JP3910879B2 - シートベルト用リトラクター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両緊急時における初期段階のウエビングの引き出しを抑えて乗員の移動を抑制し、乗員に作用するエネルギーを吸収するエネルギー吸収機構を備えたシートベルト用リトラクターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両等の座席に備えられるシートベルト装置は、ウエビングが緊急ロック機構を備えたリトラクターに巻き取られるように構成されている。そして、衝突時等においては、その衝撃力による加速度変化を感知して緊急ロック機構が作動し、ウエビングが巻装された巻取ドラムの回転を阻止することによりウエビングの引き出しを阻止し、乗員を拘束して保護するように構成されている。
【0003】
また、ウエビングに作用する引出力が予め設定された所定値を越えた場合には、トーションバーのねじれ変形等を利用して、ウエビングを所定荷重下で引き出させることにより乗員に生じる衝撃エネルギーを吸収するエネルギー吸収機構を備えたシートベルト用リトラクターも提案されている。
【0004】
この種のシートベルト用リトラクターとして、例えば、実開昭56−19245号公報に開示のものがあり、リトラクタ本体に回転自在に設けられシートベルト(ウエビング)を巻取る巻取シャフトと、巻取シャフトによって駆動されるギヤ部材と、車両衝突時にギヤ部材の回転を阻止する拘束手段とを備え、ギヤ部材は、一端が巻取シャフトに固定された巻取材と、巻取材を収納し拘束手段と結合可能なギヤ手段を有する収納ケースと、巻取材がU字状に巻き付けられたしごきピンとを備えた構造とされている。
【0005】
そして、車両の衝突時に拘束手段が作動した状態で、所定値以上の引出力がシートベルトに作用した場合には、巻取シャフトは巻取材を巻き込みつつ回転する。この際、回転が阻止された収納ケースに収容された巻取材はしごきピンでしごかれながら巻取シャフトに順次巻かれていき、ここに、シートベルトに所定の荷重を付加しながらシートベルトの引き出しを許容し、衝撃エネルギーの吸収を行う構造とされていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来公報に開示の構造によれば、巻取シャフトの回転に伴って巻取シャフトが軸方向に移動することにより、巻き取られた巻取材の重なりを防止する構造であり、巻取シャフトの軸方向移動によってリトラクタ本体から巻取シャフトが飛び出すため、リトラクタ本体を大きくする必要があった。
【0007】
また、巻取シャフトを軸方向に移動させる構造であり、他部材等の配置関係も煩雑となり、構造の複雑化を招く欠点があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、リトラクターから外部への飛び出しもなく、構造の簡素化を図ったシートベルト用リトラクターを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するための技術的手段は、ウエビングが巻装された巻取ドラムと、巻取ドラムに嵌挿されてその一端部が巻取ドラムの一端部に相対回転不能に結合されると共にウエビング巻取方向に回動付勢されたトーションバーと、車両緊急時に作動してトーションバーの他端部のウエビング引出方向の回転を阻止する緊急ロック機構と、巻取ドラムの他端部側面に近接する巻取部を有すると共にトーションバーの他端部に相対回転不能に結合されたプレート体と、プレート体に一端が取り付けられると共にその中間部が巻取ドラムの他端部側面に設けられた屈曲路に沿って配置されたワイヤーとを備え、車両緊急時の緊急ロック機構作動後、所定値以上の引出力が前記ウエビングに作用した際、前記トーションバーのねじれ変形と、前記プレート体と前記巻取ドラムとの相対回転によって前記巻取部に前記ワイヤーが巻き取られ、前記屈曲路からワイヤーが引き出される引出抵抗とによる衝撃エネルギー吸収下、ウエビングの引き出しが許容されるシートベルト用リトラクターにおいて、前記プレート体の前記巻取部に巻き付けられる前記ワイヤーを、巻取部の軸方向にずらすための位置ずらし用のガイドテーパ部がプレート体に備えられた点にある。
【0010】
また、前記ガイドテーパ部は、前記巻取部に巻き付けられる前記ワイヤーが1周目を終える直前位置に対応して備えられた構造としてもよい。
【0011】
さらに、前記ワイヤーが巻き付けられる巻取方向に対して後部側に位置する前記ガイドテーパ部における端縁部は、前記ガイドテーパ部によってワイヤーが前記巻取部の軸方向にずらされる位置ずらし方向に対する後端から前端に向けて、前記巻取方向の前方向に傾斜する傾斜ガイド面とされた構造としてもよい。
【0012】
また、前記ワイヤーが巻き付けられる前記巻取部の外径が、巻き付け開始時より漸次縮小するように形成されている構造としてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1ないし図9に示される如く、シートベルト用リトラクターは、ウエビングが巻装されるアルミ材等から形成された巻取ドラム2を備え、その軸心方向両端部には径方向に張出形成されたフランジ部2a、2bを有しており、その一方のフランジ部2a側に形成された結合孔部には、スチール材等からなる結合体3が相対回転不能に圧入固定される。
【0014】
そして、第1のエネルギー吸収機構を構成するトーションバー4が巻取ドラム2内に嵌挿されて、その一端部が圧入固定された前記結合体3にスプライン結合され、ここに、トーションバー4と巻取ドラム2とが一端部で互いに相対回転不能に結合された構造とされる。
【0015】
また、トーションバー4の他端部には、車両衝突時等の緊急時にシートベルトの引き出しを阻止するための緊急ロック機構の一部品を構成するラチェットホイール5がスプライン結合されている。
【0016】
前記巻取ドラム2を回転自在に支持するハウジング体6は、車体側に固定される背板6aとその両側縁より互いに対向して延設された側板6bとを備えた平面視略コ字状に構成され、両側板6b間で巻取ドラム2が回転自在に支持される構造とされている。
【0017】
即ち、巻取ドラム2の一端部は、巻取ドラム2に連結固定された結合体3が、一方の側板6bに形成された通孔に貫通状とされて適宜、支持構造を介して回転自在に支持される構造とされている。また、巻取ドラム2の他端部は、他方の側板6bに形成された通孔に貫通状とされるトーションバー4が適宜、支持構造を介して回転自在に支持されることにより、回転自在に支持される構造とされている。
【0018】
そして、特開2002−53007号公報にも開示のように、一方の側板6bには、結合体3に常時係合して巻取ドラム2をウエビング巻取方向に常時付勢する巻取バネ機構や、車両緊急時に結合体3に係合して巻取ドラム2を巻取方向に回転させ、ウエビングの緩みを除去するプリテンショナー機構を備え、他方の側板6bには、車両緊急時に図示省略のロック爪がラチェットホイール5に係合してウエビング引出方向の回転を阻止する緊急ロック機構を備える構造とされている。
【0019】
なお、このような緊急ロック機構としては、例えば、本願出願人による実用新案登録第2574488号公報等に開示のような従来の機構を適宜採用すればよく、巻取バネ機構やプリテンショナー機構も従来の機構を適宜採用すればよい。
【0020】
また、巻取ドラム2の他方のフランジ部2bとラチェットホイール5の相互間には、第2のエネルギー吸収機構が備えられており、第2のエネルギー吸収機構は、トーションバー4の他端部に相対回転不能に結合されるプレート体8と、巻取ドラム2の他方のフランジ部2bとプレート体8との間に配置されたステンレス等の金属材からなる線材状の適宜長さを有したワイヤー9とを備える。
【0021】
即ち、プレート体8は略円形の薄板状に構成され、その中心部に形成されたスプライン孔部8aに、トーションバー4にスプライン結合されたラチェットホイール5のスプライン軸部5aがスプライン結合されて、トーションバー4とプレート体8とが相対回転不能に結合される構造とされている。
【0022】
巻取ドラム2のフランジ部2bに対向するプレート体8の対向面外周部には、図5ないし図9に示される如く、ワイヤー9の一端部を保持する屈曲路10を構成すべく、複数の凸部11が一体形成されると共に、周方向に沿ってワイヤー9が巻き取られる巻取部12が一体形成されている。
【0023】
また、前記各凸部11の対向面には、図7に示される如く、3組の対向するリブ13が屈曲路10の深さ方向に沿って設けられており、対向するリブ13間距離が、ワイヤー9の外径よりも小さくなるように構成されている。
【0024】
さらに、プレート体8の外周縁部に位置する各凸部11のプレート体8外周縁側は、図8および図9に示される如く、巻取部12に巻き付けられるワイヤー9を巻取部12の軸方向にずらすための漸次径小となるテーパ状に形成され、位置ずらし用のガイドテーパ部14を構成している。
【0025】
また、ワイヤー9が巻き付けられる巻取方向P(図5参照)に対して後部側に位置する位置ずらし用のガイドテーパ部14における端縁部は、ガイドテーパ部14によってワイヤー9が巻取部12の軸方向にずらされる位置ずらし方向Q(図6参照)に対する後端Aから前端Bに向けて、前記巻取方向Pの前方向に傾斜する傾斜ガイド面14aとして構成されている。
【0026】
前記プレート体8に対向する巻取ドラム2のフランジ部2bには、図1ないし図3に示される如く、プレート体8に形成された前記各凸部11や巻取部12を収容する収容凹部15が形成されると共に、外周部には一体形成された複数の凸部16によってワイヤー9が摺動案内される屈曲路17が構成されている。
【0027】
この際、凸部16は5個所とされ、屈曲路17から引き出されるワイヤー9の引出方向が径方向に対して内向きとされ、また、プレート体8における屈曲路10の曲率半径が、フランジ部2bにおける屈曲路17の曲率半径よりも小さい構造とされている。
【0028】
そして、プレート体8の屈曲路10にワイヤー9一端部の屈曲部が収容保持され、ワイヤー9中間部の屈曲部が巻取ドラム2のフランジ部2bにおける屈曲路17に沿って配置された状態で、フランジ部2bの収容凹部15にプレート体8の各凸部11や巻取部12が収容配置され、樹脂等で形成されたリテーナ18によりその組付け状態が保持されている。
【0029】
即ち、リテーナ18の外周部には、周方向に離隔して複数の係止孔18aが形成され、対応するフランジ部2b外周面には係止突部2cがそれぞれ形成されており、リテーナ18の各係止孔18aに各係止突部2cが係止されることにより、リテーナ18がフランジ部2bに取り付けられる構造とされている。
【0030】
また、ワイヤー9一端部が収容保持される屈曲路10を構成する凸部11のプレート体8外周縁側に、位置ずらし用のガイドテーパ部14が、巻取部12に巻き付けられるワイヤー9が1周目を終える直前位置に対応して備えられた構造とされている。
【0031】
本実施形態は以上のように構成されており、その動作について説明すると、通常のシートベルト使用時においては、ウエビングの引き出し時や巻き取り時に、トーションバー4と共に巻取ドラム2やプレート体8が一体に回転される。
【0032】
そして、衝突等の車両緊急時に緊急ロック機構が作動すると、ラチェットホイール5のウエビング引出方向の回転が阻止される。この状態でウエビングに負荷が作用し、所定値以上の引出力がウエビングに作用した場合、トーションバー4のラチェットホイール5と反対側の一端部側が回転され、トーションバー4のねじれ変形が開始され、このトーションバー4のねじれ変形に伴って巻取ドラム2がウエビング引出方向に回転し、第1のエネルギー吸収機構としてのトーションバー4による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
【0033】
この際、ラチェットホイール5とプレート体8とがスプライン嵌合されているため、巻取ドラム2とプレート体8との相互間においても相対回転が生じ、第2のエネルギー吸収機構による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
【0034】
即ち、第2のエネルギー吸収機構においては、図10に示される巻取ドラム2とプレート体8との初期状態より、巻取ドラム2がウエビング引出方向Rに相対回転されていく。
【0035】
そして、巻取ドラム2の回転に伴って、図11および図12に示される如く、プレート体8に一端部が固定保持されたワイヤー9が、各凸部16によって構成される屈曲路17から順次しごかれながら引き出されていく。この蛇行状とされた屈曲路17をワイヤー9が変形しながら通過する際、各凸部16とワイヤー9との相互間に摺動抵抗が生じると共にワイヤー9自体による屈曲抵抗が生じ、これら摺動抵抗および屈曲抵抗による引出抵抗によって衝撃エネルギーの吸収がなされる。
【0036】
また、巻取部12に巻き付けられるワイヤー9には巻取部12の軸中心方向への力が作用しているため、巻取部12に巻き付けられたワイヤー9が、図12に示される如く、1周目を終える直前に、凸部11外周部に設けられたガイドテーパ部14によって、引き続き巻き付けられるワイヤー9は巻取部12の軸方向、即ち前記位置ずらし方向Qにガイドテーパ部14の傾斜に沿って自然にスライドさせられて巻き付けられていき、ワイヤー9の重なりが防止される。
【0037】
この際、ガイドテーパ部14における前記巻取方向P後部側に位置する端縁部も傾斜する傾斜ガイド面14aとされているため、ワイヤー9の位置ずらし方向Qのスライド初期段階において、この傾斜ガイド面14aとガイドテーパ部14との相乗効果により、より確実にかつよりスムーズにワイヤー9をスライドさせることができる。
【0038】
その後、巻取ドラム2の回転に伴って、図13に示される如く、ワイヤー9の他端部が屈曲路17から離脱した時点で、この第2のエネルギー吸収機構による衝撃エネルギーの吸収作用が終了し、以降はトーションバー4のねじれ変形による衝撃エネルギーの吸収のみとなる。
【0039】
以上のように、車両緊急時に緊急ロック機構が作動してラチェットホイール5の回転が阻止された状態で、ウエビング引出方向Rにウエビングに所定値以上の引出力が作用すると、巻取ドラム2がウエビング引出方向Rに回転し、トーションバー4による第1のエネルギー吸収機構とワイヤー9等による第2のエネルギー吸収機構との双方により、車両緊急時における衝撃エネルギーを吸収する。
【0040】
そして、巻取部12に巻き付けられるワイヤー9が1周以上の長さを有していても、ガイドテーパ部14によってワイヤー9が巻取部12の軸方向にスライドするため、螺旋状に円滑に巻き付けていくことができ、衝撃エネルギーの吸収作用が円滑に発揮できる。
【0041】
また、2周目を越える長さであっても、2周目に巻き付けられたワイヤー9がガイド機能を発揮して引き続き螺旋状に巻き付けていくことができ、ここに、エネルギーの吸収時間を長くとることが可能となり、ワイヤー9の長さ調整によりエネルギー吸収量の調整も容易に行える。
【0042】
さらに、ガイドテーパ部14によって巻き取られるワイヤー9を巻取部12の軸方向にずらし、ワイヤー9の重なりを防止する方式であり、車両緊急時のエネルギー吸収に際して、前述従来例のような部材の外部への飛び出しもなく、他部材等との相互の配置関係も変化しないため、相互部材間の配置関係も容易に決定でき、構造の簡素化が図れ、リトラクターの構造を容易に設計、製作できる。
【0043】
また、ガイドテーパ部14が、巻取部12に巻き付けられるワイヤー9が1周目を終える直前位置に対応して備えられた構造であり、ガイドテーパ部14以外のその他の部分においては、巻取部12に安定してワイヤー9を巻き取ることができる。
【0044】
さらに、ガイドテーパ部14の端縁部に傾斜ガイド面14aを設けているため、ワイヤー9の巻取部12軸方向へのスライド初期段階において、より確実にかつよりスムーズにワイヤー9を位置ずらし方向Qにスライドさせることができる利点もある。
【0045】
また、本実施形態においては、屈曲路10において各凸部11の対向面にリブ13が形成されその対向するリブ13間距離がワイヤー9の外径より小さくなるように構成されているため、屈曲路10に配置されたワイヤー9は各リブ13によってより強固に挟持されて固定される構造となり、プレート体8の側面に対し垂直方向に抜けにくくなり、組み付け時の初期設定を安定化させることができ、ガタツキ等による異音発生が有効に防止できる。従って、組み付け後は持ち運びや後工程での組立作業を容易に行うことができる利点もある。
【0046】
図14ないし図16は第2の実施形態におけるプレート体8を示しており、前記第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
即ち、第1の実施形態におけるプレート体8の巻取部12が巻取部12の軸方向に突出する略円筒状に形成されているのに対し、本実施形態におけるプレート体8の巻取部12は、その外周面における外径が巻き付け開始位置より漸次縮小するように螺旋状に形成されると共に、巻取部12の軸方向に対して段差を有した構造とされている。また、ワイヤー9も複数回にわたって巻取部12に巻き付け可能な長さを有した構造とされている。
【0048】
そして、その他の巻取ドラム2側等は第1の実施形態と略同様に構成されている。
【0049】
従って、本実施形態によれば、巻取ドラム2とプレート体8との相対回転により、巻取部12にワイヤー9が順次巻き取られ、2周目になる直前位置でガイドテーパ部14および傾斜ガイド面14aによって、段差を有して隣接配置された位置ずらし方向Qの巻取部12側に案内されるため、2周目におけるワイヤー9の重なりが有効に防止でき、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0050】
また、第2のエネルギー吸収機構においては、ワイヤー9が巻き取られる巻取部12の外径が、螺旋状に漸次縮小されているため、巻取部12にワイヤー9が巻き取られるに連れて、屈曲路17を構成するワイヤー9の引出方向前側に位置する凸部16とワイヤー9との摺動先端位置が、隣接配置された引出方向後側の凸部16方向に漸次移動していくため、引出方向前側に位置する凸部16とワイヤー9との摺動面積が漸次減少する。
【0051】
従って、ワイヤー9の引出抵抗によるエネルギーの吸収特性は、ワイヤー9が巻取部12外周面に巻き取られる開始直後のエネルギー吸収荷重が大きく、徐々に小さくなっていくように構成される。これに対し、第1のエネルギー吸収機構としてのトーションバー4のねじれ変形による衝撃エネルギーの吸収特性は、ねじれ変形量の増加に伴って徐々にエネルギー吸収荷重が大きくなっていく。
【0052】
ここに、双方が組み合わされた本実施形態におけるエネルギー吸収機構によるエネルギーの吸収特性は、エネルギー吸収荷重が乗員に悪影響を与えない範囲の荷重の限界となる最大荷重限界にできるだけ沿わせることができ、車両緊急時におけるエネルギー吸収機構による衝撃エネルギーの吸収開始直後の初期段階におけるエネルギー吸収を、より効率よく行うことができる。
【0053】
また、巻取部12が螺旋状に形成されているため、ワイヤー9の複数回にわたる巻き取りによる長い時間にわたってエネルギーの吸収作用が発揮できる利点がある。
【0054】
さらに、ワイヤー9が巻き取られる巻取部12の外径を漸次縮小する簡単な構造であり、容易に製作できる利点もある。
【0055】
図17は第3の実施形態における巻取ドラム2を示しており、前記第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
即ち、第1の実施形態における巻取ドラム2のフランジ部2bに形成された凸部16の数が5個所であるのに対し、本実施形態における巻取ドラム2のフランジ部2bに形成された凸部16の数が3個所とされ、屈曲路17が短く形成された構造とされている。
【0057】
そのため、屈曲路17に配置されたワイヤー9が引き出される際の引出抵抗がより小さく構成され、第2のエネルギー吸収機構によるエネルギー吸収荷重がより小さく得られる構造とされている。従って、第1の実施形態における構造では、エネルギー吸収荷重が大き過ぎて希望する最大荷重限界が得難い場合に採用すればよい。
【0058】
なお、上記各実施形態におけるワイヤー9の材質としてステンレスを例示しているが、トーションバー4によるエネルギーの吸収特性に応じて最適なエネルギー吸収荷重が得られるように、ステンレスに限らず、鉄や銅等のその他の金属を選択してもよく、また、ワイヤー9の外径においても大径や小径等適宜、選択すればよい。さらには、屈曲路10、17の曲率半径も必要に応じて適宜決定すればよい。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、本発明のシートベルト用リトラクターによれば、巻取ドラムの一端部に相対回転不能に結合されたトーションバーと、巻取ドラムの他端部側面に近接する巻取部を有すると共にトーションバーの他端部に相対回転不能に結合されたプレート体と、プレート体に一端が取り付けられると共にその中間部が巻取ドラムの他端部側面に設けられた屈曲路に沿って配置されたワイヤーとを備え、プレート体の巻取部に巻き付けられるワイヤーを、巻取部の軸方向にずらすための位置ずらし用のガイドテーパ部がプレート体に備えられたものであり、部材の外部への飛び出しもなく、他部材等との相互の配置関係も変化しないため、相互部材間の配置関係も容易に決定でき、構造の簡素化が図れ、リトラクターの構造を容易に設計、製作できる。
【0060】
また、巻取部に巻き付けられるワイヤーが1周以上の長さを有していても、ガイドテーパ部によってワイヤーが巻取部の軸方向に自然にスライドするため、螺旋状に円滑に巻き付けていくことができ、衝撃エネルギーの吸収作用が円滑に発揮でき、2周目を越える長さであっても、2周目に巻き付けられたワイヤーがガイド機能を発揮して同様に螺旋状に巻き付けていくことができ、エネルギーの吸収時間を長くとることが可能となり、ワイヤーの長さ調整によりエネルギー吸収量の調整も容易に行える利点がある。
【0061】
さらに、位置ずらし用のガイドテーパ部は、巻取部に巻き付けられるワイヤーが1周目を終える直前位置に対応して備えられた構造とすれば、ガイドテーパ部以外のその他の部分においては、ワイヤーを巻取部に安定して巻き取ることができるという利点がある。
【0062】
また、ワイヤーが巻き付けられる巻取方向に対して後部側に位置する位置ずらし用のガイドテーパ部における端縁部は、ガイドテーパ部によってワイヤーが巻取部の軸方向にずらされる位置ずらし方向に対する後端から前端に向けて、巻取方向の前方向に傾斜する傾斜ガイド面とされた構造とすれば、ワイヤーの巻取部軸方向へのスライド初期段階において、より確実にかつよりスムーズにワイヤーを位置ずらし方向にスライドさせることができる利点がある。
【0063】
さらに、ワイヤーが巻き付けられる巻取部の外径が、巻き付け開始時より漸次縮小するように形成されている構造とすれば、ねじれ変形量の増加に伴って徐々にエネルギー吸収荷重が大きくなっていくトーションバーによるエネルギー吸収作用と、開始直後のエネルギー吸収荷重が大きく、徐々に小さくなっていくワイヤーの引出抵抗によるエネルギー吸収作用との組み合わせ作用によって、エネルギー吸収荷重が乗員に悪影響を与えない範囲の荷重の限界となる最大荷重限界にできるだけ沿わせることができ、車両緊急時におけるエネルギー吸収機構によるエネルギー吸収をより効率よく行うことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す要部分解斜視図である。
【図2】同一部組付け状態の一部断面正面図である。
【図3】図2の一部断面側面図である。
【図4】トーションバーとラチェットホイールとの組付け説明図である。
【図5】プレート体の側面図である。
【図6】同左側面図である。
【図7】図5の一部拡大図である。
【図8】図7におけるIIIV−IIIV線断面矢視図である。
【図9】図7におけるIX−IX線断面矢視図である。
【図10】動作説明図である。
【図11】動作説明図である。
【図12】動作説明図である。
【図13】動作説明図である。
【図14】第2の実施形態を示すプレート体の側面図である。
【図15】図14におけるXV−XV線断面矢視図である。
【図16】図14におけるXVI−XVI線断面矢視図である。
【図17】第3の実施形態を示す巻取ドラムの斜視図である。
【符号の説明】
2 巻取ドラム
2a、2b フランジ部
4 トーションバー
5 ラチェットホイール
8 プレート体
9 ワイヤー
10 屈曲路
11 凸部
12 巻取部
13 リブ
14 ガイドテーパ部
14a 傾斜ガイド面
15 収容凹部
16 凸部
17 屈曲路
Claims (4)
- ウエビングが巻装された巻取ドラムと、巻取ドラムに嵌挿されてその一端部が巻取ドラムの一端部に相対回転不能に結合されると共にウエビング巻取方向に回動付勢されたトーションバーと、車両緊急時に作動してトーションバーの他端部のウエビング引出方向の回転を阻止する緊急ロック機構と、巻取ドラムの他端部側面に近接する巻取部を有すると共にトーションバーの他端部に相対回転不能に結合されたプレート体と、プレート体に一端が取り付けられると共にその中間部が巻取ドラムの他端部側面に設けられた屈曲路に沿って配置されたワイヤーとを備え、
車両緊急時の緊急ロック機構作動後、所定値以上の引出力が前記ウエビングに作用した際、前記トーションバーのねじれ変形と、前記プレート体と前記巻取ドラムとの相対回転によって前記巻取部に前記ワイヤーが巻き取られ、前記屈曲路からワイヤーが引き出される引出抵抗とによる衝撃エネルギー吸収下、ウエビングの引き出しが許容されるシートベルト用リトラクターにおいて、
前記プレート体の前記巻取部に巻き付けられる前記ワイヤーを、巻取部の軸方向にずらすための位置ずらし用のガイドテーパ部がプレート体に備えられたことを特徴とするシートベルト用リトラクター。 - 前記ガイドテーパ部は、前記巻取部に巻き付けられる前記ワイヤーが1周目を終える直前位置に対応して備えられたことを特徴とする請求項1記載のシートベルト用リトラクター。
- 前記ワイヤーが巻き付けられる巻取方向に対して後部側に位置する前記ガイドテーパ部における端縁部は、前記ガイドテーパ部によってワイヤーが前記巻取部の軸方向にずらされる位置ずらし方向に対する後端から前端に向けて、前記巻取方向の前方向に傾斜する傾斜ガイド面とされたこと特徴とする請求項2記載のシートベルト用リトラクター。
- 前記ワイヤーが巻き付けられる前記巻取部の外径が、巻き付け開始時より漸次縮小するように形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のシートベルト用リトラクター。
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