JP3918389B2 - 環線系統の保護継電方式 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環線系統の保護継電方式に係り、特に母線停止時の保護方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環線系統の保護継電方式を図5に示す。1系および2系の電源端位置には中央継電装置1と中央通信装置2の組み合わせになる中央装置を設け、環線の各需要家位置にはリレー部と伝送部からなる端末装置31〜3Nを設け、これら端末装置31〜3Nと中央通信装置2との間を常用系とループバック系の2系伝送路で接続している。
【0003】
この構成において、各需要家や変電所のリレー部は、系統の電流、電圧情報やしゃ断器条件等をディジタル変換し、伝送路を介して中央装置へ転送し、保護演算処理に供する。中央継電装置では、端末装置からの電流・電圧データおよび自端子で取り込んだ電流・電圧データを使用して保護演算し、事故が発生しているか否かの判定を行う。
【0004】
中央継電装置1は、事故と判定したときは、伝送路を介して当該端末装置のリレー部へ転送し、端末装置のリレー部が自端のしゃ断器をトリップさせ、事故区間を除去する。
【0005】
図6に中央継電装置及び端末装置のリレー構成を示す。図7に線路保護リレーシーケンスを、図8に母線保護リレーシーケンスを示す。
【0006】
これらリレー構成において、中央装置では、□27S(短絡事故検出用の不足電圧継電器)、□44SF(短絡距離継電器)、□67GF(地絡方向継電器)は、□内に示す数値「1」または「2」によってしゃ断器MO1側またはMO2側から環線系統内に事故があるか否かを検出するリレーであるため、数値「1」または「2」によってMO1側またはMO2側の電流・電圧を使用したリレー演算をすることを示す。
【0007】
端末装置では、□27Sが短絡優先のため、1系または2系のどちらかが短絡故障を検出したときに、□87G(内部地絡差動継電器),□87BG(母線保護差動継電器)をロックする。なお、□内の数値は環線系統の端末数に応じた値を割り当てて示す。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のシステムにおいて、短絡優先リレーである□27Sには、O1側母線電圧と電流を使用する127Sと、O2側母線電圧と電流を使用する227Sがあり、短絡優先シーケンス(図8参照)としては127Sと227Sの出力のOR(論理和)で使用している。したがって、どちらかの27Sリレーが動作したときには□87G、□87BGリレーがロックすることになる。
【0009】
図9に示す環線系統内の遮断器(図中のTRO1、MO1)が「切」でO1側の母線が停止した場合、環線系統の各需要家端末には、MO2から電力の供給が行われる。このとき、O1母線停止による127Sリレーが動作するため、87G、87BGリレーがロックされてしまい、この状態で例えばF1点で地絡事故が発生すると、正常に保護できない。この結果、後備保護リレーを設置している電源変電所のMO2が遮断され、環線系統内が全停してしまう。
【0010】
本発明の目的は、片母線の停止等で片側の27S(短絡事故検出継電器)が動作したときにも、地絡事故に対して正常に保護できるようにした環線系統の保護継電方式を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、母線停止を検出したときに短絡事故検出リレーの動作出力による母線保護リレーまたは内部地絡保護リレーのロックを抑止するようにし、母線停止の検出には短絡事故検出リレーの動作出力が3相共に発生した状態が一定時限以上継続すること、母線のしゃ断器または断路器が開放されたこと、短絡事故検出リレーの動作出力を短絡事故用タイマの最大値に制限することとするもので、以下の構成を特徴とする。
【0012】
電源から環線を介して各需要家に接続した環線系統の保護装置として中央継電装置と需要家位置の端末装置を設け、該中央装置は短絡事故検出リレー手段を有し、該端末装置は前記短絡事故検出リレー手段の動作出力でロックされる母線保護差動リレー手段または内部地絡差動リレー手段を有して環線の事故を検出する保護継電方式であって、
前記短絡事故検出リレー手段の動作出力による前記母線保護差動リレー手段または内部地絡差動リレー手段のロックを抑止する抑止手段を設け、この抑止手段は、
前記短絡事故検出リレー手段の動作出力が3相の全てに一定時限以上継続して発生したこと、
母線のしゃ断器または断路器が開放されたこと、
前記短絡事故検出リレー手段の動作出力が3相の全てに一定時限以上継続して発生したこと、または母線のしゃ断器または断路器が開放されたこと、
前記短絡事故検出リレー手段の動作出力を、主保護および後備保護用短絡保護リレーのタイマの最大値に制限すること、
のいずれかによってロックを抑止する構成にしたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態を示し、環線系統における□27Sリレーによる87G、87BGリレーのロックシーケンス部分を示す。
【0014】
□27Sリレーの動作出力は、線路の3相(1、2、3)のいずれかで検出されたことをオア(論理和)判定部OR1に得るほか、3相の全てで検出されたことをアンド(論理積)判定部AND1に得る。タイマ部T1はアンド判定部AND1の判定出力が一定時間継続したことを確認する。抑止部INH1は、タイマ部T1に確認が得られたときにはオア判定部OR1の出力を抑止する。タイマ部T1の時間は、例えば10秒とする。
【0015】
以上までのシーケンスは、127Sと227Sで同じにされる。そして、オア判定部OR2は、両リレー127Sと227Sのシーケンスがもつ抑止部の少なくとも一方からの出力で87G,87BGリレーのロック条件信号を得る。
【0016】
したがって、アンド判定部AND1とタイマ部T1では、母線停止を3相短絡事故とは区別して検出することができ、この検出で抑止部INH1によってリレー出力を抑止(ロック)することにより、母線停止時には□27Sリレーの動作で87G,87BGリレーがロックされるのを抑止する。これにより、例えば図9の片母線停止状態でF1点で地絡事故が発生した場合にも、87G、87BGリレーによって正常に事故を除去することができ、系統の全停止を起こすこともなくなる。
【0017】
また、短絡事故と地絡事故の多重事故の場合でも、短絡事故除去後に速やかに27Sリレーが復帰するため、正確に地絡事故を除去できる。
【0018】
図2は、本発明の他の実施形態を示すシーケンスである。同図が図1と異なる部分は、アンド判定部AND1とタイマ部T1による母線停止の判定をしゃ断器MO1,MO2の「切」信号から得る点にある。
【0019】
本実施形態においても、図1の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0020】
なお、しゃ断器MO1,MO2の「切」信号に代えて、それに直列に設けられる断路器(LS)の「切]信号とすることでもよい。
【0021】
図3は、本発明の他の実施形態を示すシーケンスである。同図は図1のシーケンスと図2のシーケンスとを組み合わせたシーケンスで87G、87BGリレーのロックを得る。
【0022】
つまり、オア判定部OR3により、抑止部INH1の抑止信号にはタイマ部T1からの判定出力の他に、しゃ断器MO1,MO2の「切」信号からも得るようにしている。
【0023】
図1のシーケンスでは、母線が停止してから10秒以内に環線系統内に地絡事故が発生すると、87Gまたは87BGリレーが動作できないため、事故除去が遅れる。また、図2のシーケンスでは、通常の運用状態では考えられないケースではあるが、MO1が「入」の状態で母線停止となったとき、例えば、図9のTRO1,BTO1,端末1のO1が「切」となったとき、環線系統内の地絡事故を除去できなくなる。本実施形態では、これら不都合を解消するものである。
【0024】
図4は、本発明の他の実施形態を示すシーケンスである。本実施形態では、27Sリレーの動作出力をタイマ部T2によって一定時間だけ有効にする。このタイマ部T2の時限は、主保護および後備保護用短絡保護リレーのタイマの最大値である3秒程度とする。
【0025】
このシーケンスにより、例えばO1母線が停止したとき、27Sリレーが一旦動作するが、タイマ部T2により3秒後にはその復帰が得られ、87G、87BGリレーのロックをなくす。
【0026】
本実施形態において、母線停止時には27Sリレーに動作出力が得られるが、タイマ部T2の時間経過後にはその復帰し、地絡リレーより正常に保護ができる。また、タイマ部T2の時限を短絡事故での事故除去時間の最大値程度とすることにより、短絡事故時も保護することができる。
【0027】
なお、短絡と地絡の多重事故発生時には、27Sリレーによる87G、87BGリレーのロックが3秒程度継続するため、その分だけ地絡事故の除去は遅れる。
【0028】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、母線停止を検出したときに短絡事故検出リレーの動作出力による母線保護リレーまたは内部地絡保護リレーのロックを抑止するようにしたため、片母線の停止等で片側の27S(短絡事故検出継電器)が動作したときにも、地絡事故に対して正常に保護できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す保護シーケンス。
【図2】本発明の他の実施形態を示す保護シーケンス。
【図3】本発明の他の実施形態を示す保護シーケンス。
【図4】本発明の他の実施形態を示す保護シーケンス。
【図5】環線系統における保護継電システムの構成例。
【図6】図5のリレー構成例。
【図7】図5における保護継電装置の線路保護リレーシーケンス。
【図8】図5における保護継電装置の母線保護リレーシーケンス。
【図9】環線系統内のCBが「切」中の事故ケース例。
【符号の説明】
1…保護継電装置
2…通信装置
1〜3N…端末装置
OR1、OR2、OR3…オア判定部
AND1…アンド判定部
INH1…抑止部
T1、T2…タイマ部

Claims (1)

  1. 電源から環線を介して各需要家に接続した環線系統の保護装置として中央継電装置と需要家位置の端末装置を設け、該中央装置は短絡事故検出リレー手段を有し、該端末装置は前記短絡事故検出リレー手段の動作出力でロックされる母線保護差動リレー手段または内部地絡差動リレー手段を有して環線の事故を検出する保護継電方式であって、
    前記短絡事故検出リレー手段の動作出力による前記母線保護差動リレー手段または内部地絡差動リレー手段のロックを抑止する抑止手段を設け、この抑止手段は、
    前記短絡事故検出リレー手段の動作出力が3相の全てに一定時限以上継続して発生したこと、
    母線のしゃ断器または断路器が開放されたこと、
    前記短絡事故検出リレー手段の動作出力が3相の全てに一定時限以上継続して発生したこと、または母線のしゃ断器または断路器が開放されたこと、
    前記短絡事故検出リレー手段の動作出力を、主保護および後備保護用短絡保護リレーのタイマの最大値に制限すること、
    のいずれかによってロックを抑止する構成にしたことを特徴とする環線系統の保護継電方式。
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