JP3912655B2 - 無限軌道式走行装置におけるアジャスタ装置の支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建設機械、農業用機械等の走行車に用いる無限軌道式走行装置のアジャスタ装置の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、無限軌道式走行装置は、該走行装置のフレーム部材であるトラックフレームに支持せしめたアイドラー輪の前後移動量を調節することで無限軌道帯(クローラ)の張り調節をするように構成されており、このような調節を行うものとしてアジャスタ装置が前記トラックフレームに設けられている。そしてこのアジャスタ装置は、アジャスタシリンダと、該アジャスタシリンダから突出するロッドと、該ロッドに支持される弾機受とアイドラ輪側に設けた弾機受けとの間に介装される弾機と、必要な場合にこれらのカバーをするカバー体とを備えて構成されるが、このように構成されるアジャスタ装置は、トラックフレーム側に固定の支持部材に支持される状態でトラックフレーム内に収納組込みされることになる。そしてこのような場合のアジャスタ装置のトラックフレームに対する支持構成としては、例えば従来、図6(A)に示されるように、支持部材30を、トラックフレーム31の左右内壁31aから互いに対向方向に突設した左右一対の平板状部材によって構成し、アジャスタ装置32から突設される張出部32aを、前記支持部材30に支持するようにしたもの、あるいは、図6(B)に示されるように、トラックフレーム31の左右内壁31aに略逆へ字形をした支持部材33の左右両側縁部を溶着し、該支持部材33でアジャスタ装置34を支持するようにしたものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが前記従来のものは、いずれのものもトラックフレームの左右内壁の上下方向中間部に前記支持部材を直接的に固定するものであるため、該支持部材は、上下方向の位置決めをした状態に維持しながら、トラックフレームの下側開口からフレーム内に入る状態で溶接等の固定作業をすることが強いられ、このため固定作業の作業性が面倒かつ煩雑で、作業能率が悪いという問題がある。そしてこの問題は、小型の機種になるほどトラックフレームが小さくなるため顕著になってくる。
一方、アジャスタ装置はアイドラ輪の移動の円滑化を確保するため正確に位置決めされた水平状態での組込みが要求される。ところでアジャスタ装置は、トラックフレームを構成する前部フレーム板に開設される開口から挿入し、支持部材で摺動支持する状態でトラックフレーム内に押し込んで所定位置に組込むことになるが、前部フレーム板の開口下縁に対して支持部材が起立段差状に対向していると、該段差状部にアジャスタ装置が引っ掛かって挿入組み込みがしづらくなり、そこで従来は、支持部材を、前部フレーム板側が僅かではあるが低くなるように傾斜設定し、これによって支持部材が前部フレーム板の開口下縁に対して低くなるようにしていた。しかしながらこのようにした場合、アジャスタ装置は支持部材に傾斜姿勢で支持されることになって位置決めがさらに困難になるという問題もあり、ここも本発明が解決せんとする課題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、無限軌道帯が懸回されるアイドラー輪の前後移動調節を行うためのアジャスタ装置を、トラックフレームに溶着した前部フレーム板に開設の開口から挿入組込みし、該アジャスタ装置を構成するシリンダをトラックフレームに溶着した後部フレーム板にボルト固定してなる無限軌道式走行装置におけるアジャスタ装置において、該アジャスタ装置を、下面側が拡開したトラックフレーム内に支持部材を介して支持するにあたり、前記トラックフレームの左右側板の下端縁に、トラックローラを取り付けるためのローラセットプレートを前記側板に対して内側に至るようにしてそれぞれ取り付け、該各ローラセットプレートに、該各ローラセットプレートのトラックフレームより内側に位置する部位から前後方向に長い板状の前記支持部材を起立状に固着してそれぞれ設け、前記左右の支持部材の上面は、前端部が前側ほど低くなるよう切り欠かれていて、開口から挿入組込みされるアジャスタ装置が支持部材の前上端に引っ掛かることがないようにして前部フレーム板に対向すると共に該開口から挿入組込みされるアジャスタ装置を奥方に押し込み摺動させる状態で支持する支持面になっていることを特徴とする無限軌道式走行装置におけるアジャスタ装置の支持構造である。
このようにすることにより、支持部材は、従来のように、トラックフレームの下側開口からフレーム奥方において、治具で位置決めしながら溶接作業を強いられるようなことがなく、しかも支持部材の取り付けは、ローラセットプレートに起立した支持部材の起立基端部を溶着すればよく、溶接作業の向上を図ることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図面において、1は無限軌道式の走行装置2が設けられた下部走行体、3は下部走行体1の上方に旋回自在に支持される上部旋回体、4は上部旋回体3の前部に設けられるバケット式のフロントアタッチメントであるが、これらのものの基本的構成はいずれも従来通りであるのでその詳細は省略する。
【0006】
前記走行装置2を構成する左右のトラックフレーム5は、下方が開口した略冂字形をし、前端部にアイドラー輪6が、後端部に駆動輪7が、下端部に下部転輪(トラックローラ)8が、上端部に上部転輪(キャリアローラ)9がそれぞれ設けられ、これら輪体(ローラ)に無限軌道帯(クローラ)10が懸回されている。そしてアイドラー輪6を前後移動して無限軌道帯10の張り調整をするアジャスタ装置11が前記トラックフレーム5に内装されるが、ここに本発明が実施されており、以下、これについて詳述する。
【0007】
前記アジャスタ装置11を構成するシリンダ12はトラックフレーム5に溶着した後部フレーム板5aにボルト固定され、該シリンダ12から前方に延出するロッド(シリンダロッド)13には、段差面13aが形成され、該段差面13aに当接する状態で後側弾機受け部14が受止め支持されている。さらに後側弾機受け部14の前端面には、ロッド13を遊嵌状に内嵌する状態でストッパ筒14aの後端が固定されており、そして該ストッパ筒14aの前端が間隔を存して前側弾機受け部15に対向しており、この間隙を超えてのアイドラー輪6の後退移動を規制している。また、ロッド13の前端部には前側弾機受け部15が前後方向移動自在に挿通され、ロッド13の前端に螺装したボルト13bによって該前側弾機受け部15の前方移動を規制している。これら両弾機受け部14、15のあいだにアジャスタ弾機16が付勢力を蓄勢した状態で弾装されている。
さらに前側弾機受け部15には、アイドラー輪6を回転自在に軸支したアイドラーブラケット17が一体的に固定されているが、該アイドラーブラケット17には、トラックフレーム5の前端部に溶着した前部フレーム板5bから前方に突設した上下左右のアイドラーガイド18に案内されて前後移動する摺動部17aが形成されている。そしてアジャスタ装置11は、シリンダ12に対するグリースの供給、除去によってロッド13を前後移動させることで無限軌道帯10の張り調節をし、また無限軌道帯10が石に乗り上げる等して緊張した場合に、アイドラー輪6はアジャスタ弾機16の付勢力に抗して後方に移動し、これによって緊張緩和がなされるようになっている。尚、19はアジャスタ弾機16を覆蓋するカバー体であって、該カバー体19は、本実施の形態では後側弾機受け部14に固定され、前側弾機受け部15に対しては相対移動するようになっている。
【0008】
前記トラックフレーム5に溶着された前部フレーム板5bには、アジャスタ装置11を挿入組込みするための開口5cが開設されているが、該開口5cから挿入されるアジャスタ装置11は次のようにしてトラックフレーム5に支持されている。つまり、トラックフレーム5の左右側板5d、5eの下端縁には前記下部転輪8を取り付けるためのローラセットプレート20がそれぞれ溶着されるが、該ローラセットプレート20は、フレーム側板5d、5eに対して内側にまで至るようにして前後方向に長い板状のもの(図2、3参照)として設けられ、該プレート内側部20aに起立状をした支持部材21の下端部が溶着されることで設けられている。さらに支持部材21の前端部上面は前側ほど低くなる状態に切欠かれた切欠き部21aが形成されていて前部フレーム板5bに対向している。そしてアジャスタ装置11は、シリンダ12側から前記開口5cに挿入し、カバー体19を支持部材21に摺動させる状態で奥方に押込み、そして押込み端においてシリンダ12を後部フレーム板5aに固定することで組込まれる。
因みに、支持部材21のローラセットプレート20に対する配設位置としては、図3(A)に示すごとく支持部材21の内端よりも奥のフレーム側板5d、5e側に位置させる構造、図3(B)に示すごとく支持部材21の内端から一部はみ出すように位置させる構造、さらには図3(C)に示すごとく端部を面取り状に切欠いた支持部材21をローラセットプレート20の端面に面一状に位置させる構造とすることができ、このようにすることで溶接の容易性が図れるという利点がある。
【0009】
叙述のごとく構成されたものにおいて、アジャスタ装置11は支持部材21によって支持されることになるが、該支持部材21は、従来のようにフレーム側板5d、5e内面ではなく、該フレーム側板5d、5eの下端縁に固着されるローラセットプレート20に対し起立状に溶着するものであるから、溶着位置がトラックフレームの下側開口縁に近いものとなり、このため、小型なものであっても溶着作業が容易になって作業能率が向上することになる。しかも支持部材21は、下端縁をローラセットプレート20に起立状に固着すればよいので、上面である支持面の位置決めが簡単で、従来のもののように位置決め用の治具を用いる必要もない。
【0010】
また、支持部材21は、前部フレーム板5bに対向する前端部上面は、前側ほど低くなる状態に切欠かれた切欠き部21aが形成されていて、アジャスタ装置を前部フレーム板5bに形成された開口5cから挿入組込みする際に、アジャスタ装置11が支持部材21の前上端に引っ掛かってしまうことがなくなって、円滑な挿入組込みができる。この結果、挿入組込みが円滑にできながら、支持部材 のアジャスタ装置支持面となる上端縁を切欠き部を除いた残りの部分を水平にして正確な位置決め支持ができることになる。
【0011】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものでないことは勿論であって、支持部材としては、図4(A)に示す第二の実施の形態のようにまた支持部材22の上端部22aを円弧状に拡開する構成として、より安定したアジャスタ装置23の支持ができる構成にしてもよい。また、図4(B)に示す第三の実施の形態のように、アジャスタ装置24に張出部24aがあるものについては、ローラセットプレート25に立設した支持部材26で張出部24aを支持するようにしても勿論よい。さらには図5(A)、(B)に示す第四、第五の実施の形態のように支持部材27、28を平面視でコ字形にしたもの、あるいはロ字形にしたものとすることができる。そしてこのようにしたものでは、後端に形成される差渡し板27a、28aにシリンダを受けるためシリンダ形状に合わせた切欠き27b、28b(例えば円弧状の切欠き)を形成することができ、このようにしたときにはシリンダ部の支持もできることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】油圧ショベルの要部を切欠いた斜視図である。
【図2】走行装置の要部断面側面図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は、各態様を示した図2のA−A断面図、(D)は図3(C)の要部拡大図である。
【図4】(A)、(B)は第二、第三の実施の形態を示す要部断面図である。
【図5】(A)、(B)は第四、第五の実施の形態を示す支持部材の斜視図である。
【図6】(A)、(B)は従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
2 無限軌道式走行装置
5 トラックフレーム
6 アイドラー輪
10 無限軌道帯
11 アジャスタ装置
12 シリンダ
16 アジャスタ弾機
19 カバー体
20 ローラセットプレート
21 支持部材
21a 切欠き部
Claims (1)
- 無限軌道帯が懸回されるアイドラー輪の前後移動調節を行うためのアジャスタ装置を、トラックフレームに溶着した前部フレーム板に開設の開口から挿入組込みし、該アジャスタ装置を構成するシリンダをトラックフレームに溶着した後部フレーム板にボルト固定してなる無限軌道式走行装置におけるアジャスタ装置において、該アジャスタ装置を、下面側が拡開したトラックフレーム内に支持部材を介して支持するにあたり、前記トラックフレームの左右側板の下端縁に、トラックローラを取り付けるためのローラセットプレートを前記側板に対して内側に至るようにしてそれぞれ取り付け、該各ローラセットプレートに、該各ローラセットプレートのトラックフレームより内側に位置する部位から前後方向に長い板状の前記支持部材を起立状に固着してそれぞれ設け、前記左右の支持部材の上面は、前端部が前側ほど低くなるよう切り欠かれていて、開口から挿入組込みされるアジャスタ装置が支持部材の前上端に引っ掛かることがないようにして前部フレーム板に対向すると共に該開口から挿入組込みされるアジャスタ装置を奥方に押し込み摺動させる状態で支持する支持面になっていることを特徴とする無限軌道式走行装置におけるアジャスタ装置の支持構造。
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