JP3919030B2 - 生ごみの処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な生ごみの処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各家庭、レストラン、食品加工工場等より、毎日排出される生ごみの量は膨大なものである。これらは、業者や行政機関によって回収され焼却や埋め立て処分されているものの、増大の一途をたどる発生量に処理能力がついて行けない現状にある。また、新しく処理場を建設する場合にもその用地確保は困難を極め、処理コストの負担の増大とともに各自治体の大きな負担となっている。
【0003】
これに着目して、最近、乾燥式や微生物処理式など様々なタイプの生ごみ処理機が市販されている。しかし、これらは生ごみの減量化や資化を標榜しながら、その目的を達し得ないものが多い。特に微生物処理タイプの場合、好気性細菌による処理を言いながら腐敗臭を発生させたり蛆虫が発生するもの、生ごみを分解資化する細菌が死滅するため高価な種菌を補給し続けなければならないもの、定期的な微生物担体(通常おが屑やプラスチックが用いられる)を取替ねばならないもの、処理量に制限があるもの、魚の骨や卵殻、油、大きな野菜屑の処理は不可能で処理できる生ごみの種類に制約があるものなど、その殆どが実用に耐えられないものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
生ごみの適正な処理は、社会的ニーズであり、これを満たすためには、正当な理論と実証に裏打ちされた生ごみの処理方法と、生ごみ処理機の開発が急務である。本発明者は、かかる現状に鑑みて鋭意研究を進め、極めて実用的な微生物処理タイプの生ごみの処理方法と処理機の開発に成功した。即ち、処理時に悪臭を発生せず、投入生ごみに対する量的、質的制約を最小限に止め、しかも処理能力が高く種菌補給や微生物担体の入れ換えを全く或いは殆ど必要としない技術を開発した。
【0005】
本発明は、微生物として、胞子(芽胞)を形成する好気性ないし通性嫌気性のグラム陽性桿菌(バチルス属)に属する複数種の細菌を採用した。ただ、この種細菌が生ごみを永続的に且つ確実に分解資化するには、種々な条件が必要になる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、生ごみの処理方法において、セルロース系基材からなる担体と、バチルス属細菌を含む汚泥に対して、曝気をするとともに、養分を菌が糸状体を形成しない範囲で徐々に増量するように与えて、菌の馴化或いは変成を生じさせることによって得られた、澱粉、蛋白質、脂肪の分解能に優れた複数種のバチルス属細菌或いはその胞子と、シリカ成分とマグネシウム成分とを混入して発酵床とし、該発酵床を充填した発酵槽内に生ごみを投入して、攪拌と通気を与えて分解することを特徴とするものである。
まず、(1)本発明に使用するバチルスは、澱粉、蛋白質及び脂肪の分解資化に優れた能力を示すものである必要がある。この能力は、以下に示す手法で馴化或いは変成させることにより得られる。ただ、1つの菌株で澱粉、蛋白、脂肪の全てを分解するものとそうでない菌株があり、また分解の程度も菌株によってまちまちである。そこで、(2)投入される生ごみの種類が変わっても、生ごみの種類によって対応する細菌株が働いて相乗効果を示してそれらを有効に分解資化するために、十〜数十種もの多種菌株によって構成される菌相を有していることが要求される。更に、(3)効率よく生ごみ(有機物)を処理するために、これらの細菌が活性化されるとともに発酵槽内で優先化して高濃度に生存し続けること、及び(4)細菌の世代時間を短くして増殖を早め、生ごみの分解能を高めることが必要になる。また、有機物の分解に際しては酵母との連携も有効である。
【0007】
これらのバクテリアは、以下のようにして得られた。枯草菌を代表とするバチルス属のバクテリアは、土壌、枯れ草など自然界に広く分布しており、一般の屎尿処理場の槽内にも低濃度ではあるが存在している。そこで、ある既設の屎尿処理場の消化槽において、硅酸イオン(SiO2 :シリカ成分)及びマグネシウムイオンの存在下で長期間(少なくとも6ケ月以上)にわたって好気処理し、生成した汚泥を抜き出し、平面寒天培地にこの汚泥を植菌し、32℃で6日間培養して菌株を単離した。得られた菌株は30余種であったが、その90%以上がバチルス属であり、そのうち澱粉を分解資化するもの、蛋白質(カゼイン或いはクックドミート)を分解資化するもの、その両者を分解資化するものがほぼ等分含まれていた。脂肪は殆どの菌株が分解資化した。また、アンモニアは半数以上の菌株が、硫化水素は全ての菌株が分解資化する能力を有している。
【0008】
更に、バクテリアの分解資化能力を増大させるために、以下の操作を行なった。まず、上記と同じ汚泥(MLSS5,400)の4リットルを5リットル瓶に採り、クリーンベンチ内で曝気を続ける。これに、生物試験用のジャガイモ澱粉、クックドミート、牛肉エキス、コーン油を1:1:1:1の割合で、初期は少量を加え、糸状体を形成しない範囲で徐々に増量し、70日経過後より総量40gとなるように添加量を増して与えつづけた。尚、モノマーシリカ20mg、マグネシウムイオン20mgを微酸性水溶液として毎日添加し、更に蒸発水分の補充は適時蒸留水を添加して調整した。この操作を6ケ月続けたのち、養分の投入を停止し更に曝気を5日続けて(胞子化のため)から汚泥を抜き出し、同様にして菌株毎の澱粉分解、蛋白質分解、脂肪分解挙動を調査した。
【0009】
その結果、表1に示すように、澱粉と蛋白質の両者を分解する菌株が増え、また分解能もそれぞれ増大しており、菌体の太さにも変化が見られた。即ち、菌の馴化或いは変成が生じたものと思われる。尚、菌体の太さが1.2μmを境に、それよりも太い菌体は澱粉を分解し、それよりも細い菌体は蛋白質を分解することが判る。また、1〜15の菌株(バチルス属)が全体の90%以上を占有しており、これらが有機物分解に関与している。グラム陰性桿菌や酵母には、直接栄養分解を行なう力がないことも明らかとなった。このように、適正範囲内で最大の負荷を細菌に与えることにより、細菌機能が向上したり、複合機能を有する菌株が増し、変成を示すことが明らかとなった。これらの変成菌は有機物分解能が高く、高負荷の処理に適した機能をもつものである。例えば、変成前では澱粉を4mg/汚泥1g・2日分解していたものが前記の変成後の菌株では13mg/汚泥1g・2日分解、クックドミートでは、変成前が2mg/汚泥1g・2日分解のものが8mg/汚泥1g・2日分解まで向上した。本発明では、上記汚泥由来の菌株、更に分解資化能力増強タイプの菌株の何れも使用できるが、後者の方が処理能力は優れている。更にこれらの汚泥を脱水後、共存する原生動物の死骸を分解資化するとともにバチルス属バクテリアをさらに増殖させるため、発酵処理を加えて完熟させることにより、胞子濃度を1010個/mlから1011〜1012個/mlにまで高濃度化することができる。
【表1】
【0010】
バチルス属のバクテリアは、発芽、増殖するために栄養分とともに酸素、シリカ、及びマグネシウムを必要とする。これらの条件が満たされれば、貪欲に栄養分を消費して優先化し、他のバクテリア例えば球菌やブドウ状球菌を消滅させる能力を有している。また、貧栄養状態になれば胞子化し、栄養分の供給で発芽する。シリカは、有用細菌の細胞液や細胞膜、胞子膜を構成する重要な物質であり、これが不足すると有用細菌の増殖ができなくなる。またマグネシウムは、この有用細菌の世代時間(増殖サイクル)を極端に短縮させる作用を有している。このシリカ及びマグネシウム働きは、本発明者らが初めて見いだしたものである。尚、温度が高い程増殖速度が早くなる。好ましい温度の上限は有用細菌の種類により異なり、62℃或いは45℃程度である。酵母による発酵熱で、発酵床全体は45〜60℃位まで昇温するため、有用細菌の増殖は極めて早く行なわれる。尚、有用細菌の活動には更に酸素が必要になる。酸素の供給は発酵床を攪拌することにより行なわれるが、頻繁に攪拌すると温度が低下する。そのため、攪拌は1日1〜2回、数分程度にすることが望ましい。酸素の供給は、発酵温度により生じる自然対流で緩やかに行うようにしてもよいし、この自然対流と攪拌を併用してもよい。
【0011】
(バチルス属細菌による有機物処理)
処理細菌中には、澱粉を分解するものと、蛋白質、脂質を分解するものがあり、この菌相が投入される生ごみ成分に応じてバランス良く保持されていることが必要である。また、それらの菌種毎に胞子形成能にも違いがあるものの、常に安定した処理が行なわれておれば、より効果的な菌が優先化するようになる。例えば、流入汚水のBODが常に12,000ppm を越える処理場においてバチルスを高濃度に優先化して極めて良好な処理を行なっているところの汚泥水について、希釈培養してバチルスの濃度を調べたところ、常に5×108 個/ml〜5×1010個/mlの密度を示した。
【0012】
(マグネシウム)
バチルスを優先化させるためには、先ずバチルスの増殖速度に関わる世代時間を短縮させねばならないが、マグネシウムイオンを供給することによりその目的を達することができる。マグネシウムイオンの供給は必ずしもイオンで供給する必要はなく、マグネシウム化合物や含有物を発酵床に混入させ、徐々に溶解するマグネシウムによっても、その目的を達することができる。マグネシウムイオン濃度は、低すぎると効果が無く高すぎると菌体を解体するので、1〜50ppm 程度に維持されることが望ましい。
【0013】
(シリカ)
次いで、増殖したバチルスを高濃度化するためには、世代時間を終わったバチルスを再胞子化して温存することが必要である。通常、バチルスは栄養と水分、酸素、熱の供給を受けて成長して糸状体を形成し、貧栄養状態に至って内胞子を形成して解体して胞子化し、生命を維持するが、準安定型ケイ酸塩鉱物や珪酸イオン、シラノール存在下で特に顕著にその傾向を示し、極めて高い胞子化を示す。シリカ供給の無い場合は、この胞子化が大きく低下する。従って、生ごみ処理機の生物担体中にこれ等を混入することにより、その目的を達することができる。モノマーシリカやゾル・ゲル化したシリカ(菌体が利用できる形態のシリカ分)の濃度は、少ないと効果が無く、高すぎると重合を始めるので、2〜50ppm 程度に維持されることが望ましい。
【0014】
(バチルスの性質と役割)
既に研究の結果、以下の諸性質が明らかとなっている。
〈1〉生化学的性質。
(1)有機物の分解性と資化性。
1.1 肉片、蛋白質を分解可溶化する。
→バチルス属の一部の細菌により行なわれる。
1.2 澱粉をブドウ糖まで分解する。
→バチルス属の一部の細菌により行なわれる。
1.3 脂肪を分解する。
→バチルス属の多くの菌種は脂肪を分解する。
1.4 資化・増殖。
→分解したものや、もともとあった摂取し易い物質を取り入れて資化増殖する。
(2)臭気成分を分解する。
→多くの菌種でアンモニア、硫化水素、アミン類を分解する。
(3)脱窒能を有する。
〈2〉増殖速度が速い。
処理細菌は、栄養と必要なミネラル、酸素、温度を与えられると、極めて速い速度で細胞分裂して増殖する。従って、資化、分解能が高い。
〈3〉胞子形成能
処理が進行し、栄養状態が悪くなると、細胞の中に胞子を形成する。胞子は、悪条件に極めて強く、増殖した菌の数が蓄えられる。栄養細胞のままだと、悪条件下で死滅する。従って、胞子を形成し易い菌の方が、処理には有益である。
〈4〉ミネラル等の効果
珪酸とマグネシウムを補給すると、増殖が盛んになり、胞子形成もよくなる。
〈5〉性質の多様性−増殖旺盛
生化学的性質の異なる細菌が混在すると、補い合って、成育が盛んになる。
〈6〉抗生物質、酵素の分泌
バチルス属は、強い酵素や胞子形成期に抗生物質を分泌し、大腸菌等を溶菌・死滅させる。このことが、処理細菌の優先化に寄与しているものと考えられる。
〈7〉高菌体濃度と優先化
以上の性質により、適性な条件を与えることにより、高菌体濃度と優先化が可能になる。
汚 泥=1×109 〜5×1010個/ml 優先化92%以上
発酵汚泥=1×109 〜5×1011個/ml 優先化92%以上
また、発芽温度は通常14℃〜17℃であるが、中には5℃で発芽する菌株も認められている。活性温度域も、〜45℃又は〜62℃まで盛んに活動する。従って、発酵床温度を高く導くことにより、生ごみ処理は高速で進行するとともに、腐敗菌を死滅させてバチルス属細菌が優先化する。
〈8〉吸着性と凝集性
バチルスの細胞壁は粘着物質で覆われているため、吸着・凝集し易い。
〈9〉その他
9.1 バチルスは、排水処理におけるバルキングの原因細菌である。富栄養条件下でフィラメントを形成し、なかなか解体しない。糸状菌といわれている菌の殆どは、この処理細菌である。しかし、高濃度化すると、フィラメントを形成することなく、速やかに栄養を分解し、貧栄養状態を作りだす。そして、胞子化する(菌体濃度の影響)。
9.2 屎尿処理、下水処理、家畜糞尿処理、食品排水や排気物処理、堆肥化処理についても、同様である。
【0015】
(生ごみ処理の仕組み)
バチルスによる生ごみ処理(発酵)は、図1の如く進行する。即ち、発酵は先ず酵母による発熱が発生してバチルスの活性を高める。バチルスにより分解された物質はバチルスによって資化されるのみでなく、酵母や他細菌によっても資化されることを示した。
発熱/酵母→バチルス活性向上/酵母発熱→有機物分解/バチルス→分解物質の資化/バチルス、酵母、その他の細菌、の経過を示している。
【0016】
【発明の実施の形態】
(比較例1:市販生ごみ処理機A、Bによるテスト)
1. 乾式生ごみ処理機(市販品A)
乾燥おが屑(含水率60%)30kgに種菌担体を混入しているが、菌は放線菌がその主体を占める。またその濃度は1×102 個/gと低く、微生物の増殖に必要な水分は投入される生ごみの98〜99%を占める水分によって供給し、生ごみの減量を図っている。しかし、処理細菌の不適性と濃度不足から、インストラクションに従って1kg/日の生ごみ(野菜くず、米飯)投入に制限しても、発酵温度は28〜33℃と低く、使用開始3日目より腐敗臭(アンモニア濃度40〜50ppm )を発生し、7日後には蛆虫が大量に発生した。生ごみ処理細菌種・濃度、更に分解・資化機構が理解されていないために生じた不適性な機種であり、家庭用生ごみ処理機としては、使用に耐えられない。
2. 半湿式生ごみ処理機(市販品B)
この処理機は、図5の本発明生ごみ処理機に類似の構造(但し、ヒーター内蔵)をしている。この処理機は、水分65%に調整されたおが屑に種菌を混入された担体をベースとしており、魚類、油、調味料、卵の殻、海老殻、蟹殻、魚骨、粗い生ごみの投入を禁じ、細分化された生ごみ1kg/日の投入に限定している。インストラクション(使用説明書)に従い、細分化した野菜屑、米飯1kgを毎日投入した。尚、本機は侵出水回収タンクと40℃までの強制昇温させるヒーターを具備しているが、発酵槽温度(自然発酵温度ではない)が40℃に達することは稀であり、有機物分解速度も遅い。それにもかかわらず腐敗臭が発生し、発酵槽のアンモニア濃度は25〜50ppm に達する。また、生物担体であるおが屑の追加や入替えの必要を指示している。上記より、家庭内(特にダイニングキッチン)での使用には耐えられない。バクテリア担体はA、B二種を混合するが、それらの保有する菌体について調べたところ、Aは放線菌(31×105 個/g)とバチルス(102 個/g)、Bはバチルス(40×105 個/g)と放線菌(8×105 個/g)を含有していた。
【0017】
(実施の形態1:市販機と本発明発酵床との組み合わせ、図2)
比較例1の2.半湿式生ごみ処理機(市販品B)の生物担体(おが屑+種菌)30kgに、バークチップ150g及び発酵乾燥汚泥(バチルス胞子含有)200gを加えて混合し、生ごみに対する制限を外して投入分解資化させたところ、良好な発酵を示し、発酵温度が急上昇して約+10℃となり、保温ヒーターを用いることもなく生ごみ分解も速やかに進行した。
(改善前)生ごみ1kg投入後24時間経過で原形を保っていた。
(改善後)生ごみに対する制限を外し、投入量は1〜2.5kg/日、魚類(鰯、鰺)5〜10匹、米飯300〜500g、天麩羅廃油200cc等をランダムな取り合わせで投入したが、良好な分解を示すとともに悪臭も全く消滅した。また、侵出水については着色はあるが、無臭且つ透明であり、菌体流出のないことが確認された。
発酵槽内のNH3 =5〜10ppm
H2 S<1ppm
発酵温度が高く、生ごみを増量ししかも無差別に投入したにも関わらず、速やかにそれらを分解資化しながら、アンモニアの放散が小さくなったのは、より分解され易い炭素源である脂肪やバークチップを加えたためと言える(生ごみ処理のしくみ参照)。実験結果を、図2に示す。
攪拌 :1回/日
担体 :おが屑、バークチップ、すり糠、発酵汚泥、含水率60%
通気性 :下部空気孔より流入、上部放出孔より流出
ヒーター:無し
生ごみ :残飯、野菜屑、天かす
(注)
1. 生ごみ投入は、機器メーカー指定のマニュアルに従い、PSあるものは追加した。
2. 平成7年9月1日〜9月10日間はメーカー指示通りに投入し、9月11日以降は生ごみの制限を撤廃して自由投入した。
3. 計測は、生ごみ投入後、24時間時点で行なった。
(結果)
1. 発酵床変更後に、急激な昇温が認められた。これは、生物による発酵分解が急速に進行していることを示す。
2. 生ごみの投入を中止すると、発酵槽温度の急激な降下が認められる。これは、有機物の分解資化が急速に進行することを示す。
3. 発酵槽温度降下後に、有機物を投入すると温度が急速に上昇する。分解資化に関わる微生物が高濃度に保持されていることを示す。
4. 高負荷を分解資化しながら、アンモニアの上昇が認められない。生物により分解資化したことを示す。
5. 発酵温度の上昇により、有機物処理能は3倍以上となる。
6. 有機物の選別をする必要がなく、悪臭のない、高負荷処理が可能である。
7. 菌体濃度の高さ 103 個/g→108.5 個/gへと高濃度化しており、経時的に1010以上となっている。
8. 市販機Aについても、同様に本発明の発酵床を使用したところ、発酵温度25〜33℃で蛆虫の発生がみられたものが、発酵床改造後に発酵温度は38℃に達し、良好な処理が行われた。
【0018】
(実施の形態2:本発明生ごみ処理方法、装置と実験結果、図3)
先の生ごみ処理の仕組み(図1)からも明らかな如く、(1)発酵槽内のC/N比(炭素/窒素比)を適性に保ことが良好な生ごみ処理に必要であり、(2)適度の水分、(3)通気と、更に(4)有機物分解資化に関わるバチルス属細菌種菌、発熱と分解資化に関わる酵母を高濃度に保持することが大切である。また、(5)それらの有機物の堆肥化に関わる細菌類を死滅させることなく、しかも高濃度に保持することが大切である。
【0019】
まず、(1)についてはおが屑(15リットル)、籾殻(10リットル)、バークチップ(5リットル)を良く混合し、水分を55〜60%に調整する。これにバチルス属を主体に処理された汚水処理場の汚泥を発酵処理した乾燥汚泥(300g)、及び硅酸マグネシウム(200g)を加えてよく混合し、発酵床とした。また、発酵槽底部に空気孔を開け、自然対流による空気流入を図った。これらの内おが屑は、高い炭素含有物ではあるが、難分解性のセルロースを主成分とするため、長期にわたって炭素源となる。次いで、籾殻は高い炭素源であるとともに、おが屑よりも短期間で分解される。さらに籾殻には、適度の硅酸を含有しており、バチルスの胞子化に寄与するとともに発酵床の通気性を向上させる。更にバークチップは、最も高い炭素源物質であるとともに比較的に分解され易いものである。水分は、微生物の生存と活動に必須のものであり、発酵床の通気性を考慮し生ごみの投入時の含水率65%が適当であるところから、初期値55〜60%に調整した。水分が不足すると発酵の停滞を招くし、多すぎると通気性を損ない、嫌気的雰囲気となって腐敗臭を発生させる。
【0020】
尚、微生物(バチルス)の活性を高めることが有効な生ごみ処理を行なう上で必須であり、そのためには微生物の活動源となる炭素源の供給が極めて大切である。生ごみは、大別して窒素源と炭素源を持っているが、炭素源の不足になり易い。また、脂肪分の供給は図1からも明らかな如く、アンモニアの発生を抑制する上からも、発酵速度を早めて処理能力を向上する上からも必要である。即ち、発酵温度の上昇は有機物の分解資化速度を急速に上昇させる。
【0021】
次いで、何よりも大切な種菌である。今回のテストに使用した汚水処理場汚泥を発酵乾燥した発酵乾燥汚泥(種菌)には、バチルス属15菌株(92%以上)、酵母(3%)、ノルカジア(2%)グラム陰性桿菌(1%)の分布を有する菌体密度5×1010個/gのものを使用した。また、種菌は発酵乾燥汚泥に限定されることなく、生汚泥、単なる乾燥汚泥や、バチルスにより発酵させたコンポスト、その他培地や培養増殖した種菌でもよい。
【0022】
また硅酸マグネシウムは、バチルスの世代時間を極めて短くし、増殖に寄与するマグネシウム、及び増殖したバチルスの胞子化を促進してバチルスの高濃度化を促進するシリカをそれぞれ供給するために添加した。シリカ分、マグネシウム分の供与は、その他の両者を含有する固形物、化合物、溶液の形で行なってもよく、両者を別個に含む物質を用いてもよい。次いで、作成した発酵床を発泡スチロールケースに入れ、生ごみ(魚あら、米飯、野菜屑、天麩羅滓、海老殻混合)4kg、天麩羅廃油200cc、を投入混合し、1日1回混ぜ返しを行なった。発酵の指標として、毎日、混ぜ返し前、生ごみ投入前の発酵温度を測定した。結果は、図3のグラフの通りであり、極めて良好な発酵が継続した。また、生ごみ投入を止めてから48時間後には発酵温度の低下が認められ、120時間経過後には発酵温度は低くなり、発酵(一次)が完了したことを示した。また、実験中、最高温度は62℃に達した。結果を図3に示す。
【0023】
(装置)
市販の生ごみ処理機Bを、図5に示すように改造した。この生ごみ処理機1は、断熱構造にした発酵槽2に発酵床3を充填したものである。発酵槽2の底部の一部は浸出水の排出と空気の流入のために網状4に構成してある。パイプ5は、空気流入口と浸出水排出口を兼ねている。符号6は攪拌機、符号7はエア抜きパイプである。そして、処理中は排気中のアンモニア濃度は10ppm 以下で、必要な空気量は、発熱により自然対流が生じて自動的に供給される。攪拌は1日1回、約5分間程度が好ましい。過剰な攪拌は発酵熱が放散して発酵速度の低下を示す。図6の装置は、簡易型の生ごみ処理機8であり、攪拌機6を手で回すようになっている。これらの機械について、以下説明する。
(1) 発酵床の入替えは処理効果の低下を招くので行わないことが好ましい。高濃度微生物の発酵床となっているためである。また、種菌の補充は不要であり、担体の少量補充のみでよい。
(2) 発酵促進用のヒータは不要である。寒冷地向けのものには、備えておいてもよい。寒冷地でも、室内使用の場合は不要である。
(3) 必要空気は、発酵熱により自動的に自然対流で供給されるが、ファンで間欠的に強制排気するようにしてもよい。
(4) 処理能力は極めて高く、大量の生ごみ投入にも十分耐え、生ごみに付着した洗剤や油類、魚のあら等、生ごみと呼ばれるあらゆるものを分解資化する。更に、紙屑、とうもろこしの皮等セルロース分も時間はかかるが分解資化される。また、海老殻や蟹殻等のキチンキトサン含有物についても同様である。
(5) 投入中止や、高発酵温度によっても、処理細菌は死滅しない。
(6) 腐敗臭がしない。これは、好気性細菌の優先化を示している。但し、生ごみ2.5kg/発酵床30リットル程度以上の大量の生ごみ投入した場合や、C/N比が低い場合はアンモニア臭や有機酸臭を発する。
(7) 蠅が寄りつかない。
(8) アンモニア、硫化水素等の悪臭がない。但し、長期的にはC/N比調整剤としてバークチップ等を補給するとよい。
(9) 侵出水はN、P、K、Si、Ca等のミネラルに富み、しかも腐敗菌が存在しないので、液肥として利用できる。
(10)使用中の担体は良質のコンポストになっているので、これを一部抜き出して、無悪臭の有機肥料として利用できる(家庭園芸用等)。
(11)小鰺や鰯等を丸ごと投入しても分解されるので、大きな骨以外の骨類も分解される。
(12)強制排気/脱臭筒を持っていると、悪臭対策の安全弁となる。脱臭筒は、発酵床と同様の構成の脱臭剤或いは、更に高濃度菌体保持剤を収納した生物脱臭筒にすることができる。
(13)その他発酵調整剤として、有機酸臭のある時(炭素源過多)は、硫安等窒素源(液状は結晶状)を添加するとよい。アンモニア臭がある時は廃油等の炭素源を添加するとよい。
(14)以上により、システムキッチンに組み込んだり炊事場内、室内に設置することも可能になった。
【0024】
(侵出水について)
従来、侵出水中には雑菌も多く、腐敗臭がするため下水に放流されてきた。本実験結果では、腐敗菌は検出されず、しかも無臭であった。分析結果より、家庭園芸用の液肥として利用できる。但し、その成分は投入生ごみの種類により変動する。濃い場合は、希釈して用いる(ガラスコップに入れて底まで綺麗に見える程度に希釈する)。この侵出水中には、一例として
Na Mg Al Si Ca P K Fe
0.5 3.8 0.6 13.4 26.0 3.6 79.3 0.3(単位はmg/l)
の各イオンと、80ppm のT−N、及びバチルス分泌構成物質や酵素が含まれている。
【0025】
(生ごみ処理機による連続テスト、図4)
発酵床は、前記例と同じものを使用し、無選別生ごみを1.5〜3.3kg/日(調味料を含む、天麩羅かす及び、廃油200〜500cc投入)。結果を図4に示す。図中、数字は投入量(kg)である。
(結果)
(1) ごみ量と発酵温度は比例関係にある。これは、発酵槽内に十分な菌濃度がある証明である。
(2) 油は短時間で分解している(100〜200cc添加)。
(3) 発酵温度にバラツキがあるが、投入した生ごみの量、質に起因するバラツキがある。
(4) 発酵床嵩の増大は、目視的には認められ無かった。
(5) 極めて高い分解資化能を示した。
(6) アンモニアは、10〜40ppm であった。
【0026】
(実施の形態3:脱臭筒の設置)
図7(a)に示すの生ごみ処理機9は、図5に示す装置の発酵槽2の蓋部分に、図7(b)に示す脱臭筒10を設けたものである。脱臭筒10は網11で外周を構成し、その内部には上記した発酵床と同じか或いはより高濃度(1×108 個/g以上)のバチルス菌や胞子が含まれている濾材12を充填する。前述したように、本細菌の細胞膜表面は粘性の高いコロイドで包まれており、アンモニア、硫化水素その他のアミン類を瞬時に吸着するとともに、これらを分解資化する。この特性を利用し、且つその活性化に必要な温度と水分は発酵床より自動的に供給されて、高い菌体濃度を維持し続ける。そして、その脱臭能は極めて高く、15cm厚さを通過させると、70ppm のアンモニアが、1ppm 以下に低下する。この機能が、常に損なわれることなく継続するので、活性炭やゼオライト等の化学的物理的吸着に見られない効果と、過飽和時の入替え等を全く無視することができる。特に、生ごみ処理機の装着に最もベターな脱臭機である。
【0027】
本発明発酵床においては、発酵温度が60℃を越えている場合がしばしば認められ、グラム陽性芽胞形成細菌の最も高い活性を示す範囲にあり、活性化のための熱量は十分である。更に、脱臭筒を上部、蓋裏、壁面等に装着するため、過剰な水分は滴下され、侵出水の一部となり、吸着層には60〜65%の水分が常に保持される。また、強制換気は脱臭筒の後に小型ファンを設置し、発酵床攪拌は、2分間×回/6〜12時間に合わせて作動させるのがよい。過剰な攪拌は、発酵熱の放散に繋がり、生物活性を低下させ、生ごみ分解資化能を低下させる。尚、本処理機、処理方法により、無選別生ごみ(油、魚、骨、めん類、米飯、野菜果物、調味料、肉類、すし、豆腐等)最大4kg/日の分解資化を問題なく行なうことができた(通常は1〜2.5kg/日)。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の生ごみ処理方法は、セルロース系基材からなる担体と、バチルス属細菌を含む汚泥に対して、曝気をするとともに、養分を菌が糸状体を形成しない範囲で徐々に増量するように与えて、菌の馴化或いは変成を生じさせることによって得られた、澱粉、蛋白質、脂肪の分解能に優れた複数種のバチルス属細菌或いはその胞子と、シリカ成分とマグネシウム成分とを混入して発酵床とし、該発酵床を充填した発酵槽内に生ごみを投入して、攪拌と通気を与えて分解するものである。従って、以下に述べるような種々な効果を奏する
(1)投入する生ごみの種類やサイズを選ばない。
(2)1〜2日で殆どの生ごみが分解される。分解が完全なため、発酵床の増加等は生じない。
(3)菌体の補充や微生物担体の取り替えが不要で手間がかからない。但し、発酵床を堆肥として用いてもよく、その場合は少なくとも1/10程度を残して発酵床担体を入れ換える。
(4)悪臭の発生がない。
(5)発酵熱が高いため、ヒーターの稼働時間を短くしたり、弱加温にしたり或いは加温をしなくてすむし、菌体の補充もいらないのでランニングコストが極めて低い。
【図面の簡単な説明】
【図1】生ごみ処理の仕組みを示す説明図である。
【図2】生ごみ処理機による試行テストの結果を示すグラフである。
【図3】生ごみの分解資化テストの結果を示すグラフである。
【図4】生ごみ処理機による連続テストの結果を示すグラフである。
【図5】本発明に使用する生ごみ処理機の一例を示す断面図である。
【図6】本発明に使用する簡易型生ごみ処理機の一例を示す断面図である。
【図7】(a)は本発明に使用する生ごみ処理機の他の例を示す断面図であり、(b)は生物脱臭筒の斜視図である。
【符号の説明】
1 生ごみ処理機
2 発酵槽
3 発酵床
4 網状
5 パイプ
6 攪拌機
7 エア抜きパイプ
8 簡易型生ごみ処理機
9 生ごみ処理機
10 脱臭筒
11 網
12 濾材
Claims (4)
- セルロース系基材からなる担体と、
バチルス属細菌を含む汚泥に対して、曝気をするとともに、養分を菌が糸状体を形成しない範囲で徐々に増量するように与えて、菌の馴化或いは変成を生じさせることによって得られた、澱粉、蛋白質、脂肪の分解能に優れた複数種のバチルス属細菌或いはその胞子と、
シリカ成分とマグネシウム成分と
を混入して発酵床とし、
該発酵床を充填した発酵槽内に生ごみを投入して、攪拌と通気を与えて分解することを特徴とする生ごみの処理方法。 - バチルス属細菌或いはその胞子を、発酵床に1×107 個/g以上保持させるものであることを特徴とする請求項1記載の生ごみの処理方法。
- シリカ成分及びマグネシウム成分を、発酵床重量の0.1%以上含有させるものであることを特徴とする請求項1記載の生ごみの処理方法。
- 廃油やバーク等の炭素源や硫安等の窒素源を、C/N比補正用の助剤として添加するものであることを特徴とする請求項1記載の生ごみの処理方法。
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