JP3913383B2 - 重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟性、耐薬品性、接着性、高摩擦特性等に優れるとともに、異型押出性が優れ、かつ表面のべたつき傾向が低減された自動車用ウィンドシールドモールまたはサイドプロテクタ用材料として好適な重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用ウィンドシールドモール材料として、ポリ塩化ビニルが多用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニルは、比重が大きく、また低温において柔軟性に欠けるなどの欠点があるほか、近年は廃棄処理時における環境への悪影響への懸念から、他材料への転換が求められている。このような要請に応える材料として、本発明者らは、特開平5−1186号公報において、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体を不飽和カルボン酸無水物でグラフト変性したものとオレフィン系熱可塑性エラストマーとからなる重合体組成物に関する提案を行った。この提案によれば、光沢、耐傷性、耐薬品性、接着性、高摩擦特性等に優れた重合体組成物が提供でき、自動車用外装部品材料として好適なものであった。
【0003】
しかしながら使用する重合体の種類によっては、成形品表面にべたつきが生じることがあり、ほこりが付きやすいという問題点が生じることがあった。また異型押出によってウィンドシールドモールなどを成形する場合、ダイから出た直後の溶融状態の成形品の表面がべたついたり、成形品そのものが垂れ下がったりするという問題点があり、それに起因して所望形状の成形品を得ることが難しい場合があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、前記重合体組成物が有する優れた諸特性を損なうことなく上記欠点乃至難点を改善する処方につき検討を行った。その結果、少量の有機カルボン酸金属塩の添加が非常に有効であることを見いだすに至り、本発明に到達した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、エチレン・不飽和エステル共重合体を不飽和カルボン酸無水物でグラフト変性したグラフト変性物(A)20〜80重量部と炭化水素系熱可塑性エラストマー(B)80〜20重量部とからなる重合体成分100重量部に対し、炭素数 10 〜 26 の脂肪酸の金属塩(C)0.1〜5重量部を配合してなり、190℃、10kg荷重におけるメルトフローレートが、2〜20g/10分である、自動車用ウィンドシールドモールまたはサイドプロテクター用重合体組成物に関するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するグラフト変性物(A)のベースポリマーとなるエチレン・不飽和エステル共重合体は、エチレンと不飽和エステルのランダム共重合体であり、不飽和エステル含量が、通常15〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、一層好ましくは25〜40重量%のものである。
【0007】
ここに不飽和エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステルを例示することができる。
【0008】
上記エチレン・不飽和エステル共重合体としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜30g/10分、とくに1〜20g/10分のものを使用するのが好ましい。このような共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0009】
グラフト変性に用いられる不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物などを例示することができるが、とくに無水マレイン酸の使用が好ましい。グラフト共重合は、すでに周知のように、過酸化物のようなラジカル開始剤の存在下、エチレン・不飽和エステル共重合体の溶融条件下、あるいは適当な溶媒中、該共重合体を溶解あるいは分散する条件下で行うことができる。また不飽和カルボン酸無水物のグラフト量としては、0.1〜5重量%、とくに0.5〜3重量%程度が望ましい。
【0010】
グラフト変性物(A)としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜20g/10分、とくに0.2〜10g/10分程度のものを使用するのが望ましい。すなわちメルトフローレートがあまり大きいものを使用すると、異型押出成形性に優れた重合体組成物を得にくくなる。一方、メルトフローレートがあまりに小さいものを使用すると、炭化水素系熱可塑性エラストマー(B)と均一に混合させることが困難となり、均質な組成物が得にくくなる。
【0011】
本発明の他方の重合体成分として使用される炭化水素系熱可塑性エラストマー(B)としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマーなどを例示することができる。
【0012】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、パーオキサイド架橋型オレフィン共重合体ゴム成分とオレフィン系プラスチック成分とからなり、少なくともオレフィン共重合体ゴムが部分的に又は高度に架橋されているものであって、エラストマー的性質を有するものである。
【0013】
上記パーオキサイド架橋型オレフィン共重合ゴムは、エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・ポリエン共重合ゴムのようなオレフィンを主成分とする非晶性重合体であって、パーオキサイドによって架橋できるものである。上記三元共重合ゴムにおけるポリエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエンなどを例示することができる。上記共重合ゴムにおけるエチレンとプロピレンの重合比率は、エチレン/プロピレンがモル比で50/50〜90/10、とくに55/45〜85/15のものが好ましい。またポリエンの含有量としては、共重合ゴムのヨウ素価が16以下となるような割合で存在していることが望ましい。共重合ゴムとしてはまた、ムーニー粘度ML1+4 (100℃)が10〜120、とくに40〜80程度のものが望ましい。
【0014】
オレフィン系熱可塑性エラストマーを構成するオレフィン系プラスチック成分としては、1種以上のオレフィンから種々の製法で製造される結晶性の重合体もしくは共重合体であって、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどの重合体もしくは共重合体を挙げることができる。これらの中では、パーオキサイド分解型オレフィン系プラスチック、例えばポリプロピレン(少量の他のオレフィンとの共重合体を含む)などとポリエチレンから選ぶのが好ましく、とくにポリプロピレンを必須成分とするものが好ましい。
【0015】
オレフィン系熱可塑性エラストマーには、任意にポリイソブチレンのような過酸化物分解型ゴムやオイルのようなものが含まれていてもよい。この熱可塑性エラストマーの典型的な製法は、上記各成分に過酸化物を加え、動的に架橋する方法であり、この様にして得られる部分架橋物をそのままあるいはさらに結晶性オレフィン系重合体をブレンドして用いることができる。
【0016】
オレフィン系熱可塑性エラストマーはまた、無水マレイン酸やグリシジル(メタ)アクリレートのようなもので変性されていてもよい。
【0017】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、230℃、10kg荷重におけるメルトフローレートが、1〜100g/10分、とくに5〜70g/10分程度のものを使用することが望ましい。またショアA硬度が、45〜90、とくに50〜85程度のものを使用するのが好ましい。
【0018】
このようなオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、ミラストマー、サーモラン、住友TPE、サントプレン、グドマーなどの商品名で市販されており、市場から容易に入手することができる。
【0019】
本発明において炭化水素系熱可塑性エラストマーとして使用できるスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンと共役ジエンのブロック共重合体あるいはその水素添加物などであり、例えばSBSとして知られているスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、そのブタジエン重合体単位が水素添加されたSEBSとして知られているブロック共重合体、SISとして知られているスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、そのイソプレン重合単位が水素添加されたSEPSとして知られているブロック共重合体などを代表例として挙げることができる。これらはさらに無水マレイン酸やグリシジル(メタ)アクリレートなどで変性されたものであってもよい。
【0020】
このようなスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ショアA硬度が、45〜90、とくに50〜85程度のものが好ましく、また230℃、10kg荷重におけるメルトフローレートが、1〜100g/10分、とくに5〜70g/10分程度のものが好ましい。このようなスチレン系熱可塑性エラストマーは、タフテック、エラストマーAR、セプトン、クレイトンG、住友TPE−SB、ラバロンなどの商品名で市販されており、市場から容易に入手することができる。
【0021】
グラフト変性物(A)と熱可塑性エラストマー(B)の配合比率は、(A)/(B)=20/80〜80/20、好ましくは30/70〜70/30、一層好ましくは40/60〜60/40の範囲である。グラフト変性物の使用比率が前記範囲より少ないと、光沢、耐傷性、耐薬品性、接着性等が充分でなく、また低温での摩擦係数が大きく成らないのでモールのリップ材のような用途においては、自動車の走行時に異音を発生しやすくなる。一方その使用比率が前記範囲より過多になると、耐熱性や機械的強度が不足気味となるので好ましくない。
【0022】
本発明においては、上記(A)、(B)からなる重合体成分100重量部に対し、0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜4重量部の炭素数 10 〜 26 、好ましくは炭素数14〜22程度の脂肪酸の金属塩を配合するものである。また金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属の塩、マグネシウム、カルシウム、バリウムのようなアルカリ土類金属の塩、亜鉛、アルミニウムなどの塩を例示することができるが、とくに多価金属の塩、とりわけ亜鉛の塩を使用することが好ましい。
【0023】
より具体的には、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩などを例示することができる。
【0024】
これら脂肪酸金属塩の使用量は、重合体成分の種類や性状によっても異なるが、その使用量が少なすぎると押出加工性やべたつきの改良効果が充分でなく、一方その使用量が多く成り過ぎると、溶融粘度が上がり過ぎて却って加工性を損なう場合があり、製品の肌荒れを起こしたり、光沢を損なうなどの悪影響が出てくる場合があるので、重合体成分の種類や性状により適当な範囲を選択すべきである。
【0025】
本発明の重合体組成物においてはまた、190℃、10kg荷重におけるメルトフローレートが2〜20g/10分、好ましくは5〜15g/10分となるように、各重合体成分の種類や配合割合を調整するのがよい。すなわちメルトフローレートが前記範囲より高いと、溶融状態における成形品の形状保持性が充分でないため、押出加工により所望形状の成形品を得ることが難しくなるためである。
【0026】
本発明の重合体組成物には、その目的を損なわない範囲において、他の重合体や添加剤を配合することができる。このような添加剤の例として、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック、顔料、染料、無機充填剤、難燃剤などを例示することができる。
【0027】
【実施例】
次に実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。
尚、実施例、比較例で用いた原料の各種重合体、及び得られた組成物の物性測定方法は下記の通りである。
【0028】
1.原料
下記の重合体及び添加物を用いた。
【表1】
【0029】
2.物性
(1)MFR(メルトフローレート):JIS K7210に準拠、試験温度190℃、荷重 10kg
【0030】
(2)硬度:JIS K7215に準拠、ショアーA
【0031】
(3)曲げ剛性率:JIS K7106に準拠
【0032】
(4)引張り特性:JIS K6301に準拠、3号試験片、引張り速度 500mm/min
硬度、曲げ剛性率、引張り特性とも、180℃にてプレス成形した試験片を使用。
【0033】
(5)摩擦係数:
JIS K7125に準拠、
試験温度 23℃及び−20℃
荷重 57.2kg
試験速度 150mm/min
相手材料 塗装鋼板
試験片
ブレンド物を150mm幅のフィッシュテールダイを取り付けた異型押出機(スクリュー径 40mm、L/D=26)に供給して、ダイス温度 190℃、スクリュー回転数 40min-1の条件で成形した0.5mm厚押出しシートを使用。
【0034】
(6)見かけ粘度:東洋精機株式会社製 キャピログラフ 1Bで測定。
【0035】
(7)押出しシート表面のべたつき:触診による。
【0036】
[実施例1]
不飽和カルボン酸変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA▲1▼)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO▲1▼)、カーボンマスターバッチ(CMB▲1▼)及びステアリン酸亜鉛を50:50:4.4:1.0の重量比で混合してスクリュー式単軸押出機(スクリュー径 40mm、ダルメージスクリュー、L/D=28)に供給し、バレル温度 200℃、スクリュー回転数 50min-1の条件下に溶融混練した。得られたブレンド物について上述の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
一方、上記異型押出機にスクリュー径 20mmの小型押出機と2色モール成形用ダイスを組み付けて、上記ブレンド物をリップ部、オレフィン系熱可塑性エラストマー(ミラストマー8030N、三井化学(株)製)を本体部とする2色モールをダイス温度 180℃にて試作したところ、リップ部の垂れ下がりのない良好な形状のモールが得られた。
【0038】
[比較例1]
実施例1において、ステアリン酸亜鉛を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、ブレンド物を調製し、成形して各種物性を測定した。結果を表2に示す。実施例1に比べてMFRが高く、見かけ粘度が低かった。
また、リップ部材にこのブレンド物を用いて、実施例1と同様な2色モールを試作したところ、リップ部の垂れ下がりにより所望の形状を得ることができなかった。
【0039】
[実施例2]
実施例1において、ステアリン酸亜鉛の添加量を0.6重量部とした以外は実施例1と同様にして、ブレンド物を調製し、MFR、硬度及び引張り特性を測定した。結果を表3に示す。
【0040】
[実施例3]
実施例1において、ステアリン酸亜鉛の添加量を3.0重量部とした以外は実施例1と同様にして、ブレンド物を調製し、MFR、硬度及び引張り特性を測定した。結果を表3に示す。
【0041】
[実施例4]
実施例1において、ステアリン酸亜鉛の代わりにステアリン酸カルシウムを1.0重量部添加した以外は実施例1と同様にして、ブレンド物を調製し、MFR、硬度及び引張り特性を測定した。結果を表3に示す。
【0042】
[実施例5]
実施例1において、EEA▲1▼の代わりに、不飽和カルボン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA▲1▼)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ブレンド物を調製し、MFR、硬度及び引張り特性を測定した。結果を表3に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、グラフト変性物(A)及び熱可塑性エラストマー(B)からなる重合体組成物に比較して、ウィンドシールドモール等の異型押出においてもダイから出た直後の垂れ下がりやべたつきが見られないこと等成形性がすぐれているので、所望の性状の成形品を容易に得ることができる。このような成形品はまたべたつき傾向が低減され、また耐傷性についても改善されている。また耐薬品性、耐熱性、機械的強度が優れ、また摩擦係数が大きい成形品を得ることができる。したがってウィンドシールドモール(モール本体やリップ)やサイドプロテクターなどに使用することができ、これらの自動車外装部品として使用したときには、ポリ塩化ビニルに比較して軽量であり、また廃棄物処理においても環境に悪影響を及ぼすことなく処理することが可能である。
Claims (2)
- エチレン・不飽和エステル共重合体を不飽和カルボン酸無水物でグラフト変性したグラフト変性物(A)20〜80重量部と炭化水素系熱可塑性エラストマー(B)80〜20重量部とからなる重合体成分100重量部に対し、炭素数 10 〜 26 の脂肪酸の金属塩(C)0.1〜5重量部を配合してなり、190℃、10kg荷重におけるメルトフローレートが、2〜20g/10分である、自動車用ウィンドシールドモールまたはサイドプロテクター用重合体組成物。
- 請求項1記載の重合体組成物からなる自動車用ウィンドシールドモールまたはサイドプロテクター。
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