コントローラは、信号処理アルゴリズムを実行して処理のクロストーク打ち消し段階を省略させるディジタルフィルタを形成する。ヘッドホンが検出されない場合、クロストーク打ち消しアルゴリズムが再び実施される( デフォルト状態はスピーカのオーディショニングに対応している) 。
【0014】
図において、共通の特徴には同一の参照番号が付されてされており、例えばPC音声カード上の音声シンセサイザのような入力装置2は、電気的モノフォニックオーディオ信号を生成し、それは、ライン8上に左右のデュアル・チャンネル・バイノーラル信号を生成してクロストーク打ち消しフィルタ10に与えるバイノーラル・プレースメント(placement)・フィルタ6を含むディジタル音声プロセッサ4(概略的に破線内に示されている)に供給される。プロセッサ4からのデュアルチャンネル出力信号は出力信号をそれぞれ増幅器14及び16を介して分配部12に供給される。分配部12はヘッドホンソケット18と合体している。分配部12は通常は出力バイノーラル信号を一対のスピーカ20,22に分配する。ヘッドホン・プラグ24(図2)がソケット18に挿入されると、出力信号はかわってヘッドホン26に供給される。さらに、制御信号が制御パス28に与えられ、その制御パス28は検出器30を含む。その検出器30は検出信号をマイクロコントローラ32に供給し、マイクロコントローラ32は制御信号をプロセッサ4に供給する。
【0015】
使用において、スピーカ20,22が聴取のために使用されている時は、制御パスは非活動的となり、又はそれは単に補助信号をプロセッサ4に与えてクロストーク打ち消しが採用されることを示す。この配置は図1に示されている。他方で、図2に示されているように、ヘッドホン26が聴取のために使用されている場合に、ヘッドホン・ジャック・プラグ24のソケット18への挿入が検知され使用されて、プロセッサ4に、制御パス28を介して、クロストーク打ち消しが採用されるべきではないことを通知する。すると、マイクロコントローラ32が有効になってクロストーク打ち消しフィルタ10(図1)を回路から切り離す。バイノーラル・プレースメント・フィルタ6は勿論アクティブのままである。
【0016】
ソケット18を介するヘッドホン接続の検出は以下のような様々な方法で行われる。
(a)ヘッドホン・ソケット上の既存の一般の切換接続の使用;
(b)電流制限バイアス電圧をライブ・オーディオ・フィードの1つ又は両方に印加することによりヘッドホンを通る小DC電流の検出;
(c)AC結合された、ACバイアス電圧をライブ・オーディオ・フィードの1つ又は両方に印加することによりヘッドホンを通る小AC電流の検出;
(d)ヘッドホン・ジャック・ソケット上のスイッチ接点の使用;又は
(e)ヘッドホン・ソケットの一部又は全てにおける光ビームの使用。
これらの変形の任意のものをどのように実施するかは当業者に明らかであろう。
【0017】
本発明は又、「トワイス・スルー・ザ・イヤー」効果を補償するスペクトル・イコライゼーション・フィルタと、音声源の3次元プレースメントの効果を合成するフィルタとを採用するタイプのバイノーラル音声処理システムにおいて使用される。こうして、図2に示されるようにヘッドホンが接続されるとクロストーク打ち消しを単にオフするかわりに、±30°の方位角のスピーカを用いて「トワイス・スルー・ザ・イヤー」効果を補償する第1の状態からイコライゼーション回路が±90°に配置されたヘッドホンの補償をする第2の状態にイコライゼーション回路を切り換えるほうがよりよい。図3及び4はこのような実施例の1つを示している。
【0018】
図3において、例えば、PC音声カード上の音声合成チップのような入力装置2は、モノフォニック・オーディオ信号を、左右チャンネルのバイノーラル信号を線8上に生成するヘッド応答伝達関数(HRTF)フィルタ対34aとクロストーク打ち消しフィルタ10とを含むディジタル音声プロセッサ4に与える。プロセッサ4は音色訂正のための一対のイコライゼーション・フィルタ34bを含んでいる。図2において、プロセッサ4からのデュアル・チャンネル出力は出力信号をそれぞれの増幅器14及び16を介して分配部12に供給する。
【0019】
フィルタ対34aは予め定義されたHRTFのライブラリから選択された対でよく、イコライゼーション・フィルタ34bの別々の対は音色訂正に適用するために使用される。しかしながら、イコライゼーション・フィルタ34bはHRTFフィルタ対34aに一体化されて、等化のための余分な処理を節約することが望ましい。(フィルタ対34a及び34bを備える)HRTFフィルタ・セット34は、リスナーの前に配置されてリスナーの前に±30°の方位角を形成する一対のスピーカを聴いているリスナーに関係した伝達関数に対応する伝達関数を用いて「正規化」されている。「正規化」の実行は処理電力を節約するだけでなく、録音中に発生した人工ヘッド信号に対応する信号及び合成バイノーラル・プレースト・信号(binaurally-placed signals )に対応する信号が互いに混合される方法を単純化する。このより完全な説明のためには、本出願人による国際特許出願第WO95/15069号を参照のこと。この方法での正規化はリスナーの前の±30°の方位角に配置されたスピーカを聴くためにはリスナーに対する正確な音調訂正を与えるが、±90°に配置されたイヤホーンのためには正確な右音調訂正を与えない。大部分の人は、おそらく相違に迅速に適合するので、ヘッドホンとスピーカのオーディショニングの間の音調変化を理解したり気付くことはない。しかしながら、3次元合成に対しては、その音調の相違はバイノーラル音声キューの有効性に影響を与え、記録媒体からリスナーの耳への音声信号の伝達関数の正確度を確実化することは利益がある。
【0020】
これは、1つのセットはヘッドホンの聴取に対して正規化され、他方のセットはスピーカの聴取に対して正規化された、HRTFフィルタ34の2つの分離されたセットを持つことにより達成される。しかしながら、これは大きなコンピュータメモリ空間を必要とするので好ましくない。好ましい解決は、±30度の方位角にセットされた(デフォルト・セッティングの)スピーカの聴取に対して正規化されたHRTFフィルタ34の1つのセットを使用し、訂正手段を使用して、イコライゼーション訂正信号をバイノーラルに配置された信号に与えてヘッドホンの+90°と−90°の位置に対する信号を等化する(ヘッドホンが使用中のとき)。このような訂正信号は、原理的に、±90°の関数により割られた±30°の伝達関数に等しいファクタであろう。正確な±90°位置に対する伝達関数を計算し、人工ヘッド上に直接配置されたヘッドホンからの測定を行うことにより、さらによい結果が得られる。これは、ヘッドホンの聴取は、(周辺ヘッドホンの)共鳴キャビティ、及び音声トランスデューサを遠フィールドではなくて近フィールド位置に持つことにより生じる低周波ブーストのような、±90°ソース位置以外を導入するという追加のファクタを考慮する。この場合、訂正信号は±30°の伝達関数を(人工ヘッド上にヘッドホンを配置して測定した)ヘッドホン伝達関数で割ったのものに等しくなる。訂正ファクタの分子は常に元の正規化のために使用される伝達関数である。
【0021】
図3の装置の動作において、ヘッドホン・プラグ24がソケット18に差し込まれないときは、再生はスピーカ20,22を通してなされ、クロストーク打ち消し回路10が採用されてトランスオーラル・クロストークを消去する。この動作モードにおいては、HRTFフィルタ・セット34が±30°に配置されたスピーカ20,22の聴取に対して正規化されるように回路がセットされる。図4を参照すると、ヘッドホン24がソケット18に挿入されており、スピーカ20,22が切断され、クロストーク打ち消し回路が回路から外されるように切り換わっており、イコライゼーション回路はHRTGフィルタ・セット34の伝達関数が±90°のヘッドホンの聴取に対する伝達関数となっている第2の状態に切り換わっている。
【0022】
本発明の利益は以下の通りである。
(a)本発明は最適の3次元音声フィールドをスピーカとヘッドホンの両方のオーディショニングの間にユーザのために自動的に提供する。
(b)追加の信号処理は殆ど又は全く不要である。信号処理システムは簡単に代替的な方法で再形成され、従って実施のコストは低い。
【0023】
(c)本発明は、ハイファイ、テレビジョン、コンピュータ・ゲーム・システム、ビデオ及び楽器を含むすべての2スピーカ3D音声再生システムに汎用的に適用される。
(d)本発明はスイート・スポット動作に依存する様々な3Dオーディオシステムで使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スピーカを聴取する場合の1実施例のブロック図である。
【図2】ヘッドホンを聴取する場合の実施例のブロック図である。
【図3】スピーカを聴取する場合の更なる実施例のブロック図である。
【図4】図3の実施例でヘッドホンを聴取する場合のブロック図である。
【符号の説明】
2…入力装置
4…ディジタル音声プロセッサ
6…バイノーラル・プレースメント・フィルタ
10…クロストーク打ち消しフィルタ
12…分配部
18…ヘッドホンソケット
20,22…スピーカ
24…ヘッドホンプラグ
26…ヘッドホン
30…検出器
32…マイクロコントローラ

Claims (2)

  1. バイノーラル信号を生成する入力モジュールと、ラウドスピーカ出力部とヘッドホン出力部とを有する出力モジュールと前記入力モジュールを前記出力モジュールに接続しクロストーク打ち消しモジュールを有する信号処理モジュールと、第1の状態で前記入力モジュールからのバイノーラル信号を前記クロストーク打ち消しモジュールを介して前記ラウドスピーカ出力部に通過させ、第2の状態で前記クロストーク打ち消しモジュールを動作停止にして前記入力モジュールからのバイノーラル信号を前記ヘッドホン出力部に通過させるスイッチモジュールとを備え、前記ヘッドホン出力部はジャック・プラグを受け取るソケットを含んでおり、前記ソケットは前記ジャック・プラグが前記ソケットに挿入されたことを検出するように動作するディテクタに接続されて、その検出に応答して前記スイッチモジュールを前記第2の状態に入らせる、音声再生モジュール。
  2. 前記信号処理モジュールはさらに、イコライゼーション・フィルタ・モジュールを含み、前記イコライゼーション・フィルタ・モジュールは、前記スイッチモジュールにより、前記スイッチモジュールが前記第1の位置にあるときに前記イコライゼーション・フィルタ・モジュールの伝達関数が前記ラウドスピーカ出力部からの音声を聴取しているリスナに対する機能に対応している第1の状態と、前記イコライゼーション・フィルタ・モジュールの伝達関数が前記ヘッドホン出力部からの音声を聴取しているリスナに対する機能に対応している第2の状態とを選択的に切替可能である、請求項 1 記載の音声再生モジュール。
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