JP3995544B2 - 芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、圧縮造粒において芳香族ポリカーボネート粉粒体を再利用して、芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造収率および圧縮破壊強度を上げる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは、透明性、耐熱性、機械物性に優れた材料として、従来よりCD(コンパクトディスク)、光ディスク、レンズ等の光学用途や、エンジニアリングプラスチックとして、自動車分野、電気電子用途、各種容器等、様々な分野で利用されている。かかる芳香族ポリカーボネートの製造方法としては、ホスゲンと芳香族ジヒドロキシ化合物を水および水と混合しない溶剤の界面で重合させる界面重合法、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換触媒の存在下に加熱溶融反応させる溶融重合法等が利用されている。
【0003】
一方、低分子量非晶性芳香族ポリカーボネート(これらはポリカーボネートのオリゴマーあるいはプレポリマーと称されることがある)を結晶化および粉粒化させた後、これを真空下あるいは不活性ガス流通下において固相で重合させて高分子量のポリカーボネートを製造する方法もよく知られている。例えば、特開平1−158033号公報、特開平3―223330号公報では、低分子量非晶性ポリカーボネートを結晶化させる際に有機溶剤等の結晶化溶剤を使用する方法、および加熱により結晶化させる方法に関する記載がある。また低分子量非晶性芳香族ポリカーボネートの溶融物に剪断をかけて結晶化させる方法がWO98/45351に開示されている。これらのいずれかの結晶化方法で得られた低分子量結晶性芳香族ポリカーボネートを固相重合によって高分子量化する技術が先述の特開平1−158033号公報、特開平3―223330号公報、WO98/45351に開示されている。
【0004】
上記の溶融重合と固相重合とを組み合わせて高分子量のポリカーボネートを製造する重合方法は、色相、成形性が良好な高分子量の芳香族ポリカーボネートが得られるという利点があることが知られるが、得られた芳香族ポリカーボネート粉粒体の輸送において、芳香族ポリカーボネート粉粒体の破砕により生じる微粉が静電気力または液架橋によって配管内でスケーリングを起こす、機器の内壁に多量に付着するという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、芳香族ポリカーボネート粉粒体の圧縮破壊強度を上昇させ、輸送における粉粒体の破砕および微粉の生成を減少させる芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは芳香族ポリカーボネート粉粒体の圧縮破壊強度を上昇させる造粒方法について鋭意検討した結果、以下方法で圧縮造粒することで実現できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち本発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融重合したもの、または溶融重合後に固相重合したものである、固有粘度[η]が0.05〜0.38の結晶性もしくは非晶性の芳香族ポリカーボネートを圧縮造粒して芳香族ポリカーボネート粉粒体を製造する際に、粒径12mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)を循環し、再度固有粘度[η]が0.05〜0.38の結晶性もしくは非晶性の芳香族ポリカーボネートの非圧縮造粒物と混合して、圧縮造粒を繰り返して、芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)を得る芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法について詳述する。本発明の芳香族ポリカーボネート粉粒体は、非晶性芳香族ポリカーボネート、結晶性芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネート粉粒体の順に製造する方法若しくは非晶性芳香族ポリカーボネートから直接芳香族ポリカーボネート粉粒体を製造する方法が好ましい。
【0009】
本発明の非晶性芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合性化合物から製造される。さらに具体的には芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換触媒の存在下加熱溶融反応させる溶融重合法による。
【0010】
本発明においては、非晶性芳香族ポリカーボネートとして、固有粘度[η]が0.05〜0.38のオリゴマーが好ましく使用できる。さらに好ましい固有粘度の範囲は0.10〜0.30であり、最も好ましいのは0.12〜0.25の範囲である。
【0011】
結晶性芳香族ポリカーボネートを製造するには、得られた非晶性芳香族ポリカーボネートを結晶化させる。その結晶化方法としては1)加熱処理により結晶化させる加熱結晶化法、2)結晶化溶剤によって結晶化させる溶剤結晶化法(特開平01―58033号公報、特開平03―223330号公報に記載)、3)加熱処理と剪断処理を同時に行う事により結晶化させる加熱剪断結晶化法(WO98/45351に記載)が開示されているが、本発明ではスケーリングを起こさず、かつ静電気発生を抑えて輸送するために、第3成分である有機溶剤等の結晶化溶剤を用いずに、加熱結晶化法または加熱剪断結晶化法によって、結晶性芳香族ポリカーボネートを製造することが好ましい。
【0012】
具体的には加熱結晶化法は、非晶性芳香族ポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)以上かつ融点未満の温度範囲に保持して行う。この温度が非晶性芳香族ポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)未満の温度では結晶化はほとんど進行せず、融点以上の温度では結晶が融解してしまう。好ましい結晶化処理温度は120〜220℃であり、さらに好ましくは160〜200℃であり、最も好ましくは170〜190℃である。加熱時間は、非晶性芳香族ポリカーボネートの分子量、ガラス転移温度(Tg)、量に依存するが0.1〜50時間が好ましい。
【0013】
また加熱処理と剪断処理を同時に行うことにより結晶化させる加熱剪断結晶化法では、好ましくは例えば1軸ルーダーを用いて120〜220℃、さらに好ましくは160〜200℃、最も好ましくは170〜190℃の温度範囲で非晶性芳香族ポリカーボネートを加熱し溶融状態とし、さらに回転数を0rpmより大きく30rpm未満に設定し、滞留時間を1〜20分の範囲になるようにして溶融状態で剪断をかけることにより結晶化する。該加熱剪断結晶化法では、結晶化を促進するために、特開2001−11171号公報に記載されているように、少量の結晶性芳香族ポリカーボネートを結晶核として添加してもよい。
【0014】
本発明における結晶性芳香族ポリカーボネートの結晶化度としては10%〜70%であることが好ましい。結晶化度が10%未満では固相重合中に結晶性芳香族ポリカーボネート同士が融着する可能性が高くなり好ましくないことがあり、結晶化度が70%を越えるものは製造が難しくなることがあり、および/または結晶性芳香族ポリカーボネートが崩れ易くなり微粉および静電気を発生して輸送配管内でスケーリングを起こし易くなるため、好ましくないことがある。該結晶性芳香族ポリカーボネートの結晶化度は15〜50%が好ましく、より好ましくは20〜35%である。さらに得られた結晶性芳香族ポリカーボネートは固有粘度[η]が0.05〜0.38と比較的低分子量になるように製造することが好ましい。さらに好ましい固有粘度の範囲は0.10〜0.30であり、最も好ましいのは0.12〜0.25の範囲である。また比表面積は0.001m2/g以上〜0.2m2/g未満であることが好ましい。好ましくは0.001〜0.19m2/gであり、より好ましくは0.005〜0.17m2/g、最も好ましいのは0.05〜0.15m2/gの範囲である。このような比表面積にするには粉砕機の選択、粉砕の条件、粒径、圧縮条件を適宜調節することで実現できる。
【0015】
本発明における非晶性または結晶性芳香族ポリカーボネートから芳香族ポリカーボネート粉粒体を製造する方法としては、非晶性または結晶性芳香族ポリカーボネートを圧縮造粒する方法が好ましく挙げられる。あらかじめ所定の大きさに粉砕し粉状にした非晶性または結晶性芳香族ポリカーボネートを用いることが好ましい。また好ましくはシート状、タブレット状またはブリケット状に圧縮造粒する製造方法である。シート状の圧縮造粒物は、粉砕機、整粒機および分級機に通して所定の形状・粒子径の結晶化物を得る。該形状は通常フレーク状または多角柱状である。ここで整粒とは粒径を一定値以下に整えることを、分級とは整粒よりさらに細かく一定の値の範囲にまで粒径分布を小さくすることを指す。
【0016】
粉砕機の型式は、特に限定しないが例えばピンローター式粗砕機、ロールブレーカー、フレークブレーカー、ラフブレーカー、ファインブレーカー、ロールグラニュレーター、カリューター、オシュレイティング・グラニュレーター、フレーククラッシャー、トーネードミル、フラッシュミル、ハンマークラッシャー、フェザーミル、フィッツミル、ジョークラッシャなどが挙げられる。なかでもハンマークラッシャーなどの衝撃式破砕機が好ましい。また分級機は特に限定しないが例えば振動ふるい機、強制攪拌式ふるい機、超音波振動ふるい機などが挙げられる。
【0017】
本発明で得られる芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)の平均粒径は通常0.5mm〜30mmであることが好ましい。0.5mmより小さいと固相重合中に芳香族ポリカーボネート粉粒体同士の融着等が見られ好ましくないことがあるばかりか、不活性ガスを用いるタイプの固相重合装置においては微粉が舞い上がり均一な重合物を得ることが出来ない。また、輸送中に静電気を発生し易くなるため静電気付着による閉塞が起こり易くなり、さらに、輸送配管等の壁面への液架橋付着による閉塞も起こりやすくなる。逆に30mmより大きいと固相重合速度が低下して好ましくないことがあり、輸送効率が低下することがある。よって好ましい平均粒子径は1.0mm〜15mm、さらに好ましくは1.5mm〜10mmの範囲である。
【0018】
またシート状、ブリケット状の圧縮造粒物を製造するときの圧縮線圧力は、1.0〜50ton/cmの範囲であることが好ましい。1.0ton/cm未満では圧縮破壊強度の高い例えば3.0kg重/cm2(294kPa)を超える芳香族ポリカーボネート粉粒体を得ることが難しいことがあり、また50ton/cmを越える時は設備能力が巨大になり、実際的でなくなることがある。好ましくは2ton/cm〜30ton/cm、より好ましくは5ton/cm〜10ton/cmの範囲である。ここで圧縮線圧力とは、下記式(1)により算出する。
【0019】
【数1】
【0020】
さらにタブレット状圧縮造粒物を製造するときの圧縮圧力は、0.1〜5ton/cm2の範囲である。0.1ton/cm2未満では圧縮破壊強度3.0kg重/cm2(294kPa)を超える芳香族ポリカーボネート粉粒体を得ることが難しいことがある。また5ton/cm2を越える時は設備能力が巨大になり、実際的でなくなる。好ましくは0.2〜3ton/cm2、より好ましくは0.5〜2ton/cm2の範囲である。
【0021】
このようにして得られた芳香族ポリカーボネート粉粒体の固有粘度は、圧縮造粒前の結晶性もしくは非晶性の芳香族ポリカーボネートと同じく固有粘度[η]が0.05〜0.38と比較的低分子量になるように製造することが好ましい。さらに好ましい固有粘度の範囲は0.10〜0.30であり、最も好ましいのは0.12〜0.25の範囲である。また比表面積は0.001m2/g以上〜0.2m2/g未満であることが好ましい。好ましくは0.001〜0.19m2/gであり、より好ましくは0.005〜0.17m2/g、最も好ましいのは0.05〜0.15m2/gの範囲である。このような比表面積にするには先に説明した粉粒化の工程において粉砕の条件、圧縮造粒の条件を適宜調節することで実現することができる。
【0022】
また本発明において好ましい芳香族ポリカーボネート粒状体は下記式(2)
【0023】
【化1】
【0024】
[上記式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、Wは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数3〜15のシクロアルキリデン基、炭素数3〜15のシクロアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基又はスルホン基である。]
で表される芳香族ポリカーボネートである。上記式(2)中、R1、R2、R3、R4は具体的には水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;ベンジル基等の炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。Wは具体的には単結合;メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基;エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基等の炭素数2〜20のアルキリデン基;1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の炭素数3〜15のシクロアルキレン基;シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基等の炭素数3〜15のシクロアルキリデン基;エーテル基、スルホキシド基、スルフィド基、スルホン基などが挙げられる。また本発明の効果に影響がない範囲内(例えば30モル%以下)で他の繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネートを共重合してもよい。
【0025】
なかでもより好ましくは主に下記式(3)
【0026】
【化2】
【0027】
で表される繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネートであることである。
【0028】
本発明では、芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)は循環し、再度固有粘度[η]が0.05〜0.38の結晶性もしくは非晶性の芳香族ポリカーボネートの非圧縮造粒物と混合して、圧縮造粒を繰り返して、芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)を得る。循環する芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)の粒径としては10mm以下であることが好ましい。さらに好ましくは8mm以下、最も好ましくは5mm以下である。圧縮造粒を繰り返すのは特に限定はないが通常2回以上を表し、好ましくは2〜5回である。
【0029】
循環する芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)は、循環前に本発明において好ましい粒径範囲なるように粉砕しても良い。また、芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)を循環する際に、固相重合反応器から排出される不活性ガスを輸送気体の一部または全部として使用することが好ましい。ここで該不活性ガスとは具体的には窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、二酸化炭素が好ましく挙げられ、中でも窒素がより好ましい。またここで輸送気体とは気体輸送の際に用いる気体のことである。循環する手法は気体輸送または、ベルトコンベア、コンティニュアスフローコンベア、およびチェーンコンベアなどの機械的輸送によって行うことが好ましいが、気体輸送がより好ましい。該気体輸送の速度は、15〜100m/sである。15m/sより小さいと芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)が十分輸送できず輸送配管内に堆積し、輸送配管内で微粉状芳香族ポリカーボネートによるスケールが発生して、運転上のトラブルの原因となることがある。100m/sより大きいと気体輸送用不活性ガスを流通させるためのコンプレッサー、ブロワーなどの設備能力が巨大になり、実際的ではなくなることがある。よって、好ましい気体輸送の速度は20〜80m/s、さらに好ましくは、25〜50m/sである。なお、ここで「気体輸送の速度」は、輸送配管内を流通する不活性ガス体積流量を配管断面積で除した、いわゆる平均流速を意味する。また、該気体輸送の気体の温度は、好ましくは(非晶性芳香族ポリカーボネートのガラス転移温度−70℃)〜(結晶性芳香族ポリカーボネートの結晶融点)の範囲である。より好ましくは(非晶性芳香族ポリカーボネートのガラス転移温度−20℃)〜(結晶性芳香族ポリカーボネートの結晶融点)までの範囲である。該温度範囲では、結晶性芳香族ポリカーボネート表面に付着した微粉が融解の上圧着されるために、製造される粉粒体の圧縮破壊強度を上げることができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、芳香族ポリカーボネート粉粒体の圧縮破壊強度を上げることができ、輸送における粉粒体の破砕および微粉の生成が減少し、輸送におけるトラブル発生の可能性を低減できるとともに、所定粒径の芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造収率を上げることができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0032】
[分析方法]
1)固有粘度[η]
ジクロロメタン中、20℃でウベローデ粘度計を用い固有粘度[η]を測定した。粘度平均分子量Mは以下式から計算する。
【0033】
[η]=1.23×10-4M0.83
2)ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)
パーキンエルマーDSC7により、昇温速度20℃/分で測定してガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)を求めた。また、結晶融解のエンタルピー(ΔH)は、結晶融解に対応する部分のピーク面積より算出した。
3)結晶化度
結晶化度は、DSC測定によって得られたΔHから、100%結晶化ポリカーボネートのΔHをジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス;パートB:ポリマー・フィジックス(J.Polym.Sci.:B:Polym.Phys.)1979年第25巻1511〜1517ページを参考にして109.8J/gとして計算した。
4)圧縮破壊強度
木屋式硬度計を用いて、圧縮方向と垂直な方向に荷重をかけて測定した。
5)微粉発生率
輸送後の芳香族ポリカーボネート粉粒体を標準ふるいで粒子径0.1mm以下のものを分級し、下記式(4)
【0034】
【数2】
【0035】
により求めた。
【0036】
[参考例1]非晶性および結晶性芳香族ポリカーボネートの合成例
攪拌槽、精留塔、コンデンサー、減圧装置を有する重合反応装置の攪拌槽に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを2000g/hr、ジフェニルカーボネートを1933g/hr、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド79mg/hrおよびビスフェノールAジナトリウム塩を1.2mg/hrの割合で連続的に供給し、温度240℃、反応圧力1.3kPa、平均滞留時間2時間で、反応副生成物のフェノールを攪拌槽から留出させながら反応を行った。反応したポリカーボネートは2345g/hrの割合で連続的に攪拌槽から抜き出した。この時点で、得られた非晶性芳香族ポリカーボネートの固有粘度[η]は0.16、ガラス転移温度は116℃であった。
【0037】
この非晶性芳香族ポリカーボネートをN2雰囲気下180℃で12時間静置して結晶性芳香族ポリカーボネートを得た。この結晶性芳族ポリカーボネートをそれぞれDSCにより測定するとTm225℃、結晶化度は25%であった。
【0038】
[参考例2]高分子量芳香族ポリカーボネートの合成例
比較例1の気体輸送で用いる不活性ガスは、以下条件で固相重合した時の排出ガスである。
【0039】
実施例1で得られた結晶性芳香族ポリカーボネートを2000g/hrで連続的に容量100Lのジャケット付ホッパー型反応器に供給した。そして、反応器ジャケット内熱媒体の温度を200℃、反応圧力を常圧として窒素ガスを200℃、50NL/minの割合で連続的に反応器の下部から上部に流通させながら固相重合反応を行った。また、この時、反応して得られた芳香族ポリカーボネートは1936g/hrの割合で連続的に反応器から抜き出した。得られた芳香族ポリカーボネートの固有粘度[η]は0.50、結晶化度は34%であった。
【0040】
[実施例1]
参考例1の結晶性芳香族カーボネートを粉砕した後、目開き2mmのふるいを用い分級し、粒径2mm以下の粉体とした。次いで該2mm以下の粉体を、表面形状が平滑である圧縮ロールによって圧縮成形しシート状成形物を得た。圧縮ロール表面の設定温度は室温であり、圧縮線圧力2ton/cm、圧縮ロール回転数15rpmの条件で成形した。次に、得られたシート状成形物を粉砕および整粒し、スクリーン径が2mm、回転数500rpmの分級装置にかけ粒径2〜5mmの結晶性芳香族ポリカーボネート粉粒体を得た。また同時に圧縮造粒した粒径2mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)も得た。
【0041】
次に、該粒径2〜5mmの結晶性芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造中に生じた圧縮造粒後の粒径2mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)をステンレス容器に受け輸送し、これを参考例1の結晶性芳香族カーボネートを分級して得た粒径2mm以下の結晶性芳香族ポリカーボネートと混合し、上記と同様の条件で圧縮造粒し、粒径2〜5mmの芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)を得た。
【0042】
該粒径2〜5mmの結晶性芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造中に生じた圧縮造粒後の粒径2mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)と、参考例1の結晶性芳香族カーボネート粉体を分級したものを混合・圧縮造粒して得られた粒径2〜5mmの芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)の圧縮破壊強度は、3.5Kg重/cm2(343kPa)であった。また、得られた2〜5mmの芳香族ポリカーボネート粉粒体を170g/minで3分間、圧空により内径28.4mmのステンレス配管内を輸送した。圧空の配管内の流速は、31m/sである。ここで、「流速」とは、配管内を流通する圧空体積流量を配管断面積で除した、いわゆる平均流速を意味する。
【0043】
このとき輸送終了後の配管内には粉体付着が見られず、φ300円筒型粉体トラップ内の粉体付着量は3gであった。微粉発生率は、2.5%であった。
【0044】
[実施例2]
圧縮造粒中に生じた粒径2mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)の輸送に、ステンレス容器に受け輸送する代わりに、参考例2で固相重合反応器から連続的に排出される窒素ガスを含有する不活性ガスを用いて気体輸送する以外は、実施例1と同様に実施した。
【0045】
該粒径2〜5mmの結晶性芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造中に生じた圧縮造粒後の粒径2mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)と、参考例1の結晶性芳香族カーボネート粉体を分級したものを混合・圧縮造粒して得られた粒径2〜5mmの芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)の圧縮破壊強度は、3.7Kg重/cm2(363kPa)であった。また、このとき輸送終了後の配管内には粉体付着が見られず、φ300円筒型粉体トラップ内の粉体付着量は2gであった。微粉発生率は2.1%であった。
【0046】
[実施例3]
参考例1の結晶性芳香族カーボネートを粉砕した後、目開き12mmのふるいを用い分級し、粒径12mm以下の粉体とした。次いで該12mm以下の粉体を、表面形状が平滑である圧縮ロールによって圧縮成形しシート状成形物を得た。圧縮ロール表面の設定温度は室温であり、圧縮線圧力2ton/cm、圧縮ロール回転数15rpmの条件で成形した。次に、得られたシート状成形物を粉砕および整粒し、スクリーン径が12mm、回転数500rpmの分級装置にかけ粒径12〜15mmの結晶性芳香族ポリカーボネート粉粒体を得た。また同時に圧縮造粒した粒径12mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)も得た。
【0047】
次に、該粒径12〜15mmの低分子量結晶性芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造中に生じた圧縮造粒後の粒径12mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)をステンレス容器に受け輸送し、これを参考例1の結晶性芳香族カーボネートを分級して得た粒径2mm以下の結晶性芳香族ポリカーボネートと混合し、上記と同様の条件で圧縮造粒し、粉粒12〜15mmの芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)を得た。該粒径12〜15mmの結晶性芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造中に生じた圧縮造粒後の粒径12mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)と、参考例1の結晶性芳香族カーボネート粉体を分級したものを混合・圧縮造粒して得られた粉粒12〜15mmの芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)の圧縮破壊強度は、3.1Kg重/cm2(304kPa)であった。
【0048】
[比較例1]
実施例1で芳香族ポリカーボネート粉粒体の輸送・混合・再圧縮造粒前に得られた結晶性芳香族ポリカーボネートの粉粒体の圧縮破壊強度は、3.0Kg重/cm2(294kPa)であった。この芳香族ポリカーボネート粉粒体は、芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)を循環せずに製造したものであることを表している。また、該結晶性芳香族ポリカーボネートを実施例1と同様に気体輸送した。
【0049】
このとき輸送終了後の配管内には粉体付着が見られず、φ300円筒型粉体トラップ内の粉体付着量は5gであった。微粉発生率は4.1%であった。
【0050】
[比較例2]
実施例3で粉粒体の輸送・混合・再圧縮造粒前に得られた結晶性芳香族ポリカーボネートの粉粒体の圧縮破壊強度は、2.0Kg重/cm2(196kPa)であった。
【0051】
[比較例3]
輸送・混合する結晶性芳香族ポリカーボネートの粒径を12mm以下とする以外は、実施例3と同様にして、粉粒体を得た。得られた12〜15mmの粉粒体の圧縮破壊強度は、2.3Kg重/cm2(225kPa)であった。
Claims (4)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融重合したもの、または溶融重合後に固相重合したものである、固有粘度[η]が0.05〜0.38の結晶性もしくは非晶性の芳香族ポリカーボネートを圧縮造粒して芳香族ポリカーボネート粉粒体を製造する際に、粒径12mm未満の芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)を循環し、再度固有粘度[η]が0.05〜0.38の結晶性もしくは非晶性の芳香族ポリカーボネートの非圧縮造粒物と混合して、圧縮造粒を繰り返して、芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)を得る芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造方法。
- 該芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)の粒径が10mm以下である請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造方法。
- 該芳香族ポリカーボネート粉粒体(A)を循環する際に、固相重合反応器から排出される不活性ガスを、輸送気体の一部または全部として使用する請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造方法。
- 該芳香族ポリカーボネート粉粒体(B)の粒径が0.5〜30mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート粉粒体の製造方法。
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