JP3919073B2 - 弾性表面波装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一対の櫛の歯状の共振器を備えた弾性表面波装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話機をはじめとした移動体通信端末機が急速に発展している。この端末機は、持ち運びの便利さから、特に小型且つ軽量であることが望まれている。端末機の小型軽量化を達成するには、そこに使われる電子部品も小型軽量であることが必須であり、このため、端末機の高周波部や中間周波部には、複数の弾性表面波共振器(SAW共振子)が圧電基板上に形成された弾性表面波素子を用いた弾性表面波装置が多用されている。
【0003】
弾性表面波装置に求められる重要な特性として、挿入損失が低く通過帯域周波数外の減衰量が大きいことが挙げられる。挿入損失は、機器の消費電力に影響し、低損失であるほどバッテリの寿命が延びるためバッテリの容量を削減することができ小型軽量化に貢献する。また、一つの装置で高帯域外減衰を得ることができれば、機器の小型軽量化に貢献する。
【0004】
ここで、弾性表面波素子は、相互に入り組んだ一対の櫛の歯状の共振器が圧電基板上に形成されており、共振器への電圧印加による電界で圧電基板に弾性表面波を生成したり、あるいは生成された弾性表面波を共振器で電気信号に変換している。
【0005】
そして、このような弾性表面波素子が実装基板に搭載された弾性表面波装置は、移動体通信端末機に用いられた場合を想定して、2mの高さから落下しても弾性表面波素子と実装基板との接合性が確保されていることが要求される。なお、2mの高さとは、移動体通信端末機を一般人が使用する際の高さに所定のマージンを加えたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、弾性表面波素子と実装基板とがバンプによりフリップチップ実装されている場合、前述した接合性能を確保するには、弾性表面波素子に形成されるバンプの面積を可能な限り大きくすればよい。
【0007】
そして、バンプ面積を大きくするには、必然的に弾性表面波素子を構成する圧電基板の面積を大きくしなければならない。
【0008】
しかしながら、端末機の小型軽量化の要請から圧電基板を広くすることは困難であり、したがって、ただ単にバンプの面積を大きくすることはできない。
【0009】
そこで、本発明は、複数のバンプを介して実装基板に搭載された弾性表面波素子の接合強度を保持しつつバンプ面積を最小化することのできる弾性表面波装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る弾性表面波装置は、圧電単結晶により形成された圧電基板および前記圧電基板上に相互に入り組んで形成された少なくとも一つの一対の櫛の歯状の共振器を備えた弾性表面波素子と、前記弾性表面波素子が複数の金バンプを介して搭載された実装基板と、前記弾性表面波素子を包囲するようにして前記実装基板に接着された金属製のキャップとを有し、前記弾性表面波素子に形成された前記バンプの総面積と前記圧電基板の質量との比が0.0085mm2 /mg以上とされ、前記バンプが形成された電極は、膜厚が0.5〜1μmのアルミニウムで構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
このような発明によれば、複数のバンプを介して実装基板に搭載された弾性表面波素子の接合強度を保持しつつバンプ面積を最小化することが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、発明の実施の形態は、本発明が実施される特に有用な形態としてのものであり、本発明がその実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態である弾性表面波素子がパッケージ化された弾性表面波装置を示す断面図、図2は本発明の一実施の形態である弾性表面波素子の回路を示す概略図、図3は図2の弾性表面波素子における共振器のパターンを示す平面図、図4は図1の弾性表面波装置におけるバンプ面積と弾性表面波素子の引き剥がし強度との関係を示すグラフ、図5は本実施の形態における弾性表面波装置の評価試験で用いられた振り子式衝撃試験器を示す概略図である。
【0014】
図1に示す弾性表面波装置10は、圧電基板上に所定の導電パターンが形成された弾性表面波素子11が、単層あるいは複数層からなり所定の配線パターンや回路パターンの形成されたセラミック製や樹脂製の実装基板12に搭載されたものである。そして、弾性表面波素子11の素子形成面は実装基板12と対向配置されており、弾性表面波素子11と実装基板12とはバンプ13を介してフリップチップ接続されている。
【0015】
ここで、圧電基板は、LiNbO3 、LiTaO3 や水晶などの圧電単結晶により形成されている。
【0016】
そして、実装基板12には、弾性表面波素子11を包囲するようにしてキャップ14が接着されており、弾性表面波素子11を塵埃や機械的衝撃などから保護している。
【0017】
このような弾性表面波装置10に実装された弾性表面波素子11の圧電基板上には、図2に示すように、所定周波数の弾性表面波に共振する共振器15が形成されている。この共振器15には、共振器15と実装基板12とを電気的に接続し、共振器15に対する電気信号が入出力される入力電極16、出力電極17および接地電極18が配線部19を介して電気的に接続されている。
【0018】
電極16,17,18と実装基板12とは、これらに図1に示すバンプ13を形成し、超音波によりバンプ接続される。したがって、本実施の形態では、弾性表面波素子11には6つのバンプ13が形成されている。そして、このようなバンプ接続により、素子形成面が実装基板12と対向配置されている。
【0019】
なお、本実施の形態において、電極16,17,18は合計6つ形成されており、したがってバンプ13も6つ形成されるが、本発明は6つの電極に限定されるものではなく、共振器等のレイアウトパターンにより必要な数だけ設けることができる。よって、バンプ13の数も6つである必要はなく、電極数だけ設けられる。
【0020】
ここで、共振器15は、図3に示すように、相互に入り組んだ一対の櫛の歯状に形成されている。そして、入力側の共振器15に電圧を印加して電界をかけると、圧電基板には圧電効果により弾性表面波が発生する。また、このようにして生成された弾性表面波による機械的歪みが電界を生じさせ、出力側の共振器15で電気信号に変換される。
【0021】
共振器15の両側には、弾性表面波を反射する反射器20が配置されている。
【0022】
なお、本実施の形態は、入力電極16と出力電極17との間の配線部19を直列腕とし、この直列腕と接地電極18との間に複数の配線部19である並列腕を構成し、直列腕および並列腕に共振器15を配置したラダー型回路を構成しているが、本発明はラダー型回路以外であってもよい。
【0023】
ここで、本発明者は、弾性表面波装置10におけるバンプ面積と弾性表面波素子の引き剥がし強度との関係を以下のようにして調べた。
【0024】
すなわち、圧電基板上である36°回転Y−X伝搬タンタル酸リチウム単結晶基板上にアルミニウムからなる共振器および反射器を形成した。共振器は膜厚と電極指ピッチで周波数特性が決定される。アルミニウムの膜厚は一般的には0.1〜0.5μmであるが、この膜厚では金(Au)のスタッドバンプ形成時に不着バラツキが大きいため、バンプ形成用パッド部分のアルミニウムの膜厚を嵩上げして、0.5〜1μmとした。
【0025】
この弾性表面波素子に、金ボールの超音波接合により金のスタッドバンプを6バンプ形成した。なお、金ボールは金ワイヤ(田中電子工業製、GBC25μm)をアーク放電により溶融させ形成した。このとき、放電を発生するトーチの距離と電流を制御することにより、金ボールの直径を変化させた。
【0026】
圧電基板上の入力電極、出力電極および接地電極に金ボールを押し付け、超音波振動を起こして金バンプを形成した。そして、金バンプを形成した弾性表面波素子を金電極でパッドを形成した実装基板に超音波フリップチップ実装してサンプルを作成した。
【0027】
これらのサンプルをフリップチップした横から観察して、接合後のバンプ直径を測定し、バンプ直径からバンプ面積(総面積)を算出した。その後、弾性表面波素子と実装基板との引き剥がし強度を測定した。
【0028】
その結果を図4に示す。図示するように、引き剥がし強度はバンプ面積に依存しており、その関係はリニアであることが分かった。
【0029】
次に、接合後の金バンプの直径を制御して作成した以下の接合面積のサンプルを各300個準備して、落下試験を行った。このとき、パッケージは通常のSAWフィルタ用セラミックパッケージを用い、金属キャップを溶接して封止して図1に示す構造とした。
【0030】
このときのバンプ数は6バンプ、弾性表面波素子の素子体積は1.3mm×0.8mm×0.35mmであり、素子質量はタンタル酸リチウムの密度7.5g/cm3 から、2.7mgである。
【0031】
落下試験の条件は、コンクリート上に高さ1m、2m、3mから自由落下させて、バンプ接合部の剥離不具合の発生数量を確認した。
【0032】
試験結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
この結果から、2mの落下試験に合格するためには、バンプ直径70μm(バンプ総面積0.023mm2 )以上が必要であることが分かる。そして、これをバンプの総面積と弾性表面波素子の質量との比にすると、0.023mm2 /2.7mg=0.0085mm2 /mgとなる。
【0035】
次に、素子体積1.8mm×1.4mm×0.35mmの弾性表面波素子に前述と同様に6つのバンプを形成し、同様な条件にて落下試験を行った。
【0036】
試験結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
この弾性表面波素子の質量は、6.6mgであり、2mの落下試験に合格するためには、バンプ直径110μm(バンプ総面積0.057mm2 )以上が必要であることが分かる。そして、これをバンプの総面積と弾性表面波素子の質量との比にすると、0.057mm2 /6.6mg=0.0086mm2 /mgである。
【0039】
以上の結果から、携帯電話などの移動体通信端末機に要求される条件である2mからの落下試験に耐え得るバンプの総面積と弾性表面波素子の質量との比は0.0085mm2 /mg以上であることが分かった。
【0040】
そして、この条件を満たすようにバンプの直径を設定することにより、複数のバンプを介して実装基板に搭載された弾性表面波素子の接合強度を保持しつつバンプ面積を最小化することが可能になる。
【0041】
ここで、バンプ直径を80μmとした弾性表面波素子を実装基板にフリップチップ実装し、金属製のキャップを実装基板に溶接して封止した弾性表面波装置10を作成した。そして、振り子式衝撃試験器21にて衝撃加速を加えてフリップチップ実装された弾性表面波素子の破壊状況を評価した。
【0042】
このときに用いた振り子式衝撃試験器21を図5に示す。
【0043】
図5に示す振り子式衝撃試験器21は、支柱22と、この支柱22の上部に回動自在に取り付けられた長さ1.5m程度のプラスチック製のアーム23と、当該アーム23の先端に固定された重量100g程度の重り24と、アーム23の垂下位置に配置されたステージ25とを有するものである。
【0044】
このような振り子式衝撃試験器21において、ステージ25上に前述の弾性表面波装置10を設置し、アーム23を水平にして高さ1.5mの位置から重り24を円弧状に落下させて当該弾性表面波装置10に衝突させることにより、弾性表面波装置10を静止状態から一瞬にして衝突時における重り24の速度に加速させた。なお、ステージ25から弾き飛ばされる弾性表面波装置10の進行方向にはクッション26が設置されている。そして、弾性表面波装置10のステージ25における設置姿勢を種々変化させて、フリップチップ実装部分の破壊状況を観察した。
【0045】
観察結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3から分かるように、フリップチップ実装された弾性表面波素子を引き剥がす方向に加速力を加えた場合には100%破壊されている、つまり不良発生率が100%となっている。
【0048】
この実験結果から、前述したコンクリート上への落下試験において、弾性表面波装置10がキャップからコンクリートに接触した場合に、その瞬間にフリップチップ実装部分を引き剥がす力が生じ、この力により破壊が発生していることが予想される。つまり、フリップチップ実装した弾性表面波素子の引き剥がし強度と落下試験の破壊頻度とが相関する。
【0049】
なお、以上の説明においては、弾性表面波素子11が一個搭載された弾性表面波装置10が示されているが、たとえば相互に異なる帯域中心周波数を有する2つの弾性表面波素子を搭載して分波器とするなど、本発明は種々の形態の弾性表面波装置に適用することが可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0051】
すなわち、バンプの総面積と弾性表面波素子の質量との比が0.0085mm2 /mg以上となるようにバンプの直径を設定することにより、複数のバンプを介して実装基板に搭載された弾性表面波素子の接合強度を保持しつつバンプ面積を最小化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である弾性表面波素子がパッケージ化された弾性表面波装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である弾性表面波素子の回路を示す概略図である。
【図3】図2の弾性表面波素子における共振器のパターンを示す平面図である。
【図4】図1の弾性表面波装置におけるバンプ面積と弾性表面波素子の引き剥がし強度との関係を示すグラフである。
【図5】本実施の形態における弾性表面波装置の評価試験で用いられた振り子式衝撃試験器を示す概略図である。
【符号の説明】
10 弾性表面波装置
11 弾性表面波素子
12 実装基板
13 バンプ
14 キャップ
15 共振器
16 入力電極
17 出力電極
18 接地電極
19 配線部
20 反射器
21 振り子式衝撃試験器
22 支柱
23 アーム
24 重り
25 ステージ
26 クッション
Claims (2)
- 圧電単結晶により形成された圧電基板および前記圧電基板上に相互に入り組んで形成された少なくとも一つの一対の櫛の歯状の共振器を備えた弾性表面波素子と、
前記弾性表面波素子が複数の金バンプを介して搭載された実装基板と、
前記弾性表面波素子を包囲するようにして前記実装基板に接着された金属製のキャップとを有し、
前記弾性表面波素子に形成された前記バンプの総面積と前記圧電基板の質量との比が0.0085mm2 /mg以上とされ、
前記バンプが形成された電極は、膜厚が0.5〜1μmのアルミニウムで構成されている、
ことを特徴とする弾性表面波装置。 - 前記弾性表面波装置は、相互に異なる帯域中心周波数を有する2つの前記弾性表面波素子が搭載された分波器であることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波装置。
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