JP3912064B2 - 電気光学装置及びその製造方法並びに電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクティブマトリクス駆動方式の電気光学装置の技術分野に属し、特に画素スイッチング用の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、適宜「TFT」という。)を、基板上の積層構造中に備えた形式の電気光学装置及びその製造方法、並びにこれをライトバルブとして備えた電子機器の技術分野に属する。
【0002】
【背景技術】
TFTアクティブマトリクス駆動形式の電気光学装置では、各画素に設けられた画素スイッチング用のTFTのチャネル領域に入射光が照射されると、光による励起で光リーク電流が発生してTFTの特性が変化する。特に、プロジェクタのライトバルブ用の電気光学装置の場合には、入射光の強度が高いため、TFTのチャネル領域やその周辺領域に対する入射光の遮光を行うことは重要となる。
【0003】
そこで従来は、対向基板に設けられた各画素の開口領域を規定する遮光膜により、あるいはTFTアレイ基板上においてTFTの上を通過するとともにAl(アルミニウム)等の金属膜からなるデータ線により、かかるチャネル領域やその周辺領域を遮光するように構成されている。さらに、TFTアレイ基板上のTFTの下側に対向する位置にも、例えば高融点金属からなる遮光膜を設けることがある。
【0004】
このようにTFTの下側にも遮光膜を設ければ、TFTアレイ基板側からの裏面反射光や、複数の電気光学装置をプリズム等を介して組み合わせて一つの光学系を構成する場合に他の電気光学装置からプリズム等を突き抜けてくる投射光等の戻り光が、当該電気光学装置のTFTに入射するのを未然に防ぐことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した各種遮光技術によれば、以下の問題点がある。すなわち、まず対向基板上やTFTアレイ基板上に遮光膜を形成する技術によれば、遮光膜とチャネル領域との間は、3次元的に見て例えば液晶層、電極、層間絶縁膜等を介してかなり離間しており、両者間へ斜めに入射する光に対する遮光が十分ではない。特に、プロジェクタのライトバルブとして用いられる小型の電気光学装置においては、入射光は光源からの光をレンズで絞った光束であり、斜めに入射する成分を無視し得ない程度(例えば、基板に垂直な方向から10度から15度程度傾いた成分を10%程度)含んでいるので、このような斜めの入射光に対する遮光が十分でないことは実践上問題となる。
【0006】
加えて、遮光膜のない領域から電気光学装置内に進入した光が、基板の上面又は基板の上面に形成された遮光膜の上面やデータ線の下面(すなわち、チャネル領域に面する側の内面)で反射された後に、かかる反射光、あるいはこれが更に基板の上面あるいは遮光膜やデータ線の内面で反射された多重反射光が、最終的にTFTのチャネル領域に到達してしまう場合もある。
【0007】
特に、近年の表示画像の高品位化という一般的要請に沿うべく電気光学装置の高精細化あるいは画素ピッチの微細化を図るにつれて、更に明るい画像を表示すべく入射光の光強度を高めるにつれて、上述した従来の各種遮光技術によれば、十分な遮光を施すのがより困難となり、TFTのトランジスタ特性の変化により、フリッカ等が生じて、表示画像の品位が低下してしまうという問題点がある。
【0008】
なお、このような耐光性を高めるためには、遮光膜の形成領域を広げればよいようにも思われるが、遮光膜の形成領域を広げてしまったのでは、表示画像の明るさを向上させるべく各画素の開口率を高めることが根本的に要請されるところ、その実現が困難になるという問題点が生じる。更に、上述の如く、遮光膜(すなわち、TFTの下側の遮光膜やデータ線等からなるTFTの上側の遮光膜等)の存在により、斜め光に起因した内面反射光や多重反射光が発生することに鑑みれば、むやみに遮光膜の形成領域を広げたのでは、このような内面反射光や多重反射光の増大を招くという解決困難な問題点もある。
【0009】
また、仮に遮光性能が比較的十分な電気光学装置の構造を考えることができたにしても、その製造を容易に実施することが可能であるか否かは、また別の問題である。すなわち、構造が徒に複雑であって、その製造が容易に行い得ないのならば、当該構造の価値は、その分だけ減殺されると言わねばならない。具体的には、例えば、上述したような、データ線の機能を兼ねた遮光膜を形成する場合にあっては、一般にその構造は複雑となる。このことは、TFTアレイ基板からみて上層に行けば行く程、前記データ線、あるいはTFT等を設けることによって生じる最上層面の段差が顕著になることに現れている。上記データ線及びTFT等に加えて、蓄積容量等をも設ける場合には、このような不具合は更に著しくなる。
【0010】
このような状態になると、例えば、通常最上層として設けられる配向膜の塗布不良等が発生したり、また、該配向膜に対するラビング処理が不均一にしか行えない等といった不都合が生じることになり、電気光学装置の製造自体を困難とする。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐光性に優れており、明るく高品位な画像表示が可能であるとともに、その製造が容易な電気光学装置及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気光学装置は、上記課題を解決するため、基板上に、画素電極と、該画素電極に電気的に接続された薄膜トランジスタと、該薄膜トランジスタに電気的に接続された配線と、前記薄膜トランジスタ及び前記配線の上層として設けられ、かつ、平坦化処理が施された層間絶縁膜と、前記薄膜トランジスタ及び前記配線を立体的に覆う遮光部材とを備え、前記遮光部材は、前記基板上に掘られかつ前記薄膜トランジスタ及び前記配線が内部に収容された溝の底面及び側壁に形成された第1遮光層と、該溝を上側から覆うように前記層間絶縁膜上に形成された第2遮光層とを有し、前記第2遮光層は、前記第1遮光層の上側の端部に接するように形成されている。
また、前記層間絶縁膜は、前記第1遮光層の上側の端部が現れるまで研磨されて平坦化されている。
また、前記画素電極と隣接する画素電極との間において、前記層間絶縁膜上に凸部が形成されている。
【0013】
本発明の電気光学装置によれば、画素電極をこれに接続された薄膜トランジスタによりスイッチング制御することにより、アクティブマトリクス駆動方式による駆動を行える。そして、遮光部材は、薄膜トランジスタを立体的に覆う。したがって、基板面に対して上方から垂直に、あるいは斜めに進行する入射光及び基板面に対して下方から垂直に、あるいは斜めに入射する戻り光、並びにこれらに基づく内面反射光及び多重反射光等が、薄膜トランジスタのチャネル領域及びチャネル隣接領域に入射するのを、遮光部材により阻止できる。加えて、遮光部材により、各画素の非開口領域を精度よく格子状に規定できる。
【0014】
ここで特に、本発明によれば、上述のような遮光部材において、薄膜トランジスタ及び配線の上層として設けられる部位が平坦とされていることから、当該部位の上層として設けられる層ないし構造をも平坦な面を有するものとして形成することが可能となる。これにより、例えば、前記層ないし構造として配向膜を設けることを想定すると、該配向膜を設けようとする面は平坦であるがゆえ、その塗布不良等が生じることがなく、また、そのような平坦面に形成された配向膜もまた平坦であるがゆえ、該膜に対するラビング処理を均一に実施すること、等が可能となる。つまり、電気光学装置全体の製造を容易にすることが可能となる。
【0015】
加えて、当該平坦とされた部位の上層として設けられる層ないし構造が有する概ね平坦な面上に、当該部位の下層に存在する薄膜トランジスタや配線による凹凸と無関係な所望形状の凸部を積極的に形成することも容易となる。例えば、縦電界を想定した駆動方式にとって好ましくない、隣接画素電極間で発生する横電界を低減すべく、隣接画素電極間にのみ高精度で凸部を形成することも可能である。
【0016】
このように、本発明の電気光学装置によれば、耐光性を高めることが可能となり、強力な入射光や戻り光が入射するような過酷な条件下にあっても光リーク電流の低減された薄膜トランジスタにより画素電極を良好にスイッチング制御でき、最終的には、本発明により明るく高コントラストの画像を表示可能となる。
【0017】
尚、このような遮光部材は、遮光部材の下地面に平坦化処理を施すことで形成してもよいし、遮光部材自体の上面に平坦化処理を施すことにより形成してもよい。
【0018】
なお、このような技術的効果に鑑み、本発明において「薄膜トランジスタ及び配線を立体的に覆う遮光部材」とは、狭義には、薄膜トランジスタ及び配線を内部に収容する3次元的に閉じた空間を規定する遮光部材を意味し、より広義には、3次元的にまちまちの方向からくる光をそれぞれ多少なりとも遮光(反射あるいは吸収)する限りにおいて、薄膜トランジスタ及び配線を内部に収容し、若干の途切れをもって又は断続的に3次元的に閉じた空間を規定する遮光部材を意味する。
【0019】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記遮光部材は、前記基板上に掘られかつ前記薄膜トランジスタ及び前記配線が内部に収容された溝の底面及び側壁に形成された第1遮光層と、前記薄膜トランジスタ及び配線の上層として設けられる部位を含み、前記溝を上側から蓋する第2遮光層とを含む。
【0020】
この態様によれば、溝が基板に掘られ、この溝の底面及び側壁に第1遮光層が形成されている。そして、この溝内部に薄膜トランジスタ及び配線が、例えば層間絶縁膜等で相互に、あるいは第1遮光層から層間絶縁されつつ、収容されている。そして、第2遮光層でこの溝が上側から蓋されている。したがって、比較的単純な構造及び製造プロセスを採用しつつ、確実に薄膜トランジスタ及び配線を立体的に遮光できる。
【0021】
また、第2遮光層は、前記薄膜トランジスタ及び配線の上層として設けられる部位を含むから、それは平坦であって、上述した平坦面に係る作用効果が、当該部位上に形成される層ないし構造に関して享受することが可能となる。
【0022】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記薄膜トランジスタ及び前記配線の上層として設けられ、かつ、平坦化処理が施された層間絶縁膜を更に含み、前記遮光部材における薄膜トランジスタ及び配線の上層として設けられる部位は、前記層間絶縁膜上に形成される。
【0023】
この態様によれば、遮光部材の一部たる、薄膜トランジスタ及び配線の上層として設けられる部位が、平坦化処理が施された層間絶縁膜上に形成されていることから、該遮光部材の一部もまた、平坦に形成することが容易に可能となっている。
【0024】
前記第2遮光層には、前記薄膜トランジスタと前記画素電極とを電気的に接続するための穴が開孔されている。
【0025】
この態様によれば、前記薄膜トランジスタと前記画素電極とを接続するための穴が開孔されているから、これらの接続を容易になすことができる。また、この「穴」は、一般に、遮光部材における平坦とされた部位の、ごく一部にのみ形成すればよいから、薄膜トランジスタへの光入射が仮にあったとしても、それを最小限に抑えることが可能となる。
【0026】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記画素電極と前記薄膜トランジスタとは、遮光性の導電膜を介して電気的に接続されている。
【0027】
この態様によれば、例えばコンタクトホールが開孔されており、遮光部材で囲まれた内部空間に対して外部からの光漏れが生じやすい画素電極と薄膜トランジスタとの接続箇所における光漏れを確実に阻止できる。なお、遮光性の導電膜の材質としては、例えば、TiN(チタンナイトライド)、WSi2(タングステンシリサイド)等が適している。
【0028】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記画素電極と前記薄膜トランジスタとの電気的な接続箇所は、平面的に見て相隣接する薄膜トランジスタ間の中央に位置する。
【0029】
この態様によれば、遮光部材で囲まれた内部空間に対して、画素電極と薄膜トランジスタとの接続箇所、例えばコンタクトホールを介して外部からの光漏れが生じたとしても、当該光漏れの箇所は、各薄膜トランジスタと基板面に沿って離間しているので、漏れた光のうち薄膜トランジスタのチャネル領域及びその隣接領域まで達するものを極力低減できる。
【0030】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記遮光部材は、高融点金属を含む膜からなる。
【0031】
この態様によれば、遮光部材は、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等の高融点金属を含む膜からなる。したがって、本態様の電気光学装置を製造する際において、このような遮光部材を形成した後に、何ら問題なく高温度環境下におけるプロセス(例えば、薄膜トランジスタを構成する半導体層のアニール処理等)を実施することが可能となる。つまり、遮光部材は、「高融点」であるがゆえ、そのような高温度環境に耐えうる。また、上述のような遮光部材によれば、良好な遮光性能も同時に得られる。
【0032】
前記第2遮光層は、低融点金属を含む膜からなる。
【0033】
この態様によれば、遮光部材における薄膜トランジスタ及び配線の上層として設けられる部位については、上記した高融点金属を含む膜からなる遮光部材に関する作用効果との対比から推察されるように、遮光性能のみに着目した材料選択が可能であることを意味する。すなわち、本態様によれば、遮光部材全体として、より高い遮光性能を発揮させることが可能となる。なお、その材料としては、例えば、Al等を挙げることができる。
【0034】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記配線は、相交差する走査線及びデータ線を含み、前記遮光部材は、平面的に見て格子状に形成されている。
【0035】
この態様によれば、画像表示領域には、走査線及びデータ線が相交差して格子状に配線されているが、これらは、格子状に形成された遮光部材により、すっぽりと立体的に覆われている。このため、走査線及びデータ線付近を介してこれらに接続された薄膜トランジスタに光が漏れる可能性を低減できる。
【0036】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記基板上に、前記遮光部材により立体的に覆われた空間内に配置されており前記画素電極に接続された蓄積容量を更に備える。
【0037】
この態様によれば、遮光部材により立体的に覆われた空間内に蓄積容量を構築するので、蓄積容量の存在により遮光性能が低下することを防ぎつつ、画素電極に対して蓄積容量を付加することにより、画素電極における電位保持特性を顕著に高められる。
【0038】
本発明の電気光学装置の製造方法は、基板上に画素電極と、該画素電極に電気的に接続された薄膜トランジスタと、該薄膜トランジスタに電気的に接続された配線と、前記薄膜トランジスタ及び前記配線を立体的に覆う遮光部材とを有する電気光学装置の製造方法であって、前記基板上に、前記薄膜トランジスタ及び前記配線を内部に収容するための溝を形成する工程と、前記溝の底面及び側壁に、前記遮光部材のうち前記薄膜トランジスタ及び前記配線を下側及び周囲から覆う第1遮光層を形成する工程と、前記溝の内部に、前記第1遮光層の上層として前記薄膜トランジスタ及び前記配線を形成する工程と、前記薄膜トランジスタ及び前記配線の上層として層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜に対して平坦化処理を実施する工程と、前記溝を上側から覆うように前記層間絶縁膜上に前記第2遮光層を形成する工程とを含み、前記第2遮光層は、前記第1遮光層の上側の端部に接するように形成されている。
また、前記平坦化処理を実施する工程において、前記層間絶縁膜は、前記第1遮光層の上側の端部が現れるまで研磨されて平坦化されている。
また、前記平坦化処理を実施する工程の後に、前記画素電極と隣接する画素電極との間に凸部を形成する工程を含む。
【0039】
本発明の第1の電気光学装置の製造方法によれば、画素電極をこれに接続された薄膜トランジスタによりスイッチング制御することにより、アクティブマトリクス駆動方式による駆動を行える電気光学装置が製造される。そして、遮光部材は、薄膜トランジスタの下側及び周囲から覆う部位を形成する工程及び上側から覆う部位を形成する工程とを経て、該薄膜トランジスタを立体的に覆うものとして形成される。したがって、基板面に対して上方から垂直に、あるいは斜めに進行する入射光及び基板面に対して下方から垂直に、あるいは斜めに入射する戻り光、並びにこれらに基づく内面反射光及び多重反射光等が、薄膜トランジスタのチャネル領域及びチャネル隣接領域に入射するのを、遮光部材により阻止できる。加えて、遮光部材により、各画素の非開口領域を精度よく格子状に規定できる。
【0040】
ここで特に、遮光部材の一部たる、薄膜トランジスタ及び配線を上側から覆う部位は、該薄膜トランジスタ及び配線の上層として形成され、かつ平坦化処理が施された層間絶縁膜上に形成される。ここに、平坦化処理とは、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理やSOG(Spin On Glass)膜形成処理等が考えられる。すなわち、本態様によれば、遮光部材における薄膜トランジスタ及び配線を上側から覆う部位を、平坦面を有するものとして形成することが容易に可能となる。
【0041】
また、これにより、当該部位の上層として設けられる層ないし構造をも平坦な面を有するものとして形成することが可能となる。これにより、例えば、前記層ないし構造として配向膜を設けることを想定すると、該配向膜を設けようとする面は平坦であるがゆえ、その塗布不良等が生じることがなく、また、そのような平坦面に形成された配向膜もまた平坦であるがゆえ、該膜に対するラビング処理を均一に実施すること、等が可能となる。つまり、電気光学装置全体の製造を容易にすることが可能となる。
【0042】
加えて、当該平坦とされた部位の上層として設けられる層ないし構造が有する概ね平坦な面上に、当該部位の下層に存在する薄膜トランジスタや配線による凹凸と無関係な所望形状の凸部を積極的に形成することも容易となる。例えば、縦電界を想定した駆動方式にとって好ましくない、隣接画素電極間で発生する横電界を低減すべく、隣接画素電極間にのみ高精度で凸部を形成することも可能である。
【0048】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第2遮光層に、前記薄膜トランジスタと前記画素電極と電気的に接続するための穴を開孔する工程と、前記画素電極と前記薄膜トランジスタとを前記穴を介して電気的に接続する遮光性の導電膜を形成する。
【0049】
本態様によれば、薄膜トランジスタと画素電極とを接続するための穴が開孔されているから、これらの接続を容易になすことができる。また、この「穴」は、一般に、遮光部材における平坦とされた部位の、ごく一部にのみ形成すればよいから、薄膜トランジスタへの光入射が仮にあったとしても、それを最小限に抑えることが可能となる。さらに、本態様では、薄膜トランジスタと画素電極とを前記穴を介して接続する遮光性の導電膜を形成することから、遮光部材で囲まれた内部空間に対して外部からの光漏れが生じやすい画素電極と薄膜トランジスタとの接続箇所における光漏れを確実に阻止できる。なお、遮光性の導電膜の材質としては、例えば、TiN(チタンナイトライド)、WSi2(タングステンシリサイド)等が適している。
【0050】
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(ただし、その各種態様も含む。)からなるライトバルブと、該ライトバルブに投射光を照射する光源と、前記ライトバルブから出射される投射光を投射する光学系とを備える。
【0051】
本発明の電子機器によれば、光源から投射光がライトバルブに照射され、ライトバルブから出射される投射光は、光学系により、スクリーン等に投射される。この際、当該ライトバルブは、上述した本発明の電気光学装置からなるので、投射光強度を高めても、前述のごとく優れた遮光性能によって光リーク電流の低減された薄膜トランジスタにより画素電極を良好にスイッチング制御できる。この結果、最終的に明るく高コントラストの画像を表示することが可能となる。
【0052】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
【0054】
まず、本発明の実施形態の画素部における構成について、図1から図4を参照して説明する。図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。図3は、図2のA−A´断面図であり、図4はTFTアレイ基板10上に形成された積層体部分に係る図2のB−B´断面図である。
【0055】
図1において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0056】
また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0057】
画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0058】
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。走査線3aに並んで、蓄積容量70の固定電位側容量電極を含むとともに定電位に固定された容量線300が設けられている。
【0059】
図2において、電気光学装置のTFTアレイ基板上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a´により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。
【0060】
走査線3aは、半導体層1aのうち図中右上がりの細かい斜線領域で示したチャネル領域1a´に対向するように配置されており、ゲート電極として機能する。このように、走査線3aとデータ線6aとの交差する箇所にはそれぞれ、チャネル領域1a´に走査線3aの本線部がゲート電極として対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0061】
TFT30は、図3に示すように、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、その構成要素としては、上述したようにゲート電極として機能する走査線3a、例えばポリシリコン膜からなり走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a´、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aにおける低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0062】
なお、TFT30は、好ましくは図3に示したようにLDD構造をもつが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物の打ち込みを行わないオフセット構造をもってよいし、走査線3aの一部からなるゲート電極をマスクとして高濃度で不純物を打ち込み、自己整合的に高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。また、本実施形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極を、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1e間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。このようにデュアルゲート、あるいはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース及びドレイン領域との接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。さらに、TFT30を構成する半導体層1aは非単結晶層でも単結晶層でも構わない。単結晶層の形成には、貼り合わせ法等の公知の方法を用いることができる。半導体層1aを単結晶層とすることで、特に周辺回路の高性能化を図ることができる。
【0063】
一方、図2から図4に示すように、蓄積容量70が、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極としての中継層71と、固定電位側容量電極としての容量線300の一部とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。この蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性を顕著に高めることが可能となる。
【0064】
中継層71は、例えば導電性のポリシリコン膜からなり画素電位側容量電極として機能する。ただし、中継層71は、後に詳述する容量線300と同様に、金属又は合金を含む単一層膜又は多層膜から構成してもよい。中継層71は、画素電位側容量電極としての機能のほか、コンタクトホール83及び85を介して、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能をもつ。
【0065】
このように中継層71を利用すれば、層間距離が例えば2000nm程度と長くても、両者間を一つのコンタクトホールで接続する技術的困難性を回避しつつ、比較的小径の二つ以上の直列なコンタクトホールで両者間を良好に接続することができ、画素開口率を高めることが可能となる。また、コンタクトホール開孔時におけるエッチングの突き抜け防止にも役立つ。
【0066】
ちなみに、これと同様の視点から、データ線6aは、中継層71と同一導電膜から形成されている中継層72を中継することにより、コンタクトホール81及び82を介して半導体層1aのうち高濃度ソース領域1dに接続されている。
【0067】
なお、上述したコンタクトホール85は、図2に示すように、相隣接するTFT30の中間地点に位置するように形成されている。この中間地点とは、すなわち、各TFT30からみて最も離間した位置であることを意味する。また、このコンタクトホール85が開孔されることにより、後述する上側遮光膜401の所定の箇所には、穴401aが形成されることになる。
【0068】
容量線300は、例えば金属又は合金を含む導電膜からなり固定電位側容量電極として機能する。ちなみに、容量線300は、平面的に見て、走査線3aに沿ってストライプ状に延びており、TFT30に重なる箇所が図2中上下に突出している。これにより、走査線3a上の領域及びデータ線6a下の領域を利用して、蓄積容量70の形成領域を増大している。
【0069】
また、容量線300は、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなり、蓄積容量70の固定電位側容量電極としての機能のほか、TFT30の上側において入射光からTFT30を遮光する遮光層としての機能をもつ。ただし、容量線300は、例えば導電性のポリシリコン膜等からなる第1膜と高融点金属を含む金属シリサイド膜等からなる第2膜とが積層された多層構造をもってもよい。
【0070】
また、容量線300は、好ましくは、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されて、固定電位とされる。このような定電位源としては、データ線駆動回路101に供給される正電源や負電源の定電位源でもよいし、対向基板20の対向電極21に供給される定電位でも構わない。
【0071】
誘電体膜75は、例えば、膜厚5〜200nm程度の比較的薄いHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等から構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄いほどよい。
【0072】
さて他方、図2から図4に示すように、図2中で右下がりの粗い斜線領域で示した格子状の領域には、TFTアレイ基板10に溝10CVが掘られており、更に、この溝10CV内には、下側遮光膜11aが設けられている。上述したTFT30等は、図3及び図4からわかるように、この下側遮光膜11a上に形成されている。このような下側遮光膜11aは、容量線300と同様に、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。
【0073】
また、図2中右下がりの粗い斜線領域で示した格子状の領域、すなわち上記溝10CVが掘られている領域には、該領域を蓋で覆うかのようにして、上側遮光膜401が形成されている。このような上側遮光膜401は、上記した下側遮光膜11aと同じく、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等から形成されている。ただ、上側遮光膜401については、上記のほか、低融点金属のAl等も使用することが可能である。
【0074】
さらに、前記溝10CVには、その側壁を覆うようにして、側壁遮光膜402が形成されている。より詳細にいうと、平面的に見て上側遮光膜401の輪郭に沿う幅狭の堀であって、かつ、鉛直方向において上側遮光膜401から下側遮光膜11aに至る堀を埋めるような形で、側壁遮光膜402は存在する。なお、上側遮光膜401及び下側遮光膜11a間には、図2からわかるように、第4、第3及び第2層間絶縁膜44、43及び42、誘電体膜75、第1層間絶縁膜41、下地絶縁膜12が存在するから、側壁遮光膜402は、これら各層間にわたって存在することになる。このような側壁遮光膜402は、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等から形成されている。
【0075】
ただし、これらの下側遮光膜11a、上側遮光膜401及び側壁遮光膜402は、同一の遮光膜から形成されてもよいが、相異なる遮光膜から形成されてもよい。
【0076】
特に、図3及び図4に示すように、本実施形態では、TFT30、走査線3a、データ線6a、蓄積容量70等の画像表示領域におけるTFTアレイ基板10上に形成された配線や素子は、下側遮光膜11a、上側遮光膜401及び側壁遮光膜402により立体的に遮光されている。
【0077】
また、上側遮光膜401においては、その面が平坦とされている。本実施形態においては、例えば、CMP処理等その他の平坦化処理が施された第3層間絶縁膜43上に、上側遮光膜401が形成されていることにより、該遮光膜401の平坦化が自然に図られている。
【0078】
ちなみに、これら下側遮光膜11a、上側遮光膜401及び側壁遮光膜402については、その電位変動がTFT30に対して悪影響を及ぼすことを避けるため、上述した容量線300と同様に、画像表示領域からその周囲に延設して定電位源に接続するとよい。
【0079】
さらに、図3に示すように、画素電極9aと中継層71とを接続するコンタクトホール85には、導電性の遮光膜403が配置されており、下側遮光膜11a、上側遮光膜401及び側壁遮光膜402によって規定される空間内に、コンタクトホール85の付近から光が進入しないように遮光を行う。この遮光膜403は、画素電極9aとの間で電気的な接続が図られる部材であるから、その材質としては、遮光性能が優れていることに加えて、電位障壁等に係る不都合を発生させないようなもの、具体的には例えば、TiN(チタンナイトライド)、WSi2(タングステンシリサイド)等が適している。
【0080】
図2から図4においては、上記のほか、TFT30の下側に、下地絶縁膜12が設けられている。下地絶縁膜12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能のほか、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用のTFT30の特性変化を防止する機能を有する。
【0081】
また、走査線3a上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール82(該ホール82は、中継層72及びコンタクトホール81を開始データ線6aに通じる。)及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール83がそれぞれ開孔された第1層間絶縁膜41が形成されている。
【0082】
第1層間絶縁膜41上には、中継層71、中継層72及び容量線300が形成されており、これらの上には中継層72へ通じるコンタクトホール81及び中継層71へ通じるコンタクトホール85がそれぞれ開孔された第2層間絶縁膜42が形成されている。
【0083】
なお、本実施形態では、第1層間絶縁膜41に対しては、約1000℃の焼成を行うことにより、半導体層1aや走査線3aを構成するポリシリコン膜に注入したイオンの活性化を図ってもよい。他方、第2層間絶縁膜42に対しては、このような焼成を行わないことにより、容量線300の界面付近に生じるストレスの緩和を図るようにしてもよい。
【0084】
第2層間絶縁膜42上には、データ線6aが形成されており、これらの上には中継層71へ通じるコンタクトホール85が形成された第3層間絶縁膜43が形成されている。すでに述べたように、この第3層間絶縁膜43に対しては、CMP処理等が施され、その表面が平坦化されている。そして、これにより、その上層として設けられた上側遮光膜401をも平坦面を有するものとして形成することを容易にする。
【0085】
そして、このような第3層間絶縁膜43上には、既述のコンタクトホール85が形成された第4層間絶縁膜44が形成され、該第4層間絶縁膜44上には、既述の画素電極9a、及び後述の配向膜16が形成されている。
【0086】
図2及び図3において、電気光学装置は、以上のような構造をその上層として有する、透明なTFTアレイ基板10と、これに対向配置される対向基板20とを備えている。ちなみに、TFTアレイ基板10は、例えば、石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。
【0087】
図3に示すように、TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜等の透明導電性膜からなる。また、配向膜16は、例えばポリイミド膜等の有機膜からなる。
【0088】
他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている、対向電極21は、例えば、ITO膜等の透明導電性薄膜からなる。また、配向膜22は、例えばポリイミド膜等の有機膜からなる。
【0089】
このように構成された、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、後述のシール材により囲まれた空間に電気光学物質の一例たる液晶が封入され、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。液晶層50は、例えば一種又は複数種のネマテッィク液晶を混合した液晶からなる。シール材は、TFTアレイ基板10及び対向基板20をそれらの周辺で貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバあるいはガラスビーズ等のギャップ材が混入されている。
【0090】
以上説明したように、本実施形態では、TFT30、走査線3a、データ線6a、蓄積容量70等の画像表示領域におけるTFTアレイ基板10上に形成された配線や素子は、下側遮光膜11a、上側遮光膜401及び側壁遮光膜402により立体的に遮光されている。このため、基板面に対して上方から垂直に、あるいは斜めに進行する入射光及び基板面に対して下方から垂直に、あるいは斜めに入射する戻り光、並びにこれらに基づく内面反射光及び多重反射光等が、TFT30のチャネル領域1a´、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに入射するのを、下側遮光膜11a、上側遮光膜401及び側壁遮光膜402により阻止できる。加えて、図2に示したように、これらの遮光膜により、各画素の非開口領域を制度よく格子状に規定できる。
【0091】
さらに、本実施形態では、コンタクトホール85には、遮光膜403が形成されているので、外部からの光漏れが生じやすいコンタクトホール85における光漏れを確実に阻止できる。加えて、コンタクトホール85は、図2に示したように、横方向に相隣接するTFT30間の中央に位置するので、コンタクトホール85を介して若干の光漏れが生じたとしても、この光漏れの箇所は、各TFT30から比較的離間しているため、漏れた光がTFT30にまで到達することが殆どない。
【0092】
これらの結果、本形態によれば、耐光性を高めることが可能となり、強力な入射光や戻り光が入射するような過酷な条件下にあっても、光リーク電流の低減されたTFT30により画素電極9aを良好にスイッチング制御でき、最終的には明るく高コントラストの画像を表示することが可能となる。
【0093】
また、本実施形態では、上側遮光膜401において、その面が平坦とされているから、該上側遮光膜401上に、何らかの層ないし構造を形成する場合、当該層ないし構造が形成される面、あるいは該層ないし構造自体が有する面についても、これを平坦にすることが可能となる。すなわち、当該層ないし構造が、例えば、上述の配向膜16であると考えれば、配向膜16が形成される面、あるいは配向膜16自体の有する面は、平坦となる。したがって、一般に、段差が存在することにより、その発生が懸念される配向膜16の塗布不良は、本実施形態においては殆ど発生しない。また、配向膜16に関して必要となるラビング処理は、該配向膜16自体の有する面が平坦であることから、これを均一に実施することができる。
【0094】
なお、本実施形態においては、対向基板20において、コンタクトホール85に対向する位置に遮光層を設けてもよい。このような構成にすれば、コンタクトホール85付近からの光の進入をより低減できる。
【0095】
(製造方法)
次に、上述した実施形態の電気光学装置の製造プロセスについて、図5から図7を参照して説明する。ここに、図5乃至図7は、製造プロセスの各工程における電気光学装置の積層構造を、図3の断面図のうち半導体層1a付近に係る部分に関して、順を追って示す工程図である。なお、図5乃至図7において、工程(1)から工程(9)として示したそれぞれの図の右方は、破断線によってその図示が一部省略されている。
【0096】
まず、図5の工程(1)に示すように、石英基板、ハードガラス、シリコン基板等のTFTアレイ基板10を用意する。ここで、好ましくはN2(窒素)等の不活性ガス雰囲気で約900〜1300℃の高温でアニール処理し、後に実施される高温プロセスにおけるTFTアレイ基板10に生じる歪が少なくなるように前処理しておく。
【0097】
次に、このように処理されたTFTアレイ基板10に対して、図2で示したような格子状の溝10CVを形成する。この溝10CVの形成は、例えば、フォトリソグラフィ及びエッチングによって行うことができる。
【0098】
なお、この溝10CVの深さは比較的深く、例えば、概ね5000nm程度とするとよい。これは、本実施形態において、該溝10CV内に、以下述べるようなTFT30や蓄積容量70等を形成しなければならない関係による。ただ、このことからもわかるとおり、溝10CVの深さの具体的な値は、そのようなTFT30等や各層の厚さを実際上どうするかによって決まり、本質的に設計的事項に属する事柄である。
【0099】
続いて、TFTアレイ基板10の全面に、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の金属や金属シリサイド等の金属合金膜を、スパッタリングにより、100〜500nm程度の膜厚、好ましくは200nmの膜厚の遮光膜を形成する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、溝10CVの底面及び側壁に対して、前記遮光膜が残存するように下側遮光膜11a及び側壁遮光膜402を形成する。すなわち、本実施形態においては、下側遮光膜11a及び側壁遮光膜402は、一体的に、かつ同時に形成されることになる。
【0100】
これら下側遮光膜11a及び側壁遮光膜402は、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等によって形成するのが好ましい。ここで、これら遮光膜401及び402の材質として、「高融点」の材料を選択しておけば、例えば、後述する半導体層1aの形成におけるアニール処理等を高温で実施しても何ら問題が発生しない。すなわち、下側遮光膜11a及び側壁遮光膜402は、そのような高温処理に耐えることが可能となる。
【0101】
次に、工程(2)では、下側遮光膜11a上に、例えば、常圧又は減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によりTEOS(テトラ・エチル・オルソ・シリケート)ガス、TEB(テトラ・エチル・ボートレート)ガス、TMOP(テトラ・メチル・オキシ・フォスレート)ガス等を用いて、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる下地絶縁膜12を形成する。この下地絶縁膜12の膜厚は、例えば約500〜2000nm程度とする。
【0102】
続いて、下地絶縁膜12上に、約450〜550℃、好ましくは約500℃の比較的低温環境中で、流量約400〜600cc/minのモノシランガス、ジシランガス等を用いた減圧CVD(例えば、圧力約20〜40PaのCVD)により、アモルファスシリコン膜を形成する。その後、窒素雰囲気中で、約600〜700℃にて約1〜10時間、好ましくは4〜6時間のアニール処理を施すことにより、p−Si(ポリシリコン)膜を約50〜200nmの厚さ、好ましくは約100nmの厚さとなるまで固相成長させる。固相成長させる方法としては、RTAを使ったアニール処理でもよいし、エキシマレーザ等を用いたレーザアニールでもよい。この際、画素スイッチング用のTFT30を、nチャネル型とするかpチャネル型とするかに応じて、V族元素やIII族元素のドーパントを僅かにイオン注入等によりドープしてもよい。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、所定パターンを有する半導体層1aを形成する。
【0103】
続いて、TFT30を構成する半導体層1aを約900〜1300℃の温度、好ましくは約1000℃の温度により熱酸化して下層ゲート絶縁膜を形成し、あるいはこれに続けて減圧CVD法等により上層ゲート絶縁膜を形成することにより、一層又は多層の高温酸化シリコン膜(HTO膜)や窒化シリコン膜からなる(ゲート絶縁膜を含む)絶縁膜2を形成する。この結果、半導体層1aは、約30〜150nmの厚さ、好ましくは約35〜50nmの厚さとなり、絶縁膜2の厚さは、約20〜150nmの厚さ、好ましくは約30〜100nmの厚さとなる。
【0104】
続いて、画素スイッチング用のTFT30のスレッシュホールド電圧Vthを制御するために、半導体層1aのうちnチャネル領域あるいはpチャネル領域に、ボロン等のドーパントを予め設定された所定量だけイオン注入等によりドープする。
【0105】
次に、工程(3)では、減圧CVD法等によりポリシリコン膜を堆積し、更にリン(P)を熱拡散して、このポリシリコン膜を導電化する。この熱拡散に代えて、Pイオンをポリシリコン膜の成膜と同時に導入したドープドシリコン膜を用いてもよい。このポリシリコン膜の膜厚は、約100〜500nmの厚さ、好ましくは約350nm程度である。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、TFT30のゲート電極部を含めて所定のパターンの走査線3aを形成する。
【0106】
次に、前記半導体層1aについて、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cを形成するため、あるいは高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを形成する。
【0107】
ここでは、TFT30をLDD構造をもつnチャネル型のTFTとする場合を説明すると、具体的にまず、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cを形成するために、走査線3a(ゲート電極)をマスクとして、P等のV族元素のドーパンを低濃度で(例えば、Pイオンを1〜3×1013cm2のドーズ量にて)ドープする。これにより走査線3a下の半導体層1aはチャネル領域1a´となる。このとき走査線3aがマスクの役割を果たすことによって、低濃度ソース領域13b及び低濃度ドレイン領域13cは自己整合的に形成されることになる。次に、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを形成するために、走査線3aよりも幅の広い平面パターンを有するレジスト層を走査線3a上に形成する。その後、P等のV続元素のドーパントを高濃度で(例えば、Pイオンを1〜3×1015/cm2のドーズ量にて)ドープする。
【0108】
なお、このように低濃度と高濃度の2段階に分けて、ドープを行わなくてもよい。例えば、低濃度のドープを行わずに、オフセット構造のTFTとしてもよく、走査線3a(ゲート電極)をマスクとして、Pイオン・Bイオン等を用いたイオン注入技術によりセルフアライン型のTFTとしてもよい。この不純物のドープにより、走査線3aは更に低抵抗化される。
【0109】
次に、図6の工程(4)では、走査線3a上に、例えば、TEOSガス、TEBガス、TMOPガス等を用いた常圧又は減圧CVD法等により、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜からなる第1層間絶縁膜41を形成する。この第1層間絶縁膜41の膜厚は、例えば約500〜2000nm程度とする。ここで好ましくは、800℃程度の高温でアニール処理し、第1層間絶縁膜41の膜質を向上させておく。
【0110】
続いて、第1層間絶縁膜41に対する反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより、コンタクトホール82及び83を同時開孔する。
【0111】
続いて、第1層間絶縁膜41上に、Pt等の金属膜を、スパッタリングにより、100〜500nm程度の膜厚に形成する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、所定パターンをもつ中継層71及び72を形成する。
【0112】
続いて、プラズマCVD法等により、TaOx膜等からなる誘電体膜75を、中継層71上に形成する。この誘電体膜75は、絶縁膜2の場合と同様に、単層膜又は多層膜のいずれから構成してもよく、一般にTFTゲート絶縁膜を形成するのに用いられる各種の公知技術により形成可能である。そして、誘電体膜75を薄くする程、蓄積容量70は大きくなるので、結局、膜破れなどの欠陥が生じないことを条件に、膜厚50nm以下のごく薄い絶縁膜となるように形成すると有利である。
【0113】
続いて、誘電体膜75上に、Al等の金属膜を、スパッタリングにより、約100〜500nm程度の膜厚に形成する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、所定パターンをもつ容量線300を形成する。これにより、該容量線300と前述の中継層71及び誘電体膜75とによって、蓄積容量70が完成する。
【0114】
次に、工程(5)では、例えば、TEOSガス等を用いた常圧又は減圧CVD法により、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第2層間絶縁膜42を形成する。この第2層間絶縁膜42の膜厚は、例えば約500〜1500nm程度とする。
【0115】
続いて、第2層間絶縁膜42に対する反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより、コンタクトホール81を開孔する。
【0116】
続いて、第2層間絶縁膜42上の全面に、スパッタリング等により、遮光性のAl等の低抵抗金属や金属シリサイド等を金属膜として、約100〜500nm程度の厚さ、好ましくは約300nmに堆積する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、所定パターンをもつデータ線6aを形成する。
【0117】
次に、工程(6)では、データ線6a上を覆うように、例えば、TEOSガス等を用いた常圧又は減圧CVD法により、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第3層間絶縁膜43を形成する。この第3層間絶縁膜43の膜厚は、例えば約500〜1500nm程度とする。
【0118】
本実施形態においては、次工程たる図7の工程(7)に示すように、この第3層間絶縁膜43に対して平坦化処理を実施する。ここに、平坦化処理とは、例えば、CMP処理、又はSOG膜形成処理等を挙げることができる。前者のCMP処理とは、基板と研磨布(パッド)の両者を回転等させながら、それぞれの表面同士を当接させるとともに、該当接部位に研磨液(スラリー)を供給することによって、基板表面を、機械的作用と化学作用の兼ね合いにより研磨し、当該表面を平坦化する技術である。また、後者のSOG膜形成処理とは、基板を回転させながら液体状の適当な有機材等を塗布することにより、液体のもつ水平面を現出させ、これを固化させることで平坦化面を得ることの可能な技術である。
【0119】
いずれにしても、このような平坦化処理を実施することにより、第3層間絶縁膜43の上面は平坦なものとして現出される。
【0120】
なお、より好ましくは、CMP処理を実施するとよく、この場合、図7の工程(7)に示すように、研磨表面に、先に成膜した側壁遮光膜402が現れるまで研磨を実施すると好ましい。この場合においては、図7の工程(7)に示すように、第3層間絶縁膜43を初めとして、下地絶縁膜12、第1及び第2層間絶縁膜41及び42をも研磨することになる。したがって、これら絶縁膜の材質としては、CMP処理に適した材料を選択するのが好ましい。具体的には、例えば、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等が挙げられる。
【0121】
次に、工程(8)では、上述したように平坦化処理が施された第3層間絶縁膜43上に、上側遮光膜401を形成する。この上側遮光膜401は、具体的には、第3層間絶縁膜43上の全面に対して、スパッタリング法等を用いて遮光膜を形成した後、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、所定パターンを有するようにパターニングする、等の手段により形成することが可能である。ここで所定パターンとは、上述で、溝10CVが格子状に形成されていた(すなわち、下側遮光膜401が格子状に形成されていた)ことから、これに合致するような格子状に形成することが好ましい。
【0122】
また、上側遮光膜401の材質は、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等から選択するとよい。ただ、上側遮光膜401については、上記のほか、低融点金属のAl等も使用することが可能である。というのも、上述のような上側遮光膜401の形成以降は、一般に、高温環境下でのプロセスが実施されないからである。したがって、上側遮光膜401に関しては、高温環境下における耐性等についての懸念を抱くことなく、単に、遮光性能のみに視点を置いた材料選択を実施しても大きな問題はない。
【0123】
この上側遮光膜401の形成により、図7の工程(8)として示す図からも明らかな通り、TFT30及び蓄積容量70等は、下側遮光膜11a、側壁遮光膜402及び上側遮光膜401の三者により、立体的に遮光されることになる。また、上側遮光膜401は平坦化処理の施された第3層間絶縁膜43上に形成されることから、該上側遮光膜401もまた平坦面を有するものとなる。
【0124】
以上までの工程を終えたら、第3層間絶縁膜43に対する反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより、図5から図7において図示しないコンタクトホール85(図1から図3参照)を開孔する。このコンタクトホール85の開孔に伴い、上側遮光膜401の所定の箇所には穴401aが形成される。また、その開孔位置は、相隣接するTFT30間の中間点となるような位置を選択するとよい。なぜなら、該位置にコンタクトホール85を開孔することによれば、光の進入が生じやすいと考えられる該ホール85と、各TFT30とを最も離間させることが可能となるからである。
【0125】
そして次に、本実施形態においては、このコンタクトホール85の内壁に対して、導電性の遮光膜403を形成する。この形成は、例えば、第3層間絶縁膜43上の全面に対してCVD法等によって成膜した後、フォトリソグラフィ及びエッチングを実施することによって行うことができる。また、この遮光膜403は、後述する画素電極9aとの間で電気的な接続が図られる部材であるから、その材質としては、遮光性能が優れていることに加えて、電位障壁等に係る不都合を発生させないようなもの、具体的には例えば、TiN(チタンナイトライド)、WSi2(タングステンシリサイド)等が適している。
【0126】
この遮光膜403の存在により、最も光の進入が考えられるコンタクトホール85からTFT30への光入射を阻止することが可能となる。
【0127】
続いて、工程(9)では、第3層間絶縁膜43上に、第4層間絶縁膜44を形成する。そして次に、この第4層間絶縁膜44上に、スパッタ処理等により、ITO膜等の透明導電性膜を、約50〜200nmの厚さに堆積する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、画素電極9aを形成する。なお、当該電気光学装置を、反射型として用いる場合には、Al等の反射率の高い不透明な材料によって画素電極9aを形成してもよい。
【0128】
続いて、画素電極9aの上に、ポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角をもつように、かつ所定方向でラビング処理を施すこと等により、配向膜16が形成される。
【0129】
本実施形態においては、図7の工程(9)として示す図からも明らかな通り、上述の画素電極9a及び配向膜16は、極めて平坦に形成することが可能となる。これは、その下層に存在する上側遮光膜401が平坦であるからに他ならない。したがって、上述の配向膜16の塗布不良等が発生することがなく、また、該配向膜16に対する均一なラビング処理等を実施することができる。
【0130】
他方、対向基板20については、ガラス基板等がまず用意され、額縁としての遮光膜が、例えば金属クロムをスパッタした後、フォトリソグラフィ及びエッチングを経て形成される。なお、これらの遮光膜は、導電性である必要はなく、Cr、Ni、Al等の金属材料のほか、カーボンやTiをフォトレジストに分散した樹脂ブラック等の材料から形成してもよい。ただし、本実施形態においては、上述したように、薄膜トランジスタが下側遮光膜11a、上側遮光膜401及び側壁遮光膜402により立体的に遮光されているので、その遮光性能は一般の電気光学装置に比べて優れている。そして、対向基板20側に設けられる遮光膜についても、薄膜トランジスタへの光入射を遮る作用が要求されていることを鑑みると、該遮光膜については、その設置を省略するか、あるいは簡略化することが可能である。
【0131】
その後、対向基板20の全面にスパッタ処理等により、ITO等の透明導電性膜を、約50〜200nmの厚さに堆積することにより、対向電極21を形成する。さらに、対向電極21の全面にポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角をもつように、かつ所定方向でラビング処理を施すこと等により、配向膜22が形成される。
【0132】
最後に、上述のように、各層が形成されたTFTアレイ基板10と対向基板20とは、配向膜16及び22が対面するようにシール材により貼り合わされ、真空吸引等により、両基板間の空間に、例えば複数種のネマテッィク液晶を混合してなる液晶が吸引されて、所定層厚の液晶層50が形成される。
【0133】
以上説明した製造プロセスにより、前述した実施形態の電気光学装置を製造できる。
【0134】
なお、上記においては、TFT30だけでなく蓄積容量70も、下側遮光膜11a、側壁遮光膜402及び上側遮光膜401によって規定される空間内に作りこまれていたが、場合によって、その必要はない。すなわち、TFT30のみを形成する場合であってもよく、本発明は、そのような形態も当然にその範囲内に収めるものである。
【0135】
また、上記においては、第3層間絶縁膜43に対して平坦化処理を施した後、該膜43上に上側遮光膜401を形成することによって、上側遮光膜401の平坦化を実現していたが、本発明は、このような形態のみに限定されない。例えば、図7の工程(7)において、第3層間絶縁膜43に対して平坦化処理を実施するのに代えて、当該処理が施されていない第3層間絶縁膜43に対して、まず上側遮光膜を所定の厚さだけ成膜し、この上側遮光膜401に対して平坦化処理を実施する、等の方法も考えられる。この場合、そのような平坦化処理が完了した状態で、図5から図7に示す図中左右両側の側壁遮光膜402間に、当該平坦化処理済の上側遮光膜が存在していなければならないから、前記所定の厚さ、あるいはCMPによる研磨の程度は、そのような点を勘案して決定することができる。また、このような場合、当該上側遮光膜及び側壁遮光膜402との間には、各種層間絶縁膜が残存することになるから、遮光能のない間隙が生ずることにはなるが、そのような形態も、本発明にいう「立体的に覆う」の概念の範囲内に入ることはすでに述べた。
【0136】
さらに、本発明は、図5の工程(3)として示す状態以降、すなわちTFT30を形成した後であれば、上側遮光膜401を形成するタイミングを基本的にどこにとってもよい。例えば、第1層間絶縁膜41上に上側遮光膜を形成すること等も考えうる。
【0137】
加えて、上記では、下側遮光膜11a及び側壁遮光膜402が一体的に、かつ同時に形成される製造方法について説明したが、本発明は、このような形態にも限定されない。例えば、まず、下側遮光膜11aのみを形成した後、TFT、各種層間絶縁膜等を形成し、その後に、コンタクトホールを形成すると同様な要領で、平面的に見て前記TFT周囲を巡る堀を形成した上、該堀に対して、遮光膜の材質を例えばCVD法等によって「埋め込む」ような製造方法等もあり得る。この場合、側壁遮光膜402及び上側遮光膜401を、一体的に、かつ同時に形成するようにすると、製造工程を一段階省略することが可能であるから有利となる。
【0138】
また、本発明において、上記のTFTアレイ基板10における溝10CVの形成は必須ではない。すなわち、下側遮光膜11aを基板上に形成した後、上述と略同様な工程を実施するような形態であってもよい。ただし、その場合は、適当な段階において、側壁遮光膜402の形成工程を独立に挿入することが必要になると考えられる。
【0139】
要するに、本発明においては、本発明にいう「遮光部材」を構成する、本実施形態の下側遮光膜11a、側壁遮光膜402及び上側遮光膜401が、TFT30を立体的に遮光することの可能な配置をとるのであれば、どのような構造であっても、またどのような製造方法であってもよく、それらのいずれについても、本発明の範囲内にあることに変わりはない。
【0140】
(電気光学装置の全体構成)
以上のように構成された本実施形態における電気光学装置の全体構成を図8及び図9を参照して説明する。なお、図8は、TFTアレイ基板10その上に形成された各構成要素とともに対向基板20の側からみた平面図であり、図9は図8のH−H´断面図である。
【0141】
図8において、TFTアレイ基板10の上には、シール材52がその縁に沿って設けられており、その内側に並行して、画像表示領域10aの周辺を規定する額縁としての遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。ただし、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内臓遮光膜として設けられていてもよい。
【0142】
シール材52の外側の領域には、データ線6aに画像信号を所定のタイミングで供給することにより該データ線6aを駆動するデータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線3aに走査信号を所定のタイミングで供給することにより、走査線3aを駆動する走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する二辺に沿って設けられている。
【0143】
走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならないのならば、走査線駆動回路104は片側だけでもよいことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域10aの辺に沿って両側に配列してもよい。
【0144】
さらに、TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナ部の少なくとも一箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的に導通をとるための導通材106が設けられている。そして、図9に示すように、図8に示したシール材52とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材52によりTFTアレイ基板10に固着されている。
【0145】
なお、TFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、複数のデータ線6aに画像信号を所定のタイミングで印加するサンプリング回路、複数のデータ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0146】
(電子機器の実施形態)
次に、以上詳細に説明した電気光学装置をライトバルブとして用いた電子機器の一例たる投射型カラー表示装置の実施形態について、図10及び図11を参照して説明する。
【0147】
まず、本実施形態の投射型カラー表示装置の回路構成について、図10のブック図を参照して説明する。なお、図10は、投射型カラー表示装置における3枚のライトバルブのうちの1枚に係る回路構成を示したものである。これら3枚のライトバルブは、基本的にどれも同じ構成を持つので、ここでは1枚の回路構成に係る部分について説明を加えるものである。ただし、厳密には、3枚のライトバルブでは、入力信号がそれぞれ異なり(すなわち、R用、G用、B用の信号でそれぞれ駆動され)、更にG用のライトバルブに係る回路構成では、R用及びB用の場合と比べて、画像を反転して表示するように画像信号の順番を各フィールド又はフレーム内で逆転させるか、又は水平若しくは垂直走査方向を逆転させる点も異なる。
【0148】
図10において、投射型カラー表示装置は、表示情報出力源1000、表示情報処理回路1002、駆動回路1004、液晶装置100、クロック発生回路1008及び電源回路1010を備えて構成されている。表示情報出力源1000は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、光ディスク装置等のメモリ、画像信号を同調して出力する同調回路等を含み、クロック発生回路1008からのクロック信号に基づいて、所定フォーマットの画像信号等の表示情報を表示情報処理回路1002に出力する。表示情報処理回路1002は、増幅・極性反転回路、相展開回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、クランプ回路等の周知の各種処理回路を含んで構成されており、クロック信号に基づいて入力された表示情報からデジタル信号を順次生成し、クロック信号CLKとともに駆動回路1004に出力する。駆動回路1004は、液晶装置100を駆動する。電源回路1010は、上述の各回路に所定電源を供給する。なお、液晶装置100を構成するTFTアレイ基板の上に、駆動回路1004を搭載してもよく、これに加えて表示情報処理回路1002を搭載してもよい。
【0149】
次に、図11を参照して、本実施形態の投射型カラー表示装置の全体構成(特に、光学的な構成)について説明する。
【0150】
図11において、本実施形態における投射型カラー表示装置の一例たる液晶プロジェクタ1100は、駆動回路1004がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置100を含む液晶モジュールを3個用意し、それぞれRGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロックミラー1108によって、RGBの三原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bにそれぞれ導かれる。この際特に、B光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bによりそれぞれ変調された三原色に対応する光成分は、ダイクロックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
【0151】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及び電子機器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の電気光学装置における画像表示領域を構成するマトリクス状の複数の画素に設けられた各種素子、配線等の等価回路である。
【図2】 本発明の実施形態の電気光学装置のおけるデータ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。
【図3】 図2のA−A´断面図である。
【図4】 図2のB−B´断面図である。
【図5】 本発明の実施形態に係る製造プロセスの各工程における電気光学装置の積層構造を、半導体層付近に係る部分で順を追って示す工程図(その1)である。
【図6】 本発明の実施形態に係る製造プロセスの各工程における電気光学装置の積層構造を、半導体層付近に係る部分で順を追って示す工程図(その2)である。
【図7】 本発明の実施形態に係る製造プロセスの各工程における電気光学装置の積層構造を、半導体層付近に係る部分で順を追って示す工程図(その3)である。
【図8】 本発明の実施形態におけるTFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素とともに対向基板の側からみた平面図である。
【図9】 図8のH−H´断面図である。
【図10】 本発明の電子機器の実施形態である投射型カラー表示装置におけるライトバルブに係る回路構成を示したブロック図である。
【図11】 本発明の電子機器の実施形態である投射型カラー表示装置の一例たるカラー液晶プロジェクタを示す図式的断面図である。
【符号の説明】
1a…半導体層
1a´…チャネル領域
1b…低濃度ソース領域
1c…低濃度ドレイン領域
1d…高濃度ソース領域
1e…高濃度ドレイン領域
2…絶縁膜
3a…走査線
6a…データ線
9a…画素電極
10…TFTアレイ基板
11a…下側遮光膜
16…配向膜
20…対向基板
21…対向電極
22…配向膜
23…遮光膜
30…TFT
50…液晶層
52…シール材
53…額縁
70…蓄積容量
81、82、83、85…コンタクトホール
101…データ線駆動回路
102…外部回路接続端子
104…走査線駆動回路
105…配線
106…導通材
300…容量線
401…上側遮光膜
402…側壁遮光膜
Claims (15)
- 基板上に、
画素電極と、
該画素電極に電気的に接続された薄膜トランジスタと、
該薄膜トランジスタに電気的に接続された配線と、
前記薄膜トランジスタ及び前記配線の上層として設けられ、かつ、平坦化処理が施された層間絶縁膜と、
前記薄膜トランジスタ及び前記配線を立体的に覆う遮光部材とを備え、
前記遮光部材は、前記基板上に掘られかつ前記薄膜トランジスタ及び前記配線が内部に収容された溝の底面及び側壁に形成された第1遮光層と、該溝を上側から覆うように前記層間絶縁膜上に形成された第2遮光層とを有し、
前記第2遮光層は、前記第1遮光層の上側の端部に接するように形成されていることを特徴とする電気光学装置。 - 前記層間絶縁膜は、前記第1遮光層の上側の端部が現れるまで研磨されて平坦化されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
- 前記画素電極と隣接する画素電極との間において、前記層間絶縁膜上に凸部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
- 前記第2遮光層には、前記薄膜トランジスタと前記画素電極とを電気的に接続するための穴が開孔されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記画素電極と前記薄膜トランジスタとは、遮光性の導電膜を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記画素電極と前記薄膜トランジスタとの電気的な接続箇所は、平面的に見て相隣接する薄膜トランジスタ間の中央に位置することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記遮光部材は、高融点金属を含む膜からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記第2遮光層は、低融点金属を含む膜からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記配線は、相交差する走査線及びデータ線を含み、前記遮光部材は、平面的に見て格子状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記基板上に、前記遮光部材により立体的に覆われた空間内に配置されており前記画素電極に接続された蓄積容量を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 基板上に画素電極と、該画素電極に電気的に接続された薄膜トランジスタと、該薄膜トランジスタに電気的に接続された配線と、前記薄膜トランジスタ及び前記配線を立体的に覆う遮光部材とを有する電気光学装置の製造方法であって、
前記基板上に、前記薄膜トランジスタ及び前記配線を内部に収容するための溝を形成する工程と、
前記溝の底面及び側壁に、前記遮光部材のうち前記薄膜トランジスタ及び前記配線を下側及び周囲から覆う第1遮光層を形成する工程と、
前記溝の内部に、前記第1遮光層の上層として前記薄膜トランジスタ及び前記配線を形成する工程と、
前記薄膜トランジスタ及び前記配線の上層として層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に対して平坦化処理を実施する工程と、
前記溝を上側から覆うように前記層間絶縁膜上に前記第2遮光層を形成する工程とを含み、
前記第2遮光層は、前記第1遮光層の上側の端部に接するように形成されていることを特徴とする電気光学装置の製造方法。 - 前記平坦化処理を実施する工程において、前記層間絶縁膜は、前記第1遮光層の上側の端部が現れるまで研磨されて平坦化されていることを特徴とする請求項11に記載の電気光学装置の製造方法。
- 前記平坦化処理を実施する工程の後に、前記画素電極と隣接する画素電極との間に凸部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の電気光学装置の製造方法。
- 前記第2遮光層に、前記薄膜トランジスタと前記画素電極と電気的に接続するための穴を開孔する工程と、
前記画素電極と前記薄膜トランジスタとを前記穴を介して電気的に接続する遮光性の導電膜を形成することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。 - 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電気光学装置からなるライトバルブと、
該ライトバルブに投射光を照射する光源と、
前記ライトバルブから出射される投射光を投射する光学系と
を備えたことを特徴とする電子機器。
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