JP3916201B2 - 粒度センサー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、粉体製造プロセスにおいて粉体の粒度状態を検出することで、製造プロセスの運転状態や製造設備等の機器の状態を監視し、製造プロセスや機器のリアルタイム制御に使用したり、製造プロセスや機器の異常を迅速に検出したりすることのできる粒度センサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、粉体製品の開発時や製造時の品質を確認する手段としては、粒度分析計によって粉体試料の粒度(粒度分布)を測定する方法が広く利用されている。特に、粉体製品の製造プロセスにおいては、プロセス中の各段階(各工程)で粒度を測定することによって、粉体製品の品質を向上させたり品質を維持したり、あるいは製造設備の運転状態の監視等を行っている。
【0003】
この粒度分布測定の手段としては、レーザ散乱式あるいはレーザ回折・散乱式の粒度分析計がその簡便性、迅速性およびデータ再現性の観点から最も広く使用され、さらに使用範囲が増加しているのが実情である。そして、レーザ回折・散乱式の粒度分析計による粒度分布の測定は、フラウンフォーファの回折理論あるいはMieの散乱理論による演算式(散乱光の物理現象を数学的に解析した関係式や、この関係式に基づき実際の散乱現象を開き角度の小さい扇形検出器で検出した場合の関係式等)を利用して行われるが、その際、次の2つの解法が使用されている。
【0004】
まず、第1の解法は、粒度分布を表す分布関数が対数正規分布やロジン・ラムラ分布等であると仮定し、散乱エネルギーの理論値と扇形検出器による実測値との誤差が最小となるように、分布関数の各種パラメータを反復法等を利用することによって求め、その分布関数を粒度分布とするものである。また、第2の解法は、扇形検出器で検出した場合の関係式において、積分公式で離散化することによって導いた線形連立方程式を、ある拘束条件(粒度分布を滑らかにしたり、分布が負の値にならないようにする等の拘束条件)の下で解いたり、適当な分布関数(前述の対数正規分布等)であるという拘束条件の下で解くことによって粒度分布を求めるようにしたものである。
【0005】
しかしながら、このようなレーザ回折・散乱式の粒度分析計にあっては、前述の粒度分布への変換時に仮定や拘束条件に基づく処理や近似処理が行われるため、実際の散乱光強度分布の微少な変化が、測定誤差や計算誤差として処理されてしまい、粒度分布の明確な変化として出力されない場合がある。また、粒度分析計において出力として汎用的に使用される種々の算術平均径等の統計データは、粒度分布が微少変化しただけでは変化量が小さく、これらのデータのみの監視では粒度分布が変化したことを正確に検知することが難しい。
【0006】
その結果、実際の粉体製造時や粉体製品の開発時等の粉体製造プロセスにおいて、測定対象としての粉体製品の粒度分布に変化が生じたか否かを精度良く確認したい場合とか、製造中の粉体製品の粒度品質を精度良く確認し、例えば粉体製品の製造に関する機器(製造設備等)の運転状態が健全であるか否かを監視したい場合等に、前述した粒度分析計では、精度および感度上の観点からそのまま適用することが難しいという問題点があった。
【0007】
さらに、粒度分析計においては、光検出器で測定した散乱光強度分布を粒度分布に変換するために複雑な演算処理を必要とし、粒度をリアルタイムで監視するには結果を出力するまでに時間がかかりすぎるという問題点もあった。そこで、本出願人は、これらの問題点を解決するために、特願平11−101179号において新しい粒度センサーを提案した。この粒度センサーによれば、散乱光強度分布を粒度分布に変換することなく散乱光強度のままで利用することにより粒度の状態を正確かつ迅速に把握して、製造プロセスの運転状態や機器の状態監視を精度良く行うことが可能となった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人が特願平11−101179号で提案した粒度センサーにおいても、次のような問題点がある。粉体の製造プロセスにおいてリアルタイムで粒度を監視するためには、試料を製造ラインから直接採取する必要がある。その場合に、試料の濃度が粒度測定に影響を与えることが分かっている。レーザ光の回折・散乱によって粒度測定を行う場合、光源、光学系、検出器等の仕様によって多少異なるが、常に安定した結果を出すためには、試料濃度をある適正濃度範囲内に制御する必要がある。この適正濃度範囲を逸脱すると、測定結果に濃度に依存する誤差を含むようになる。
【0009】
このように、特願平11−101179号で提案した粒度センサーにおいても、粉体の濃度を適正濃度に保つ必要があり、粉体濃度が適正濃度範囲を逸脱すると正確な測定ができなくなるという問題点があった。このため、粒度センサーが粉体粒度の異常を報知しても、実際に粉体の粒度に異常を生じているのか、それとも、粉体の濃度が適正濃度範囲を逸脱したためであるのかが判別できない場合があった。
【0010】
そこで、本発明は、散乱光強度を粒度分布に変換することなく利用することにより粒度の状態を正確かつ迅速に判定する粒度センサーにおいて、粉体の濃度が変化しても粒度を正確に判定することのできる粒度センサーを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の粒度センサーは、試料を測定するための散乱場と、前記散乱場に導入された試料にレーザ光を照射するレーザ光源と、前記散乱場に導入された試料によって回折・散乱されたレーザ光の散乱光強度を検出するための複数の検出素子を備えた光検出器と、前記光検出器で検出した各検出素子ごとの検出値が、各検出素子ごとに設定した基準範囲内にあるか否かを比較し、その比較結果に基づいて試料の粒度の適否を表す信号を出力するデータ処理手段とを有し、前記データ処理手段は、前記基準範囲を試料の濃度に対応させて変更するものである。
【0012】
また、上記の粒度センサーにおいて、前記データ処理手段は、散乱光を検出する各検出素子ごとの検出値の少なくとも1つが、各検出素子ごとの前記基準範囲の範囲外となったときに、試料の粒度の異常を報知する報知信号を出力するものであることが好ましい。
【0013】
また、上記の粒度センサーにおいて、前記光検出器は、試料中を散乱されずに透過したレーザ光の強度を検出するための透過光検出素子を含み、前記データ処理手段は、前記透過光検出素子の検出値により、試料の濃度に対応した前記基準範囲を設定するものであることが好ましい。
【0014】
また、上記の粒度センサーにおいて、前記データ処理手段は、試料導入前の前記透過光検出素子の検出値の総和を記憶しておき、試料導入後の前記透過光検出素子の検出値の総和と、記憶している試料導入前の前記透過光検出素子の検出値の総和との比によって試料の濃度に関連する濃度指数を計算するものであることが好ましい。
【0015】
また、上記の粒度センサーにおいて、前記データ処理手段は、予め複数種類の濃度指数に対応して複数種類の基準範囲を記憶しておき、記憶している複数種類の前記基準範囲の中から測定中の試料の濃度指数に対応した最適な基準範囲を選択するものであることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の粒度センサー1の構成を示すブロック図である。粒度センサー1内には、コリメータ2aを有するレーザ光源2が配置されており、平行レーザ光がレーザ光源2から出力される。光軸調整機構3は、レーザ光源2から出力された平行レーザ光の光軸を調整するための機構である。散乱場4は、粒度を監視するための試料を導入して平行レーザ光の回折・散乱を生じさせる場所である。集光レンズ5は、散乱場4の試料により散乱された散乱光を集光するためのものである。光検出器6は、散乱光の強度分布を検出するためのものであり、後述するように複数の検出素子からなっている。
【0017】
光検出器6の複数の検出素子により検出された散乱光の強度分布は、マルチプレクサ7によって各検出素子の検出データが時間軸に関して多重化される。強度分布のデータは、さらに増幅アンプ8により増幅され、A/D変換器9によって各検出素子の検出データごとにデジタルデータに変換される。A/D変換器9の出力は、データ処理手段10に送られて、各検出素子の検出データを粒度分布に変換することなく、そのまま生データとして基準範囲と比較して試料の粒度が適正か否かの判定を行う。そして、その判定結果にしたがって、粒度が適正である旨の信号または粒度が適正範囲から外れた旨の信号を外部に出力する。また、A/D変換器9の出力は、制御手段11に送られて光軸調整機構3による光軸調整の制御に利用される。
【0018】
この粒度センサー1は、粉体製品の製造プロセスにおいて、粉体製品の粒度が適正値であるか否かをリアルタイムに監視するために使用される。粉体製品の製造ラインにおける粒度センサー1の設置形態の例を図2、図3により説明する。図2は、粉体製品の移送管14から試料を採取して粉体製品の粒度を判定する設置形態である。移送管14から粉体製品の一部が試料として採取管12によって吸引され粒度センサー1の散乱場4に導入される。散乱場4に導入された試料はリアルタイムで粒度が判定され、粒度を判定した後の試料は戻し管13により、もとの移送管14に戻される。なお、粒度を判定した後の試料を移送管14に戻さずに、廃棄するように構成してもよい。
【0019】
図3は、移送管14中を移送される粉体製品の粒度を粒度センサー1により直接判定するようにしたものである。移送管14の少なくとも一部にレーザ光を透過する検出窓を設け、その検出窓を通してレーザ光源2からのレーザ光を粉体製品に直接照射し、粉体製品による散乱光の分布を検出するようにしたものである。この場合は、散乱場は移送管14の内部となる。この設置形態においては、試料を採取するための採取管、戻し管等の配管や、試料の吸引機構等の付属機器が不要となり、構成を簡素化することができる。
【0020】
図4は、光検出器6の全体構成を示す図である。光検出器6の全体の形状は、中心角αのほぼ扇形に構成されている。中心角αは、例えば20度に設定される。光検出器6には、散乱光を検出するためのE1〜E17の17個(17チャンネル)の検出素子が含まれる。検出素子E1〜E17は、寸法が順次指数関数的に拡大するように構成されているので、中心側の検出素子E1〜E9は、寸法の関係で図4には示されていない(検出素子E1〜E7は、図5参照)。また、散乱光を検出するための検出素子は、17チャンネルに限らず任意のチャンネル数だけ設けることができる。
【0021】
図5は、光検出器6の中心部近傍の構成を示す図である。光検出器6が構成する扇形の中心位置の近傍には、光軸調整用検出素子S1〜S5が設けられている。散乱場4に試料の存在しない状態で、レーザ光源2からレーザ光を出力して光軸調整を行う。このとき、中心部の光軸調整用検出素子S1により検出されるレーザ光強度が最大値となり、かつ、周囲の光軸調整用検出素子S2〜S5の検出強度がそれぞれ等しくなるように、制御手段11により光軸調整機構3を制御して光軸の調整を行う。
【0022】
続いて、散乱場4に試料が存在しない状態でバックグラウンド測定を行う。レーザ光源2からレーザ光を出力し、検出素子E1〜E17での検出強度を測定する。これは、試料の試料が存在しない状態でのバックグラウンドの散乱光強度を検出するための測定である。バックグラウンドの散乱光は、空気中に浮遊する粒子による散乱、光学系や検出窓による散乱が原因である。バックグラウンド測定の際に、光軸調整用検出素子S1〜S5により受光された光強度の総和を測定前受光量Saとして計算し、保存しておく。この測定前受光量Saは、試料の粒度測定の際の試料濃度の指標となる濃度指数SLを求めるために必要となる。
【0023】
次に、散乱場4に試料を投入して、検出素子E1〜E17により散乱光の強度分布を検出して、試料の粒度の判定のためのデータ処理をデータ処理手段10により行う。その際、光軸調整用検出素子S1〜S5によって受光されたレーザ光強度の総和を測定時受光量Sbとして計算する。この測定時受光量Sbは、試料によって散乱されずに透過してきた透過光(直射光)の強度である。測定前受光量Saと測定時受光量Sbとから、計算式SL=Sb/Saによって計算される濃度指数SLは、試料の濃度を示す指標となるものである。
【0024】
図6は、濃度指数SLと試料濃度との関係を示す図である。濃度A〜Eは、濃度Aから濃度Eに向かって順次、濃度が大きくなっている。これらの濃度A〜Eの試料に対して、濃度指数SLを計算した結果が図6に示されている。図6に示されているように、試料の濃度が大きくなるほど、濃度指数SLの値は小さくなる。濃度指数SLは、試料に散乱されずに透過するレーザ光の割合を示すものである。試料の濃度が極めて薄いと、濃度指数SLの値は1に近づく。
【0025】
図7は、散乱光の強度分布と試料濃度との関係の一例を示す図である。これは、同一粒度の試料を図6における濃度A〜Eとして、それぞれの濃度における散乱光の強度分布を検出したものである。各強度分布は、それぞれの強度分布の最大値によって規格化された測定値である。このように、同一粒度の試料であっても、その濃度によって散乱光の強度分布が変化してしまう。
【0026】
そこで、図7に示すように、基準となる適正な粒度の粉体について、種々の濃度に対して散乱光の強度分布を予め基準値として測定しておく。そして、粉体の粒度の測定時には、前述の濃度指数SLを計算して粉体の濃度を求め、その濃度指数SLに対応した強度分布の基準値を使用する。このようにして、粉体の粒度測定時の散乱光の強度分布を、粉体の濃度に対応した基準値および許容範囲と比較することにより、粉体の濃度に影響されることなく正確な粒度の判定を迅速に行うことが可能となる。
【0027】
なお、ここでは試料濃度の指標として、SL=Sb/Saによって計算される濃度指数SLを使用したが、これ以外にも、検出素子E1〜E17による散乱光の受光量の総和等を使用してもよいし、任意の検出素子の検出値を使用してもよい。これらの検出値の試料投入前の値と試料投入後の値の比(またはその逆数)を計算することにより、試料濃度に対応する指標値が得られる。
【0028】
次に、図8から図11により、粉体の粒度の判定方法を説明する。まず、粉体試料の濃度指数SLを前述のように計算し、濃度指数SLに応じた強度分布の基準値を選択する。予め、標準の粉体について種々の濃度指数における散乱光の強度分布を測定しておき、その測定値をその濃度指数に対応する基準値としてデータ処理手段10内の記憶手段等に記憶しておく。強度分布の基準値の選択は、記憶している複数種類の基準値の中から、測定中の試料の濃度指数に最も近い濃度指数に対する基準値を選択する。または、2つの濃度指数の値に対する基準値の直線補間演算等を行い、測定中の試料の濃度指数に対する基準値を計算により求めるようにしてもよい。
【0029】
図8は、各検出素子ごとに設定する基準値Ibを示す図である。データ処理手段10内の記憶手段等に記憶された種々の濃度に対する散乱光の強度分布の基準値から、最適なものを選択して検出素子E1〜E17(チャンネル1〜17に対応)のそれぞれに対する基準値Ibを図8のように設定する。ただし、ここで示した基準値Ibの強度分布を有する粉体は、図7で示した粉体とは種類が異なるものである。
【0030】
散乱光強度分布の基準値Ibが設定されると、次に、図9に示すように、各検出素子ごとの許容範囲Xを設定する。各検出素子ごとの基準値Ibに対して、許容範囲の上限値Y1と下限値Y2をそれぞれ設定する。この許容範囲の設定は、例えば、各検出素子ごとの基準値Ibに対して、一定値(X/2)を加算した上限値Y1と、一定値(X/2)を減算した下限値Y2を設定することができる。この場合、許容範囲の数値幅はX(X=Y1−Y2)となる。
【0031】
なお、許容範囲Xの設定は、基準値Ibに対して一定値を加減算して上限値Y1および下限値Y2を設定する方式に限らず、例えば、各チャンネルごとに上限値Y1や下限値Y2(すなわち許容範囲X)を変えて設定したり、許容できる範囲内の粒度分布を持つ粒子群を複数回測定して散乱光強度分布の統計データから許容範囲を決定して設定することもできる。あるいは、基準値Ibに対して一定の比率を乗算して上限値Y1と下限値Y2とを設定することもできる。また、許容範囲も濃度指数に対応して複数種類設定しておき、複数種類の基準値とともにデータ処理手段10内の記憶手段等に記憶しておいてもよい。
【0032】
許容範囲が設定されると、測定対象としての粉体の試料の散乱光強度を測定する。この散乱光強度の測定は、前述したように、製造プロセス中の粉体を粒度センサー1の散乱場4に投入することによって行われ、光検出器6で検出された各チャンネルごとの散乱光強度データ(測定値Iという)がデータ処理手段10に入力される。そして、データ処理手段10は、各チャンネルごとの測定値Iが入力されると、それぞれの測定値Iが許容範囲X内にあるか否かを判断する。図10は、試料の粒度が適正であると判定された場合を示す図である。すなわち、図10においては各チャンネル1〜17における測定値Iが全て許容範囲X内に収まっている。
【0033】
図11は、試料の粒度が適正でないと判定された場合を示す図である。すなわち、チャンネル7,8において測定値Iが許容範囲Xから外れている。この場合は、粉体の粒度が異常であると判定して、異常信号を外部に出力する。粉体の粒度が適正値であると判定されている間は、特にその旨を報知する信号を出力する必要はないが、正常信号を出力することにより粉体の粒度が適正値であることを外部に報知するようにしてもよい。
【0034】
図12は、以上のような試料粒度の判定を行う手順を示すフローチャートである。まず、粉体試料の粒度の測定に先だって、手順101において、レーザ光源2の光軸調整が行われる。光軸調整は、前述のように、光検出器6の光軸調整用検出素子S1〜S5の検出値を使用して、制御手段11によって光軸調整機構3を制御することにより行う。次に、手順102において、散乱場4への試料投入前にバックグラウンド測定を実行する。そして、このバックグラウンド測定時に手順103において、光軸調整用検出素子S1〜S5により受光された光強度の総和を測定前受光量Saとして計算し、この測定前受光量Saをデータ処理手段10内の記憶手段等に記憶しておく。
【0035】
次に、手順104で粉体製品の試料を粒度センサー1の散乱場4に投入する。そして、次の手順105において、検出素子E1〜E17によって散乱光強度の測定を行い、同時に、光軸調整用検出素子S1〜S5によって透過光(直射光)強度の測定を行う。次に、手順106において、光軸調整用検出素子S1〜S5によって受光された透過光強度の総和を測定時受光量Sbとして計算し、この測定時受光量Sbをデータ処理手段10内の記憶手段等に記憶しておく。
【0036】
次に、手順107において、濃度指数SLを式SL=Sb/Saによって計算し、この濃度指数SLをデータ処理手段10内の記憶手段等に記憶しておく。そして、次の手順108において、測定中の試料の濃度指数に応じた最適な基準範囲を設定する。ここで、基準範囲とは、散乱光強度分布の基準値および許容範囲を指す。種々の濃度指数に対応する基準範囲が、予めデータ処理手段10内の記憶手段等に記憶されている。
【0037】
次に、手順109において、試料の粒度が適正なものであるか否かが判定される。すなわち、各チャンネル1〜17において散乱光強度の測定値が基準範囲内に入っているか否かを判定する。いずれかのチャンネルにおいて測定値が基準範囲を外れていれば、粉体製品の粒度が異常であると判定する。そして、手順110において粒度の正常または異常を報知する報知信号を外部に出力する。次に、手順111において、測定を終了するか否かにより手順を分岐する。測定を終了するのであれば以上の手順を全て終了し、測定を続けるのであれば手順104に戻って試料の粒度の測定を続行する。
【0038】
以上のように、本発明の粒度センサー1によれば粉体製品の粒度をリアルタイムに監視することができ、粉体の製造プロセス中の異物混入等の検出やふるいの破損検出が可能になるとともに、造粒、粉砕・破砕等の粒径操作の制御を行うことが可能となる。すなわち、粒度センサー1によって移送管14内の粉体を時々刻々採取して粒度の判定を行い、粒度が基準範囲外となったときには、粒度が過大あるいは過小である等の異常を報知する信号が出力される。その信号により粒径操作の制御を行い、粒度を適正値に戻すことができる。
【0039】
さらに、移送管14内の粉体中に正常な粉体に対して粒子の大きさが異なる異物が混入した場合、散乱光強度分布(散乱光パターン)の所定のチャンネルの測定値に変化が生じるため、この変化によって異物が検出できる。また、移送管14内の粉体の屈折率や形状が変化した場合も、散乱光強度分布の所定のチャンネルの測定値に変化が生じるため、この変化によって粉体中の異種物や異形物が検出されることになる。
【0040】
また、粉体の製造プロセス中では、分級や粒度確認のために多くのふるいが使用されているが、現状では、このふるい自体の破損を簡単かつ確実に検出することはできない。しかし、本発明の粒度センサー1によれば、ふるい通過後の粉体の粒度を監視することにより、ふるいの目の破損等が容易に検出可能となる。例えば、分級に使用しているふるいの目の破損が生じたとすると、本来はふるい上にあるはずの大粒径の粒子が、ふるいを通過してしまうことになり、粉体の散乱光強度分布に変化が生じる。この変化により、ふるいの目の破損が検出できることになる。
【0041】
さらに、粉体の製造プロセスにおいては、図示しない造粒機や破砕・粉砕機等の機器が使用されており、例えば破砕・粉砕機の場合、使用しているうちに破砕・粉砕する粉体によって内部のロール等の部品が摩耗しその隙間が大きくなるため、粉砕・粉砕後の粉体粒子の径が徐々に大きくなってしまうことがある。そこで、目標とする粒度分布が得られるように、造粒機や破砕・粉砕機を制御する粒径操作処理が必要になるが、粒度センサー1を粉体の移送管14に設置したり、造粒機の後段や破砕・粉砕機の後段に設置することによって、粒度センサー1の出力信号でこれらを制御することができる。
【0042】
すなわち、粒度が基準範囲外となったときには、粒度センサー1から粒度が過大あるいは過小であることを報知する信号を出力し、その信号によりロールの間隙長等を調整して粒径操作の制御を行い、粒度を適正値に戻すことができる。あるいは、粉体粒度の異常信号により造粒機や破砕・粉砕機に異常の可能性があるものとして、破砕・粉砕機を非常停止させること等ができる。
【0043】
ところで、以上の例においては、光検出器のチャンネル1〜17の各検出素子のそれぞれに基準値Ibと許容範囲Xを設定し、全てのチャンネルにおいて測定値Iと許容範囲Xとを比較したが、必ずしも全てのチャンネルで比較を行う必要はなく、特定のチャンネルのみに基準値Ibと許容範囲Xを設定して測定値Iと比較することにより粒度状態を判定するようにしてもよい。
【0044】
このように、本発明の粒度センサー1によれば、光検出器6の各チャンネルごとの散乱光強度の測定値をそのまま利用して、予め各チャンネルごとに設定した基準範囲と比較することによって粉体の粒度状態を判定するため、粒度判定の処理を簡単な比較処理のみで実現でき、粒度判定を高速かつ高精度に行うことが可能となった。さらに、比較対象とする基準範囲として、粉体の濃度に応じて最適な基準範囲を設定するようにしたので、粉体の濃度の影響を受けずに高精度の粒度判定を行うことが可能となった。
【0045】
また、粒度センサー1を移送管14の近傍位置に設置することができ、試料の採取時間を短縮して粒度状態の検出時間遅れをより少なくすることができる。このことから、例えば移送管14内の粉体の粒度をほぼ連続的にリアルタイムで検出監視することができて、製造プロセス中の粒度状態をリアルタイムで高精度に検出し、粉体製造の歩留まりの悪化等を防ぐことが可能になる。
【0046】
さらに、粒度センサー1が散乱光強度のパターンによって粒度状態を捉えて所定の出力信号を出力するため、粒度分布を作業者が見て判断する必要がなくなるとともに、前述のように、出力信号により自動的に製造プロセス中の異物等を検出したり、粒径操作処理の監視や機器のフィードバック制御等を行うことが可能になる。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0048】
試料による散乱光強度を粒度分布に変換することなくそのまま利用して基準範囲と比較して粒度の判定を行うようにし、かつ、その基準範囲を試料の濃度に対応させて変更するようにしたので、試料濃度の影響を受けずに試料の粒度を正確かつ迅速に判定することが可能となった。これにより、製造機器の故障、異物混入、ふるいの破損等の異常状態を時間遅れなく検出することが可能となり、また、製造機器の粒径操作の制御や非常停止の制御を行うことも可能となった。
【0049】
検出値の各検出素子の検出値の少なくとも1つが基準範囲の範囲外となったときに試料の粒度の異常を報知する報知信号を出力するようにしたので、粒度の判定処理を簡単に短時間で行うことができる。これにより、試料の粒度をさらに正確かつ迅速に判定することが可能となった。
【0050】
試料中を散乱されずに透過した透過光の検出値により、試料の濃度に対応した基準範囲を設定するようにしたので、簡単な処理により最適な基準範囲を設定することができ、試料濃度の影響を受けずに試料の粒度を正確かつ迅速に判定することが可能となった。
【0051】
試料導入後の透過光の検出値と試料導入前の透過光の検出値との比によって試料の濃度に関連する濃度指数を計算するようにしたので、簡単な処理により試料の濃度を特定することができ、試料濃度の影響を受けずに試料の粒度を正確かつ迅速に判定することが可能となった。
【0052】
予め複数種類の濃度指数に対応して複数種類の基準範囲を記憶しておき、その基準範囲の中から測定中の試料の濃度指数に対応した最適な基準範囲を選択するようにしたので、簡単かつ高速な処理により最適な基準範囲を設定することができ、試料濃度の影響を受けずに試料の粒度を正確かつ迅速に判定することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の粒度センサーの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、粒度センサーの設置形態の一例を示す図である。
【図3】図3は、粒度センサーの設置形態の他の例を示す図である。
【図4】図4は、光検出器の全体構成を示す図である。
【図5】図5は、光検出器の中心部近傍の構成を示す図である。
【図6】図6は、濃度指数SLと試料濃度との関係を示す図である。
【図7】図7は、散乱光の強度分布と試料濃度との関係を示す図である。
【図8】図8は、各検出素子ごとに設定する基準値を示す図である。
【図9】図9は、各検出素子ごとに設定する許容範囲を示す図である。
【図10】図10は、試料の粒度が適正であると判定された場合を示す図である。
【図11】図11は、試料の粒度が適正でないと判定された場合を示す図である。
【図12】図12は、試料粒度の判定を行う手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…粒度センサー
2…レーザ光源
2a…コリメータ
3…光軸調整機構
4…散乱場
5…集光レンズ
6…光検出器
7…マルチプレクサ
8…増幅アンプ
9…A/D変換器
10…データ処理手段
11…制御手段
12…採取管
13…戻し管
14…移送管
E1〜E17…検出素子
S1〜S5…光軸調整用検出素子
Claims (5)
- 試料を測定するための散乱場(4)と、
前記散乱場(4)に導入された試料にレーザ光を照射するレーザ光源(2)と、
前記散乱場(4)に導入された試料によって回折・散乱されたレーザ光の散乱光強度を検出するための複数の検出素子(E1〜E17)を備えた光検出器(6)と、
前記光検出器(6)で検出した各検出素子(E1〜E17)ごとの検出値が、各検出素子(E1〜E17)ごとに設定した基準範囲内にあるか否かを比較し、その比較結果に基づいて試料の粒度の適否を表す信号を出力するデータ処理手段(10)とを有し、
前記データ処理手段(10)は、前記基準範囲を試料の濃度に対応させて変更するものである粒度センサー。 - 請求項1に記載した粒度センサーであって、
前記データ処理手段(10)は、散乱光を検出する各検出素子(E1〜E17)ごとの検出値の少なくとも1つが、各検出素子(E1〜E17)ごとの前記基準範囲の範囲外となったときに、試料の粒度の異常を報知する報知信号を出力するものである粒度センサー。 - 請求項1,2のいずれか1項に記載した粒度センサーであって、
前記光検出器(6)は、試料中を散乱されずに透過したレーザ光の強度を検出するための透過光検出素子(S1〜S5)を含み、
前記データ処理手段(10)は、前記透過光検出素子(S1〜S5)の検出値により、試料の濃度に対応した前記基準範囲を設定するものである粒度センサー。 - 請求項3に記載した粒度センサーであって、
前記データ処理手段(10)は、試料導入前の前記透過光検出素子(S1〜S5)の検出値の総和を記憶しておき、試料導入後の前記透過光検出素子(S1〜S5)の検出値の総和と、記憶している試料導入前の前記透過光検出素子(S1〜S5)の検出値の総和との比によって試料の濃度に関連する濃度指数(SL)を計算するものである粒度センサー。 - 請求項4に記載した粒度センサーであって、
前記データ処理手段(10)は、予め複数種類の濃度指数(SL)に対応して複数種類の基準範囲を記憶しておき、記憶している複数種類の前記基準範囲の中から測定中の試料の濃度指数(SL)に対応した最適な基準範囲を選択するものである粒度センサー。
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