JP3913494B2 - マーキングフィルム用基材 - Google Patents
マーキングフィルム用基材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3913494B2 JP3913494B2 JP2001141813A JP2001141813A JP3913494B2 JP 3913494 B2 JP3913494 B2 JP 3913494B2 JP 2001141813 A JP2001141813 A JP 2001141813A JP 2001141813 A JP2001141813 A JP 2001141813A JP 3913494 B2 JP3913494 B2 JP 3913494B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- acrylic resin
- film
- coating layer
- transparent coating
- resin film
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
- Paints Or Removers (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マーキングフィルム用基材に係り、詳しくは屋外で使用可能な耐候性を有し、かつ曲面への施工が可能な柔軟性を有するマーキングフィルム用基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マーキングフィルムは「貼る塗料」等とも呼ばれ、少ない工数で作業が可能なことや、貼り付け作業は溶剤を使わないため特別な作業場を必要としないこと、印刷技術、カッティング技術の進歩により複雑な形状・柄の作成が可能になったこと等によりその需要を伸ばしている。用途としては、自動車・鉄道車両その他輸送機器の外装、看板、標識その他屋外で用いられるものが多く、完成後の製品に貼り付けられることが多い。
【0003】
従来、マーキングフィルム用基材としては、着色された軟質塩化ビニル系樹脂(以下、軟質PVCと称す)の表面に文字や意匠性を有する模様等の印刷を施したもの、あるいは印刷を施さないものが用いられてきた。しかし、該用途にもちいられる厚みでは、軟質PVCの耐候性は必ずしも良好とは言えず、貼付け後、短期間で表面外観の悪化を招くものであった。そこで、軟質PVCの表面あるいは軟質PVC上に設けられた印刷層の表面に紫外線吸収剤を添加した透明なアクリル系樹脂等の塗膜層やフィルム層を設けることが考えられたが、透明フィルムの積層ではコストが上昇すること、厚みが増加することで貼付性が悪化すること、貼付部と非貼付部の段差が顕著になり、意匠性に問題が出ること等が問題となった。塗膜層の付与では塗膜厚みに限界があることから、紫外線吸収剤を添加しても軟質PVCの劣化を抑制する効果は乏しく、かと言って紫外線吸収剤の添加量を極端に増やすと塗膜層自体の物性低下、耐候性低下を来す。また、表面からの紫外線吸収剤の吹き出しによる表面外観の悪化も問題となる。
【0004】
さらに近年、環境問題の観点から、ある程度の耐用年数を有するとは言え、剥がして捨てることが前提の該用途に対して軟質PVCを用いることは好ましくないとの意見を多く聞くようになって来ている。
【0005】
そこで、軟質PVCを用いない構成として、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド体より成り、2層〜3層の構成を有し、外気側表面でPVdF系樹脂の比率が高く、粘着剤側でアクリル系樹脂の比率を高くしたものや、透明なフッ素系樹脂フィルムの粘着剤側に着色された溶剤可溶型フッ素系樹脂を設けたもの等が検討されている。
【0006】
これらにおいては、フッ素系樹脂フィルム自体は非常に耐候性に優れる材料であることから、検討の方向性はいかに接着性を確保するか、及び紫外線吸収剤等の添加剤との相溶性に劣るフッ素系樹脂にいかに下地の保護機能を持たせるかにあり、各種の工夫がなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前者においては、印刷層を設けない場合は、2層〜3層のフィルム層を共押し出しで積層一体化可能であり、製造コストはそれほど高くないと考えられる。しかし、印刷層を配設する必要がある場合は、全層を透明として粘着剤側に印刷層を付与したのでは、各層に紫外線吸収剤を添加したとしても、極微量の紫外線吸収剤により粘着剤が劣化を受けて剥離する危険が高い。これを解決するため、外気側最表面から数えて2層目及び3層目の少なくとも1層を着色層として、着色層より外気側に印刷層を付与することが考えられるが、その場合は、印刷層より外気側になる層と、内側になる層とを別々に製膜し、印刷を施した後に積層一体化する必要が生じ、製造コストの増大を招く。
【0008】
また、一般的にフッ素系樹脂は原料コスト自体が高く、5〜7年の使用が前提とされるマーキングフィルム用基材の主体を成す材料として用いるには割高感がある。
【0009】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は塩化ビニル系樹脂を使用せず、耐候性に優れ、曲面への貼付けが容易でコストも比較的安価なマーキングフィルム用基材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、架橋アクリルゴム弾性体成分を核にして、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をグラフト重合して得られるコア・シェル型の共重合体組成物からなる着色アクリル系樹脂フィルムの片面に、厚み3μm〜20μmの範囲の架橋性樹脂を主成分とする透明被覆層が設けられ、前記着色アクリル系樹脂フィルム(1)は、JIS K-7127に準拠して雰囲気温度23℃、引張り速度200mm/分で測定した引張り破断伸びが、フィルム製膜時の流れ方向(MD)及び、流れに直交する方向(TD)の両方向について90〜300%の範囲であり、前記透明被覆層(2)がシアネート架橋型のフッ素系樹脂を主成分として構成されたものである。
【0011】
この発明のマーキングフィルム用基材は、透明被覆層側が外気側となるようにして貼り付けて使用される。そして、マーキングフィルム用基材としての形態での曲面への良好な貼付性を確保できる。また、紫外線吸収剤を添加した場合も着色アクリル系樹脂フィルム中に添加された顔料の褪色を有効に抑制することができる。
【0012】
また、この発明では、耐傷入り性が向上する。
【0014】
また、この発明では、透明被覆層が耐候性に優れているため、耐候性がより向上する。
【0015】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記着色アクリル系樹脂フィルムと、透明被覆層との間に印刷層が設けられている。従って、この発明では印刷層の存在により意匠性が高くなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施の形態を説明する。
図1(a)は本発明のマーキングフィルム用基材Mの基本構成を示す模式断面図である。マーキングフィルム用基材Mは、着色アクリル系樹脂フィルム1の片面に透明被覆層2が積層された構成となっている。図1(b)に示すマーキングフィルム用基材Mでは、着色アクリル系樹脂フィルム1と透明被覆層2との間に印刷層3が設けられている。
【0017】
マーキングフィルム用基材Mは、図2(a)に示すように、着色アクリル系樹脂フィルム1側に粘着剤層4を付与するとともに、剥離性の台紙5が施された構成でも実施される。この構成では、台紙5を剥がして所定の場所に貼り付ける。また、マーキングフィルム用基材Mとして、図2(b)に示すように、マーキングフィルム用基材Mを切り文字等の形状で貼り付けるに際し、台紙5と反対側にアプリケーションフィルム6を施したものもある。
【0018】
(着色アクリル系樹脂フィルム1)
本発明の着色アクリル系樹脂フィルム1に用いられるアクリル系樹脂は、一般に柔軟性アクリル、フィルムグレードアクリルあるいはソフトアクリル等と呼ばれるアクリル系樹脂の範疇に含まれるもので、架橋アクリルゴム弾性体成分を核にして、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をグラフト重合して得られる所謂コア・シェル型の共重合体組成物を基本としている。架橋弾性体成分はブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート等のガラス転移温度が0℃よりも低いアクリル酸エステル系の樹脂を主体とし、エチレングリコール・ジメタクリレート等を共重合することにより架橋構造を持たせたものである。
【0019】
この架橋弾性体にグラフト重合され、アクリル系樹脂のシェル相(マトリクス相)を形成する材料としては、メチルメタクリレートを主体としブチルアクリレート等その他の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をランダム共重合した組成より成るものが使用される。
【0020】
これら柔軟性アクリルの中でも、塩化ビニル系樹脂被覆金属板に被覆する(オーバーレイ)用途等においては、先ずフィルム自体の耐候性を得る目的から、シェル相の組成をメチルメタクリレートリッチとし、折り曲げ時の白化防止の目的から、あるいは透明性を確保するための屈折率調整等の目的から架橋弾性体成分とシェル相との間に、多段共重合により両者の中間的組成より成る層を複数層設けて傾斜的に組成を変化させる等の複雑な構成を採っているものが多く見受けられる。
【0021】
本発明においては着色アクリル系樹脂フィルム1は、顔料の添加により着色されて使用され、また、表面に架橋樹脂を主成分とする透明被覆層2が配設されていることから特別に耐紫外線性(耐光性)に優れる必要はない。また、曲面への施工性確保の観点から柔軟性が必要であるが、特別に耐折り曲げ白化性に優れる必要もない。
【0022】
従って、前記のオーバーレイ用途に供されるアクリル系樹脂フィルムのような複雑な構成は必ずしも必要としない。また、樹脂自体の光線透過率やヘイズ値も特に重要ではなく、その点において、架橋アクリルゴムの粒径や、樹脂全体に占める架橋アクリルゴムの成分の比率等も加熱成形が困難にならない範囲で任意である。
【0023】
また、柔軟性を付与する成分として、架橋アクリルゴム以外のゴム成分や樹脂成分を含むことは、オーバーレイ用途においては好ましいことではないが、本発明においてはその耐候性を著しく低下させない範囲で、これらを含んでいてもよい。
【0024】
アクリル系樹脂フィルムにおいて重要なのは、マーキングフィルム用基材としての形態での曲面への貼付性を確保するために、特定の範囲の柔軟性を有することである。本発明においては、着色アクリル系樹脂フィルム1の柔軟性を引張り破断伸びで規定し、JIS K-7127に準拠して雰囲気温度23℃、引張り速度200mm/分で測定した引張り破断伸びが、フィルムの製膜時の流れ方向(MD)及び、流れに直交する方向(TD)の両方向について90〜500%の範囲にあることである。前記引張り破断伸びは前記両方向について90〜300%の範囲にあることが好ましい。
【0025】
引張り破断伸びの値が90%より小さいと、柔軟性が不足することにより曲面への貼付性が悪くなり好ましくない。また、引張り破断伸びの値が500%より大きいと常温での柔軟性が過多となり、取り扱い性の悪化をもたらす。また、透明被覆層2を設けた場合においても、表面硬度が低過ぎ、耐傷入り性が悪くならないためには、引張り破断伸びの値が300%以下が好ましい。着色アクリル系樹脂フィルム1の破断伸びを上記範囲に規定することで、マーキングフィルム用基材としての曲面への貼付性を満たす柔軟性が得られる。
【0026】
着色アクリル系樹脂フィルム1の厚みは25〜250μmの範囲が好ましく、40〜150μmの範囲が更に好ましい。これより薄いとフィルムとしての生産性の低下、取り扱い性の低下等の問題を生じるため好ましくない。逆にこれ以上の厚みでは、貼付部と非貼付部の段差が顕著となり好ましくなく、また、コストの面からも現実的でない。
【0027】
着色アクリル系樹脂フィルム1に顔料を添加する目的には、着色による意匠性の付与、印刷層の発色を良くすること等の意匠上の効果の他、紫外線の遮蔽効果がある。アクリル系樹脂自体は耐候劣化を受けても変色を示す材料ではないが、透明被覆層2及び着色アクリル系樹脂フィルム1を透過した紫外線がこれらの貼付けに用いられている粘着剤や接着剤を劣化させて剥離に至るのを防止する目的である。該目的においては、顔料酸化チタンの場合で、[厚み(μm)×顔料添加量(樹脂分を100とした重量部)≧1200]となるようにすることが好ましい。他の顔料を用いる場合も、これと同等の紫外線遮蔽性を得られるように添加することが好ましいが、その場合、添加量が多量となることが多く、着色顔料と酸化チタン顔料の併用、着色顔料とカーボンブラックとの併用でなるべく少ない顔料添加で上記と同等の紫外線遮蔽性を得ることが好ましい。着色アクリル系樹脂フィルム1の厚みが比較的薄く、かつ白味や黒味が少ない中間色が必要な場合等は、上記の好ましい紫外線遮蔽性を確保できる量の酸化チタン顔料やカーボンブラックの添加が困難な場合があるが、この場合は可視域の吸収が少ない微粒子酸化チタンを着色顔料と併用することで上記の紫外線遮蔽性を確保する手法を用いることができる。
【0028】
着色アクリル系樹脂フィルム1には、前記の顔料成分以外に、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、プロセス安定剤、金属不活性化剤等、一般的に樹脂の耐熱性、耐候性を向上させる目的で添加されるものや、加工助剤、滑剤その他の、これも一般的に樹脂の加工性向上の目的で添加されるもの等各種添加剤を添加してもよい。
【0029】
着色アクリル系樹脂フィルム1の製膜方法に関しても、特に制限を設けるものではなく、Tダイ押出し法、インフレーション法、あるいはカレンダー法等、塩化ビニル系樹脂シートの製膜に用いられてきた一般的な方法によることができ、塩化ビニル系樹脂シートの製膜に用いてきた設備をそのまま用いることができる。
【0030】
(透明被覆層2)
透明被覆層2は架橋性樹脂を主成分として成り、該層を付与する目的は、マーキングフィルム用基材の一層の耐久性の向上、耐汚染性の向上、耐傷入り性の向上、深みの有る意匠の付与、紫外線吸収剤を添加することによる着色アクリル系樹脂フィルム1及び印刷層3の紫外線劣化からの保護等である。
【0031】
架橋性樹脂とは、シアネート硬化型、エポキシ硬化型等の熱硬化型樹脂、シアノアクリレート系樹脂、シラノール縮合型樹脂等の湿気硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等をその範疇に含む、架橋反応により3次元的な分子構造を形成するものである。イオン架橋により3次元構造を形成するアイオノマー樹脂等は含まれない。透明被覆層2の主成分を架橋性樹脂とすることにより、マーキングフィルム表面の耐候性を向上させることができ、また、着色アクリル系樹脂フィルム1を単層で用いた場合より耐傷入り性も向上させることができる。
【0032】
これら架橋性樹脂の中でも、着色アクリル系樹脂フィルム1上への塗布・硬化処理の容易なシアネート硬化型、エポキシ硬化型等の熱硬化型樹脂を好ましく用いることができる。着色アクリル系樹脂フィルム1との密着性や耐候性の観点からはシアネート架橋型のアクリル系樹脂やシアネート架橋型のフロロオレフィンビニルエーテル共重合体樹脂が特に好ましい。
【0033】
更に、シアネート架橋型のアクリル系樹脂においては、その硬化塗膜のガラス転移温度(Tg)が20〜55℃の範囲にあることが好ましい。これよりガラス転移温度が高いと、曲面への貼付け性の点から、着色アクリル系樹脂フィルム1の柔軟性を特定の範囲に規定したにも拘わらず、全体構成としては充分な柔軟性を得ることができず、結果として曲面への貼付け性の悪化、透明被覆層2へのクラックの発等を生じ好ましくない。逆に、これよりガラス転移温度が低いと、硬化後の塗膜においてもべたつき感が現出し、また、着色アクリル系樹脂フィルム1を単独で用いた場合に比べて、表面の耐傷入り性が向上しないため好ましくない。
【0034】
また、シアネート型アクリル系樹脂は、ベンゾトリアゾール型やベンゾフェノン型等の紫外線吸収性基を有する反応性モノマーや、ヒンダードアミン型の光安定機構を有する反応性モノマーを共重合したものであってもよい。あるいはシアネート架橋型のアクリル系樹脂を主成分としながら、ベンゾトリアゾール型やベンゾフェノン型等の紫外線吸収性基を有する反応性モノマーや、ヒンダードアミン型の光安定機構を有する反応性モノマーを共重合したシアネート架橋を有さないアクリル系樹脂をブレンドしたものであってもよい。
【0035】
透明被覆層2中には、上記以外の一般的な紫外線吸収剤や光安定剤(HALS)、酸化防止剤、艶消し剤、染料、硬化促進剤等、一般的に熱架橋型樹脂に用いられる添加剤を添加することができる。なお、HALSは、Hinderd Amine Light Stabirizerの略称で、ヒンダードピペリジン型光安定剤等とも呼ばれるもので、一般的に150℃以下の温度環境でのラジカル補足能に優れるため、耐候安定剤として用いられるものであり、ポリオレフィン系樹脂等の光酸化劣化防止に用いられて効果が確認されているものである。
【0036】
また、透明被覆層2の「透明」に関しては、特に規定を設けなかったが、透明被覆層2を通して下地である着色アクリル系樹脂フィルム1あるいは印刷層3を視認することが可能であれば、「透明」と呼んで支障ないものであり、通常用いられる「透明」の定義とは必ずしも一致するものではない。例えば、透明被覆層2として、一般的に「半透明」と認識されるものを用いてもよい。
【0037】
透明被覆層2の厚みは3μm〜20μmの範囲とすることが好ましく、5μm〜10μmの範囲が更に好ましい。厚みがこれより薄いと耐傷入り性の向上効果が殆ど得られなくなり、また、紫外線吸収剤を添加した場合も着色アクリル系樹脂フィルム1中に添加された顔料や、印刷層3中に添加された顔料の褪色を有効に抑制することができず、好ましくない。厚みがこれより厚いと曲面への貼付け性が低下して好ましくなく、また、塗布工程での溶剤や分散媒を揮発させるための加熱乾燥にも高温あるいは長時間を要することになる点からも厚みは20μm以下に抑えることが好ましい。
【0038】
透明被覆層2を着色アクリル系樹脂フィルム1上に付与する方法に関しては、これも特に制限は無く、一般的な塗布・硬化方法によることができる。塗布液の粘度を下げるために各種溶剤を用いてもよく、溶液型あるいはディスパージョン型やエマルジョン型として塗布することができる。
【0039】
(実施例)
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明する。
実施例及び比較例に使用した各々の試料は、次の手順で作成した。
【0040】
<着色アクリル系樹脂フィルム1>
表1に示す市販の柔軟性アクリル原料又はこれらのブレンド物を使用し、表2に示す組成の着色アクリル系樹脂フィルム1を作成し、各実施例及び比較例に使用した。フィルム化の方法は、柔軟性アクリル原料のペレット又はパウダーと所定の添加剤成分を室温でブレンドし、8インチの2本ロールで混練後、厚みが約100μmとなるように手で引き剥がすものである。
【0041】
添加成分は、樹脂成分の合計量を100重量部として、酸化チタン顔料15重量部、光安定剤(HALS):944LD(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)0.2重量部、酸化防止剤:イルガノックスHP−2921(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)0.3重量部で、比較例3を除いて同一である。
【0042】
比較例3においては、着色軟質PVC系樹脂フィルムを用いたものであり、配合内容を表3に示す。フィルム化の方法は着色アクリル系樹脂フィルムの場合と同様、8インチテストロールにより、厚みも約100μmである。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
<透明被覆層2>
各実施例及び比較例において、表4に示す組成の透明被覆層を設けた。被覆層の付与方法は、バーコーターによる塗布後、加熱乾燥・硬化を行うものである。
【0046】
【表4】
<着色アクリル系樹脂フィルム1と透明被覆層2の組合せ>
各実施例及び比較例の着色アクリル系樹脂フィルム1と透明被覆層2との組合せ、透明被覆層2の塗布厚み、印刷層の有無に関しては表5に示した。
【0047】
<印刷層3>
実施例9、実施例10及び比較例6においては、透明被覆層2の付与前に、着色アクリル系樹脂フィルム1上に印刷層3を形成した。アクリル系のバインダを用いた耐候性印刷インク赤色をバーコーターで塗布し、乾燥厚み2μmの全面赤色着色の印刷層3とした。
【0048】
【表5】
[マーキングフィルム用基材の評価内容及び方法]
<着色アクリル系樹脂フィルム1の引張り破断伸び測定>
前記の各種着色アクリル系樹脂フィルム1に関して、JIS K-7127に準拠した方法で引張り破断伸びを測定した。測定はフィルム成形時のMD方向(流れ方向)及びTD方向(流れに直交する方向)の各方向について、実際に使用する厚みで行い、雰囲気温度(測定温度)は23℃とした。測定結果は表2に記載した。
【0049】
<マーキングフィルムの曲面貼付け性>
直接的に評価する良い方法がないため、マーキングフィルム用基材に粘着剤層を付与し、金属板に貼り付けた状態で、金属板に曲げ加工を施すことでマーキングフィルム用基材の柔軟性を評価した。粘着剤層はアクリル系樹脂で、乾燥厚みは40μmとした。また、金属板は厚み0.40mmの熔融亜鉛メッキ鋼鈑とした。
【0050】
曲げ加工はJIS Z-2248「金属材料曲げ試験方法」に規定されるV曲げ法により、雰囲気温度23℃及び0℃で行った。
試験終了後に折り曲げ部分のマーキングフィルム用基材を目視観察し、割れ、クラック及び剥離が認められないものを「○」、折り曲げ部分の幅の20%以下の割れ、クラックが認められるものを「△」、それより悪いものを「×」と評価した。そして、「○」を2点、「△」を1点、「×」を0点として数え、各サンプルの加工性評価点をまとめた。結果を表6及び表7に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
<マーキングフィルムの耐傷入り性>
曲面貼付け性の評価と同様に粘着剤層を付与し、熔融亜鉛メッキ鋼鈑に貼り付けた状態で、JIS K-5401による鉛筆硬度試験を行った。評価結果を表6及び表7に示した。
【0053】
<マーキングフィルムの耐候性促進試験評価>
曲面貼付け性の評価と同様に粘着剤層を付与し、熔融亜鉛メッキ鋼鈑に貼り付けたマーキングフィルムに対して耐候性促進試験を行った。フィルムを貼り付けた後に、金属板を60mm×50mmのサイズに切断し、試験用サンプルとした。切断部端面の封止等の処理は特に行わなかった。これらのサンプルをサンシャイン・ウェザーメーター促進試験機((株)スガ試験機製)に投入し、ブラックパネル温度63℃での曝露試験を行った。曝露3000時間及び6000時間後のサンプルの色差変化を色差計で測定し、また、60°鏡面反射による光沢度を測定した。色差は絶対値で示し、光沢度は初期値を100とした残存率(%)で示した。評価結果を表8及び表9に示す。
【0054】
【表8】
【0055】
【表9】
<マーキングフィルムの総合評価>
前記の各種評価の結果をまとめて表10として示した。加工性の欄は、評価点が24点未満のもの(V曲げで多少でもクラック、割れが発生したもの)を×とし、鉛筆硬度は現行のマーキングフィルムの測定値である2B〜3Bより軟らかいものを「×」とした。
【0056】
耐候性促進試験は、曝露6000時間経過後の色差変化(ΔE値)が印刷層無しのもので3.0以下、印刷層有りのもので5.0以下であり、かつ光沢残存率が70%以上のものを「○」、それ以外のものを「×」とした。
【0057】
【表10】
各実施例の結果から、着色アクリル系樹脂フィルム1の片面に設けられた架橋性樹脂を主成分とする透明被覆層2の厚みが3μm〜20μmの範囲で、着色アクリル系樹脂フィルム1のJIS K-7127に準拠して雰囲気温度23℃、引張り速度200mm/分で測定した引張り破断伸びが、フィルム製膜時の流れ方向(MD)及び、流れに直交する方向(TD)の両方向について90〜300%の範囲である場合、マーキングフィルム用基材Mは加工性、表面硬さ及び耐候性が共に良好なことが確認される。また、参考例11,12の結果から、前記引張り破断伸びが、両方向について300%を超えても500%以下であれば、マーキングフィルム用基材Mは加工性及び耐候性が共に良好なことが確認される。
【0058】
比較例1及び比較例2から、着色アクリル系樹脂フィルム1の前記引張り破断伸びが、両方向について90%以上ないと、加工性が悪くなって曲面に対する貼付性が悪くなることを確認できる。
【0059】
比較例3から着色アクリル系樹脂フィルム1に代えて塩化ビニル樹脂を使用した場合、耐候性が悪くなることを確認できる。
比較例4(透明被覆層2の樹脂成分のTgが65℃)から、透明被覆層2の硬化塗膜のガラス転移温度(Tg)が50℃より大きいとき、加工性及び耐候性が悪くなり、比較例5(透明被覆層2の樹脂成分のTgが10℃)から、透明被覆層2の硬化塗膜のガラス転移温度(Tg)が20℃より小さいとき、表面硬さ及び耐候性が悪くなることを確認できる。
【0060】
比較例6から透明被覆層2の厚さが3μmより小さいと耐候性が悪くなり、比較例7から透明被覆層2の厚さが20μmより大きいと加工性が悪くなるとともに、耐候性も悪くなることを確認できる。
【0061】
比較例8から透明被覆層2がない場合、表面硬さ及び耐候性が悪くなることを確認できる。
この実施の形態では以下の効果を有する。
【0062】
(1) マーキングフィルム用基材Mが着色アクリル系樹脂フィルム1の片面に、厚み3μm〜20μmの範囲の架橋性樹脂を主成分とする透明被覆層2が設けられ、着色アクリル系樹脂フィルム1は、JIS K-7127に準拠して雰囲気温度23℃、引張り速度200mm/分で測定した引張り破断伸びが、フィルム製膜時の流れ方向(MD)及び、流れに直交する方向(TD)の両方向について90〜500%の範囲とした。その結果、マーキングフィルム用基材Mとしての形態での曲面への良好な貼付性を確保でき、PVC系基材に比較して耐候性を向上できる。
【0063】
(2) 着色アクリル系樹脂フィルム1の前記引張り破断伸びを前記両方向について90〜300%の範囲とした場合は、表面硬さが確保されて耐傷入り性も良好となる。
【0064】
(3) 透明被覆層2が硬化塗膜のガラス転移温度(Tg)が20〜55℃のシアネート架橋型アクリル系樹脂を主成分として構成されたものでは、マーキングフィルム用基材Mの曲面への貼付性がより向上するとともに、表面の耐傷入り性がより向上する。
【0065】
(4) 透明被覆層2がシアネート架橋型のフッ素系樹脂を主成分として構成されたものでは、透明被覆層2が耐候性に優れているため、耐候性がより向上する。
【0066】
(5) 着色アクリル系樹脂フィルム1と、透明被覆層2との間に印刷層3が設けられている場合は、印刷層3の存在により意匠性が高くなる。
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0067】
○ 図3に示すように、着色アクリル系樹脂フィルム1と印刷層3との間に接着層7を設けてもよい。この場合、印刷層3として着色アクリル系樹脂フィルム1との接着性を考慮せずに透明被覆層2との接着性を考慮して印刷層3の材質を選定でき、印刷層3の材質の選定の自由度が高くなる。
【0068】
○ 透明被覆層2と印刷層3との間に接着層7を設けてもよい。この場合、印刷層3として透明被覆層2との接着性を考慮せずに着色アクリル系樹脂フィルム1との接着性を考慮して印刷層3の材質を選定でき、印刷層3の材質の選定の自由度が高くなる。
【0069】
○ 着色アクリル系樹脂フィルム1を着色する顔料として無機顔料に代えて有機顔料を使用してもよい。しかし、一般に有機顔料は無機顔料に比較して耐候性に劣るため、無機顔料の方が好ましい。
【0070】
前記実施の形態から把握できる技術的思想(発明)について以下に記載する。
(1) 請求項のいずれかに記載の発明において、前記着色アクリル系樹脂フィルムは厚みが25〜250μmの範囲に形成されている。
【0071】
(2) 請求項に記載の発明において、前記着色アクリル系樹脂フィルムは顔料に酸化チタン顔料が使用されている。
【0072】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明は、塩化ビニル系樹脂を使用せず、耐候性に優れ、曲面への貼付けが容易となるとともに、製造コストも比較的安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a),(b)は本発明を具体化したマーキングフィルム用基材の構成を示す模式断面図。
【図2】 (a),(b)は本発明を具体化したマーキングフィルム用基材の構成を示す模式断面図。
【図3】 別の実施の形態のマーキングフィルム用基材の模式断面図。
【符号の説明】
1…着色アクリル系樹脂フィルム、2…透明被覆層、3…印刷層、M…マーキングフィルム用基材。
Claims (2)
- 架橋アクリルゴム弾性体成分を核にして、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をグラフト重合して得られるコア・シェル型の共重合体組成物からなる着色アクリル系樹脂フィルム(1)の片面に、厚み3μm〜20μmの範囲の架橋性樹脂を主成分とする透明被覆層(2)が設けられ、前記着色アクリル系樹脂フィルム(1)は、JIS K-7127に準拠して雰囲気温度23℃、引張り速度200mm/分で測定した引張り破断伸びが、フィルム製膜時の流れ方向(MD)及び、流れに直交する方向(TD)の両方向について90〜300%の範囲であり、前記透明被覆層(2)がシアネート架橋型のフッ素系樹脂を主成分として構成されたものであることを特徴とするマーキングフィルム用基材。
- 前記着色アクリル系樹脂フィルム(1)と、前記透明被覆層(2)との間に印刷層(3)が設けられている請求項1に記載のマーキングフィルム用基材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001141813A JP3913494B2 (ja) | 2001-05-11 | 2001-05-11 | マーキングフィルム用基材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001141813A JP3913494B2 (ja) | 2001-05-11 | 2001-05-11 | マーキングフィルム用基材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002331619A JP2002331619A (ja) | 2002-11-19 |
JP3913494B2 true JP3913494B2 (ja) | 2007-05-09 |
Family
ID=18988207
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001141813A Expired - Fee Related JP3913494B2 (ja) | 2001-05-11 | 2001-05-11 | マーキングフィルム用基材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3913494B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4516334B2 (ja) * | 2004-03-16 | 2010-08-04 | 三菱樹脂株式会社 | 積層シートおよび積層シート被覆金属板 |
JP2005343003A (ja) * | 2004-06-02 | 2005-12-15 | Bando Chem Ind Ltd | 装飾用シート及びその製造方法 |
CN101932436A (zh) * | 2008-01-31 | 2010-12-29 | 三菱树脂株式会社 | 耐候性优异的阻气性膜 |
JP5381090B2 (ja) * | 2008-12-26 | 2014-01-08 | Dic株式会社 | 熱成形用積層シート及び加飾成形体 |
EP2210912B1 (en) * | 2009-01-09 | 2015-08-05 | Rohm and Haas Company | Acrylic film and acrylic backsheet prepared therefrom |
JPWO2018055839A1 (ja) * | 2016-09-20 | 2018-09-20 | 三菱ケミカル株式会社 | アクリル樹脂フィルム |
-
2001
- 2001-05-11 JP JP2001141813A patent/JP3913494B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002331619A (ja) | 2002-11-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US11872829B2 (en) | Polyurethane protective film | |
JP5967097B2 (ja) | 化粧シート及びこれを用いた化粧金属板 | |
EP2542409B1 (en) | Non-pvc film and non-pvc film laminate | |
JP2009248416A (ja) | 耐擦傷性樹脂板及びその用途 | |
JP2013203060A (ja) | 化粧シート及びこれを用いた化粧金属板 | |
JP2005047179A (ja) | 熱線遮蔽樹脂シート | |
JP4996831B2 (ja) | 金属板被覆用積層シートおよび積層シート被覆金属板 | |
JP3913494B2 (ja) | マーキングフィルム用基材 | |
JP3802041B1 (ja) | 反射光線のゆらぎを防止可能な銘板作製用積層体 | |
KR101993703B1 (ko) | 복합시트 | |
JP2015066796A (ja) | 成型用ハードコートフィルム及びその製造方法 | |
JP4014314B2 (ja) | 耐候性樹脂被覆金属板 | |
JP2013022836A (ja) | 化粧シート | |
JP4892194B2 (ja) | 視野選択シート用のベースシート | |
JP2001315258A (ja) | 耐候性樹脂被覆金属板 | |
JP2005231257A (ja) | 積層シートおよび積層シート被覆金属板 | |
JP5106565B2 (ja) | 積層シートおよび積層シート被覆金属板 | |
JP4885484B2 (ja) | 意匠性被覆用積層シート及び積層シート被覆金属板 | |
JP4516334B2 (ja) | 積層シートおよび積層シート被覆金属板 | |
JP4068701B2 (ja) | 外装化粧シート | |
JP2000136360A (ja) | 粘着シ―ト | |
JPH11140400A (ja) | 粘着シート | |
JP2019056054A (ja) | 化粧シート及びこれを用いた化粧部材 | |
JP5082434B2 (ja) | 耐候性フィルム | |
JP2008230172A (ja) | 耐候性フィルム |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041112 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20060726 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060801 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20060929 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20061024 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061225 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070123 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070131 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |