JP3908133B2 - 質量計の荷重伝達機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁平衡式の質量センサ等において、秤量物の荷重を伝達する機構の支点部と力点部を、力点と支点の両方の機能を有する統合された部材により構成した荷重伝達機構に関する。
【0002】
例えば電磁平衡式の重量センサ(電子天秤)は、秤量物の荷重を電磁部に伝達し、この電磁部において負荷された秤量物の荷重に平衡する電磁力を得て、この電磁力に必要な電気量を介して秤量物の荷重を計測することをその基本原理としている。
【0003】
【従来の技術】
図8は特開昭62−82328号として本願発明者等が先に提案している電磁平衡式の重量センサの構成を示す。この構成において、秤量皿101に負荷された秤量物の荷重は、フレーム102から荷受112に伝達される。荷受112は支持部材122、上部リンク部材110、下部リンク部材121a、121bと共にロバーバル機構の一部を構成し、前記荷重が負荷されると、ロバーバル機構の動作として下方に変位するよう構成されている。
【0004】
荷受112側の荷重は荷重伝達部材113を介して、梃子として機能する部材(以下本発明の実施例も平成組めて「ビーム」と称する)115に伝達される。ビーム115はバネ部材である支点114を中心として揺動可能に構成され、力点として機能する荷重伝達部材113を介して負荷された秤量物の荷重により揺動し、この変位はレバー118に伝達され、レバー118は接続部材117を力点、取付部材126を支点として、レバー118の先端部に取付られたコイル119を上方に変位させようとする。このコイル119と永久磁石120とにより電磁部125が構成されており、コイル119の変位に平衡する電磁力を出力するようコイルに所定の電気量を供給し、かつこの電気量から秤量物の荷重(質量)を演算出力する。
【0005】
上記の構成において、重量センサの精度を向上させるためには、上記各機構を構成する部品の工作精度、各部品の組み立て精度をより向上させる必要がある。このうち、前記支点を構成するばね部材114、ビーム118の力点として作用し、かつ荷受け112とビーム115とを接続する荷重伝達部材113の工作精度、取付精度は装置全体の精度に大きく影響する。
【0006】
従来、力点である荷重伝達部材113及び支点であるばね部材114はプレス加工により板ばねの所定部分を押しつぶして製作していた。図8(A)はこのばね部材114および荷重伝達部材113の構成を示す。なお図示の各部材の配置は図8の荷受112とビーム115との間の取付状態に対応して表されており、中央に荷受112とビーム115とを接続する力点たる荷重伝達部材113が、またその両側にはビムー115の支点となるばね部材114がそれぞれ位置している。なお、ばね部材114の他端は図8の如く支持部材122に固定されている。
【0007】
図9(A)において、各ばね部材114は上下のねじ止め部114a、114bと、両者の間に位置する薄肉部114cとから構成されており、この薄肉部114cは前述の如くプレス加工により押しつぶされ薄く成形されている。同様に荷重伝達部材113にも上下にねじ止め部113a、113bが形成され、かつ中央にはやはりプレス成形による薄肉部113cが形成されている。なお、上述の構成と同様の構成としては特開2001−66178号等がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記荷重伝達部材113及びばね部材114はいずれも、各ねじ止め部113a、113b、114a、114b、に形成されているねじ挿通孔を介して対象にねじ止めすることによりそれぞれの取付対象に固着される。
この場合、ねじ止め部113a〜114bの平面度やねじ止め時の、ねじの回転による歪み等が荷重伝達機構の精度に影響する。この傾向は秤量装置の精度が向上するに従って顕著になり、秤量装置全体の精度に大きく影響することになる。
【0009】
このため、大型のワッシャを使用することにより歪みの発生を押さえたり、平面度の高い別部品を作成し、この別部品を介して取り付けを行う等の工夫がなされている。しかし、この方法にも限界があり、例え歪みの発生は防止できても、荷重伝達部材113、二つのばね部材114の取り付け位置や、ねじ込み強度度の微妙な差により、それぞれの荷重伝達機構毎に性能のばらつきが生じてしまうのが実情である。
【0010】
また、荷重伝達部材113及びばね部材114共にプレス加工で押しつぶしが可能な材料により形成されている。荷重伝達機構を構成する部品はアルミ材等特定の金属材料により形成されているが、アルミ材は押しつぶし加工をすると素材にクラックが生じてしまう。このため前記部材はアルミ材とは異なる材料により形成される必要があり、これら荷重伝達部材113及びばね部材114の温度係数が他の部品と異なることになって、秤量装置全体の温度特性に対して悪影響を与えている。
【0011】
更に、プレス加工自体にも問題がある。即ち、プレス加工により対象部分を押しつぶす方法は、加工精度が安定せず、例えば薄肉部の厚さが異なったり、あるいはこの厚さの差に起因して部品の全長が異なったりする等、ばらつきが多く、部品としての歩留りが悪いだけでなく、秤量装置の性能悪化の原因となっている。
【0012】
一方、プレス加工を用いない加工方法として、マシニングセンターによる切削加工(MC加工)による方法が提案されている。このMC加工によれば加工形状も設計どおりのものが実現できる。また、前記各部品113、114の取り付け時の問題の一つとして、ねじ止め部113a〜114b自体の歪みも問題となるが、この歪みの発生はねじ止め部の肉厚を厚くすることで解決できる。因みに、プレス加工では部品全体の肉厚を厚くすると薄肉部のプレス成形が不可能となるため、図9(A)の符号114´で示すように、はね部材114の側面からみても、ねじ止め部114a、114bの肉厚は比較的薄いものである。この点に関しても、MC加工では素材の肉厚に関係なく成形が可能であり、取り付け精度の高い部品を提供することができる。
【0013】
しかし、図9(A)に示すように支点、力点として複数の部品(図示では3点)を取り付けることには変わりなく、複数の部品の取り付け状態のばらつきという問題は依然として残っている。またMC加工は加工コストが高いと言う点でも問題である。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の問題点に鑑み構成されたものであって、力点として作用する荷重伝達部材、及び支点として作用する1個若しくは複数のばね部材を、一つの部材として一体的に形成し、かつ要すればこの部材をMC加工により構成し、従来問題となっていた、複数の部材の取り付け時の取り通状態のばらつきをなくし、かつねじ止め部の厚さも所望の厚さを設定でき、ねじ止めによる歪みの発生もなくした、力点と支点を兼ねる統合部材を構成し、かつこの統合部材により構成された荷重伝達機構であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
ねじの締め付けによる歪みの発生を防止できる剛性を有するよう厚みが設定された、アルミニウム等の金属素材をMC加工することにより、例えば中央の力点部、この力点部の両側に位置する一対の支点部を形成し、これら力点部及び支点部に対して薄肉部を切削形成することにより各部分に対して力点および支点の機能を持たせる。
【0016】
この部材にはネジ止め部が複数形成され、各ねじ止め部により当該部材を取り付け対象に固定する。なお、一つの部材で、ねじ止め部が多点形成される例としては図9(B)に示す部材130が従来より使用されている。しかし、この部材130はあくまでも上述のばね部材114、荷重伝達部材113、或いは前述のロバーバル機構を構成ばね材等、特定の目的に使用する部材を多点でねじ止めすることを目的とするものであり、本願の部材とその目的を異にする。
【0017】
【実施例】
以下本発明の実施例を図面を参考に説明する。
図1及び図2において、矢印1は力点と支点を兼ねる統合部材を示す。統合部材は図示の如く一体的に形成されており、その形成方法としては例えばアルミニウム素材をMC加工することにより形成されている。
【0018】
2A及び2Bは統合部材1のうち、支点として機能する支点部であり、薄肉部2Aa、2Baを介して上部に位置する一体取付部3に接続している。なお符号2A´、2B´は各薄肉部2A、2Bのねじ止め部を示す。
符号4は前記支点部2A、2Bの中央に位置する力点部である。力点部4は後述するように複数の薄肉部が形成された連接部4Aを介して前記一体取付部3に連接している。
【0019】
符号4Aaは力点部4の連接部4Aにおいて、ねじ止め部4´側に形成された第1の薄肉部たる下部薄肉部、符号4Abは一体取付部3側に形成された上部薄肉部であり、これら上下の薄肉部4Aa、4Abは何れも前記支点部2Aおよび2Bの薄肉部2Aaおよび2Baと同じ方向に切削加工することにより、薄肉部を介した各部の揺動方向が同じ方向となるよう構成されている。
【0020】
符号4Acは前記薄肉部4Aa及び4Abと揺動方向がほぼ直交するよう形成された薄肉部である。これら薄肉部の組み合わせにより力点部4のねじ止め部4´は基本的に360度方向に揺動変位が可能となる。これによって、荷受け側から伝達される秤量物の荷重により捩れ荷重等、秤量物の直接的な荷重以外の応力が生じても、この薄肉部の組み合わせによりその応力が解消され、荷重伝達機構全体に対して悪影響が生じないようにすることができる。
【0021】
図3及び図4は図1及び図2に示す統合部材1に対する部品の取付状態の一例を示す。この統合部材1の取付対象は図8に示した部材を例に説明する。
先ず統合部材1の一体取付部3は梃子として機能するビーム115に対してねじ止めされる。各支点部2A及び2Bのねじ止め部2A´及び2B´は前記ビーム115と同じ側において支持部材122に取付られ、これによりビーム115は支点部2A及び2Bの薄肉部2Aa、2Baを支点として揺動可能に構成される。
【0022】
一方荷受け112はビーム115及び支持部材122の取付面とは反対の面ににおいて統合部材1の中央に位置する力点部4のねじ止め部4´にねじ止め固定される。
【0023】
この構成において秤量物の荷重は荷受け112を介して図4の矢印WT1の方向に負荷される。この加重1の負荷によりビーム115は支点部2A、2Bの薄肉部2Aa、2Baを支点としてWT2の方向に揺動する。この場合、力点部4のねじ止め部4´と一体取付部3との間には図示の如く揺動方向の異なる薄肉部4Acが形成されているため、例え荷受け112に捩れ等の応力が発生しても、この応力は薄肉部の組み合わせで吸収されるので、ビーム115の動作等に悪影響を与えることはない。また図示の構成では荷重の負荷方向WT1及びビーム115の回動WT2を矢印を用いて記載してあるが、これは飽くまでも変位の方向を示すものであって、電子天秤の実際の作動ではビームの変位はフィードバック制御により直ちに電磁部の電磁力で解消されるため、実際の変位量そのものは極めて僅かである。
【0024】
図5は本発明の第2の実施例を示す。この実施例では支点部2A及び2Bの薄肉部2Aa、2Baを一方向からのみ切削加工した構成としている。この構成を図4を用いて説明すると薄肉部2Aa、2Baがビーム115、及び支持部材122側に移動することによりその支点が当該ビーム115、及び支持部材122側に移動し、ビーム115の梃子比が小さくなる。逆にこの統合部材1を180°反転させて各部材を統合部材1のそれぞれ逆の面に取り付ければ梃子比は図3及び図4に示す構成よりも大きくなる。また本実施例では薄肉部の加工が一方向のみであるため加工の費用を低減できる。
【0025】
図6は第3の実施例を示す。この実施例では支点部2A、2B及び力点部4の各薄肉部の幅を減少させ、荷重伝達機構の感度をより向上させるよう構成されている。先ず左右の支点部2A及び2Bの薄肉部2Aa、2Baはその両側部が切削加工され、その幅がねじ止め部2A´及び2B´よりも狭められた構成となっている。
【0026】
同様に力点部4の薄肉部4Aa、4Abの幅もねじ止め部4´の幅よりも狭められた構成となっている。なお、図示の構成では図2及び図5に示すような薄肉部4Aa、4Abに直交する方向の薄肉部4Acは形成されていないが、この薄肉部4Acを形成することはもとより可能である。この構成により各薄肉部は統合部材に接続する各部材の変位に対してより敏感となり、荷重伝達機構全体の感度をより一層向上させることができる。
【0027】
図7は第4の実施例を示す。この実施例は図2乃至図4に示す構成のうち、一方の支点部2Bを無くし、支点を支点部2Aの薄肉部2Aaのみとした構成となっている。この構成とすると、他の実施例の構成に比較して統合部材としての性能は落ちるが、統合部材の製造コストを低減することができる。
【0028】
【発明の効果】
上記各実施例により本発明を説明したように、本発明によれば従来支点となる部材と力点となる部材とを個々に取り付けていたが、本発明ではこれら支点と力点の作用が一つの部品で実行可能となるため、個々の部品の取り付け状態の相違による荷重伝達機構の性能低下等の問題が生ぜず、秤量装置全体の性能を向上させることが可能となる。
【0029】
また、アルミニウム等、荷重伝達機構を構成する他の部材と同じ材料、つまり同じ伝熱係数の材料を使用することが可能であるので、この点からも秤量装置の性能を向上させることができる。
【0030】
更に、一つの統合部材を取り付けることにより力点と支点を構成することができるため、荷重伝達機構の組み立て工程を簡略化することができる等、様々な効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す統合部材の正面図である。
【図2】図1の統合部材の斜視図である。
【図3】図2に示す統合部材に対して荷重伝達機構を構成する部材を取り付けた状態の斜視図である。
【図4】図3の構成の側面図である。
【図5】本発明の第2の実施例を示す統合部材の斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施例を示す統合部材の斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施例を示す統合部材の斜視図である。
【図8】電子天秤の荷重伝達機構を中心とした機構部側面図である。
【図9】(A)は従来使用していた支点用ばね材と力点用の荷重伝達部材の正面及び支点用ばね材の側面を示す図、(B)は従来使用している多点取付型のばね材の平面図である。
【符号の説明】
1 統合部材
2A、2B 支点部
2A´、2B´ (支点部の)ねじ止め部
2Aa、2Ba (支点部の)薄肉部
3 一体取付部
4 力点部
4´ (力点部の)ねじ止め部
4A (力点部の)連接部
4Aa (力点部の)下部薄肉部
4Ab (力点部の)上部薄肉部
4Ac (下部薄肉部及び上部薄肉部に直交する)薄肉部
112 荷受け
115 ビーム(梃子)
122 支持部材

Claims (7)

  1. 力点部を介して負荷された計測対象の質量を梃子を用いて電磁部等の質量を計測する部分に伝達する荷重伝達機構において、上記梃子の支点となる支点部と、計測対象の荷重が負荷され力点として機能する力点部は、当該支点部と力点部とが薄肉部を介して一体構成された統合部材により、一体形成されていることを特徴とする質量計の荷重伝達機構。
  2. 前記統合部材の支点部と力点部の一端は薄肉部を介して一体に形成され、かつこれら支点部と力点部の他端はそれぞれ個別に形成された取り付け部となっていることを特徴とする請求項1記載の質量計の荷重伝達機構。
  3. 統合部材の力点部及び支点部の薄肉部はそれぞれ同方向に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の質量計の荷重伝達機構。
  4. 統合部材の力点部には形成方向が同じ二つの薄肉部が形成され、かつこの二つの薄肉部の間には、その形成方向が直交する第3の薄肉部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の質量計の荷重伝達機構。
  5. 統合部材の力点部及び支点部の薄肉部のうち少なくとも一部の薄肉部はその形成されている幅が、これら力点部及び支点部の個別に形成された取り付け部の幅よりも狭く形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の質量計の荷重伝達機構。
  6. 統合部材の前記薄肉部のうち少なくとも一部の薄肉部は当該統合部材を構成する素材の両面から対称に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の質量計の荷重伝達機構。
  7. 統合部材の中央に力点部が形成され、かつ力点部の左右両側にそれぞれ支点部が形成されていることをとを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の質量計の荷重伝達機構。
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