JP6025536B2 - ガスバリア性を高めたクレイ分散ポリアミド・ナノコンポジット複合化ポリ乳酸樹脂成形品 - Google Patents
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特許文献1には、「熱可塑性樹脂中に層状無機化合物がナノメートルオーダーで分散してなる高分子複合材料の製造方法であって、熱可塑性樹脂と有機修飾剤を層状無機化合物にインターカレートした層間化合物とを、混練装置を用いて、前記層間化合物中の有機修飾剤の蒸発温度にて溶融混練することを特徴とする高分子複合材料の製造方法」が開示されてる(請求項1参照)。使用される熱可塑性樹脂としてポリ乳酸、ポリアミドが挙げられている(段落[0010]参照)。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
本発明においては、ガスバリア性に効く原料としてモンモリロナイト(天然品)を選定し、PA11中にモンモリロナイトのナノシートが均一分散した複合体(以下、「PA11/クレイナノコンポジット」又は単に「ナノコンポジット」ともいう。)を形成し、PLA樹脂中にPA11/クレイナノコンポジットがドメインとして均一分散した成形用樹脂(以下、「PLAナノアロイ」ともいう。)を形成し、(ボトルのブロー成形時の延伸・成形を想定して)PLAナノアロイを延伸することにより、PA11/クレイナノコンポジット・ドメイン内にあるナノシートを配向させて、ガスバリア性を発現させる。ここで、PA11/クレイナノコンポジット・ドメインは、配向後、厚さ方向で20〜30nm程度とすることで、PLAナノアロイ成形後の透明性を確保した(図8、図9参照)。
PA11とは、一般には、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(融点187℃)である。
ナノコンポジットの一種として、膨潤性クレイのナノシートを用いたポリマー系ナノコンポジットが知られており、例えば、PA6やPA12などではクレイのナノ分散とそれに伴う材料物性の変化が確認されている。本発明においては、膨潤性クレイとして天然由来のNa型モンモリロナイトに注目し、そのナノシートをバリア性フィラーとして利用する複合材料の形成を試みた。
図1に、膨潤性クレイのナノシートへのほう開と、ナノシートが分散されたナノコンポジットの類例を示す。
i)バリア構造上の欠陥点の形成を抑えるために、ナノ分散不良を極力防ぐ手法を用いた。本発明においては、有機処理クレイをPA11に直接溶融混練する方法(1段法)ではなく、予めクレイ/PA11オリゴマーによるナノコンポジットを調製した後にPA11樹脂と混練する方法(2段法)用いた。これにより有機処理クレイ(層間距離拡大のため、予めアルキルアンモニウム塩をインターカレーションさせて調製した中間体:市販品もあり)に含まれるポリマー成分以外の低分子有機物の混入を防ぐことができた。
ii)予め調製するクレイ/PA11オリゴマー型ナノコンポジットは重合法による。PA11系はin situ重合法によるクレイ型ナノコンポジットの形成が可能であり、クレイのナノ分散には有利である。
図2に、前記2段法の手順を示す。
以下の実施例1による種々の測定の結果、へき開した膨潤性クレイのナノシートをPA11系ポリアミド樹脂に単層レベルまで分散させたナノコンポジットを形成することができることが判明した。
MMT/PA11ナノコンポジット(MMT/PA11−NC)をPLA樹脂マトリックス中に均一分散させるには、PLAとPA11の相溶性向上のために、(i)樹脂の改質、又は(ii)相溶化剤の使用が必要となる。すなわち、エステル系のPLAとアミド系のPA11の間の乏しい相溶性を高めるための相溶化剤の選定と混練条件の選定が重要である。
本発明者らが検討した結果、無水マレイン酸(MA)によるPLA樹脂の改質(変性)によっては所望の結果を得ることができなかったので、相溶化剤としてエチレン(E)/グリシジルメタクリレート(GMA)/メチルアクリレート(MA)系ターポリマ(E/GMA/MA=67/8/25(wt/wt/wt))(Aldrich社製 試薬級)を使用して均一分散を達成した。図10に、E−GMA−MAの構造を示す。
E−GMA−MA系では、所定量のターポリマーをPLAとMMT/PA11−NC混合物に配合したプレブレンドを溶融混練してアロイを形成した(一段混練)。
得られたPLAアロイ中のMMT/PA11−NCの分散状態の確認は、FE−SEM観察によって確認することができる。
実施例2において、最終的に得られたPLAアロイ中におけるMMT/PA11−NCドメインの径は200〜300nm程度であった。これは、E−GMA−MA量、スクリュー回転数、及び回転時間の組み合わせを最適化することによって達成された。すなわち、溶融混練条件を選択することにより、直径が200nmオーダーのMMT/PA11−NCドメインがPLA中に均一分散したPLAナノアロイの形成が可能である。かかる微小な分散相サイズにより、延伸後の成形品の透明性を確保することができる。
PLAナノアロイがガスバリア性を発現するためには、成形品形状でガス透過の方向に垂直にバリア性フィラーが配向している必要があり、ナノシートでは面配向が必須である。ブロー成形工程でナノシートを面配向させるにはPLAアロイとMMT/PA11−NCドメインの間の界面における高い接着性が前提となる。
以下の実施例3においては、PLAナノアロイをフィルム成形(ホットプレス)したものを一軸延伸したサンプルについてその断面のFE−SEM観察を行い、PLAマトリックス中のMMT/PA11−NCドメインの形状やその大きさを評価した。尚、MMT/PA11−NCドメインの直接観察が困難な場合には、延伸サンプル断面についてTEM観察を行い、ナノシートの分散状態やその配向状態を直接観察した。これらの観察により、MMT/PA11−NCドメインの扁平化(フィルム断面観察でのシリケート層の面配向)を確認した。また、得られたフィルムが透明であること(下地透過、直線光透過)も確認した。
[実施例1:へき開した膨潤性クレイのナノシートをPA11系ポリアミド樹脂に単層レベルまで分散させたナノコンポジットの調製]
以下の手順に従って、PA11/クレイナノコンポジットを調製した。
[11−AUA処理クレイの調製]
(a)原料
クレイとしては、以下の2種を用いた:
・「クニピア−F(Na型モンモリロナイト)」クニミネ工業社製、山形県産モンモリロナイトの精製品(天然鉱物)、結晶構造内にFeイオンを含むため、薄茶色を呈する。ナノシートのディメンション:厚さ1nm、長径数100nm程度。
・「ルーセンタイトSWN(合成スメクタイト)」コープケミカル社製、水熱合成(合成品)、不純物が少なく無色、分散後の透明性が高い。ナノシートのディメンション:厚さ1nm、長径数100nm程度。
11−AUAとしては、合成用高純度品、メルク社製のものを用いた。
・純水100gに2gのクレイを分散した(85℃、マグネチックスターラー)。
・11−AUA:1当量(クレイの陽イオン交換容量に対して)、リン酸0.5当量を投入した(85℃、30分)。
・ブフナー漏斗(濾紙5A)で吸引濾過してナノシートを回収した。
・11−AUAをセパラブルフラスコに投入し、N2雰囲気下、ブラスタを用いて溶融させた(Tm=187℃)。
・11−AUA溶融後、予め前記のように得た11−AUA処理クレイ全量を投入し、250℃に昇温した(オイルバス)。
・メカニカルスターラーで攪拌した後(34rpm/30分)、200rpm/10分で全体の粘土上昇を確認して、反応を終了させた(重合による水分は系外へ除去した)。
・クレイ/PA11オリゴマー複合体を回収した後、熱水で抽出した(95℃×60分)。
アミノウンデカン酸からの重縮合は常圧で反応可能であり、セパラブルフラスコとメカニカルスターラーを備えた反応器を用い、シリコンオイルバスにて加熱した。モノマーの溶融後、若干水分を残した11−AUA処理クレイを投入し、均一分散させた後、水分を留去して反応を進めた。
以下の装置・条件を用いてPA11/クレイナノコンポジットを調製した。
・東洋精機製作所ラボブラストミル(4M150)
・小型セグメントミキサ(KF15V)、高せん断速度試験対応:450rpmにおいて2.9×103/秒、ミキサ容量:14cc、最大温度350℃
・溶融混練条件:混練温度:220℃/弱練り(以下参照)/回転数:120rpm/混練時間:3分
弱練り(低せん断):450rpmにおいて9.7×102/秒、チップクリアランス:0.88mm→粒子分散に不利であるが、せん断発熱は小さく、樹脂への負荷は低い→クレイナノコンポジット形成時に使用した。
強練り(高せん断):450rpmにおいて2.9×103/秒、チップクリアランス:0.3mm→粒子分散に有利であるが、せん断発熱が大きく、樹脂の劣化あり。かかる強練りは、主に以下に説明するPLAナノアロイの形成に使用した。
手順としては、PA11投入し、溶融し、クレイ/PA11オリゴマー複合体を投入し、その後、溶融混練する手順を用いた。
・PA11/クレイナノコンポジットの計算上の灰分値:2〜4wt%とした。
図3に、前記PA11/クレイナノコンポジットの調製手順をまとめた。
・外観観察:明らかな未分散モンモリロナイト(凝集体)は存在せず、ヤケはなかった。膨潤性クレイを含まないPA11の下地透過性と比べて、試作したモンモリロナイト系、スメクタイト系のいずれの複合体も目視では大差なかった。
・WAXD(広角X線回折)測定:モンモリロナイトのへき開、分散状態の試料全体の傾向を確認した。d001-10Åより小角側に明確なピークがないことにより、へき開が確認できた。図4にWAXDによる「クニピア−F(Na型モンモリロナイト)」(上段)と「ルーセンタイトSWN(合成スメクタイト)」(下段)のへき開、分散状態を示す。図4に結果から、膨潤性クレイのへき開(ナノシートの形成)とそのPA11オリゴマーマトリックス中への均一分散(ナノ分散)がなされていると推測された。
・TEM(透過型電子顕微鏡):微小部位における直接観察で視野内に未へき開ナノシートが存在しないことを確認した。図5に、合成スメクタイト/PA11ナノコンポジット・フィルムのTEM観察結果を示す。
・FE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)により、作製したフィルムの断面の形状を観察した。試料前処理:Pt蒸着:10mA/60秒、装置:JEOL製JSM−6700F、加速電圧:3kV、照射電流:8μA、WD:8mm。比較例として、図6に、分散状態が不良である場合の、モンモリロナイト/PA11系ナノコンポジトのFE−SEM観察結果を示す。
・EDS(エネルギー分散型X線分析装置)により、元素定性分析と元素マッピング観察を実施した。すなわち、フィルムに存在する元素の定性とその存在状態の観察(点分析)を実施した。試料前処理:Pt蒸着:10mA/60秒、装置:JEOL製EX−23000BU、加速電圧:15kV、照射電流:12μA、WD:15mm、スイープ回数:100。図7に、モンモリロナイト/PA11系ナノコンポジトのEDS観察結果を示す。図7の結果から、FE−SEM像ではクレイが認められない領域においても、Siが観察されることから、モンモリモナイト系及びスメクタイト系のいずれでも、ナノシートの分散がなされていると結論した。
・TG−DTA(示差熱熱重量同時測定):モンモリモナイト及びスメクタイトのナノコンポジット中での灰分値(クレイ配合量)が計算値と一致するかを確認するためにTG測定等を使用した。
上記種々の測定の結果、へき開した膨潤性クレイのナノシートをPA11系ポリアミド樹脂に単層レベルまで分散させたナノコンポジットの形成を確認した。
相溶化剤E−GMA−MAと、PLAと、MMT/PA11−NC(以下、単に「PA11NC」とも略す。)とを、1段階で溶融混練し、下記変数を振った以下の表1に示す条件下で、PLAナノアロイを作製し、MMT/PA11−NCの分散性をFE−SEMで観察した:
・E−GMA−MA組成、配合量
・MMT/PA11−NC配合量
・混練条件(温度、回転数、時間)
・相溶化剤がPLA樹脂の外観に及ぼす影響:test#4(ブランク試験)
・相溶化剤配合量依存性:test#1-#3(弱練り)、test#5-#8(強練り)
・混練条件依存性(せん断力の影響):test#3, #4(相溶化剤1%)、test#2, #8(相溶化剤5%)
・混練条件依存性(混練時間の影響):test#7, #9, #10(相溶化剤2.5%)
・MMT/PA11−NC配合量依存性:test#8(相溶化剤5%), #11(4.9%), #12(6.5%)
・MMT/PA11−NC配合量が高い場合の混練時間の影響:test#12, #13(相溶化剤6.5%)
(1)相溶化剤配合の影響
相溶化剤E−GMA−MAとPLAとの相溶性は良好であり、数%程度の配合ではマトリクス成分としての透明性に影響はなかった。
(2)E−GMA−MA配合量依存性
非相溶系アロイの混練の場合、混練後の分散状態を支配するのは混練時に投入された力学的エネルギーの総量であるが、活性化エネルギーを低下させるのが相溶化剤であると考えれば、同一混練条件下で複合化する場合、相溶化剤の配合量によってドメイン径が変化する。まず、test#1-#3でせん断力が小さい(前記「弱練り」スクリュー回転数:120rpm)条件でE−GMA−MAを配合して得られたアロイのFE−SEMを観察した。相溶化剤がない場合の分散状態に比べて、1%でもE−GMA−MAが配合されることでMMT/PA11−NCドメイン径が小さくなった。また、test#6は「強練り」(スクリュー回転数:435rpm)条件で得られたサンプルであり、せん断力の大小よりも相溶化剤配合による影響が大きいことが示された。test#4での到達ドメイン径はおよそ2〜8μm程度と非常に大きいが、test#3の場合には最大で2μm程度であり、小さい方はサブμmオーダーであった。E−GMA−MAが相溶化促進に寄与していることが示された。test#4では弱練りの場合と比べてドメイン径が小さくなった。E−GMA−MAの配合量の増大に依存して、到達ドメイン径が小さくなっている。
ナノコンポジット材料でバリア性を検討する場合、バリア性フィラーの配合量が性能を支配するので、PA11NC(ナノフィラー5%)を10質量部から15質量部、20質量部まで高めた場合の強練り条件下で得たPLAアロイをFE−SEMで観察した。図11に示すように、test#11と#12の比較では、PA11NCドメインが大幅に増えた印象はない一方、test#8よりPA11NCドメインが密に存在することが分かった。図12に示すように、ドメイン径はtest#8、#11、#12の順で280nm、400nm、530nmとなり、同じ混練条件であっても仕込み組成(特に、E−GMA−MA量)によって、到達ドメイン径が変化した。ドメイン間の平均距離は分散後のドメイン径が同じであれば、PA11NC配合量の増大に伴って小さくなると予測されるが、test#8、#11では変化があるが、#8、#12では変化は認められなかった。すなわち、test#12の分散性の程度が低いことが示される結果となった。
前記(3)の結果からも示されるが、最終的に得られたアロイ中のPA11NCドメインの径は混練条件に大きく依存する。通常、二軸混練機によるアロイ化では、スクリュー回転数(樹脂が受けるせん断力)が分散性を大きく支配する。E−GMA−MA配合量が同じであっても、混練条件によって到達ドメイン径が変化し、「強練り」条件でより小さなドメイン径が得られ、またドメイン径のバラツキも抑制される傾向となった。
PLAアロイ形成をエネルギー論的に捉えると、混練過程で透過された総エネルギー量が、分散によって増大するドメインの表面自由エネルギーの総量を上回らない限り、ドメイン径は小さくならない。そこで、投下された総エネルギー量を調節する混練時間の影響について検討した。E−GMA−MA配合量が同じであり、また印加されるせん断力が同じであっても、混練時間を延長することによっても到達ドメイン径が変化し、混練時間が長いほど小さなドメイン径が得られ、ドメイン径のバラツキも抑制される傾向となった。test#10での到達ドメイン径は、test#8で得られた分散状態と極めて近く、いずれも150nm〜450nm程であり、粒径のバラツキも小さく観察された。相溶化剤がアロイ時のドメイン小径化のための活性化エネルギーを引き下げる役割である以上、到達させたいドメイン径を安定化するに十分な相溶化剤が系内にあればより少ない投下エネルギー量で良好な分散状態が得られる。上記の試験結果は、これを裏付けるものであった。test#12の平均ドメイン径は530nm、test#13では550nm程度とほとんど変化がなく、ドメイン径のバラツキの程度も、少なくとも目視観察レベルでは大きな変化はなかった。test#12と比べて投下エネルギー総量が大きなtest#13でPA11NCの分散状態に差異がなかったことから、相溶化剤量が不足していたことが示唆された。
実施例2で得たPLAナノアロイのサンプルをシート状(厚み200μm)に成形し、120℃の熱風乾燥機内で人力で一軸延伸することによって延伸サンプルを作製した。
延伸時の温度が適切であれば、PA11NCを20質量部(ナノシート換算で凡そ1wt%)含有するPLAナノアロイのサンプルも200%以上の一軸延伸が可能であった。また、延伸サンプル断面のFE−SEM観察により、PA11NCドメインの延伸に伴う変形を観察したが、PA11NCの分散性に劣るPLAナノアロイのサンプルについては、延伸に伴って、延伸方向に平行にドメインが「押し潰される」ような変形が認められた。PA11NCドメインの分散性が良好なPLAナノアロイのサンプルについては、ドメイン変形の直接観察は困難であったが、ドメイン変形が強く示唆された。
(1)成形
塊状のPLAナノアロイのサンプルを所定量秤量し、厚さt=0.2、0.5mmのテフロン(登録商標)製型を用いて減圧下にホットプレス成形し、シートを得た。
予熱:220℃×3min/成形:50MPa×1min/冷却:2〜3℃に急冷の後、幅13mm、長さ40mmの短冊状に切り出し、下記試験に供した。
(2)延伸試験(一軸延伸試験)
クランプに試験片の一端をはさんだ状態で、クランプを予め120℃に予熱しておいた熱風乾燥機内に入れ、そのまま1min間保持した後、直ちにプライヤーで両端を挟み人力で引張った。この方法は、最短の加熱時間で加工可能であり、また、サンプルの硬さの応じて臨機応変に対応できるが、試験力が一定化できないので、延伸倍率がその都度異なるものとなった(各個計算)。
延伸によってPLAマトリクス中に分散したPA11NCドメインが変形し、それに伴ってナノシートも面配向させる必要がある。そこで、実施例2で得PLAナノアロイが、(i)延伸できること、(ii)延伸に伴いドメインが変形すること、を確認する必要がある。
図13に示すように、延伸倍率が大きくないと(150%)、ドメインの変形がなされないが、350%延伸物では、PA11NCドメインがPLAナノアロイの延伸方向に平行に変形していることが示された。したがって、成形品に対してはドメイン変形のために300%程度の延伸倍率を付与することが必要であることが示唆された。
また、E−GMA−MA1%組成において、延伸後においてもPA11NCドメインがPLAマトリクスと接着していることが確認され、相溶化剤としての効果も確認した。
以上の結果をまとめると、
・調製したPLAナノアロイはいずれも一軸延伸が可能であった。
・延伸に伴ってドメイン変形が起こることは確認できたが、変形の程度は延伸倍率に依存しており、低い延伸比ではドメインの変形は僅かであった。
・延伸倍率が300%を超える場合、ドメインは扁平状に変形した。
・ドメイン径が200nmオーダーに到達したPLAナノアロイについては、延伸後のPA11NCドメインを識別することは困難であったが、延伸に伴って選択的にドメインが排除されるとは考えられないので、ドメインが扁平状態になり厚みが小さくなったことが示唆された。
・PA11NC配合量が高い場合、PLAナノアロイ中のPA11NCドメインの分散性が低下(ドメイン径が大きくなる)する傾向があり、ガスバリア性の点で配合量増加の効果が現れにくいことが予測された。他方で、延伸性は未だ十分あることも確認された。
・したがって、PLAナノアロイの延伸に伴いPA11NCドメインが変形することが確認された。
以下の表2に示すサンプルについてガスバリア性を評価した。
*サンプル寸法は50mm×50mm。
*sample#8は、PLAに相溶化剤(E-GMA-MA:8%)配合し、同様の混練履歴を付与したもの
・酸素、水蒸気のいずれの場合も、ナノシート配合量の増大に伴ってバリア性が向上した。
・相溶化剤としてのE−GMA−MA配合はPLAアロイの酸素透過性に対する影響が大きく、PLAにPA11NCを配合することでバリア性が向上する分を相殺した可能性が高い。他方、水蒸気透過性に対する影響は低いため、PA11NC配合による効果がそのまま反映された。
Claims (5)
- へき開した膨潤性クレイのナノシートをPA11系ポリアミド樹脂に単層レベルまで分散させたナノコンポジットを、ポリ乳酸(PLA)樹脂中に均一分散させたPLAナノアロイである成形用樹脂を、延伸・成形して得られることを特徴とする、フィルム又はボトル状成形品の製造方法であって、該延伸・成形によって変形した該ナノコンポジット及びその中に分散された該ナノシートが該延伸方向に配向されており、前記へき開した膨潤性クレイのナノシートをPA11系ポリアミド樹脂に分散させたナノコンポジットは、PA11樹脂の原料モノマーである11−アミノウンデカン酸の重合反応において、天然モンモリロナイト又は合成スメクタイトを該原料モノマーとともに添加して得たクレイ/PA11オリゴマー複合体を、PA11樹脂と、溶融混練して得たものである、方法。
- 前記へき開した膨潤性クレイのナノシートをPA11系ポリアミド樹脂に分散させたナノコンポジットは、該クレイ成分を2〜5wt%含有し、かつ、前記天然モンモリロナイト又は合成スメクタイトは、厚さ1nm、長径数100nmを有する、請求項1に記載の方法。
- 前記ナノコンポジットの配向後の分散相サイズは、前記フィルムの厚さ方向において20〜30nmである、請求項2に記載の方法。
- 前記PLAナノアロイである成形用樹脂は、相溶化剤としてエチレン(E)/グリシジルメタクリレート(GMA)/メチルアクリレート(MA)系ターポリマ(E/GMA/MA=67/8/25(wt/wt/wt))を所定量使用し、かつ、所定条件下で、前記ナノコンポジットをPLA樹脂と混練することにより、前記ナノコンポジットが、径200nm程度のドメインとして、ポリ乳酸(PLA)樹脂中に均一分散されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- PA11樹脂の原料モノマーである11−アミノウンデカン酸の重合反応において、厚さ1nm、長径数100nmの天然モンモリロナイト又は合成スメクタイトを該原料モノマーとともに添加して得たクレイ/PA11オリゴマー複合体を、PA11樹脂と、溶融混練して得られ、かつ、クレイ成分を2〜5wt%含有する、へき開した膨潤性クレイのナノシートをPA11系ポリアミド樹脂に分散させたナノコンポジットを、相溶化剤としてエチレン(E)/グリシジルメタクリレート(GMA)/メチルアクリレート(MA)系ターポリマ(E/GMA/MA=67/8/25(wt/wt/wt))を所定量使用し、かつ、所定条件下で、PLA樹脂と混練することにより、径200nm程度のドメインとしてポリ乳酸(PLA)樹脂中に均一分散されているPLAナノアロイである成形用樹脂の製造方法。
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