JP5360456B2 - 氷結晶成長抑制剤および氷結晶成長抑制方法 - Google Patents

氷結晶成長抑制剤および氷結晶成長抑制方法 Download PDF

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Description

本発明は、氷結晶成長抑制剤および氷結晶成長抑制方法に関する。
不凍タンパク質(Anti−Freeze Protein:AFPと称される場合もある)は、極地に生息する魚、昆虫、植物などに含まれる特殊なタンパク質である(非特許文献1参照)。通常の魚類の体液は−0.8℃前後で凍結するのに対し、AFPを体内に有する魚類の体液は−2℃以下まで下がっても凍結しない。海水は−1.9℃程度で凍ってしまうので、AFPを体内に有する魚類は、海水が凍ってしまう環境下においても、体液が凍ることなく生息が可能となる。
凝固点の降下は、一般には、凝固点降下温度が溶質のモル濃度と正比例するモル凝固点降下則によって説明される。しかし、AFPのモル濃度と凝固点降下温度とは正比例しない。すなわち、AFPは、モル凝固点降下則とは異なる作用で体液の凍結を防止している。具体的には、生体内で成長した氷結晶の成長面に特異的に吸着し、氷結晶の成長を阻害することによって体液の凍結を防止している。
水中での氷結晶の成長について、図1、図2−a、図2−bを参照しながら、より具体的に説明する。図1は、AFPが存在しない場合の氷晶の成長を示す概念図である。図2−a及び図2−bはAFPが存在する場合の氷晶の成長の一例を示す概念図である。図1に示すように、一般に、氷の最小核が形成されると、この最小核はa軸方向及びc軸方向の両方に成長する。ただし、a軸方向の成長速度はc軸方向の成長速度より約100倍程度速いため、円盤状の氷の核(氷晶)1が形成される。これに対し、図2−aに示すように、AFPが存在する場合、氷の最小核ができるとただちにc軸に平行な面(プリズム面)に吸着し、a軸方向の氷の成長を抑止するため、六方晶状の氷晶2が形成される。六方晶状の氷晶2は、図2−bに示すように、c軸方向に小さな六方柱を積み重ねるようにして成長し、バイピラミッド型氷晶3となる。AFPは、c軸方向の成長を抑止する場合もあり、このときは、六方晶状のまま(図2−a参照)となる。いずれにせよ、AFPが存在すると、氷晶が通常(扁平円盤型)とは異なる形態となる。また、結晶成長が抑制されているため、氷晶同士の合一も抑制され、氷結晶の粗大化が抑制される。AFPが有する不凍活性は、このような氷晶形態の変化で特徴づけられる。
AFPが有する不凍活性は、熱ヒステリシスを示すことによっても特徴づけられる。すなわち、AFPが溶解した水溶液を過冷却して一度完全に凍結させ、系の温度を徐々に上昇させ、一部結晶を残しておくように融解する。この融解温度(融点)よりも僅かに温度を下げて長時間放置すると、通常であれば凍結が始まる(すなわち融点と凝固点とは一致する)が、AFPが存在していると凍結は始まらず、さらに温度を下げることによって初めて凍結が始まる。融解温度(融点)と、再度の凍結温度(凝固点)との差は熱ヒステリシスと称されている。この熱ヒステリシスを示すことは、不凍活性が存在することを意味する。
すなわち、不凍活性とは、(1)氷晶形態が変化する(非扁平円盤形となる)こと、(2)熱ヒステリシスがあること、(3)再結晶の抑制を意味する。したがって、本明細書では、(1)氷晶形態が変化し(非扁平円盤形となり)、(2)熱ヒステリシス、(3)再結晶の抑制があれば、不凍活性があるとする。
このような不凍活性を有するAFPについては、種々の応用開発について研究されている。例えば、冷凍食品の品質やきめ(テクスチャー)改善用途(特許文献1〜14参照)、生体組織及び体液の耐凍性改善用途(特許文献15〜17参照)、氷蓄熱システム用途(特許文献18参照)に関する研究が行われている。
AFPが1960年代後半に南極等に生息する魚類の体液から発見されてから既に40年以上が経過した。その間、上述したような、AFPに関する膨大な研究が行われてきている。それにもかかわらず、いまだにAFPによる低温保存などの技術は実用化されていない。その最大の原因は、実用化に必要な量のAFPを生産する技術が開発されていないことである。そのため、AFPは極めて高価であり、現状では、1gあたり、およそ100万円レベルにある。
そこで、近年、AFPの代替品となりうる物質の探索がなされている。
タンパク質系以外で不凍活性を有する物質として、炭素鎖を主鎖とし、窒素原子を含有する官能基を側鎖に有する重合体が報告されている(特許文献19参照)。しかし、この重合体は不凍活性を有するものの、AFPに比較して、不凍活性のレベルはまだまだ満足できるものではない。
西村紳一郎,「不凍糖タンパク質の合成−不凍魚の秘密をさぐる− 」,現代化学,東京化学同人,1999年4月,第337号,第56−62頁 国際公開第96/39878号パンフレット 国際公開第96/11586号パンフレット 国際公開第98/4699号パンフレット 国際公開第98/4147号パンフレット 国際公開第98/4148号パンフレット 特開2000−157195号公報 国際公開第99/37164号パンフレット 国際公開第99/37673号パンフレット 国際公開第00/53025号パンフレット 国際公開第00/53026号パンフレット 国際公開第00/53027号パンフレット 国際公開第00/53028号パンフレット 国際公開第00/53029号パンフレット 国際公開第99/37673号パンフレット 国際公開第91/10361号パンフレット 国際公開第97/36547号パンフレット 国際公開第00/00512号パンフレット 特開平8−75328号公報 特開2006−299108号公報
本発明の目的は、低コストで、AFPと同レベル以上の不凍活性を有する氷結晶成長抑制剤を提供することにある。また、AFPと同レベル以上の不凍活性を発現できる氷結晶成長抑制方法を提供することにある。
本発明の氷結晶成長抑制剤は、不凍タンパク質とポリカルボン酸系重合体とを含む。
好ましい実施形態においては、上記不凍タンパク質1重量部に対して前記ポリカルボン酸系重合体を10〜200000重量部含む。
好ましい実施形態においては、上記ポリカルボン酸系重合体が、不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(I)由来の構成単位を有する。
好ましい実施形態においては、上記不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(I)が、一般式(1)で表される。
Figure 0005360456
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、Mは、水素原子、1価金属原子、多価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。)
好ましい実施形態においては、上記一般式(1)中のMが、アンモニウム基または有機アンモニウム基である。
本発明の別の局面によれば、氷結晶成長抑制方法が提供される。この氷結晶成長抑制方法は、不凍タンパク質と、ポリカルボン酸系重合体とを用いる。
本発明によれば、低コストで、AFPと同レベル以上の不凍活性を有する物質を提供することができる。
上記効果は、AFPに比較して非常に安価なポリカルボン酸系重合体をAFPと併用することによって発現できる。ポリカルボン酸系重合体は、AFPに比較して非常に安価であるが、AFPに比較して不凍活性が低い。このため、AFPとポリカルボン酸系重合体とを併用しても、AFPと同レベル以上の不凍活性を有するものになるとは到底予想できない。ところが、本発明者らが、AFPに比較して非常に安価なポリカルボン酸系重合体をAFPと併用してみると、驚くべきことに、極めて大きな相乗効果が発現され、AFPと同レベル以上の不凍活性を有することが判った。さらに、この大きな相乗効果は、ポリカルボン酸系重合体に対するAFPの割合を大幅に下げても発現できることが判った。この結果、本発明の氷結晶成長抑制剤を用いれば、極めて低コストで、AFPと同レベル以上の不凍活性をすることができることとなる。
≪氷結晶成長抑制剤≫
本発明の氷結晶成長抑制剤は、不凍タンパク質とポリカルボン酸系重合体とを含む。本発明の氷結晶成長抑制剤中の、不凍タンパク質とポリカルボン酸系重合体との合計量の割合は、好ましくは、50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%である。
上記不凍タンパク質は1種のみでも良いし、2種以上であっても良い。上記ポリカルボン酸系重合体は1種のみでも良いし、2種以上であっても良い。
本発明の氷結晶成長抑制剤中における、不凍タンパク質とポリカルボン酸系重合体との割合としては、任意の適切な割合を採用し得る。コストと不凍活性とのバランスを考慮すると、好ましくは、不凍タンパク質1重量部に対して、ポリカルボン酸系重合体を、通常10〜1000000重量部含み、10〜200000重量部含むことが好ましく、50〜150000重量部含むことがより好ましく、100〜100000重量部含むことがさらに好ましい。
上記不凍タンパク質としては、任意の適切な不凍タンパク質(AFP)を採用し得る。不凍タンパク質は、不凍活性を有するタンパク質を意味し、魚類等の生体内において、凍結温度域で細胞内に生成する氷結晶の表面に特異的に結合してその成長を抑制し、組織の凍結から身を守る生体防御物質である。本明細書において、不凍タンパク質とは、不凍活性を有するペプチドおよびタンパク質の双方を包含するものとする。また、その側鎖に、ガラクトース、グルコース、フルクトースなどの糖類を有するものを包含するものとする。
不凍タンパク質は、任意の適切な方法により、例えば、植物、昆虫、魚類から抽出され得る。例えば、特開2006−124295号公報に記載の方法が挙げられる。
上記ポリカルボン酸系重合体は、任意の適切なポリカルボン酸系重合体を採用し得る。ポリカルボン酸系重合体とは、構成単位として、カルボキシル基またはその塩を有する構成単位を有する重合体をいう。
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩など、任意の適切な塩を採用し得る。
上記ポリカルボン酸系重合体は、単独重合体であっても良いし、共重合体であっても良い。
上記ポリカルボン酸系重合体は、好ましくは、不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(I)由来の構成単位を有する。上記ポリカルボン酸系重合体が不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(I)由来の構成単位を有する場合、該重合体中の該構成単位の割合は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%である。該重合体中の該構成単位の割合が上記範囲を外れると、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
上記ポリカルボン酸系重合体は、不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(I)と共重合し得る任意の適切な単量体(以下、その他単量体と称することがある)由来の構成単位を有していても良い。
上記その他の単量体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ならびにこれらの1価金属塩、2価金属塩、第4級アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などの、不飽和ジカルボン酸系単量体;ビニルスルホネート、アリルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、ならびにこれらの1価金属塩、2価金属塩、第4級アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などの、不飽和スルホン酸系単量体;メチル(メタ)アクリルアミドのような、不飽和カルボン酸類と炭素数1〜30のアミン類とのアミド;スチレン、α−メチルスチレンなどの、ビニル芳香族系単量体;(メタ)アリルアルコールなどの、アリル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの、不飽和モノカルボン酸類と炭素数1〜30のアルコールとのエステル;(メタ)アクリロニトリルなどの、不飽和シアン系単量体;などが挙げられる。
上記不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(I)としては、不飽和二重結合、および、カルボキシル基またはその塩を有する単量体であれば、任意の適切な単量体を採用し得る。好ましくは、一般式(1)で表される単量体である。
Figure 0005360456
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)中、Mは、水素原子、1価金属原子、多価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。本発明の効果をより一層発現させるために、好ましくは、Mは、アンモニウム基または有機アンモニウム基である。
上記1価金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。
上記多価金属原子としては、例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属等の2価金属原子;アルミニウム、鉄等の3価金属原子が挙げられる。
上記有機アンモニウム基としては、例えば、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、モノエタノールアミン由来の有機アンモニウム基、ジエタノールアミン由来の有機アンモニウム基、トリエタノールアミン由来の有機アンモニウム基が挙げられる。
上記不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(I)の具体例としては、例えば、アクリル酸のアンモニウム塩、アクリル酸の有機アンモニウム塩、メタクリル酸のアンモニウム塩、メタクリル酸の有機アンモニウム塩が挙げられる。
上記ポリカルボン酸系重合体の具体例としては、例えば、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸有機アンモニウム、ポリメタクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸有機アンモニウムが挙げられる。
上記ポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量としては、例えば、1000〜1000000が好ましく、3000〜500000がより好ましい。上記ポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量が1000より小さいと、氷結晶あるいは不凍タンパク質に吸着する際の被覆面積が小さくなって氷結晶成長抑制剤としての効果が発揮できないおそれがある。上記ポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量が1000000より大きいと、氷結晶を分散させる効果が小さくなり、氷結晶成長抑制剤が凝集剤的に作用してしまうおそれがある。
本発明の氷結晶成長抑制剤は、上記不凍タンパク質と上記ポリカルボン酸系重合体以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいても良い。
上記その他の成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子;塩;糖類;核酸;タンパク質;などが挙げられる。
本発明の氷結晶成長抑制剤は、不凍活性の内容に応じて種々の用途に使用できる。例えば、熱ヒステリシスと再結晶抑制効果は、氷結晶成長抑制剤として利用できる。この場合、氷の成長を抑制することによって氷の合一化を抑制できる。本発明の氷結晶成長抑制剤は、例えば、氷蓄熱システムの二次冷媒としての氷スラリーに添加してもよい。
本発明の氷結晶成長抑制剤を氷蓄熱システム用途に利用する方法の一例としては、本発明の氷結晶成長抑制剤を添加した液体を冷却して氷スラリーを生成させ、該氷スラリーを配管及びポンプによって所定の場所に輸送することや、同様にして得られた氷スラリーを貯蔵することで冷熱を保存することが挙げられる。本発明の氷結晶成長抑制剤を氷蓄熱システム用途に使用すれば、氷スラリー中で氷が合一化してシステムが運転不能となることを防止できる。なお、氷そのものの量は実質的には変化しないため、システムの蓄熱能力が低下するおそれはない。さらに、比較的少量で効果があるので、多大なモル凝固点降下を引き起こさない。また、本発明の氷結晶成長抑制剤は化学的に安定なので、運転効率を保ったまま長期間の運転が可能である。
本発明の氷結晶成長抑制剤を冷凍食品に添加すれば、食品中の氷が合一化または再結晶化して食感が低下するのを防止できる。
本発明の氷結晶成長抑制剤は、熱ヒステリシスを示す性質によって、氷の成長開始温度低下剤としても利用できる。氷結晶成長開始温度低下剤は、氷付着を防止するために付着箇所(例えば、飛行機などの翼や電線など)に散布又は塗布してもよく、凍結や霜害を防止するために地面(路面、土壌など)や農作物に散布又は塗布してもよい。
本発明の氷結晶成長抑制剤は、金属への腐食性が少なく、また少量の添加でも効果が高いため、環境への負荷が小さい。
本発明の氷結晶成長抑制剤は、熱ヒステリシスを示す性質と、再結晶を抑制する効果によって、氷点下での生体組織の凍結保存と凍結防止を可能にし、氷点下での生体組織の損傷又は体液の凍結を防止するために生体組織又は体液に注入することができる。具体的には、養殖魚の耐凍性改善、精子や臓器などの冷凍保存、冷凍手術などに利用できる。
≪氷結晶成長抑制方法≫
本発明の氷結晶成長抑制方法は、氷結晶の表面に吸着して凍結を阻害する高分子Aと、該氷結晶の表面であって該高分子Aが吸着する表面と異なる表面に吸着して凍結を阻害する高分子Bとを用いる。このような高分子Aおよび高分子Bを併用することにより、高い氷結晶成長抑制効果を発現できる、氷結晶成長抑制方法を提供することが可能となる。
高分子Aとしては、氷結晶の表面に吸着して凍結を阻害する高分子であれば、任意の適切な高分子を採用し得る。
高分子Bとしては、氷結晶の表面であって高分子Aが吸着する表面と異なる表面に吸着して凍結を阻害する高分子であれば、任意の適切な高分子を採用し得る。
本発明の氷結晶成長抑制方法の、好ましい実施形態としては、不凍タンパク質とポリカルボン酸系重合体とを用いて氷結晶成長を抑制する方法である。この場合、高分子Aが不凍タンパク質に該当し、高分子Bがポリカルボン酸系重合体に該当する。
本発明の氷結晶成長抑制方法について、図2−a、図2−bを参照しながら、より具体的に説明する。図2−aにおいて、氷結晶の表面に吸着して凍結を阻害する高分子Aは、氷の最小核ができるとただちにc軸に平行な面(プリズム面)に吸着し、a軸方向の氷の成長を抑止するため、六方晶状の氷晶2が形成される。六方晶状の氷晶2は、図2−bに示すように、c軸方向に小さな六方柱を積み重ねるようにして成長し、バイピラミッド型氷晶3となる。高い氷結晶成長抑制効果を発現するためには、c軸方向の成長を抑止する必要がある。このc軸方向の成長を抑止するために、高分子Bを用いる。高分子Bは、c軸方向の成長を抑止し、このときは、六方晶状のまま(図2−a参照)となる。a軸方向とc軸方向の結晶成長が抑制されているため、氷晶同士の合一も抑制され、氷結晶の粗大化が抑制される。別の可能性としては、高分子A、Bが同じ氷結晶の表面に吸着し、その結果、高い氷結晶成長抑制効果を発現していることも考えられる。さらに別の可能性としては、高分子A、Bが作用し、氷結晶表面への吸着量が強い高分子複合体を形成することも考えられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により、以下の条件で測定した。
・カラム:GF−7MHQ(昭和電工社製)
・カラム温度:35℃
・溶離液:リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5gおよびリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(いずれの試薬も特級である。)に純水を加えて全量を5000gとし、その後、フィルター孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した水溶液
・検出器:UV 214nm(日本ウォーターズ(株)製、モデル481型)
・流量:0.5mL/min
・検量線:ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(総和科学社製)
<熱ヒステリシスの測定>
容量が約30mlのジャケット付アクリル製小型セルを結晶観察セルとし、該セルは、恒温槽から供給される冷媒によって温度制御されている。結晶観察セル中における氷単結晶の成長の様子は、顕微鏡レンズ付きのCCDカメラにて撮影し、HDDレコーダーに録画した。また、結晶観察セル中の溶液温度を、白金温度計で測定した。
実験手順としては、予め濃度調整を行ったサンプル溶液をセルに注入し、冷媒を供給して、溶液温度を下げた。溶液中に、平板状の氷結晶から切り出した氷単結晶を浸漬した。溶液の温度を平衡融点近傍に設定し、氷単結晶の成長を止めた後、溶液温度を徐々に下げて、氷単結晶が再び成長し始める温度(凝固点)を決定した。その後、溶液の温度を上げ、氷単結晶の融解速度を測定し、平衡融点を決定した。
<不凍タンパク質(AFP)>
Winter flounder由来の、AFP typeI(A/F Protein Canada 2000 Inc.)を用いた。
<ポリアクリル酸アンモニウム(NHPA)の合成>
ポリアクリル酸(商品名:「アクアリックHL−415」、重量平均分子量(Mw):10000、株式会社日本触媒製)を28%アンモニア水(和光純薬工業製)でpH7.0になるまで中和し、ポリアクリル酸アンモニウム(NHPA)を合成した。
〔実施例1〕
AFPが0.2mg/mlの濃度、NHPAが200mg/mlの濃度となるように、AFPとNHPAとの混合水溶液を調製した。
得られた水溶液について、熱ヒステリシスを測定した。
結果を表1に示す。
〔実施例2〕
AFPが0.01mg/mlの濃度、NHPAが200mg/mlの濃度となるように、AFPとNHPAとの混合水溶液を調製した。
得られた水溶液について、熱ヒステリシスを測定した。
結果を表1に示す。
〔比較例1〕
NHPAが200mg/mlの濃度となるように、NHPAの水溶液を調製した。
得られた水溶液について、熱ヒステリシスを測定した。
結果を表1に示す。
〔比較例2〕
AFPが0.2mg/mlの濃度となるように、AFPの水溶液を調製した。
得られた水溶液について、熱ヒステリシスを測定した。
結果を表1に示す。
〔比較例3〕
AFPが5.6mg/mlの濃度となるように、AFPの水溶液を調製した。
得られた水溶液について、熱ヒステリシスを測定した。
結果を表1に示す。
Figure 0005360456
比較例2によれば、AFPのみを0.2mg/ml用いた場合の熱ヒステリシスは0.09Kである。また、比較例1によれば、NHPAのみを200mg/ml用いた場合の熱ヒステリシスは0.01Kであり、AFPのみの場合(比較例2)よりも熱ヒステリシスは低くなっている。ところが、実施例1に示すように、AFP(0.2mg/ml)とNHPA(200mg/ml)とを併用した場合、熱ヒステリシスが、それぞれの単独使用の場合(比較例1、2)からの予想をはるかに超えて、0.68Kという大きな値となっており、非常に高い不凍活性を示している。しかも、熱ヒステリシスが0.68Kという非常に高い不凍活性と同レベルの不凍活性をAFPのみを用いて発現しようとすると、比較例3に示すように、AFPが5.6mg/ml以上必要であることが判る。このことから、熱ヒステリシスが0.68Kという非常に高い不凍活性を発現させるために、本発明の氷結晶成長抑制剤を用いて本発明の氷結晶成長抑制方法によれば、AFPの使用コストが大幅に低減(実施例1のAFPの使用量は比較例3のAFPの使用量の28分の1)できることが判る。
本発明の氷結晶成長抑制剤は、不凍活性の内容に応じて種々の用途に使用できる。例えば、氷結晶成長抑制剤以外に、氷蓄熱システムの二次冷媒としての氷スラリーに添加してもよい。
不凍活性を示さない物質の水溶液から析出する氷晶を説明するための概念図である。 不凍活性を示す物質の水溶液から析出する氷晶を説明するための第1の概念図である。 不凍活性を示す物質の水溶液から析出する氷晶を説明するための第2の概念図である。
符号の説明
1 扁平円盤状氷晶
2 六方晶状氷晶
3 バイピラミッド型氷晶

Claims (6)

  1. 不凍タンパク質とポリカルボン酸系重合体とを含む、氷結晶成長抑制剤。
  2. 前記不凍タンパク質1重量部に対して前記ポリカルボン酸系重合体を10〜200000重量部含む、請求項1に記載の氷結晶成長抑制剤。
  3. 前記ポリカルボン酸系重合体が、不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(I)由来の構成単位を有する、請求項1または2に記載の氷結晶成長抑制剤。
  4. 前記不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(I)が、一般式(1)で表される、請求項3に記載の氷結晶成長抑制剤。
    Figure 0005360456
    (一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、Mは、水素原子、1価金属原子、多価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。)
  5. 前記一般式(1)中のMが、アンモニウム基または有機アンモニウム基である、請求項4に記載の氷結晶成長抑制剤。
  6. 不凍タンパク質と、ポリカルボン酸系重合体とを用いる、氷結晶成長抑制方法。
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