JP3910027B2 - 永久磁石型ロータおよびその製造方法 - Google Patents

永久磁石型ロータおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータの表面に永久磁石を配置した永久磁石型ロータおよびその製造方法に係り、特に、ロータの磁気特性と強度を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車やハイブリッドカーに搭載される発電電動機に用いられる永久磁石型ロータには、高性能の磁気特性と高い生産性が求められており、そのような永久磁石型ロータの材料としては、従来、珪素鋼板が使用されている。この場合、ロータは、エンジンのシャフトに締付け固定されるから、強固な締付けを行うために強度ないし硬度の高いものでなければならない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、珪素鋼板は脆く強度が低いため、必要な強度を確保しようとすると何等かの補強策を講ずる必要が生じ、ロータが大きくなって重量が嵩むとともに、強度が不足するためロータの軽量化のための肉抜きが行い難いという欠点がある。また、軽量化のため、JIS規格のS45C相当材を用いてロストワックス等の鋳造手法により、肉抜き形状を形成した例もある。しかしながら、S45C材は炭素量が多く磁気特性が不十分であるため、発電機や電動機としての十分な機能が得られないという欠点がある。このため、発電電動機自体の薄型化を図り軽量化を可能にするとともに、高出力かつ高効率を達成することができる永久磁石型ロータが要望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の永久磁石型ロータは、内側部材と、軟磁性を有し内周が内側部材の外輪部外周と接する略環状の外側部材と、外側部材の外周に円周方向へ向けて等間隔に複数個配置された永久磁石とを備え、内側部材と外側部材の少なくともいずれか一方は焼結材料で構成され、かつ、内側部材および外側部材は互いに焼結接合されていることを特徴としている。
【0005】
上記構成の永久磁石型ロータにあっては、永久磁石を配置する外側部材のみを磁性材料で構成し、内側部材を強度を有する材料で構成することにより、磁気特性を低下させることなく肉抜き形状の適用が可能となり、軽量高効率の表面磁石型ロータが得られる。また、内側部材と外側部材の少なくともいずれか一方を焼結材料で構成し、かつ、内側部材および外側部材を互いに焼結接合しているから、両者の結合強度が強く高速回転するエンジンのシャフトに取り付けても何ら支障を来さない。
【0006】
本発明では、内側部材を強度を有する材料で構成することができるので、内側部材を肉抜き形状とすることで軽量化が可能である。この肉抜き形状としては、内側部材を、外輪部と軸孔部または軸部を有する内輪部とをリブで連結した構成とすることができる。
【0007】
ここで、本発明は内側部材および外側部材を焼結結合したものであるから、両者のうち少なくともいずれか一方が焼結材料であれば良い。たとえば、外側部材を溶製鋼などで構成し、内側部材を焼結材料で構成することができる。あるいは、内側部材を溶製鋼などで構成し、外側部材を焼結材料で構成することもできる。
【0008】
また、外側部材および内側部材を焼結材料で構成することもできる。この場合には、焼結結合を得るために、外側部材および内側部材の一方を焼結材料、他方を圧粉体として、または両者を圧粉体として、両者を互いに嵌合させて焼結して製造される。焼結結合をより強固にするためには、内側部材を圧粉体として焼結したものが望ましい。また、リブは円周方向へ向けて互いに等間隔離間した複数個の連結リブで構成し、永久磁石の配置を内側部材の連結リブに対向する外側部材の外周上にすると好適である。
【0009】
本発明において、望ましくは焼結材料で構成される前記内側部材の組成は、JIS規格Z2550に規定されるSMF3種、4種または5種相当のものが適している。また、外側部材としては、C含有量が0.3%以下で、残部Feおよび不可避不純物の純鉄系焼結材料が適している。また、この純鉄系焼結材料に、さらに、Si:3.5質量%以下、P:0.7質量%以下、B:0.3質量%以下、Cu:3.0質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有する焼結材料も適している。あるいは、そのような焼結材料以外に、飽和磁束密度が1.0T以上の磁気特性を有する溶性鋼も適している。
【0010】
次に、本発明に係る永久磁石型ロータの製造方法は、鉄系の合金粉末またはFe粉を主体とする混合粉末を圧縮成形した内側部材圧粉体と、内径が内側部材圧粉体の外輪部外周と接する略環状の外側部材とを嵌め合わせ、両者を焼結して内側部材と外側部材とを一体化した後に、外側部材の外周上に永久磁石を配置固定することを特徴としている。
【0011】
内側部材圧粉体は、外輪部と軸孔部または軸部を有する内輪部とを円周方向に向けて互いに等間隔離間した複数個の連結リブで連結した形状とし、永久磁石を、リブに対向する外側部材の外周上に配置すると好適である。
【0012】
外側部材は、飽和磁束密度が1.0T以上の磁気特性を有する溶性鋼とすることができる。あるいは、外側部材は、Fe粉に成形潤滑剤を混合した外側部材成形用混合粉末を圧縮した後、焼結した純鉄系焼結体とすることもできる。このように、外側部材を剛性体(圧粉体でない材料)とすることにより、焼結の際に内側部材圧粉体が外側部材よりも多く膨張し、外側部材に引張応力が生じて両者の結合がより強固になる。ただし、本発明はそのような製造方法に限定されるものではなく、外側部材を、Fe粉に成形潤滑剤を混合した外側部材成形用混合粉末を圧縮した純鉄系圧粉体で構成することも好適な態様の一つである。
【0013】
また、外側部材としては、純鉄系圧粉体や純鉄系焼結体に替えて、Fe−P粉末、またはFe粉とFe−P粉末、および成形潤滑剤を混合し、P量が0.7質量%以下の外側部材成形用混合粉末を用いた鉄系圧粉体や、そのような鉄系圧粉体を焼結した鉄系焼結体を用いることができる。また、上記外側部材成形用混合粉末に、Si粉末、Fe−Si粉末、Fe−B粉末、Bを含む合金鉄粉末、Cu粉末、Cu−B粉末のうち少なくとも1種以上をさらに添加し、混合粉末の組成中のSi量が3.5質量%以下、B量が0.3質量%以下、Cu量が3.0質量%以下の外側部材成形用混合粉末を用いた鉄系圧粉体や、そのような鉄系圧粉体を焼結した鉄系焼結体を用いることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る永久磁石型ロータの製造方法においては、焼結過程の800℃以上の高温域における内側部材の熱膨張量が外側部材の熱膨張量よりも大きくなる組成の内側圧粉体を用い、環状の外側部材の内径と、内側部材の外径との嵌め合い寸法差が隙間5μm以下の通り嵌め、または締め代が、接合面の径の0.0025倍以内の締まり嵌めであると好適である。加えて、亜鉛を含有する成形潤滑剤を用いて内側部材圧粉体を成形するとともに、浸炭性雰囲気中で焼結することが望ましい。
【0015】
本発明における永久磁石型ロータの好適な態様と作用について、さらに詳細に説明する。本発明の永久磁石型ロータにおいては、強度と磁気特性を兼ね備えるため、強度を要する内側部材は炭素を含有する鉄系焼結材料で、磁気特性を要する外側部材は磁性材料で構成する。内側部材の材料としては、JIS規格Z2550に規定されるSMF3種、4種または5種相当であれば十分な強度が得られる。外側部材の材料としては、純鉄系、あるいは純鉄の成分にSi:3.5質量%以下、P:0.7質量%以下、B:0.3質量%以下、Cu:3.0質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有する焼結材料が磁気特性に優れている。以下は、それら成分の限定理由である。
【0016】
Si:Siは、固有抵抗を高くして磁力の鉄損を低下させる効果を有するため含有することが望ましい。しかしながら、過度に含むと圧縮性を低下させ、焼結体密度が低下して透磁率が低下するため、望ましくは3.5質量%が上限である。
【0017】
P:Pは、焼結を促進し結晶粒を大きくするとともに内側部材に含有される炭素の外側部材への拡散を抑制し、これにより磁気特性を向上させる。したがって、適量のPを含有することは望ましい。しかしながら、Pの含有量が増えると透磁率の低下をまねき、また、さらに過度に含有すると不純物の粒界析出を生じさせたり、寸法精度を悪化させたりする。このため、Pの含有量の上限は0.7質量%が望ましい。
【0018】
B:BはPと同じく焼結を促進し結晶粒を大きくするとともに内側部材に含有される炭素の外側部材への拡散を抑制し、これにより磁気特性を向上させる。したがって、適量のBを含有することは望ましい。しかしながら、Bの含有量が増えると透磁率の低下をまねき、また、さらに過度に含有すると不純物の粒界析出を生じさせたり、圧縮性が低下することによる焼結体密度の低下、および透磁率の低下が生じる。このため、Bの含有量の上限は0.3質量%が望ましい。
【0019】
Cu:Cuは1.5質量%程度までの添加では磁気特性向上の効果が大きいが、それを上回るとCuの膨張現象に伴う磁気特性劣化が大きくなるとともに、さらに過度に含有するとCuの膨張現象により接合状態が悪化する。よって、Cuの含有量の上限は3質量%が望ましい。
【0020】
なお、外側部材はCを含有する内側部材と拡散接合するため、内側部材から拡散してきたCを含有するが、C含有量が0.3質量%以下であれば磁気特性の低下がわずかで差し支えない。
【0021】
また、外側部材としては、上記のような焼結材料に替えて、JIS規格SS種、SPC種、S10C〜S30C種、SUM11〜SUM32種、SUY種等の電磁軟鉄や珪素鋼等の磁気特性を有する溶製鋼を用いても良い。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の永久磁石型ロータについて図面を参照して詳細に説明する。図1(A)は実施形態の永久磁石型ロータの平面図、(B)は断面図であり、図1において符号1は外側部材、符号2は内側部材である。内側部材2は、図1に示すように、リング状をなす外輪部21および内輪部22を円板状をなすリブ23で連結したものである。リブ23の厚さは外輪部21または内輪部22よりも薄く軽量化されている。外側部材1はリング状をなし、その外周面は正多角形状に加工されてそこに永久磁石3が固定されている。
【0023】
図2は本発明の他の実施形態を示すもので、外輪部21と内輪部22とを円周方向に向けて等間隔に配置された複数個の連結リブ23aで連結したもので、肉抜き部24を有するために一層の軽量化を図ることができる。
【0024】
図1または2に示された永久磁石型ロータにおいて、内側部材2の形状に鉄系の合金粉末または混合粉末を圧縮成形した内側部材圧粉体と、純鉄系粉末を略環状に圧縮した外側部材圧粉体や、それを焼結した外側部材焼結体または略環状の純鉄系溶製鋼製外側部材に嵌め合わせて焼結すると、炭素を含む内側部材2の熱膨張量が外側部材1よりも大きいため密着し、両者の十分な拡散接合が得られるために高い接合強度が得られる。その後、外側部材1の外周を正多角形状に加工して永久磁石3を配置固定すれば、磁気特性と強度を兼ね備えた軽量な永久磁石型ロータを得ることができる。
【0025】
図3は、図2に示す永久磁石型ロータの外側部材1を加工する前の状態を示すものである。この永久磁石型ロータでは、焼結過程において、連結リブ23での熱膨張量が肉抜き部24よりも大きく、連結リブ23に対向する内側部材2の外周部とそれに対向する外側部材の内周部(図3のA部)での拡散接合が最も進行して、接合強度が高くなる。しかしながら、拡散接合の進行において内側部材2から外側部材1への炭素の拡散が生じるため、外側部材1の磁気特性は低下する。
【0026】
このため、この実施形態では、外側部材1の外周に固定する永久磁石3を磁気特性が低下する内側部材2の連結リブ23に対向する外側部材1の外周面に配置し、永久磁石3の側部が内側部材2の肉抜き部24に対向する位置になるようにしている。内側部材2の肉抜き部24に対向する部分(図3のB部)では、連結リブ23に対向する部分(A部)に比べて拡散接合が抑制され、磁気特性を低下させる内側部材2からの炭素の拡散が少なく磁気特性が良好である。そして、その部分(B部)に最も磁束の集中する永久磁石3の側部を配置することにより、十分な接合強度を得た上で、さらに磁気特性が良好な永久磁石型ロータが得られる。
【0027】
鉄系の圧粉体同士の焼結による接合に際しては、両部材が焼結過程の略800℃以上の高温域の少なくとも一部の域で(所要時間は温度により異なるが合金成分の拡散深さが5μm前後になるまでの間)密着していれば、十分な接合が行なわれる。なお焼結は固相焼結によるのが通常であるが、一部に液相を生じる状態で焼結すると拡散接合がさらに促進される。その場合、液相の生成量が5%以内であれば浸蝕や形崩れなどの懸念はないが、焼結体の寸法精度も良好な状態に保つためには3%以内に止めることが好ましい。
【0028】
また、内側部材圧粉体に亜鉛を含有させ、外側部材圧粉体または溶製鋼製の外側部材には亜鉛を含有させないで、両者を嵌め合わせた状態で浸炭性雰囲気中で焼結することができる。これにより、亜鉛を含む内側部材圧粉体では、雰囲気からの浸炭を生じて焼結進行にともなう収縮が抑制されるので、熱膨張量が亜鉛を含まない場合にくらべて大きくなる。このため、相対的に外側部材1が内側部材2を締め付けた状態での焼結により拡散接合が行なわれるので、より強固に一体化することができる。
【0029】
なお、焼結時の雰囲気が浸炭性でない場合には、内側部材圧粉体が亜鉛を含む場合でも膨張量の増大という作用効果は生じない。ちなみに雰囲気が浸炭性の場合は、亜鉛を含有しなくても圧粉体の膨張量は幾分増加するが、内側部材および外側部材という複合部品ではこの現象が外側部材および内側部材の双方に同じように生じるため、相対的な差は現われず、接合効果にも影響は生じない。雰囲気が浸炭性で両部材ともに亜鉛を含む場合も、膨張量は増大するが相殺されるため結果は同様である。内側圧粉体への亜鉛の添加は単味でも可能ではあるが、成形潤滑剤を兼ねてステアリン酸亜鉛の形で添加するのが手間も掛からず、且つ均一に分散させる上でも好ましい。なお雰囲気ガスとしては、天然ガスやメタン系炭化水素などを変成して生成される精製エキソサーミックガス(例えば浸炭性のブタン変成ガス)が適している。
【0030】
また、接合強度の向上には内側部材および外側部材を嵌め合わせる際の嵌め合い寸法差(外側部材の孔の内径寸法と内側部材の外径寸法との差)も重要である。この場合、内側部材の外径寸法の方を太め(締まり嵌め)に設定して外側部材に圧入するのが好ましく、締め代は大きいほど両者の密着度が高くなる。ただし、未焼結(圧粉体)で強度の低い外側部材が過大な引っ張り応力によって破損するのを避けるために、締め代は、接合面の径の0.0025倍以内に止めることが好ましい。通り嵌めを選ぶ場合でも隙間は小さいほどよく、5μm以下に止めるべきである。
【0031】
【実施例】
[第1実施例]
内側部材圧粉体として、鉄粉に銅粉:1.5質量%、黒鉛粉:1.0質量%と成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を添加し混合した粉末を密度6.5g/cmで図4に示す形状に圧粉成形して内側部材圧粉体を用意した。なお、図4の単位は「mm」である。また、外側部材として、鉄粉と成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を添加し混合した粉末を密度7.0g/cmで図4に示す形状に圧粉成形した外側部材圧粉体、およびそれを窒素雰囲気中850℃で30分間保持して焼結した外側部材焼結体を用意した。さらに、図4に示す形状の純鉄溶製材を外側部材溶製材として用意した。
【0032】
用意した外側部材圧粉体、外側部材焼結体および外側部材溶製材に、内側部材圧粉体を60μmの締まり嵌めで嵌め合わせて一体化した後、ブタン変成ガス中1130℃で40分間保持して焼結した。得られた試料に対して、接合強度、重量および磁気特性として磁束密度を測定した。それらの結果を表1に示す。また、比較のために従来より用いられている珪素鋼板で図1に示す形状に作製したもの、JIS規格のS45C相当材をロストワックス法で肉抜き形状に作製したものについて、重量および磁束密度を評価した結果を表1に併せて示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003910027
【0034】
表1より、珪素鋼板で作製したものは磁気特性に優れるものの重量が大きく、JIS規格のS45C相当材をロストワックス法で作製したものは肉抜き形状で作製したため重量は少ないが磁気特性は悪い。一方、外側部材圧粉体、外側部材焼結体および外側部材溶製材に、内側部材圧粉体を焼結接合したものでは、重量が少ないことは勿論のこと、接合強度が高く磁気特性も優れている。
【0035】
[第2実施例]
内側部材圧粉体として、鉄粉に銅粉:1.5質量%、黒鉛粉:1.0質量%、および成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を添加し混合した粉末を密度6.5g/cmで図4に示す形状に圧粉成形して内側部材圧粉体を用意した。また、外側部材として、鉄粉(Fe粉)、Siを20質量%含有し残部がFeおよび不可避不純物のFe−20Si粉、Pを20質量%含有し残部がFeおよび不可避不純物のFe−20P粉、Pを0.6質量%含有し残部がFeおよび不可避不純物のFe−0.6P粉、Bを20質量%含有し残部がFeおよび不可避不純物のFe−20B粉および銅粉(Cu粉)を用意し、ステアリン酸亜鉛とともに表2に示す配合比で添加混合し、得られた表2に示す組成の外側部材成形用混合粉末を第1実施例と同じ条件で成形して外側部材圧粉体試料1〜22を用意した。用意した外側部材圧粉体に内側部材圧粉体を第1実施例と同じ条件で嵌め合わせ、焼結し得られた試料1〜22について接合強度および磁束密度を評価した結果を表2に併せて示す。
【0036】
【表2】
Figure 0003910027
【0037】
表2から明かなように、Si量が3.5質量%の試料4では、実用範囲ではあるものの磁束密度の若干の低下が認められ、Si量が3.5質量%を超えた試料5では、磁束密度の低下が認められた。P量が0.7質量%を超えた試料10では、不純物の粒界析出が生じて磁束密度が低下している。B量が0.3質量%を超えた試料15では、不純物の粒界析出が生じて磁束密度が低下するとともに、接合強度の若干の低下も認められる。
【0038】
Cu量が3質量%の試料18では、Cuの膨張現象により、磁気特性の低下と接合強度の若干の低下が認められ、3質量%を超えた試料19では、Cuの膨張量が大きくなり過ぎることにより、外側部材と内側部材の隙間が大きくなって接合強度が低下するとともに、磁気特性も低下していることが認められる。以上より、Si量、P量、B量およびCu量が本発明の好適な範囲であれば、接合強度および磁気特性ともに良好な結果を示すが、いずれかが本願発明の好適な範囲を逸脱すると磁気特性が劣化することが確認された。
【0039】
[第3実施例]
第1実施例と同じ条件で用意した内側部材圧粉体と外側部材圧粉体を表3に示す嵌め合い寸法差で嵌め合わせて一体化した後、第1実施例と同じ条件で焼結したものについて、接合強度と磁気特性を評価した結果を表3に併せて示す。
【0040】
【表3】
Figure 0003910027
【0041】
表3より、嵌め合い寸法差が隙間5μmの通り嵌めでは、良好な接合強度を得られるが、隙間10μmの通り嵌めでは、十分な接合が得られず接合強度の低下が認められる。また、本試験の接合面の径が150mmの場合、締め代が、接合面の径の0.0025倍(0.375mm=375μm)の締まり嵌めでは良好な接合強度が得られるが、締め代がより大きい400μmの締まり嵌めでは、圧粉体の破損が認められた。
【0042】
[第4実施例]
内側部材圧粉体として、鉄粉に銅粉:1.5質量%、黒鉛粉:1.0質量%と、成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛(Zn−St)を添加した混合粉末と、ステアリン酸リチウム(Li−St)を添加した混合粉末を用いて第1実施例と同じ条件で圧粉成形して内側部材圧粉体を用意した。また、外側部材として、鉄粉と成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を添加した混合粉末と、ステアリン酸リチウムを添加した混合粉末を用いて第1実施例と同じ条件で圧粉成形して外側部材圧粉体を用意した。これらを組み合わせて、締め代が60μmの締まり嵌めで嵌め合わせたものをアンモニア分解ガス雰囲気中とブタン変成ガス雰囲気中で、1130℃に40分間保持したものについて接合強度と磁気特性を評価した結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
Figure 0003910027
【0044】
表4から明かなように、成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を用いた内側部材圧粉体と成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を用いた外側部材圧粉体を組み合わせてアンモニア分解ガス雰囲気中で焼結したもの、成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を用いた内側部材圧粉体と成形潤滑剤としてステアリン酸リチウムを用いた外側部材圧粉体を組み合わせてブタン変成ガス雰囲気中で焼結したもの、および、成形潤滑剤としてステアリン酸リチウムを用いた内側部材圧粉体と成形潤滑剤としてステアリン酸リチウムを用いた外側部材圧粉体を組み合わせてブタン変性ガス雰囲気中で焼結したものでは、いずれも良好な接合強度と磁気特性を示すが、特にステアリン酸リチウムを用いた外側部材圧粉体を用いてブタン変成ガス雰囲気中で焼結すると、接合強度が極めて高くなることが確認された。
なお、上記表においては、◎:実用上好適、○:実用上適用可能、△:実用限界、×:実用上適用不可、とする。
【0045】
【発明の効果】
本発明の永久磁石型ロータは、磁気特性の良好な外側部材と強度を有する内側部材を焼結接合したもので、軽量かつ磁気特性に優れており、本発明の製造方法によれば、このような優れた永久磁石型ロータを高い生産性で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る永久磁石型ロータの形状の一例を示す概略図である。
【図2】 本発明に係る永久磁石型ロータの形状のもう一つの例を示す概略図である。
【図3】 図2に示した本発明に係る永久磁石型ロータの内側部材と外側部材とを嵌め合わせて焼結した後の接合状態を示す概略図である。
【図4】 本発明の実施例で作製した外側部材および内側部材を示す断面図である。
【符号の説明】
1…外側部材、2…内側部材、3…永久磁石、12…接合面、21…外輪部、
22…内輪部、23…リブ、 23a…連結リブ、24…肉抜き部。

Claims (18)

  1. 内側部材と、軟磁性を有し内周が前記内側部材の外輪部外周と接する略環状の外側部材と、前記外側部材の外周に円周方向へ向けて等間隔に複数個配置された永久磁石とを備え、前記内側部材と前記外側部材の少なくともいずれか一方は焼結材料で構成され、かつ、前記内側部材および外側部材は互いに焼結接合されていることを特徴とする永久磁石型ロータ。
  2. 前記内側部材は、外輪部と軸孔部または軸部を有する内輪部とをリブで連結して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石型ロータ。
  3. 前記リブは円周方向に向けて互いに等間隔離間した複数個の連結リブからなり、前記永久磁石は、前記内側部材の前記リブに対向する前記外側部材の外周上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の永久磁石型ロータ。
  4. 前記外側部材は、C含有量が0.3質量%以下で、残部がFeおよび不可避不純物よりなる鉄系焼結材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の永久磁石型ロータ。
  5. 前記外側部材は、C含有量が0.3質量%以下であり、Si:3.5質量%以下、P:0.7質量%以下、B:0.3質量%以下、Cu:3.0質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有するとともに、残部がFeおよび不可避不純物よりなる鉄系焼結材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の永久磁石型ロータ。
  6. 前記外側部材は、飽和磁束密度が1.0T以上の磁気特性を有する溶性鋼であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の永久磁石型ロータ。
  7. 前記内側部材の組成は、JIS規格Z2550に規定されるSMF3種,4種または5種相当であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の永久磁石型ロータ。
  8. 鉄系の合金粉末またはFe粉を主体とする混合粉末を圧縮成形した内側部材圧粉体と、内径が前記内側部材圧粉体の外輪部外周と接する略環状の外側部材とを嵌め合わせ、両者を焼結して前記内側部材と前記外側部材とを一体化した後に、前記外側部材の外周上に永久磁石を配置固定することを特徴とする永久磁石型ロータの製造方法。
  9. 前記内側部材圧粉体は、外輪部と軸孔部または軸部を有する内輪部とを円周方向に向けて互いに等間隔離間した複数個の連結リブで連結した形状であり、前記永久磁石を、前記リブに対向する前記外側部材の外周上に配置することを特徴とする請求項8に記載の永久磁石型ロータの製造方法。
  10. 前記外側部材は、Fe粉に成形潤滑剤を混合した外側部材成形用混合粉末を圧縮した圧粉体であることを特徴とする請求項8または9に記載の永久磁石型ロータの製造方法。
  11. 前記外側部材は、Fe粉に成形潤滑剤を混合した外側部材成形用混合粉末を圧縮した後、焼結した焼結体であることを特徴とする請求項8または9に記載の永久磁石型ロータの製造方法。
  12. 前記外側部材成形用混合粉末は、Fe−P粉末、またはFe粉とFe−P粉末、および成形潤滑剤を混合した混合粉末であって、前記外側部材成形用混合粉末のP量が0.7質量%以下であることを特徴とする請求項10または11に記載の永久磁石型ロータの製造方法。
  13. 前記外側部材成形用混合粉末に、さらに、Si粉末、Fe−Si粉末、Fe−B粉末、Bを含む合金鉄粉末、Cu粉末、およびCu−B粉末のうち少なくとも1種以上を添加し、前記外側部材成形用混合粉末の組成中のSi量が3.5質量%以下、B量が0.3質量%以下、Cu量が3.0質量%以下であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の永久磁石型ロータの製造方法。
  14. 前記外側部材は、飽和磁束密度が1.0T以上の磁気特性を有する溶性鋼であることを特徴とする請求項8または9に記載の永久磁石型ロータの製造方法。
  15. 前記内側部材圧粉体の組成は、JIS規格Z2550に規定されるSMF3種,4種または5種相当であることを特徴とする請求項8〜14のいずれかに記載の永久磁石型ロータの製造方法。
  16. 焼結過程の800℃以上の高温域における内側部材の熱膨張量が外側部材の熱膨張量よりも大きくなる組成の内側圧粉体を用いることを特徴とする請求項8〜15のいずれかに記載の永久磁石型ロータの製造方法。
  17. 前記外側部材の内径と、前記内側部材の外径との嵌め合い寸法差が隙間5μm以下の通り嵌め、または締め代が接合面の径の0.0025倍以内の締まり嵌めであることを特徴とする請求項8〜16のいずれかに記載の永久磁石型ロータの製造方法。
  18. 亜鉛を含有する成形潤滑剤を用いて前記内側部材圧粉体を成形するとともに、浸炭性雰囲気中で焼結することを特徴とする請求項8〜17のいずれかに記載の永久磁石型ロータの製造方法。
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