JP3908046B2 - 遮音耐火構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨造建築物における柱や梁と間仕切壁との取合いにおいて、側路伝搬音を低減した遮音耐火構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4に示されるように、建築物においては、通常、天井1から床面(図示せず)に亙ってほぼ鉛直に延びる柱3と、天井1に面して設けられた梁5とに跨って、間仕切壁7が設けられ、この間仕切壁7によって空間が仕切られる。そして、かかる間仕切構造においては、耐火性や遮音性が要求されていた。
【0003】
図5に従来の遮音耐火構造における間仕切壁の左右方向端部取合い近傍を示し、図6に同間仕切壁の上方向端部取合い近傍を示す。図5に示されるように、建築物には、天井から床面に亙ってほぼ鉛直に延長し且つ壁9に沿うように延長した柱3が設けられている。柱3は、中心をなす鉄骨材3aと、かかる鉄骨材3aを覆う耐火被覆板11とを備える。耐火被覆板11は、壁9と隣接する側の面を除いた、鉄骨材3aの周囲に配置される。さらに、耐火被覆板11の外面には、高遮音耐火構造を有する間仕切壁7の左右方向の端部が取合う。
【0004】
また、図6に示されるように、建築物フロアの天井1の下面には、水平方向に延びる梁5が設けられている。梁5は、柱3と同様、鉄骨材5aと耐火被覆板11とを備えている。耐火被覆板11は、天井1と隣接する側の面を除いた、鉄骨材5aの周囲に配設されている。梁5における下側の耐火被覆板11の外面には、間仕切壁7の上端7aが取合っている。また、間仕切壁7の下端7bは、建築物フロアの床面2に接続されている。
【0005】
以上のように構成された鉄骨造建築物の従来の遮音耐火構造では、間仕切壁7上部における左右の各端部に関し、耐火構造を有する間仕切壁7の端部と耐火被覆板11とが取合うことから、間仕切壁7により仕切られた一方の空間から他方の空間に対して耐火性を必要とした。また、間仕切壁7自体が吸音材などを含んだ高遮音性を有することにより、遮音性も得られるように企図されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように構成された従来の遮音耐火構造では、柱3や梁5を構成する鉄骨材3a、5aと間仕切壁7との間には、比較的比重が小さく間仕切壁よりも遮音性が劣る耐火被覆板11が介在しているだけであるため、かかる鉄骨材と間仕切壁との間に、図5及び図6に矢印で示されるような、間仕切壁以外からの音の側路伝搬による透過音が大きく、従って、間仕切壁自体が高い遮音性を有していても、柱あるいは梁と間仕切壁との取合いを含めた構造全体では、音が一方の空間から他方の空間に伝搬してしまい、空間遮音性能が不十分となってしまうという問題があった。
【0007】
また、従来の遮音耐火構造のなかには、このような問題に対処するための技術があり、例えば実公平8−10096号公報に開示された構造がある。しかしながら、かかる構造では、鋼製の遮音プレートの一端が鉄骨材に接続され、他端が間仕切壁に接続されており、すなわち、鋼製の遮音プレートが柱及び梁の耐火被覆材を貫通して配置されていた。よって、この遮音プレートを介して熱が柱や梁に伝わるので、十分な耐火性能が得られない恐れがある。
【0008】
従って、本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、十分な耐火性を維持しながらも、より高い遮音性を得ることができる、遮音耐火構造を提供することを目的とする。
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明は、鉄骨材と、この鉄骨材の壁や天井と隣接する側面を除いた側面に、四隅に設けた耐火被覆取付用下地を介して設けられた石膏ボードやけい酸カルシウム板等の耐火被覆板からなる柱または梁と、この柱または梁の耐火被覆板と取合う遮音耐火性を有する間仕切壁とからなる遮音耐火構造において、間仕切壁と取合い部を形成する柱または梁の耐火被覆板が、間仕切壁の壁厚範囲に対応する部分において、前記鉄骨材の長手方向に沿って分断され、前記耐火被覆取付用下地と間仕切壁と対向するように設けた耐火被覆取付用下地を介してそれぞれ鉄骨材に取付けられると共に、分断された耐火被覆板の間には、弾性耐火被覆材からなる板状部材が耐火被覆板に押し付けられるようにして配設されていることを特徴とする。
【0010】
前記弾性耐火被覆材の板状部材は、少なくとも前記耐火被覆板の厚みに相当する厚みを有しているのが好適である。また、前記弾性耐火被覆材は、セラミック繊維フェルト、セラミック繊維マット、ロックウールフェルト、ロックウールマット及び無機バインダー型弾性接着剤から選択された一種類または二種類以上のものからなるのがよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1及び図2にそれぞれ、本発明の実施の形態に係る遮音耐火構造における間仕切壁の左右方向端部取合い近傍及び上方向端部取合い近傍の一例を示す。図1に示されるように、柱103は、建築物の壁9に沿うようにして、フロアの天井から床面に亙ってほぼ鉛直に延びている。この柱103は、横断面がH字状の鉄骨材3aと、複数の耐火被覆板111とを備える。
【0012】
柱103の周囲には、柱103の四隅に設けた4つの耐火被覆取付用下地113a及び後述する間仕切壁と対向するように設けた1つの耐火被覆取付用下地113bを介して、複数の耐火被覆板111が設けられている。これらの耐火被覆取付用下地113a、113bは、鉄骨材3aに沿ってその長手方向に延びている、例えば軽量鋼製の下地により形成されている。また、耐火被覆板111は、鉄骨材3aの壁9と隣接する側面を除いた3面に、四隅に設けた耐火被覆取付用下地113aを介して横断面コ字状に配設されており、各面に関して二層構造を成すように配設されている。各耐火被覆板111は、石膏ボードやけい酸カルシウム板等より形成されている。なお、耐火被覆板111は、各面に二層設けられることに限定されず、一層あるいは三層以上設けられていてもよい。また、間仕切壁と対向するように設けられた耐火被覆取付用下地113bは、1つに限定されず2つ以上設けられていてもよく、例えば、後述する弾性耐火被覆材の配設位置の両側に振り分けるように2つ配置されていてもよい。
【0013】
壁9と逆側に位置する耐火被覆板111の外面には、間仕切壁107の左右方向の端部107cが取合っている。間仕切壁107は、高遮音耐火構造を備えている。その具体的な構造の一例として、間仕切壁107は、表裏面を構成する一対の窯業系不燃板と、それら不燃板の間に空気層又は/及び可撓性を有する断熱吸音材からなる断熱吸音層とを備えるものである。なお、各窯業系不燃板は、単層構造でも複層構造でもよい。
【0014】
間仕切壁107側の耐火被覆板111は、間仕切壁の壁厚範囲に対応する部分において、鉄骨材3aの長手方向に沿って分断されて、前述の耐火被覆取付用下地と間仕切壁と対向するように設けた耐火被覆取付用下地113bを介してそれぞれ鉄骨材3aに取付けられ、すなわち上下方向で縁切りされており、分断された耐火被覆板111の間には、弾性耐火被覆材115が耐火被覆板111に押し付けられるようにして配設されている。弾性耐火被覆材115は、鉄骨材3aの長手方向に延びる板状部材であり、セラミック繊維フェルト、セラミック繊維マット、ロックウールフェルト、ロックウールマット及び無機バインダー型弾性接着剤から選択された一種類または二種類以上のものからなる。かくして、各耐火被覆板111は弾性耐火被覆材115を押し付けるようにしてそれに接続している。弾性耐火被覆材115は、その間仕切壁107と逆側の端部において耐火被覆板取付用下地113bに接している。すなわち、弾性耐火被覆材115は、耐火被覆板111の厚みに相当する厚みを有し、その両端は間仕切壁と対向するように設けた耐火被覆板取付用下地113bと間仕切壁107とに当接している。なお、図1では、柱103の片側に間仕切壁107が取合い、柱103の他側には壁9が設けられた構造を示したが、柱103を挟んでその両面に間仕切壁107が取合う場合や、柱103の三面または四面に間仕切壁107が取合う構造において本発明を適用できることは言うまでもない。
【0015】
次に、図2を参照して、間仕切壁107の上方向端部取合い近傍の構成について説明する。建築物フロアのコンクリートスラブの天井1の下面には、水平方向に延びる梁105が設けられている。梁105は、柱103と同様、鉄骨材5aと、複数の耐火被覆板111とからなっている。耐火被覆板111は、天井1と隣接する側面を除いて、柱103の場合と同様に、5つの耐火被覆板取付用下地113a及び113bを介して、鉄骨材5aの各側面に設けられている。
【0016】
耐火被覆板111の鉄骨材5aと逆側に位置する外面には、間仕切壁107の上端部107aが取合っている。間仕切壁107側の耐火被覆板111は、柱103の場合と同様に、間仕切壁の壁厚範囲に対応する部分において、鉄骨材3aの長手方向に沿って分断され、耐火被覆取付用下地113aと間仕切壁と対向するように設けた耐火被覆取付用下地113bを介してそれぞれ鉄骨材に取付けられ、すなわち水平方向で縁切りされており、分断された耐火被覆板111の間には、弾性耐火被覆材115からなる板状部材が、耐火被覆板111に押し付けられるようにして配設されている。弾性耐火被覆材115の板状部材は、耐火被覆板111の厚みに相当する厚みを有し、それにより、その両端が耐火被覆板取付用下地113b及び間仕切壁107に当接している。また、間仕切壁107の下端107bは、建築物フロアのコンクリートスラブの床面2に接続されている。
【0017】
次に、以上のようにして構成された遮音耐火構造の作用について説明する。遮音耐火構造を構成する間仕切壁107は、柱103、梁105及び床面2に亙って延びており、それにより、建築物内の空間を仕切っている。ここで、間仕切壁107によって仕切られた一方の空間で、例えば火災が発生した場合、間仕切壁107自体が高遮音耐火構造を備えているので、間仕切壁107を介して他方の空間へ熱の伝達することは防止される。また、鉄骨材3a、5aの壁や天井と隣接する側面を除いた側面には、耐火被覆板111が耐火被覆取付用下地113a、113bを介して配設されているので、熱が鉄骨材3a、5aを介して他方の空間へ伝達することも防止されている。また、音に関しては、従来、柱や梁の鉄骨材を被覆する耐火被覆板を介しての側路伝搬音が大きいという問題が存在していたが、本発明では、柱103や梁105と間仕切壁107の取合い部において、鉄骨材3a、5aを被覆する耐火被覆材111が、間仕切壁の壁厚範囲に対応する部分で、鉄骨材3a、5aの長手方向に沿って分断され、分断された耐火被覆材が耐火被覆取付用下地113a、113bを介してそれぞれ鉄骨材に取付けられ、この分断された耐火被覆板の間には、弾性耐火被覆材115からなる板状部材が耐火被覆板に押し付けられるようにして配設されているので、耐火被覆板と間仕切壁との取合い部における側路伝搬音が防止され、高い遮音性が確保される。なお、弾性耐火被覆材115を配設すべく耐火被覆板111が分断され、縁切りされているが、単に耐火被覆材を縁切りする方法では、縁切りされた耐火被覆板同士の接続において微細な隙間を生じ、耐火性能が低下するために好ましくない。このため、本発明では、耐火被覆板同士の間に、弾性耐火被覆材115の板状部材が耐火被覆板に押し付けられるようにして配設されていることにより、前記の微細な隙間を生ずることなく、耐火被覆板の縁切りを行うことができる。従って、耐火性能を低下させることなく、音の側路伝搬経路を絶縁し、十分な遮音性を得ることができる。
【0018】
さらに、弾性耐火被覆材115は押し付けられるようにして耐火被覆板111に挟持されているため、単なる耐火被覆板間への配設よりも耐火被覆板の縁切り部における耐火性、遮音性が高く維持される。また、弾性耐火被覆材115の板状部材が弾性を有することと相俟って、高い耐火性、遮音性をもたらしている。さらに、弾性耐火被覆材115が耐火被覆板111の厚みに相当する厚みを有し、鉄骨材3a、5aと間仕切壁107との間の耐火性の維持及び遮音性の向上の効果を高めている。
【0019】
次に、本実施の形態に係る遮音耐火構造の耐火性能と遮音性能について、図5及び図6に示した従来の遮音耐火構造と比較して説明する。鉄骨材に被覆した耐火被覆板は無機繊維強化石膏ボード(商品名サムライト)で厚さは21mmの二層張りである。間仕切壁は、両面ともリブ付繊維混入押出成形板を下張りとし上張りを繊維混入石膏板(厚さ5mm)とした中空二重壁の構成であり、中空部には可撓性を有する断熱吸音材であるグラスウール(厚さ25mm、密度24kg/m3)が挿入されている。また、使用した弾性耐火被覆材は、ロックウールフェルト(厚さ4mm、密度200kg/m3)である。耐火性能については、建設省告示第2999号に基づいた柱・梁の耐火性能試験を行ったところ、本実施の形態に係る遮音耐火構造は、従来の遮音耐火構造と同様に、柱及び梁のそれぞれに関し、耐火2時間による加熱曲線の加熱に対して構造部分の許容温度を満足した結果が得られた。
【0020】
また、遮音性能については、JIS A 1416の試験方法による音響透過損失結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1から分かるように、本実施の形態の遮音耐火構造は、従来のものより中心周波数500ヘルツ付近から遮音性が向上している結果が得られており、特に、中心周波数1000〜4000ヘルツにかけての範囲では、従来のものと比較し5デシベル以上の音響透過損失効果を発揮している。かかる効果は、単なる学術的な数値差に留まらず、人間の聴感上で感じる尺度でも明確に分かる違いであり、良好な遮音性能居住空間を提供する。また、表1に点線で示したJIS A 1419による空気遮断性能評価基準曲線からも、従来の構造では音響透過損失性能Rr−50であるのに対し、本実施の形態の構造では音響透過損失性能Rr−55を実現し、1ランク向上していることが分かる。以上のように、本発明の実施形態に係る遮音耐火構造によれば、構造耐力上主要な柱、梁の耐火性能は損なうこと無く、遮音性を高めて良好な遮音性能居住空間を提供することが可能となっている。
【0023】
なお、本発明における、天井、柱、梁、間仕切壁との関係に関しては、例えば、図3の(a)に示されるように、1本の梁及び2本の柱からなる下向きコ字状の骨組み構造と床面とによって形成される空間に間仕切壁を設ける構造や、図3の(b)に示されるように、1本の梁及び1本の柱からなる上下逆L字状の骨組み構造と、壁面と、床面とによって形成される空間に間仕切壁を設ける構造が考えられ、さらに、他の構造に適用することも可能である。また、弾性耐火被覆材115は、図1及び図2に示したように間仕切壁117の厚み方向に関する中央に配置されていることに限定されるものではなく、間仕切壁117の厚み範囲内の位置に設けてあればよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、耐火被覆板が鉄骨材の長手方向に沿って分断され、耐火被覆取付用下地を介してそれぞれ鉄骨材に取付けられると共に、分断された耐火被覆板の間には、弾性耐火被覆材からなる板状部材が耐火被覆板に押し付けられるようにして配設されているので、十分な耐火性を維持しながら表1に示されるような高い遮音性を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る遮音耐火構造における間仕切壁の左右方向端部取合い近傍を示す。
【図2】 本発明の実施の形態に係る遮音耐火構造における間仕切壁の上方向端部取合い近傍を示す。
【図3】 (a)及び(b)はそれぞれ、本発明の遮音耐火構造における、天井、柱、梁、壁、床及び間仕切壁の関係を例示する図である。
【図4】 建築物における天井、柱、梁及び間仕切壁を示す図である。
【図5】 従来の遮音耐火構造における間仕切壁の左右方向端部取合い近傍を示す。
【図6】 従来の遮音耐火構造における間仕切壁の上方向端部取合い近傍を示す。
【符号の説明】
3a、5a…鉄骨材、103…柱、105…梁、107…間仕切壁、111…耐火被覆板、115…弾性耐火被覆材。
Claims (3)
- 鉄骨材と、この鉄骨材の壁や天井と隣接する側面を除いた側面に、四隅に設けた耐火被覆取付用下地を介して設けられた石膏ボードやけい酸カルシウム板等の耐火被覆板とからなる柱または梁と、この柱または梁の耐火被覆板と取合う遮音耐火性を有する間仕切壁とからなる遮音耐火構造において、
前記間仕切壁と取合い部を形成する柱または梁の耐火被覆板が、間仕切壁の壁厚範囲に対応する部分において、前記鉄骨材の長手方向に沿って分断され、前記耐火被覆取付用下地と間仕切壁と対向するように設けた耐火被覆取付用下地を介してそれぞれ鉄骨材に取付けられると共に、分断された耐火被覆板の間には、弾性耐火被覆材からなる板状部材が耐火被覆板に押し付けられるようにして配設されていることを特徴とする遮音耐火構造。 - 前記弾性耐火被覆材の板状部材は、少なくとも前記耐火被覆板の厚みに相当する厚みを有していることを特徴とする請求項1に記載の遮音耐火構造。
- 前記弾性耐火被覆材は、セラミック繊維フェルト、セラミック繊維マット、ロックウールフェルト、ロックウールマット及び無機バインダー型弾性接着剤から選択された一種類または二種類以上のものからなる請求項1または2に記載の遮音耐火構造。
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