JP3939911B2 - 一芯双方向光通信のための方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一本の光ファイバを用いて双方向に光信号を送受信する一芯双方向通信のための方法および装置に関する。さらに詳しくは、プラスチック光ファイバ等のマルチモード光ファイバを伝送媒体として、家庭内通信や電子機器間通信、LAN(Local Area Network)等に使用する一芯双方向光通信のための方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一芯双方向光通信の分野では、従来、単一伝送路を使用することで発生する近端反射戻り光が雑音として受光素子(PD)に入射することを防止するために、送信光の反射光固有の偏光を分離することが主流となっている。
【0003】
その一例として、偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて送信光の反射戻り光分を、受信光から偏光分離する方式が特開平4―96437号公報や、特開平10−153720号公報に開示されている。図26および図27を参照して各方式を説明する。
【0004】
図26に開示されている技術は、101はLED、102はPD、103,104はレンズ、105はPBS、106,107及び108は絞り、109は光ファイバである。LED101の発光点はレンズ103の焦点位置に、光ファイバ109はレンズ104の焦点位置にそれぞれ配置されている。
【0005】
光ファイバ109からの受信光は、レンズ104によりほぼ平行光111となる。ほぼ平行光111になった光波のうちP波は、PBS105により反射されPD102に受光される。
【0006】
LED101からの送信光は、レンズ103によりほぼ平行光110になる。ほぼ平行光110になった光波のうちP波は、PBS105により反射されPBS105を透過しない。平行光110のうちS波は、PBS105を透過し、レンズ104で集光され光ファイバ109へ入射する。光ファイバ109の端面に集光された光のうち4%は反射され、再びレンズ104を透過してPBS105に達する。
【0007】
光ファイバ端面での反射及びレンズ透過においては偏光面の回転は生じない。したがって、反射戻り光は、PBS105を透過するのでPD102へは入射しない。絞り106,107,108はレンズの収差等で発生する平行光でない成分をカットするために設けられている。
【0008】
図27に開示されている技術も上記図26で示した技術内容と同様であり、PBS205を利用した従来の技術の一例である。201はPDが形成されたSi基板、202は半導体レーザ(LD)のヒートシンク、203はLD、204はPD、205はPBS206の台を兼ね備えたプリズム、206はPBS、207はパッケージ、208はレンズ、209は光ファイバのソケットおよびコネクタ、210は光ファイバを示す。本例におけるPBS206は、前例と異なり、P波を透過しS波を反射するように設計されている。
【0009】
LD203からの送信光は、S偏光特性を有しており、PBS206で殆どが反射され光路変換されて、さらにレンズ208でNA変換された後、光ファイバ210に入射する。一方、光ファイバ210からの受信光は、レンズ208で集光された後、PBS206でP偏光成分のみが透過してPD204に入射する。光ファイバ210の端面で反射した近端反射戻り光は、光ファイバ端面での反射及びレンズ透過においては偏光面の回転は生じないのでS偏光成分を維持しており、したがって、PBS206で反射するのでPD204には到達しない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例のようにPBSを利用した方式は、PBS自体が高価であるため光学系全体のコストが上昇してしまうという問題や、受信光の一方の偏光成分をカットするため信号自体が約半分に弱くなるという欠点ある。また、最大直径1mmの光ファイバ端面に送信部と受信部を配置しなければならないため、光以外に電気的な混信の問題や、複雑な光学系が必要という問題がある。
【0011】
【課題を解決するための手段・作用・効果】
本発明は、上記従来技術の問題を有効に解決するために創案されたものであって、以下の特徴を備えた光通信方法および装置を提供するものである。
【0012】
本発明の光通信方法は、一本の光ファイバの両端近傍にそれぞれ、送信部および受信部を配置して行なう一芯双方向光通信において、光ファイバの一端における送受信のいずれか一方を光ファイバ端面を介して、他方を光ファイバの周面に設けた反射面を有する切欠部を介して行うことを特徴としている。
【0013】
本発明の通信装置は、上記一芯双方向光通信において、光ファイバの一端に設けられる通信装置である。この装置においては、光ファイバの一端面近傍の周面に反射面を有する光結合用の切欠部が設けられている。光信号の送受信のいずれか一方を行なう光結合部として当該一端面が採用され、送受信の他方を行なう光結合部として当該切欠部が採用されている。
【0014】
本発明によれば、高価なビームスプリッタを使用することなく、一芯双方向通信を行なうことが可能となるのでコスト低減が可能となる。また、ビームスプリッタを使用する従来例では送受信光のそれぞれの光量が約50%カットされてしまうが、本発明においては、切欠部の深さを調節することで従来よりも高効率の光結合を達成することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
(1)第1実施形態(図1〜図4)
図1は、第1実施形態における双方向通信リンクの構成を示す概略図である。かかる双方向通信リンクにおいては、伝送するデータ信号に基づく、伝送に適した変調光を双方向に伝送するための光ファイバ2が使用され、この光ファイバ2の両端に光学的に結合するように、2つの双方向通信装置1が接続されている。
【0016】
図2は、双方向通信装置1の概略断面構造示しており、図3は、図2の円内の拡大図を示している。
【0017】
双方向通信装置1は、データ信号に基づく変調光を生成する発光素子(半導体レーザ)30と、光ファイバ2からの変調光を受光してデータ信号を生成する受光素子40と、を備えている。発光素子30の出力は、図示されていないモニタフォトダイオードでモニタされ一定出力に制御される。発光素子30と受光素子40は共通の台座に搭載されてもよいが、電気的な混信が問題になる場合には、後述の第6実施形態のように、シールドを設けて分離することも可能である。
【0018】
一般的に、一芯双方向光通信装置においては、一本の光ファイバの端面近傍に発光素子と受光素子とを近接して設ける必要がある。しかし本発明においては、送受信のいずれか一方を光ファイバ周面に設けた切欠部20を介して行なうので、発光素子と受光素子とを比較的距離を置いて配置することが可能となる。また、図示はしていないが、カバーガラスによって発光素子30および受光素子40を、それぞれ別個に、周囲の雰囲気から分離して保護することもできる。
【0019】
図2において、光ファイバ2の周面には、光結合するための切欠部20を設けてある。切欠部20は、光ファイバ2の光軸に対し45度の角度で傾斜する傾斜面20aと、同光軸と直交する垂直面20bとを含む。傾斜面20aには、送信光または受信光の光路変換用ミラーとして機能する反射膜21が形成されている。この反射膜21は、アルミニウム等を利用して構成される。
【0020】
光ファイバ2の端部は、フェルール(口金)3によって、レセプタクル10に対して勘合位置決めされる。フェルール3には、光ファイバ2の光軸に対する回転を防止するためのキー4が設けられており、このキー4は、レセプタクル10の内面に形成した勘合溝11と係合する。
【0021】
フェルール3およびレセプタクル10には、それぞれ側方開口3aおよび10aが形成されており、発光素子30からの光は、これら側方開口を通過して、切欠部20に至る。図2において、31は送信光、41は受信光を示す。光学系32は、反射膜21に対する送信光31の入射NAを変換するためのもので、後述するように省略してもよい(図5参照)。また、受光素子40側においても、例えば、集光用の光学系を別途設けてもよい。この実施形態においては、発光素子30を光ファイバ2の周面側に、受光素子40を光ファイバ2の端面側に配置しているが、後述の第3実施形態のように、発光素子30と受光素子40との配置を入れ替えてもよい。
【0022】
本発明の原理を説明する。光ファイバ2は、コアの屈折率が1.5、クラッドの屈折率が1.415、構造NAが0.5、直径が1mmのSI型プラスチック光ファイバ(POF)であるとする。
【0023】
通常、この光ファイバに結合する光線は、光ファイバ光軸に対し30°以内の角度で光ファイバ端面から入射しないと光ファイバ2とは光結合しない。光ファイバ内部での伝搬角は光ファイバ光軸に対し約20゜である。この光ファイバ2に対して、ファイバ周面から送信光を入射させる場合、仮に光軸に限りなく平行に光ファイバ周面より光ファイバ内へ入射する光線を考えると光ファイバ内部で光軸に対する角度は約50°となり伝搬しないことになる。したがって、周面から入射させる場合は、光ファイバのコアへ入射後、反射させ、光ファイバ光軸に対し約20°以下の角度に変換させる必要がある。切欠部20は、この目的のために設けられている。図2では光ファイバ光軸に対し垂直に入射する光のみを描いているが、反射膜21での反射後に上記伝搬角(約20°)内に収まるのであれば、入射光は、光軸に対して垂直である必要はない。
【0024】
図4は、光ファイバとの光結合に必要な傾斜面20aへの最大入射角と、POFの構造NAとの関係を示すグラフである。このグラフは、切欠部20の傾斜面20aの傾斜が45°で、垂直面20bが光ファイバ光軸に対し垂直である場合のものである。構造NAが0.5の場合、傾斜面20aへの入射角度が30°以下であれば、光ファイバ2に対する光結合が可能となる。傾斜面20aの傾斜が異なる場合にはスネルの法則に従って許容入射角度は変化することになるので、送信光31は傾斜面20aに対して、垂直±30°以内の角度で入射する構成としても良いことになる。
【0025】
本発明のメリットを述べる。光ファイバ2の切欠部20として、送信用に公差も考慮して深さ0.3mmとしたとすると、切欠部20以外の断面積部分は受信用として使用することができる。断面積比は容易に計算でき、断面積の約75%を受信用として使用できる。これに対して先行技術のように偏光を利用するものでは、断面積の約50%しか受信用として使用することができず、受信効率という点において、本発明のメリットは明らかである。
【0026】
また、本発明においては、発光素子30(送信部)と受光素子40(受信部)とを比較的離して配置することができるため、送受信用の光学系レイアウトの自由度が高まる。また、全二重通信に用いる場合、送信光31が受光素子40に戻るのを防止する必要があるが、受光素子40よりも発光素子30を光ファイバ2の他端側に設けた図2の構成は、この目的のために好適である。さらに、図19および図20を参照して後述するように、送信部近傍においてフェルールに設けた開口や光吸収部材を利用して迷光成分をカットすることが可能となる。また、仮に迷光が光ファイバ2内へ入射したとしてもファイバの非伝搬モードとなるため、反射膜21で構成されるミラー以外へ入射した光は受光素子40に到達し難いという利点がある。
【0027】
(2)第2実施形態(図5)
前記第1実施形態においては、切欠部20の傾斜面20aに、光路変換用ミラーとしての平板状反射膜21を配置しているが、第2実施形態においては、傾斜面20aに代えて凹状湾曲面20cを採用している。また、これに伴い反射面21cも湾曲面で構成されている。このような湾曲反射面を採用した場合には、図2および図3に示したような光学系32を省略して、切欠部の構成だけで送信光のNA変換を行なうことが可能となる。
【0028】
良好な光結合を達成するためにはフェルール3等に対する光源30の配置を検討する必要があるが、図5においては、反射面21cの曲率半径を1.2mmにするとともに、発光素子30からの放射角を10°(すなわち、入射NA=sin10°=0.17)とし、発光素子30を光ファイバ2の周面から0.6mmだけ離して配置している。このとき、実質的な励振NAを0.1とすることが可能であり、ファイバ内の伝搬ロスの低減とモード分散の低減に有効である。また、低い構造NAの光ファイバに対しても高い結合効率を維持できる。
【0029】
(3)第3実施形態(図6)
上記実施形態1および2においては、切欠部20を送信側として使用していたが、図6に示すように発光素子30と受光素子40との配置を入れ換えて、切欠部を受光側とすることも可能である。
【0030】
実施形態1と同じ光ファイバ2を用いると、この場合も送信部を小さくとることができるので、受光部である切欠部の深さを0.7mm、送信部として利用できる残りの部分の深さを0.3mmとすると、実施形態1の場合と同じ受信効率が得られる。送信光31は光ファイバ2の中で拡がるが、反射膜21が遮閉板の役目を果たすので、送信光31の迷光が受光素子40に入射することはない。ただし、反射膜21で送信光31が反射するとその分だけ送信効率が落ちるので、送信光量を意図的に落とすとき以外は、レンズ等を利用して光ファイバ2内の切欠部でない部分へ向けて投光を行なう等、送信光31の入射方法に工夫が必要となる。このため、どちらかと言えば、図2に示したように、光ファイバ2の端面側に受光素子40を配置し、周面の切欠部20近傍に発光素子30を配置することが好ましい。
【0031】
(4)第4実施形態(図7〜図15)
前記実施形態1〜3においては、光ファイバ2の周面に形成した切欠部20の近傍に発光素子30または受光素子40を設けて、直接的に切欠部20を介して投光または受光を行なっていた。これとは逆に、図7では、光ファイバ2上において切欠部20とは反対側の光ファイバ周面近傍位置に発光素子30を配置している。このような構成においても、発光素子30と受光素子40との配置を入れ替えてもよい。
【0032】
この場合、図7に示したようにアルミニウム等で構成される反射膜21を設けてもよいが、光ファイバの材料である石英若しくはPMMA(アクリル)と空気との界面による全反射を利用することが可能となるので、図8の例のように、反射膜を省略して部品点数の削減を図ることができる。
【0033】
さらに、図7および図8の構成においては、切欠部20での反射後の光がさらに境界面を通過する必要を無くすることができるというメリットがある。すなわち、例えば図3の構成では、反射膜21で反射した後の光がさらに境界面(垂直面20b)を通過する必要があり、ここを通過する際に光が散乱してしまう。図7および図8の構成では、そのような光の散乱の問題は生じない。
【0034】
図9は、PMMAと空気との界面におけるTEモード光およびTMモード光の反射率を示すグラフである。反射面法線に対する光線の入射角θ(図8参照)を40゜以上とすることで全反射を達成できることが分かる。なお、図8において発光素子30からの送信光31は実際にはある程度の放射角を有している。このため、図8中のθが40°以上であっても、切欠部20の先端部付近に放射された部分の光が上記の全反射角(40°)に満たない場合がある。そのようなことが生じる場合には、光学系を追加するか、発光素子30自体の向きを変える等して、反射面全体において入射角が40°を超えるように調整すればよい。
【0035】
光源としては、半導体レーザに限らず、図10に示したようにLED35を採用することも可能である。ただし、LED35を使用する場合には、光源強度の分布がランバート分布となり結合効率が半導体レーザの場合よりも低下するので、集光用光学系を採用する等の対策が必要となる。ただし、図7および図8に示したように切欠部20とは反対側の対向周面から光ファイバ内に投光する場合は、光ファイバ自体の周面の曲率を集光手段として利用できるというメリットがある(図11参照)。すなわち、図2に示したようなNA変換用の光学系を省略でき、これによっても部品点数の削減を図ることができる。例えば、第1実施形態で使用したの同じ光ファイバを用いた場合、光源をファイバ周面から1mmのところに配置すると、入射NAが0.3の光線分を0.2に変換し実質的な励振NAの低減が可能である。
【0036】
光源として半導体レーザ30を使用した場合は、LEDの場合と比べて図12に示すように放射角が比較的小さいので、送信結合効率という点で有利である。例えば、シャープ株式会社製のCLS0765の半導体レーザの場合、放射角は、⊥方向(垂直方向)で30゜、//方向(平行方向)で8°である。図13に示すように、//方向を光ファイバ端面と平行とした場合には、//方向に関しては放射光31の大半を切欠部20へ結合することが可能である。しかしその場合には、⊥方向においては放射角が大きくなる。つまり、高い送信結合効率が要求される場合には、図14および図15に示すように、⊥方向について光ファイバ周面自体のレンズ効果を利用できるように⊥方向をファイバ端面と平行にして、放射角の小さい//方向を光ファイバ光軸に対して平行とすることが好ましい。光源から光ファイバ周面までの距離を1mmとした場合、切欠部の深さが0.3mmでほぼ80%の光を紡合することが可能である。
【0037】
(5)第5実施形態(図16〜図20)
IEEE1394等の規格に従ってデジタルビデオカメラ等の機器間を光ファイバで伝送する場合、伝送距離は数メートルで足りるので、受光素子であるフォトダイオードヘの入射光量が大き過ぎて、これが問題となる場合がある。光ファイバが短いと、伝搬ロスが発生せず、発光素子からの光の殆ど全てがフォトダイオードに到達するからである。
【0038】
この場合の対策として、半導体レーザから発信される光量自体を小さくして送信光量を下げることも可能であるが、本発明では、図16に示すように、切欠部20を浅く構成することで送信光量を下げている。すなわち、切欠部を浅くすると、それに応じて傾斜面の面積も小さくなり、結果として、光ファイバ2内を伝達する送信光量が小さくなる。切欠部を浅くする代わりに、幅を小さくしても同様の効果を得ることができる。なお、送信パルスの暗のときでも発振遅延の発生をさけるため発振状態を保つ必要があるので、所定の消光比を得るためには半導体レーザの光量を下げるのにも限界はある。
【0039】
ここで、切欠部の深さと送信光率の関係を図17に示す。ここでは、発光素子である半導体レーザスポットの短径方向光ファイバ光軸方向に対し平行に、長径方向を光ファイバ光軸方向に対し垂直に配置し、光ファイバ周面と半導体レーザの発光点の距離を0.6mmにした場合の結果である。切欠部の深さを深くするほど、送信光率が高くなり、受信光量が増すことがわかる。
【0040】
図17に示した各々の切欠き深さを有している場合の伝送距離と受光素子の入射光量の関係を図18に示す。伝送距離が長くなればその分、光の損失が増えるため、受光素子に到達する光量も減ることになる。逆に、受光素子の最大受光量は受光素子のダイナミックレンジの制限から上限が決まる。この場合、0.7mWが上限である。このように伝送距離(光ファイバの長さ)によって受光量が変化する場合、受光素子や発光素子などの光通信モジュール構成を伝送距離に応じて変化させる(例えば、レーザーパワーを大きくする)よりも、伝送距離に応じて切欠部の深さを調節変更する方が量産効果が上がる。つまり、上記のように機器間を接続する場合は光ファイバは数メートルあれば足りるので、光ファイバの切欠部を浅くするように対応することが好ましい。また、伝送距離が長い場合には、切欠部を深くすることで、さまざまな伝送距離に対応できる光通信装置を得ることができる。
【0041】
上記のように切欠部の深さを変更することで送信光量を増減する場合には、切欠部20以外の周辺部分へ投影された送信光は伝搬モードとならないため、光ファイバ内には、伝搬されない迷光が生じることとなる。そのような迷光が生じるのを防止する方法を図19および図20を参照して説明する。
【0042】
図19では、切欠部20の周辺におけるフェルール3の側方部に開口3bを設けている。また、図示はしていないが、フェルール3の外側に位置するレセプタクル(図2参照)の側方部にも、開口3bに連なる開口を設けている。これにより、切欠部20には放射されずに光ファイバ内を伝搬しない送信光は、開口を通過して光ファイバ外へ逃げる。一方、図20では、フェルール3の内周面に光吸収部材39を配置して、切欠部20には放射されない光を吸収している。図19または図20に示した構成により、切欠部20の周辺に投影された光が乱反射して受光素子40へ至るということを防止でき、その結果、SN比を向上させることができる。図19および図20では、発光素子30として半導体レーザを採用しているが、LEDを採用した場合も同様である。なお、切欠部の深さや幅等を変更して光量を調節する方法は、図2等に示したような切欠部近傍に発光素子を設ける場合においても採用することが可能である。
【0043】
(6)第6実施形態(図21)
本発明の双方向通信装置においては、送受信時の混信を、光学的にだけでなく、電気的にも防止し易い。送受信が同時に行なわれることのない半二重通信の場合には、送受信のクロストークがあまり問題にならないが、送受信が同時に行なわれる全二重通信においては、送信素子および受信素子、さらにこれらに付随する回路間の混信を防止する必要がある。
【0044】
第1実施形態においても説明したように、通常の一芯双方向光通信装置においては、最大でも1mmしかない光ファイバ端面近傍に送受信機能を備える必要があるので、送信部と受信部とを大きく離して配置することは困難である。しかしながら、本発明においては、送信部と受信部とを比較的大きく離すことが可能となるため、発光素子30とそのパッケージ130、受光素子40とそのパッケージ140、およびそれぞれの付随回路を分離配置することが容易である。また、電磁波に関しても、図21に示したように、シールド50を設けて相互干渉を防止することができる。
【0045】
(7)第7実施形態(図22〜図25)
光ファイバの周面に切欠部を形成する方法を説明する。図22に示すように光ファイバ素線の状態で、テーパカット用のブレード61でスライトカットを入れる。60はブレード61の回転軸を示している。目の細かいブレードを使用すれば研磨面並の粗度の面が得られる。後で述べる溶融方法が採用できない石英ファイバに対し有効である。
【0046】
光ファイバがPOFである場合、通常のホットメルトによる端面加工と同様に、切欠部20に対応する形状の突起71を有するヒータ70を押し当てる方法が簡単であり、面粗度の観点からも有効である。具体的な手順は以下の通りである。通常のPOFはPMMA製であるため、軟化点が74℃〜99℃の間である。まず、ヒータ70を74℃以上に加熱する(図23)。その後、光ファイバ周面にヒータ70を押し当てる(図24)。ヒータ70を押し当てた状態で電源をoffし、温度が74℃より十分下がった後でヒータ70をPOFから離す(図25)。ヒータの熱容量は小さい程好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用した双方向光通信リンクの構成を説明する概略図である。
【図2】 本発明の光通信装置の一例を説明する概略断面図である。
【図3】 図2の円内を示す拡大図である。
【図4】 構造NAと入射角の関係を示すグラフである。
【図5】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図6】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図7】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図8】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図9】 入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図10】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図11】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図12】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図13】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図14】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図15】 図14の例を光ファイバの光軸方向から見た概略断面図である。
【図16】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図17】 切欠き深さと送信光率の関係を示すグラフである。
【図18】 切欠き深さを変化させた場合において、伝送距離と受光素子の入射光量の関係を示すグラフである。
【図19】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図20】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図21】 本発明の光通信装置の他の例を説明する概略断面図である。
【図22】 本発明の光通信装置の製造方法の一例を説明する概略断面図である。
【図23】 本発明の光通信装置の製造方法の第2例を説明する概略断面図である。
【図24】 本発明の光通信装置の製造方法の第2例を説明する概略断面図である。
【図25】 本発明の光通信装置の製造方法の第2例を説明する概略断面図である。
【図26】 従来の光通信装置の構成を示す説明図である。
【図27】 従来の光通信装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1 双方向光通信装置
2 光ファイバ
3 フェルール
4 キー
10 レセプタクル
11 勘合溝
20 切欠部
21 反射膜
30 発光素子
31 送信光
32 光学系
35 LED
36 送信光
39 光吸収部材
40 受光素子
41 受信光
50 電磁シールド
60 ブレード回転軸
61 ブレード
70 ヒータ
71 突起
130 送光素子パッケージ
140 受光素子パッケージ

Claims (17)

  1. 一本の光ファイバの両端近傍にそれぞれ、送信部および受信部を配置して行なう一芯双方向光通信において、
    光ファイバの一端における受信を光ファイバ端面を介して、送信を光ファイバの周面に設けた反射面を有する切欠部を介して行うことを特徴とする光通信方法。

  2. 上記光ファイバの切欠部が形成された周面とは反対側の対向周面から、切欠部の反射面に向けて投光を行ない、当該反射面における全反射を利用して、送信光を光ファイバの他端に向けて伝達することを特徴とする、請求項1記載の光通信方法。

  3. 上記光ファイバの切欠部が形成された周面とは反対側の対向周面から、切欠部の反射面に向けて投光を行なうことで、光ファイバ自体の周面の曲率を利用して当該反射面への集光を行なうことを特徴とする、請求項1記載の光通信方法。
  4. 上記送信部の発光手段として半導体レーザを採用した請求項1記載の光通信方法であって、
    上記光ファイバの切欠部が形成された周面とは反対側の対向周面から、切欠部の反射面に向けて投光を行ない、
    半導体レーザからの放射光の長径を光ファイバ光軸に対する垂直方向に一致させ、同放射光の短径を光ファイバ光軸に対する平行方向に一致させることを特徴とする、光通信方法。

  5. 上記切欠部の反射面よりも大きい放射面積で投光することで、光ファイバ内を伝達する送信光量を投光量よりも減じることを特徴とする、請求項1記載の光通信方法。
  6. 一本の光ファイバの両端近傍にそれぞれ、送信部および受信部を配置して行なう一芯双方向光通信において、光ファイバの一端に設けられる通信装置であって、
    光ファイバの一端面近傍の周面に反射面を有する光結合用の切欠部を設け、光信号の受信を行なう光結合部として当該一端面を採用するとともに、送信を行なう光結合部として当該切欠部を採用したことを特徴とする、双方向通信装置。
  7. 上記切欠部の反射面が、光ファイバの光軸に対して傾斜する平面で構成されていることを特徴とする、請求項6記載の双方向通信装置。
  8. 上記切欠部の反射面が、光ファイバの上記一端面とは反対側の端面に向かって傾斜する凹面で構成されていることを特徴とする、請求項6記載の双方向通信装置。
  9. 上記光ファイバの切欠部が形成された周面とは反対側の対向周面位置近傍に、送信部が配置されたことを特徴とする、請求項6記載の双方向通信装置。
  10. 上記送信部が発光手段として半導体レーザを備えることを特徴とする、請求項6記載の双方向通信装置。

  11. 上記切欠部周辺近傍の光ファイバ内周面に投影された送信部からの光が光ファイバ外部に逃げるための光路を設けたことを特徴とする、請求項9記載の双方向通信装置。

  12. 上記切欠部周辺近傍の光ファイバ内周面に投影された送信部からの光を吸収する光吸収部材を備えたことを特徴とする、請求項9記載の双方向通信装置。
  13. 上記送信部と受信部との間に、電磁波の相互干渉を防ぐシールドを設けたことを特徴とする、請求項6記載の双方向通信装置。
  14. 上記光ファイバとして、導波コアがプラスチック製のプラスチック光ファイバが採用されており、
    研削により光ファイバの周面に上記切欠部が形成されたことを特徴とする、請求項6記載の双方向通信装置。
  15. 上記光ファイバとして、導波コアがプラスチック製のプラスチック光ファイバが採用されており、
    加熱溶融により光ファイバの周面に上記切欠部が形成されたことを特徴とする、請求項6記載の双方向通信装置。
  16. 上記光ファイバに対する断面積比が25%以下の切欠部を介して上記送信を行うことを特徴とする、請求項1記載の光通信方法。
  17. 上記光ファイバに対する切欠部の断面積比が25%以下であることを特徴とする、請求項6記載の双方向通信装置。
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