しかしながら、上記の従来技術によれば、第1に、不揮発性RAM内の強誘電体容量の記憶性能(分極によるリテンション特性)が経年変化により劣化し、動作の信頼性が低下するという問題がある。また、第2に、不揮発性RAMを有する回路要素をLSI化する場合に、大規模に集積化することが困難であるという問題がある。
第1について、図3、図4に示す不揮発性SRAMによれば、強誘電体容量Cf0、Cf1またはCfx0、Cfx1には、装置の通電中に常に記憶ノードNまたはNxの電圧が印加されている。強誘電体容量は、電圧が印加されている状態が持続すると分極による記憶性能(リテンション特性)が劣化し、ひいては動作不良を引き起こす場合がある。
第1について別言すれば、図5のように、記憶ノードに複数の強誘電体容量が接続された強誘電体内蔵ラッチ回路は、分極状態によっては、データ保持中の熱履歴により性能が劣化し、不安定な読み出し動作が誘引される可能性がある。すなわち、2つの強誘電体容量ペアCF0,CF1およびXCF0,XCF1には相補方向に分極を書き込み、さらに、読み出し動作でプレート線に電圧を印加したとき、ペアとなる強誘電体の一方は読み出しによって分極反転する。強誘電体を高温下に置くと、分極ヒステリシスが歪んで(焼き付いて)しまう現象(インプリントと呼ぶ)があり、分極方向が異なる強誘電体はインプリントによる分極ヒステリシスの歪みが異なる。従って、従来の方法で分極を書き込まれた強誘電体は、読み出し前後でインプリント方向が異なり、安定した読み出し動作が困難となるという問題がある。
第2について、従来の強誘電体内蔵ラッチ回路は、図4、図5に示すように、一つのラッチ回路の記憶ノードに対応して、一つの不揮発メモリ(2個あるいは4個の強誘電体容量で構成)を接続しており、メモリセルの面積が大きく、高集積化が困難であるという問題がある。
また第2について、図3に示した不揮発性SRAMは6個のトランジスタを含むために、各々の不揮発性SRAMに6個のトランジスタを内蔵させたまま集積度を向上させると、面積が大きくなり、かつ全ての回路要素に複数の不揮発性SRAMを設けることで回路規模が大きくなるという問題を有する。
このように、従来の強誘電体容量を用いた不揮発性SRAMを備える再構成可能な論理回路は、性能劣化と集積化困難という問題がある。
本発明の目的は、性能劣化の少ない安定した読み出し動作をする半導体記憶装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、集積度を向上させることが容易な半導体記憶装置を提供することにある。
上記目的を達成する半導体記憶装置は、データを保持する揮発性のラッチ回路と、データを保持する不揮発性の強誘電体容量回路と、前記ラッチ回路と前記強誘電体容量回路とを接続および切断するスイッチ回路とを備える。
この構成によれば、不揮発性記憶装置の通電中に強誘電体容量回路とラッチ回路との間は、スイッチ回路により電気的に切断できるので、通電中に強誘電体容量回路に電圧が印加されることによって強誘電体容量の特性(リテンション特性)を劣化させることを防止することができる。つまり、半導体記憶装置は性能劣化の少ない安定した読み出し動作をすることができる。
ここで、前記スイッチ回路は、前記ラッチ回路と前記強誘電体容量回路との間でデータを入出力時のみ接続するようにしてもよい。
この構成によれば、不揮発性記憶装置の通電中に強誘電体容量回路は必要最小限の期間つまりデータ入出力時にのみ電圧が印加されるので、強誘電体容量回路の性能劣化を最小限に抑えることができる。
ここで、前記半導体記憶装置は、さらに、ラッチ回路に保持されたデータに応じて回路構成を変更可能な論理回路を有していてもよい。
この構成によれば、ラッチ回路は強誘電体容量回路に格納されたデータを読み出すセンス回路として機能するので、強誘電体容量回路からスイッチ回路を介してラッチ回路にデータを出力するだけで再構成するので、再構成を高速化することができる。
ここで、前記強誘電体容量回路は、データを保持する不揮発性の強誘電体素子を含む第1回路と、データを保持する不揮発性の強誘電体素子を含む第2回路とを有し、前記スイッチ回路は、第1回路および第2回路の何れかを選択し、選択された回路とラッチ回路とをデータ入出力時のみ接続するようにしてもよい。
この構成によれば、論理回路を構成するための回路構成情報の2種類を強誘電体容量回路に保持させているので、スイッチ回路により切り換えることにより再構成を高速にすることができる。
ここで、前記論理回路は、(a)ラッチ回路に保持されたデータによりスイッチトランジスタ、(b)ラッチ回路に保持されたデータにより出力制御されるバッファ回路、および(c)ラッチ回路に保持されたデータにより選択制御される選択回路の何れかであるように構成してもよい。
この構成によれば、スイッチトランジスタのオン/オフ切り替えによる結線、バッファ回路へ入力された信号の出力制御、選択回路による信号選択、を動的に構成することができる。
ここで、前記半導体記憶装置は、複数の単位回路からなるテーブル回路を備え、各単位回路は、前記ラッチ回路、前記強誘電体容量回路および前記スイッチ回路を含み、前記論理回路は、複数の単位回路から1つを選択する選択回路であるようにしてもよい。
この構成によれば、テーブル回路に論理和や比較等のデータ処理結果を保持させることにより、単位回路をルックアップテーブル(LUT)として動的に変更することができる。
ここで、前記半導体記憶装置は、データを処理するための複数の回路ブロックを備え、各回路ブロックは、前記ラッチ回路、前記強誘電体容量回路、前記スイッチ回路および前記論理回路を含むようにしてもよい。
ここで、前記半導体記憶装置は、さらに、各回路ブロックについて回路構成の再構成を制御する制御部を備えるようにしてもよい。
この構成によれば、各回路ブロックの構成を独立に変更することができる。
ここで、前記複数の回路ブロックは、第1、第2の回路ブロックを含み、前記制御部は、第1の回路ブロックでデータ処理中に、第2の回路ブロックの回路構成を再構成するようにしてもよい。
ここで、前記制御部は、回路ブロック毎に独立したタイミングで回路ブロックの回路構成を再構成するようにしてもよい。
この構成によれば、データ処理中のブロックの動作を停止することなく、データ処理が終了したブロックの構成を独立して再構成するので、複数の回路ブロックを効率的に利用することができる。
ここで、前記複数の回路ブロックは、パイプライン処理のステージを分担する回路ブロック群を含み、前記制御部は、前記回路ブロック群に属する回路ブロックの回路構成をステージ順に再構成するようにしてもよい。
この構成によれば、全体の構成を一括して変更するよりもピーク電力を削減できるので、特に、バッテリーなど駆動能力の小さい電源回路を使用することができる。
ここで、前記制御部は、回路ブロックをステージの処理を行う回路構成に再構成し、再構成された回路ブロックから順にステージの処理を開始するようにしてもよい。
ここで、前記制御部は、ステージの処理が完了した回路ブロックから順に、回路ブロックをステージの処理を行う回路構成から他の処理を行う回路構成に再構成するようにしてもよい。
この構成によれば、現在のパイプライン処理から異なるパイプライン処理に再構成する場合に、再構成に要する時間を短縮することができる。
ここで、前記データ処理は繰り返し処理を含み、前記制御部は、最初の繰り返しの前に、処理結果を保持し自身にフィードバックするように1つの回路ブロックを再構成し、最後の繰り返しの前に当該回路ブロックをフィードバックしないように再構成するようにしてもよい。
この構成によれば、繰り返し処理を1つの回路ブロックによって実行することにより、回路ブロックを効率よく使用することができる。
ここで、前記強誘電体容量回路から前記ラッチ回路へのデータ転送は、少なくとも2クロックで行うようにしてもよい。
この構成によれば、少なくとも2クロックかけてデータ転送することによって、強誘電体容量回路から前記ラッチ回路へのデータ転送時間を確保するので、論理回路の動作クロックの周波数を高くすることができる。また、強誘電体容量回路の読み出しに時間のかかる場合であっても、論理回路の動作周波数を低下させることなくデータ処理を行うことができる。
ここで、前記半導体装置は、前記強誘電体容量回路に負荷容量として接続される強誘電体容量である負荷容量回路を備えるようにしてもよい。
また、本発明の半導体装置は、データを保持する揮発性のラッチ回路と、ラッチ回路から入出力されるデータを保持する不揮発性の強誘電体容量回路と、前記強誘電体容量回路に負荷容量として接続される強誘電体容量である負荷容量回路とを備える。
ここで、前記負荷容量回路の分極は、前記強誘電体容量回路からのデータ読み出し工程で反転しない方向にあるようにしてもよい。
この構成によれば、負荷容量は読み出し前後で変化しないので、読み出し後の2つの負荷容量の分極が異なる方向を向くことはない。すなわち、インプリントによる負荷容量の分極ヒステリシスの歪みは一様となり、安定した読み出しが可能となる。
ここで、前記半導体記憶装置は、前記負荷容量回路の分極を一方向に揃えるための駆動信号を出力する駆動手段を備えるようにしてもよい。
この構成によれば、読み出し後あるいは電源オフ時などに駆動手段は負荷容量の分極方向を揃えるので、インプリントによる負荷容量の分極ヒステリシスの歪みは一様となり、安定した読み出しが可能となる。
ここで、前記駆動手段は、前記負荷容量回路の分極を一方向かつ読み出し動作で分極反転しない方向に揃えるようにしてもよい。
この構成によれば、読み出し後あるいは電源オフ時などに駆動手段は負荷容量の分極方向を揃えるので、インプリントによる負荷容量の分極ヒステリシスの歪みは一様となり、安定した読み出しが可能となる。
ここで、前記半導体記憶装置は、前記ラッチ回路と強誘電体容量回路とからなる記憶セルを複数備え、前記負荷容量回路と前記記憶セルとは1対多で接続されるようにしてもよい。
この構成によれば、負荷容量回路を複数の記憶セルで共有するためにセル面積を小さくできる。つまり、回路規模を小さくし高集積化を容易にする。
ここで、前記半導体記憶装置は、前記ラッチ回路と強誘電体容量回路とからなる記憶セルを複数備え、前記負荷容量回路と前記記憶セルとは1対1で接続されるようにしてもよい。
この構成によれば、例えば本半導体記憶装置をメモリデバイスとして製造する場合に適している。
ここで、前記強誘電体容量回路は1対の強誘電体容量素子を含み、前記負荷容量回路は1対の強誘電体容量素子を含むようにしてもよい。
本発明の半導体記憶装置によれば、強誘電体容量の特性(リテンション特性)劣化を防止することができる。その結果、性能劣化の少ない安定した読み出し動作をすることができる。また、回路規模を小さくし高集積化を容易にすることができる。さらに、再構成を高速化することができる。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における再構成可能な論理回路を説明する。図6A〜図6Dは、再構成可能な論理回路で使われる回路要素を示す図である。
図6Aはパストランジスタとして機能する回路要素を示す。このパストランジスタは、不揮発メモリセルNVC(a)、NVC(b)と、スイッチ回路SWと、SRAMと、トランジスタとを備える。NVC(a)は、強誘電体容量を記憶セルとする不揮発性メモリセルであり、回路構成情報の一部となるデータを保持する。NVC(b)も同様のメモリセルであり、他の回路構成情報の一部となるデータを保持する。スイッチ回路SWは、再構成制御信号RCに従って不揮発性メモリセルNVC(a)およびNVC(b)の何れかを選択し、選択された不揮発性メモリセルとSRAMとをデータ入出力時のみ接続する。SRAMは、不揮発性メモリセルNVC(a)またはNVC(b)とスイッチ回路SWを介してデータを入出力するラッチ回路である。トランジスタは、ゲートに接続されたSRAMによって端子aと端子b間を導通または非導通を制御される。このトランジスタは論理回路における結線の変更に用いられる。
図6Bはバッファとして機能する回路要素を示す。同図のバッファは、図6Aと比べてトランジスタの代わりにトライステートゲートが備えられている。同じ点は説明を省略して異なる点を中心に説明する。トライステートゲートは、出力制御端子にSRAMに保持されたデータが入力され、端子inに入力された信号を端子outに出力するか、ハイインピーダンス出力するかをSRAMからのデータにより制御される。
図6Cはマルチプレクサとして機能する回路要素を示す。同図のマルチプレクサは、図6Aと比べてトランジスタの代わりにセレクタが備えられている。同じ点は説明を省略して異なる点を中心に説明する。セレクタは、選択制御端子にSRAMに保持されたデータが入力され、入力端子in0,1の何れかと出力端子outとの接続をSRAMからのデータにより制御される。
図6Dはルックアップテーブル(以下LUTと略す。)として機能する回路要素を示す。このLUTは、16個の不揮発メモリセルNVC0(a)〜NVC15(a)と、16個の個不揮発メモリセルNVC0(b)〜NVC15(b)と、16個のSRAMと、選択スイッチSWと、16入力1出力の選択回路とを備える。不揮発メモリセルNVC0(a)〜NVC15(a)は16ビットの第1のテーブルデータを保持する。不揮発メモリセルNVC0(b)〜NVC15(b)は16ビットの第2のテーブルデータを保持する。選択スイッチSWは、再構成制御信号RCに従って不揮発性メモリセルNVC0(a)〜NVC15(a)およびNVC0(b)〜NVC15(b)の何れかを選択し、選択された16個の不揮発性メモリセルと16個SRAMとの間でデータ入出力時のみそれぞれ接続する。16入力1出力の選択回路は、4つの入力端子in0,1,2,3の入力に従って出力端子outに、16個のSRAMの1つを選択する。ここで16個のSRAMは第1のテーブルデータと第2のテーブルデータのうち何れが格納されている。第1および第2のテーブルデータは、論理和,比較等のデータ処理結果を表し、LUTはデータ処理を変更かのうである。
以上のように、全ての回路要素が内蔵するSRAMの論理状態によって、回路要素の動作は決定される。各回路要素は2つの不揮発メモリNVC(a),NVC(b)を内蔵しており、再構成制御信号RCで制御されたスイッチSWを切り替え、不揮発メモリに記録された回路構成情報をSRAMに書き込むことで、異なる動作状態に切り替えることができる。スイッチSWは、不揮発メモリからにSRAMに書き込むとき、またはSRAMから不揮発メモリに書き込むときにのみ接続し、それ以外は切断する。これにより、不揮発メモリにはデータ入出力時以外は電圧がかからないので、不揮発メモリ特に強誘電体メモリの特性劣化を抑えることができる。
また、不揮発メモリ(EEPROM、強誘電体メモリFeRAM、磁気メモリMRAM)はSRAMよりも小さく、かつ内蔵するSRAMが1個であるので回路面積が小さいという特長を有する。さらに、不揮発メモリとSRAMはスイッチを介して直接接続されているので、高速に再構成することができる。
図7は、上記の回路要素を組み合わせた演算素子の構成例を示す。同図の演算素子は、4入力1出力のルックアップテーブルLUTと、DフリップフロツプDFFと、マルチプレクサMUXと、32個のパストランジスタPTRとで構成される。マルチプレクサMUXは、LUTの出力と、LUTからDFFを介した出力とを選択する。図7中に四角の記号で示したPTRは、これと交差する上下配線と左右配線にPTRの端子a,bが接続されており、2つの配線を結線するか否かを制御する。演算素子は上下左右に4つずつの端子N0〜N3、S0〜S3、W0〜W3、E0〜E3を有している。LUTの4入力およびMUXの出力は、32個のPTRによって任意の端子N0〜N3、S0〜S3、W0〜W3、E0〜E3に接続できるようになっている。
図8は、図7に示した複数の演算素子を配列した演算素子アレイの構成を示す図である。この演算素子アレイは、16個の演算素子PE00〜PE33と、4つの入出力回路ブロックI/Oと、再構成制御部とを含む。演算素子PE00〜PE33はマトリクス配置される。各演算素子の上下左右の4端子が隣接演算素子またはI/O部に接続されている。何れかのI/Oから入力されたデータは、演算素子アレイでデータ処理され、何れかのI/Oから出力される。再構成制御回路は、4つの再構成制御信号RC0〜RC3を出力する。再構成制御信号RC0〜RC3は演算素子アレイの列に入力されており、これを構成する演算素子の内部回路要素の再構成制御信号RCに接続される。
すなわち、PTRのオン/オフ切り替えによる結線変更、LUTにおける論理和,比較等のデータ処理の変更、MUXの切り替えによってLUT出力をクロックCLKに従って出力するか否かの選択などの変更が可能となる。
図9Aは図8に示した演算素子アレイの第1の再構成例を示す。図9Aに示すように演算素子アレイは4つのPEからなる演算素子群(ブロック)に分けられている。ブロックA(PE00〜03),ブロックB(PE10〜PE13),ブロックC(PE20〜PE23),ブロックD(PE30〜PE33)には、それぞれ異なる再構成制御信号RC0〜RC3が入力される。ブロックAおよびBは処理単位α、ブロックC,Dは処理単位βとする。
図9Bは、図9Aに示した演算素子アレイの再構成タイミングを示す図である。同図のように、ブロックAおよびBは処理単位α、ブロックC,Dは処理単位βとしている。処理単位α、βにおいて、同図のようにデータ処理X、データ処理Y、データ処理Zを行う。すなわち、ブロックA,Bにおけるデータ処理Xが終了した後、再構成制御回路は、RC0,RC1に再構成命令を出力することにより、ブロックA,Bで構成される処理単位αの回路構成を変更する。これにより新たなデータ処理Zを開始することができる。このように演算素子アレイを複数の処理単位に分け、それぞれで異なるデータ処理を行うことによって、ある処理単位においてデータ処理中であったとしても、当該処理単位のデータ処理を中断せずに、データ処理が終了した処理単位のみを再構成することができる。従って、データ処理の高速化が実現できる。
図10Aは図8に示した演算素子アレイの第2の再構成例を示す。図10Aでは、全部の演算素子を1つの処理単位とし、データ処理を行うように回路を構成する。この場合、データ処理が終了したときに全体を一括して再構成するのではなく、再構成制御回路は、図10BのようにブロックA,B,C,Dと順に再構成する。これにより、一括して再構成する場合にはピーク電力として消費される電力を平準化でき、低電力の電源回路が使用可能となる。従って、第2の再構成例では、電源回路の規模を小さくできる。
図11Aは図8に示した演算素子アレイの第3の再構成例を示す。図11Aでは、ブロックA〜Dは、パイプライン処理のステージを分担するよう構成される。この場合、ブロックA〜Dの各演算要素におけるMUXはDFFを選択している。これにより、ブロックA〜Dは、動作ステージ1〜動作ステージ4からなる4段のパイプライン処理を行う。すなわち、I/Oから入力されたストリームデータaのデータDa0、Da1、Da2はそれぞれ動作ステージ1,2,3,4にて次々とパイプライン処理される。この回路を再構成する際、再構成制御回路は、データ処理が終了した動作ステージのブロックに順にと再構成命令を出す。具体的には、動作ステージ1でDa2の処理が終了したタイミングで再構成制御信号RC0をアクティブにしてブロックAを再構成する。動作ステージ2でDa2の処理が終了し、かつブロックAの再構成が終了したタイミングで再構成制御信号RC1をアクティブにしてブロックBを再構成する。動作ステージ3でDa2の処理が終了し、かつブロックBの再構成が終了したタイミングで再構成制御信号RC2をアクティブにしてブロックCを再構成する。動作ステージ4でDa2の処理が終了し、かつブロックCの再構成が終了したタイミングで再構成制御信号RC3をアクティブにしてブロックDを再構成する。さらに、全ブロックの再構成が完了する前に、新しいデータ処理bのストリームデータDb0,1,2を動作ステージ1から処理を開始する。
図10Bに示した第2再構成例では2クロック期間必要なブロック再構成を4つのブロックについて順に再構成していたために、全ブロックの再構成には8クロック期間が必要であった。これに対して、第3の再構成例ではパイプライン動作中にデータ処理が終了した動作ステージのブロックから再構成を順に行い、かつ再構成が終了したブロックでデータ処理を開始する。その結果、データストリームaの最終データDa2の出力からデータストリームbの先頭データDb0の出力までを5クロックに短縮できる。従って、第3の再構成例は、回路構成情報の読み出しに時間のかかる不揮発メモリの高速再構成および高速データ処理に有効である。具体的には、不揮発メモリからの読み出しに1クロックサイクルではなく、少なくとも2クロックサイクルを割り当てることで、不揮発メモリの読み出しに合わせてクロック周波数を設定するよりも高速にデータ処理できる。かつ、パイプライン動作におけるデータの流れに追従して再構成していくことにより、あるブロックが再構成動作中であっても他のブロックではデータ処理が可能であり、データ処理のスループットが向上する。
なお、第2の再構成例と第3の再構成例とでは、各ブロックの再構成が重ならないタイミング例を示したが、これに限らず、互いの再構成期間が重なってもよい。その場合、さらに再構成時間の短縮が実現できる。
第4の再構成例では、データ処理の中に繰り返して使用される回路がある場合に、少ない回路で実現する例を示す。最初に非効率な演算素子アレイの利用例を図12に示す。この例では、演算素子PE01,PE11,PE21,PE31をデータが流れて処理を行っており、斜線で示したPE11,21,31は同じ処理を行っている。第4の再構成例では、このデータ処理で使用する演算素子数を減らすことができる。
図13A〜図13Cはその説明図を示す。まず、図13Aのように、再構成制御回路は、入力データをPE01からPE11へと導くようにパストランジスタを制御して配線する。この回路構成により、PE01,PE11でデータ処理を行う。次いで、図13Bのように回路を再構成する。つまり、PE11からの出力データを再びPE11に入力するようなフイードバックループを形成する。この回路構成でループ上にデータを2回流すことにより、PE11はデータ処理を2回行う。最後に、図13Cのように回路を再構成し、PE11からの出力データを外部に出す。以上のように再構成を利用することにより、データ処理に使用する演算素子数4個から2個へと減らすことができる。従って、繰り返し処理に使用される演算素子数を減らすことが可能である。例えば、暗号処理における複数回のデータ入れ替え処理などに応用可能である。
第4の再構成例は、フイードバックループのように同じデータ処理を複数回実施する場合において効果的である。しかし、同じデータ処理が続かないようなデータ処理にも適用可能である。異なるデータ処理であっても内部配線でフイードバックループを形成し、MUXをDFF側に切り替え、データ処理が行われる度にLUTを書き換えていく動作を行うことにより、演算素子アレイ数を削減可能である。ただし、再構成回数が増えるのでデータ処理のスループットは若干低下する。
なお、第3の再構成例と第4の再構成例とを組み合わせることにより、高速に再構成でき、かつ回路規模の小さい論理回路を実現することができる。
図14Aは、第5の再構成例として、破壊読み出し方式の不揮発メモリデバイスを用いた場合の高速再構成を示す説明図である。図14Aのように再構成動作は、不揮発メモリNVCから回路構成情報を読み出してSRAMに格納する動作と、データをNVCに再書き込みする動作を含む。NVCから回路構成情報を読み出してSRAMに格納した段階で論理回路は動作可能となるので、図14Bのように、このタイミングで新たなデータ処理Yを開始する。同時に、バックグランドでNVCへの再書き込みを実行する。このように第5の再構成例では、破壊方式不揮発メモリの再構成を高速化できる。
図15は、NVCとして強誘電体容量を使用している場合の回路例を示す。図15は、図6Aに示したパストランジスタに相当する。このパストランジスタは、パス用のトランジスタQptrと、SRAMと、強誘電体回路(不揮発メモリセル)FC0〜FC2とトランジスタQe、Qexと、トランジスタQs、Qsxとを備える。不揮発メモリセルFC0〜FC2のうち、FC1,2は回路構成情報の記憶に使用され、FC0は読み出し動作における負荷容量として使用される。
SRAMは、N型トランジスタQn0,Qnx0と、P型トランジスタQp0,Qpx0と、トランジスタQn1,Qnx1と、電源制御トランジスタQvとを備える。N型トランジスタQn0,Qnx0およびP型トランジスタQp0,Qpx0は、クロスカップル接続された2つインバータ、つまりラッチ回路を構成する。トランジスタQn1,Qnx1は、制御線PRGの制御によりデータ線対DL,DLxからの回路構成情報の一部を強誘電体回路FC0、FC1に書き込むためのトランジスタである。電源制御トランジスタQvは、制御線SAPによりゲートを制御され、電源VDDとトランジスタQp0およびQpx0との間に接続され、ラッチ回路への電源供給を制御する。
また、記憶ノードN,NXは、制御線PRGに制御によりトランジスタQn1,Qnx1を介して回路構成情報を書き込むためのデータ線対DL,DLxと接続され、端子aと端子bの導通/非導通を制御するためにパストランジスタQptrのゲートに接続される。また、記憶ノードN,NXには、制御線SSでゲートを制御された接続トランジスタQs,Qsxを介して、不揮発メモリセルFC0〜FC2が接続される。
各不揮発メモリセルは2つのアクセストランジスタQa0とQax0、Qa1とQax1、Qa2とQax2および2つの強誘電体容量C0とCx0、C1とCx1、C2とCx2で構成され、互いがビット線対BL,BLxで結合される。BL,BLxの端部は、制御線EQでゲートを制御されたイコライズトランジスタQe,Qexを介して接地される。アクセストランジスタのゲートはワード線WL0〜2で制御され、強誘電体容量の一方の電極はプレート線PL0〜2に接続される。FC1,2は回路構成情報の記憶に使用され、FC0は読み出し動作における負荷容量として使用される。
上述した第1の再構成例は再構成制御信号RCに再構成制御回路から再構成命令を発行して再構成を行うが、本再構成例ではこの再構成制御信号に関わる部分が異なる。これ以外は第1〜4の再構成例と同様の動作を行うため、説明を省略する。
再構成制御信号RCに変えて、本実施の形態では制御信号SAP,SS,EQ,WL0〜2,PL0〜2を用い、再構成制御回路は再構成を行う時、SAP,SS,EQ,WL0〜2,PL0〜2を以下に述べるタイミングで出力する。図16には、FC1に格納されているデータを読み出して再構成するときの信号波形を示す。本実施の形態では、SRAM内でクロスカップル接続された2つのインバータからなるラッチ回路を、強誘電体容量から読み出された信号の増幅回路として使用する。
最初にSAPをハイレベルとしてラッチ部を不活性にし、SS,WL0,1をハイレベルにして強誘電体容量C0,C1,Cx0,Cx1とビット線対BL,BLxと記憶ノードN,NXを接地する。次いで、EQをローレベルにして接地電位から切り離し、プレート線PL1をハイレベルにする。このとき、ビット線BLおよび記憶ノードNには強誘電体容量C0,C1で容量分配された電位が発生し、BLxおよびNXには強誘電体容量Cxo,Cx1で容量分配された電位が発生する。ところで、強誘電体容量値は記録されていた分極方向によって異なり、読み出し電圧印加方向と同じ分極方向で容量値は小さくなり、逆の分極方向で大きくなる。PL0を接地してPL1に読み出し電圧を印加しているので、C0,Cx0は図15中の上向き分極で容量は大きくなり、下向き分極で容量は小さくなる。また、C1,Cx1は図15中の上向き分極で容量は小さくなり、下向き分極で容量は大きくなる。負荷容量となるC0,Cx0には予め下向き分極が記録されており、データを記録するC1,Cx1には相補な分極方向が記録されている。例えばC1に下向き分極、Cx1に上向き分極が記録されているとすると、容量分配によってBL,NはBLx,NXに対して微小に高い電位が発生する。このとき、SAPをローレベルにしてクロスカップル接続されたインバータに電源を供給することによって、微小電位差を電源電圧レベルに増幅する。すると、記憶ノードNはハイレベル、NXはローレベルとなる。ここまでの動作が、強誘電体容量から回路構成情報の読み出しとSRAMへの格納に相当する。
次に、再書き込み動作を説明する。強誘電体容量からデータを読み出す際に大きな容量値を示した分極は、読み出し動作で分極方向が反転してしまう破壊読み出しのため、データの再書き込みが必要となる。この動作は単純であり、SRAM部の記憶ノードN,NXに保持された電位を、プレート線PL1を振幅させることで書き込む。図16では、読み出し動作でハイレベルとなったままのPL1をローレベルとする。記憶ノードNはハイレベルであるので、C1には下向きの分極が書き込まれる。最後に、SS,WL0,1をローレベル、EQをハイレベルにして、再書き込み動作は完了する。
図17を用いて、回路構成情報を不揮発メモリ部に記録する動作を説明する。PRGにパルスを印加してデータ線対DL,DLxから相補信号である回路構成情報をSRAM部に格納する。次いで、SSをハイレベル、EQをローレベルにしてビット線対BL,BLxとSRAM部を結合し、書き込むメモリセルのワード線をハイレベルにする。図17ではFC1が書き込み対象である。この状態で当該メモリセルのプレート線PL1に電圧パルスを印加することによって、回路構成情報は分極方向として書き込まれる。最後に、SS,WL1はローレベルに、EQはハイレベルに復帰される。強誘電体容量はデータを不揮発に記録できるので、回路構成情報の書き込みは一度実行されれば、半導体チップの起動毎に行う必要はない。従って、起動時間が短縮化できる。
さて、上述の読み出し動作において、負荷容量となるメモリセルFC0に属する強誘電体容量C0,Cx0は予め下向き分極が記録されていた。その書き込み動作を、図18を用いて説明する。SAPをハイレベルにしてSRAM内のインバータを不活性にする。同時に、PRG,DL,DLxをハイレベルにする。この状態で、SS,WL0をハイレベル、EQをローレベルにすると、C0,Cx0には図15で下向きの電圧が印加され、分極方向は下向きとなる。その後、SS,EQ,WL0を元の電位に復帰し、さらにSAP,PRG,DL,DLxを復帰させて完了する。本実施の形態のように2つの負荷容量を読み出し動作で分極反転しない方向(この例では下向き分極)とすることにより、読み出し後の負荷容量への再書き込み動作が省略できる。従って、この動作は製品出荷前に一度行うだけで良い。また、2つの負荷容量が同じ分極方向であるので、強誘電体容量を高温下に放置したときに発生する分極ヒステリシスの偏り(インプリントと呼ばれる)に関する不安定動作の問題も抑制できる。
本実施の形態では、SRAM部が活性な状態、すなわち論理回路がデータ処理を行っている間、SSにローレベルを入力して接続トランジスタQs,Qsxをオフにし、不揮発メモリ部とSRAM部を切り離す。さらに、EQにハイレベルを入力してイコライズトランジスタをオンにし、ビット線対BL,BLxを接地する。このようにすることで、記憶ノードN,NXの何れかに保持されるハイレベル電位がリークしてビット線対にDC電位が印加され、さらにはアクセストランジスタがリークして強誘電体容量にDC電位が印加されることを回避でき、強誘電体容量の電極間をゼロとできる。従って、強誘電体のTDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)劣化を抑制できる。
以上のように本実施の形態によれば、SRAMは再構成可能な論理回路の構成情報を保持するラッチ、および強誘電体容量からデータを呼び出すセンスアンプとして使用されるため、回路規模が小さくできる。
なお、強誘電体容量素子を形成する際のばらつきが特性に与える影響を排除するため、回路構成情報を格納する強誘電体容量の上下左右方向には隣接して同一形状の強誘電体容量を配置することが望ましい。具体的には、演算素子内の強誘電体容量を二次元マトリクス形状に配置し、その外周にダミーとなる強誘電体容量を配置することで達成される。あるいは、強誘電体容量を一次元ライン形状に配置し、その外周にダミー強誘電体容量を配置する。または、孤立して強誘電体容量を配置される場合には、その外周にダミー強誘電体容量を配置する。回路面積が大きくなってしまう場合には、強誘電体容量の上下もしくは左右に隣接して同一形状の強誘電体容量を配置しても、ばらつき改善に一定の効果は認められる。このことは、センスアンプとなるSRAMについても同様であり、上下左右方向に隣接して同一形状のSRAMを配置することが望ましい。回路配置上、効率的でない場合には上下もしくは左右に隣接して同一形状のSRAMを配置しても良い。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の強誘電体内蔵ラッチ回路を説明する。実施の形態2の回路図を図19に示す。ラッチ回路は2つのインバータINV0,1をクロスカップル接続して構成され、ワード線WLにゲート制御されたアクセストランジスタQ0,XQ0によってビット線BL,XBLからのデータ書き込み、読み出しが行われる。ラッチ回路の2つの記憶ノードN0,XN0には制御線EN0,1にゲート制御されたトランジスタQ1,XQ1,Q2,XQ2を介して、2つのデータ格納用強誘電体容量CF0,XCF0、2つの負荷用強誘電体容量CF1,XCF1が接続され、これらの接続ノードは制御線EQ0,1にゲート制御されたトランジスタQ3,XQ3,Q4,XQ4により接地可能となっている。CF0,XCF0の他方の電極はプレート線PL0に接続され、CF1,XCF1の他方の電極はプレート線PL1に接続される。
このように構成された強誘電体内蔵ラッチ回路は、通常の動作状態ではEN0,1およびPL0,1をロー電位、EQ0,1をハイ電位とし、WLのオン・オフで制御され、BL,XBLに相補なデータを入出力するラッチ回路として動作する。EN0,1をロー電位とすることによってトランジスタQ1,XQ1,Q2,XQ2はオフとし、大きな容量を有する強誘電体容量を記憶ノードから見えなくし、ラッチ回路としての高速性を確保している。また、EQ0,1をハイ電位とすることによってトランジスタQ3,XQ3,Q4,XQ4をオンとして強誘電体容量の一方の電極を接地し、かつ他方の電極が接続されたPL0,1をロー電位として、強誘電体容量に印加される電圧をゼロとしている。これにより、強誘電体のTDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)に関連した絶縁破壊、インプリント等の信頼性問題を解決できる。
駆動部10は、負荷用強誘電体容量CF1,XCF1の分極方向を図19の上向き(これは、後述するデータ格納用強誘電体容量からのデータ読み出し工程で分極反転しない方向)にするため、図20の駆動波形を印加するポーリング工程を実施する。ポーリング工程は、強誘電体内蔵ラッチ回路の出荷前に行われる。読み出し工程で分極が反転しないことから、出荷後にポーリング工程を実施する必要はないが、長期の保存で分極低下する場合も想定されることから、読み出し動作前あるいは電源オフ前などに適宜行っても良い。ポーリング工程は、図20に示すようにWL,EN1に正パルスを印加してトランジスタQ0,XQ0,Q2,XQ2をオンして負荷用強誘電体容量CF1,XCF1をビット線BL,XBLに接続し、EQ1に負電圧を印加してトランジスタQ4,XQ4をオフする。次いで、プレート線PL1をロー電位のまま、ビット線BL,XBLに正電圧パルスを印加する。このとき、強誘電体の分極が反転するのに十分な電圧をCF1,XCF1に印加することにより、分極方向は上向きになる。
通常状態の強誘電体内蔵ラッチ回路はラッチ回路として振舞うが、電源オフ時にはラッチ回路の記憶ノードN0,XN0の相補な電位状態は、データ格納用強誘電体容量CF0,XCF0の分極方向として格納される。強誘電体へのデータ書き込み動作は、図21の駆動波形を印加することで実現できる。最初に、EN0に正電圧を印加してトランジスタQ1,XQ1をオンしてデータ格納用強誘電体容量CF0,XCF0とラッチ回路の記憶ノードN0,XN0を接続し、EQ0に負電圧を印加してトランジスタQ3,XQ3をオフする。この時、ハイ電圧であった記憶ノードに接続されたデータ格納用強誘電体容量の分極は図19中の下向きとなる。次いで、プレート線PL0に正電圧パルスを印加し、ロー電位であった記憶ノードに接続されたデータ格納用強誘電体容量の分極を上向きとする。強誘電体へのデータ書き込み動作を完了後、電源はオフとされる。
分極状態をまとめると、負荷用強誘電体容量CF1,XCF1はポーリング工程により上向き、データ格納用強誘電体容量CF0,XCF0はデータ書き込み工程により記憶ノードN0,XN0がそれぞれロー電位,ハイ電位のときに上向き,下向きとなり、記憶ノードN0,XN0がそれぞれハイ電位,ロー電位のときに下向き,上向きとなる。
強誘電体内蔵ラッチ回路の起動時には、データ格納用強誘電体容量CF0,XCF0の分極方向として格納されたデータは、ラッチ回路の記憶ノードN0,XN0の相補な電位として復帰される。強誘電体からのデータ読み出し動作は、図22の駆動波形を印加することで実現できる。最初に、インバータINV0,1の電源(図19中には示していない)をオフの状態で、EN0,1に正電圧を印加してトランジスタQ1,XQ1,Q2,XQ2をオンして強誘電体容量CF0,XCF0,CF1,XCF1と記憶ノードN0,XN0を接続し、EQ0,1に負電圧を印加してトランジスタQ3,XQ3,Q4,XQ4をオフする。次いで、プレート線PL0に正電圧パルスを印加すると、N0には強誘電体容量CF0とCF1の容量分配された電位が発生し、XN0にはXCF0とXCF1の容量分配された電位が発生する。強誘電体の容量値は分極方向によって変化し、この場合は上向き分極の方が下向き分極よりも容量値が小さい。従って、相補な分極方向が格納された強誘電体容量CF0,XCF0の内、上向き分極の容量に接続された記憶ノードの方が、下向き分極の容量に接続された記憶ノードよりも低い電位となる。データ格納用強誘電体容量CF0,XCF0に格納された分極方向が上向き,下向きの場合には記憶ノードN0,XN0はロー電位,ハイ電位(図22中の破線,実線に対応)となり、CF0,XCF0に格納された分極方向が下向き,上向きの場合にはN0,XN0はハイ,ロー電位となる。強誘電体材料に膜厚100nmのストロンチウム・ビスマス・タンタレート(SrBi2Ta2O9)を使った場合、このときに記憶ノードに発生する電位差は650mVである。次いで、インバータINV0,1に電源供給することにより、記憶ノードの電位差は電源電圧VDDレベルまで増幅される。これは、図22中のt0のタイミングでN0,XN0がフル振幅となる動作である。以上の強誘電体からのデータ読み出し動作により、データはラッチ回路の記憶ノードN0,XN0の相補な電位として復帰される。ラッチ回路の増幅動作による記憶ノード電位の振幅が強誘電体の抗電圧を十分に超える場合、読み出しでスイッチングした分極の再書き込み動作は不要となる。
本発明の実施の形態では、負荷用強誘電体容量CF1,XCF1はデータ読み出し動作で分極が反転しない方向に予めポーリングされている。これにより、インプリント耐性が向上している。以下、図面を用いて、その理由を説明する。
図23,図24は直列接続されたデータ格納用と負荷用強誘電体容量に読み出し電圧を印加したときに共通ノード、すなわちラッチの記憶ノードに発生する電位を図示したものであり、それぞれは負荷用強誘電体容量を上向き,下向きにポーリングした場合である。強誘電体の電圧−分極特性いわゆる分極ヒステリシス51を、データ格納用強誘電体容量については通常通りプロットし、負荷用強誘電体容量ヒステリシス52,53,62,63は分極軸に対して反転し、印加電圧VDDだけシフトしてプロットしている。さらに、読み出し対象となる分極、すなわちデータ格納用強誘電体容量に格納されている初期分極値54,55,64,65だけ、負荷用強誘電体容量のヒステリシスは分極軸上にオフセットを持たせ、その初期分極値56,57,66,67と一致させている。従って、1つのデータ格納用強誘電体容量ヒステリシス51に対して、その格納された分極に応じて2つの負荷用強誘電体容量ヒステリシス52,53および62,63が描かれ、それらの交点58,59,68,69から共通ノードに発生する電位が求められる。負荷用強誘電体が上向き分極56,57にポーリングされている場合と、下向き分極66,67にポーリングされている場合では、負荷用強誘電体容量の上下分極54,55および64,65から読み出される共通ノード電位差(58,59および68,69電位差)は等しく、650mVである。
ところが、左右対称のヒステリシスを有した強誘電体を高温下に置くとインプリントし、ヒステリシスはシフトしてしまう。例えば、上向き分極(図23,6の正分極に対応)が書き込まれた強誘電体を125℃下で100時間放置すると、ヒステリシスは電圧軸方向に−150mVシフトする。逆に、下向き分極(図23,6の負分極に対応)の場合には+150mVシフトする。ヒステリシスのシフトは、上向き分極(正分極)の動作にはほとんど影響を与えないが、下向き分極(負分極)の動作点にオフセットを与える。
インプリントによってヒステリシスが±150mVシフトした場合について、ワーストケースの共通ノード電位差を見積もる。図23の負荷用強誘電体容量を上向きにポーリングした場合では、2つの強誘電体ヒステリシスが上向き分極(正分極)54,56である動作点58はインプリントによって変化せず、下向き分極(負分極)55と上向き分極(正分極)57の動作点59は+150mVシフトし、共通ノード電位差は500mVとなる。一方、図24の負荷用強誘電体容量を下向きにポーリングした場合では、2つの強誘電体ヒステリシスが上向き分極(正分極)64と下向き分極(負分極)56である動作点68は−150mVシフトし、下向き分極(負分極)65と下向き分極(正分極)67の動作点69は+300mVシフトし、共通ノード電位差は200mVとなる。以上のように、負荷用強誘電体容量CF1,XCF1を読み出し動作によって分極が反転しない上向きにポーリングした結果、初期の共通ノード電位差650mVはインプリントによって500mVへと減少する。これは、下向きにポーリングした場合の200mVよりも2.5倍となっており、安定した動作が可能となっている。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の強誘電体内蔵ラッチ回路図を図25に示す。本実施の形態では、ラッチ回路とデータ格納用強誘電体容量からなる記憶セルを2つ備え、負荷用強誘電体容量を含む負荷セル1つを共有している。図25中に(0)の添え字が付された要素は第一の記憶セルを構成し、(1)の添え字が付された要素は第二の記憶セルを構成する。ラッチ回路は2つのインバータINV0(0,1),1(0,1)をクロスカップル接続して構成され、ワード線WL(0,1)にゲート制御されたアクセストランジスタQ0(0,1),XQ0(0,1)によってビット線BL,XBLからのデータ書き込み、読み出しが行われる。ラッチ回路の2つの記憶ノードN0(0,1),XN0(0,1)には制御線EN0(0,1)にゲート制御されたトランジスタQ1(0,1),XQ1(0,1)を介して、2つのデータ格納用強誘電体容量CF0(0,1),XCF0(0,1)が接続され、これらの接続ノードは制御線EQ0(0,1)にゲート制御されたトランジスタQ3(0,1),XQ3(0,1)により接地可能となっている。CF0(0,1),XCF0(0,1)の他方の電極はプレート線PL0に接続される。負荷セルは、制御線EN1(0,1)にゲート制御されたトランジスタQ2(0,1),XQ2(0,1)を介して、2つ負荷用強誘電体容量CF1(0,1),XCF1(0,1)が接続され、これらの接続ノードは制御線EQ1(0,1)にゲート制御されたトランジスタQ4(0,1),XQ4(0,1)により接地可能となっている。CF1(0,1),XCF1(0,1)の他方の電極はプレート線PL1に接続される。
このように構成された強誘電体内蔵ラッチ回路は、通常の動作状態ではEN0(0,1),1およびPL0(0,1),1をロー電位、EQ0(0,1),1をハイ電位とし、WL(0,1)のオン・オフで制御され、BL,XBLに相補なデータを入出力するラッチ回路として動作する。
本実施の形態における強誘電体内蔵ラッチ回路は、負荷用強誘電体容量CF1,XCF1の分極方向を図25の上向き(これは、後述するデータ格納用強誘電体容量からのデータ読み出し工程で分極反転しない方向)にする工程を実施する。ポーリング工程は、強誘電体内蔵ラッチ回路の出荷前に行われる。読み出し工程で分極が反転しないことから、出荷後にポーリング工程を実施する必要はないが、長期の保存で分極低下する場合も想定されることから、読み出し動作前あるいは電源オフ前などに適宜行っても良い。ポーリング工程は、EN1に正電圧を印加してトランジスタQ2,XQ2をオンして負荷用強誘電体容量CF1,XCF1をビット線BL,XBLに接続し、EQ1に負電圧を印加してトランジスタQ4,XQ4をオフする。次いで、プレート線PL1をロー電位のまま、ビット線BL,XBLに正電圧パルスを印加する。このとき、強誘電体の分極が反転するのに十分な電圧をCF1,XCF1に印加することにより、分極方向は上向きになる。
通常状態の強誘電体内蔵ラッチ回路はワード線WL(0,1)で選択される2つのラッチ回路として振舞うが、電源オフ時にはラッチ回路の記憶ノードN0(0,1),XN0(0,1)の相補な電位状態は、データ格納用強誘電体容量CF0(0,1),XCF0(0,1)の分極方向として格納される。強誘電体へのデータ書き込み動作は2つの記憶セルに対して同時に行われ、最初に、EN0(0,1)に正電圧を印加してトランジスタQ1(0,1),XQ1(0,1)をオンしてデータ格納用強誘電体容量CF0(0,1),XCF0(0,1)とラッチ回路の記憶ノードN0(0,1),XN0(0,1)を接続し、EQ0(0,1)に負電圧を印加してトランジスタQ3(0,1),XQ3(0,1)をオフする。この時、ハイ電圧であった記憶ノードに接続されたデータ格納用強誘電体容量の分極は図25中の下向きとなる。次いで、プレート線PL0(0,1)に正電圧パルスを印加し、ロー電位であった記憶ノードに接続されたデータ格納用強誘電体容量の分極を上向きとする。強誘電体へのデータ書き込み動作を完了後、電源はオフとされる。
強誘電体内蔵ラッチ回路の起動時には、2つの記憶セルのデータ格納用強誘電体容量CF0(0,1),XCF0(0,1)の分極方向として格納されたデータは順に読み出され、ラッチ回路の記憶ノードN0(0,1),XN0(0,1)の相補な電位として復帰される。第一の記憶セルの強誘電体からのデータ読み出し動作は、最初に、インバータINV0(0),1(0)の電源(図25中には示していない)をオフの状態で、WL(0),EN0(0),1に正電圧パルスを印加してトランジスタQ0(0),XQ0(0),Q1(0),XQ1(0),Q2,XQ2をオンして強誘電体容量CF0(0),XCF0(0),CF1,XCF1と記憶ノードN0(0),XN0(0)を接続し、EQ0(0),1に負電圧パルスを印加してトランジスタQ3(0),XQ3(0),Q4,XQ4をオフする。次いで、プレート線PL0(0)に正電圧パルスを印加すると、N0(0)には強誘電体容量CF0(0)とCF1の容量分配された電位が発生し、XN0(0)にはXCF0(0)とXCF1の容量分配された電位が発生する。データ格納用強誘電体容量CF0(0),XCF0(0)に格納された分極方向が上向き,下向きの場合には記憶ノードN0(0),XN0(0)はロー電位,ハイ電位となり、CF0(0),XCF0(0)に格納された分極方向が下向き,上向きの場合にはN0(0),XN0(0)はハイ,ロー電位となる。次いで、インバータINV0(0),1(0)に電源供給することにより、記憶ノードの電位差は電源電圧VDDレベルまで増幅される。以上の強誘電体からのデータ読み出し動作により、第一の記憶セルのデータはラッチ回路の記憶ノードN0(0),XN0(0)の相補な電位として復帰される。続いて、第二の記憶セルにも同様の読み出し動作が行われる。なお、インバータINV0(0,1),1(0,1)に電源供給して記憶ノード電位をフル振幅とする動作は、2つの記憶セルに共通に行っても良い。そうすることにより、起動時間の短縮が可能となる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4の強誘電体内蔵ラッチ回路は実施の形態2と同様である。通常の動作状態ではEN0,1およびPL0,1をロー電位、EQ0,1をハイ電位とし、WLのオン・オフで制御され、BL,XBLに相補なデータを入出力するラッチ回路として動作する。
本実施の形態における駆動部10は、負荷用強誘電体容量CF1,XCF1の分極方向を図19の下向きにするため、図26の駆動波形を印加するポーリング工程を実施する。ポーリング工程は、強誘電体内蔵ラッチ回路の出荷前と、後述するラッチ回路からデータ格納用強誘電体容量へのデータ書き込み後に行われる。ポーリング工程は、図26に示すようにプレート線PL1に正パルスを印加する。このとき、強誘電体の分極が反転するのに十分な電圧をCF1,XCF1に印加することにより、分極方向は下向きになる。
通常状態の強誘電体内蔵ラッチ回路はラッチ回路として振舞うが、電源オフ時にはラッチ回路の記憶ノードN0,XN0の相補な電位状態は、データ格納用強誘電体容量CF0,XCF0の分極方向として格納される。強誘電体へのデータ書き込み動作は、実施の形態2と同様に図21の駆動波形を印加することで実現できる。最初に、EN0に正電圧を印加してトランジスタQ1,XQ1をオンしてデータ格納用強誘電体容量CF0,XCF0とラッチ回路の記憶ノードN0,XN0を接続し、EQ0に負電圧を印加してトランジスタQ3,XQ3をオフする。この時、ハイ電圧であった記憶ノードに接続されたデータ格納用強誘電体容量の分極は図19中の下向きとなる。次いで、プレート線PL0に正電圧パルスを印加し、ロー電位であった記憶ノードに接続されたデータ格納用強誘電体容量の分極を上向きとする。強誘電体へのデータ書き込み動作を完了後、電源はオフとされる。
分極状態をまとめると、負荷用強誘電体容量CF1,XCF1はポーリング工程により下向き、データ格納用強誘電体容量CF0,XCF0はデータ書き込み工程により記憶ノードN0,XN0がそれぞれロー電位,ハイ電位のときに上向き,下向きとなり、記憶ノードN0,XN0がそれぞれハイ電位,ロー電位のときに下向き,上向きとなる。
強誘電体内蔵ラッチ回路の起動時には、データ格納用強誘電体容量CF0,XCF0の分極方向として格納されたデータは、ラッチ回路の記憶ノードN0,XN0の相補な電位として復帰される。強誘電体からのデータ読み出し動作は、実施の形態2と同様に図22の駆動波形を印加することで実現できる。最初に、インバータINV0,1の電源(図19中には示していない)をオフの状態で、EN0,1に正電圧を印加してトランジスタQ1,XQ1,Q2,XQ2をオンして強誘電体容量CF0,XCF0,CF1,XCF1と記憶ノードN0,XN0を接続し、EQ0,1に負電圧を印加してトランジスタQ3,XQ3,Q4,XQ4をオフする。次いで、プレート線PL0に正電圧パルスを印加すると、N0には強誘電体容量CF0とCF1の容量分配された電位が発生し、XN0にはXCF0とXCF1の容量分配された電位が発生する。強誘電体の容量値は分極方向によって変化し、この場合は上向き分極の方が下向き分極よりも容量値が小さい。従って、相補な分極方向が格納された強誘電体容量CF0,XCF0の内、上向き分極の容量に接続された記憶ノードの方が、下向き分極の容量に接続された記憶ノードよりも低い電位となる。データ格納用強誘電体容量CF0,XCF0に格納された分極方向が上向き,下向きの場合には記憶ノードN0,XN0はロー電位,ハイ電位(図22中の破線,実線に対応)となり、CF0,XCF0に格納された分極方向が下向き,上向きの場合にはN0,XN0はハイ,ロー電位となる。次いで、インバータINV0,1に電源供給することにより、記憶ノードの電位差は電源電圧VDDレベルまで増幅される。以上の強誘電体からのデータ読み出し動作により、データはラッチ回路の記憶ノードN0,XN0の相補な電位として復帰される。
本発明の実施の形態では、負荷用強誘電体容量CF1,XCF1はデータ読み出し動作で分極が反転するため、電源オフ前のデータ書き込み動作実施後に再度ポーリング工程を行う。こうすることにより、電源オフの状態で高温下に置かれた場合に負荷用強誘電体がインプリントしたとしても、2つの負荷用強誘電体ヒステリシスのシフト方向は等しく、実施の形態2で見積もられたのと同様に記憶ノード電位差を500mVに抑制することが可能となる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1〜実施の形態4に示した強誘電体内蔵ラッチ回路の一適用例について説明する。
図27(a)は、本実施の形態における強誘電体内蔵ラッチ回路を備えるプログラマブル・ロジック・デバイスの概略構成を示す図である。このプログラマブル・ロジック・デバイスは、複数の単位ロジック回路(図中のLogic)と、単位ロジック回路間を相互に接続するための配線網(図中の縦線及び横線)とを備える。単位ロジック回路は、それぞれプログラマブルな論理演算回路であり、例えば4入力1出力のLUT(Look Up Table)等である。配線網は、単位ロジック回路間に縦と横に走る複数の配線と、縦横の配線の交差点を接続するための複数の接続回路とからなる。
図27(b)は、接続回路の詳細を示す図である。同図(b)のように、配線の各交差点には、接続用スイッチトランジスタQ5と、そのオン・オフを制御する強誘電体内蔵ラッチ回路とからなる。この強誘電体内蔵ラッチ回路の記憶ノードN0の値に応じて接続用スイッチトランジスタQ5がオン・オフするように構成されている。これにより、任意の単位ロジック回路の入出力を接続可能にしている。
この強誘電体内蔵ラッチ回路として、図19、図26に示した強誘電体内蔵ラッチ回路を用いてもよいし、図25に示した強誘電体内蔵ラッチ回路を複数の交差点に対応させてもよい。
なお、実施の形態1〜5では、ラッチ回路にクロスカップル接続されたインバータを用いたが、これにとどまらないことは言うまでもない。