JP3911096B2 - パネル型スピ―カ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パネル型スピーカに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本出願人の先願に係わる特願平9ー59889号には、パネル型スピーカが開示されている。このパネル型スピーカは、磁気回路とボイスコイルとから構成されるエキサイターと、このエキサイターによって励振される振動板とを備えている。このパネル型スピーカは、従来のスピーカのように振動板が剛体として前後に並進運動を行うのではなく、振動板が撓み振動を行う。このことから、このパネル型スピーカは、DM( Distributed Mode ) 方式のスピーカ、あるいは、振動モード方式の平面スピーカとも称されている。
【0003】
本出願人の先願に係わる特願平10ー150641号には、振動板の中にエキサイターを埋め込んで固定した両面型のパネル型スピーカが開示されている。同じく、本出願人の先願に係わる特願平10ー150642号には、振動板を立て看板などの表示用パネルと兼用したパネル型スピーカが開示されている。
【0004】
上記パネル型スピーカは、その矩形状のA5やA4などの規格化された寸法の振動板の周辺部分を枠体に固定し、この振動板に名画や、風景や人物などの絵画や写真を印刷した装飾用シートを貼着した状態での市販が予定されている。顧客は上記枠体に固定された振動板を壁に掛けたり、吊り下げたり装飾品兼用のスピーカとして利用できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の装飾品兼用のパネルスピーカは、装飾用シートが振動板に貼付されることになるので、顧客が長時間の使用によって装飾用シートの絵柄に飽きた場合でも、これを異なる絵柄の装飾用シートに交換することができないという問題がある。また、振動板と装飾用シートとの組合せが予め固定されているので、顧客の好みの寸法の振動板と好みの絵柄の装飾用シートとが組合せられた商品が品切れになる場合があるという問題もある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するための本発明のパネル型スピーカは、磁気回路とボイスコイルとを含むエキサイターと、このエキサイターによって駆動される平板状の振動板とを備えた振動モード(DM)方式のパネル型スピーカである。そして、このパネル型スピーカによれば、ボイスコイルが巻かれたボビンによって前後に直接駆動される端面を有する特殊な形状のサブパネルを利用することによってエキサイターが振動板の内部に埋め込まれると共に、この振動板の表裏両面に装飾用シートを着脱自在に貼着するための接着剤層が形成されている。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施の形態によれば、振動板の表面に粗面が形成されている。
【0008】
【実施例】
図1は本発明の一実施例のパネル型スピーカの構成を示す図であり、(A)は全体の正面図、(B)は周辺部分を拡大して示す部分拡大断面図である。このパネル型スピーカは、正面図(A)に示すように、エキサイター10と、このエキサイター10が駆動部分に埋め込まれた矩形状の振動板20と、この振動板20の周辺部分を固定する枠体30と、振動板20の表面に形成された接着剤層40と、枠体30を吊り下げる吊り下げ金具50とを備えている。
【0009】
部分拡大断面図(B)を参照すると、振動板20の表面に形成された接着剤層40は、紙を素材とする芯材層41と、この芯材層41の裏面と表面に形成された接着剤層42、43とから構成されている。裏面側の接着剤層42は接着強度が強く、芯材層41を振動板20上に強固に固定する。これに対して、表面側の接着剤層43は接着強度が弱く、装飾用シート60がこの接着剤層43に着脱自在に貼着される。表面側の接着剤層43としては、例えば、住友スリーエム社から市販されているスプレーのり55などが使用される。
【0010】
接着剤層40は、その表面側の接着剤層43をプラスチックなどを素材とする保護用フィルムで覆った状態で振動板20の表面に予め形成しておき、顧客が装飾用シート60を貼着する際に、保護用フィルムを剥離させる構成とすることができる。あるいは、表面側と裏面側の接着剤層43と42のそれぞれをプラスチックなどの保護用フィルムで覆った状態で接着剤層40を振動板20から分離した状態にしておき、顧客が装飾用シート60を貼着する際に、この接着剤層40を振動板20上に取付ける構成とすることもできる。
【0011】
振動板20の音響設計に際しては、後で表面に形成される接着剤層40と、この接着剤層40を介してこの振動板20に貼着される装飾用シート60を負荷の一部として考慮される。好適には、接着剤層40との接着力を増すために、振動板10の表面側にサンドブラスト加工などによって粗面が形成される。
【0012】
図2は、上記実施例のパネル型スピーカを構成するエキサイター10単体の平面図(A)と、このエキサイター10と振動板20とを組合せたパネル型スピーカの部分断面図(B)である。この実施例のパネル型スピーカは、発泡スチロールを素材とする厚み5mm〜10mm程度の大型の矩形状の振動板20と、この振動板20の中央部分に埋め込まれたエキサイター10とから構成されている。エキサイター10は、ボイスコイル11、永久磁石12、インナーヨーク13、アウターヨーク14、サブパネル15及び弾性保持板16を備えている。
【0013】
円筒形状のアウターヨーク14の直径は、この例では、30mm前後であり、このアウターヨーク14の外側にポリカーボネイト製のサブパネル15が形成されている。このサブパネル15は、アウターヨーク14を囲んで配置される円筒形状の側壁15aと、この側壁の一端面を塞ぐ薄肉の端面15bとを有している。このサブパネル15の側壁15aの直径は典型的には50mm程度であり、その外周面は、振動板20の内周面に接着剤によって固定されている。また、サブパネル15の薄肉の端面15bの厚みは1mm程度であり、この端面には、ボイスコイル11の先端面が接着によって固定されている。
【0014】
さらに、アウターヨーク14の後部端面が弾性保持板16を介してサブパネル15の側壁15aの後端面に結合されている。この弾性保持板16は、ステンレス製の厚さ0.4mm の薄板から構成されている。この弾性保持板16は、図2の(A)に見られるように、円板の周辺部から少し中心に寄った箇所において円周方向に分割された3個の円弧状の切り欠きを形成することにより、3箇所の幅の狭い連結部18a,18b,18cによって円弧状の外周部分と、円板状の中央部分とを連結した構造を有している。
【0015】
保持板16の周辺の3箇所に形成された開口17a,17b,17cが円筒体15の側壁15aの後端面に形成された突起に挿入されると共に、この箇所が側壁15aの後部端面上に接着剤で固定されている。そして、弾性保持板16の円板状の中央部分には、アウターヨーク14の後部端面が接着剤によって固定されている。なお、19a,19bはボイスコイル11に連なる電線が接続される電極端子である。
【0016】
図2(B)の断面図を参照しながら以上の説明を要約すると、エキサイター10を構成するアウターヨーク14、永久磁石12及びインナーヨーク13が、弾性保持板16によってサブパネル15の側壁15aに固定されると共に、ボイスコイル11の先端面がサブパネル15の薄肉の端面15bに固定されている。従って、仮に、弾性保持板16と端面15bの剛性がどちらも十分に大きい場合には、ボイスコイル11とアウターヨーク14とは相対的な運動することができず、振動が発生しない。
【0017】
しかしながら、実際には、弾性保持板16については金属板の肉厚を0.4mm 程度まで小さくすると共に前述のように周方向に円弧状の切り欠きを形成することによって、また、サブパネルの端面15bについてはポリカーボネイトの肉厚を1mm程度まで減少させることによって、それぞれの剛性を適当な値にまで減少させ、これによって、ボイスコイル11とアウターヨーク14との間の相対的な運動を可能とし、これに伴う振動を発生させている。弾性保持板16は、振動が必要以上の長時間にわたって持続しないように、これを減衰させるためのダンパーの機能も果たす。
【0018】
ボイスコイル11の運動によって発生した可聴周波数帯の振動は、サブパネル15の側壁15aの外周面とその外部に形成された接着剤の層を通して振動板20の中央部分に形成された開口の内周面に伝達され、この中央部分から振動板20の周辺部に向けて伝達される。この振動板に伝達された振動は、振動板の表裏両方向にほぼ同一の放射特性のもとで放射される。すなわち、このパネル型スピーカの放射特性は、振動板の表裏両方向について無指向性となる。
【0019】
振動板20は、典型的には数百mm×数百mmの矩形状を呈しており、その四つの周辺部は、大きな剛性のフレームによって適宜な曲げによる変形を許容しながら保持される。この振動板20の表裏両面は、典型的には、美観あふれる絵画が印刷された紙で覆われ、エキサイター10は視聴者の視界から完全に隠される。このようなスピーカは、典型的には、衝立、間仕切り、吊り下げ看板などとして使用され、視聴者はスピーカから発せられた音をあたかも絵画の世界から聞こえて来る幻想的な音であるかのように感じる。
【0020】
以上、振動板を枠体に保持させる構成を例示したが、このような枠体を使用しない吊り下げ構造を採用することもできる。
【0021】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明のパネル型スピーカは、振動板の表面に装飾用シートを着脱自在に貼着するための接着剤層が形成される構成であるから、装飾用シートの絵柄に飽きた場合などにはこれを容易に異なる絵柄の装飾用シートに交換することができる。また、顧客の好みの寸法の振動板と好みの絵柄の装飾用シートとを組合せることができ、商品が品切れになる場合が少なくなる。
【0022】
また、本発明のパネル型スピーカはエキサイターを振動板の内部に埋め込む構成であるから、この振動板の背後にエキサイターを取り付ける構造の先行技術のものに比べて一層の薄型化が達成される。
【0023】
また、エキサイターが振動板に完全に埋め込まれているため、振動板の両面をを絵画などの印刷された紙で覆うなど両面の利用が可能になり、広告用の立て看板や、吊り下げ看板などへの用途が拡大される。
【0024】
また、エキサイターを完全に振動板に埋め込むことにより、表裏双方向の無指向性が一層顕著になり、広告用の立て看板や、吊り下げ看板などへの用途が拡大される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のパネル型スピーカの正面図(A)と、周辺部分の拡大部分断面図(B)である。
【図2】上記実施例のパネル型スピーカを構成するエキサイター単体の平面図(A)とこのエキサイターと振動板から構成されるパネル型スピーカの部分断面図(B)である。
【符号の説明】
10 エキサイター
11 ボイスコイル
12 永久磁石
13 インナーヨーク
14 アウターヨーク
15 サブパネル
15a 側壁
15b 端面
16 弾性保持板
20 振動板
30 枠体
40 接着剤層

Claims (5)

  1. 磁気回路とボイスコイルとを含むエキサイターと、このエキサイターによって励振される平板状の振動板とを備えた振動モード(DM)方式のパネル型スピーカにおいて、
    前記エキサイターは、その磁気回路を囲む筒状の側壁と、この側壁の一端を塞ぐと共に前記ボイスコイルが巻かれたボビンによって前後に直接駆動される端面とを有するサブパネルを備え、このサブパネルの側壁の外周面が前記振動板の中央部分に形成された開口の内周面に結合されることにより、前記振動板の内部に埋め込まれたことと、
    前記振動板の表裏両面に装飾用シートを着脱自在に貼着するための接着剤層が形成されたこととを特徴とするパネル型スピーカ。
  2. 請求項1において、
    前記磁気回路の後部端面が、弾性保持板を介して前記サブパネルの側壁に保持されたことを特徴とするパネル型スピーカ。
  3. 請求項1又は2のいずれかにおいて、
    前記接着剤層は、芯材と、この芯材の裏面側に形成された接着力の大きな接着剤層と、前記芯材の表面側に形成された接着力の小さな接着剤層とから構成されることを特徴とするパネル型スピーカ。
  4. 請求項1乃至4のいずれかにおいて、
    前記振動板は、前記接着剤層とこの接着剤層を介して前記振動板に貼着される前記装飾用シートを負荷の一部として考慮することにより設計されたことを特徴とするパネル型スピーカ。
  5. 請求項1乃至4のいずれかにおいて、
    前記振動板の表裏両面に粗面が形成されたことを特徴とするパネル型スピーカ。
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