JP5551292B2 - 光学プラスチック製品の製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、微粒子状態の金属酸化物を分散させる手段として従来より特許文献1及び特許文献2に開示される手段が採用されていた。
特許文献1に開示された技術は、自己重合性のモノマーを金属錯体として合成するというものである。例えばこの特許文献1では金属原子とエピスルフィド基によって合成された錯体をモノマーとする技術である。
また、特許文献2に開示された技術はモノマーと金属酸化物との相溶性を向上させるために金属酸化物にモノマーとの相溶性を向上させる物質を付加する技術である。金属酸化物がモノマーに対して相溶性がなければ金属酸化物は分散できず、そもそも両者の相溶性がなければ光学プラスチックとしての透明性も得られない。特許文献2では具体的に重合性シランカップリング剤と金属アルコキシドから金属シラン縮合体を合成し、モノマーとの相溶性を向上させるようにしている。
そのため、モノマーの種類に関わらず金属化合物をモノマー中に確実に分散させる手段が求められていた。
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、その目的は、モノマーの種類に関わらず金属化合物をモノマー中に分散させることができる光学プラスチック製品の製造方法を提供することにある。
請求項2に記載の発明では請求項1に記載の発明において、前記副生成物であるアルコールは前記金属錯体を含む第1のモノマーと前記第1のモノマー又は前記第1のモノマーと相溶性のある前記第2のモノマーとを混合する前に除去することをその要旨とする。
請求項3に記載の発明では請求項1又は2に記載の発明において、前記第2のモノマーはイソシアネート化合物であることをその要旨とする。
請求項4に記載の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記副生成物であるアルコールは加熱真空処理によって除去することをその要旨とする。
ポリオール化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、有機多塩基酸と前記ポリオールとの縮合反応生成物、ハロゲン置換体も含まれる。
3官能イソシアネートとして、例えば1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフエニル−2,2,4’−トリイソシアネート、トリフエニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、トルイレンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフエニルイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネートが挙げられる。
ポリチオール化合物としては、例えばジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等の脂肪族ポリチオール及びそれらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換化合物が挙げられる。また、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,2′−ジメルカプトビフェニル、4,4′−ジメルカプトビフェニル、4,4′−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール及びそれらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換化合物が挙げられる。
エポキシ系モノマーとしては、例えば多価フェノール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるフェノール系エポキシ化合物、多価アルコール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるアルコール系エポキシ化合物、多価カルボン酸化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるグリシジルエステル系エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ウレタン系エポキシ化合物等が広く含まれる。
環状オレフィンモノマーとしては、例えば、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のカルボキシル基含有環状オレフィンが挙げられる。また、5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のヒドロキシ基含有環状オレフィンなどが挙げられる。また、5−アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のエステル基含有環状オレフィンが挙げられる。また、N−(4−フェニル)−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)などのN−置換イミド基含有環状オレフィン、8−メチル−8−シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどのシアノ基含有環状オレフィンなどが挙げられる。また、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンおよび5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのノルボルネンおよびその置換体等の多環の環状オレフィンが挙げられる。
第1のモノマーが有機金属化合物と錯体を構成した後に、更に第1のモノマーあるいは第1のモノマーと相溶性のある第2のモノマーを混合し熱又は光硬化させることで光学プラスチック製品が得られる。特に第2のモノマーを使用してモノマー混合体とする場合には混合前に副生成物を除去することが好ましい。
ここに、第1のモノマーとして最も好ましいものはポリチオール化合物又はポリオール化合物であり、第2のモノマーとして最も好ましいものはイソシアネート化合物である。モノマー単独で使用する場合にはアクリル系モノマーが好ましい。例えばモノマーとしてポリチオール化合物を使用し、特に有機金属化合物として金属アルコキシドを使用すると下記の反応式のようにアルコールが副生成物となるため除去が容易である。尚、下記式ではポリチオール化合物のメルカプト基(−SH)を水酸基(−OH)に変更するとポリオール化合物での反応式となる。
例えば、Alアルコキシドとしてアルミニウムエトキシド,アルミニウムトリエトキシド,イソブチルアルミニウムメトキシド,イソブチルアルミニウムエトキシド,アルミニウムイソプロポキシド,イソブチルアルミニウムイソプロポキシド,アルミニウムブトキシド,アルミニウムt−ブトキサイド;スズt−ブトキサイド;アルミニウムトリ−n−プロポキシド,アルミニウムトリ−n−ブトキシドが挙げられる。
Tiアルコキシドとしてテトラエトキシチタン,テトラ−n−プロポキシチタン,テトラ−n−ブトキシチタン,テトラ−i−プロポキシチタン,チタンメトキサイド,チタンエトキサイド,チタン−n−プロポキサイド,チタンイソプロポキサイド,チタン−n−ブトキサイド,チタンイソブトキサイドが挙げられる。
Zrアルコキシドとしてジルコニウムエトキサイド,ジルコニウム−n−プロポキサイド,ジルコニウムイソプロポキサイド,ジルコニウム−n−ブトキサイド,エトキサイドテトラ−n−プロポキシジルコニウム等が挙げられる。
1.錯体の生成
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート:以下PEMPと略す)25.19gを秤量し100mlナス型フラスコ内で、室温(本実施例では15℃)にてスターラーで攪拌している状態でチタニウムテトラブトキシド(以下、TTBと略す)6.81gを投入し、引き続き30分撹拌した。この作業によって錯体と副生成物としてのn−ブチルアルコール(1−ブタノール)が生成される。実施例1でのPEMPに対するTTB中の酸化チタン(TiO2)換算の割合は5重量%である。この段階の溶液は濁った淡黄色を呈している。尚、酸化チタンは実際にこの反応で生成されるわけではなく、TTB中のチタンを酸化チタンに換算することで重量%でのチタン含有量を分かりやすくしたものである。以下の換算割合はすべて同様の理由である。
1.で調製した溶液を70℃オイルバスフラスコに入れて泡が出なくなるまで真空加熱した(約3時間)。この段階でn−ブチルアルコールは除去される。真空度はそれほど厳密ではなく10−1Paのオーダーで行った。この段階の溶液は透明な淡黄色を呈している。得られた液体を放冷して室温に戻した。
3.第2のモノマーとの混合
2.において副生成物を除去した後の錯体化された上記溶液10.4gを秤量し、ビーカー内でスターラーによって攪拌しながら1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、H6-XDIと略す)8.0gを投入し上記と同じ真空度で3分間真空にして脱気した。
4.加熱硬化
3.で調製した溶液を、撥水剤を塗布したガラスで成型した型に入れ、16時間かけて25℃から130℃まで加熱して硬化を促し、その後徐冷してオレンジ色の透明プラスチックを得た。このプラスチックの屈折率は1.561であった。
1.錯体の生成
実施例2ではPEMP19.95gを秤量し100mlナス型フラスコ内で室温(本実施例では15℃)にてスターラーで攪拌している状態でジルコニウムテトラプロポキシド(以下、ZrTPと略す)のプロパノール溶液4.69gを投入し、引き続き30分撹拌した。この作業によって錯体と副生成物としてのn−プロピルアルコール(1−プロパノール)が生成される。実施例2でのPEMPに対するZrTP中の酸化ジルコニウム(ZrO2)換算の割合は5重量%である。この段階の溶液は濁った淡黄色を呈している。
2.副生成物の除去
実施例1と同様の作業で行った。得られた溶液は透明な淡黄色を呈している。
3.第2のモノマーとの混合
実施例1と同様の作業で行った。
4.加熱硬化
実施例1と同様の作業で行った。その結果、淡黄色の透明プラスチックを得た。このプラスチックの屈折率は1.531であった。
1.錯体の生成
ペンタエリスリトールエトキシレート(数平均分子量270)(以下、PEELと略す)25.19gを秤量し100mlナス型フラスコ内で、室温(本実施例では15℃)にてスターラーで攪拌している状態でTTB6.81gを投入し、引き続き30分撹拌した。この作業によって錯体と副生成物としてのn−ブチルアルコール(1−ブタノール)が生成される。実施例3でのPEELに対するTTB中の酸化チタン(TiO2)換算の割合は5重量%である。この段階の溶液は無色透明である。
2.副生成物の除去
1.で調製した溶液を70℃オイルバスフラスコに入れて泡が出なくなるまで真空加熱した(約3時間)。この段階でn−ブチルアルコールは除去される。真空度は上記実施例1と同様である。この段階の溶液は透明無色を呈している。得られた液体を放冷して室温に戻した。
3.第2のモノマーとの混合
2.において副生成物を除去した後の錯体化された上記溶液7.15gを秤量し、ビーカー内でスターラーによって攪拌しながら、H6-XDI10gを投入し上記と同じ真空度で脱気した。
4.加熱硬化
3.で調製した溶液を、撥水剤を塗布したガラスで成型した型に入れ、16時間かけて25℃から130℃まで加熱して硬化を促し、その後徐冷してオレンジ色の透明プラスチックを得た。屈折率は1.559であった。
1.錯体の生成
実施例4ではアクリル酸25.15gを秤量し100mlナス型フラスコ内で室温(本実施例では15℃)にてスターラーで攪拌している状態でTTB3.41gを投入し、引き続き30分撹拌した。この作業によって錯体と副生成物としてのn−ブチルアルコール(1−ブタノール)が生成される。実施例4でのアクリル酸に対するTTB中の酸化チタン(TiO2)換算の割合は0.32重量%である。この段階の溶液は透明なオレンジ色を呈している。
2.副生成物の除去
1.で調製した溶液を70℃オイルバスフラスコに入れて泡が出なくなるまで真空加熱した(約3時間)。この段階でn−ブチルアルコールは除去される。真空度は上記実施例1と同様である。この段階の溶液は透明な赤色を呈している。得られた液体を放冷して室温に戻した。
3.第2のモノマーとの混合
2.において副生成物を除去した後の錯体化された上記溶液10gを秤量し、ビーカー内でスターラーによって攪拌しながら2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.6gを投入した。
4.加熱硬化
3.で調製した溶液を、撥水剤を塗布したガラスで成型した型に入れ、21時間かけて40℃から120℃まで加熱して硬化を促し、その後徐冷して赤色の透明プラスチックを得た。このプラスチックの屈折率は1.498であった。
比較例1ではPEMP10.06gを秤量し、ビーカー内でスターラーによって攪拌しながらH6-XDI8.0gを投入し上記と同じ真空度で3分間真空にして脱気した。このモノマー混合体を、撥水剤を塗布したガラスで成型した型に入れ、16時間かけて25℃から130℃まで加熱して硬化を促し、その後徐冷して無色の透明プラスチックを得た。このプラスチックの屈折率は1.557であった。
(比較例2)
比較例2ではPEMP10.06gを秤量し、100mlナス型フラスコ内で室温(本実施例では15℃)にてスターラーで攪拌している状態で一次粒径7nmの酸化チタン(TiO2:(株)石原産業製)2.8重量%を投入し、更にここにH6-XDI8.0gを投入し、上記と同じ真空度で3分間真空にして脱気した。このモノマー混合体を、撥水剤を塗布したガラスで成型した型に入れ、16時間かけて25℃から130℃まで加熱して硬化を促し、その後徐冷したところ白濁したプラスチックを得た。
(比較例3)
比較例3ではPEMP25.19gを秤量し、100mlナス型フラスコ内で室温(本実施例では15℃)にてスターラーによって攪拌している状態で、TTB6.81gを投入し、引き続き30分撹拌した。この作業によって錯体と副生成物としてのn−ブチルアルコールが生成される。比較例3でのPEMPに対するTTB中の酸化チタン(TiO2)換算の割合は5重量%である。この段階の溶液は濁った淡黄色を呈している。
この溶液10.4gを秤量し、ビーカー内でスターラーによって攪拌しながらH6-XDI8.0gを投入したところ、すぐに発熱して硬化が起こり、脱気を行う前に不透明なオレンジ色の重合物が得られた。
(比較例4)
比較例4ではアクリル酸25.15gを秤量し、ビーカー内でスターラーによって攪拌しながら2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.6gを投入した。このモノマー混合体を、撥水剤を塗布したガラスで成型した型に入れ、21時間かけて40℃から120℃まで加熱して硬化を促し、その後徐冷して赤色の透明プラスチックを得た。このプラスチックの屈折率は1.495であった。
上記のように実施例はいずれも良好な樹脂が得られた。実施例1〜3の屈折率は比較例1の金属酸化物を混合しない場合と比較して光学的な優位性が十分認められた。また、実施例4の屈折率も比較例4の金属酸化物を混合しない場合と比較して光学的な優位性が認められた。また、モノマーとの相溶性がない酸化チタン微粉末を使用した比較例2では光学プラスチック製品としては不向きな白濁したものが得られた。また、比較例3では副生成物であるn−ブチルアルコールを除去しないことが原因と思われる不透明硬化物が確認された。
Claims (4)
- ポリチオール化合物又はポリオール化合物からなる第1のモノマー中に金属アルコキシドを添加し、前記第1のモノマーを配位子として金属錯体を生成させるとともに前記金属錯体を生成する際に副次的に合成される副生成物であるアルコールを除去し、前記金属錯体を含む第1のモノマーと前記第1のモノマー又は前記第1のモノマーと相溶性のある第2のモノマーとを混合し、熱又は光硬化させることを特徴とする光学プラスチック製品の製造方法。
- 前記副生成物であるアルコールは前記金属錯体を含む第1のモノマーと前記第1のモノマー又は前記第1のモノマーと相溶性のある前記第2のモノマーとを混合する前に除去することを特徴とする請求項1に記載の光学プラスチック製品の製造方法。
- 前記第2のモノマーはイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学プラスチック製品の製造方法。
- 前記副生成物であるアルコールは加熱真空処理によって除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学プラスチック製品の製造方法。
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