JP3909717B1 - ハエ及び蚊取り線香 - Google Patents
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Abstract
Description
蚊取線香は、マッチ一本で空間処理を時間的にも保持し、燃え尽きるまで効力は一定なので非常に合理的な殺虫形態である。蚊取線香の有効成分は燃焼部から数mm離れた200〜250℃付近の部位から揮散し、この温度は電気蚊取の発熱体温度(120〜170℃)と比べると幾分高い。従来のピナミンフォルテ含有線香は、ハエに対する効力は弱く、線香中の有効成分濃度をアップしてもハエ取り線香への適用は困難であった。
また、特開2001−11022号公報(特許文献4)には、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレートを含有する蚊取線香が、アカイエカに有効であったことが記載されているが、線香形態のハエに対する効力評価については何の記載もない。
更には、特公平1−50216号公報(特許文献5)には、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート(後述するように、本願発明のベースを為す有効成分)を殺虫剤として採用している場合を開示しているが、液剤としての効力試験が示されているだけであって加熱を伴う線香状態における殺虫効力試験については特に具体的な検討が行われている訳ではない。
(1)有効成分として、下記化学式
で表される、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレートを0.01〜0.5質量%配合したことに基づくハエ及び蚊取り線香において、効力増強剤として、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドを、有効成分量に対して0.5〜4.0倍量配合したことに基づくハエ及び蚊取り線香。
(2)効力増強剤として、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドに加えて更にアルキルベンゼンスルホン酸の低級アルキルアミン塩を含有し、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドとアルキルベンゼンスルホン酸の低級アルキルアミン塩の配合比率が、5:1〜1:1である(1)記載のハエ及び蚊取り線香。
(3)アルキルベンゼンスルホン酸の低級アルキルアミン塩が、ドデシルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩である(2)記載のハエ及び蚊取り線香。
前記基本的技術思想の客観的な位置付けについて説明するに、背景技術の項において指摘したように、特許文献3には、フェニル基の4位が置換されたテトラフルオロベンジルアルコールの2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレートによる一般式の化合物を有効成分とする殺虫線香が開示されており、当該一般式は本願発明が立脚している化合物Aを上位概念として包摂している。
しかしながら、特許文献3においては、化合物Aに関する殺虫効力試験を行っている訳ではなく、ましてやハエ取り線香としての効力については何ら開示及び示唆している訳ではない(したがって、特許文献3との関係では、化合物Aは、前記(1)の基本構成は選択発明に該当する。)。
しかしながら、前記のような場合に該当する知見は、当該有効成分や製剤形態の特性によっては必ずしも妥当する訳ではない。因みに、特許文献4に開示されている4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレートを含有する蚊取り線香は、特許文献4に開示されているように、アカイエカに高い殺虫効果を示すが、本発明者らが実施した殺虫効力試験によれば、有効成分の濃度を高くしてもハエに対しては殆ど無効であった。
したがって、ハエ及び蚊取りの双方を兼用し得る線香の開発にあたっては、蚊に対する効力試験データのみからハエに対する効果を予測することは不可能で、供試化合物ごとに、実際にハエ及び蚊の両方に対する効力試験を行ってはじめて評価が可能となる。
そして、前記(1)の基本構成においては、特に化合物Aが単に高い殺蚊効力を有するだけでなく、高い殺蠅効力を有することを、試行錯誤を伴う個別の実験によって明らかにした点に、画期的な意義を付している。
化合物Aは、ピナミンフォルテに比べハエならびに蚊に対して高い殺虫効力を有するが、前記殺虫効力を特に顕著とするためには、蚊取り線香中において0.1〜0.3質量%配合されることが好ましい。
効力増強剤Aとアルキルベンゼンスルホン酸の低級アルキルアミン塩の比率は、5:1〜1:1の範囲がよく、この範囲を外れると効力増強効果が低下する。
安定剤A:2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BHT)、
安定剤B:2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、
安定剤C:2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、
安定剤D:4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、
安定剤E:4,4’−チオビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、
安定剤F:2−ターシャリーブチル−6−(3−ターシャリーブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、
安定剤G:2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル 3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンゾエート。
・効力増強剤B:ドデシルベゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩
・効力増強剤C:ドデシルベンゼンススルホン酸エチルアミン塩
・化合物B:4-メトキシ-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル 2,2-ジメチル-3-(2,2-ジクロロビニル)シクロ
プロパンカルボキシレート(特許文献3開示の化合物)
・化合物C:4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル 2,2-ジメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)シクロ
プロパンカルボキシレート(特許文献4開示の化合物)
現在、蚊取線香の有効成分は世界的にd−アレスリンが使用され、標準的な含有量は0.2〜0.3質量%である。比較例3のピナミンフォルテ0.3質量%のものと比較すると、化合物Aは0.01質量%の低濃度でも、アカイエカに対して1.6倍のノックダウン効果を示し、イエバエに対するノックダウン効果も優れたのに対し、ピナミンフォルテ0.3質量%の場合、イエバエに対するノックダウン率は180分後でも10%以下に留まった。これに効力増強剤として効力増強剤A{N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド}を有効成分量に対して0.5〜4.0倍量配合することにより殺虫効力が明白に向上し、更に、効力増強剤Aに加えてアルキルベンゼンスルホン酸の低級アルキルアミン塩を配合することによって、効力増強効果は一層向上した。なお、効力増強剤であるN−(2−エチルヘキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ[2,2,2]−オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドは、効力増強剤Aと化学構造が類似し、従来からピレスロイドの共力剤として汎用されているにもかかわらず、化合物Aと組み合わせた本発明の線香形態では十分な効力増強効果を示さなかった。
これに対し、比較例1に示すように、化合物Aを採用しても0.01質量%未満ではハエならびに蚊に対する効力が不足で、一方、0.8質量%に高めても格段の効力増加は見込めなかった。ピナミンフォルテ含有線香(比較例6〜8)は、高濃度でもハエに対してほとんど無効であった。また、比較例11〜12に示すように、特許文献4開示の化合物については、蚊に対して有効であったが、ハエに対してはほとんど無効で、効力増強剤Aを加えることによる効力増強効果も乏しかった。このように、本発明が特徴とする効果、すなわち、ハエ及び蚊に対する優れた殺虫効力、及び効力増強剤Aを加えることによる優れた効力増強効果は、化合物Aに特異的であることを確認することができる。
・効力増強剤B:ドデシルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩
試験の結果、化合物Aを含有し、これに効力増強剤として効力増強剤A{N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド}を混用した本発明のハエ及び蚊取り線香は、感染症媒介蚊であるネッタイイエカやネッタイシマカに対しても極めて優れた殺虫効力を示した。
これに対し、ピナミンフォルテは、比較例1及び2に示すように、本発明で用いる効力増強剤を加えることによってそのノックダウン効果は向上するものの本発明のハエ及び蚊取り線香には及ばず、メトフルトリン線香(比較例3)もノックダウン効果は劣った。
同様に、近くに養豚場がありハエの侵入の多い家屋でこの線香を使用したところ、ハエの侵入が見られなくなり、蚊の防除にも有効であった。
Claims (3)
- 効力増強剤として、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドに加えて更にアルキルベンゼンスルホン酸の低級アルキルアミン塩を配合し、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドとアルキルベンゼンスルホン酸の低級アルキルアミン塩の配合比率が、5:1〜1:1であることを特徴とする請求項1記載のハエ及び蚊取り線香。
- アルキルベンゼンスルホン酸の低級アルキルアミン塩が、ドデシルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩であることを特徴とする請求項2記載のハエ及び蚊取り線香。
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