JP3920136B2 - 芳香族ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents

芳香族ポリカーボネートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は芳香族ポリカーボネートの固相重合方法に関する。より詳細には固相重合中に結晶性芳香族ポリカーボネートの粒子同士が融着しにくく、溶媒を使用せずに、かつ固相重合速度が速い芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは本来非晶性を特色とするポリマーであるが、1)加熱結晶化法、2)溶媒結晶化法、3)溶融状態の芳香族ポリカーボネートに剪断を付与する結晶化方法等によって結晶性芳香族ポリカーボネートを製造することが可能である。特公平7−094546号公報では加熱結晶化法として芳香族ポリカーボネートをそのガラス転移温度(Tg)以上でかつ流動し始める温度未満の温度で加熱保持する方法が開示されている。加熱結晶化法は、このように単にある温度以上で芳香族ポリカーボネートを保持するだけであるが、この方法を造粒した若しくは分級した芳香族ポリカーボネートの粒状体に適用した場合、処理中に芳香族ポリカーボネートの粒状体の融着が起こり好ましくない。溶媒結晶化法としては同じく特公平7−094546号公報にて、芳香族ポリカーボネートを溶媒に溶解させた後析出させ結晶化させる方法、または芳香族ポリカーボネートのオリゴマーに対する溶解力の小さな溶媒、例えばアセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等に浸漬する方法が示されている。この方法では短時間での結晶化が可能であるものの、芳香族ポリカーボネートの固有粘度が高くなると結晶化の進行が困難となり、その後の熱処理や固相重合で非晶部分が溶解し融着してしまう危険性が大きい。また粒径が0.1mm未満の微粉末が発生しやすい。
【0003】
更に溶融状態の芳香族ポリカーボネートに剪断を付与する結晶化方法としては米国特許第5,864,006号に、芳香族ポリカーボネートをガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度範囲で加熱保持し剪断力をかけて配向させ、結晶化する方法が示されている。この方法では比較的結晶化度が高い結晶性芳香族ポリカーボネートを製造することが可能であるが、DSCにおける結晶融点が幅広く低温度域にわたっているため、その後の固相重合工程中に融着してしまう危険性が残る。
【0004】
これらの問題点を回避すべく芳香族ポリカーボネートの粉粒体をその融点〜融点+20℃に加熱した不活性気体、あるいは膨潤性気体で流動させて固相重合する方法が登録3165949号に教示されている。この方法によって重合性良く高重合度の芳香族ポリカーボネートが得られるが、粉粒体の表面は一部とはいえ融解しているので、まだ融着の問題が存在している。また実施例においては溶媒を使用しているため、その溶媒を回収・精製する必要があり付帯設備の大型化を招き、製造される芳香族ポリカーボネートのコストアップにつながる。また溶媒が系外に漏れた場合の環境汚染の懸念もある。そのため融着を起こさずに、また溶媒を使用することなく重合速度の速い固相重合方法に対する強い要望があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記のような従来法の問題を解消し、加熱窒素で芳香族ポリカーボネートを流動させて粉体圧を無くしポリマー同士の接触を極力軽減させ、処理中に融着させることなく結晶化度を高めることと、圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートを使用することで融点以下の温度でも短時間で高重合度化が可能な固相重合方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は主たる繰り返し単位が下記式(1)
【0007】
【化3】
Figure 0003920136
【0008】
[上記式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、Wは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数3〜15のシクロアルキレン基、炭素数3〜15のシクロアルキリデン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基又はスルホン基である。]
で表わされる固有粘度[η]が0.05〜0.38の結晶性芳香族ポリカーボネートを圧縮造粒した後、110℃〜圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートの融点未満の温度範囲に加熱した不活性気体で流動させて結晶化と固相重合を同時に実施する芳香族ポリカーボネートの製造方法についてである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の方法における結晶性芳香族ポリカーボネートは主たる繰り返し単位が下記式(1)
【0010】
【化4】
Figure 0003920136
【0011】
[上記式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、Wは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数3〜15のシクロアルキリデン基、炭素数3〜15のシクロアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基又はスルホン基である。]
で表わされる。上記式(1)中、R1,R2,R3,R4は具体的には水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;ベンジル基等の炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。Wは具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基;エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基等の炭素数2〜20のアルキリデン基;1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の炭素数3〜15のシクロアルキレン基;シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基等の炭素数3〜15のシクロアルキリデン基;エーテル基、スルホキシド基、スルフィド基、スルホン基などが挙げられる。
【0012】
なかでもより好ましくは主に下記式(2)
【0013】
【化5】
Figure 0003920136
【0014】
で表される繰り返し単位からなる結晶性芳香族ポリカーボネートであることである。また本発明においては主たる繰り返し単位が上記式(1)または(2)で表されることが好ましいが、本発明の効果に影響がない範囲内(例えば30モル%以下)で他の繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネートを共重合してもよい。
【0015】
これらの結晶性芳香族ポリカーボネートは、好ましくは芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを、より好ましくはさらにエステル交換触媒の存在下、加熱溶融反応させる溶融重合法により製造される。
【0016】
本願発明で使用される該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと略す。)、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等およびその芳香環に例えばアルキル基、アリール基等が置換されたものが好ましくあげられる。これらは単独で用いても2種以上併用しても良い。なかでもビスフェノールAを用いることがより好ましい。
【0017】
また本発明においては本発明の効果に影響がない範囲内(例えば30モル%以下)で他の繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネートを共重合することができる。その具体的化合物としてはヒドロキノン、レゾルシン、4、4’−ジヒドロキシビフェニル、4、4’−ジヒドロキシビフェニルケトン、α、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0018】
また、該炭酸ジエステルとしては例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートを用いることがより好ましい。
【0019】
またエステル交換触媒としては通常公知のものであれば特に限定はないが、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、チタン系化合物、錫系化合物、およびゲルマニウム系化合物等の金属含有化合物、ならびに含窒素塩基性化合物、含燐塩基性化合物からなる群から少なくとも1種選ばれる化合物を用いることが好ましい。このような原料を用いて溶融重合法として公知な製造方法にて非晶性芳香族ポリカーボネートを製造することができる。
【0020】
またその後に非晶性芳香族ポリカーボネートの結晶化を行うが、既に公知の加熱結晶化法、溶媒結晶化法、溶融状態下で剪断を付与する方法などが挙げられ、特に限定はない。しかし溶媒結晶化法の際は粒子径が0.1mm未満の微粉末の発生を極力少なくなるように、溶媒の種類等の条件について慎重な選択を行うことが好ましい。この様にして非晶性芳香族ポリカーボネートの結晶化し、結晶性芳香族ポリカーボネートを製造することができる。粒子径0.1mm未満の微粉末が多量に発生すると、工程上のトラブルが発生しやすくなる。すなわち具体的には、閉塞、磨耗、偏析、付着・凝集、粉塵飛散、フラッシングなどである。また特に微粉末が重合槽内で舞うと、微粉末の滞留時間が長くなり得られる芳香族ポリカーボネートの色相や組成に影響を与え、その機械物性の品質にも悪影響を及ぼすことがある。さらに微粉末量が多いと、固相重合中に圧縮粒状物同士の融着、固相重合用反応槽への圧縮粒状物の融着があり好ましくないことがある。
【0021】
本発明においては固有粘度[η]が0.05〜0.38の結晶性芳香族ポリカーボネートを使用する。固有粘度の好ましい範囲は0.1〜0.25である。なお、本発明で言う固有粘度[η]は、ジクロロメタン溶液にて温度20℃でウベローデ型粘度計を用いて測定した粘度から算出される値である。固有粘度[η]が0.38を越えると結晶化速度が限りなく0に近付き、結晶性芳香族ポリカーボネートを製造するのが困難になる。逆に[η]が0.05を下回る場合はガラス転移温度(Tg)が極端に低くなり加熱するとすぐに流動を開始し、融着を起こしてしまうので好ましくない。
【0022】
本発明の結晶性芳香族ポリカーボネートは結晶化度が比較的低いものから結晶化度の高いものまでを指し、特に厳密な結晶化度の限定はないが、結晶化度が5%以上20%未満のものが好ましく使用される。結晶化度が5%未満の場合は結晶性芳香族ポリカーボネートがガラス転移温度以上の温度下ではたちまち融着してしまうことが多い。逆に結晶化度が20%以上の場合は融着の危険性は小さいが、固相重合時の初期の重合速度が低下するといった問題が生じ好ましくないことがある。
【0023】
さらに本発明においては得られた結晶性芳香族ポリカーボネートを圧縮造粒する。ここで言う圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートとは結晶性芳香族ポリカーボネートに圧力を印加して強制的に球状、板状、あるいは破砕形状等に成形したものを指す。圧縮造粒する原料となる結晶性芳香族ポリカーボネートは圧縮造粒の工程の前に粉砕しておくことが圧縮造粒する際の圧縮ムラを軽減させるという点で好ましい。圧縮造粒を行う方法としては所望の物性を維持し、かつその後におこなう固相重合工程において破壊されないような方法であれば特に制限はない。具体的には、一般的な造粒工程で用いられている方法が好ましく挙げられ、押出し造粒法、圧縮造粒法などがより好ましく挙げられる。押出し造粒法としてスクリュー方式、ロール型円筒ダイス方式、ロール型円盤ダイス方式などが例示される。また圧縮造粒法として圧縮ロール方式、ブリケッティング方式、打錠方式等が挙げられる。より具体的には錠剤成形機、圧縮ロール機、油圧プレス機、ローラーコンパクター、ブリケッティングマシン、ペレタイザーおよび打錠機からなる群から選ばれる少なくとも一種類が使用される機器を用いて圧縮造粒するのが好ましい。
【0024】
圧縮造粒を行う際の圧縮圧力は通常は1MPa〜700MPaが好ましい。1MPaより小さいと圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートを輸送、供給・排出時に多量に微粉末を伴い好ましくないことがある。逆に700MPaより大きいと圧縮造粒に用いる機器と結晶性芳香族ポリカーボネートの摩擦熱によって結晶性芳香族ポリカーボネートが溶融しやすく、成形不良を引き起こしやすいことがある。好ましくは10MPa〜500MPaである。さらに好ましくは50MPa〜300MPaである。
【0025】
また本発明における圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートは、その粒子径が0.5mm以上5mm未満であることが好ましく、1mm以上〜3mm以下であることがより好ましい。粒子径が0.5mmを下回る場合、加熱窒素による同伴の問題が生じるため好ましくないことがある。ここで同伴とは圧縮造粒した芳香族ポリカーボネートが加熱窒素とともに反応器外に流れ出てしまう現象を指し、重合工程におけるロスとなる。また粒子径が5mm以上では流動に必要な不活性気体の最小限の線速度が大きくなること、結晶化度のむらが生じること、固相重合速度が極端に低下する等の現象が現れることがあり好ましくない。
【0026】
また本発明においては圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートにおいては芳香族ヒドロキシ末端基量(a)とアリールカーボネート末端基量(b)の合計に対するヒドロキシ末端基量(a)の比率a/(a+b)が0.2〜0.7であることが好ましい。より好ましくは0.3〜0.6である。該比率がこの範囲を下回ると固相重合の際に炭酸ジエステルまたは低分子量の芳香族ポリカーボネートの脱離反応が圧倒的に多くなり、その結果固相重合速度が遅くなる問題が起こることがあり好ましくない。該比率がこの範囲を超えると、最終的に得られる芳香族ポリカーボネートの全末端基中の芳香族ヒドロキシ末端基が多くなり、溶融時に着色しやすい若しくは加水分解により分子量が低下しやすいなどの問題が生じることがあり好ましくない。
【0027】
本発明で芳香族ポリカーボネートを流動させるための気体としては不活性気体が選択されることが好ましい。かかる不活性気体としては窒素、二酸化炭素、ならびにヘリウムおよびアルゴン等の希ガスからなる群から選ばれる少なくとも一種類の気体が使用されるが、これらの中で特に窒素が好ましい。ここで例えば流動させるための気体として空気や酸素を使用した場合、芳香族ポリカーボネートが酸化され着色が著しくなることがあり好ましくない。不活性気体の加熱する温度としては110℃〜圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートの融点未満である必要があり、この温度範囲に加熱した不活性気体で流動させることにより圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートはさらに結晶化度を上昇させかつ固相重合も同時に進行し重合度を高めていく。さらに好ましくは上記温度範囲の中で低温度域は結晶化が進行しやすいので、結晶化度が5%〜20%未満の結晶性芳香族ポリカーボネートを用いて、圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートの結晶化度を20%以上にする。こうして結晶化度が20%以上になると融着が非常に起こりにくくなる。そのため、その後170℃〜250℃未満の温度範囲に加熱した不活性気体で流動させて固相重合をスムーズに行うことができる。非晶性芳香族ポリカーボネートから結晶性芳香族ポリカーボネートを製造する際に行う結晶化の方法について述べたが、かかる結晶化方法では融着が発生しにくい結晶化度20%以上、かつ微粉末が発生しにくい等のプロセス上の問題が起こりにくい結晶性芳香族ポリカーボネートを得ることが困難である。
【0028】
ゆえに結晶化を主に行うに際しては110℃以上170℃未満、固相重合を主に行うに際しては170℃以上250℃未満で行うのが好ましく、その範囲以下の温度では結晶化あるいは高重合度化が進行しない問題が発生しやすく、それ以上の温度では融着が生じやすいために好ましくない。固相重合温度は登録3165949号公報に記述があるように、結晶性芳香族ポリカーボネートの融点以下の条件で通常の手法にて固相重合を実施すると重合度の上昇が緩やかになってしまうが、本発明のように圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートを用いて重合することによって重合速度が飛躍的に増大する。
【0029】
さらに本発明では圧縮造粒された結晶性芳香族ポリカーボネートを不活性気体で流動させるが、ここでいう流動とはある瞬間不活性気体から受ける浮力が圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートに働く重力を上回り、沈降と浮上を連続的に繰り返し、絶えず動いている状態のことを指す。
【0030】
線速度に関しては装置の様式や結晶性芳香族ポリカーボネートの圧縮造粒物の形状によっても異なるが、該圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートが最低限流動し、かつ不活性気体に同伴・排出されない範囲が選択される。そのような範囲として0.1m/s〜10m/s未満が好ましく、2m/s〜5m/s未満がさらに好ましく選択される。線速度が0.1m/s未満の場合、不活性気体が流通しない、または不活性気体は流通するものの圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートの流動性が失われたチャネリングと呼ばれる状態に陥ってしまい好ましくない。逆に線速度が10m/s以上になると不活性気体への同伴が生じることや、該圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネート同士の衝突、あるいは該圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートと装置内壁との衝突により微粉末化が起こり好ましくない。
【0031】
更に本発明における結晶化と固相重合は個別に実施することが可能であると共に結晶化と固相重合を連続プロセスとして実施することが可能である。
【0032】
本発明方法のより具体的な実施形態として以下の方法を好ましく例示できる。
(I)1軸または2軸の押し出し機中、溶融状態下で剪断を付与して結晶化した結晶性芳香族ポリカーボネートをローラーコンパクターを用いて圧縮造粒する。さらにこの圧縮造粒したものを流動槽型乾燥機中に充填し、加熱窒素でかかる流動槽型乾燥機中で流動化して結晶化度と重合度を増加させる。
(II)加熱結晶化法で結晶化した結晶性芳香族ポリカーボネートをブリケッティングマシーンを用いて圧縮造粒する。さらに圧縮造粒したものを流動槽型乾燥機中に充填し、加熱窒素でかかる流動槽型乾燥機中で流動化して結晶化度と重合度を増加させる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、従来融着しやすかった結晶化度が5%程度の結晶性芳香族ポリカーボネート、若しくはDSCにおける結晶融点(Tm)が幅広く低温度域にわたっている結晶性芳香族ポリカーボネートを、溶媒を用いることなく、融着を起こしにくい状態でかつ従来より速い固相重合速度で重合度を増加させることができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
1)芳香族ポリカーボネートの固有粘度[η]
ジクロロメタン溶液中、20℃でウベローデ粘度管にて測定した。
2)ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、結晶化度
デュポンインスツルメント 910DSCにより、昇温速度20℃/分で測定してガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)を求めた。また結晶化度は結晶融解のエンタルピー(ΔHm)を用いて計算により求めた。即ち結晶融解に対応するDSC曲線のピーク部分の面積よりΔHmを算出した。得られたΔHmと、結晶化度100%の芳香族ポリカーボネートの結晶融解エンタルピーの値、すなわちジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス;パートB:ポリマー・フィジクス(J.Polym.Sci.、:B:Polym.Phys.)1979年第25巻1511〜1517ページ記載の109.8J/g(ビスフェノールAに由来する繰り返し単位のみからなる芳香族ポリカーボネートについての値)から(ΔHm/109.8J/g)×100%として計算した。
3)線速度
流量計にて不活性気体の流量を測定し、固相重合槽の断面積で除して線速度を算出した。
【0035】
[実施例1]
(非晶性芳香族ポリカーボネートの合成例)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン228重量部、ジフェニルカーボネート223重量部及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.009重量部及びビスフェノールAジナトリウム塩0.00014重量部を攪拌装置、減圧装置及び蒸留塔等を備えた反応装置に仕込み、180℃窒素雰囲気下で30分攪拌し溶解した。次いで、昇温と同時に徐々に減圧下とし、発生するフェノールを留去しながら反応させ、最終的に220℃、30mmHgとした。この時点で、得られた芳香族ポリカーボネートの固有粘度[η]は0.17、ガラス転移温度(Tg)は114℃であった。
(非晶性芳香族ポリカーボネートの結晶化例)
上で得られた非晶性芳香族ポリカーボネートを粉砕しサーモプラスチックインダストリー社製1軸ルーダーNo.6325のホッパーに供給し、ルーダーのフィード部を80℃、スロート部を180℃、ダイブロックを200℃に維持した状態でスクリュー回転数を30rpm、フィード量を毎分60gの条件で押し出した。得られた結晶性芳香族ポリカーボネートの[η]=0.15、Tg=114℃、Tm=222.5℃、ΔHm=11.3J/g、結晶化度=10.3%であった。
【0036】
(結晶性芳香族ポリカーボネートの圧縮造粒と固相重合)
上で得られた結晶性芳香族ポリカーボネートを粒径0.5mm未満に粉砕したものをフロイント産業株式会社製ローラーコンパクターTF−MINI(圧縮ロール径100mm×幅35mm)のホッパーに供給し、圧縮線圧2t/cm、10Kg/時で押し出して板状の圧縮造粒物とした。これを2〜3mmに粉砕・分級し、その粒子径を2〜3mmに揃え、40gを内径60mm、高さ200mmの円柱型ガラス製流動加熱機に充填させた。これに150℃の加熱窒素を線速度1.4m/sで流通させて流動状態を形成し1時間結晶化を実施したところ固有粘度[η]0.17、融点224.7℃、ΔHm=28.3J/g、結晶化度25.8%の結晶性芳香族ポリカーボネートを得た。結晶化処理後、圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートに融着は全く見られず極めて良好な流動性を有していた。次いで圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートをガラス製流動加熱機に入れたまま220℃の加熱窒素を線速度1.4m/sで流通させて流動状態を形成し固相重合を6時間実施したところ固有粘度[η]0.50、粘度平均分子量Mv=22000の芳香族ポリカーボネートを得た。固相重合後、融着は全く見られず極めて良好な流動性を有していた。
【0037】
[比較例1]
加熱窒素の線速度を0.05m/sに変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートははじめは浮遊、流動化したものの開始後10分でチャネリングを起こし、以後重合槽中で固定層のままであり、流動していなかった。更に結晶化処理後に芳香族ポリカーボネートチップ同士が軽度の融着を起こしていることが確認された。なおチャネリングとは不活性気体は流通しているものの、圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートが流動していない現象を表している。
【0038】
[比較例2]
実施例1の非晶性芳香族ポリカーボネートの結晶化例で得られた結晶性芳香族ポリカーボネートを2〜3.35mmに粉砕、分級したものを、圧縮造粒しないでガラス製流動乾燥機に入れたまま220℃の加熱窒素を線速度1.4m/sで流通させて流動状態を形成し固相重合を6時間実施したところ固有粘度[η]=0.28、粘度平均分子量Mv=11000にしか到達しなかった。

Claims (5)

  1. 主たる繰り返し単位が下記式(1)
    Figure 0003920136
    [上記式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、Wは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数3〜15のシクロアルキレン基、炭素数3〜15のシクロアルキリデン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基又はスルホン基である。]
    で表わされる固有粘度[η]が0.05〜0.38であり、結晶化度が5%〜20%未満の結晶性芳香族ポリカーボネートを圧縮造粒した後、110℃〜170℃未満の温度範囲に加熱した不活性気体で流動させて結晶性芳香族ポリカーボネートの結晶化度を20%以上にした後、170℃〜250℃未満の温度範囲に加熱した不活性気体で流動させて固相重合を実施する芳香族ポリカーボネートの製造方法。
  2. 該結晶性芳香族ポリカーボネートが主に下記式(2)
    Figure 0003920136
    で表される繰り返し単位からなる請求項1に記載の製造方法。
  3. 該圧縮造粒した結晶性芳香族ポリカーボネートの粒子径が0.5〜5mm未満である請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  4. 該加熱した不活性気体の線速度が0.1m/s〜10m/s未満である請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 該不活性気体が窒素であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
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