JP3920311B1 - 曲げ加工装置 - Google Patents

Abstract

【課題】
線材の曲げ部分の変形，損傷を確実に防止する。
【解決手段】
線材Ｗの幅方向に相対して内治具１，外治具２が配置され、外治具２が内治具１を支点として回動される。内治具１は、線材Ｗの曲げの内側の側面Ｗａに当接する曲面１１ａと平坦面１１ｂ，１１ｃとが連続して設けられて定位置に固定されている。外治具２は、線材Ｗの曲げの外側の側面Ｗｂに当接する直線状の押圧面２１ｂが設けられている。内治具１，外治具２は、線材Ｗの曲げ部分の厚さ方向への変形を防止する規制面１２ｃ，２１ａ２２ｂが設けられている。
【選択図】 図１

Description

本発明は、テープ状（板状）の線材を幅方向が曲げ径方向と一致するように曲げ加工するための曲げ加工装置に係る技術分野に属する。

最近、電線である平角線（平板線）を角形コイルに巻線する場合のように、テープ状の線材を幅方向が曲げ径方向と一致するように曲げ加工する要請が多くなっている。この曲げ加工は、線材の曲げ部分の内側に圧縮力が作用し外側に引張力が作用するため、線材が曲げ部分で変形，損傷しやすいという特性がある。このため、線材の曲げ部分の変形，損傷を防止することのできる曲げ加工技術の開発が切望されている。

従来、線材の曲げ部分の変形，損傷を防止することを指向した曲げ加工技術としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
特開２００３−１８１５７９号公報 特開２００５−９３８５２号公報 特許文献１，２には、図１０，図１１に示すように、線材Ｗの幅方向に相対して内治具１，外治具２を配置し、内治具１を支点として外治具２を回動させることで、線材Ｗを押圧して曲げ加工する曲げ加工装置が記載されている。

特許文献１に係る曲げ加工装置は、図１０に示すように、内治具１を固定された円形の軸とし外治具２を回転可能なローラとして、線材Ｗの曲げの内側の側面Ｗａに内治具１を当接させ、線材Ｗの曲げの外側の側面Ｗｂの点を外治具２で押圧して曲げ加工するもので、線材Ｗの曲げ部分の表面Ｗｃ，裏面Ｗｄにそれぞれフランジ（図示せず）を当接させて線材Ｗの曲げ部分の変形，損傷を防止するものである。

特許文献２に係る曲げ加工装置は、図１１に示すように、内治具１，外治具２を共回りするクランプ構造として、線材Ｗの両側面Ｗａ，Ｗｂの面を押圧して曲げ加工するもので、線材Ｗに掛かる押圧力を分散させて線材Ｗの曲げ部分の変形，損傷を防止するものである。

特許文献１に係る曲げ加工装置では、曲げ加工の終段階で内治具１から外れた方向に押圧力Ｐが集中する（図１０参照）ため、線材Ｗが内治具１付近で曲げの内側方向へ膨出する変形を生じやすいという問題点がある。また、特許文献２に係る曲げ加工装置では、線材Ｗが内治具１，外治具２に挟込まれ、線材Ｗと内治具１，外治具２との間にあそびがなくなってしまうため、押圧力の応力が線材Ｗの内部に集中してしまい外形的な変形が減少されるものの亀裂が生じやすくなるという問題点がある。

本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、線材の曲げ部分の変形，損傷を確実に防止することのできる曲げ加工装置を提供することを課題とする。

前述の課題を解決するため、本発明に係る曲げ加工装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。

即ち、請求項１では、線材の幅方向に相対して内治具，外治具が配置され、外治具が内治具を支点として回動される曲げ加工装置において、内治具は線材の曲げの内側の側面に当接する曲面と該曲面の両端に連続して設けられて９０度の線材の曲げ角度より小さい角度を形成する２つの平坦面とからなる扇形ブロック体を有し、定位置に固定され、前記扇形ブロック体にフランジが設けられ、該フランジの下面が線材の表面の一部に対面する規制面となり、外治具は線材の曲げの外側の側面に当接する直線状の押圧面が設けられ、該外治具は線材の曲げ部分の厚さ方向への変形を防止する規制面が設けられていることを特徴とする。

この手段では、内治具に曲面と連続して平坦面を設けることで、曲げ加工の終段階で内治具から外れた方向に押圧力が集中するのを回避し、線材が内治具付近で曲げの内側方向へ膨出する変形を生ずるのを防止する。また、外治具に線材に対する押圧力を分散させる直線状の押圧面を設けるとともに、線材と内治具，外治具との間にあそびを確保するために内治具を外治具と共回りしない構造とすることで、押圧力の応力が線材の内部に集中して亀裂が生ずるのを防止する。

また、請求項２では、請求項１の曲げ加工装置において、外治具は線材が供給される線材供給機構の端末に位置して線材供給機構の一部を構成していることを特徴とする。

この手段では、線材を供給する線材供給機構の端末が外治具を兼ねるとともに、線材の重量を支える機能を果たすことができる。特に線材の巻数が増えることに伴う重量の増加により巻層間が開いたり、捩れが発生していたこと等が解消される。

また、請求項３では、請求項１または２の曲げ加工装置において、内治具，外治具の規制面の少なくとも一部は線材に対して進退可能であることを特徴とする。

この手段では、線材を内治具，外治具の間に供給する際に、規制面を後退させ線材の供給路を大きく確保することができる。

また、請求項４では、請求項１〜３のいずれかの曲げ加工装置において、内治具は固定軸に着脱可能に取付けられ、外治具は固定軸に回動可能に嵌合されたスリーブに着脱可能に取付けられていることを特徴とする。

この手段では、内治具，外治具の交換が容易に可能になる。

本発明に係る曲げ加工装置は、内治具に曲面と連続して平坦面を設けることで、曲げ加工の終段階で内治具から外れた方向に押圧力が集中するのを防止し、線材が内治具付近で曲げの内側方向へ膨出する変形を生ずるのを防止する。また、外治具に線材に対する押圧力を分散させる直線状の押圧面を設けるとともに、線材と内治具，外治具との間にあそびを確保するために内治具を外治具と共回りしない構造とすることで、押圧力の応力が線材の内部に集中して亀裂が生ずるのを防止する。この結果、線材の曲げ部分の変形，損傷を確実に防止することができる効果が得られる。また、２つの平坦面が９０度の線材の曲げ角度より小さい角度を形成することで、線材のスプリングバックにより曲げ角度不十分という問題を解決できる。

以下、本発明に係る曲げ加工装置を実施するための最良の形態を図１〜図９に基づいて説明する。

図１〜図６は、本発明に係る曲げ加工装置を実施するための最良の形態の第１例を示すものである。

第１例では、図１に示すように、テープ状の線材Ｗとして電線である平角線を対象とし、線材Ｗをほぼ９０度に曲げ加工して角形コイルに巻線する場合に好適なものを示してある。

第１例は、特許文献１，２に係る曲げ加工装置と同様に、線材Ｗの幅方向に相対して内治具１，外治具２が配置され、内治具１を支点として外治具２が回動されるように構成されている。

内治具１は、扇形ブロック体の内治具本体１１と、内治具本体１１を貫通するフランジ付シャフト１２とからなる。内治具本体１１は、側部に線材Ｗの曲げの内側の側面Ｗａが当接する曲面１１ａ，平坦面１１ｂ，１１ｃが形成されている。曲面１１ａは、線材Ｗの曲げ加工の曲率に対応した曲率に形成され、線材Ｗの曲げの内側の側面Ｗａの曲げ部分が当接する。平坦面１１ｂ，１１ｃは、曲面１１ａの前後にほぼ９０度の角度を介して連続して形成されたもので、線材Ｗの曲げの内側の側面Ｗａの曲げ部分の前後の直状部分が当接する。ただし、後側（線材Ｗの供給の下手側）の平坦面１１ｃは、曲げ加工された線材Ｗのスプリングバックを考慮して、２〜５度程度の角度ａで９０度よりも深く曲げ限界を規制するように設定されている（図６参照）。フランジ付シャフト１２は、内治具本体１１を貫通（曲面１１ａ，平坦面１１ｂ，１１ｃと平行に）する軸部１２ａと、内治具本体１１の上面に当接され曲面１１ａと平坦面１１ｂ，１１ｃの一部との上方に庇形に突出する円板形のフランジ１２ｂとからなる。フランジ１２ｂの庇形に突出した下面は、線材Ｗの表面Ｗｃの一部に対面する規制面１２ｃとなっている。

この内治具１は、図５に示すように、内治具本体１１に挿通される取付ボルト３によって装置機枠等に固定された固定軸４に着脱可能に取付けられている。内治具１のフランジ付シャフト１２の軸部１２ａは、内治具本体１１から固定軸４の内部に延長されて挿通され、固定軸４の外部で図示しないシリンダ等に連結されて昇降されるようになっている。

外治具２は、方形ブロック体の下ブロック２１と、方形板の上板２２とからなる。下ブロック２１は、内治具１に対面する側の上面に長方形の段部が形成されている。下ブロック２１の段部の底面は、線材Ｗの裏面Ｗｄの全部に対面する規制面２１ａとなっている。下ブロック２１の段部の側面は、線材Ｗの曲げの外側の側面Ｗｂを面で押圧する押圧面２１ｂとなっている。上板２２は、下ブロック２１の上面に積層されて下ブロック２１の段部に庇形に突出する庇部２２ａが設けられ、庇部２２ａの下面が内治具１のフランジ付シャフト１２の規制面１２ｃと共通の面上に位置されて線材Ｗの表面Ｗｃの一部に対面する規制面２２ｂとなっている。

この外治具２は、図５に示すように、下ブロック２１，上板２２に共通に挿通される取付ボルト５によって固定軸４に回動可能に嵌合されたスリーブ６に着脱可能に取付けられている。スリーブ６は、外側に嵌合されたギア７を介して回転駆動されるようになっている。

また、この外治具２には、線材Ｗを直状に案内して内治具１付近まで送込む線材供給機構８が隣接されている。線材供給機構８は、内部に線材Ｗを直線状に供給する供給溝８１が設けられ、供給溝８１の端部８２がＬ字形にカットされて内治具２に近接されている。従って、外治具２が回動前位置（曲げ加工前位置）にあるときには、図３，図４に示すように、材線材供給機構８と外治具２とが直状に配列され、線材Ｗが線材供給機構８の供給溝８１から外治具２の下ブロック２１の段部と上板２２の庇部２２ａとの間にまで線材Ｗが直線状に供給されるようになっている。

第１例の曲げ加工の前には、図４，図５に示すように、材線材供給機構８と外治具２とが直状に配列されて、外治具２にまで線材Ｗが供給された状態となる。

このとき、線材Ｗの曲げの内側の側面Ｗａは、内治具１の内治具本体１１の前側（線材Ｗの供給の上手側）の平坦面１１ｂに当接されている。また、線材Ｗの曲げの外側の側面Ｗｂは、外治具２の下ブロック２１の押圧面２１ｂに当接されている。また、線材Ｗの表面Ｗｃは、内治具１のフランジ付シャフト１２の規制面１２ｃと外治具２の上板２２の規制面２２ｂとに当接されている。また、線材Ｗの裏面Ｗｄは、外治具２の下ブロック２１の規制面２１ａに当接されている。なお、線材Ｗに対するこれ等の当接については、わずかなクリアランスが確保されて線材Ｗを強制的に拘束する状態にはなっていない。

なお、線材Ｗを線材供給機構８から内治具１，外治具２の間に供給する際には、内治具１のフランジ付シャフト１２を上昇させて、フランジ付シャフト１２の規制面１２ｃを線材Ｗの表面Ｗｃから離間させる。この結果、線材Ｗの材線材供給機構８から内治具１，外治具２の間へ供給がスムースになる。特に、先の曲げ加工で線材Ｗの曲げの内側に微小な変形が生じている場合に有効である。線材Ｗが外治具２にまで供給された後には、内治具１のフランジ付シャフト１２を降下させる。

この後、図６に示すように、ギア７からの駆動で回動するスリーブ６と一体的に外治具２を内治具１を支点として回動させることで、線材Ｗの曲げ加工が実施される。即ち、線材Ｗが内治具１の内治具本体１１の曲面１１ａに沿ってほぼ９０度に曲げられることになる。

このとき、外治具２の下ブロック２１の押圧面２１ｂが線材Ｗの曲げの外側の側面Ｗｂを面で押圧するため、線材Ｗの一部分への押圧力が集中が避けられる。また、内治具１，外治具２で線材Ｗを挟付けて共回りすることがないため、線材Ｗと内治具１，外治具２との間にあそび（特に、前述した線材Ｗの周囲のクリアランスとも相まって）が確保される。従って、押圧力の応力が線材Ｗの内部に集中して亀裂が生ずることがなくなる。また、線材Ｗの曲げ加工の終段階で内治具１から外れた方向の押圧力が集中しやすい位置には、内治具１の内治具本体１１の後側の平坦面１１が配置されている。従って、線材Ｗが内治具１付近で曲げの内側方向へ膨出する変形が生ずることがなくなる。

また、線材Ｗの表面Ｗｃが内治具１のフランジ付シャフト１２の規制面１２ｃと外治具２の上板２２の規制面２２ｂとに当接され、線材Ｗの裏面Ｗｄが外治具２の下ブロック２１の規制面２１ａに当接されているため、線材Ｗの厚さ方向の変形も確実に防止される。また、線材Ｗの曲げ部分の前側で内治具１の内治具本体１１の前側の平坦面１１ｂと線材供給機構８の供給溝８１とが押圧に伴う線材Ｗの反発力を受止めているため、線材Ｗの曲げ部分の周囲での変形も確実に防止される。

線材Ｗの曲げ加工の完了の後には、ギア７からの駆動で回動するスリーブ６と一体的に外治具２を内治具１を支点として逆方向へ回動させることで、図４，図５に示す状態に復帰される。そして、線材Ｗが新たに一定長供給されることになる。即ち、外治具２は、線材供給機構８の端末に位置して線材供給機構８の一部を構成していることになる。従って、外治具２，線材供給機構８周りの構造が簡素化され、安価，容易な製造が可能になる。

なお、内治具１が固定軸４に着脱可能に取付けられ、外治具２がスリーブ６に着脱可能に取付けられているため、線材Ｗの寸法や曲げ加工の角度等に対応して内治具１，外治具２を簡単に交換することができる。従って、高度の汎用性が備えられている。
寸法に合わせて簡単に交換する

図７〜図９は、本発明に係る曲げ加工装置を実施するための最良の形態の第２例を示すものである。

第２例では、第１例の内治具１のフランジ付シャフト１２を省略して、内治具本体１１の上端縁にフランジ１１ｄを設けている。そして、フランジ１１ｄの下面は、線材Ｗの表面Ｗｃの一部に対面する規制面１１ｅとなっている。また、第１例の内治具１のフランジ付シャフト１２に代えて、固定軸４に昇降するスライドシャフト１３を挿通している。スライドシャフト１３は、上部に内治具本体１１の曲面１１ａ，平坦面１１ｂ，１１ｃに当接するスライド片１３ａが設けられ、スライド片１３ａの上面が線材Ｗの裏面Ｗｄの一部に対面する規制面１３ｂとなっている。従って、外治具２の下ブロック２１の規制面２１ａは、線材Ｗの裏面Ｗｄの全部ではなく一部に対面するようになっている。

第２例では、基本的に第１例と同様の作用，効果が奏される。第１例の内治具１のフランジ付シャフト１２の動作，機能については、スライドシャフト１３が代替えしている。

第２例によると、内治具１のスライドシャフト１３が内治具本体１１と固定軸４に収容された格好となって、内治具１の上部周りの構造が簡素化される利点がある。

前述の本発明に係る曲げ加工装置を実施するための最良の形態において、線材Ｗの周囲の確保されるクリアランスについては、線材Ｗが銅系材質で幅８ｍｍ，厚さ１ｍｍの場合、厚さ方向に０．０５ｍｍ，幅方向に０．２０ｍｍとするのが好ましい。また、線材Ｗが同寸法の場合の前述のスプリングバックを考慮する角度ａについては、２度が好ましい。

本発明に係る曲げ加工装置は、電線である平角線をほぼ９０度に曲げ加工して角形コイルに巻線する場合の外に、線材Ｗの曲げ加工一般に広範に適用することができるものである。

本発明に係る曲げ加工装置を実施するための最良の形態の第１例の簡略化した斜視図であり、（Ａ）に曲げ加工の前段階が示され、（Ｂ）に曲げ加工の完了段階が示されている。 図１の詳細な平面図である。 図２の横断面図である。 図２の線材の供給状態図である。 図４のＸ−Ｘ線拡大断面図である。 図２の曲げ加工状態図である。 本発明に係る曲げ加工装置を実施するための最良の形態の第２例の簡略化した斜視図であり、（Ａ）に曲げ加工の前段階が示され、（Ｂ）に曲げ加工の完了段階が示されている。 図７の詳細な平面図である。 図８のＹ−Ｙ線拡大断面図である。 特許文献１に係る曲げ加工装置の簡略平面図である。 特許文献２に係る曲げ加工装置の簡略平面図である。

符号の説明

１ 内治具
１１ 内治具本体
１１ａ 曲面
１１ｂ，１１ｃ 平坦面
１２ フランジ付シャフト
１２ｃ 規制面
１３ スライドシャフト
１３ｂ 規制面
２ 外治具
２１ 下ブロック
２１ａ 規制面
２１ｂ 押圧面
２２ 上板
２２ａ 規制面
４ 固定軸
６ スリーブ
８ 線材供給機構
Ｗ 線材
Ｗａ 側面（曲げの内側の）
Ｗｂ 側面（曲げの外側の）
Ｗｃ 表面
Ｗｄ 裏面

Claims (4)

1. 線材の幅方向に相対して内治具，外治具が配置され、外治具が内治具を支点として回動される曲げ加工装置において、
   内治具は線材の曲げの内側の側面に当接する曲面と該曲面の両端に連続して設けられて９０度の線材の曲げ角度より小さい角度を形成する２つの平坦面とからなる扇形ブロック体を有し、定位置に固定され、前記扇形ブロック体にフランジが設けられ、該フランジの下面が線材の表面の一部に対面する規制面となり、
   外治具は線材の曲げの外側の側面に当接する直線状の押圧面が設けられ、該外治具は線材の曲げ部分の厚さ方向への変形を防止する規制面が設けられていることを特徴とする曲げ加工装置。
2. 請求項１の曲げ加工装置において、外治具は線材が供給される線材供給機構の端末に位置して線材供給機構の一部を構成していることを特徴とする曲げ加工装置。
3. 請求項１または２の曲げ加工装置において、内治具，外治具の規制面の少なくとも一部は線材に対して進退可能であることを特徴とする曲げ加工装置。
4. 請求項１〜３のいずれかの曲げ加工装置において、内治具は固定軸に着脱可能に取付けられ、外治具は固定軸に回動可能に嵌合されたスリーブに着脱可能に取付けられていることを特徴とする曲げ加工装置。