JP3906357B2 - マルチマー化した高機能型不凍タンパク質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然由来の不凍タンパク質を改変した新規なタンパク質に関するものであり、具体的には、低濃度で優れた氷核成長抑制作用を示し氷再結晶防止剤、氷点下低温保存剤として使用するマルチマー化不凍タンパク質及びその作製方法、並びにマルチマー化不凍タンパク質をコードするDNAに関する。
【0002】
【従来の技術】
不凍ペプチドならびに不凍タンパク質(AFP類)は一般に1)温度ヒステリシス、2)氷の再結晶阻害、3)氷の結晶形制御等の特性を示すため、保冷により周囲の水分子が付着再結晶することで、風味や味が損なわれるアイスクリームへの添加や、細胞や臓器の冷凍保存剤に用いることが提案されている。また、氷スラリーを使用する冷熱供給システムあるいは冷熱蓄熱等において、氷の再結晶による配管系の閉塞を解消し得る有効な添加剤としても期待されている。これまでは、主に植物、魚類由来の天然の不凍タンパク質を用いてアイスクリーム等の冷凍食品の品質保持、細胞の冷凍保存耐性の向上、冷熱供給システムあるいは冷熱蓄熱等への応用が試みられている。
【0003】
以下、不凍ペプチド並びに不凍タンパク質についてさらに具体的に説明する。不凍ペプチドならびに不凍タンパク質(AFP類)は一般に1)温度ヒステリシス、2)氷の再結晶阻害、3)氷の結晶形制御のうち、少なくともいずれか一つの特性を示すため、食品や細胞の冷凍保存耐性の改善に用いることが提案されている(Marilyn Greffith and K. Vanya Ewart, 1995. Biotechnology Advance 13: 375-402.)。AFPのこれらの特性は、AFPが氷表面に結合することにより新たな水分子の結合を阻害し氷核の成長を妨げるためだと考えられている。
【0004】
AFPは魚、昆虫、植物、バクテリア、菌類と多くの生体で発見されている ( John Barrett, 2001. Int J Biochem Cell Biol. 33: 105-117 )。これらの中でも特に幅広く研究が行われているAFPの一つとして、極地魚類由来のAFPが挙げられる。魚類由来のAFPはその構造により5種類に分類することができる。不凍糖タンパク質であるAFGPは特定二糖が結合した反復トリペプチドモチーフ(アラニン−アラニン−スレオニン)を有する分子量約2600〜34000Daのタンパク質である。Type I AFPはアラニン含有量が高く、スレオニンとアスパラギン残基が等間隔で配置されており、α−ヘリックス構造を有する。Type II AFPは特徴的な高いシステイン含量(8%)を持ち、C型−レクチンとの構造類似性が示されている。Type III AFPは分子量6500〜7000 Daからなる、小さい球状ペプチドである。Type IV AFPは4-α−ヘリックスバンドル構造が予想されている。魚種由来のAFPはいずれも、氷核をバイピラミダル型氷結晶(図12 A)に成長させることが知られているが、その機構は以下のように解釈されている。
【0005】
通常の場合氷晶は、水溶液中において氷核が表れると、まず扁平な六角あるいは四角の板状に成長する。板状平面に対し垂直方向への成長は、板状平面方向に対する成長に比べ100倍程度遅い。これに対して、水溶液中に不凍タンパク質が存在すると円盤平面方向への氷晶の成長は阻止され、最初に形成された板状体を基底面として、この基底面に対し垂直方向に、順次、より小さい板状体が積み重ねられていき、最終的にはピラミッドを二つ重ねたバイピラミッド型の氷晶にゆっくりと成長していく。
【0006】
したがって、不凍タンパク質を有する魚種の体液を0℃以下にした場合、その体液中にはバイピラミダル氷結晶が顕微鏡下に観測される。不凍タンパク質が有する氷結晶上の12枚の氷層平面に特異的に結合する能力の結果として、このようなバイピラミダル型氷結晶が生成する。0℃以下の凍結温度域においては、微視的には、体液中の不凍タンパク質が互いに結びつかない無数のバイピラミダル氷結晶を生成している。このことが、巨視的には、検体の非凍結現象(不凍活性)として観測される。
【0007】
1995年、Xin Wangらによってeel pout由来の3種類のType III AFPが報告されたが、これらのうちRD3と命名されたAFPは9アミノ酸残基(アスパラギン酸−グリシン−スレオニン−スレオニン−セリン−プロリン−グリシン−ロイシン−リシン)により構成されるポリペプチドリンカーで2つのType III AFP(N-ドメインとC-ドメインとする)が連結された配列を有していた(Xin Wang et al., 1995. Biochim. Biophys. Acta 1247: 163-172)。さらに著者らは、RD3が他のType III AFPに比べ、モル濃度換算で2倍近い温度ヒステリシスを示すことを同時に報告している。また、Kazunori MiuraらはNMRを用いRD3の構造を決定し、Type III AFPの氷結合表面と推測されている平面がほぼ同一平面に配向することを報告している(Kazunori Miura et al., 2001. J. Biol. Chem. 276: 1304-1310)。また、0.1〜0.2 mMの低濃度領域においてRD3がType III AFPに比べ、モル濃度換算で6倍の温度ヒステリシスを示すことも報告している。この結果は、低濃度領域でRD3がType III AFP 1分子あたり3倍の温度ヒステリシス効果を有することを示している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
これまでは、主に植物、魚類由来の不凍タンパク質を用いてアイスクリーム等の冷凍食品の品質保持、細胞の冷凍保存耐性の向上が試みられているが実用化には至っていない。また、冷熱供給システム、冷熱蓄熱等を含め、その期待される有効性の高さにもかかわらず実用化に結びつかない理由として、その活性が必ずしも十分ではない、目的の機能を果たすために大量のタンパク質を必要とすることが挙げられる。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決しようとするものであり、生体中に存在する不凍タンパク質を改良し、不凍タンパク質の有する温度ヒステリシス、氷の再結晶阻害活性等を向上させ応用性を高めることを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
不凍タンパク質の温度ヒステリシス、氷の再結晶阻害活性等を向上させるためには、不凍タンパク質への部位特異的変異導入が考えられるが、適切な変異導入位置と適切な置換アミノ酸残基の決定は非常に困難である。
【0011】
そこで、本発明者らは天然のRD3に見られるType III AFP−リンカー−Type III AFPという構造に着目し、不凍タンパク質をペプチドリンカーで3個以上連結してマルチマー化不凍タンパク質を作製し、その不凍活性を調べたところ、全く予想を超える驚くべき不凍活性を示し本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1)配列表において、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする、マルチマー化不凍タンパク質。
(2)請求項1に記載のマルチマー化不凍タンパク質をコードするDNA。
(3)配列表において、配列番号3で示される塩基配列からなることを特徴とする、マルチマー化不凍タンパク質をコードするDNA。
(4)上記(2)または(3)に記載のDNAを有する組換えベクター。
(5)上記(4)に記載の組換えベクターを有する形質転換体。
(6)上記(1)のマルチマー化不凍タンパク質をペプチド合成機を用いて合成することを特徴とするマルチマー化不凍タンパク質の製造方法。
(7)上記(5)形質転換体を培養して、マルチマー化不凍タンパク質を採取することを特徴とする、マルチマー化不凍タンパク質の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明においてマルチマー化される不凍タンパク質は、TypeI AFP、TypII AFP、TypeIII AFPあるいはTypeIV AFPである。また、これらの不凍タンパク質のマルチマー化において使用するペプチドリンカーは、そのアミノ酸配列あるいはアミノ酸残基の数に格別の制限はないが、これには、例えば、上記RD3タンパク質においてみられる9アミノ酸残基(アスパラギン酸−グリシン−スレオニン−スレオニン−セリン−プロリン−グリシン−ロイシン−リシン)により構成されるポリペプチドリンカーが挙げられる。
【0014】
本発明においてマルチマー化された不凍タンパク質を製造するには、マルチマー化された不凍タンパク質をコードするDNAを作製し、該DNAを適当なベクターに組込み、これを用いて、バクテリア等を形質転換し、形質転換体を培養することにより、マルチマー化された不凍タンパク質を採取することができる。また、このような遺伝子組換手段を用いず、それ自体の公知のペプチド合成機を用いて、マルチマー化された不凍タンパク質を合成してもよい。
【0015】
以下、本発明のマルチマー化された不凍タンパク質を得る手段について、遺伝子組換手段を例に取りさらに具体的に説明する。
【0016】
例えば、Type III AFP−リンカー−Type III AFP−リンカー−Type III AFP (以下、RD3 NCCという。)、あるいはType III AFP−リンカー−Type III AFP−リンカー−Type III AFP−リンカー−Type III AFP(以下、RD3 NCNCという。)なる構造を有するマルチマー化不凍タンパク質を得るには、まず、大腸菌等の宿主用にコドンを最適化した魚類の由来のType III AFPをコードするDNA配列を用いて、9アミノ酸残基からなるペプチドリンカーによってテトラマー化及びトリマー化したAFPのDNA配列を構築する。次にこのDNA配列をクローニングしたベクターで大腸菌等の宿主を形質転換する。形質転換体をイソプロピル-β-D(−)-チオガラクトピラノシド等で発現誘導し、発現された組換え体をイオン交換クロマトグラフィーで精製することにより、RD3 NCCあるいはRD3 NCNC を得ることができる。
【0017】
得られたRD3 NCNC 、RD3 NCCの不凍活性は、再結晶阻害活性を顕微鏡で観察することにより、また、不凍活性を氷点降下法浸透圧計で測定することにより確認できる。
【0018】
本発明において上記のようにして得られたRD3 NCNC 、RD3 NCCタンパク質は、特に低濃度域(0.05〜0.1mM)でType III AFP 1分子あたりの温度ヒステリシス効果をおおよそ20倍以上に上昇させ、RD3に比べても極めて高い不凍活性を示した(図14)、さらには低濃度でも氷核の成長をほぼ完全に阻害する(図12C、D)。
【0019】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は特にこれにより限定されるものではない。
【0020】
実施例1:RD3 NCNC 及び RD3 NCC の設計
2つのRD3を9アミノ酸残基(アスパラギン酸−グリシン−スレオニン−スレオニン−セリン−プロリン−グリシン−ロイシン−リシン)により構成されるポリペプチドリンカーを介して連結したAFP (RD3 NCNC)と、RD3にリンカーを介してC-ドメインを連結したAFP (RD3 NCC) を設計した。この際、リンカーの下流に連結される ドメインのN末端3アミノ酸残基を削除した(図1、図2)。RD3 NCNCの分子量は29.6 KDa、RD3 NCC の分子量は22.2 KDaと算出される。
【0021】
実施例2:RD3 NCNC 及び RD3 NCC をコードする合成遺伝子の構築
大腸菌の菌体内で発現するように最適化されたRD3 NCNC とRD3 NCC 不凍タンパク質をコードするDNA配列を以下のように構築した。大腸菌の使用コドンに最適化したセンス鎖側のDNA断片と、同じく大腸菌の使用コドンに最適化したアンチセンス鎖側のDNA断片をアニール、ライゲーションして構築したN-ドメイン−リンカーとリンカー−C-ドメインを連結して作製されたRD3をコードするDNA配列(Kazunori Miura et al., 1999. J. Biochem. 126: 387-394、配列番号5)をクローニングしたベクターを鋳型に、以下に示すプライマーを用いてRD3のリンカー部分に存在する制限酵素サイト、Kpn IとSma Iサイトをサイレント変異により削除したN-ドメインとC-ドメインをコードするDNA配列をPCR法により増幅させた。
【0022】
【0023】
次にこれらのPCR産物をアガロースゲル電気泳動により精製し、リコンビナントPCRを行った。約420b.p.のRD3の構造遺伝子を電気泳動したアガロースゲルから精製し、3’末端に付加されたアデニンを利用してpT7Blueベクター (Novagen) にクローニング(TAクローニング)することでリンカー部分に存在する制限酵素サイト、Kpn IとSma Iサイトを削除したRD3の構造遺伝子 (RD3Δ)を構築した(図3)。このベクターで大腸菌DH5α株を形質転換し、増殖後アルカリ−SDS法によりプラスミドDNAを単離した。このプラスミドDNAを鋳型に以下のプライマーを用いてSma I 制限酵素サイトを含むリンカーの一部をそのC末端に付加したRD3をコードするDNA配列(RD3 NCl)を増幅した(図4)。
【0024】
【0025】
また、RD3 N-ドメインのDNA配列を鋳型に以下のプライマーを用いてN末端にリンカーの一部を付加したN-ドメインのDNA配列(RD3 lN)を増幅した(図4)。
【0026】
【0027】
それぞれのPCR産物は精製後、TAクローニングによりベクターに導入した。RD3 lNにおいてはプラスミドDNAを大腸菌で増幅し、既存の制限酵素サイトKpn IとSac Iサイトを利用してN末端にリンカーの一部を付加したRD3の構造遺伝子(RD3 lNC)を構築した(図4)。次にRD3 NClをコードするDNA断片を既存のRD3発現ベクター、pET20bRD3にライゲーションすることでRD3 NCC発現用プラスミドDNA、pETRD3NCCを構築した(図5)。続いてこのベクターにRD3 lNCのDNA断片を導入し、RD3 NCNC発現用プラスミドDNA、pETRD3NCNCを構築した(図6)。
【0028】
実地例3:構築した RD3 NCNC 及び RD3 NCC の遺伝子配列の決定
RD3 NCNC とRD3 NCCのDNA配列の決定はABI PRISMTM によって提供されるプロトコールに従って行った。RD3 NCNCのセンス鎖を決定するためにTerminator Ready Reaction Mix (ABI PRISMTM) 4μl、pETRD3NCNC 400ng、5 x 反応液 (ABI PRISMTM) 2μl、T7promoter primer 3.2 pmolを混合し、滅菌水で20μlにした後、以下のプログラムに従って、サーマルサイクラー(TAKARA)で反応を行った。
【0029】
【0030】
また、RD3 NCNCの遺伝子のアンチセンス鎖を決定するためにTerminator Ready Reaction Mix (ABI PRISMTM) 4μl、pETRD3NCNC 400ng、5 x 反応液 (ABI PRISMTM) 2μl、T7terminator primer 3.2 pmolを混合し、滅菌水で20μlにした後、同様に反応を行った。反応が終了したサンプルに、3 M 酢酸ナトリウム (pH 5.2)を2μl、95% エタノール 50μlを加え、室温で15分静置した後、12000回転で20分間遠心分離を行い反応物を沈殿として回収した。この沈殿物に70% エタノールを250μl加え、室温で12000回転、5分間遠心し沈殿物を回収することで反応物を洗浄した。さらに、濃縮遠心機で反応物を乾固し、15μlのTemplate Suppression Reagent (ABI PRISMTM)に溶解させ、95℃で2分間加熱した後氷中で急冷した。このサンプルをABI PRISM 310(ABI PRISMTM)にセットし、RD3 NCNCのDNA配列の決定を行ったところ、図7に示す配列が決定され、目的の配列が構築されていることが確認された。
RD3 NCCの遺伝子においても同様の操作によって配列を確認した(図8)。
【0031】
実施例4:大腸菌による RD3 NCNC 及び RD3 NCC の発現 プラスミドpETRD3NCNCで大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。プラスミドpETRD3NCNCにはアンピシリン耐性遺伝子が導入されているため、アンピシリン含有LB寒天培地に大腸菌を広げ、一晩37℃でインキュベートすることで形質転換体を選択した。形成されたコロニーの一つを100μg/mlのアンピシリンを含んだLB培地2 mlに植え20℃で一晩培養した。この培養液を100μg/mlのアンピシリンを含んだLB培地100 mlに植え継ぎし、さらに20℃で一晩培養した。100 mlの培養液のうち20 mlを100μg/mlのアンピシリンを含んだLB培地2000 mlに植え継ぎし、波長600 nmの吸光度で大腸菌の増殖度をモニターしながら20℃で培養した。波長600 nmの吸光度が0.5になったところでイソプロピル-β-D(−)-チオガラクトピラノシドを終濃度0.5 mM になるように加えることにより不凍タンパク質の発現を誘導し、さらに8時間培養を行った。培養液を3600 × g、4℃で15分遠心分離し、菌体を回収した。菌体を10 mM トリス-塩酸緩衝液 / 1mM エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム (pH 8.0) (TE緩衝液)に縣濁し、氷中で超音波破砕した。これを11900 × g、4℃で30分遠心分離し、可溶性画分と不溶性画分に分離した。不溶性画分からは100 mM トリス-塩酸緩衝液 (pH 8.5) / 6 M塩酸グアニジンによりRD3 NCNCを抽出した。RD3 NCCについても同様の操作により抽出した。
【0032】
実施例5:RD3 NCNC 及び RD3 NCC の精製
不溶性画分から抽出したRD3 NCNCは50 mM リン酸水素二カリウム / 100 mM 塩化ナトリウム (pH 10.7)で20倍に希釈し、4〜7日4℃で静置することで巻き戻し反応を行った。この巻き戻したRD3 NCNCと可溶性画分の緩衝液を透析により50 mM 酢酸ナトリウム (pH 3.7)に置換した。この際、多くの夾雑タンパク質が凝集し沈殿する。沈殿は11900 × g、4℃で30分遠心分離することで除去した。陽イオン交換クロマトグラフィーはFPLCシステム(Amersham Pharmacia Biotech)にHigh-Sカラム(BIO-RAD)を接続し、4℃のクロマトチャンバー内で実施した。サンプル緩衝液は50 mM酢酸ナトリウム (pH 3.7)(和光純薬)、流速は1 ml / 分とした。RD3 NCNC の溶出には0 ~ 0.5 M塩化ナトリウム(和光純薬)の直線勾配を用いた(図9)。溶出サンプルはUV-1 (Amersham Pharmacia Biotech)を用いて波長280 nmの吸光度で検出し、フラクションコレクターで回収した。1フラクションあたりの回収量は1 mlとした。RD3 NCCについても同様の操作により精製を行った(図10)。
【0033】
実施例6:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動 一般的なプロトコールに従い、電気泳動装置 (ATTO) 用いて精製したRD3 NCNC及びRD3 NCCを15% ポリアクリルアミドゲルで泳動した。分子量測定のため、broad range SDS-PAGE standard (BIO-RAD) を同時に泳動した。サンプル緩衝液は、0.065 Mトリス-塩酸緩衝液 (pH6.8) / 2 % ドデシル硫酸ナトリウム / 10 % ショ糖 / 5 % β-メルカプトエタノール / 0.001 % ブロモフェノールブルーを用いた。濃縮ゲルは0.5 M トリス-塩酸緩衝液 (pH 6.8) 0.75 ml、30 % アクリルアミド / ビス (37.5 : 1) 混合液 0.45 ml、10 % ドデシル硫酸ナトリウム 0.12 ml、蒸留水1.78 mlを混合して作製し、分離ゲルは1.5 M トリス-塩酸緩衝液 (pH 8.8) 2.25 ml、30% アクリルアミド / ビス (37.5 : 1) 混合液 4.5 ml、10 % ドデシル硫酸ナトリウム 0.36 ml、蒸留水1.89 mlを混合して作製した。泳動用緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 3.03g、グリシン 14.4g及びドデシル硫酸ナトリウム 1gを合計1 lの蒸留水中に溶解させたものを用いた。ゲルの染色はメタノール 20 ml、硫酸アンモニウム 12.5g、 リン酸 2.5ml、0.04 % クマシーブリリアントブルー G-250を100mlの蒸留水の溶液に溶かした染色液を用いて一晩行い、蒸留水で脱染色した。図11より、分子量 29.6 KDa のRD3 NCNCおよび分子量 22.2 KDa のRD3 NCCが純度高く精製されているのが確認できる。
【0034】
実施例7:氷結晶成長の観測 氷結晶成長の観測をするサンプルを0.1 M 炭酸水素アンモニウム (pH 7.9) 緩衝液に0.05 mM及び0.2 mMの濃度で溶解させた。直径1.2 mm、厚さ0.8 mmのワッシャーをマニキュアで接着した直径1.6 mmのカバーグラスにサンプル溶液2 μlを乗せ、さらに直径1.25 mmのカバーグラスを蓋としてワッシャーにマニキュアで接着した。この測定用セルを顕微鏡LEICA DMLBに設置されたLinkam THMS 600冷却ステージに置き、カバースリップを被せた。冷却ステージをLinkam L-600A 冷却システムに接続し、Linkam LK-600PMコントローラーによりステージ温度を制御した。サンプル温度を-25℃まで冷却(-13℃ / 分)して凍らせた後、サンプルを加熱し、1つの氷核を残して氷を融解させた。サンプルを徐々に冷却(-0.05℃ / 分)し、氷結晶の成長を高感度CCDカメラシステムとビデオで記録した(図12)。マルチマー化した不凍タンパク質が低濃度でも氷核の成長を強く阻害することが示された。
【0035】
実施例8:凝固点の測定 0.1 M炭酸水素アンモニウム (pH 7.9) 緩衝液に0.025、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3 mMの濃度で溶解させたサンプル50μlを用いて総浸透圧値を氷点降下法浸透圧計 (VOGEL) を用いて測定し、凝固点を算出した(図13)。また、Type III AFPとの活性比を図14に示した。作製したRD3 NCNCとRD3 NCCは低濃度域でType III AFPのおおよそ20倍の温度ヒステリシス効果を示した。
【0036】
【発明の効果】
これまで説明してきたように、不凍タンパク質をマルチマー化することによって温度ヒステリシス活性、氷の再結晶阻害活性を大幅に向上させることができ、本発明のマルチマー化不凍タンパク質は、少量でも充分にその不凍活性を発揮するものである。したがって、本発明は、例えば、アイスクリーム等の冷凍食品の品質保持、細胞、組織の冷凍保存、あるいは冷熱供給システム、冷熱蓄熱システム等における凍結による配管系の閉塞の防止等において、不凍タンパク質利用促進を図るための極めて実用的かつ有効な技術である。
【0037】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】RD3 NCNCの構成とその一次構造を示す図である。
【図2】RD3 NCCの構成とその一次構造を示す図である。
【図3】RD3のリンカー部に存在するKpn I、Sma I制限酵素サイトを削除したRD3ΔのDNA配列の構築過程の概要を示す図である。
【図4】RD3のN末端側にリンカーの一部を連結したDNA配列とRD3のC末端側にリンカーの一部を連結したDNA配列の構築過程の概要を示す図である。
【図5】RD3 NCCの発現用ベクター、pETRD3NCCの構築過程の概要を示す図である。
【図6】RD3 NCNCの発現用ベクター、pETRD3NCNCの構築過程の概要を示す図である。
【図7】pETRD3NCNCのDNA配列の解析結果を示す図である。
【図8】pETRD3NCCのDNA配列の解析結果を示す図である。
【図9】陽イオン交換クロマトグラフィーにおけるRD3 NCNCの溶出パターンを示す図である。
【図10】陽イオン交換クロマトグラフィーにおけるRD3 NCCの溶出パターンを示す図である。
【図11】精製したRD3 NCNC及びRD3 NCCのドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動の結果を示す図である。
【図12】RD3 NCNC、RD3 NCC、RD3、Type III AFPを含む溶液における氷核の成長過程を撮影した映像写真である。
【図13】RD3 NCNC、RD3 NCC、RD3、Type III AFPの不凍活性を示す図である。
【図14】Type III AFPに対するRD3 NCNC、RD3 NCC、RD3の不凍活性比を示す図である。
Claims (7)
- 配列表において、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする、アミノ酸配列からなるマルチマー化不凍タンパク質。
- 請求項1に記載のマルチマー化不凍タンパク質をコードするDNA。
- 配列表において、配列番号3で示される塩基配列からなることを特徴とする、マルチマー化不凍タンパク質をコードするDNA。
- 請求項2または3に記載のDNAを有する組換えベクター。
- 請求項4に記載の組換えベクターを有する形質転換体。
- 請求項1のマルチマー化不凍タンパク質をペプチド合成機を用いて合成することを特徴とするマルチマー化不凍タンパク質の製造方法。
- 請求項5の形質転換体を培養して、マルチマー化不凍タンパク質を採取することを特徴とする、マルチマー化不凍タンパク質の製造方法。
Priority Applications (5)
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