JP3907542B2 - 光通信モジュール - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、一本のプラスチック光ファイバを伝送媒体として光信号を同時に双方向に送受信することのできる光通信モジュールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は、光通信リンクの構成を示す概略図である。光通信リンク103は、伝送するデータ信号に基づき、伝送に適した変調光を伝送するための光ファイバ102と、光ファイバ102の両端に、別個に、光学的に結合するように接続された光通信モジュール101とを備えている。
【0003】
光通信リンク3はその通信形態により、いくつかの種類に分類できる。大きく分けると、次の3つの分類の仕方がある。
(a1) 光ファイバ2が単数(一芯)である場合と複数である場合
(a2) 信号を双方向に通信する場合と片方向に通信する場合
(a3) 信号を同時に(全二重)通信する場合と半二重で通信する場合
上記を組合わせて、たとえば、一芯全二重通信方式により光通信が行われる場合もある。
【0004】
複数の光ファイバを用いた全二重通信方式では、従来から、光通信モジュールの小型化が困難であることや、伝送距離が長くなるのに伴い光ファイバのコストが高くなるという問題があった。このため、一本の光ファイバを用いて、全二重方式の光通信を行うことができる一芯全二重方式に対応した光通信モジュールが提案されている。特に、近年のプラスチック光ファイバ(以下POF:Plastic Optical Fiber)の低損失化・広帯域化に伴い、家庭内通信や電子機器間通信への応用が進んでいる。POFはその口径が約1mmと大口径であるため、光通信モジュールとの結合が容易であり、光ファイバと光通信モジュールとを、互いに簡易に抜き差しできる光通信リンクを得ることができる。
【0005】
一本の光ファイバにより全二重通信を行う光通信モジュールでは、送信・受信を同一の光ファイバで行うので、送信光と受信光との混信を防止することが重要となる。受信光に送信光が混信する主な原因としては、次のものが従来より知られている。
(b1) 送信光が光ファイバに入射する時に光ファイバ端面で反射する場合(以下、近端反射と表記)
(b2) 光ファイバを伝播した送信光が光ファイバより出射する時に光ファイバ端面で反射する場合(以下、遠端反射と表記)
(b3) 光通信モジュール内での内部散乱光による場合(以下、内乱光と表記)
上記の混信の原因は、光ファイバの端面形状や光通信モジュールの光学系の工夫により対処できることが知られている(たとえば、特開平8−292329号公報、特開平11−352364号公報、特開平11−237535号公報)。
【0006】
一例として、図8に示す光通信モジュール1について説明すると、以下の通りである。発光素子104から放射される送信光108は、送信光学系の送信レンズ106により集光され、光ファイバ102に結合する。一方、光ファイバ102から放射される受信光109は受信光学系の受信レンズ107により集光されて受光素子105に結合される。送信光学系と受信光学系の間には遮光板112が配置されており、上記(b1)近端反射と(b3)内乱光とによる混信が防止される。また、光ファイバ102の端面は球面形状に加工されており、端面での反射方向が変化するため、(b2)遠端反射による混信が低減される。したがって、一本の光ファイバ102により双方向に全二重での光通信が可能となる。
【0007】
一方、受光素子で反射した光や、光ファイバのクラッドを伝搬した光が受光素子に結合することで伝送特性に悪影響を及ぼすことを防止する方法については、既に開示されている(特開平6−324232号公報)。上記方法では、図9に示すように、受信レンズ107と受光素子105との間に受光素子105の受光面121の径より小さい絞り113を配置する。クラッドを伝播した光は、光ファイバ102の外周を伝搬するので受光素子105の外周側に集光される。このため、クラッドを伝播した光は、絞り113によって遮光され、受光素子105に結合しない。また、受光素子105の受光面121の外周に照射されるはずの受信光109も、絞り113により遮光される。このため、乱反射した受信光109が受光素子105に結合することを防止することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、光ファイバとして口径の大きいPOFを用いる場合、従来は問題とならなかった新たな混信原因が発生することがわかった。これは、(b4)通信相手の光通信モジュールから反射すること(以下、相手モジュール反射と表記)により発生する。すなわち、光通信モジュールの一部で反射した光が、再び光ファイバに結合し、光ファイバを伝播して通信相手の光通信モジュールにまで到達することにより発生する。この相手モジュール反射による混信は、従来主流であった石英光ファイバではほとんど問題にならなかった。これは、石英光ファイバはその口径が数10μmから100μm以下と小さいことから、光通信モジュールの一部で反射した光が再び光ファイバに結合しにくいこと、および、受信光が出射する面積が小さいことから、出射光の取扱いが容易であることによる。
【0009】
しかし、光ファイバにPOFを用いる場合、POFはその口径が約1mmと大きいので、光通信モジュールの一部で反射された光が再び光ファイバに結合しやすくなる。また、広い面積から受信光が出射されることから、この受信光が照射される範囲が広くなり、その制御が困難となる。このため、相手モジュール反射が大きくなり、混信の原因となる。
【0010】
また、上記特開平6−324232号公報に開示されている方法は、相手モジュール反射を低減するものではなく、光通信モジュール101内で散乱した受信光109やクラッド伝搬光を受信することを防止するものである。このため、絞り113を挿入することにより、この絞り113での反射が相手モジュール反射の原因となり、相手モジュール反射が増加する。また、このように絞りを配置する場合には、絞り113の配置スペースが必要となる。このため、光通信モジュール101の小型化が困難となる。また、受光素子105の受光面121に位置合わせて絞り113を配置する必要がある。このため、高精度の組立てが必要となり、生産コストが高くなるという問題がある。さらにまた、この方法は受信のみの配置であり、当然、全二重通信に対応できるものではない。全二重通信を行う光通信モジュールでは、送信部の一部にも受信光が照射されるため、この部分からの反射も問題となる。
【0011】
本発明は、光ファイバとしてPOFを用いた場合に問題となる相手モジュール反射を低減でき、一本のプラスチック光ファイバにより全二重方式の双方向通信が可能な、安価で小型の光通信モジュールを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の光通信モジュールは、一本のプラスチック光ファイバを伝送媒体として光通信を行なう。この光通信モジュールは、該光ファイバから出射される受信光を受光して電気信号に変換する受光素子を有し、受光素子の表面において、受光面の周辺部に受信光を吸収する遮光膜を配置している。
【0021】
上記の構成によれば、反射率が高い受光面の外周からの反射を大幅に低減することが可能となり、相手モジュール反射を低減できる。また、半導体プロセスにより遮光膜を形成できることから低価格であり、さらに薄膜であることから小型とすることができる。
【0022】
上記の遮光膜が形成された受光素子を樹脂により覆い、その樹脂の屈折率と遮光膜の屈折率との差が遮光膜の屈折率の±20%以内の範囲の屈折率とするのがよい。
【0023】
上記の構成によれば、遮光膜面からの反射率を低減することができ、相手モジュール反射を低減することができるという効果を奏する。
【0024】
上記の樹脂により、光ファイバから出射された受信光を受光面に集光させる受信光学系を形成するのがよい。
【0025】
上記の構成によれば、樹脂モールド部と受信光学系を一体に形成していることから、両者の界面がなく、界面での反射が生じない。また受信光学系の形状を工夫することにより受信光学系に照射された受信光は発散させ、相手モジュール反射を低減することができる。さらにまた、受信光学系を小型にすることができるという効果を奏する。
【0026】
また、遮光膜は受光素子の受光面の周囲において、その厚みが受光面側に向って薄くなるテーパ部を有するのがよい。
【0027】
上記の構成によれば、樹脂を受光面に導きやすくなり生産性が高くなる。遮光膜により受信光を遮ることがなく、受信効率を高くすることができるという効果を奏する。
【0028】
また、上記の遮光膜は着色された感光性レジストにより形成されるのがよい。上記の構成によれば、遮光膜を半導体プロセスにより、高精度に簡易に大量生産することができ、小型で高性能であり、安価に遮光膜を形成することができる。
【0029】
また、遮光膜は感光性ポリイミドにより形成されるのがよい。
上記の構成によれば、遮光膜を半導体プロセスにより、高精度に簡易に大量生産することができ、小型で高性能であり、安価に遮光膜を形成することができる。また、感光性ポリイミドはポリイミド自体の色により受信光を吸収するため、別途、顔料等を加える必要がなく、装置を汚染する可能性が少ないことから、作製プロセスの自由度を増すことができる効果を奏する。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明に係る実施の形態について、図1に基づいて説明する。
【0041】
図1は、本発明の実施の形態における光通信モジュールをあらわす概略図である。光通信モジュール1は、データ信号に基づく変調光である送信光8を生成する発光素子4と、光ファイバ2からの受信光9を受光してデータ信号を生成するための受光素子5とを有している。光通信モジュール1は、さらに、発光素子4から出射される送信光8を集光して光ファイバ2に結合させる送信レンズ6と、光ファイバ2から出射される受信光9を受光素子5が配置されている方向に反射する反射ミラー12と、受信光9を集光して受光素子5に結合させる受信レンズ7とを有している。送信レンズ6、および反射ミラー12は共に光学部材10に形成されている。
【0042】
発光素子4は放熱特性に優れたサブマウント16上に配置されている。サブマウント16には発光素子4の光量を測定するためのモニタフォトダイオード15が配置されており、発光素子4の光量を一定に保っている。サブマウント16および発光素子4は、送信ステム17上に配置されている。受光素子5の近傍には受光素子5の信号を電流・電圧変換するためのプリアンプ19が配置されている。受光素子5およびプリアンプ19は、ともに樹脂モールド20により外気から封止され、受信リードフレーム18上に配置されている。受信レンズ7は、樹脂モールド20と一体成形加工により形成されている。送信ステム17および受信リードフレーム18は、それぞれ図示していない回路に電気的に接続されている。
【0043】
発光素子4により生成された送信光8は、発光素子4の放射角にしたがって放射状に発散する。その後、送信レンズ6で任意の開口数(NA:Numerical Aperture)に変換されて集光され、光学部材10を通過して、光ファイバ2に結合する。光ファイバ2から出射される受信光9は反射ミラー12により受光素子5の方向に反射されると共に、曲率を有する反射ミラー12により集光されて受信レンズ7に入射する。そして、受信レンズ7によりさらに集光されて受光素子5に結合する。このように、送信光8と受信光9とを光ファイバ2の口径内で空間的に分離することにより、一本の光ファイバ2により双方向に通信することが可能となる。
【0044】
送信光8は、光学部材10のプリズム11で屈折され、光ファイバ2の外周部より光ファイバ2に入射する。送信光8の一部は、光ファイバ2の端面で反射される(近端反射)。光学部材10のプリズム11の先端にも形成されている反射ミラー12は、その一部が光ファイバ2に接触するか、または、数十〜数百μm離れた位置に配置されている。このため、光ファイバ2の端面で反射された送信光8は反射ミラー12のこの部分により遮光されて、受光素子5方向に入射することがなくなり近端反射を防止することができる。
【0045】
また、発光素子4から放射された送信光8のうち、送信レンズ6の外周を通過した光(内乱光14)も反射ミラー12により遮光されるため、受光素子5に結合しない。光通信モジュール1内で散乱した光も反射ミラー12により遮光されているため、内乱光による混信を防止することができる。すなわち、反射ミラー12は、図8の従来技術で示した遮光板112と同様の働きを有し、近端反射または内乱光による混信を防止すると共に、受信光9を集光して効率良く受光素子5に結合させる働きを有している。反射ミラー12は薄膜であるため、上記遮光板のように受信光9を遮る面積が大きくなく、受信光9を効率良く利用することができる。
【0046】
さらに、図1を参照して、光ファイバ2の端面は球面形状に加工されており、遠端反射を低減することができる。光ファイバ2の端面形状は、他に傾斜形状や円錐形状等にしてもよい。光ファイバ2を伝搬してきた受信光9が光ファイバ2の端面で反射されるとき、その反射方向を変えて、光ファイバ2のNAより大きい角度になるように設定することにより、遠端反射を低減することができる。
【0047】
本実施例においては、送信光学系とは送信レンズ6とプリズム11、光学部材10のことを言い、受信光学系とは集光ミラー12と受信レンズ7、光学部材10のことを言う。また、後述するように受信光発散部はプリズム11である。
【0048】
次に相手モジュール反射による混信の防止原理を説明する。
光通信モジュール1で相手モジュール反射が生じるのは、送信部からの反射と受信部からの反射の2つに大別される。
【0049】
送信部では、図2に示すように、プリズム11、送信レンズ6、発光素子4、サブマウント16等から反射した受信光9が、再び光ファイバ2に結合することが原因となり相手モジュール反射が生じる。これらで反射した受信光9が光ファイバ2に入射しないように、あるいは入射しても光ファイバ2の開口数より大きい角度で入射するように設定することが好ましい。特に光ファイバ2から近い位置に配置されている部材の方が、反射光が光ファイバ2に入射しやすいので注意が必要となる。
【0050】
たとえば、プリズム11では、光ファイバ2の近傍に配置されているため反射光が光ファイバ2に入射しないようにすることは困難である。しかし、プリズム11の傾斜角度を最適化することにより、受信光9の反射光が光ファイバ2に入射しても、結合しないようにすることができる。すなわち、反射光が光ファイバ2の開口数より大きな角度で光ファイバ2に入射するようにすればよい。そのためには、プリズム11の傾斜角度α(図3参照)を光ファイバ2のNAの半分、またはNA程度以上に大きく設定することが好ましい。たとえば、NA0.3の光ファイバ2を用いる場合、開口数を角度に換算すると17.5度である。このとき、傾斜角度αは、8°以上、好ましくは17.5°以上とすればよい。また、プリズム11は、送信レンズ6および光学部材10とともに一体成形加工によって一体化して形成する方が好ましい。プリズム11を送信レンズ6および光学部材10と別体で配置した場合、各部の空気との界面で反射が生じるため、相手モジュール反射の原因となる要素が増加する。上記のように、プリズム11の傾斜角度αを大きくする方法では、光ファイバ2に反射光が入射してもよいため、光学系の配置自由度が増し、光通信モジュール1の小型化が容易となる。
【0051】
プリズム11以外の送信部による反射は、光ファイバ2から離れた位置であるため影響は少ないが、無視することはできない。これらの反射による相手モジュール反射を低減するために、本発明では、図1に示すように、プリズム11の送信光8が通過しない位置に光吸収部26を形成している。光吸収部26はプリズム11と同じ形状で形成されているため、傾斜角度αを共有する。このため、光吸収部26で反射された受信光9は、先述したように、光ファイバ2に結合しにくくなり、相手モジュール反射となりにくい。また、送信光8が通過する面積は、受信光9が照射される面積に比べ小さい。このため、受信光9の大半は、光吸収部26により吸収されて、その背後に配置されている送信レンズ6や発光素子4等に照射される受信光9を大幅に低減することができる。さらに、送信光8が通過する部分を通過した受信光9は、送信レンズ6や発光素子4に照射され、反射するが、その反射光の大半は光吸収部26に照射されるため光ファイバ2に結合せず、相手モジュール反射を低減することができる。また、プリズム11を光ファイバ2の近傍に配置させることにより、送信光8がより集光された状態となるため、送信光8の通過面積を小さくすることができる。このため、送信光学系に入射し、光吸収部材26の開口部を通過する受信光9を少なくすることができる。また、送信光8を阻止しないため、高い送信効率を得ることができる。
【0052】
次に、受信部からの反射による相手モジュール反射について説明する。受信部では受信光学系(反射ミラー12、受信レンズ7)や受光素子5からの反射が相手モジュール反射の原因となる。受信光学系に関しては、送信光学系と同様に、その形状により反射光が光ファイバ2に入射しないようにするか、または、入射しても光ファイバ2の開口数以上とすることで、光ファイバ2に結合しないようにできる。しかし、受信部では送信部と異なり、受信光9を受光素子5で効率良く受信する必要があるため、送信部のように途中に光吸収部26を配置することはできない。
【0053】
このため、受光素子5に照射される受信光9の光量が多くなり、受信部ではこの受光素子5からの反射が相手モジュール反射に与える影響が大きくなる。受光素子5の受光面21は、通常、たとえば、窒化シリコン等の薄膜により反射防止コートを行うことで受信光9の反射を防止し、受光効率を向上させている。このため、受光面21に入射した受信光9の相手モジュール反射への影響を小さくすることができる。しかし、通信速度が速くなる程、受光素子5の浮遊容量を小さくする必要があり、受光面21の面積は直径が約数100μmと小さくなる。一方、光ファイバ2としてPOFを用いる場合、その口径が約1mmと大きい。このため、受信光9を受光素子5の受光面21のみに100%結合させることは困難である。また、100%結合させるためには、受信光学系が複雑となり、光通信モジュールのコスト増や大型化につながってしまう。さらに、POFを用いた光通信リンク3では、簡易に光通信モジュール1に抜き差しできることが特徴である。その立場に立つと、許容公差を比較的大きく設定する必要があり、受信光9の集光位置のずれも大きくなる。このため、受信光9の一部は、受光素子5の受光面21の外周部に照射される場合が多くなる。そして、条件を変えて実験を行った結果、この受光面21の外周部に照射された受信光9が相手モジュール反射への影響が大きいことを確認した。以下に、この対策について説明する。
【0054】
図4は、受光素子5の一例を示した概略図である。受光素子5は、一般に、受信光9を受光する受光面21と、その周囲に形成されたリング電極22と、パット電極23と、空乏層24と、これらの外周に形成されたパッシベーション膜25とから構成されている。受光面21は、前述したように反射防止コートがなされており、受信光9の反射が低減される。しかし、パッシベーション膜25は一般にアルミニウム等で形成されており、その表面での反射率は約80%と高い。前述したように、光ファイバ2にPOFを用いる場合は、受信光9が受光面21の外周部であるパッシベーション膜25に照射しやすく、かつ、この部分の反射率が高い。このために、この部分で反射された受信光9は、相手モジュール反射に与える影響が大きいことを確認した。
【0055】
本発明は、このパッシベーション膜25を覆う遮光膜13を配置したことを特徴の一つとしている。この遮光膜13は、着色レジストやポリイミド等、使用される波長領域に対して吸収率の高い薄膜で形成されている。膜厚は数μmから数10μmで、使用する材料の吸収率により選定される。すなわち、遮光膜13に照射された受信光9は、その表面で一部が反射されるが、パッシベーション膜25に比べ反射率が低い。上記受信光9は、遮光膜13により吸収されるため、その下にあるパッシベーション膜25まではほとんど到達しない。このため、この部分に照射される受信光9に起因する相手モジュール反射を低減することができる。
【0056】
さらに、受光素子5は樹脂モールド20によって覆い、かつ遮光膜13の屈折率は樹脂モールド20の屈折率と同等に設定することが好ましい。たとえば、遮光膜13に屈折率1.7のポリイミドを用いた場合、樹脂モールド20がなく、表面が空気と接触する場合は、フレネル反射により約7%の反射が生じるが、屈折率1.5の樹脂材料により樹脂モールド20を形成することにより、遮光膜13の表面での反射が約0.4%に低減される。遮光膜13と樹脂モールド20に用いる材料の屈折率は遮光膜13表面での反射が1%以下となるように選定することが好ましい。あるいは、遮光膜13と樹脂モールド20の屈折率の差を遮光膜13の屈折率に対して±20%以内にすることが好ましい。
【0057】
さらにまた、樹脂モールド20により受信レンズ7を一体に形成することが好ましい。受信光9は受光素子5に照射される前に、樹脂モールド20に照射される。このため、たとえば樹脂モールド20の屈折率が1.5の場合、約4%の反射が生じ、相手モジュール反射の原因となる。受信レンズ7を樹脂モールド20と一体に形成することにより、受信レンズ7で反射した受信光9は受信レンズ7の形状により発散して反射されるため、再び光ファイバ2に結合しにくくなり、相手モジュール反射を低減することが可能となる。また、受信レンズ7の表面はARコードを行い、反射率を低減させてもよい。
【0058】
更にまた、反射ミラー12で反射された受信光9がすべて、受信レンズ7に照射されるように、反射ミラー12の形状を設定することが好ましい。先述したように、受信モールド20の受信レンズ7以外に照射された受信光9は発散されずに反射されることから相手モジュール反射の原因となりやすい。受信レンズ7は直径約1mm程度の半球形状のレンズであり、約1mmのPOFから出射される受信光9をこの受信レンズ7に集光させることは比較的容易である。すなわち、集光ミラー12により直接受光素子5の受光面に集光することは困難であるが、受信レンズ7を介することで、受信効率を向上させることが可能となる。この受信レンズ7は前述したように、相手モジュール反射を低減させるために、受信光9を発散させる方向に反射させる形状とすることが好ましい。
【0059】
さらにまた、遮光膜13の受光面21との境界部は、図5に示すように、テーパ部27を形成することが好ましい。テーパ部27は、受光面21の外周から内周方向に向けて遮光膜13が薄くなるように形成する。このようにテーパ部27を形成することにより、モールド樹脂20を形成する時に、モールド樹脂20と受光面21との間に空気が入りにくくなり、歩留まりよくモールド樹脂20を形成することができる。また、受信光9を受光面21に集光する場合に、遮光膜13が障害となって受信効率が低下することを防止することもできる。
【0060】
次に、遮光膜13の形成方法について図6を基に説明する。まず、図6(a)に示すように、受光素子5が複数形成されたウエハーに、スピンコート法等により感光性ポリイミド等の遮光膜13の材料を塗布する。次に、任意のマスクパターンにより露光と現像とを行ない、遮光膜13のパターニングを行なう(図6(b))。次に、遮光膜13の焼成を行う。焼成による収縮で遮光膜13の受光面21側の境界部に、テーパ部27が形成される(図6(c))。このように、パターニング後に焼成を行うことにより、簡易にテーパ部27を形成することが可能となる。また、半導体プロセスにより大量生産が可能であり、低コストで作製することができる。
【0061】
遮光膜13は、上述の作製方法のように、感光性を有する材料で作製することが好ましい。より具体的には、感光性ポリイミドや黒色の顔料等によって着色されたレジストを使用することが好ましい。たとえば、波長650nmにおける透過率は、感光性ポリイミド(HD−6000:日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社製)20μm膜厚で10%、着色レジスト(CR200BK:JSR社製)1.5μm膜厚で1%であった。遮光膜13の透過率は、使用する波長領域において、10%以下であることが好ましい。パッシベーション膜25で反射された受信光9は、再び遮光膜13を通過して戻るため、10%でも実質の透過率は1%となり、これ以下であれば十分な吸収性能が得られる。遮光膜13の膜厚は、必要な透過率によって決定される。また、受光素子5の作製プロセスによっては顔料成分が他のプロセスを汚染して悪影響を及ぼす場合があるため、この場合は、顔料成分を含まない感光性ポリイミドを使用することが好ましい。
【0062】
次に、実際に相手モジュール反射率を測定した結果について説明する。上述した手段と同様の手段を用い、相手モジュール反射率を測定した。
(1) 光ファイバ2から出射される受信光9の光量に対して、相手モジュール反射率は0.5%であった。送信部と受信部との内訳は、それぞれ0.2%と0.3%であった。
(2) 受光素子5に遮光膜13を形成しなかった場合は、受信部の相手モジュール反射率が0.3%から0.8%に増加した。
(3) 遮光膜13として上述した感光性ポリイミド(20μm厚)と着色レジスト(1.5μm厚)の2種類で実験を行った。両者とも受信部の相手モジュール反射率が0.3%であり、同等の値が得られた。
(4) プリズム11の角度を20°から0°に変更したところ、相手モジュール反射率は0.2%から1%に増加した。
(5) 光吸収部26を形成しなかった場合、送信部の相手モジュール反射率は0.2%から0.3%に増加した。すなわち、光吸収部の有用性を確認することができた。
【0063】
以上のように、上述した方法により相手モジュール反射を低減することが可能であった。
【0064】
次に、図1で示した光通信モジュール1の各構成部材について説明する。
光ファイバ2としては、たとえばPOFが用いることができる。POFはコアがPMMA(PolyMethylMethaAcrylate)やポリカーボネート等の光透過性に優れたプラスチックからなり、クラッドは上記のコアより屈折率の低いプラスチックで構成されている。このような光ファイバ2では、石英光ファイバに比べそのコアの径を約200μmから約1mmと大きくすることが容易である。このため、光通信モジュール1との結合調整が容易であり、安価な双方向光通信リンク3を得ることができる。本実施例で示したように、送信光8と受信光9とを空間的に分離する場合、コア径は1mm程度のものを使用することが好ましい。
【0065】
また、コアが石英ガラスよりなり、クラッドがポリマーで構成されたPCFを用いてもよい。PCFはPOFに比べると価格が高いが、伝送損失が小さく、伝送帯域が広いという特徴がある。このため、PCFを伝送媒体とすることにより長距離での通信やより高速での通信を行うことができる双方向光通信リンク3を得ることができる。コア径が数100μm以上である場合に、相手モジュール反射による混信が問題となるため、そのような光ファイバ2を使用する場合には本発明は有効である。
【0066】
発光素子4としては、半導体レーザや、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられる。発光素子4の波長としては、使用する光ファイバ2の伝送損失が少ない波長で、かつ安価であることが好ましい。たとえば、光ファイバ2としてPOFを用いる場合、DVD(Digital Versatile Disk)等に用いられるために量産効果のある、波長650nmの半導体レーザ等を用いることができる。また、発光素子4の後部には、モニタフォトダイオード15が配置されており、発光素子4の光量を一定に保つようにしている。
【0067】
受光素子5としては、受光した変調光の強弱を電気信号に変換し、発光素子4の波長域で感度の高いフォトダイオードを使用し、たとえば、シリコンを材料とするPINフォトダイオードや、アバランシェフォトダイオード等を用いる。
【0068】
光学部材10は、PMMAまたはポリカーボネート等のプラスチックを材料とし、射出成形等により作製される。そして、反射ミラー12の反射面となる側にアルミニウムや金等といった反射率の高い金属薄膜が蒸着法等により形成されている。反射ミラー12は、光学部材10の下側から蒸着することにより、マスク等によるパターニングを行なうことなしに簡単に形成することができる。光学部材10には、送信光8を集光して光ファイバ2に結合させる送信レンズ6と、送信光8を屈折させて光ファイバ2に入射させるプリズム11と、図示していないが、発光素子5や受光素子4との位置合わせに使用する位置決め用の凹凸部とが形成されている。
【0069】
このように、一つの光学部材10に多数の機能を持たせることにより、構成部材の数を大幅に低減できると共に、組立て時の公差を低減できるため、低コストで小型な光通信モジュール1を得ることが可能となる。
【0070】
以上のように、本実施例で示した光通信モジュール1を用いることにより、近端反射、遠端反射、相手モジュール反射、および、迷光による内乱光による混信を防止でき、一本の光ファイバ2により全二重方式の双方向光通信が可能となる。また、低コストで小型であり、かつ、簡易に製造可能な光通信モジュール1を得ることができる。
【0071】
本実施の形態は一例であり、この構造に限定されるものではない。本発明は送信光学系と受信光学系の形状、および、受光素子への遮光膜の形成により相手モジュール反射を低減したことが特長である。上記した本実施の形態で説明した以外の光学系を用いても同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、本実施の形態では、光ファイバ2の両端に送受信機能を有した光通信モジュール1を配置した全二重通信の場合を示したが、分岐した光ファイバ2を用い、一つの送信機に対し複数の受信機を有するPTOMP(Point TO MultiPoint)型の通信においても同様の混信防止の効果を得ることができる。
【0073】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されることはない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0074】
【発明の効果】
本発明の光通信モジュールを用いることにより、光ファイバとしてPOFを用いた場合に問題となる相手モジュール反射を低減でき、一本のプラスチック光ファイバにより全二重方式の双方向通信が可能な、安価で小型の光通信モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態における光通信モジュールの構成を説明する概略図である。
【図2】 本発明の実施の形態における光通信モジュールの送信部に起因する相手モジュール反射を説明する概略図である。
【図3】 本発明の実施の形態のプリズム部において、相手モジュール反射を低減する方法を説明する概略図である。
【図4】 本発明の実施の形態における受光素子の構造を説明する概略図である。
【図5】 本発明の実施の形態における遮光膜の形状を説明する概略図である。
【図6】 本発明の実施の形態における遮光膜の形成方法を説明する概略図であり、(a)は、受光素子が複数形成されたウエハーに、遮光膜の材料を塗布した状態を示す図であり、(b)は遮光膜のパターニングを行なった状態を示す図であり、(c)は、焼成による収縮で遮光膜に、テーパ部が形成された状態を示す図である。
【図7】 一般的な光通信リンクを表す概略図である。
【図8】 従来の光通信モジュールの構成例を表す概略図である。
【図9】 従来の光通信モジュールの他の構成例を表す概略図である。
【符号の説明】
1 光通信モジュール、2 光ファイバ、3 光通信リンク、4 発光素子、5 受光素子、6 送信レンズ、7 受信光反射ミラー、8 送信光、9 受信光、10 光学部材、11 プリズム、12 反射ミラー、13 遮光膜、14内乱光、15 モニタフォトダイオード、16 サブマウント、17 送信ステム、18 受信リードフレーム、19 プリアンプ、20 樹脂モールド、21 受光面、22 リング電極、23 パット電極、24 空乏層、25 パッシベーション層、26 光吸収体、27 テーパ部。
Claims (5)
- 一本のプラスチック光ファイバを伝送媒体として光通信を行う光通信モジュールにおいて、
該光ファイバから出射される受信光を受光して電気信号に変換する受光素子を有し、前記受光素子の表面において、受光面の周辺部に前記受信光を吸収する遮光膜を配置し、前記遮光膜は前記受光素子の受光面の周囲において、その厚みが受光面側に向って薄くなるテーパ部を有することを特徴とする、光通信モジュール。 - 前記遮光膜が形成された受光素子を樹脂により覆い、その樹脂の屈折率と前記遮光膜の屈折率との差が、前記遮光膜の屈折率の±20%以内の範囲の屈折率であることを特徴とする、請求項1に記載の光通信モジュール。
- 前記樹脂により前記光ファイバから出射された受信光を前記受光面に集光させる受信光学系を形成したことを特徴とする、請求項2に記載の光通信モジュール。
- 前記遮光膜は着色された感光性レジストにより形成されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の光通信モジュール。
- 前記遮光膜は感光性ポリイミドにより形成されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の光通信モジュール。
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