JP3909567B2 - 杭の継手構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、杭の継手構造に関し、さらに詳しくは、施工現場において下杭と上杭を継ぎ足す際に適用される継手構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、杭施工においては、その打設深度が大きい場合、複数本の杭体を継ぎ足しながら施工される。従来、杭の継ぎ足し作業は溶接により行われていたが、作業に時間を要すること、特殊技能が要求されること、天候に左右されること等の問題があった。そこで、これらの問題を解消すべく、溶接によらない種々の継手構造が提案されている(例えば特開平8−27781号公報、特開平9−137447号公報、特開平11−21882号公報、特開2000−319874号公報)。
【0003】
これら先行技術は、いずれも嵌合方式により上杭と下杭とを接続し、軸方向の抜け止め機構を付加したものである。しかしながら、特開平11−21882号公報に記載のものは、回り止め機構を具備していないので、施工後の信頼性に問題がある。他方、それ以外の前記公報に記載のものは、回り止め機構を具備しているものの、いずれもボルトによるねじ止め機構となっている。このため、構造が複雑となり、また接続作業にも手間がかかる等の問題が予想される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、回り止め機構を具備しているにもかかわらず構造が極めて簡素であって、しかも接続作業を簡単に行うことができる杭の継手構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、上下2つの杭体にそれぞれ設けられた嵌合雄部及び嵌合雌部を嵌合して、これらの杭体を接続する継手構造であって、
前記嵌合雌部の内周には、その端面から周方向に間隔を置いて杭の軸方向に形成された複数の軸方向溝と、それらの下部に連なって周方向に形成された周方向溝とが設けてあり、
前記周方向溝には内周に前記軸方向溝と整列する複数の係合溝が形成されたリング部材が嵌め込まれ、
前記嵌合雄部の外周には前記嵌合雌部との嵌合に伴って、前記軸方向溝を通って前記リング部材の前記係合溝に嵌入する複数の係合突起が周方向に間隔を置いて設けてあり、
前記リング部材は前記嵌合雌部に嵌合された前記嵌合雄部を回転させると回転し、該リング部材をその回転位置に固定する回転阻止手段を備えていることを特徴とする杭の継手構造にある。
【0006】
前記回転阻止手段は、例えば、前記リング部材の下端及び前記周方向溝部分の底壁の一方に周方向に間隔を置いて設けられた複数の係合凹部と、他方に設けられて前記リング部材が回転したとき前記係合凹部に嵌入する複数の係合凸部ととで構成することができる。
【0007】
また、前記回転阻止手段は、前記リング部材を複数の分割リングとし、前記周方向溝部分の底壁に、前記リング部材が回転したとき所定の分割リングが嵌入する係合凹部を設けることによって構成することもできる。
【0008】
この発明によれば、嵌合雄部と嵌合雌部とを嵌合させた状態で、嵌合雄部を転させるとリング部材が回転し、該リング部材は回転阻止手段によりその回転位置に固定される。この状態で嵌合雄部の係合突起は嵌合雌部の周方向溝に係合しているので、上下の杭体どうしの抜け止めがなされる。係合突起は、また、リング部材の係合溝に係合するとともに、当該リング部材は周方向溝に固定されているので回転が阻止され、上下の杭体どうしの回り止めがなされる。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明の第1実施形態を示す斜視図、図2は下杭のみを断面で示した正面図である。上側杭体1と下側杭体2とを接続する継手は、上側杭体1の下端に設けられた嵌合雄部3と下側杭体2の上端に設けられた嵌合雌部4とを備えている。嵌合雄部3は上端に外径が上側杭体1の外径と等しい基部5を有し、この基部5において杭体1の端面に溶接等により固着されている。また、嵌合雌部4は外径が下側杭体2の外径と等しくなっていて、下端において溶接等により下側杭体2の端面に固着されている。なお、この実施形態の継手構造は、杭体1,2がコンクリート杭、鋼管杭、SC杭のいずれの場合にも適用でき、例えばコンクリート杭の場合、嵌合雄部3及び嵌合雌部4は杭端部に設けられる鋼製の端板に固着される。
【0010】
嵌合雄部3の外周には複数(図示においては45度の角度間隔を置いた計4個)の係合突起6が設けられている。他方、嵌合雌部4の内周には嵌合雌部4の端面から周方向に間隔を置いて軸方向に形成された複数の軸方向溝7と、これらの軸方向溝7の下部に連なって周方向に形成された周方向溝8とが設けられている。周方向溝8の底壁には複数の係合凸部9が周方向に間隔を置いて設けられている。
【0011】
周方向溝8には図3に示すようなリング部材10が嵌め込まれる。図4は、このリング部材10を装着した状態を示す図であり、リング部材10は係合凸部9の上に載置された状態で周方向溝8に嵌め込まれる。リング部材10の内周には、該リング部材10が周方向溝8に嵌め込まれた状態において、軸方向溝7と軸方向に整列する複数の係合溝11が周方向に間隔を置いて形成されている。これらの係合溝11に嵌合雄部3の係合突起6が嵌入可能である。またリング部材10の下端には複数の係合凹部12が周方向に間隔を置いて設けられ、これらの係合凹部12には周方向溝8に形成した係合凸部9が嵌入可能である。
【0012】
次に、上記継手による杭の接続方法を図5及び展開図で示した図6を参照して説明する。図5及び図6(a)に示すように、係合突起6と軸方向溝7とを位置合わせして、上側杭体1の嵌合雄部3を下側杭体2の嵌合雌部4に嵌合させると、その嵌合に伴って係合突起6は軸方向溝7を通ってリング部材10の係合溝11に嵌入する。
【0013】
次いで、図6(b)に示すように、上側杭体1すなわち嵌合雄部3を矢印A方向に回転させると、これに伴ってリング部材10が回転する。そして、係合凹部12が係合凸部9の位置に達すると、リング部材10は下降してその係合凹部12に係合凸部9が嵌入する。この状態において、嵌合雄部3の係合突起6は周方向溝8に係合しているので、杭体1,2どうしの抜け止めがなされる。また、係合突起6が係合しているリング部材10は係合凸部9と係合凹部12との係合により、その回転位置に固定され、したがって係合突起6すなわち嵌合雄部3の回転が阻止され、杭体1,2どうしの回り止めがなされる。
【0014】
図7及び図8は第2実施形態を示し、図7はリング部材の斜視図、図8は接続状態を示す展開図である。この実施形態では、リング部材10は複数の分割リングからなり、具体的には周長が長い2つの分割リング10a,10aと、これらの分割リング10a,10a間に配置される周長が短い2つの分割リング10b,10bとからなっている。嵌合雄部3の係合突起6が係合される係合溝11は、周長の長い分割リング10a,10bに形成されている。また、図8に示すように、周方向溝8の底壁には周長が短い分割リング10bが嵌入可能な係合凹部13が設けられている。
【0015】
この実施形態の場合、図8(a)に示す嵌合雄部3と嵌合雌部4との嵌合状態において、図8(b)に示すように嵌合雄部3を矢印A方向に回転させると、周長の短い分割リング10bが係合凹部13に落下して嵌入する。その結果、リング部材10は回転位置に固定され、杭体1,2どうしの回り止めがなされる。
【0016】
嵌合雄部3及び嵌合雌部4の杭体1,2への取付けは、図9に示すように種々の形態を採りうる(図示ではリング部材を省略)。図9(a)は、上記実施形態で採用された取付け形態であり、嵌合雄部3及び嵌合雌部4を杭体1,2の端面にそれぞれ固着したものであり、この場合、前記したようにコンクリート杭、鋼管杭、SC杭いずれにも適用できる。図9(b)に示す取付け形態は、嵌合雄部3及び嵌合雌部4を杭体1,2の外周にそれぞれ固着したものであり、この場合、鋼管杭及びSC杭に適用できる。図9(c)に示す取付け形態は、嵌合雄部3及び嵌合雌部4を杭体1,2の内周にそれぞれ固着したものであり、この場合、鋼管杭に適用できる。
【0017】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の改変が可能である。例えば、第1実施形態においては、リング部材に係合凹部を設け、周方向溝の底壁には係合凸部を設けたが、これとは逆にリング部材に係合凸部を設け、周方向溝の底壁には係合凹部を設けるようにしてもよい。また、各係合部分の数は適宜増減することもできる。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、簡単な構造で杭体の抜け止め及び回り止めを達成することができ、しかも嵌合後に杭体を回転させるだけで抜け止め及び回り止めがなされるので接続作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】下杭のみを断面で示した同実施形態の正面図である。
【図3】リング部材を示す断面図である。
【図4】リング部材を装着した状態を示す図である。
【図5】同実施形態による杭の接続状態を示す断面図である。
【図6】同実施形態による杭の接続状態を示す展開図である。
【図7】この発明の第2実施形態で使用されるリング部材を示す斜視図である。
【図8】同実施形態による杭の接続状態を示す展開図である。
【図9】嵌合雄部及び嵌合雌部の杭体への種々の取付け形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1:上側杭体
2:下側杭体
3:嵌合雄部
4:嵌合雌部
6:係合突起
7:軸方向溝
8:周方向溝
9:係合凸部
10:リング部材
10a:分割リング
10b:分割リング
11:係合溝
12:係合凹部
13:係合凹部

Claims (3)

  1. 上下2つの杭体にそれぞれ設けられた嵌合雄部及び嵌合雌部を嵌合して、これらの杭体を接続する継手構造であって、
    前記嵌合雌部の内周には、その端面から周方向に間隔を置いて杭の軸方向に形成された複数の軸方向溝と、それらの下部に連なって周方向に形成された周方向溝とが設けてあり、
    前記周方向溝には内周に前記軸方向溝と整列する複数の係合溝が形成されたリング部材が嵌め込まれ、
    前記嵌合雄部の外周には前記嵌合雌部との嵌合に伴って、前記軸方向溝を通って前記リング部材の前記係合溝に嵌入する複数の係合突起が周方向に間隔を置いて設けてあり、
    前記リング部材は前記嵌合雌部に嵌合された前記嵌合雄部を回転させると回転し、該リング部材をその回転位置に固定する回転阻止手段を備えていることを特徴とする杭の継手構造。
  2. 前記回転阻止手段は、前記リング部材の下端及び前記周方向溝部分の底壁の一方に周方向に間隔を置いて設けられた複数の係合凹部と、他方に設けられて前記リング部材が回転したとき前記係合凹部に嵌入する複数の係合凸部とからなることを特徴とする請求項1記載の杭の継手構造。
  3. 前記回転阻止手段は、前記リング部材を複数の分割リングとし、前記周方向溝部分の底壁に、前記リング部材が回転したとき所定の分割リングが嵌入する係合凹部を設けて構成されていることを特徴とする請求項1記載の杭の継手構造。
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