JP3918489B2 - 樹脂複合材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂複合材料及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、少なくとも2種のポリマー及び層状粘土鉱物を含有する樹脂複合材料、並びにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルは、微生物や酵素の働きにより分解する性質、いわゆる生分解性を示すことが知られている。そして、脂肪族ポリエステルの生分解速度、あるいは剛性などの力学的特性や結晶化速度といった特性の向上を目的として、有機化剤で有機化された層状粘土鉱物をポリ乳酸に添加した樹脂複合材料が提案されている。
【0003】
例えば特開2000−17157号公報、特開2001−89646号公報には、脂肪族ポリエステルなどの樹脂と、有機アンモニウム化合物などの有機化剤により有機化された層状粘土鉱物とを含む樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、特開2000−256087号公報には、ポリ乳酸などの乳酸系ポリエステルと膨潤性無機フィラーとを含む皮膜材料を用いて肥料の溶出速度を制御した徐放性肥料が開示されており、膨潤性無機フィラーとして、12−アミノドデカン酸アンモニウム塩などで膨潤化された層状ケイ酸塩が例示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の樹脂複合材料であっても、剛性、靭性、延性などの力学的特性や結晶化速度の点で必ずしも十分であるとは言えない。そこで、脂肪族ポリエステルの特性を向上させる目的で脂肪族ポリアミドなどを添加する試みがなされているが、脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリアミドとは相溶しにくく、これらを十分に均一に分散させることは非常に困難である。
【0006】
また、Macromol. Chem. Phys., 199, 2445(1998)には、ε−カプロラクタムを加水分解した後、これを乳酸と脱水重縮合してポリ乳酸とポリアミドとのブロック共重合体を合成する方法が記載されているが、かかる方法ではオリゴマーが得られるのみであり、実用に供し得る樹脂は未だ得られていない。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、少なくとも2種のポリマー及び層状粘土鉱物を含有する樹脂複合材料において、層状粘土鉱物の層間に異種のポリマー同士が十分に均一に相溶しており、剛性(強度、弾性率など)、靭性、延性などの力学的特性や結晶化速度に優れた樹脂複合材料、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の樹脂複合材料は、第1及び第2の有機オニウム塩で有機化された層状粘土鉱物と、
前記第1の有機オニウム塩を介して前記層状粘土鉱物と結合した第1のポリマーと、
前記第2の有機オニウム塩を介して前記層状粘土鉱物と結合した第2のポリマーと
を含有し、
前記第1の有機オニウム塩が水酸基を有する有機オニウム塩であり、
前記第2の有機オニウム塩がカルボキシル基を有する有機オニウム塩であり、
前記第1のポリマーが前記第1の有機オニウム塩の水酸基を介して前記層状粘土鉱物と結合した脂肪族ポリエステルであり、
前記第2のポリマーが前記第2の有機オニウム塩のカルボキシル基を介して前記層状粘土鉱物と結合した脂肪族ポリアミドであることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1及び第2の有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化し、この層状粘土鉱物を、第1の有機オニウム塩を介して第1のポリマー、第2の有機オニウム塩を介して第2のポリマーとそれぞれ結合させることによって、これらのポリマー間の相溶性が本来的に低い場合であっても、当該ポリマー同士を層状粘土鉱物の層間において十分に均一に相溶させることができ、その結果、剛性(強度、弾性率など)、靭性、延性などの力学的性質や結晶化速度の点で優れた特性を有する樹脂複合材料が実現される。
【0010】
また、本発明の樹脂複合材料の第1の製造方法は、
水酸基を有する第1の有機オニウム塩及びカルボキシル基を有する第2の有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、
前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練し、前記第1の有機オニウム塩の水酸基と前記脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基とを反応させる脂肪族ポリエステル混練工程と、
前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物と脂肪族ポリアミドとを溶融混練し、前記第2の有機オニウム塩のカルボキシル基と前記脂肪族ポリポリアミドの末端アミノ基とを反応させる脂肪族ポリアミド混練工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の樹脂複合材料の第2の製造方法は、
水酸基を有する第1の有機オニウム塩及びカルボキシル基を有する第2の有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、
前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物とα−ヒドロキシ酸の環状二量体及び/又はラクトン類とを混合し、前記第1の有機オニウム塩の水酸基を反応点として脂肪族ポリエステルを生成させる脂肪族ポリエステル重合工程と、
前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物とラクタム類とを混合し、前記第2の有機オニウム塩のカルボキシル基を反応点として脂肪族ポリアミドを生成させる脂肪族ポリアミド重合工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第1及び第2の製造方法はいずれも、第1のポリマーと層状粘土鉱物との間に第1の有機オニウム塩を介した結合を形成させると共に、第2のポリマーと層状粘土鉱物との間に第2の有機オニウム塩を介した結合を形成させるもので、これにより層状粘土鉱物の層間において第1のポリマーと第2のポリマーとを十分に均一に相溶させることができるので、力学的特性や結晶化速度に優れた本発明の樹脂複合材料を効率よく且つ確実に得ることができる。
【0016】
このように水酸基を有する有機オニウム塩とカルボキシル基を有する有機オニウム塩とで有機化された層状粘土鉱物を、水酸基を介して脂肪族ポリエステル、カルボキシル基を介して脂肪族ポリアミドとそれぞれ結合させることによって、本来的に相溶性の低い脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリアミドとを層状粘土鉱物の層間で十分に均一に相溶させることができ、剛性、靭性、延性などの力学的特性や結晶化速度に優れた樹脂複合材料が実現される。なお、当該第1のポリマーがポリ乳酸であると、力学的特性や結晶化速度をさらに向上させることができるので好ましい。
【0017】
また、本発明においては、前記第1及び第2の有機オニウム塩の炭素数がそれぞれ6以上であることが好ましい。第1及び第2の有機オニウム塩として炭素数6以上のものを用いると、当該有機オニウム塩により層状粘土鉱物の層間距離が十分に広められるので、第1及び第2のポリマーと層状粘土鉱物との分散均一性が高められ、剛性、靭性、延性などの力学的特性や結晶化速度が向上する傾向にある。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明の樹脂複合材料は、第1及び第2の有機オニウム塩で有機化された層状粘土鉱物と、第1の有機オニウム塩を介して層状粘土鉱物と結合した第1のポリマーと、第2の有機オニウム塩を介して層状粘土鉱物と結合した第2のポリマーとを含有することを特徴とするものである。これにより、第1及び第2のポリマー間の相溶性が本来的に低い場合であっても、当該ポリマー同士を層状粘土鉱物の層間において十分に均一に相溶させることができ、剛性(強度、弾性率など)、靭性、延性などの力学的性質や結晶化速度の点で優れた特性を有する樹脂複合材料が実現される。
【0020】
本発明にかかる層状粘土鉱物としては特に制限されないが、具体的には、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト族;カオリナイト、ハロサイトなどのカオリナイト族;ジオクタヘドラルバーミキュライト、トリオクタヘドラルバーミキュライトなどのバーミキュライト族;テニオライト、テトラシリシックマイカ、マスコバイト、イライト、セリサイト、フロゴバイト、バイオタイトなどのマイカなどが挙げられる。これらの層状粘土鉱物は、天然鉱物であってもよく、水熱合成、溶融法、固相法などによる合成鉱物であってもよい。また、本発明では、上記の層状粘土鉱物のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、層状粘土鉱物の陽イオン交換容量は30〜300meq/100gであることが好ましい。
【0021】
また、本発明において用いられる第1及び第2のポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリオレフィン等が挙げられるが、脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリアミドとを組み合わせて用いると、力学的特性や結晶加速度の点でより優れた樹脂複合材料が実現されるので好ましい。
【0022】
また、本発明において用いられる第1及び第2の有機オニウム塩としては、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機ピリジニウム塩、有機スルホニウム塩などのオニウム塩において有機基に水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、エステル基、エポキシ基、酸無水物基等の官能基が結合した化合物が挙げられ、上述したポリマーの種類に応じて当該ポリマーと共有結合を形成可能な官能基を有するものが適宜選定される。例えば、ポリマーとして脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドを用いる場合、水酸基を有する有機オニウム塩を用いることによって当該有機オニウム塩の水酸基を介して脂肪族ポリエステルと層状粘土鉱物を結合させることができ、他方、カルボキシル基を有する有機オニウム塩を用いることによって当該有機オニウム塩のカルボキシル基を介して脂肪族ポリアミドと層状粘土鉱物とを結合させることができる。
【0023】
本発明で用いられる第1及び第2の有機オニウム塩の炭素数はそれぞれ6以上であることが好ましい。当該有機オニウム塩の炭素数が6未満であると、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広げられず、ポリマーと層状粘土鉱物との分散均一性が低下する傾向にある。
【0024】
なお、本発明でいう有機化とは、有機物を層状粘土鉱物の層間及び/又は表面に物理的、化学的方法(好ましくは化学的方法)により吸着及び/又は結合させることを意味し、当該有機オニウム塩による有機化によって層状粘土鉱物の層間距離を十分に広げることができる。また、かかる有機オニウム塩の対アニオンとしては特に制限されないが、例えばCl-、Br-、I-などのハロゲンアニオンが好ましく用いられる。
【0025】
また、本発明においては、樹脂複合材料に含まれる第1及び第2のポリマーの全てが層状粘土鉱物と結合している必要はなく、それらの一部が結合したものであればよい。
【0026】
また、本発明の樹脂複合材料では、上記ポリマーのうちの少なくとも2種と、それらのポリマーと共有結合を形成可能な少なくとも2種の有機オニウム塩とが含有されていればよく、例えば第3の有機オニウム塩及びこれに結合可能な第3のポリマーを更に含有するものであってもよい。
【0027】
本発明の特に好ましい実施形態として、第1の有機オニウム塩が水酸基を有する有機オニウム塩であり、第2の有機オニウム塩がカルボキシル基を有する有機オニウム塩であり、第1のポリマーが第1の有機オニウム塩の水酸基を介して層状粘土鉱物と結合した脂肪族ポリエステルであり、第2のポリマーが第2の有機オニウム塩のカルボキシル基を介して層状粘土鉱物と結合した脂肪族ポリアミドである樹脂複合材料を例示することができる。以下、この樹脂複合材料について詳細に説明する。
【0028】
水酸基を有する有機オニウム塩の含有量は、層状粘土鉱物100重量部に対して10〜150重量部であることが好ましく、20〜100重量部であることがより好ましい。当該有機オニウム塩の含有量が前記下限値未満であると、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広げられず、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドに対する分散均一性が低下する傾向にあり、他方、前記上限値を超える場合には物理吸着によって導入される有機オニウム塩の量が増加して樹脂複合材料の物性が損なわれる(例えば可塑化)傾向にある。
【0029】
本発明で好ましく用いられる水酸基を有する有機オニウム塩としては、水酸基を有するものであれば特に制限されないが、その炭素数は6以上であることが好ましい。当該有機オニウム塩の炭素数が6未満であると、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広げられず、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドに対する分散均一性が低下する傾向にある。水酸基を有し且つ炭素数が6以上である有機オニウム塩としては、下記一般式(1)又は(2)で表される有機アンモニウム塩が例示される。これらの有機アンモニウム塩は、1種を単独で用いてもよく、両者を併用してもよい。
【0030】
【化1】
Figure 0003918489
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、lは6〜20の整数を表す。]
【化2】
Figure 0003918489
[式中、R4及びR5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R4とR5との合計の炭素数は6以上であり、m及びnは同一でも異なっていてもよく、1〜20の整数を表す。]
上記一般式(1)中、R1、R2又はR3は水素原子又はアルキル基を表す。かかるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、直鎖又は分岐鎖状のペンチル基、直鎖又は分岐鎖状のヘキシル基、直鎖又は分岐鎖状のヘプチル基、直鎖又は分岐鎖状のオクチル基、直鎖又は分岐鎖状のノニル基、直鎖又は分岐鎖状のデシル基、直鎖又は分岐鎖状のウンデシル基、直鎖又は分岐鎖状のドデシル基、直鎖又は分岐鎖状のトリデシル基、直鎖又は分岐鎖状のテトラデシル基、直鎖又は分岐鎖状のペンタデシル基、直鎖又は分岐鎖状のオクタデシル基などが挙げられるが、当該アルキル基の炭素数は1〜4であることが好ましい。アルキル基の炭素数が前記上限値を超えると有機オニウム塩の合成が困難となる傾向にある。
【0031】
また、上記一般式(1)中、lはメチレン基(−CH2−)の重合度を表し、6〜20、好ましくは8〜18の整数である。lが6未満の場合、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広がらず、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドに対する分散均一性が低下する傾向にある。他方、lが20を越えると、有機オニウム塩の合成が困難となる傾向にある。
【0032】
また、上記一般式(2)中、R4及びR5は水素原子又はアルキル基を表す。かかるアルキル基としては、一般式(1)中のR1、R2及びR3の説明において例示されたアルキル基が挙げられる。
【0033】
一般式(2)中のR4及びR5は同一でも異なっていてもよいが、それらの合計の炭素数は、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。R4とR5との合計の炭素数が6未満であると、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広がらず、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドに対する分散均一性が低下する傾向にある。例えばR4が水素原子でR5がドデシル基である化合物、R4がメチル基でR5がオクタデシル基である化合物、R4及びR5がオクタデシル基である化合物は、上記の条件を満たす化合物として好ましく用いられる。
【0034】
また、上記一般式(2)中、m及びnはオキシエチレン基(−CH2CH2O−)の重合度を表し、1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の整数であり、特に好ましくは1である。m又はnが20を越えると、層状粘土鉱物の親水性が過剰に高くなり、調整が困難となる傾向にある。なお、m及びnは同一でも異なっていてもよい。
【0035】
また、本発明にかかるカルボキシル基を有する有機オニウム塩としては、カルボキシル基を有するものであれば特に制限されないが、その炭素数は6以上であることが好ましい。当該有機オニウム塩の炭素数が6未満であると、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広げられず、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドに対する分散均一性が低下する傾向にある。カルボキシル基を有し且つ炭素数が6以上である有機オニウム塩の好ましい例としては、8−アミノオクチル酸塩酸塩、12−アミノドデカン酸塩酸塩、18−アミノオクタデカン酸塩酸塩などが挙げられる。
【0036】
カルボキシル基を有する有機オニウム塩の含有量は、層状粘土鉱物100重量部に対して10〜150重量部であることが好ましく、20〜100重量部であることがより好ましい。当該有機オニウム塩の含有量が前記下限値未満であると、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広げられず、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドに対する分散均一性が低下する傾向にあり、他方、前記上限値を超える場合には物理吸着によって導入される有機オニウム塩の量が増加して樹脂複合材料の物性が損なわれる(例えば可塑化)傾向にある。
【0037】
また、水酸基を有する有機オニウム塩とカルボキシル基を有する有機オニウム塩との配合比は、樹脂複合材料の特性を損なわない限り特に制限されないが、当該配合比は、水酸基とカルボキシル基とのモル比が好ましくは1:99〜99:1、より好ましくは10:90〜90:10、さらに好ましくは20:80〜80:20の範囲内となるように設定される。水酸基とカルボキシル基とのモル比が前記の範囲外であると、層状粘土鉱物の層間において脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリアミドとを均一に相溶させることが困難となる傾向にある。
【0038】
図1(a)〜(c)はそれぞれ上記2種の有機オニウム塩によって有機化された層状粘土鉱物の状態を概念的に示す説明図である。本発明においては、図1(a)に示すように水酸基を有する有機オニウム塩2aとカルボキシル基を有する有機オニウム塩2bとの双方が層状粘土鉱物1の同一の層に結合していてもよく、図1(b)に示すように2種の有機オニウム塩2a、2bがそれぞれ層状粘土鉱物1の別個の層に結合していてもよく、さらにはこれら2つの結合形態が混在してもよい。また、有機オニウム塩2a、2bが別個の層に結合する場合、図1(c)に示すように層状粘土鉱物1の隣接する各層が端部近傍で連なったフロキュレーション(flocculation)状であると、見かけ上非常に大きいアスペクト比を有する層状粘土鉱物を形成することが可能となるので好ましい。
【0039】
これらの有機オニウム塩によって層状粘土鉱物の層間距離は十分に広げられ、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドが層間に導入される。ここで、層状粘土鉱物の層間距離は、各層の重心間の平均距離を基準として5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。層状粘土鉱物の層間距離が前記下限値未満であると、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドに対する分散均一性が低下する傾向にある。
【0040】
また、本発明にかかる脂肪族ポリエステルとしては、例えばグリコリド、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、meso−ラクチドを含む)などのα−ヒドロキシ酸の環状二量体や、β−プロピオラクトン、ジケテン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプラロラクトンなどのラクトン類の開環重合体が挙げられ、当該重合体は単独重合体、共重合体のいずれであってもよい。また、上記重合体の中でもラクチドの開環重合体であるポリ乳酸が好ましい。ポリ乳酸を用いると、剛性、靭性、延性などの力学的特性や結晶化速度が向上する傾向にある。
【0041】
本発明において好ましく用いられるポリ乳酸は、下記一般式(3):
【化3】
Figure 0003918489
(式中、nは整数を表す)
で表される繰り返し単位を有するポリマーである。当該ポリ乳酸の平均分子量は特に制限されないが、5,000〜1,000,000であることが好ましい。ポリ乳酸の平均分子量が前記下限値未満であると、強度、弾性率などの機械物性が不十分となる傾向にあり、また、前記上限値を超えると、成形の際に流動性が著しく低下する傾向にある。
【0042】
なお、ポリ乳酸の一端には、層状粘土鉱物との間に水酸基を介した結合が形成されるが、他端には、グリコリド、カプロラクトンなどを更に重合させて共重合体としてもよい。かかる共重合体におけるポリ乳酸の重合鎖は、共重合体全体を基準として80mol%以上であることが好ましい。
【0043】
また、本発明にかかる脂肪族ポリアミドとしては、ε−カプロラクタム、ラウロラクタム、2−アザシクロオクタノン、2−アザシクロノナノン、2−アザシクロトリデカノンなどのラクタム類の開環重合体(ナイロン)が挙げられ、当該重合体は単独重合体、共重合体のいずれであってもよい。
【0044】
脂肪族ポリアミドとの配合量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対して1〜1000重量部であることが好ましく、10〜1000重量部であることがより好ましく、25〜400重量部であることがさらに好ましい。脂肪族ポリアミドの配合量が前記下限値未満の場合、樹脂複合材料の耐衝撃性や耐熱性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると弾性率が低下する傾向にある。
【0045】
また、層状粘土鉱物の配合量は、脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリアミドとの配合量の合計100重量部に対して0.01〜20重量部であることが好ましく、1〜12重量部であることがより好ましい。層状粘土鉱物の配合量が前記下限値未満であると、剛性などの力学的特性や結晶化速度の向上の程度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超える場合には脆化する傾向にある。
【0046】
次に、本発明の樹脂複合材料の製造方法について説明する。
【0047】
本発明の第1の製造方法は、第1及び第2の有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、有機化工程で得られる層状粘土鉱物と第1のポリマーとを溶融混練し、第1の有機オニウム塩を介して層状粘土鉱物と第1のポリマーとを結合させる第1の混練工程と、有機化工程で得られる層状粘土鉱物と第2のポリマーとを溶融混練し、第2の有機オニウム塩を介して層状粘土鉱物と第2のポリマーとを結合させる第2の混練工程とを含むことを特徴とするものである。
【0048】
有機化工程は、例えば本出願人により特許第2627194号公報に開示されている方法により行うことができる。すなわち、層状粘土鉱物中の無機イオンを、第1及び第2の有機オニウム塩から生じる有機オニウムイオン(例えば有機アンモニウム塩においては有機アンモニウムイオン)によりイオン交換することによって、層状粘土鉱物の有機化を行うことができる。
【0049】
より具体的には、例えば水酸基を有する有機アンモニウム塩とカルボキシル基を有する有機アンモニウム塩とを用いる場合には、次のような方法により有機化を行うことができる。すなわち、塊状の層状粘土鉱物を用いる場合は、先ずこれをボールミルなどにより粉砕し粉体化する。次いで、ミキサーなどを用いてこの粉体を水中に分散させて層状粘土鉱物の水分散物を得る。これとは別に、水酸基を有する有機アミン、カルボキシル基を有する有機アミン及び塩酸などの酸を水に加えて、上記2種類の有機アンモニウム塩を含有する水溶液を調製する。この水溶液を上記層状粘土鉱物の水分散物に加えて混合することにより、層状粘土鉱物中の無機イオンが有機アンモニウム塩から生じた2種類の有機アンモニウムイオンによりイオン交換される。この混合物から水を除去することにより、水酸基を有する有機アンモニウム塩とカルボキシル基を有する有機アンモニウム塩とで有機化された層状粘土鉱物が得られる。
【0050】
有機アンモニウム塩や層状粘土鉱物の分散媒体としては、水以外にもメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール及びこれらの混合物、並びにこれらと水との混合物を使用することができる。
【0051】
かかる有機化工程においては、上記したように第1の有機オニウム塩(水酸基を有する有機オニウム塩)及び第2の有機オニウム塩(カルボキシル基を有する有機オニウム塩)による有機化を同時に行ってもよく、一方の有機オニウム塩で有機化した後に他方で有機化してもよい。
【0052】
次に、有機化工程で得られる層状粘土鉱物と第1及び第2のポリマーとを溶融混練することによって本発明の樹脂複合材料を得ることができる。例えば、水酸基を有する有機オニウム塩、カルボキシル基を有する有機オニウム塩、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドを用いる場合、水酸基を有する有機オニウム塩の水酸基と脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基とが反応して両者の間に水酸基を介した結合が形成され、また、カルボキシル基を有する有機オニウム塩のカルボキシル基と脂肪族ポリアミドの末端アミノ基との反応がそれぞれ進行して両者の間にカルボキシル基を介した結合が形成される。これにより、層状粘土鉱物の層間において脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリアミドとを十分に均一に相溶させることができ、剛性、靭性、延性などの力学的特性や結晶化速度に優れた本発明の樹脂複合材料を得ることができる。
【0053】
なお、第1の製造方法においては、第1のポリマーと層状粘土鉱物との混練と、第2のポリマーと層状粘土鉱物との混練を同時に行ってもよく、これらのポリマーの一方を層状粘土鉱物と混練した後、得られる混練物と他方とを更に混練してもよい(以下、単に「混練工程」というが、当該混練工程は上記した手順の双方を包含するものである)。
【0054】
混練工程における温度は、ポリマーと有機オニウム塩との反応の種類に応じて適宜選定される。例えば有機オニウム塩の水酸基と脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基との反応、並びに有機オニウム塩のカルボキシル基と脂肪族ポリアミドの末端アミノ基との反応を行う場合、当該温度の上限値は好ましくは280℃であり、より好ましくは250℃である。当該温度が前記上限値を超えると、脂肪族ポリエステル(あるいは更に脂肪族ポリアミド)の分子量が低下して樹脂複合材料の物性が損なわれる(例えば可塑化)傾向にある。また、当該温度の下限値は脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリアミドの種類によって異なるが、脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリアミドのうち融点が低いポリマーの融点以上であることが好ましい。例えばポリ乳酸の融点は170〜180℃であり、ナイロン6の融点は225℃であり、ナイロン12の融点は185℃であるので、これらを組み合わせる場合にはポリ乳酸の融点以上に温度を設定することが好ましい。温度が上記の条件を満たさないと、脂肪族ポリエステルや脂肪族ポリアミドの溶融が不十分となり、これらの分散均一性が低下する傾向にある。
【0055】
また、混練工程の際には、本出願人により国際公開WO99/50340号公報に開示されている方法に準じて行うことが好ましい。すなわち、高樹脂換算圧力、高総せん断量、高せん断エネルギーを加えることが可能なスクリューを備える二軸混練機を用い、樹脂換算圧力の平均値が5×104Pa以上、最大値が1×105Pa、総せん断量が105〜107、総せん断エネルギーが1010〜1014Paの条件下で有機化された層状粘土鉱物と第1及び第2のポリマーとを溶融混練することによって、これらの分散均一性をより高めることができる。
【0056】
本発明の第2の製造方法は、第1及び第2の有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、有機化工程で得られる層状粘土鉱物と第1の重合性化合物とを混合し、該第1の重合性化合物の反応により、第1の有機オニウム塩を介して層状粘土鉱物と結合した第1のポリマーを生成させる第1の重合工程と、有機化工程で得られる層状粘土鉱物と第2の重合性化合物とを混合し、該第2の重合性化合物の反応により第2の有機オニウム塩を介して前記層状粘土鉱物と結合した第2のポリマーを生成させる第2の重合工程とを含むものである。
【0057】
第2の製造方法にかかる有機化工程は、上記第1の製造方法にかかる有機化工程と同様にして行うことができる。
【0058】
また、第1及び第2の重合工程は同時に行ってもよく、重合工程の一方を行った後に他方を行ってもよい。例えば、脂肪族ポリエステル重合工程及び脂肪族ポリアミド重合工程の順序については以下の(i)〜(iii)が例示できる。
(i)脂肪族ポリエステル重合工程を行った後、脂肪族ポリアミド重合工程を行う;
(ii)脂肪族ポリアミド重合工程を行った後、脂肪族ポリエステル重合工程を行う;
(iii)有機化工程で得られる層状粘土鉱物と、α−ヒドロキシ酸の環状二量体及び/又はラクトン類と、ラクタム類とを混合し、脂肪族ポリエステル重合工程と脂肪族ポリアミド重合工程とを同時に行う。
【0059】
上記した手順(i)〜(iii)の中でも、手順(i)が特に好ましい。手順(ii)、(iii)では重合の際に生成するアミド(ラクタム又はその開環重合により生成したポリアミド)がラクチド重合の触媒毒となって脂肪族ポリエステルの分子量が不十分となる恐れがあるが、手順(i)によればこのような現象を十分に抑制することができ、分子量が十分に大きい脂肪族ポリエステルを生成させることができる。
【0060】
また、上記脂肪族ポリエステル重合工程及び脂肪族ポリアミド重合工程は、所定の触媒を用いて行ってもよく、無触媒で行ってもよい。触媒としては、具体的には、オクチル酸化スズ、塩化スズ、塩化亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられ、その使用量は重合性単量体100重量部に対して0.001〜1重量部であることが好ましい。また、当該重合工程における反応温度は100〜200℃であることが好ましい。
【0061】
このように本発明の第1及び第2の製造方法はいずれも、第1のポリマーと層状粘土鉱物との間に第1の有機オニウム塩を介した結合を形成させると共に、第2のポリマーと層状粘土鉱物との間に第2の有機オニウム塩を介した結合を形成させるもので、これにより層状粘土鉱物の層間において第1のポリマーと第2のポリマーとを十分に均一に相溶させることができるので、力学的特性や結晶化速度に優れた本発明の樹脂複合材料を効率よく且つ確実に得ることができる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
実施例1
(層状粘土鉱物の有機化)
ナトリウム型モンモリロナイト(クニミネ鉱業製クニピアF、陽イオン交換容量:115meq/100g)100gを80℃の水5000mlに分散させ、一方、ジヒドロキシエチルメチルステアリルアンモニウムブロミド(以下、18(OH)2という)36.4g、12−アミノドデカン酸(以下、12COOHという)7.4g及び濃塩酸3.3mlを80℃の水2000mlに溶解させた。次いで、両者を混合してモンモリロナイトの有機化を行い18(OH)2と12COOHとが7:3のモル比で付加した有機化モンモリロナイトを得た。得られた有機化モンモリロナイト(以下、18(OH)2−Montという)を80℃の水で3回洗浄し、凍結乾燥した後、これを粉砕した。灼残法により求めた有機化モンモリロナイトの無機分の残量は64%であった。
【0064】
(ポリ乳酸及びナイロン12の混練)
スクリューを備える二軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用い、ポリ乳酸樹脂(島津製作所製ラクティ#9030)に上記の有機化モンモリロナイトを無機分換算値で4.3重量%添加した混合物を、スクリュー回転数300rpm、樹脂温度200℃、樹脂供給速度5kg/hで溶融混練した。この混練の途中から、ナイロン12樹脂(宇部興産製ナイロン3024B)を、ポリ乳酸とナイロン12との重量比が7:3となるようにして添加し、更に溶融混練を行って目的の樹脂複合材料を得た。得られた樹脂複合材料をストランド状に押し出した後、水で急冷し、ストランドカッターでペレットとした。
【0065】
(分散状態の評価)
上記のペレットをミクロトームで切り出して超薄切片を作製した。これを透過型電子顕微鏡(日本電子製JOEL−200CX)で観察し、層状粘土鉱物の分散状態を以下の基準:
○:層状粘土鉱物がほぼ単層ごとに微分散している
△:2〜3層が凝集した状態の層状粘土鉱物が50%以上認められる
×:ほとんどの層状粘土鉱物が数十層以上凝集した状態で分散している
に基づいて評価した。得られた結果を表1に示す。
【0066】
(力学的特性の評価)
射出成形機(日精樹脂工業製PS40E2ASE)及びFS75型を用いて上記の樹脂複合材料の射出成形を行い、ダンベル型引張試験片を得た。この試験片を用い、ASTM D638Mに準じて引張り試験を行い、引張強さ、破断伸び、弾性率を評価した。また、ASTM D256に準じてIzod衝撃試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0067】
(ナイロン6の平均分散粒径の測定)
Izod衝撃試験で用いた試験片の破断面を金蒸着した後、走査型電子顕微鏡(明石製作所製SIGMA−V)を用いてポリ乳酸とナイロン12の層構造を観察し、ナイロン12の平均分散粒径を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0068】
(結晶化時間の測定)
上記のペレットを用い、DSC測定装置(パーキンエルマー社製DSC−7)により結晶化時間を測定した。すなわち、試料0.3mgをアルミパンに入れ、200℃で5分間保持してから110℃まで急激に降温して保持し、降温してから結晶化の吸熱ピークが現れるまでの時間を結晶化時間とした。得られた結果を表1に示す。
【0069】
実施例2
ナイロン12樹脂の代わりにナイロン6樹脂(宇部興産製ナイロン1015B)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び力学的特性の評価、並びにナイロン6の平均分散粒径及び結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0070】
実施例3
先ず、実施例1と同様にして有機化モンモリロナイトを合成した。次に、この有機化モンモリロナイト3.5g、L−ラクチド100g、オクチル酸スズ200mgを反応容器に入れ、10-2mmHgまで減圧した。続いて十分撹拌しながら徐々に温度を上昇させ、160℃で3時間保持した。更に、2−アザシクロトリデカノン60gを反応容器内に導入し、再度減圧した後180℃で3時間保持して目的の樹脂複合材料を得た。
【0071】
このようにして得られた樹脂複合材料について、実施例1と同様にして分散状態及び力学的特性の評価、並びにナイロンの平均分散粒径及び結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0072】
比較例1
有機化モンモリロナイトを用いずに、実施例1と同様のポリ乳酸及びナイロン12を溶融混練してペレットを作製した。このペレットについて、実施例1と同様にして分散状態及び力学的特性の評価、並びにナイロン12の分散粒径及び結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0073】
比較例2
18(OH)2は用いずに、12COOHのみを用いてモンモリロナイトの有機化を行ったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び力学的特性の評価、並びにナイロン12の平均分散粒径及び結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0074】
比較例3
12COOHは用いずに、18(OH)2のみを用いてモンモリロナイトの有機化を行ったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び力学的特性の評価、並びにナイロン12の平均分散粒径及び結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0075】
比較例4
18(OH)2及び12COOHは用いずに、ステアリルトリメチルアンモニウム(C18Me3)を用いてモンモリロナイトの有機化を行ったこと以外が実施例1と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び力学的特性の評価、並びにナイロン12の平均分散粒径及び結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0076】
【表1】
Figure 0003918489
【表2】
Figure 0003918489
表1に示したように、実施例1〜3の樹脂複合材料においては、ナイロンとポリ乳酸とが十分に均一に且つ微細に相溶しており、ポリ乳酸とナイロン12との溶融混練物(比較例1)に比べて靭性、延性、強度及び弾性率の向上が認められた。
【0077】
これに対して、表2に示したように、比較例2〜4の樹脂複合材料においては、樹脂中にモンモリロナイトが微細分散しているものの、ナイロンが平均分散粒径数μmの大きな粒子としてポリ乳酸マトリックス中に存在するため、十分な補強効果が得られておらず、単に硬く脆い材料であることがわかった。
【0078】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、第1及び第2の有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化し、この層状粘土鉱物を、第1の有機オニウム塩を介して第1のポリマー、第2の有機オニウム塩を介して第2のポリマーとそれぞれ結合させることによって、これらのポリマー間の相溶性が本来的に低い場合であっても、当該ポリマー同士を層状粘土鉱物の層間において十分に均一に相溶させることができ、その結果、剛性(強度、弾性率など)、靭性、延性などの力学的性質や結晶化速度の点で優れた特性を有する樹脂複合材料が実現される。
【0079】
また、本発明の樹脂複合材料の製造方法によれば、このように優れた特性を有する本発明の樹脂複合材料を効率よく且つ確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)はそれぞれ2種の有機オニウム塩によって有機化された層状粘土鉱物の状態を概念的に示す説明図である。
【符号の説明】
1…層状粘土鉱物、2a…水酸基を有する有機オニウム塩、2b…カルボキシル基を有する有機オニウム塩。

Claims (5)

  1. 第1及び第2の有機オニウム塩で有機化された層状粘土鉱物と、
    前記第1の有機オニウム塩を介して前記層状粘土鉱物と結合した第1のポリマーと、
    前記第2の有機オニウム塩を介して前記層状粘土鉱物と結合した第2のポリマーと
    を含有し、
    前記第1の有機オニウム塩が水酸基を有する有機オニウム塩であり、
    前記第2の有機オニウム塩がカルボキシル基を有する有機オニウム塩であり、
    前記第1のポリマーが前記第1の有機オニウム塩の水酸基を介して前記層状粘土鉱物と結合した脂肪族ポリエステルであり、
    前記第2のポリマーが前記第2の有機オニウム塩のカルボキシル基を介して前記層状粘土鉱物と結合した脂肪族ポリアミドであることを特徴とする樹脂複合材料。
  2. 前記第1のポリマーがポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂複合材料。
  3. 前記第1及び第2の有機オニウム塩の炭素数がそれぞれ6以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂複合材料。
  4. 水酸基を有する第1の有機オニウム塩及びカルボキシル基を有する第2の有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、
    前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練し、前記第1の有機オニウム塩の水酸基と前記脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基とを反応させる脂肪族ポリエステル混練工程と、
    前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物と脂肪族ポリアミドとを溶融混練し、前記第2の有機オニウム塩のカルボキシル基と前記脂肪族ポリポリアミドの末端アミノ基とを反応させる脂肪族ポリアミド混練工程と
    を含むことを特徴とする樹脂複合材料の製造方法。
  5. 水酸基を有する第1の有機オニウム塩及びカルボキシル基を有する第2の有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、
    前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物とα−ヒドロキシ酸の環状二量体及び/又はラクトン類とを混合し、前記第1の有機オニウム塩の水酸基を反応点として脂肪族ポリエステルを生成させる脂肪族ポリエステル重合工程と、
    前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物とラクタム類とを混合し、前記第2の有機オニウム塩のカルボキシル基を反応点として脂肪族ポリアミドを生成させる脂肪族ポリアミド重合工程と
    を含むことを特徴とする樹脂複合材料の製造方法。
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