JP3909780B2 - 高分子−金属酸化物超微粒子複合体およびその製造方法 - Google Patents

高分子−金属酸化物超微粒子複合体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子素材中に分散している金属酸化物の60重量%以上が平均粒径が100nm未満の一次粒子および/または二次凝集体からなる超微粒子として分散していることを特徴とする高分子−金属酸化物超微粒子複合体、およびその製造方法に関する。本発明の高分子−金属酸化物超微粒子複合体は可視光に対して透明な紫外線遮蔽材料や抗菌性プラスチックやさらには新規な炭素材合成原料として使用できる。
【0002】
【従来の技術】
一般に金属酸化物微粒子は電子・電気的機能、磁気的機能、光学的機能、あるいは生化学的機能などの種々の機能を発現するため、種々の工業製品、医薬品、触媒、バリスター(可変抵抗器)、塗料、化粧品など幅広い分野で使用されている。また、金属酸化物が有するこれらの多種多様な機能と高分子材料が有する成形加工の容易性を組み合わせた新規な材料の開発が盛んに行われている。
【0003】
例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン等の金属酸化物は紫外線A,B領域(光波長280〜400nm)における高い遮蔽機能を機能を有するため、高分子と複合化することにより紫外線遮蔽フィルム・シートとしての応用が期待される。また、金属酸化物の紫外線遮蔽効果を利用して高分子素材の耐光性を改良することも期待される。
【0004】
金属酸化物が有する様々な機能を高分子素材中で効果的に発現させるためには複合体中における金属酸化物を超微粒子化することが重要である。これは金属酸化物を超微粒子化することにより、金属酸化物の比表面積が極めて大きく増加し、微粒子を構成する全分子数中に占める微粒子表面に位置する分子の数の割合が増大することに起因する。また、金属酸化物を100nm以下の超微粒子として高分子素材中に分散させると、可視光領域における高い透明性と紫外線領域における高い遮蔽性が得られるようになる。
【0005】
しかしながら工業的に製造されている金属酸化物微粒子はその平均一次粒径が通常100nm以上であり、これらの金属酸化物微粒子と高分子素材を溶融混練などの手法により複合化する方法では、金属酸化物微粒子の平均一次粒径が本質的に大きすぎることや、複合体中では金属酸化物微粒子が容易に二次凝集を起こす等の理由により、市販の金属酸化物を高分子素材に複合化して紫外線遮蔽フィルム・シートを得ようとしても得られる複合体は紫外線に対する遮蔽効果も満足な効果が得られないばかりか可視光域(光波長400〜800nm)の透明性が大きく損なわれてしまう。
【0006】
特開昭62−84155号公報には界面活性剤で被覆された金属酸化物の超微粒子を熱可塑性樹脂に配合して紫外線遮蔽用の樹脂組成物を製造する方法が開示されている。この方法によれば熱可塑性樹脂中に平均粒径が100nm以下の酸化物微粒子を二次凝集をかなり防いで良好に分散させることができるので可視光領域で透明性を有する紫外線遮光フィルムあるいはシートを得ることができると記載されている。しかしながら、この方法では使用する熱可塑性樹脂により金属酸化物超微粒子の分散性が異なるために、透明性を維持するためには金属酸化物超微粒子を被覆する界面活性剤の種類を選択しなければならず、また、金属酸化物超微粒子の二次凝集を抑制するためには熱可塑性樹脂の混練温度や混練時間などの条件が限定されることがある。また、紫外線遮蔽効果も充分とはいえず改良の余地がある。さらに、該金属酸化物超微粒子は多量の界面活性剤に覆われているために、金属酸化物超微粒子が有する種々の機能が弱められたり、界面活性剤に起因する素材の耐水性の低下や熱安定性の低下が生じることがあった。
【0007】
従って、高分子素材中に平均粒径が100nm未満の金属酸化物超微粒子が分散した高分子−金属酸化物超微粒子複合体、並びにあらゆる高分子素材に対して容易に適用できる高分子−金属酸化物超微粒子複合体を得る方法が望まれていた。
【0008】
【課題が解決しようとする課題】
本発明は高分子素材中に平均粒径が100nm未満の金属酸化物超微粒子の一次粒子および/または二次凝集体が分散した高分子−金属酸化物超微粒子複合体、並びにあらゆる高分子素材に対して高分子素材が本来有する成形加工の容易性や機械的物性を維持したままで高分子素材中に容易に金属酸化物の超微粒子を分散させる方法、更に該複合体を用いた材料用途を提供するためになされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高分子素材と金属化合物からなる複合体を製造する途中、および/または作製した後に高分子素材中で金属化合物を熱や光や加水分解などの作用により酸化分解させることにより、高分子素材中に平均粒径が100nm未満の金属酸化物超微粒子を分散させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜()である。
【0012】
) 高分子素材と金属化合物の複合体を溶液ブレンドまたは溶融ブレンドにより作製した後に該複合体中の金属化合物を酸化分解せしめることにより、高分子素材中に100ppm以上30,000ppm以下の金属酸化物超微粒子が分散しており、金属酸化物超微粒子の一次粒子および/または二次凝集体の平均粒径が100nm未満であり、かつその60%以上の粒径が100nm以下である高分子−金属酸化物超微粒子複合体を製造する方法。
【0013】
) 重合性単量体もしくは重合性単量体溶液に金属化合物を溶解させて重合反応を行う途中、および/または重合反応終了後に金属化合物を酸化分解せしめることにより、高分子素材中に100ppm以上30,000ppm以下の金属酸化物超微粒子が分散しており、金属酸化物超微粒子の一次粒子および/または二次凝集体の平均粒径が100nm未満であり、かつその60%以上の粒径が100nm以下である高分子−金属酸化物超微粒子複合体を製造する方法。
【0014】
)固体状の高分子素材に金属化合物もしくは金属化合物を含む溶液を含浸させた後、金属化合物を酸化分解せしめることにより、高分子素材中に100ppm以上30,000ppm以下の金属酸化物超微粒子が分散しており、金属酸化物超微粒子の一次粒子および/または二次凝集体の平均粒径が100nm未満であり、かつその60%以上の粒径が100nm以下である高分子−金属酸化物超微粒子複合体を製造する方法。
【0019】
本発明の高分子−金属酸化物超微粒子複合体では、高分子素材中に分散している金属酸化物の60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上の粒子が、平均粒径が100nm未満の一次粒子および/または二次凝集体からなる超微粒子として分散していることが必要であり、本発明では金属酸化物微粒子の粒径が100nm未満の場合を特に超微粒子と呼ぶことにする。
【0020】
高分子素材中に分散している金属酸化物の40%を超える量が、平均粒径が100nm以上の一次粒子および/または二次凝集体として分散している場合は、可視光に対する透明性や紫外線に対する遮蔽性や抗菌性能等の種々の機能が著しく低下する。
【0021】
また、本発明の高分子−金属酸化物超微粒子複合体は炭素形成量が多いという特徴を有するために新規な炭素材合成原料としての応用が可能であるが、この場合においても、高分子素材中に金属酸化物が、平均粒径が100nm以上の一次粒子および/または二次凝集体として、その粒子総数の40%を超える量で分散している場合は炭素形成促進作用が十分に得られない。
【0022】
さらに、本発明の高分子−金属酸化物超微粒子複合体では、金属酸化物の一次粒子および/または二次凝集体の平均粒径は100nm未満である必要があり、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。
【0023】
平均粒径は次のように測定する。作製した高分子−金属酸化物超微粒子複合体をウルトラミクロトームを用いて超薄片を作製し、この切片をコロジオン支持膜を張り付けた銅製グリッド上にのせ、カーボン蒸着処理を行って、透過型電子顕微鏡観察用試料とする。超薄切片の厚みは50nm以上100nm以下である。透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 JEM−1200EX)を用いて加速電圧100kVで観察倍率5万倍あるいは10万倍で行い、これを写真倍率20万倍あるいは40万倍にした写真を用いる。次にこの写真を用いて写真中の金属酸化物の粒子数と粒径を計測し、金属酸化物粒子の直径の算術平均を平均粒径とする。また、複合体中に金属酸化物超微粒子の二次凝集体が含まれる場合は二次凝集体の最大径を粒径とする。
【0024】
本発明の高分子−金属酸化物微粒子複合体中の金属酸化物超微粒子の適切な含有量は使用する高分子素材や用途・目的によって異なるが、金属酸化物超微粒子の含有量が多い二次凝集が発生しやすくなって得られる機能が低下したり、高分子素材の物性を維持するのが困難となったり、あるいは経済的にも好ましくないので、通常は成形体中に10ppm以上100,000ppm未満である。金属酸化物超微粒子が10ppm未満では効果が安定せず、かつ顕著でないことから10ppm以上であることが必要である。複合体中の金属酸化物超微粒子の好ましい配合量は50ppm以上50,000ppm以下、さらに好ましくは100ppm以上30,000ppm以下である。
【0025】
また、高濃度に金属酸化物超微粒子が複合化された高分子−金属酸化物微粒子複合体は金属酸化物超微粒子のマスターバッチとして使用することができ、成形加工や溶融混練の過程で最終的な濃度に調製することも可能である。
【0026】
本発明に用いられる高分子素材としては特に限定されるものではなくその選択は用途による。
【0027】
本発明に用いられる高分子素材の例としては、熱可塑性樹脂や、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂や、天然ゴムや、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、塩酸ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、多硫化ゴム等の合成ゴムや、ポリビニルアルコール、再生セルロース、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、アラミド等の繊維や、その他石油ピッチなどが挙げられる。これらの高分子素材のうち、熱可塑性樹脂を用いたものが生産性ならびに加工性に優れ、しかも広範な用途があるのでより好ましい。
【0028】
上記熱可塑性樹脂としては、例えばスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂および各種の熱可塑性エラストマーなどが挙げられるが、これらの中でスチレン系樹脂、メタクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、及びポリ塩化ビニル系樹脂が好適である。
【0029】
上記スチレン系樹脂としては、一般に成形用として使用されているもの、例えばスチレンの単独重合体(PS)、αメチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエン等の単独重合体、及びこれらの共重合体のほか、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、メチルメタクリレート・スチレン共重合体(MS)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)、スチレン・メタクリル酸共重合体(SMAA)、α−メチルスチレンまたはマレイミドを共重合してなる耐熱性スチレン樹脂、さらには、スチレン・アクリロニトリル系共重合体、α−メチルスチレン・アクリロニトリル系共重合体などを挙げることができる。
【0030】
ここで、スチレン・アクリロニトリル系共重合体としては、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(AAS)、アクリロニトリル・スチレン・塩素化ポリエチレン共重合体(ACS)、アクリロニトリル・スチレン・エチレン−プロピレンゴム共重合体(AES)、アクリロニトリル・スチレン・エチレン−酢酸ビニル共重合体、α−メチルスチレンまたはマレイミドを共重合してなる耐熱性ABS樹脂等を包含し、また、α−メチルスチレン・アクリロニトリル系共重合体としては、スチレン・アクリロニトリル系共重合樹脂のスチレン部分がα−メチルスチレンに置き変わったα−メチルスチレン・アクリロニトリル系共重合体を挙げることができる。
【0031】
上記メタクリル系樹脂としては、例えばメチルメタクリレート単独重合体の他、メチルメタクリレートにスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、各種のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルなどの他のモノマーを共重合させて各種の性能を改良したメタクリル樹脂、さらにはアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを主成分とする重合体あるいはブタジエンを主成分とする重合体にメチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、各種のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルなどをグラフト共重合した耐衝撃性メタクリル樹脂などが挙げられる。
【0032】
上記オレフィン系樹脂としては、一般に成形用として使用されているもの、例えば超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、酢酸ビニル含有量が0.1〜25重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸含有量が0.1〜25重量%のエチレン・アクリル酸共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン含有量が2〜40モル%の結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体、エチレン含有量が0.5〜10モル%の結晶性エチレン・プロピレンランダム共重合体、ポリブテン、エチレン・プロピレンラバー、エチレン・プロピレン・ジエンラバーなどを挙げることができる。この中でも、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。
【0033】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば塩化ビニル単独重合体の他、塩化ビニルにエチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等をコモノマーとして重合させて得られた共重合体や、ポリ塩化ビニルにMBS樹脂、ABS樹脂、ニトリルゴム、塩素化ポリエチレン、EVA−PVCグラフト共重合体、さらには各種の可塑剤を添加した改質ポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができる。
【0034】
これらの熱可塑性ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜800,000、さらに好ましくは100,000〜500,000の範囲にあるものが、成形性に優れるので好適である。また、これらの熱可塑性ポリマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてポリマーアロイとして用いてもよい。
【0035】
本明細書における金属化合物とは、通常、有機金属化合物と呼ばれるアルキル基またはアリール基等の炭化水素基と金属原子間に直接の結合を有する化合物の他に、錯体、金属カルボニル、並びに金属アルコキシド、さらには高分子錯体が含まれ、高分子素材の溶融体または溶液、さらには重合性単量体に対して溶解度が高く、かつ熱、光、あるいは加水分解等の作用により容易に酸化分解されて金属酸化物を生成する金属化合物を好ましく使用することができ、この条件を満たすものであれば特に限定されない。
【0036】
このような金属化合物として、例えば、金属または金属類似元素の原子にカルボニル基、アルキル基、オレフィン基、アリール基、シクロブタジエン基をはじめとする共役ジエン基、シクルペンタジエニル基をはじめとするジエニル基、トリエン基、アレーン基、シクロヘプタトリエニル基をはじめとするトリエニル基などから選ばれる配位子を1種あるいは2種以上有する各種の金属化合物、金属または金属類似元素の原子にアセチルアセトン、エチレンジアミン、ビピペリジン、ビピラジン、シクロヘキサンジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンビス(グアニド)、エチレンビス(サリチルアミン)、テトラエチレングリコール、アミノエタノール、グリシン、トリグリシン、ナフチリジン、フェナントロリン、ペンタンジアミン、ピリジン、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン、ポルフィリン、チオ尿素などから選ばれる配位子を1種あるいは2種以上有する各種の錯体、配位子としてカルボニル基を有するFe、Cr、Mn、Co、Ni、Mo、V、W、Ruなどの各種金属カルボニル、さらにはアルコールの水酸基の水素が金属で置換されたアルコキシド類等を使用することができる。
【0037】
高分子錯体としては不飽和結合を有する金属化合物の単独重合体の他、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどの不飽和化合物との共重合体も使用することができる。
【0038】
また、これらの金属化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0039】
前述の高分子素材に配合する金属化合物の配合量は使用する金属化合物に依存するが通常0.001〜50重量%の範囲とするのが好ましく、特に0.01〜30重量%が好ましい。この配合比が0.001重量%以下では効果がほとんど現れず、一方、50重量%を超えると金属化合物の蒸気や分解ガスの対処が煩雑になるので好ましくなく、さらには最終的に得られる複合体中において金属酸化物の二次凝集が生じたりして超微粒子としての分散が困難になるために好ましくない。
【0040】
以下、前述した本発明の高分子−金属酸化物微粒子複合体の製造方法(2)〜(4)について更に詳しく説明する。
【0041】
前記(2)の方法において溶液ブレンドとは、高分子素材と金属化合物を共通溶媒に溶解させて適当な基板状に溶液を流延するか、あるいはバーコート、スピンコート、スプレー等の方法により溶液を基板状に塗布し、溶媒を蒸発させることにより、高分子素材中に金属化合物が分子状に分散した複合体を調製する方法を表す。この方法では溶液ブレンドにより高分子−金属化合物複合体を作製する途中及び/または作製後に光照射、加熱処理、あるいは加水分解処理を行うことにより複合体中の金属化合物を酸化分解せしめることによって、最終的に高分子素材中に平均粒径が100nm未満の金属酸化物超微粒子が分散された複合体を得る。
【0042】
ここで使用される金属化合物は使用する高分子素材並びに使用する溶媒に対する溶解度が大きいことが必要であり、もし金属化合物の溶解度が小さい場合かもしくは不溶である場合は高分子素材中に金属化合物を分子レベルで分散させることができないので、本発明の目的とする金属酸化物が超微粒子で分散した高分子−金属酸化物超微粒子複合体を得ることが困難となる。
【0043】
溶媒としてはキシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン等の公知の有機化合物を溶媒として使用することができるが、一般に低沸点のものが溶媒蒸発に要する時間が短時間ですむので好ましく、さらに溶媒は使用する高分子素材に対する溶解力を考慮して適宜選択される。
【0044】
また、この方法では高分子−金属化合物複合体を作製する途中で酸化分解反応を生じさせるよりも、溶媒を完全に蒸発させて複合体を充分に固化させた後に金属化合物に酸化分解反応を生じせしめる方が、最終的に得られる金属酸化物超微粒子の平均粒径が小さく、かつ分散が複合体中で均一であるために好ましい。例えば、光に対して分解反応を受けやすい金属化合物を使用する場合においては暗所中で高分子−金属化合物複合体を作製し、複合体が固化した後に光照射を行って酸化分解反応を行うのがよい。
【0045】
前記(2)の方法で示す溶融ブレンドとは加熱可塑化された高分子溶融体に金属化合物を溶融状態で混練ブレンドする方法を示す。この方法では高分子と金属化合物を溶融混練する途中において加熱処理、光照射、あるいは加水分解処理を行うことにより複合体中の金属化合物を酸化分解せしめることによって、最終的に高分子素材中に平均粒径が100nm未満の金属酸化物超微粒子が分散した複合体を得る。
【0046】
この方法では溶融混練装置として、一軸あるいは多軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの公知の混練装置を用いることができるが、最も効率の良い製造方法は押出機を用いて、あらかじめ高分子素材を加熱溶融させ、押出機の途中から金属化合物あるいは有機溶媒に希釈した金属化合物溶液を注入し、混練と同時に金属化合物を酸化分解させる方法である。
【0047】
また、高分子素材の溶融体と金属化合物を混練した後、必要に応じて金属化合物の分解促進剤となる水や各種の酸化促進剤を添加して酸化反応を行ってもよい。ここで、金属化合物の酸化分解反応で発生するガス、あるいは金属化合物の揮発分は押出機にベント口を設けて、減圧脱揮することにより除去することができる。また、得られた高分子−金属酸化物超微粒子複合体は直ちにペレット化する事により、各種の成形用材料として使用することができる。
【0048】
さらに、この方法では溶融混練時の諸条件(温度、回転数、押出機のL/D、押出機のスクリューの形状、吐出量等)によって複合体中の金属酸化物超微粒子の分散状態や平均粒径を制御することが可能である。
【0049】
前記(3)に示す方法は重合性単量体もしくは重合性単量体溶液に金属化合物を溶解させて重合反応を行う途中、および/または重合反応終了後に金属化合物を酸化分解せしめることにより高分子素材中に平均粒径が100nm未満の金属酸化物超微粒子が分散した高分子−金属酸化物超微粒子複合体を得る方法であり、この方法では熱可塑性樹脂の原料である重合性単量体を金属化合物の存在下でラジカル反応で塊状重合あるいは溶液重合を行うことによって容易に得ることができる。この方法では重合中に不活性ガスを流して金属化合物の分解性を制御することもできる。
【0050】
重合終了後はそのまま高分子−金属酸化物超微粒子複合体として使用しても良いが、場合により、未反応の重合性単量体や金属化合物を減圧下で脱揮させたり、あるいは貧溶媒中に析出させるなどして高分子−金属酸化物超微粒子複合体を得ることができる。
【0051】
さらにこの方法では重合を終了させ、高分子素材を固化させた後にさらに金属化合物を酸化分解させてもよいし、得られた重合体を溶融混練装置により加工する際に酸化分解させることも可能である。
【0052】
前記(4)に示す方法は固体状の高分子素材に金属化合物もしくは金属化合物を含む溶液を含浸させることにより高分子素材と金属化合物の複合体を作製した後に該複合体中の金属化合物を酸化分解せしめることにより高分子素材中に平均粒径が100nm未満の金属酸化物超微粒子が分散した高分子−金属酸化物超微粒子複合体を得る方法であるが、この方法は不溶不融の高分子素材に対して好ましく適用することができる。
【0053】
ここでいう不溶不融の高分子素材とは三次元的に架橋されてた高分子素材、あるいは分解温度以下で溶融しない高分子素材を示す。
【0054】
以上(2)〜(4)に示す方法により本発明の高分子−金属酸化物超微粒子複合体を得ることができる。
【0055】
本発明の高分子−金属酸化物超微粒子複合体が特に熱可塑性樹脂である場合は、一般に熱可塑性樹脂の成形に用いられている公知の方法、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空成形などの方法によって各種成形体に成形される。また、フィルムや二軸延伸フイルム、シート、発泡シート、発泡ビーズなどに成形された後、さらに所望の成形体に成形することもできる。
【0056】
さらに、本発明によって得られる高分子−金属酸化物超微粒子複合体には必要に応じて各種添加剤成分、例えば、可塑剤、滑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、などをポリマー成分の重合時やポリマー成形体の成形加工時に配合することもできる。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
実施例1
ポリスチレン樹脂(PS 旭化成工業(株)製 商品名 スタイロンG8102)2gをクロロホルム50mlに溶解させ、PSが完全に溶解した後に、暗所中でペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)を0.1g滴下し、攪拌した後、直ちにガラスシャーレー上に溶液を流延し、暗所中で溶媒(クロロホルム)を自然蒸発させ、PS−Fe(CO)5複合膜を作製した。得られた複合膜を太陽光に2〜3時間暴露することにより複合膜中のFe(CO)5を酸化分解させ、PS−Fe23超微粒子複合膜を得た(厚さ150μm)。複合膜は透明で黄色を呈していた。
【0059】
図1は暗所中で製膜したPS−Fe(CO)5複合膜(曲線1)、並びに酸化分解処理によって得られたPS−Fe23超微粒子複合膜(曲線2)の赤外吸収スペクトルである。太陽光照射処理によりFe(CO)5のカルボニル伸縮に帰属される2,000cm~1の吸収が消失し、Fe(CO)5が酸化分解されたことがわかる。
【0060】
得られたPS−Fe23超微粒子複合膜中のFe23超微粒子の含有量を熱重量天秤(TGA パーキンエルマー社製 TAS7)を用いて空気気流中の900℃における熱分解残渣量から評価した結果、3,000ppm(重量ppm)であった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)に基づいて複合膜中のFe23超微粒子の平均粒子径を評価した結果、平均粒径は12nmであり、また二次凝集体は見られなかった。
【0061】
次に、このPS−Fe23超微粒子複合膜について紫外線・可視光分光光度計(日立製作所(株)製 スペクトロフォトメーター U−3210)を用いて、光波長190〜850nmにおける光透過率の測定を行った。図2の曲線2はその測定結果である。図2の曲線2で明らかなように、複合膜は可視光領域(λ=400〜800nm)における光透過率が高く透明性に優れていると同時に、紫外線A,B領域(λ=280〜400nm)における光透過率が極めて低く、本フィルムは可視光に対して透明でかつ紫外線領域における遮蔽性に極めて優れることがわかる。また、400nm付近の透過率変化が極めて急峻であり、紫外線遮蔽フィルターとして優れていることがわかる。
【0062】
比較例1
実施例1で使用したPSのクロロホルム溶液からキャストフィルム(厚さ150μm)を調製し、その光波長190〜850nmにおける光透過率の測定した。その結果を図2の曲線1に示す。
【0063】
比較例2
実施例1で使用したPS2gをクロロホルム50mlに溶解させ、PSが完全に溶解した後に、平均粒径40nmのFe23超微粒子(岡村製油(株)製 商品名 FE−12S)を0.004g配合して攪拌して溶解させた後、ガラスシャーレー上に溶液を流延し、溶媒を自然蒸発させて複合膜(厚さ150μm)を得た。
【0064】
ここで使用したFe23超微粒子(FE−12S)は粒子表面が界面活性剤で被覆されており、有機溶剤に可溶で樹脂に分散しやすく、樹脂に配合した場合に可視光に対して透明性を与えることを特徴とするFe23超微粒子である。
【0065】
このPS−界面活性剤被覆Fe23超微粒子複合膜について光波長190〜850nmにおける光透過率の測定を行った。図2の曲線3はその測定結果である。該複合膜は可視光領域における光透過率が高く透明性に優れているが紫外線領域における遮蔽性が実施例1に比べると劣っていた。また、400nm付近の透過率変化が実施例1に比べて緩慢であることがわかる。
【0066】
比較例3
実施例1で用いたPSに市販のFe23(純度99.9%、日本レアメタル(株)製、平均粒径0.1μm)を1.0wt%配合し、二軸押出機(ZSK−25、WERNER & PFLEIDERER社製、ドイツ国)を用いて溶融混練を行い、ペレタイズを行ってポリマー組成物を得た。ここで、混練温度(シリンダー設定温度)は220℃とした。
【0067】
得られたポリマー組成物のペレットから熱プレスにより厚さ150μmのフィルムを作製した。このフィルム中のFe23粒子の分散状態をTEMに基づいて評価したところ、樹脂中に分散しているFe23粒子の60重量%以上が二次凝集体を形成していた。
【0068】
次にこのフィルムについて実施例1と同様に光波長190〜850nmにおける光透過率の測定を行った。結果を図2の曲線4に示す。本フィルムではFe23の凝集物が観測され、可視光領域の透明性が極めて低かった。また紫外線領域における遮蔽性が悪いことがわかる。
【0069】
実施例2
メタクリル樹脂(PMMA 旭化成工業(株)製 商品名 デルペット80N)2gをクロロホルム50mlに溶解させ、PMMAが完全に溶解した後に、暗所中でFe(CO)5を0.1g滴下し、攪拌した後、直ちにガラスシャーレー上に溶液を流延し、暗所中で溶媒を自然揮発させ、PMMA−Fe(CO)5複合膜を作製した。得られた複合膜を太陽光に2〜3時間暴露し、複合膜中のFe(CO)5を酸化分解させ、PMMA−Fe23超微粒子複合膜を得た(厚さ150μm)。複合膜は透明で黄色を呈していた。
【0070】
得られたPMMA−Fe23超微粒子複合膜中のFe23含有量を熱重量天秤を用いて評価した結果、3,000ppmであった。また、TEM観察に基づき、Fe23超微粒子の平均粒子径を評価した結果、10nmであり、また二次凝集体は見られなかった。
【0071】
次にこのPMMA−Fe23超微粒子複合膜について紫外線・可視光分光光度計を用いて、実施例1と同様に光透過率の測定を行った。本フィルムは実施例1と同様に可視光に対して透明でかつ紫外線領域における遮蔽性に極めて優れていた。
【0072】
実施例3
温度計、攪拌機、滴下ロート、及びコンデンサを備えた1リットルのセパラブルフラスコに、蒸留精製したスチレン200gを加え、さらにAIBN1grとFe(CO)510gを加えて60℃で窒素気流中で攪拌しながら8時間重合反応を行った。
【0073】
反応終了後、得られた反応生成物を減圧脱揮処理を行い、未反応のスチレンモノマーとFe(CO)5を除去し、固化させてPS−Fe23超微粒子複合体を得た(収量120g)。GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により得られた重合物の分子量測定を行ったところ重量平均分子量(Mw)が68,000であった。また、複合体中のFe23超微粒子の平均粒径を測定したところ10nmであり、二次凝集体は見られなかった。また、複合体中のFe23の含有量は1,000ppmであった。
【0074】
次にこのPS−Fe23超微粒子複合体を熱プレスすることにより厚さ150μmのフィルムを得た。得られた複合フィルムの光波長190〜850nmにおける光透過率の測定を行った結果、実施例1と同様に本フィルムは可視光に対して透明でかつ紫外線領域における遮蔽性に極めて優れていた。
【0075】
実施例4,5,6
スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂(AS 旭化成工業(株)製 商品名スタイラックAS789H、アクリロニトリル含有量30wt%)2gをクロロホルム50mlに溶解させ、ASが完全に溶解した後に、暗所中でFe(CO)5を0.1〜0.5g滴下し、攪拌した後、直ちにガラスシャーレー上に溶液を流延し、暗所中で溶媒を自然蒸発させ、AS−Fe(CO)5複合膜を作製した。得られた複合膜を太陽光に2〜3時間暴露し、さらに80℃で5時間熱処理を行うことにより複合膜中のFe(CO)5を酸化分解させ、AS−Fe23超微粒子複合膜を得た(厚さ150μm)。複合膜中のFe23超微粒子の平均分散粒径を測定したところ10nmであり、二次凝集体は見られなかった。
【0076】
次にこのAS−Fe23複合膜を窒素気流中(25ml/分)、昇温速度40℃/分の条件で熱重量天秤により熱重量変化挙動を調べた。
【0077】
【表1】
Figure 0003909780
【0078】
表1に各複合体の600℃における残渣量(wt%)を示す。表1の比較例4に示すようにAS樹脂単独の場合においては残渣が全く観測されなかったのに対してAS−Fe23超微粒子複合体は残渣量が著しく増大しており、複合体中のFe23超微粒子が炭素形成促進作用を及ぼしていることが示唆される。すなわち、本発明により得られたAS−Fe23超微粒子複合体は炭素収率が高い新規な炭素材原料となることが期待される。
【0079】
比較例4
実施例4で使用したAS樹脂に対して実施例4と同じ条件で熱重量変化挙動を調べた。
【0080】
その結果を表1の比較例4に示す。
【0081】
比較例5
実施例4で用いたAS樹脂に比較例3で使用したFe23を1wt%配合し、二軸押出機を用いて溶融混練を行い、ペレタイズを行ってポリマー組成物を得た。ここで混練温度(シリンダー設定温度)は220℃とした。
【0082】
次にこの組成物について実施例4と同様に熱重量変化挙動を調べた。その結果を表1の比較例5に示す。この複合体の600℃における残渣量はFe23の配合率に等しく、Fe23の配合による炭素の形成促進作用は観測されなかった。
【0083】
実施例7,8,9
直径1cmの試験管に蒸留精製したスチレン5〜9gと市販のジビニルベンゼン5〜1gを加え、さらにAIBNを0.5gを加えて60℃で5時間重合反応を行い架橋ポリスチレン(架橋PS)を重合した。
【0084】
反応終了後、得られた架橋PSを取り出し、粉砕処理を行った後、ソックスレー抽出器を用いてエタノールを環流させ10時間抽出洗浄し、洗浄後に真空乾燥機により乾燥させた。
【0085】
得られた架橋PSを10wt%のFe(CO)5のクロロホルム溶液に24時間浸漬した。その後、架橋PSを取り出し表面をメタノールで洗浄した後、太陽光に2〜3時間暴露し、さらに100℃で5時間熱処理を行い架橋PS−Fe23超微粒子複合体を得た。複合体中のFe23超微粒子の平均粒径をTEM観察に基づき測定したところ20nmであり、二次凝集体は見られなかった。
【0086】
次にこの架橋PS−Fe23超微粒子複合体について実施例4と同様に熱重量変化挙動を調べた。
【0087】
【表2】
Figure 0003909780
【0088】
表2に600℃における残渣量を示す。表2の比較例6,7,8に示すようにFe23超微粒子を含まない架橋PSの場合に比べて架橋PS−Fe23超微粒子複合体は残渣量が著しく増大しており、複合体中のFe23超微粒子が炭素形成促進作用を発現していることがわかる。すなわち、本発明により得られた架橋PS−Fe23超微粒子複合体は炭素収率が高い新規な炭素材原料となることが期待される。
【0089】
比較例6,7,8
実施例7,8,9で得た架橋PSにFe(CO)5を配合せずに熱重量変化挙動を調べた。その結果を比較例6,7,8に示す。
【0090】
実施例10
実施例1で使用したPS−Fe23超微粒子複合膜(厚さ150μm)について以下の抗菌力試験を実施した。
【0091】
すなわち、PS−Fe23超微粒子複合膜(厚さ150μm)を50mm×50mmに切り出し、エタノールをしみ込ませたガーゼで成形体表面をワイプして清浄にし、23℃、60%相対湿度雰囲気下で24時間放置し、抗菌力試験用検体とした。試験検体に菌液を0.5ml接種し、45mm×45mmのポリエチレンフィルムを密着させた後、37℃で保存し、保存開始時及び24時間後にSCDLP培地(日本製薬(株)製)で生存菌を洗い出した。この洗い出し液について菌数測定用標準寒天培地(ニッスイ(株)製)を用いた寒天平板培養法(37℃、24時間)により、生存菌数を測定し、検体1枚当たりの生存菌数に換算した。なお、試験菌は大腸菌(IFO3301)を使用した。試験菌液は大腸菌を、肉エキス5mg、ペプトン10mg、及び塩化ナトリウム5mgを1リットルの蒸留水に溶かした溶液に懸濁させ、1mlあたりの菌数が106個となるように調製した。
【0092】
【表3】
Figure 0003909780
【0093】
表3に結果を示す。表3の結果からPS−Fe23超微粒子複合膜は優れた抗菌力を有することがわかる。
【0094】
比較例9
比較例1で使用したPSキャストフィルム(厚さ150μm)について、実施例10と同様に抗菌力試験を実施した。表3の比較例9に示す。
【0095】
【発明の効果】
本発明の高分子−金属酸化物超微粒子複合体は可視光に対して透明であり、かつ金属酸化物超微粒子が有する様々な機能と高分子素材が有する易加工性、易成形性を兼ね備えた材料である。
【0096】
従って広範囲の用途、例えば、光学部品、紫外線遮蔽フィルム、サングラス、紫外線カットガラス、紫外線遮光窓、紫外線遮光容器、紫外線遮光プラススチックボトル、抗菌性フィルム、微生物除菌フィルター、抗菌性プラスチック成形体、漁網、テレビ用部品、電話機用部品、OA機器用部品、電気掃除機用部品、扇風機用部品、エアーコンディショナー用部品、冷蔵庫用部品、洗濯機用部品、加湿機用部品、食器乾燥機用部品などの各種のOA機器や家電製品、あるいは便座、洗面台用部品などの各種サニタリー用品、その他建材、車両部品、日用品、玩具、雑貨などの幅広い用途に使用することができる。
【0097】
また、本発明の高分子−金属酸化物超微粒子複合体は炭素の生成量が多いために新規な炭素材合成原料としての応用が可能であり、得られた炭素材は、電気電子材料(センサー、導電ペースト、電極、電磁波シールド、プリント配線など)、磁性材料(記憶素子、磁性粉など)、酸化還元触媒、脱臭剤、抗菌剤、脱色剤、水質改質剤、炭素繊維、脱酸素剤、あるいはセラミックスとの複合材料などに応用できる。
【0098】
さらに、本発明の製造方法によりあらゆる高分子素材に対して高分子素材中に金属酸化物超微粒子が分散した複合体を極めて容易に調製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で得られた、ポリスチレン−ペンタカルボニル鉄複合膜(曲線1)、及び、ポリスチレン−Fe23超微粒子複合膜(曲線2)の赤外吸収スペクトル。
【図2】実施例1及び比較例1、2、3に示す各フィルムの光透過率測定(フィルム厚150μm)。

Claims (3)

  1. 高分子素材と金属化合物の複合体を溶液ブレンドまたは溶融ブレンドにより作製した後に該複合体中の金属化合物を酸化分解せしめることにより、高分子素材中に100ppm以上30,000ppm以下の金属酸化物超微粒子が分散しており、金属酸化物超微粒子の一次粒子および/または二次凝集体の平均粒径が100nm未満であり、かつその60%以上の粒径が100nm以下である高分子−金属酸化物超微粒子複合体を製造する方法。
  2. 重合性単量体もしくは重合性単量体溶液に金属化合物を溶解させて重合反応を行う途中、および/または重合反応終了後に金属化合物を酸化分解せしめることにより、高分子素材中に100ppm以上30,000ppm以下の金属酸化物超微粒子が分散しており、金属酸化物超微粒子の一次粒子および/または二次凝集体の平均粒径が100nm未満であり、かつその60%以上の粒径が100nm以下である高分子−金属酸化物超微粒子複合体を製造する方法。
  3. 固体状の高分子素材に金属化合物もしくは金属化合物を含む溶液を含浸させた後、金属化合物を酸化分解せしめることにより、高分子素材中に100ppm以上30,000ppm以下の金属酸化物超微粒子が分散しており、金属酸化物超微粒子の一次粒子および/または二次凝集体の平均粒径が100nm未満であり、かつその60%以上の粒径が100nm以下である高分子−金属酸化物超微粒子複合体を製造する方法。
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