JP3916337B2 - 中空パイプを貫通させたギヤドモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、同一軸線上にモータと減速機を配して一体化した径方向にコンパクトなタイプのギヤドモータに係り、特に軸芯部に中空パイプを貫通させたギヤドモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ギヤドモータで攪拌翼を回すような設備において、ギヤドモータの先方にある攪拌対象領域にギヤドモータの後方から水等の液体を送り込む必要がある場合、従来では、ギヤドモータをよけて、配管やホースを引き延ばすことにより、ギヤドモータの先方に水等を送り込んでいる。
【0003】
また、ある機械の駆動源としてギヤドモータを使用し、該ギヤドモータの先方にある別の機械や装置にギヤドモータの後方から配線や配管等を延ばす必要があるような場合、従来では、ギヤドモータをよけて、それらの配管や配線を引き延ばしている。
【0004】
これがもし、ギヤドモータの内部を通して配管や配線等を引き延ばすことができれば、ギヤドモータの周囲に配管や配線等を巡らす必要がなくなるので、ギヤドモータの周囲をコンパクトにすることができる。
【0005】
このような発想から、従来、減速機の中心部に貫通孔を形成して、中に配管等を通せるようにした技術が開発されている(特開平9−57678号公報、特開平8−226498号公報、特開平8−285017号公報等参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらは減速機の中心に貫通孔をあける前提として、モータを予め減速機の中心をよけた位置に配設するようにしている。従って、配管や配線等を減速機の中心部の貫通孔を通して引き延ばすことはできるが、モータの配置自体が減速機の中心から外れているので、特に径方向のコンパクト性に欠けると言わざるを得ない。
【0007】
一方、特開平9ー177905号公報には、モータと減速機を同軸に連結し、減速機側まで貫通したモータ軸の内部に、減速機の出力回転をモータ側のエンコーダまで伝える回転軸を貫通させた構造が開示されている。
【0008】
しかし、この構造は、単に回転軸を中空のモータ軸の内部に貫通させただけであるので、ここで目的とする用途には使用できない。つまり、ギヤドモータの軸芯部に配管や配線等を貫通させて周囲のコンパクト化を図るという利用目的には使用することができない。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮し、軸芯部に配管や配線等を貫通させることのできる径方向にコンパクトな構造のギヤドモータを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、モータの先端部に該モータの出力回転を減速して出力する減速機が連結され、モータの出力軸と減速機の出力軸とが同一軸線上に配されたギヤドモータにおいて、前記モータの出力軸と減速機の出力軸とが共に中空軸で構成され、該モータの出力軸と減速機の出力軸の内部に、モータの後端部より減速機の先端部まで貫通する中空パイプが、該モータの出力軸と減速機の出力軸に対して非接触な状態で配設されると共に、前記減速機のケーシング内の後部側に、モータ出力軸の回転を減速して減速機のケーシング内の前部側に配された減速機出力軸に伝達する遊星歯車減速機構部が設けられ、前記モータ出力軸の先端部が、前記遊星歯車減速機構部の中心部を貫通して減速機出力軸の後端部に達するまで延ばされ、該モータ出力軸の先端部と減速機出力軸の後端部との間に両者の隙間をシールするオイルシールが設けられていることにより、上記課題を解決したものである。
【0011】
このギヤドモータは、モータと減速機が同軸に連結されたタイプであるから、ギヤドモータ自体の径方向寸法が小さく収まる。その上で、モータの後端部から減速機の先端部まで延びる中空パイプをギヤドモータの軸芯を貫通させて設けているので、中空パイプの中に配管や配線を通すことができ、ギヤドモータをよけるためにギヤドモータの周囲に配管や配線を巡らす必要がなくなる。従って、配管や配線等の周辺装備を含めて、ギヤドモータ廻りの径方向のコンパクト化が図れる。
【0012】
しかも、中空パイプは、モータ出力軸と減速機出力軸に対して非接触に配置しているので、中空パイプはそれらの出力軸と一緒に回転することはなく、配管や配線が中空パイプに接触しても擦れる心配がない。
【0013】
また、中空パイプは直接内部に液体を通す配管として利用することもでき、その場合は、中空パイプ自体が回らないので、高圧液体を通しても流通抵抗を少なくできる。
【0014】
また、このギヤドモータの場合、減速機は、ケーシング内の前部側に出力軸を配置すると共に後部側に遊星歯車減速機構部を配置した構成となっている。この構成であると、後部側の遊星歯車減速機構部の中心部にモータ出力軸が挿入されることになるが、その場合、遊星歯車減速機構部の潤滑油が、中空軸で構成した減速機出力軸とモータ出力軸の内部を通して外へ漏れ出ないようにすることが必要となる。
そこで、モータ出力軸の先端部を、遊星歯車減速機構部を貫通して減速機出力軸の後端部に達するまで敢えて延ばし、該モータ出力軸の先端部と減速機出力軸の後端部との間に両者の隙間をシールするオイルシールを設けている。これにより、両出力軸の内部空間と外部空間を確実に仕切ることができるようになり、外部空間側にある遊星歯車減速機構部から出力軸の内部空間側への潤滑油の漏れを防止することができる。又パイプの交換の際にオイルシールを再組込みする必要がないので、該変換が極めて容易になる。
【0015】
前記中空パイプは、ギヤドモータ外の軸受や固定手段等を用いても支持することができるが、請求項2の発明のように、中空パイプを、モータ出力軸の後端部と減速機出力軸の先端部にそれぞれ配した軸受によって支持するのがよい。
こうすることで、中空パイプを、モータ出力軸や減速機出力軸に非接触な状態で安定的に支持することができるし、ギヤドモータ外に中空パイプの支持手段を用意する必要もなくなる。
【0019】
又、請求項3の発明では、前記中空パイプの後端部を、モータの後端部に備わる固定側部材に固定している。この場合の固定側部材としては、例えばモータの後端に設けられたファンカバーがある。
【0020】
このように、中空パイプをモータのファンカバー等に固定したことにより、確実に中空パイプの回転を止めることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は実施形態に係るギヤドモータの全体構成を示す断面図、図2はそのうちのモータ部分のみの構成を拡大して示す断面図、図3は同減速機部分のみの構成を拡大して示す断面図、図4は図3の一部を更に拡大して示す断面図である。又、図5は図2のV部の拡大図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【0023】
図1に示すように、このギヤドモータ1は、モータ2の先端部に、該モータ2の出力回転を減速して出力する減速機3を連結し、モータ出力軸25と減速機出力軸32とを同一軸線上に配したタイプのものである。
【0024】
まず、図1、図2を用いてモータ2を説明する。
【0025】
モータ2のケーシング21は、固定子26を内蔵した円筒状の本体ケーシング21Aと、該本体ケーシング21Aの前面開口を塞ぐ前面カバー21Bと、後面開口を塞ぐ後面カバー21Cとからなる。
【0026】
回転子27と一体化されたモータ出力軸25は中空軸で構成されており、前面カバー21B及び後面カバー21Cに嵌合した軸受23、24により回転自在に支持されている。モータ出力軸25の先端部25aは、前面カバー21Bを突き抜けて減速機3の内部まで延ばされている。また、モータ出力軸25の後端部25bは、後面カバー21Cより突出しており、その突出した部分にファン28が固定されている。このファン28は、後面カバー21Cに固定されたファンカバー29で覆われている。
【0027】
前面カバー21Bには、減速機3のケーシング31と結合するためのフランジ22が設けられている。又、前面カバー21Bの軸受23よりも外側には、ケーシング21外に突出するモータ出力軸25の外周と、前面カバー21Bの貫通孔の隙間をシールするためのオイルシール19が設けられている。このオイルシール19は、減速機3側からモータ2側への潤滑油の漏れを防止するためのものである。
【0028】
次に、図1、図3を用いて減速機3を説明する。
【0029】
減速機3は、ケーシング31内の前部側に出力軸32を配置し、後部側に、モータ出力軸25の回転を減速して減速機出力軸32に伝達する遊星歯車減速機構部40を配置したものである。この減速機3は、ケーシング31の後端部に設けたフランジ部材38を、モータ2の前面カバー21Bのフランジ22とインロウ部22Bを介してボルト76で結合することにより、モータ2と一体化されており、それにより、モータ出力軸25と減速機出力軸32とが同一軸線上に配されている。
【0030】
減速機出力軸32は中空軸で構成されており、ケーシング31の内部に嵌合した2つの軸受33、34によって回転自在に支持され、先端部32aがケーシング31より外部に突出している。ケーシング31の前端部にある軸受33よりも外側には、ケーシング31外に突出する減速機出力軸32の外周と、ケーシング31の貫通孔の隙間をシールするためのオイルシール35が設けられている。このオイルシール35は、減速機3の内部から外部への潤滑油の漏れを防止するためのものである。
【0031】
ケーシング31内の後部側に配された遊星歯車減速機構部40は、入力側の第1段減速機構41と、出力側の第2段減速機構42とから構成されている。第1段減速機構41はモータ2に近い側に配され、第2段減速機構42はモータ2から離れた側つまり減速機出力軸32に近い側に配されている。
【0032】
第1段減速機構41は、ケーシング31の内周に設けられた第1内歯歯車45と、減速機3内に挿入されたモータ出力軸25の外周に一体回転するように装着された第1太陽歯車43と、これら第1太陽歯車43と第1内歯歯車45の間に配された複数の第1遊星歯車44と、これら複数の第1遊星歯車44をベアリング47及び遊星ピン46を介して自転可能に保持する第1キャリア48とからなる。
【0033】
又、第2段減速機構42は、ケーシング31の内周に設けられた第2内歯歯車53と、第1段減速機構41の第1キャリア48と一体に回転するよう設けられた第2太陽歯車50と、第2太陽歯車50と第2内歯歯車53の間に配された複数の第2遊星歯車51と、これら複数の第2遊星歯車51をベアリング52及び遊星ピン54を介して自転可能に保持する第2キャリア55とからなる。
【0034】
そして、この第2キャリア55が減速機出力軸32にスプライン結合されていることで、この遊星歯車減速機構部40では、次の経路で動力が伝達されるようになっている。
【0035】
即ち、モータ出力軸25が回転すると、第1段減速機構41の第1太陽歯車43を介して第1遊星歯車44が回転する。このとき第1内歯歯車45は静止しているため、第1遊星歯車44が第1内歯歯車45の内側に沿って公転し、これと一体に第1キャリア48が回転して、第2段減速機構42の第2太陽歯車50が回転する。第2太陽歯車50が回転すると、第2遊星歯車51が第2内歯歯車53の内側に沿って公転し、第2キャリア55が回転し、その回転が減速機出力軸32に伝達される。
【0036】
又、減速機3の内部に挿入されたモータ出力軸25の先端部25aは、図4に拡大して示すように、遊星歯車減速機構部40の中心部を貫通して、減速機出力軸32の後端32bに達するまで延ばされ、減速機出力軸32の後端部32b内周に挿入されている。そして、モータ出力軸25の先端部25aと減速機出力軸32の後端部32bとの間に、両者の隙間をシールするためのオイルシール18が設けられている。
【0037】
この場合、モータ出力軸25は、第2段減速機構42に回転力を入力するわけではないので、第2段減速機構42の第2太陽歯車50の中心孔を非接触で貫通している。
【0038】
図1に戻って、同軸に設けられた中空のモータ出力軸25と減速機出力軸32の内部には、モータ2の後端部より減速機3の先端部まで貫通する中空パイプ70が配設されている。この中空パイプ70は、モータ出力軸25の後端部25bと減速機出力軸32の先端部32aにそれぞれ配した軸受72、71によって支持され、モータ出力軸25と減速機出力軸32に対して非接触な状態で保持されており、後端部がファンカバー29にクランプ80によって固定されることで回り止めされている。
【0039】
クランプ80は、図5に示すように、上下に半割りされ且つ対向部に中空パイプ70の後端を挟持するための半円状押さえ溝81a、82aを有する押さえ板81、82と、両押さえ板81、82を締結することで中空パイプ70の後端を挟持する2本のボルト83と、上側の押さえ板81をファンカバー29に固定する止めボルト85とからなる。
【0040】
次に、このギヤドモータ1の作用を説明する。
【0041】
モータ2を駆動すると、モータ出力軸25の回転が遊星歯車減速機構部40により減速され、減速機出力軸32からその減速出力回転が外部に取り出される。その際、中空パイプ70は、モータ出力軸25及び減速機出力軸32の内部をそれらと非接触な状態で貫通しているので、一緒に回転しない。
【0042】
そこで、その中空パイプ70の内部に配線や配管等を通せば、ギヤドモータ1の周囲にそれらを巡らすことなく、コンパクトに、ギヤドモータ1の後方から前方に向けて配線や配管を引き延ばすことができる。その際、中空パイプ70が回らないから、中空パイプ70と接触した配管や配線が擦れる心配もない。もちろん、逆方向に配管や配線を引き延ばしてもよい。
【0043】
又、中空パイプ70の内部に直接水等を液体を流してもよい。その場合、高圧高速で液体を流しても、中空パイプ70が回転しない構造になっているから、流通損失が少ない。
【0044】
又、モータ出力軸25の先端部25aが減速機出力軸32の後端部32bまで延びており、両者間にオイルシール18が配されているから、両出力軸25、32の内部空間へ減速機3内の潤滑油が漏れ入るおそれもない。
【0045】
ここで、このオイルシール18(あるいは19)は、両出力軸25、33の内部空間へ減速機3内の潤滑油が漏れるのを防止するものであるため、単純には例えば、出力軸32(あるいは25)と中空パイプ70との間に配置されれば良い。しかしながら、これでは、中空パイプ70を交換する際に、当該オイルシールを適切に再組込みするのが非常に困難になる。その点、この実施形態の構成によれば、中空パイプ70の交換は極めて容易である。
【0046】
以上のように、このギヤドモータ1は、ギヤドモータ1の後方から前方に延ばす必要のある配管や配線を、ギヤドモータ1の軸芯に通した中空パイプ70の中に貫通させることができるので、それらの周辺装備を含めて、ギヤドモータ1廻りの径方向寸法の縮小を図ることができる。
【0047】
又、上述のように流通抵抗が少ないことから、高圧高速の流体を直接中空パイプ70の内部に流すことができるので、例えばシールドカッターの駆動源としてこのギヤードモータ1を使用した場合に、被削する土砂を中空パイプ70を通して供給した水で柔らかくして、被削性を良くすることもできる。
【0048】
又、撹拌機の駆動源としてこのギヤードモータ1を使用した場合には、撹拌槽内に向けて中空パイプ70を通して水を供給することにより、沈澱した汚濁ケーキをやわらかくすることができ、撹拌槽のオーバホールの容易化を図ることもできる。
【0049】
なお、中空パイプ70の内部空間は何に利用してもよく、電力線やセンサ等のケーブルを通すこともできる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、径方向寸法をコンパクトに収められるタイプのギヤドモータにおいて、モータの後端から減速機の先端まで延びる中空パイプを、ギヤドモータの軸芯を貫通させて設けているので、その中空パイプの中に配管や配線等を通すことで、配管や配線等の周辺装備を含めてギヤドモータ廻りの径方向寸法のコンパクト化が図れる。
【0051】
しかも、中空パイプはモータ出力軸や減速機出力軸と一緒に回らないようになっているので、配管や配線が中空パイプに接触しても擦れる心配がなく、又、中空パイプ内部に直接液体を通した場合でも流通抵抗を少なくできる。従って、中空パイプ内に高圧高速の液体を直接通すことにも向いている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のギヤドモータの全体構成を示す断面図
【図2】同ギヤドモータのモータ部分の構成を拡大して示す断面図
【図3】同ギヤドモータの減速機部分の構成を拡大して示す断面図
【図4】図3の一部を更に拡大して示す断面図
【図5】図2のV部拡大図
【符号の説明】
1…ギヤドモータ
2…モータ
3…減速機
18…オイルシール
25…モータ出力軸
25a…先端部
25b…後端部
29…ファンカバー(固定側部材)
31…ケーシング
32…減速機出力軸
32a…先端部
32b…後端部
40…遊星歯車減速機構部
70…中空パイプ
71,72…軸受
80…クランプ
Claims (3)
- モータの先端部に該モータの出力回転を減速して出力する減速機が連結され、モータの出力軸と減速機の出力軸とが同一軸線上に配されたギヤドモータにおいて、
前記モータの出力軸と減速機の出力軸とが共に中空軸で構成され、
該モータの出力軸と減速機の出力軸の内部に、モータの後端部より減速機の先端部まで貫通する中空パイプが、該モータの出力軸と減速機の出力軸に対して非接触な状態で配設されると共に、
前記減速機のケーシング内の後部側に、モータ出力軸の回転を減速して減速機のケーシング内の前部側に配された減速機出力軸に伝達する遊星歯車減速機構部が設けられ、前記モータ出力軸の先端部が、前記遊星歯車減速機構部の中心部を貫通して減速機出力軸の後端部に達するまで延ばされ、該モータ出力軸の先端部と減速機出力軸の後端部との間に両者の隙間をシールするオイルシールが設けられていることを特徴とする中空パイプを貫通させたギヤドモータ。 - 請求項1において、前記中空パイプが、モータの出力軸の後端部と減速機の出力軸の先端部にそれぞれ配された軸受によって支持されていることを特徴とする中空パイプを貫通させたギヤドモータ。
- 請求項1又は2において、前記中空パイプの後端部が、モータの後端部に備わる固定側部材に固定されていることを特徴とする中空パイプを貫通させたギヤドモータ。
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