JP3833058B2 - 車両用ロングシート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、鉄道などの車両内の側壁に沿って設けられる車両用ロングシートに関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
従来のこの種のロングシートにあっては、例えば図7に示すように、車両内の側壁に取り付けた略L字型のブラケット101の上に支持板102を組み付けたのち、この支持板102の上に複数の分割シートであるクッション材103,104を互いに密着状態にして横一列に固定して組付けている。
ところで、この支持板102に載置するクッション材103,104としては、通常、座部であるシートクッション材103と背部であるシートバッククッション材104とに2分割されたものを使用している。
【0003】
従って、このように分割されたクッション材は、座部と背部との位置関係などを互い調整しながら組み付けている。具体的には、例えば2人・3人・2人などの順で分割シートを横一列に並べた構成の7人掛用のシートにあっては、座部と座部とについて及び背部と背部とについて、それぞれ位置合わせを行い、隙間やしわができないようにする共に双方の合わせ目(境界部分)が平行になるようにする。同様に、座部と背部とについても、隙間やしわができないようにすると共に双方の合わせ目(境界部分)が平行になるようにする。
【0004】
しかしながら、このようなシート位置調整作業にあっては、作業者の勘や経験に頼る部分が多い。このため、シートの組付作業時間全体に占めるシート調整作業時間の割合が多く、完成させたときの見栄えが作業者によって大きく異なっている。このような事情から、作業に不慣れなものにとっては、シートの組付作業時間の大半を組付時の調整作業に費やしており、作業性の低下を招いている。
【0005】
即ち、このようなロングシートのクッション材では、例えば車両の車体内壁側のブラケットに予めパンなどを先に組付けておき、その後、そのパンにシートクッション材やシートバッククッション材を面ファスナや両面テープなどの貼着手段で固定している。このため、特に車両内の狭い車体内壁側での貼着作業では、既に組付けられた隣のクッション材などが邪魔になって貼着作業が上手く行えずに、皺ができやすい。その結果、クッション材の組付作業と同時に、皺を伸ばす作業も行うことが必要となることがあり、一層、組付作業性の低下をもたらしている。
【0006】
【発明の目的】
そこで、本発明は、上記した事情に鑑み、組付作業の簡略化を図ることにより、組付作業に不慣れなものであっても、クッション材の組付時に隙間やしわの発生を防止できるとともに、組付作業性を向上させることができる車両用のロングシートを提供することを目的とする。
【0007】
【発明の概要】
本発明は、車両の車体内壁面に沿って横長に組付けられる車両用ロングシートであって、座部であるシートクッション材と背部であるシートバッククッション材とからなる複数のクッション材と、クッション材一体に取付けられた複数の組付パンと、複数の前記組付パンを前記車体内壁面に沿って固定する固定手段とを備え、前記固定手段は、前記車体内壁面に沿って左右に並んだ状態で配置される複数のブラケット部材を有し、各組付パンはその左右両側部で前記ブラケット部材に支持され、左右に隣り合う組付パンの対向する側部間には1つのブラケット部材が配置され、前記組付パンおよび前記ブラケット部材のいずれか一方にガイド部を設け、いずれか他方に前記ガイド部が嵌るレール部を設けたことを特徴としている。
【0008】
前記組付パンの左右両側部には、前記クッション材が前記ガイド部またはレール部に接触するのを防止する退避部材を設けることが好ましい。
【0010】
前記固定手段が、車両の車体内壁面側に沿った横方向に設けた一対の平行なパイプ部材を有し、前記ブラケット部材は、基端部をこの一対のパイプ部材の間に差し込み、この基端部から先端部に向かって上方に傾斜した角度状態で組付けることが好ましい。
【0012】
【発明の実施形態】
以下、この発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明に係る車両用ロングシートの要部を示す分解斜視図であり、この車両用ロングシートは、概略構成として、車体内壁に取り付けた固定手段1と、この固定手段1に組付けた組付パン2と、この組付パン2に固着した(座部と背部とが一体の)クッション材3とを備えている。
【0013】
固定手段1は、車両の車体内壁面(図略)に沿って横長に設置されており、図2に示すように、車体取付けブラケット11に上下一対のもの12A,12Bが平行に固定して設けたパイプ部材12と、このパイプ部材12間で分割シートS(後述する)に対応した位置に挟持・固定された複数個のブラケット部材13とを備えている。
【0014】
これらのブラケット部材13は、パイプ部材12(車体内壁面)に対して直角に組付けてあるが、中間部側に配置されたものは断面略H型を有しており、また左右両端部側に配置されたものは断面略コ字形に形成されている。そして、この実施形態のブラケット部材13は、図5に示すように、基端部側が上下方向に分岐されており、この分岐部分13B,13Cをパイプ部材12A,12Bに支持させ、溶接などにより固定させることによって、特に先端側が下方へ回動するのが防止され、安定した状態でパイプ部材12側に支持・固定される。
【0015】
このブラケット部材13は、最終的にパイプ部材12に溶着させるようになっているが、溶接する前であれば、パイプ部材12に係止している基端部側を回動中心にして先端側を上方に向けて軽く押し上げると、パイプ部材12に沿って自由にスライドさせることができるので、容易に位置調整を行うことができる。なお、このブラケット部材13とパイプ部材12との組付け状態は、側方(水平方向)からこれらを眺めたときに、ブラケット部材13が、基端部から先端部に向けて若干上方向に反るような状態に傾斜されている。このような構成とすることで、レール部であるスライド部材23がガイド部であるガイド溝13Aを摺動し易くなり、所望の固定位置へ設置し易くなる。
【0016】
組付パン2は、後述するシートクッション材3Aが設置される座部側のシートパン2Aと、シートバッククッション材3Bが設置される背部側のシートバックパン2Bとから構成されている。このうち、シートパン2Aは、図2に示すように、矩形状に形成されたシートフレーム21と、このシートフレーム21に溶接或はリベットで組付けた座板22とで構成されており、両側面部分にはスライド部材23を配設した。
【0017】
このスライド部材23は、ブラケット部材13に設けたガイド部を構成するガイド溝13Aに挿入されているとともに、固定手段1側の一対のブラケット部材13間にシートパン2Aが両側から挟持された状態で架設されている。このため、このスライド部材23は、図3に示すように、高さ方向の寸法h1がガイド溝13Aの高さ寸法h2よりも若干小さく(h1<h2)形成されている。また、この左右両側にあるスライド部材23どうしの配置距離(換言すれば、縦横2方向に設けたシートフレーム21A、21Bのうちパイプ部材12と平行に配置されている横方向のもの21Bの長さ寸法)D1は、一対のブラケット部材13間の配置間隔D2との間に、D1<D2の関係を有する。
【0018】
また、このスライド部材23には、退避部材26を内面側に取り付けており、シートクッション材3Aの左右両側から突出する下部が自重で下方へ撓み落ちるのを防止している。
【0019】
一方、シートバックパン2Bは、図2に示すように、矩形状に形成された背部フレーム24と、この背部フレーム24に溶接或はリベットで組付けた背板25とで構成されている。この背部フレーム24のうち上辺側のものには、底面部分に、長手方向に沿って長孔が穿設されており、この長孔をフック部材14に係止させてある。なお、このフック部材14は、図4に示すように、上部がフック状に折曲したばね部を有しており、図示外の車体内壁面にボルトなどで固着されて車体側に止め付けてある。
【0020】
クッション材3は、座部であるシートクッション材3Aと背部であるシートバッククッション材3Bとで構成されており、それぞれ面ファスナや両面テープ等の貼着手段によってシートパン2A側及びシートバックパン2B側に組付けられている。なお、このロングシートのクッション材3は、例えば7人用では2人・3人・2人といったように各種の人数に合わせて分割させた構成となっており、これらの分割させたものをそれぞれ横一列に密着状態に集合させてロングシートを形成させている。
【0021】
このうち、座部側のシートクッション材3Aは、図3に示すように、両側部側が組付フレーム2のスライド部材23よりも側方に僅かに突出しており、隣のブラケット部材にシートクッション材3Aが設置されたときに、互いにそのシートクッション材3Aどうしが密着して隙間を形成しないように構成されている。なお、このシートクッション材3Aの左右両側の下部には、図3に示すように、スライド部材23側に設けた退避部材26によってスライド部材23上面との間に隙間を形成しており、組付フレーム2をブラケット部材13に挿入する際に、このシートクッション材3Aの両側の下部がブラケット部材13とスライド部材23との間に挟み込まれたりして、組付け作業の際に障害になるのを防止するようになっている。
【0022】
次に、この実施形態に係る車両用ロングシートの組み付け方法について、説明する。
まず、組付パン2については、予め工場などにおいて、夫々溶接などでシートパン2A及びシートバックパン2Bを形成しておくと共に、これら双方を溶接などでシートフレーム21に一体に組付けてある。そして、この組付パン2は、組付けるべき車両のところまで運搬されてきて必要数が用意されているものとする。同様に、クッション材3についても、座部であるシートクッション材3Aと背部であるシートバッククッション材3Bとが、予め工場などで一体に形成されて、組付けるべき車両まで運搬され用意されているものとする。
【0023】
このように、各シート部品が組付ける車両のところまで運搬されて用意されているところで、以下のようにして組付け作業を行う。
▲1▼最初に、ブラケット11に、パイプ部材12及びブラケット部材13を溶接により固定し、このブラケット11を車体内壁面にボルトにより固定する。その際に、図4に示すフック部材14も車体内壁面にボルトにより固定する。
【0024】
▲2▼次に、面ファスナや両面テープなどの貼着手段を使用し、組付パン2にシートクッション材3A及びシートバッククッション材3Bを組付けて図5に示す分割シートSを完成させ、車体に搬入して、固定手段1に組付ける。
▲3▼即ち、図6に示すように、このクッション材3を組付けた組付けパン2のシートパン2A側を固定手段1側のブラケット部材13に組付けるとともに、シートバックパン2B側をフック部材14に係止させる。
即ち、シートパン2Aの左右両側に突設したスライド部材23を、これに対応して一定幅で左右一対設けたブラケット部材13のガイド溝13Aに沿ってそれぞれ所定位置まで押し込んで挿入していく。
【0025】
▲4▼このようにして、シートパン2Aを所定位置まで挿入させたならば、適宜の手段で、例えばこの実施形態では、ボルトによって分割シートSを固定手段1に一体に組付ける。
▲5▼他の分割シートについても、同様にして、固定手段1側のブラケット部材13にシートパン2Aのスライド部材23を挿入させ、同様に一体に組付ける。
▲6▼最後に、これら分割シートSどうしの境界部分に隙間や皺の発生がないことを確認すれば組み付け作業が完了し、ロングシートが完成する。
【0026】
【発明の効果】
以上説明してきたように、この発明によれば、先にクッション材を組付パンに取り付けてから、これを車両の車体内壁面に設けた固定手段に組付けているので、特に組付け後の隣のシートなどに邪魔されることなく、車内の狭い場所を避け、どこでも作業を行い易い広い場所でクッション材を自由に組付けることができるようになる。これにより、しわの発生が極力防止できるようになり、外観上の見栄えが良好なものが容易に実現できるとともに、組付け作業の簡略化、組付時の作業性の向上等を図ることができる。
【0027】
また、この発明によれば、固定手段と組付パンとのうちのいずれか一方にガイド部を設けると共にいずれか他方にレール部を設け、固定手段に組付パンを組付ける際に、レール部がガイド部に沿ってガイドされながら挿入するように構成したものにあっては、組付時の作業性をさらに向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の車両用ロングシートの要部を示す分解斜視図である。
【図2】同車両用ロングシートの組み付け状態を示す斜視説明図である。
【図3】同車両用ロングシートのスライド機構部分を示す要部断面図である。
【図4】車両用ロングシートを車体内壁面側に組付けた状態を示す説明図である。
【図5】クッション材を組付パンに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】車両用ロングシートを固定手段に組付ける時の状態を示す説明図である。
【図7】従来のロングシートの組付け状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 固定手段
11 車体取付けブラケット
12 パイプ部材(固定手段)
13 ブラケット部材(固定手段)
13A ガイド溝(ガイド部)
2 組付パン
2A (座部側)シートパン
2B (背部側)シートバックパン
21 シートフレーム
22 座板
23 スライド部材(レール部)
25 背板
3 クッション材
3A (座部側)シートクッション材
3B (背部側)シートバッククッション材

Claims (3)

  1. 車両の車体内壁面に沿って横長に組付けられる車両用ロングシートであって、
    座部であるシートクッション材と背部であるシートバッククッション材とからなる複数のクッション材と、
    クッション材一体に取付けられた複数の組付パンと、
    複数の前記組付パンを前記車体内壁面に沿って固定する固定手段とを備え、
    前記固定手段は、前記車体内壁面に沿って左右に並んだ状態で配置される複数のブラケット部材を有し、
    各組付パンはその左右両側部で前記ブラケット部材に支持され、左右に隣り合う組付パンの対向する側部間には1つのブラケット部材が配置され、
    前記組付パンおよび前記ブラケット部材のいずれか一方にガイド部を設け、いずれか他方に前記ガイド部が嵌るレール部を設けたことを特徴とする車両用ロングシート。
  2. 前記組付パンの左右両側部には、前記クッション材が前記ガイド部またはレール部に接触するのを防止する退避部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ロングシート。
  3. 前記固定手段が、車両の車体内壁面側に沿った横方向に設けた一対の平行なパイプ部材を有し、前記ブラケット部材は、基端部をこの一対のパイプ部材の間に差し込み、この基端部から先端部に向かって上方に傾斜した角度状態で組付けてあることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ロングシート。
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