JP4157389B2 - 放射線モニタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、放射線モニタ、例えば原子力発電所、病院、研究所等で使用される半導体検出器を用いた放射線モニタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
放射線モニタのための放射線センサには、例えば、P型半導体層とN型半導体層との間に特に抵抗の大きいI型半導体層(低不純物濃度層)を設けたPIN型フォトダイオードが半導体検出器として使用されている。
また、放射線モニタの健全性を診断する手段として、光パルスを半導体検出器のPIN型フォトダイオードに照射して光パルスに対応する半導体検出器の出力パルスの波高値を監視するようにしたものが知られている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特公平6−72930号公報(p3、左欄18行−同39行、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の放射線モニタは、前記のように構成され、健全性の診断に際して半導体検出器に光パルスを照射すると、放射線モニタの指示が上昇して正確な測定ができなくなるため、照射前に放射線モニタの運転状態をテストモードに切換えてテスト警報を発信させて報知する操作が必要であり、テスト期間中は放射線モニタが欠測となる結果、欠測なしでのオンライン診断ができないという問題点があった。更に、半導体検出器を構成する半導体センサは、劣化するとリーク電流が増加してそれにともない定常ノイズが増加する現象、及び半導体検出器用電源が劣化するとリップルが増加する現象があり、これらが運用中の指示上昇トラブルの原因となるが、定期的に自動でオンライン診断ができないという問題点があった。
この発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであり、放射線モニタを欠測なしでオンライン診断することができ、更に、半導体検出器と半導体検出器用電源とを別々に定期的にオンライン自動診断することができる放射線モニタを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる放射線モニタは、放射線の入射時に所定の幅のパルスを出力し、光パルスの入射時に所定の幅とは異なる幅のパルスを出力する半導体検出器と、前記半導体検出器の出力パルスの幅を弁別し、放射線によるパルスに対応した出力パルスを生ずるパルス幅弁別手段と、前記半導体検出器の出力パルスの波高値スペクトルを測定する波高値スペクトル測定手段と、前記パルス幅弁別手段の出力及び前記波高値スペクトル測定手段の出力にもとづいて放射線を測定する放射線測定手段と、前記半導体検出器に電圧を供給する電源の出力側に接続され、前記電源出力の直流成分をカットして交流成分を出力する直流カット手段と、前記直流カット手段の出力と前記半導体検出器の出力とを切り換えて前記波高値スペクトル測定手段に入力する切換手段とを備えたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図にもとづいて説明する。 図1は、実施の形態1による放射線モニタの構成を示すブロック図である。この図において,半導体センサ1は放射線が入射することにより電流パルスを出力するもので、例えばP型半導体層とN型半導体層の間に特に抵抗の大きいI型半導体層(低不純物濃度層)を有するPIN型フォトダイオードによって構成されている。この場合、I型半導体層が放射線に対して感度を有しており、放射線の入射時に生成された電子と正孔が後述するバイアス電圧による電位勾配で電極に収集されて電流パルスを出力するもので、バイアス電圧が変動すると前記の電子と正孔の収集率が変化して放射線に対する感度が変動するものである。なお、半導体センサは、例えば放射線環境下で長期間使用するとその積算線量に応じて劣化し感度が低下することが知られている。
【0007】
プリアンプ2は前記半導体センサ1と共に半導体検出器を構成するもので、前記半導体センサ1の出力としての電流パルスを積分して電圧パルスに変換するものである。半導体検出器用電源3は前記半導体センサ1と前記プリアンプ2にバイアス電圧を供給するものである。パルス増幅器4は前記プリアンプ2の出力としての電圧パルスを増幅するものである。波高弁別器5は前記パルス増幅器4の出力パルスを入力して波高値が所定の値未満のパルスをノイズとして除去し、かつ、波高値が所定の値以上のパルスに対応してパルスを出力するものである。
パルス幅弁別器6は前記パルス増幅器4の出力パルスを入力してパルス幅が所定の値を超えるパルスをノイズとして除去し、かつ、パルス幅が所定の値以下のパルスに対応してパルスを出力するものである。論理回路7は前記波高弁別器5の出力と前記パルス幅弁別器6の出力との論理積でパルスを出力するようにされている。
【0008】
波高値スペクトル測定手段としての多重波高分析器8は前記パルス増幅器4の出力パルスを入力して波高値に対応した頻度のデータを出力するようにされている。放射線測定手段としてのレートメータ9は前記論理回路7の出力パルスと前記多重波高分析器8の出力データを入力してパルスの計数、計数率の計算、工学値変換、得られたデータにもとづく設定値との比較及び自己診断等の演算を行うと共に、表示及び警報発信を行うものである。LED10は光パルスを発生して前記半導体センサ1に照射するようにされており、前記レートメータ9からのテストパルスにもとづいて動作するLEDドライバー11によって駆動される。
このLED10は放射線センサ1に対して放射線と同様に感度を有するように波長と強度が選定されているが、更に、放射線センサ1の出力パルスが放射線の入射による場合と光パルスの入射による場合とでパルス幅が異なるように光パルスの幅が選定されている。
【0009】
図2は、この発明の実施の形態1における光パルス照射状態でのパルス増幅器4の出力パルスを示す図である。この図において、aはパルス増幅器4の出力パルスを示すものであり、alとa3は放射線の入射によるもの、a2とa5は光パルスの入射によるもの、a4はノイズによるものである。
また、cは波高弁別器5の波高弁別レベルを示すものであり、パルスの波高値がc未満のa4をノイズとして除去し、c以上のal、a2、a3、a5に対応して出力パルスを発生する。dはパルス幅弁別器6においてパルス幅を弁別する時にパルス幅を特定するレベルである。tlとt3はそれぞれ放射線による出力パルスalとa3に対応したパルス幅であり、t2とt5は光パルスによる出力パルスa2とa5に対応したパルス幅である。パルス幅弁別器6では基準のパルス幅ts(図示していないが、t2、t5より小さく、t1、t3より大きく設定される)が設定されており、tsを超える幅のパルスをノイズとして除去し、ts以下の幅のパルスに対応してパルスを出力する。また、波高弁別器5とパルス幅弁別器6の出力の論理積により、すなわちalとa3に対応して論理回路7からパルスが出力される。したがって、レートメータ9では放射線によるパルスのみが計数され、光パルスは計数されないため、放射線モニタはオンラインの状態で放射線センサ1に対して光パルスを照射することができる。
【0010】
図3は、この発明の実施の形態1における光パルス照射状態での多重波高分析器8の出力の波高値スペクトルを示す図である。この図において、横軸はパルス増幅器4の出力パルスの波高値、縦軸は頻度としてのカウント、eはバックグラウンドスペクトル、fは波高弁別器5の波高弁別レベルである。gは光パルスによる光パルススペクトルピークの初期値、hは半導体検出器用電源3のバイアス電圧がマイナス変動した場合または半導体センサが放射線等で劣化した場合の光パルススペクトルピーク、iは半導体検出器用電源3のバイアス電圧がプラス変動した場合の光パルススペクトルピークを示す。光パルスを半導体センサ1に照射すると通常のバックグラウンドスペクトルに光パルススペクトルが上積みされた波高値スペクトルになる。なお、上記実施の形態1では、レートメータ9からテストパルスを出力してLEDドライバー11を駆動し、LED10を発光させ、半導体センサ1に光パルスを照射し、レートメータ9で光パルススペクトルピークの波高値を検出し、それをその初期値と比較するようにしたので、半導体検出器用電源3及び半導体センサ1の健全性をオンラインで診断することができる。診断機能は定期的に自動で動作するが、マニュアル操作も可能である。
【0011】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2を図にもとづいて説明する。図4は、実施の形態2による放射線モニタの構成を示すブロック図である。この図において、図1と同一または相当部分にはそれぞれ同一符号を付して説明を省略する。図1と異なる点は、半導体検出器用電源3の出力電圧が入力され、測定データをレートメータ9に出力するA/D変換器12を設けた点である。 A/D変換器12の測定データはレートメータ9に入力されて常時監視されるので、半導体センサ1と半導体検出器用電源3とを別々にオンライン診断することができる。
【0012】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3を図にもとづいて説明する。この実施の形態による放射線モニタの構成は、図1または図4と同様であるため図示を省略する。
図5は、実施の形態3を説明するための図で、半導体センサ1の劣化または半導体検出器用電源3の劣化によるバックグラウンドスペクトルの変化を示す図である。この図において、横軸はパルス増幅器4の出力パルスの波高値、縦軸は頻度としてのカウント、jはバックグラウンドスペクトルの初期値、kは半導体検出器用電源3の劣化または半導体センサ1の劣化が進行した状態でのバックグラウンドスペクトルを示す。多重波高分析器8の測定データをもとに、測定対象の波高値すなわち波高弁別器5の弁別レベル以下の波高値ウィンドウの計数率をレートメータ9で演算して求め、初期値と比較し、計数率の増加が所定の範囲を超えた場合に警報を発信する。半導体センサ1が劣化すると半導体内部で発生するノイズパルスが増加する。また、半導体検出器用電源3が劣化するとリップルが大きくなり、前記ウィンドウで計数されるようになる。なお、上記実施の形態3では、レートメータ9で多重波高分析器8のスペクトルデータをもとに、ノイズレベルの波高値の計数率の増加をチェックするようにしたので、半導体センサ1または半導体検出器用電源3の劣化を監視することができる。
【0013】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4を図にもとづいて説明する。図6は、実施の形態4による放射線モニタの構成を示すブロック図である。この図において、図1と同一または相当部分にはそれぞれ同一符号を付して説明を省略する。図1と異なる点は、多重波高分析器8の入力側にレートメータ9の切換信号CS1によって切り換え操作される第1の切換回路14を設け、半導体検出器用電源3の出力側に接続され、電源出力の直流成分をカットして交流成分を出力するコンデンサ13の出力とパルス増幅器4の出力とを切り換えて入力し得るようにした点である。この第1の切換回路14をレートメータ9からの切換信号によって定期的に自動切換えを行なうことにより、多重波高分析器8は半導体検出器用電源3のリップルを測定し、その測定データをもとにレートメータ9が所定のウィンドウを設け、その計数率を求めて初期値と比較し、計数率の増加が所定の範囲を超えたら警報を発信する。この結果、半導体センサ1および半導体検出器用電源3の劣化の進行を別々に監視することができる。
【0014】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5を図にもとづいて説明する。図7は、実施の形態5による放射線モニタの構成を示すブロック図である。この図において、図1と同一または相当部分にはそれぞれ同一符号を付して説明を省略する。図1と異なる点は、パルス増幅器4の入力側にレートメータ9の切換信号CS2によって切り換え操作される第2の切換回路15を設け、プリアンプ2の出力と、レートメータ9から出力されるテストパルスとを切り換えて入力し得るようにした点である。前記テストパルスはLEDドライバー11の入力を分岐したものである。放射線モニタの指示が変動して光パルスによる自己診断に異常がない場合は、レートメータ9は多重波高分析器8の測定データをもとに測定対象の波高値ウィンドウに対する計数率を求めて論理回路7のパルスをもとに計数した計数率と比較チェックを行い、それに変動が認められ、かつ、変動方向が同じであれば放射線による変動とみなす。これらの自己診断は自動で行われるが、念のため測定系のチェックを行う場合には、マニュアルで第2の切換回路15の切換を行えば検出系と測定系を別々に診断することができる。なお、テストパルスは通常は固定周波数で十分であるが、周波数を可変にすれば定期検査等で測定系のループチェック(入出力の周波数応答)を自動で行うことができる。
【0015】
実施の形態6.
次に、この発明の実施の形態6を図にもとづいて説明する。図8は、実施の形態5による放射線モニタの構成を示すブロック図である。この図において、16はレートメータ9に接続された第1の通信インターフェース(I/F)、17は光ケーブル、18は第2の通信インターフェース(I/F)、19は監視・操作装置である。このような構成とすることにより、レートメータ9の演算結果が、第1の通信I/F16で伝送信号に変換されて光ケーブル17を経由して伝送され、第2の通信I/F18で受信されて監視・操作装置19で表示され遠隔で監視できる。また、双方向通信により、送受信を逆にすれば監視・操作装置19から遠隔操作することができる。
【0016】
【発明の効果】
この発明に係る放射線モニタは、放射線の入射時に所定の幅のパルスを出力し、光パルスの入射時に所定の幅とは異なる幅のパルスを出力する半導体検出器と、前記半導体検出器の出力パルスの幅を弁別し、放射線によるパルスに対応した出力パルスを生ずるパルス幅弁別手段と、前記半導体検出器の出力パルスの波高値スペクトルを測定する波高値スペクトル測定手段と、前記パルス幅弁別手段の出力及び前記波高値スペクトル測定手段の出力にもとづいて放射線を測定する放射線測定手段と、前記半導体検出器に電圧を供給する電源の出力側に接続され、前記電源出力の直流成分をカットして交流成分を出力する直流カット手段と、前記直流カット手段の出力と前記半導体検出器の出力とを切り換えて前記波高値スペクトル測定手段に入力する切換手段とを備えたものであるため、光パルスを照射しても放射線モニタの指示が上昇せず、したがって放射線モニタを欠測させることなくオンラインで半導体検出器と半導体検出器用電源を診断することができるのに加えて半導体検出器及び半導体検出器用電源の劣化の進行を別々に監視することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による放射線モニタの構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1における光パルス照射状態でのパルス増幅器の出力パルスを示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態1における光パルス照射状態での多重波高分析器出力の波高値スペクトルを示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態2による放射線モニタの構成を示すブロック図である。
【図5】 この発明の実施の形態3を説明するための図で、半導体センサの劣化または半導体検出器用電源の劣化によるバックグラウンドスペクトルの変化を示す図である。
【図6】 この発明の実施の形態4による放射線モニタの構成を示すブロック図である。
【図7】 この発明の実施の形態5による放射線モニタの構成を示すブロック図である。
【図8】 この発明の実施の形態6による放射線モニタの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 半導体センサ、 2 プリアンプ、 3 半導体検出器用電源、
4 パルス増幅器、 5 波高弁別器、 6 パルス幅弁別器、
7 論理回路、 8 多重波高分析器、 9 レートメータ、
10 LED、 11 LEDドライバー、 12 A/D変換器、
13 コンデンサ、 14 切換回路、 15 第2の切換回路、
16 第1の通信I/F、 17 光ケーブル、
18 第2の通信I/F、 19 監視・操作装置。

Claims (4)

  1. 放射線の入射時に所定の幅のパルスを出力し、光パルスの入射時に所定の幅とは異なる幅のパルスを出力する半導体検出器と、前記半導体検出器の出力パルスの幅を弁別し、放射線によるパルスに対応した出力パルスを生ずるパルス幅弁別手段と、前記半導体検出器の出力パルスの波高値スペクトルを測定する波高値スペクトル測定手段と、前記パルス幅弁別手段の出力及び前記波高値スペクトル測定手段の出力にもとづいて放射線を測定する放射線測定手段と、前記半導体検出器に電圧を供給する電源の出力側に接続され、前記電源出力の直流成分をカットして交流成分を出力する直流カット手段と、前記直流カット手段の出力と前記半導体検出器の出力とを切り換えて前記波高値スペクトル測定手段に入力する切換手段とを備えたことを特徴とする放射線モニタ。
  2. 前記波高値スペクトル測定手段によって測定したスペクトルにもとづき、測定対象の波高値以下に波高値ウィンドウを設定すると共に、前記波高値ウィンドウの計数率を前記放射線測定手段によって演算し、初期値と比較することにより前記半導体検出器または半導体検出器用電源の劣化を監視することを特徴とする請求項1記載の放射線モニタ。
  3. 前記放射線測定手段からのテストパルスと、前記半導体検出器の出力とを切り換えて前記パルス幅弁別手段に入力する第2の切換手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の放射線モニタ。
  4. 前記放射線測定手段に通信手段を介して接続された監視操作手段を設け、前記放射線測定手段を遠隔監視あるいは遠隔操作し得るようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項記載の放射線モニタ。
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