JP3913157B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents
電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機電子写真感光体は、通常、有機光導電性物質を結着樹脂などに溶解や分散させ、それを支持体上に成膜させて感光層を形成することで作製される。
【0003】
その電子写真感光体は、電子写真プロセスにおいて、電気的、機械的、光学的など多くの特性が要求され、特に、繰り返し使用における安定した特性を発揮させることは重要な項目の1つである。
【0004】
そのため、感光層の機械的特性(耐摩耗性)の向上のみならず、電気的、光学的など多くの特性を同時に満足させることが望まれている。
【0005】
有機電子写真感光体の耐摩耗性を向上させる手段としては、表面層に用いる結着樹脂として機械的強度に優れる種類の樹脂を選択する方法や、その結着樹脂を高分子量化する方法を始めとして、結着樹脂中にフィラーを添加する方法、あるいは結着樹脂構造中にシロキサン構造やフッ素含有置換基などの潤滑性を付与するための構造を導入したり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような固体潤滑剤を添加したりすることで、クリーニングブレードなど電子写真感光体に接触する部材との摩擦係数を低減させる方法などが知られている。
【0006】
上市されている電子写真感光体の多くは、低分子量の電荷輸送物質を使用しており、また、電荷輸送物質単独では感光層としての成膜性が劣ることから、結着樹脂との混合により成膜して、表面層としての膜強度を出して用いられている。
【0007】
また、その膜強度は結着樹脂の特性によるところが大きいが、結着樹脂そのものの機械的強度が優れていても、低分子量の電荷輸送物質を混合するため、必ずしも結着樹脂が持つ本来の強度などを出せるわけではない。
【0008】
また、その混合比は結着樹脂と電荷輸送物質との相溶性などから上限があり、感度などの電気特性から下限もある。
【0009】
そのため、得られた電子写真感光体は耐摩耗性、耐傷性において、必ずしも十分な耐久性を得るには至っていない。
【0010】
結着樹脂本来の膜強度を活かすためには、添加する電荷輸送物質の添加量を減らせばよいが、その場合には、電荷輸送能が低下し、電子写真特性、感度の低下や残留電位の上昇、画像の不良などを招いてしまうという問題が生じ、膜強度と電子写真特性を両立するには至っていない。
【0011】
このように、結着樹脂に低分子の電荷輸送物質を混合させる系では、強度などの低下があり、一方で、電荷輸送物質の混合量にも上限があることから電気特性などにも限界が生じてしまう。そのため、電荷輸送物質を高分子化して成膜性を持たせることや、結着樹脂に電荷輸送性の構造を導入して電荷輸送機能を持たせることにより、強度と電気特性の向上を目指した感光層を得る技術が、特開昭64−9964号公報、特開平2−282263号公報、特開平3−221522号公報、特開平8−101517号公報、特開平8−208820号公報などに開示されている。
【0012】
しかし、これらの多くは必ずしも十分な耐摩耗性を有しているわけではなく、また、強度と感度などの特性を1つの材料で達成させるということは、設計の自由度が低いということでもあり、両特性の制御が容易ではなく、ある程度の特性が得られる場合でも、製造が容易ではないことからコストが非常に高く、実用には向かないなどの欠点があった。
【0013】
【特許文献1】
特開昭64−9964号公報
【特許文献2】
特開平2−282263号公報
【特許文献3】
特開平3−221522号公報
【特許文献4】
特開平8−101517号公報
【特許文献5】
特開平8−208820号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の電子写真感光体の表面層が有していた問題点を解決し、耐摩耗性および耐傷性の機械的強度が強く、かつ、繰り返し安定性に優れた電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該電子写真感光体の表面層が、電気絶縁性の結着樹脂と高分子量電荷輸送物質との溶液の塗膜からなっている電子写真感光体において、該高分子量電荷輸送物質が、GPCチャートにおいて、2つ以上のピークを有し、且つ前記2つ以上のピークの中で最も大きいピークおよびその次に大きいピーク由来の2つの重量平均分子量のうちの一方(Mw1)が2500以上5000以下であり、他方(Mw2)が1000以上2500以下であり、Mw1とMw2の差(|Mw1−Mw2|)が500以上であり、
前記結着樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂であって、重量平均分子量が20000以上であり、
且つ前記高分子量電荷輸送物質が、下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有する単独重合体、下記式(3)で示される2種の繰り返し構造単位を有するランダム共重合体、又は下記式(5)で示される繰り返し構造単位を有する交互共重合体であることを特徴とする電子写真感光体である:
【外10】
(式(1)中、Ar 11 は、下記式(21)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(22)で示される構造を有する2価の基を示す。
【外11】
【外12】
(式(21)、(22)中、Ar 211 、Ar 212 は、それぞれ独立に、置換または無置換の3価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の3価の芳香族複素環基を示す。X 211 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。Y 211 は、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 21 は0、q 21 は0または1を示す。Ar 221 、Ar 222 は、それぞれ独立に、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の2価の芳香族複素環基を示す。X 221 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 22 は、0または1を示す。)Ar 12 は、置換または無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の1価の芳香族複素環基を示す。)、
【外13】
(式(3)中、Ar 31 〜Ar 33 は、それぞれ独立に、下記式(41)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(42)で示される構造を有する2価の基を示す。
【外14】
【15】
(式(41)、(42)中、Ar 411 、Ar 412 は、それぞれ独立に、置換または無置換の3価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の3価の芳香族複素環基を示す。X 411 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。Y 411 は、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 41 は0、q 41 は0又は1を示す。Ar 421 、Ar 422 は、それぞれ独立に、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の2価の芳香族複素環基を示す。X 421 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 42 は、0または1を示す。)Ar 34 〜Ar 36 は、それぞれ独立に、置換または無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の1価の芳香族複素環基を示す。k、m、nは、共重合比を示し、k、mは、それぞれ独立に、1以上の整数を示す。ただし、Ar 31 、N、Ar 34 を有する繰り返し構造単位と、Ar 32 、N、Ar 35 を有する繰り返し構造単位と、Ar 33 、N、Ar 36 を有する繰り返し構造単位は、互いに異なる構造である。)、
【外16】
(式(5)中、Ar 51 、Ar 52 は、それぞれ独立に、下記式(61)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(62)で示される構造を有する2価の基を示す。
【外17】
【外18】
(式(61)、(62)中、Ar 611 、Ar 612 は、それぞれ独立に、置換または無置換の3価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の3価の芳香族複素環基を示す。X 611 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。Y 611 は、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 61 は0、q 61 は0又は1を示す。Ar 621 、Ar 622 は、それぞれ独立に、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の2価の芳香族複素環基を示す。X 621 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 62 は、0または1を示す。)Ar 53 、Ar 54 は、それぞれ独立に、置換または無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の1価の芳香族複素環基を示す。ただし、Ar 51 =Ar 52 かつAr 53 =Ar 54 である場合を除く。)。
【0016】
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本発明の電子写真感光体は、上述のように、感光層に電気絶縁性の結着樹脂と特定の分子量(重量平均分子量(Mw))を持つ高分子量電荷輸送物質を含有することを特徴としている。
【0019】
すなわち、電子写真感光体の表面層となる感光層(または電荷輸送層)において、電荷輸送物質を高分子化して成膜性を持たせる技術や、または、電荷輸送性の構造を付加させた結着樹脂を用いて表面層に強度を持たせる技術とは異なる。
【0020】
本発明の電子写真感光体においては、表面層の成膜性、強度の発現は、電気絶縁性の結着樹脂よってなされており、膜強度、生産性、コストなどから選択の幅を持たせている。
【0021】
それにより、良好な電子写真特性、電気特性が得られるとともに、感光層中の結着樹脂比率を高めることが可能となり、感光層が電子写真感光体の表面層である場合に、耐摩耗性や耐傷性などにおいて非常に良好な特性を示す。
【0022】
ただし、単に電荷輸送物質の分子量が高すぎると、結着樹脂との相溶性が低下し感光層としての成膜性が低下して強度が十分でなくなるばかりか、電荷輸送機能を持つ部位が層内で偏在してしまい、電荷のトラップなどの電子写真特性(電気特性)の低下も生じてしまう。一方、分子量が小さいと電荷輸送能の向上が十分ではなくなる。
【0023】
しかし、単に両特性の適性値を得るために、分子量を中庸に設定したのみでは期待した特性は得られず、上に示した2ピーク以上の分子量を持つ系においてのみ良好な特性を示した。
【0024】
すなわち、単に低分子量と高分子量の長所を加えただけでなく、高分子量分子の間に低分子量分子が存在することにより密に充填され強度的に有利となったこと、高分子量の分子間における電荷輸送を低分子量の分子が高分子量の分子間に存在することにより補っていることが推測される。
【0025】
分子量分布が連続的に1ピークで示され、該ピークが比較的低分子量側にある電荷輸送物質においては、低分子量成分が過剰に存在することから、電子写真特性(電気特性)が十分でなくなり、そのため、一定の電気特性を発現させるために多量の電荷輸送物質が必要となり、感光層としての強度が低下してしまう。また、分子量分布が連続的に1ピークで示され、該ピークが比較的高分子量側にある電荷輸送物質においては、高分子量成分が過剰に存在することから、結着樹脂との相溶性に伴う成膜性が低下してしまう。
【0026】
本発明の電子写真感光体に用いる電荷輸送物質の分子量(重量平均分子量(Mw))は、分子量分布を統計的に表現した図(分子量分布図)において、2つ以上のピークを有するものであり、分子量(重量平均分子量)の測定方法は限定されないが、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)を測定することが、容易な測定方法の一例として挙げられる。
【0027】
ピークの存在確認は次のとおりである。すなわち、GPC測定において、明らかなピークおよびショルダーとして存在するものも含み、統計的に処理した場合において、検出されたピークのMw/Mn=1.2以下であるものをピークとし、最大面積を持つものを最も大きいピーク(最大ピーク)とする。
【0028】
最も大きいピークとその次に大きいピークの2ピークにおいて、得られたGPCの面積比から計算して、成分量として少ないピークの面積が全面積に対して10%以上であることが好ましく、20%以上がより好ましい。
【0029】
電子写真感光体の表面層の結着樹脂は、成膜性、強度などの面から重量平均分子量(Mw)が20000以上であることが好ましい。その場合、上記最も大きいピークおよびその次に大きいピークから求まる重量平均分子量のうち、が大きい側(Mw1)は2500以上であり、また、小さい側(Mw2)は2500以下であり、また、Mw1とMw2の差(|Mw1−Mw2|)は500以上である。
【0030】
また、上記Mw1は、結着樹脂との相溶性の観点から5000以下である。一方、Mw2は、1000以上である。これにより電子写真特性(感度など)が特に良好に得られる。
【0031】
重量平均分子量(Mw)が1000未満である分子の総面積は、全面積に対して20%以下であることが電子写真特性(感度など)が特に良好に得られるため好ましい。また、重量平均分子量(Mw)が5000より大きい分子の総面積は、全面積に対して20%以下であることが結着樹脂との相溶性の観点から好ましい。
【0032】
また、本発明の電子写真感光体は、表面層に上記高分子量電荷輸送物質を複数種含有すると、それらの相溶性や親和性を考慮しなければならなくなるので、1種類のみ含有することが好ましい。
【0033】
また、上記高分子量電荷輸送物質は、下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有する単独重合体であることが好ましい。
【0034】
【外10】
【0035】
(式(1)中、Ar11は、下記式(21)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(22)で示される構造を有する2価の基を示す。
【0036】
【外11】
【0037】
【外12】
【0038】
(式(21)、(22)中、Ar211、Ar212は、それぞれ独立に、置換または無置換の3価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の3価の芳香族複素環基を示す。X211は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。Y211は、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 21 は0、q 21 は0又は1を示す。Ar221、Ar222は、それぞれ独立に、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の2価の芳香族複素環基を示す。X221は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p22は、0または1を示す。)Ar12は、置換または無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の1価の芳香族複素環基を示す。)
また、上記高分子量電荷輸送物質は、下記式(3)で示される2種または3種の繰り返し構造単位を有するランダム共重合体であることが好ましい。
【0039】
【外19】
【0040】
(式(3)中、Ar31〜Ar33は、それぞれ独立に、下記式(41)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(42)で示される構造を有する2価の基を示す。
【0041】
【外14】
【0042】
【外15】
【0043】
(式(41)、(42)中、Ar411、Ar412は、それぞれ独立に、置換または無置換の3価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の3価の芳香族複素環基を示す。X411は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。Y411は、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 41 は0、q 41 は0または1を示す。Ar421、Ar422は、それぞれ独立に、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の2価の芳香族複素環基を示す。X421は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p42は、0または1を示す。)Ar34〜Ar36は、それぞれ独立に、置換または無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の1価の芳香族複素環基を示す。k、m、nは、共重合比を示し、k、mは、それぞれ独立に、1以上の整数を示す。ただし、Ar31、N、Ar34を有する繰り返し構造単位と、Ar32、N、Ar35を有する繰り返し構造単位と、Ar33、N、Ar36を有する繰り返し構造単位は、互いに異なる構造である。)また、上記高分子量電荷輸送物質は、下記式(5)で示される繰り返し構造単位を有する交互共重合体であることが好ましい。
【0044】
【外16】
【0045】
(式(5)中、Ar51、Ar52は、それぞれ独立に、下記式(61)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(62)で示される構造を有する2価の基を示す。
【0046】
【外17】
【0047】
【外18】
【0048】
(式(61)、(62)中、Ar611、Ar612は、それぞれ独立に、置換または無置換の3価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の3価の芳香族複素環基を示す。X611は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。Y611は、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 61 は0、q 61 は0または1を示す。Ar621、Ar622は、それぞれ独立に、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の2価の芳香族複素環基を示す。X621は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p62は、0または1を示す。)Ar53、Ar54は、それぞれ独立に、置換または無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の1価の芳香族複素環基を示す。ただし、Ar51=Ar52かつAr53=Ar54である場合を除く。)上記1価の芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、フルオレン、ビフェニル、ターフェニルなどから水素原子を1個取った基が挙げられ、1価の芳香族複素環基としては、カルバゾール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、キノリン、フェナジンなどから水素原子を1個取った基が挙げられる。
【0049】
上記2価の芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、フルオレン、ビフェニル、ターフェニルなどから水素原子を2個取った基が挙げられ、2価の芳香族複素環基としては、カルバゾール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、キノリン、フェナジンなどから水素原子を2個取った基が挙げられる。
【0050】
上記3価の芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、フルオレン、ビフェニル、ターフェニルなどから水素原子を3個取った基が挙げられ、3価の芳香族複素環基としては、カルバゾール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、キノリン、フェナジンなどから水素原子を3個取った基が挙げられる。
【0051】
上記アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられる。
【0052】
上記各基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基などのアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などのアルコキシ基や、フェノキシ基およびナフトキシ基などのアリールオキシ基や、フッ素原子、塩素原子および臭素原子などのハロゲン原子や、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基およびジフェニルアミノ基などのジ置換アミノ基などが挙げられる。
【0053】
以下に、本発明の電子写真感光体に用いられる高分子量電荷輸送物質が有する繰り返し構造単位の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0054】
【外19】
【0055】
【外20】
【0056】
【外21】
【0057】
【外22】
【0058】
上記具体例に代表される繰り返し構造単位を有する高分子量電荷輸送物質は、有する繰り返し構造単位が1種でもよく2種以上でもよく、使用条件によって選択できるが、特に、2種以上の繰り返し構造単位を有する共重合体とすることにより、高分子量電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルを制御することができる。高分子量電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルは、高分子量電荷発生物質とのマッチングの以外に、電子写真プロセスにおける帯電時の放電などによる酸化に関しても影響を及ぼし、イオン化ポテンシャルは、高めに設定した方が繰り返し使用における酸化劣化を抑制することができる。
【0059】
次に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
【0060】
本発明の電子写真感光体の感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型感光層でもあってもよく、さらには積層型感光層は、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層であっても、支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に咳奏した逆層型であってもよい。電子写真特性的には、積層型感光層が好ましく、その中でも順層型感光層がより好ましい。
【0061】
本発明の電子写真感光体に使用する支持体は、導電性を有するものであればよく、アルミニウム、ステンレスなどの金属、あるいは導電層を設けた金属、紙、プラスチックなどが挙げられ、形状はシート状、円筒状などがあげられる。
【0062】
レーザービームプリンターなど、画像入力がレーザー光の場合は、散乱による干渉縞防止、または、支持体の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。これはカーボンブラック、金属粒子などの導電性粉体を結着樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmが好ましく、さらには10〜30μmがより好ましい。
【0063】
支持体または導電層上には、接着機能を有する中間層を設けてもよい。中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタンなどが挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、さらには0.3〜1μmがより好ましい。
【0064】
順層型感光層の場合、支持体、導電層または中間層上には、電荷発生層が設けられる。本発明に用いられる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン、非対称キノシアニン系の各顔料が挙げられる。
【0065】
電荷発生層は、上記電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルおよび液衝突型高速分散機などの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、さらには0.1〜2μmがより好ましい。
【0066】
電荷発生層上には、電荷輸送層が設けられる。電荷輸送層が電子写真感光体の表面層となる場合には、主として、電気絶縁性の結着樹脂と、2つ以上のピークを有する分子量(重量平均分子量)分布を有する高分子量電荷輸送物質とを溶剤中に溶解させた塗料を塗工乾燥して形成する。
【0067】
電気絶縁性の結着樹脂は、電子写真感光体として用いることができるものであれば特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂は、本発明の効果をより良好に発現させることができるため好ましい。ポリカーボネート樹脂およびポリアリレート樹脂の合成法は特に限定されないが、いずれも定法によって得ること容易であり、ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールおよびホスゲンを用いた重縮合、ポリアリレート樹脂は、ビスフェノールとジカルボン酸クロライドを用いた重縮合によって得られたものが、残留物などの純度面から電子写真特性(感度など)として、また、分子量、分子量分布などの面から機械特性(強度など)として好ましい。
【0068】
電荷輸送物質は、一般的には、0.5〜10倍量(質量比)の電気絶縁性の結着樹脂と組み合わされ、塗工、乾燥して電荷輸送層を形成する。本発明の効果をより顕著に引き出すためには、電気絶縁性の結着樹脂の量を電荷輸送物質の量に対して、1〜10倍量(質量比)とすることが好ましく、さらには1〜8倍量(質量比)とすることがより好ましく、特には2〜4倍量(質量比)とすることがより一層好ましい。電荷輸送層の膜厚は5〜40μmが好ましく、さらには10〜35μmがより好ましい。
【0069】
<重量平均分子量(Mw)測定>
重量平均分子量測定は常法にしたがって行う。
【0070】
試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分に振盪して、THFとよく混ぜて(試料の合一体がなくなるまで)、さらに12時間以上静置する。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5(東ソー社製)、エキクロディスク25CR(ゲルマンサイエンス社製)などが利用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調製する。
【0071】
作製した試料は以下の方法で測定される。
【0072】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を10μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
【0073】
本発明においては、東ソー社製のものを用いた。
【0074】
検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンゲルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば、昭和電工製のshodexGPCKF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製TSKgelG1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKguardcolumn、TSKgelSuperHM−Mの組み合わせを挙げることができる。
【0075】
本発明においては、TSKgelSuperHM−Mを用いた。
【0076】
本発明の電子写真感光体に用いられる高分子量電荷輸送物質の構造は限定されないが、芳香族の環状構造を含むアミン化合物が好ましい。また、合成法も限定されないが、カップリング法などで合成することができる。その例を次に示す。
【0077】
(合成例1)
アミン化合物としてN,N’−ジ(3−メチルフェニル)ベンジジン3.6g(0.01mol)と、ハロゲン化合物として4,4’−ジブロモビフェニル3.1g(0.01mol)を、乾燥o−キシレン20mlに溶解し、酢酸パラジウム10mgと、2−(ジtert−ブチルホスフェノ)ビフェニル55mg、t−ブトキシナトリウム(NaO(t−Bu))1.34g(0.014mol)を加え、4時間加熱還流を行った。次いで、4−ブロモトルエン0.5gを加え、さらに2時間加熱還流を行った。
【0078】
放冷後、触媒を除き、アセトンに注ぎ黄色の固体を得た。
【0079】
さらに、得られた固体を再びトルエンに溶解し、活性炭処理、カラムクロマト、再沈殿により精製を行い、淡黄色固体2.5gを得た。
【0080】
この高分子量電荷輸送物質の分子量を測定した。(繰り返し構造単位(CT−2)を有する単独重合体の高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−2と称する。)、図1)
(合成例2)
アミン化合物としてビス(N−4−クロロフェニル)−3−メチルフェニルアミン10gを用い、窒素雰囲気下で塩化ニッケル0.1g、亜鉛粉末5.9g、2,2ビピリジル0.2g、トリフェニルホスフィン1.8gおよび無水N,N−ジメチルアセトアミド70ml、さらに分子量制御(末端封止)剤として1−クロロ−4−メチルベンゼン1.8gと共に80℃で5時間攪拌した。
【0081】
反応後、濃塩酸、塩化メチレン、水酸化ナトリウム水溶液、および純水において洗浄し、有機抽出物を濃縮し黄色油状物を得た。さらに、テトラヒドロフラン/メタノールから淡黄色の固体を得た。
【0082】
これをシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色固体の上記CT−2と同構造の繰り返し構造単位を有する単独重合体であって、分子量違いの高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−2bと称する。)を得た。
【0083】
この高分子量電荷輸送物質の分子量を測定した。(高分子量電荷輸送物質CT−2b、図2)
次に、本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置の概略構成を図5に示す。
【0084】
図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、(一次)帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0085】
形成された静電潜像は、次いで、現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0086】
像転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0087】
像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し像形成に使用される。なお、図のように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0088】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0089】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号にしたがって行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【0090】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版など電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0091】
【実施例】
以下実施例にしたがって、本発明をより一層詳細に説明するが、特に示さない限り電荷輸送物質は、合成例1と同様の反応を用いて合成した。
【0092】
(実施例1)
直径30mm×長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、まず、水系において界面活性剤、超音波装置を用いて表面を洗浄し、次いで、80℃純水に浸漬して引き上げ、表面の清浄化および乾燥を行った。
【0093】
次に、以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸漬法で塗布し、140℃、30分熱硬化して膜厚15μmの導電層を形成した。
【0094】
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
結着樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール=0.2/0.8 20部
次に、上記導電層上に、N−メトキシメチル化ナイロン3部および共重合ナイロン3部をメタノール65部、n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬法で塗布し、膜厚0.6μmの中間層を形成した。
【0095】
次に、CuKαのX線回折スペクトルにおける回折角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン4部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1(積水化学(株)製))2部およびシクロヘキサノン60部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸漬法で上記中間層上に塗布し、90℃で乾燥させ、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0096】
次に、上記合成例1にしたがって合成した高分子量電荷輸送物質CT−2(GPC最大ピークMw=1993(面積比37.9%)、次に大きいピークMw=3375:(面積比31.8%)、次の次に大きいピークMw=1259(面積比25.6%))4部と、ポリカーボネート樹脂(PC−Z:ユーピロンZ−200(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製))10部を、モノクロロベンゼン70部、ジメトキシメタン30部の混合溶媒に溶解した。
【0097】
この塗料を浸漬法で上記電荷発生層上に塗布し、120℃2時間乾燥し、膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
【0098】
次に評価について説明する。
【0099】
評価装置は、キヤノン(株)製複写機GP405(プロセススピードは210mm/s、(一次)帯電手段は直流電流に交流電流を重畳したゴムローラー型の接触帯電(帯電ローラー)、露光手段はレーザー像露光、現像手段は1成分磁性ネガトナー非接触現像系、転写手段はローラー型接触転写系、クリーニング手段はゴムブレードをカウンター方向に設定したクリーナー、前露光手段はヒューズランプを用いた前露光)を用いて、上記電子写真感光体をこの装置に設置した。
【0100】
高温/高湿(温度30℃、湿度85%RH)の雰囲気下に装置を設置し、帯電ローラーの交流成分を1500Vpp、1500Hzとし、直流成分を−800Vとした時の暗部電位(Vd)、780nmレーザー露光量0.5μJ/cm2照射における明部電位(Vl)を測定した。
【0101】
その後、30000枚の通紙耐久評価を行った。
【0102】
シーケンスはA4サイズ6%印字において、1枚ごとに1回停止する間欠モード(10秒/枚)とした。
【0103】
引きつづき、低温/低湿(温度15℃、湿度10%RH)の雰囲気において10000枚通紙耐久評価を同様に行い、ゴースト画像(画像濃度差)の評価をした。
【0104】
ゴースト画像評価は前露光を消灯し、転写紙A4サイズ縦方向に印字する際に感光ドラムにおいて1回転目の帯電後に明部電位(Vl)の像露光を行い、2回転目の帯電後に中間調電位(Vht)の露光を行い、現像、転写を行った。得られた転写紙上において、感光ドラム1回転目の電位履歴が2回転目の電位に影響を与えるかを転写紙上の中間調部の画像濃度の差(ゴースト)として評価した。濃度は、マクベス反射濃度計を用い、標準白色0.01、標準黒色1.0において、1回転目の電位履歴のある部分とない部分において濃度差を測定した。濃度差0.03以下を良好とした。
【0105】
また、耐久後の電荷輸送層の摩耗量を、渦電流を用いた膜厚計((株)フィッシャーインスツルメント製、Fischerscope MMS/プローブ=EAW3.3)を用いて測定し、電子写真感光体の長手方向に5位置、周方向に8位置のマトリックスで合計40点の平均値を摩耗量とした。
【0106】
(実施例2)
高分子量電荷輸送物質の合成に際し、アミン化合物を、N,N’−ジ(3−トリフルオロメチルフェニル)ベンジジン(0.01mol)とした以外は、実施例1(合成例1)と同様に合成して、繰り返し構造単位(CT−10)を有する単独重合体の高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−10と称する。)を得た。分子量をGPCにより測定したところ、最大ピークMw=2620(面積比38.5%)、次に大きいピークMw=1720(面積比27.8%)であった。この高分子量電荷輸送物質を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0107】
(実施例3)
高分子量電荷輸送物質の合成に際し、ハロゲン化物を、9,9−ジメチル−2,7−ジブロモフルオレン(0.01mol)とした以外は、実施例1(合成例1)と同様に合成して、繰り返し構造単位(CT−2)と繰り返し構造単位(CT−13)を有する交互共重合体の高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−2/CT−13<交互>と称する。)を得た。分子量をGPCにより測定したところ、最大ピークMw=2410(面積比32.4%)、次に大きいピークMw=3860(面積比20.5%)であった。この高分子量電荷輸送物質を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0108】
(実施例4)
高分子量電荷輸送物質の合成に際し、ハロゲン化物を、4,4’−ジブロモビフェニル(0.005mol)および9,9−ジメチル−2,7−ジブロモフルオレン(0.005mol)をとした以外は、実施例1(合成例1)と同様に合成して、繰り返し構造単位(CT−2)と繰り返し構造単位(CT−13)を有するランダム共重合体である高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−2/CT−13<ランダム>と称する。)を得た。分子量をGPCにより測定したところ、最大ピークMw=2920(面積比40.2%)、次に大きいピークMw=2330(面積比25.1%)であった。この高分子量電荷輸送物質を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0109】
(実施例5)
高分子量電荷輸送物質の合成に際し、アミン化合物をN,N’−ジ(2,4−ジメチルフェニル)ベンジジン(0.01mol)と、ハロゲン化物を4,4’−ジブロモビフェニル(0.007mol)および2,7−ジブロモジベンゾフラン(0.003mol)した以外は、実施例1(合成例1)と同様に合成して、繰り返し構造単位(CT−3)と繰り返し構造単位(CT−33)を有するランダム共重合体である高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−3/CT−33<ランダム>)を得た。分子量をGPCにより測定したところ、最大ピークMw=3420(面積比47.2%)、次に大きいピークMw=2410(面積比25.2%)であった。この高分子量電荷輸送物質を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0110】
(実施例6)
高分子量電荷輸送物質の合成に際し、アミン化合物を、N,N’−ジ(2,4−ジメチルフェニル)ベンジジン(0.01mol)と、ハロゲン化物を4,4’−ジブロモビフェニル(0.007mol)および2,7−ジブロモジベンゾチオフェン(0.003mol)した以外は、実施例1(合成例1)と同様に合成して、繰り返し構造単位(CT−3)と繰り返し構造単位(CT−43)を有するランダム共重合体である高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−3/CT−43<ランダム>)を得た(GPCチャートは図3)。分子量をGPCにより測定したところ、最大ピークMw=3780(面積比35.8%)、次に大きいピークMw=2460(面積比24.0%)、次の次に大きいピークMw=1890(面積比23.1%)であった。この高分子量電荷輸送物質を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0111】
(実施例7)
合成例2において、分子量制御剤の量を増して反応を行い、上記CT−2と同構造の繰り返し構造単位を有する単独重合体であって、分子量違いの高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−2cと称する。)を合成した。分子量をGPCにより測定したところ、ピーク形状は図2と類似し、ピークは1つであってMw=1320であった。合成例2で合成した高分子量電荷輸送物質CT−2bを2部と、ここで示した高分子量電荷輸送物質CT−2cの2部を混合して用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0112】
(実施例8)
合成例2において、同様の手法によって、上記CT−3と同構造の繰り返し構造単位を有する単独重合体である高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−3bと称する。)を合成した。分子量をGPCにより測定したところ、ピーク形状は図2と類似し、ピークは1つであってMw=1450であった。合成例2で合成した高分子量電荷輸送物質CT−2bの2部と、ここで示した高分子量電荷輸送物質CT−3bの2部を混合して用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0113】
(実施例9)
実施例1において、電荷輸送層の結着樹脂を、下記式(71)で示される繰り返し構造単位(PAR−C型)を有するポリアリレート樹脂(重量平均分子量(Mw)=100000、フタル酸構造部に関してテレ構造/イソ構造=5/5)とした以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0114】
【外23】
【0115】
(実施例10)
実施例4において、電荷輸送層の結着樹脂を、下記式(72)で示される繰り返し構造単位(PAR−F’型)を有するポリアリレート樹脂(重量平均分子量(Mw)=100000、フタル酸構造部に関してテレ構造/イソ構造=7/3)とした以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0116】
【外24】
【0117】
(実施例11)
実施例6において、電荷輸送層の結着樹脂を、下記式(71)で示される繰り返し構造単位(PAR−C型)および下記式(73)で示される繰り返し構造単位(TMBP型)を有するポリアリレート樹脂(PAR−C型/TMBP型=7/3の共重合。重量平均分子量(Mw)=120000、フタル酸構造部に関してPAR−C型、TMBP型ともテレ構造/イソ構造=5/5)とした以外は、実施例6と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0118】
【外25】
【0119】
【外26】
【0120】
(比較例1)
合成例2において合成した高分子量電荷輸送物質CT−2b(GPCチャートは図2、分子量をGPCにより測定したところ、最大ピークMw=3360(面積比98.8%))をそのまま用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0121】
(比較例2)
合成例1において、反応時間(加熱還流時間)を8時間とした以外は、合成例1と同様に反応を行い、上記CT−2と同構造の繰り返し構造単位を有する単独重合体である高分子量電荷輸送物質(高分子量電荷輸送物質CT−2dと称する。)を合成した(GPCチャートは図4)。分子量はGPCにより測定し、最大ピークMwは6100(面積比41.4%)、次に大きなピークMw=2710(面積比21.3%)であった。このCT−2dを用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0122】
(比較例3)
合成例2において合成したCT−2の2部と、下記式(8)で示される構造を有する低分子量電荷輸送物質の2部を混合して用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0123】
【外27】
【0124】
(比較例4)
電荷輸送物質として、上記式(8)で示される構造を有する化合物8部とした以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0125】
評価結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
実施例に示すように、本発明の電子写真感光体は、初期感度に優れ、耐久により明部電位の変化が少なく、さらに感光層の摩耗および傷が少なく、繰り返し使用によっても良好な画像が得られた。
【0128】
特に、分子量ピークを2つ以上とするにあたり、複数種の電荷輸送物質の混合によって達成した場合(実施例7、8)よりも、2つ以上の分子量ピークを有する単一種の電荷輸送物質を合成によって得た場合(実施例1〜6、9〜11)の方が、電位変動(特に明部電位)、画像濃度差(ゴースト)、削れ量(耐摩耗性)がいずれもより良かった。
【0129】
さらに、ポリアリレート樹脂を結着樹脂に用いた実施例9〜11では、ポリアリレート樹脂の強度のみならず、高分子量電荷輸送物質との相性が良好であることから、電荷輸送層内において電荷輸送物質と結着樹脂の配置や親和性がより良好になり、予想以上の耐摩耗性の効果が見られた。これはおそらく、これら実施例で使用した芳香族アミン化合物である電荷輸送物質の芳香族の環構造とポリアリレート樹脂の芳香族の環との間で親和性が高まって膜強度が向上して生じていると推測される。
【0130】
また、実施例7および8は、重量平均分子量が異なる高分子量電荷輸送物質を混合することで、本発明の2つ以上の分子量ピークを持つという規定を満足させた例であり、実施例7は、Mw1=3360、Mw2=1320であり、かつ、同一構造の繰り返し構造単位の組み合わせの例、実施例8では、Mw1=3360、Mw2=1450であり、かつ、異なる類似構造の繰り返し構造単位の組み合わせの例である。これらの例でも、本発明の効果は得られているが、その効果はやや小さめであった。
【0131】
一方、比較例1は、樹脂全体の平均分子量としては実施例に示したものと類似(Mwが3300程度)させた例、比較例2は、Mw1、Mw2が大きめとなった例、比較例3は、異なる構造の電荷輸送物質であって低分子量電荷輸送物質を混合させた例、比較例4は、総て低分子量電荷輸送物質であり、感度を得るために電荷輸送物質比率を増した例である。いずれも、感度、強度などの面で十分な特性が得られず、結果として繰り返し使用において良好な画像が得られなくなった。また、比較例では、耐久の後半において、電子写真感光体表面の傷に起因する画像上にスジが見られた。これは様々な要因が推測されるが、電荷輸送層の強度が十分でないこと、結着樹脂中に電荷輸送物質が均一に分子分散されておらず偏在していること、相溶が十分でないことから膜強度に不均一性が生じていたためと思われる。
【0132】
【発明の効果】
本発明によれば、耐摩耗性および耐傷性の機械的強度が強く、かつ、繰り返し安定性に優れた電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【0133】
また、これらを達成するための、結着樹脂、電荷輸送物質の設計の自由度が高まり、製造の容易性からコスト面での優位性も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高分子量電荷輸送物質CT−2のGPCチャートである。
【図2】高分子量電荷輸送物質CT−2bのGPCチャートである。
【図3】高分子量電荷輸送物質CT−3/CT−43<ランダム>のGPCチャートである。
【図4】高分子量電荷輸送物質CT−2dのGPCチャートである。
【図5】本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 レール
Claims (6)
- 支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該電子写真感光体の表面層が、電気絶縁性の結着樹脂と高分子量電荷輸送物質との溶液の塗膜からなっている電子写真感光体において、該高分子量電荷輸送物質が、GPCチャートにおいて、2つ以上のピークを有し、且つ前記2つ以上のピークの中で最も大きいピークおよびその次に大きいピーク由来の2つの重量平均分子量のうちの一方(Mw1)が2500以上5000以下であり、他方(Mw2)が1000以上2500以下であり、Mw1とMw2の差(|Mw1−Mw2|)が500以上であり、
前記結着樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂であって、重量平均分子量が20000以上であり、
且つ前記高分子量電荷輸送物質が、下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有する単独重合体、下記式(3)で示される2種の繰り返し構造単位を有するランダム共重合体、又は下記式(5)で示される繰り返し構造単位を有する交互共重合体であることを特徴とする電子写真感光体:
【外1】
(式(1)中、Ar 11 は、下記式(21)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(22)で示される構造を有する2価の基を示す。
【外2】
【外3】
(式(21)、(22)中、Ar 211 、Ar 212 は、それぞれ独立に、置換または無置換の3価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の3価の芳香族複素環基を示す。X 211 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。Y 211 は、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 21 は0、q 21 は0または1を示す。Ar 221 、Ar 222 は、それぞれ独立に、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の2価の芳香族複素環基を示す。X 221 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 22 は、0または1を示す。)Ar 12 は、置換または無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の1価の芳香族複素環基を示す。)、
【外4】
(式(3)中、Ar 31 〜Ar 33 は、それぞれ独立に、下記式(41)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(42)で示される構造を有する2価の基を示す。
【外5】
【外6】
(式(41)、(42)中、Ar 411 、Ar 412 は、それぞれ独立に、置換または無置換の3価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の3価の芳香族複素環基を示す。X 411 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。Y 411 は、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 41 は0、q 41 は0又は1を示す。Ar 421 、Ar 422 は、それぞれ独立に、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の2価の芳香族複素環基を示す。X 421 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 42 は、0または1を示す。)Ar 34 〜Ar 36 は、それぞれ独立に、置換または無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の1価の芳香族複素環基を示す。k、m、nは、共重合比を示し、k、mは、それぞれ独立に、1以上の整数を示す。ただし、Ar 31 、N、Ar 34 を有する繰り返し構造単位と、Ar 32 、N、Ar 35 を有する繰り返し構造単位と、Ar 33 、N、Ar 36 を有する繰り返し構造単位は、互いに異なる構造である。)、
【外7】
(式(5)中、Ar 51 、Ar 52 は、それぞれ独立に、下記式(61)で示される構造を有する2価の基、または、下記式(62)で示される構造を有する2価の基を示す。
【外8】
【外9】
(式(61)、(62)中、Ar 611 、Ar 612 は、それぞれ独立に、置換または無置換の3価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の3価の芳香族複素環基を示す。X 611 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。Y 611 は、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 61 は0、q 61 は0又は1を示す。Ar 621 、Ar 622 は、それぞれ独立に、置換または無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の2価の芳香族複素環基を示す。X 621 は、置換または無置換のアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子、または、硫黄原子を示す。p 62 は、0または1を示す。)Ar 53 、Ar 54 は、それぞれ独立に、置換または無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または、置換または無置換の1価の芳香族複素環基を示す。ただし、Ar 51 =Ar 52 かつAr 53 =Ar 54 である場合を除く。)。 - 前記高分子量電荷輸送物質が、前記電気絶縁性の結着樹脂に対して10〜100質量%である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記電子写真感光体の表面層が前記感光層である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層、および、前記電気絶縁性の結着樹脂および前記高分子量電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有し、前記電子写真感光体の表面層が該電荷輸送層である請求項3に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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