JP3918277B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、旋回スクロールの自転防止機構としてオルダム継手を採用した構造のスクロール圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、本発明の対象となるスクロール圧縮機について図6を参照して説明する。図6はスクロール圧縮機の圧縮機構部の側断面図である。
【0003】
図6において、11は固定スクロール、11aはラップ、11bは吐出口、12は旋回スクロール、12aはラップ、12bはベアリング部、12cはキー溝、13はフレーム、13aはベアリング部、13bはキー溝、14はオルダムリング、14aはキー、15はクランクシャフト、15aは偏心部、16はボルト、17は密閉ケース、18は吸入パイプである。
【0004】
図6のスクロール圧縮機では、フレーム13のベアリング部13aにクランクシャフト15が挿入されており、クランクシャフト15の偏心部15aは旋回スクロール12に設けられたベアリング部12bに挿入されている。フレーム13に設けられたキー溝13bと旋回スクロール12に設けられたキー溝12cにはオルダム継ぎ手を形成するオルダムリング14のキー14aが挿入されており、固定スクロール11は旋回スクロール12と組み合わされた状態で、フレーム13にボルト16によって締結されている。
【0005】
上記の構成で、クランクシャフト15に締結されたモータ(図示せず)によってクランクシャフト15に与えられる回転運動により、クランクシャフトの偏心部15aを介して旋回スクロール12は固定スクロールに対して旋回運動する。この旋回運動によって固定スクロール11の渦形状のラップ11aと旋回スクロールの渦形状のラップ12aは相対運動を行い、固定スクロール11に設けられた吸入口パイプ18を経由してガスが吸入され、、中心部に進むにしたがってガスは圧縮されていく。圧縮が完了したガスは固定スクロールの吐出口11bから吐出される。以上の構成で図6に示したスクロール圧縮機は圧縮機としての機能を果たす。
【0006】
オルダムリング14の役割は、表裏両面に設けたキー14aをフレーム13と旋回スクロール12のキー溝13b、12cに挿入してオルダム継ぎ手構造を形成することにある。このオルダム継ぎ手構造によって、旋回スクロール12が自転することなく固定スクロール11に対して旋回運動を行うことが可能となっている。
【0007】
ここで、上記の構成のスクロール圧縮機のオルダムリングの一例として、特開平1−30518号公報に示されるように、素材を焼結金属成形により製作して、その後切削加工あるいは研削加工を施す構成が知られている。焼結金属は、金属粉末を金型で成形した後に加熱して、金属粉末を拡散接合させて製作される。焼結金属成形は、金型で金属を成形する技術の範疇では複雑かつ高精度な形状を得られる手法であるが、切削あるいは研削で得られる程度に高い精度までは得られない。性能の良いスクロール圧縮機を得るためには、部品精度を良好にする必要があり、焼結金属成形でオルダムリング形状を形成しても寸法と形状の精度を良好にするには切削加工あるいは研削加工を施す必要があった。
【0008】
この一例を図7に示すオルダムリングの斜視図により説明する。
【0009】
図7において、14はオルダムリング、14aはキー、14bはキー側面、14cは端面、14dは稜線である。
【0010】
図7に示す例のオルダムリング14の端面14cは、組み合わされるフレーム(図7には図示せず)との接触面であるが、キー側面14bとの稜線14dも同一平面上にある。一方、キー14aはフレームのキー溝(図7には図示せず)に組み合わされる。よって、キー側面14bは端面14cとの稜線14d近傍まで平坦にする必要があった。すなわち、稜線14dは極力シャープな隅形状に加工する必要があった。この構造では稜線14dをシャープな隅形状にすることは、キー側面14bのみの加工では不可能で端面14cも加工する必要があった。そこで切削加工あるいは研削加工ではキー側面14bと端面14cの両方を加工して、この要求に対応していた。
【0011】
また、焼結金属を製造する過程では、金型を用いて金属粉末を成形して所望の形状を得るが、稜線14dの部分には金型強度を向上させるために金型に設けた面取りあるいは丸み形状によって堕肉が生じる。この稜線14dの堕肉を除去するためにはキー側面14bと端面14cの両方を加工する必要がある。よって、この目的からもキー側面14bと端面14cの両方を切削加工あるいは研削加工してオルダムリングを得ていた。
【0012】
次に、鉄系金属では表面処理方法の1種として水蒸気処理法がある。この水蒸気処理は、高温の水蒸気中で鉄を酸化させて四酸三化鉄の皮膜を形成させる方法である。目的は、酸化膜による摺動部材の耐摩耗性の向上であり、副次的に防錆の機能も得ることができる。この水蒸気処理によって四酸三化鉄の皮膜を形成させると体積が増加するが、鋭利な角部の体積増加は他の部分よりも多く、結果として水蒸気処理後は角部が盛り上がった形状になる。角部の盛り上がりが摺動部に存在すると不具合であるため、摺動部は水蒸気処理後に加工するのが通例であった。図7の例では、キー14aのキー側面14bはキー溝(図7には図示せず)に摺動自在に係合されるため、水蒸気処理後に加工して仕上げるのが通例であった。ここで、焼結金属の場合は金属粉末を原料としているが、製造工程中で粉末を完全に溶融させる状態にはしないので、金属粉末と金属粉末の間には空孔が残っている。焼結金属の空孔は表面から内部まで連なった状態になっており、水蒸気処理によって表面部のみではなく内部まで四酸三化鉄の皮膜が形成される。よって、水蒸気処理後に表面を加工して除去しても内部の四酸三化鉄皮膜が表面に露出するため、耐摩耗性向上の目的は達成することができる。よって、焼結金属のオルダムリングに水蒸気処理を施す場合は、焼結に続いて水蒸気処理を施し、その後切削加工あるいは研削加工を行うのが通例であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
前述したような、側面と端面の両方を切削加工あるいは研削加工したオルダムリングを採用したスクロール圧縮機には以下のような問題点があった。
【0014】
第1の問題点は以下のようである。
【0015】
焼結金属は空孔を有するため熱伝導率が悪く、加工中に工具の温度が高くなりやすい。また、空孔の存在により断続的な加工になり振動が発生しやすい。このため、原料粉末と同等成分の鋼材などの溶製材に比べて被削性が悪い。よって、焼結金属では、最終製品に極めて近い形状を生産性に優れる金型による成形で得ることができる利点があるが、加工にあたっては工具の摩耗が著しい材料である。このような焼結金属のオルダムリングを加工する際の問題点を、加工工具としてエンドミルを用い切削加工する場合を例に説明する。エンドミルの摩耗がもっとも顕著である部分は、尖鋭な形状である切れ刃先端のコーナである。一方で、従来の焼結金属製オルダムリングの形状では、キー側面と端面の稜線部分は堕肉が形成されており、取り代が大きい。この稜線部分は、エンドミルの切れ刃先端のコーナが加工する。このため、被削性が悪い焼結金属の取り代が大きい部分を、エンドミルの最も摩耗しやすい部分で加工することになるため、エンドミルの摩耗が著しい。
【0016】
また、従来のオルダムリングの形状では、キー側面と端面の加工が必要である。一般的に、エンドミルの底刃を用いる端面加工と外周刃を用いる側面加工を比較すると、端面加工では切れ刃先端のコーナが被削材に接触する長さが極めて長い。よって端面加工では、側面加工に比べてエンドミルが摩耗しやすい特徴がある。よって、キー側面の加工と端面の加工を両方行うと、端面の加工において著しく工具が摩耗する現象が発生する。
【0017】
以上に述べたように、被削性の悪い焼結金属の取り代が大きい部分をエンドミルの最も摩耗しやすい角部で削ること、および工具摩耗が早い端面の加工があることから、従来の焼結合金製オルダムリングでは極めて工具寿命が短く生産性が劣悪である問題があった。砥石を用いる研削加工でも同様で、円筒形状の砥石の端面を利用してオルダムリング端面を研削した場合には砥石の角部の摩耗が激しい問題があった。このような問題があるオルダムリングを採用したスクロール圧縮機では、生産性の向上すなわちコスト低減が課題であった。
【0018】
第2の問題点は以下のようである。
【0019】
摺動部分の耐摩耗性を目的に施す水蒸気処理では、四酸三化鉄の生成によって体積が増加し、鋭利な角部は盛り上がる形状となる。摺動部に鋭利な角部がある形状で水蒸気処理を施した場合は、この盛り上がりを除去するために水蒸気処理後に加工を行う工程を採用していた。しかし、焼結金属に水蒸気処理を施して四酸三化鉄が形成されると、無処理状態の焼結金属に比べて工具の摩耗が顕著となり被削性が悪化する。このため、生産性は無処理状態の焼結金属を加工する場合よりさらに悪化する。この問題も第一の問題同様にスクロール圧縮機の生産性を阻害して、コストを増加させる問題であった。
【0020】
第3の問題点は以下のようである。
【0021】
上述した第1および第2の問題点を有するスクロール圧縮機を具備した空気調和機では、スクロール圧縮機の生産性に問題がありコストがかかるため空気調和機のコストも増大する問題がった。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の第1から第3の問題点を解決するためになされたものである。
【0023】
まず、第1の問題点を解決するために、請求項1乃至請求項4に示した発明がなされた。ここでは被削性の悪い焼結金属を切削加工、あるいは研削加工することを前提にして、工具の摩耗が著しい工具のコーナを多用する端面加工をおこなわずに、側面加工のみでオルダムリングを入手できる焼結金属の形状と加工方法を提示した。
【0024】
次に、第2の問題点を解決するために、請求項5に示した発明がなされた。ここでは、キーの角部を丸み形状として鋭利な角部をなくしているため、水蒸気処理によって盛り上がりが生じない。これにより、被削性を悪化させる水蒸気処理の前に加工することが可能となり、オルダムリングを安価に提供できる。
【0025】
また、第3の問題点を解決するために請求項6に示す発明がなされた。ここでは、第1および第2の問題点が解決されたスクロール圧縮機を空気調和機に採用することで、空気調和機のコストの低減が可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係わる一実施例を図面を参照して説明する。まず、請求項1乃至請求項4に係わる一実施例を図1、図2によって説明する。
【0027】
図1は本発明によるスクロール圧縮機用オルダムリングの形状の一例を示す斜視図である。図1において、1はオルダムリング、2は円環、3は端面、3aは第1の溝、3bは第2の溝、4はキー、4aはキー側面、Lは加工範囲の下限である。
【0028】
図1に示すようにオルダムリング1は、円環2にキー4が形成されており、オルダムリング1の軸方向は円環2の端面3に直行する方向である。キー側面4aの付け根には第1の溝3aが形成され、第1の溝に連なるように第2の溝3bが形成されている。第1の溝3aおよび第2の溝3bと端面3の軸方向の高さ関係は、第1の溝3aが最も低く、第2の溝3b、端面3の順で高くなる。これらの第1の溝3aおよび第2の溝3bはキー側面4aの仕上げ加工において、摩耗しやすい工具の底面を接触させずにキー側面4aを仕上げるために設けている。
【0029】
図1に示したオルダムリング1は、焼結合金で製造された一例である。焼結合金は金属粉末(図示せず)を金型(図示せず)で成形した後に、加熱して金属粉末を拡散接合して製造されるが、鍛造又は鋳造等の造形法に比べ高精度な成形が可能である。第1の溝3aおよび第2の溝3bは加工する工具が接触しないように設けた溝であり、焼結合金では金型により成形することで精度面では十分に満足でき、第1の溝3aおよび第2の溝3bが効率良く製造されている。
【0030】
また、図1に示した例のオルダムリング1では、表裏両面にキー4が形成された例である。他には、キー4は片面にしかなく、円環2の側面に平行な平面を設けて、他方のキー4の役目を担わせる例もある。この場合、キー4は片面にのみ存在し、第1の溝3aおよび第2の溝3bも片面にのみ存在すれば機能を果たす。図1に示した例では、キー4は表裏両面に存在するので、第1の溝3aおよび第2の溝3bも両面に設けて、キー側面4aの仕上げ加工において、摩耗しやすい工具の底面を接触させずにキー側面4aを仕上げる機能を持たせている。
【0031】
キー側面4aは幅を高精度にするために切削加工が施されている。より高精度にする場合は研削加工であっても良い。キー側面4a以外の面は焼結金属製作過程の成形によって形成されている。角部の面取りあるいは丸みは切削加工あるいは研削加工で形成されていても良い。ここで、キー側面4aを切削加工する範囲の下限Lは第2の溝3bより高く、端面3より低い設定となっている。研削加工の場合も同様の位置関係である。
【0032】
ここで、上記の切削加工あるいは研削加工する範囲について図2により詳述する。図2(a)は、焼結後のオルダムリングの断面形状の一例を示し、図2(b)はエンドミルによる切削加工の例を用いて工具の位置の一例を示している。図2においてAはエンドミルであり、その他の記号は図1に用いた記号と同じである。図2に示す断面は、図1のG−G断面である。
【0033】
図2(a)において、第1の溝3aの深さH1は、第2の溝3bの深さH2よりも深い関係にあり、端面3が最も高い設定になっている。オルダムリング1は端面3を支持されて相対するキー溝(図2には図示せず)にキー4が摺動自在に係合される。このため、キー溝との干渉が生じないようにキー側面4aは端面3と同等かそれよりも深い位置まで加工しておく必要がある。
【0034】
この要求に対して、第1の溝3aはキー側面4aを成形する際に平坦部をより深くまで設けて加工部分に堕肉をなくし、取り代を均一にするために設定している。また、第2の溝3bはキー側面4aを加工するエンドミルが底刃で加工することなくキー側面4aを端面3より深い位置まで加工できるように設けている。
【0035】
図2(b)は、側面4aを加工するエンドミルの位置を示している。エンドミルAの直径Dは、第1の溝の幅と第2の溝の幅の合計値Wよりも小さい設定になっており、エンドミルが通過する深さはHである。この設定において、エンドミルの底刃は端面3、第2の溝3bに接することなく、キー側面4aのみを加工することができる。加工範囲の下限LはHの深さとなり、端面3より低い位置とすることができる。また、第1の溝3aがあることでキー側面4aの加工範囲に堕肉の発生部分はなく、キー側面全体で取り代も均一となり、工具寿命が向上でき、また、良好な精度も得られる。
【0036】
上述したように、本例では第1の溝3aと第2の溝3bの2段階の溝を設けている。堕肉の加工を防止し、側面4aの取り代を均一にする目的に対しては、深くて幅の広い溝を1段だけ設ける手法でも目的を達する。しかし、この場合は円環2の断面積が異なる部分が占める割合が増加する。焼結金属では断面積の変動は密度の変動につながり、ひいては円環2に強度の変動が発生して得策ではない。この観点から、本例のように2段階の溝を設ける際にも深さH1、H2ともに機能を満たす範囲で極力浅くし、かつ幅Wも極力狭くしておくことが望ましい。
【0037】
以上に述べたように、第1の溝と第2の溝を焼結で成形し、キー側面のみを加工したオルダムリングは、被削性の悪い焼結金属を採用しながらも良好な生産性を可能にできる。ひいては、このオルダムリングを採用したスクロール圧縮機ではコスト低減が図れる。
【0038】
以上では、焼結金属のオルダムリングを例に説明してきたが、請求項1、請求項3および請求項4に係わる内容は、焼結金属以外であることを妨げない。すなわち、鍛造あるいは射出成形等によって製作されたオルダムリングであっても良い。
【0039】
次に請求項5に係わる一実施例を図3、図4によって説明する。
【0040】
図3は本発明によるオルダムリングの製造工程の一例を示した説明図である。なお、図3において、キー側面加工と角部加工の順序は逆でも良いし、キー側面加工に角部加工を含める方法でも良いし、また、角部の丸みあるいは面取りを成形工程で設けて、角部加工は省略しても良い。図3に示した製造工程では、原料粉末を成形し、焼結した後にキーの側面を切削加工あるいは研削加工し、次に角部を切削加工あるいは研削加工し、続いて水蒸気処理により四酸三化鉄の皮膜を形成する。水蒸気処理する前にキーの角部に丸みを設けて、その後水蒸気処理することが特徴である。
【0041】
図4はオルダムリングのキー部分の一例を示した斜視図であり、同図で丸み加工する部分を説明する。図4において4bはキー上面、4cはキー外面、4dはキー内面、4eは側面丸み、4fは上面面取りである。4b乃至4f以外の記号は、図1に用いた記号と同じである。
【0042】
ここで、側面丸み4eは原料粉末を成形する工程で設けても良いし、面取り加工の工程で切削加工あるいは研削加工で設けても良い。このように角部を丸み形状にすることで、鋭利な角部がなくなる。よって、水蒸気処理を行ってもオルダムリング1の運動方向であるF方向に直行する盛り上がりが形成されることを防止することができる。上面面取り4fはオルダムリング1の運動方向に平行な稜線しか形成しないので、平面で形成される面取りでよい。しかし上面面取り4fの部分を丸みにしてもよい。
【0043】
以上に説明したような例によれば、キー側面の両端を丸み形状にしたことで鋭利な角部がなくなり、水蒸気処理によって運動方向に直行する盛り上がりが形成されるのを防止できる。さらに、水蒸気処理の前に加工するので、工具摩耗が小さい状態で生産でき、生産性にも優れている。よって、上記のオルダムリングを採用したスクロール圧縮機は生産コストが低い。
【0044】
続いて、請求項6に係わる一実施例を図5によって説明する。図5は空気調和機の一例であるセパレート形ルームエアコンの一例を示す斜視図である。図5において5はセパレート形のルームエアコン、5aは室外機、5bは室内機、5cはスクロール圧縮機、5d接続配管である。図5に示すルームエアコン5では室外機5aに具備したスクロール圧縮機5cにより冷媒ガス(図示せず)が圧縮され、圧縮された冷媒ガスは接続配管5dを介して室内機5bに送られ、再び室外機5aのスクロール圧縮機5cに戻ってくるサイクルとなっている。このサイクルの過程で冷媒による放熱と吸熱作用によって空調機としての機能を果たしている。図5に示す構成で、スクロール圧縮機5cは請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3に示したスクロール圧縮機であることを特徴としている。スクロール圧縮機5cは冷媒ガスを循環させる重要な機構部品であり、また高価な部品である。請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3に示したオルダムリングを採用することでスクロール圧縮機のコストが低減でき、ルームエアコン5のコストを低減できる効果がある。
【0045】
【発明の効果】
請求項1乃至請求項4に記載した発明により、従来存在していた第1の問題点が解決できる。すなわち、被削性が悪い焼結金属を用いてオルダムリングを構成しながらも、2段階の溝を設けることで加工する部分をキー側面のみにとどめ、堕肉の加工と端面の加工を省略している。これにより、加工コストが少ないオルダムリングを入手することができ、製造コストの低いスクロール圧縮機を得ることが可能となる。
【0046】
また、請求項5に記載した発明により、従来発生していた第2の問題点が解決できる。すなわち、キー側面の両端を丸み形状としているため鋭利な角部がなく、水蒸気処理でオルダムリングの運動方向に盛り上がりが形成されることがない。これにより、安価で耐久性の良好な焼結合金製オルダムリングを入手でき、結果として信頼性が高く、安価なスクロール圧縮機を得られる効果がある。
【0047】
請求項6に記載した発明では、従来発生していた第3の問題点を解決できる。すなわち、安価で信頼性の高いスクロール圧縮機を具備することで空気調和機の生産コスト低減と運転信頼性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】オルダムリングの構成の一例を示した斜視図。
【図2】溝の形状とエンドミルの位置を示した断面図。
【図3】オルダムリングの製造工程を示した説明図。
【図4】切削あるいは研削加工する部位を示した斜視図。
【図5】ルームエアコンの構成を示した斜視図。
【図6】スクロール圧縮機の圧縮機構部の側断面図。
【図7】従来のオルダムリングの一例を示した斜視図。
【符号の説明】
1 ・・・オルダムリング、 2 ・・・円環、 3 ・・・端面
3a・・・第1の溝、 3b・・・第2の溝、 4 ・・・キー
4a・・・キー側面、 4b・・・キー上面、 4c・・・キー外面
4d・・・キー内面、 4e・・・側面面取り、 4f・・・上面面取り
5 ・・・ルームエアコン、 5a・・・室外機、5b・・・室内機
5c・・・スクロール圧縮機、 A ・・・エンドミル

Claims (6)

  1. 渦巻状のラップを具備する固定スクロールと旋回スクロールを噛み合わせて圧縮室を形成し、該旋回スクロールの自転を防止する機構としてオルダムリングを具備したスクロール圧縮機であって、前記オルダムリングは、環状部材と該環状部材の端面に設けられたキーより成り、前記キーの側面と前記環状部材の端面の交差部に該端面から軸方向に第1の溝を有し、かつ、前記第1の溝と前記環状部材の端面の間に第2の溝を有し、第1の溝が第2の溝より深いオルダムリングであることを特徴とするスクロール圧縮機。
  2. 請求項1記載のスクロール圧縮機のオルダムリングは、焼結合金であることを特徴とするスクロール圧縮機。
  3. 請求項1記載のスクロール圧縮機のオルダムリングにおいて、第1の溝および第2の溝をオルダムリングの両面に設けたことを特徴とするスクロール圧縮機。
  4. 渦巻状のラップを具備する固定スクロールと旋回スクロールを噛み合わせて圧縮室を形成し、該旋回スクロールの自転を防止する機構として、環状部材と該環状部材の端面に設けられたキーより成るオルダムリングを具備したスクロール圧縮機の該オルダムリングの製造方法において、前記オルダムリングは、前記キーの側面と前記環状部材の端面の交差部に該端面から軸方向に第1の溝を有し、かつ、前記第1の溝と前記環状部材の端面の間に第2の溝を有し、第1の溝は第2の溝より深くした形状に成形し、加工工具の底面の位置を前記環状部材の端面と前記第2の溝との間にし、前記加工工具により前記キーの側面を加工することを特徴とするオルダムリングの製造方法。
  5. 渦巻状のラップを具備する固定スクロールと旋回スクロールを噛み合わせて圧縮室を形成し、該旋回スクロールの自転を防止する機構として、環状部材と該環状部材の端面に設けられたキーより成るオルダムリングを具備したスクロール圧縮機の該オルダムリングの製造方法において、前記オルダムリングは、前記キーの側面と前記環状部材の端面の交差部に該端面から軸方向に第1の溝を有し、かつ、前記第1の溝と前記環状部材の端面間に第2の溝を有し、第1の溝は第2の溝より深くした形状に原料粉末を成形して焼結し、前記オルダムリングのキーの稜線部を丸みの形状に加工し、次に水蒸気処理を施して製造することを特徴とするオルダムリングの製造方法。
  6. 請求項1乃至3いずれか記載のスクロール圧縮機を具備したことを特徴とする空気調和機。
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