JP3905789B2 - 有機質正特性サーミスタおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機質正特性サーミスタおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子に導電性フィラーを分散した有機質正特性サーミスタを過電流保護素子として利用することは従来から知られている。高分子に導電性フィラーを分散した有機質正特性サーミスタには導電性フィラーとして一般にカーボンブラックが使用されている。特開平5-47503号公報には、カルボニルニッケルを還元して得られたスパイク状の突起を有するニッケル粉やこれらが連結した形状のフィラメント状ニッケル粉を導電性フイラーとして構成された有機質正特性サーミスタが開示されている。ニッケル粉などの金属フィラーを導電性フィラーとすることによって、素子を低抵抗化、小型化できるといったメリットがある。しかしながら、ニッケル粉などの金属フィラーを導電性フィラーとした有機質正特性サーミスタは製造工程で圧力がかかると金属フィラー同士が圧着されてしまい、金属フィラー同士が離れにくくなる。さらに金属フィラー同士が圧着された状態で、熱衝撃サイクル試験(高温環境下と低温環境下に交互に繰り返し曝す試験)を行うと、圧着によって生じた金属フィラーの結合部が高温に曝されることによって酸化し、固着される。熱衝撃が繰り返し行われ、高分子マトリックスが膨張と収縮を繰り返すと、固着してしまった部分は常に離れない状態となってしまい、本来粉体であった金属粉はしだいに擬集魂となってしまう。試験前には金属フィラーが粉体状で分散していたために密な導電パスが形成され低抵抗であったものが、試験後には金属フィラーは塊状になってしまい導電パスが疎な状態になってしまい高抵抗化してしまう。
【0003】
有機質正特性サーミスタの導電性フィラーとして使用される金属フィラーは球状のものより、スパイク状の突起を有するスパイク状金属粉、さらにはスパイク状金属粉が連なった構造を有するフィラメント状の金属粉など、表面が複雑な形態をしているほど優れた正特性抵抗係数が得られるが、上記の不具合は表面が複雑な形態をしているものほど顕著である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、スパイク状の突起を有する金属粉を用いた有機質正特性サーミスタにおいて、特性に優れ、かつ熱衝撃を繰り返しても、抵抗の上昇を抑えることが可能な有機質正特性サーミスタおよびその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明によって達成される。
(1) スパイク状の突起を有する粒子状の金属粉(金属粒子)および/またはスパイク状の突起を有する金属粒子が鎖状に連なっているフィラメント状の金属粉を高分子に分散させた複合材料を一対の電極で挟んだ構造を有する有機質正特性サーミスタにおいて、
前記金属粉が、物理的方法および/または化学的方法による処理によって吸油量が減じられていることを特徴とする有機質正特性サーミスタ。
(2) 前記金属粉の吸油量が、前記処理により95%〜50%に減じられている上記(1)の有機質正特性サーミスタ。
(3) カルボニル金属を還元してスパイク状の突起を有する粒子状の金属粉(金属粒子)および/またはスパイク状の突起を有する金属粒子が鎖状に連なっているフィラメント状の金属粉を得、これを高分子に分散させて複合材料を得、この複合材料を一対の電極に挟んで得られる有機質正特性サーミスタの製造方法において、
前記金属粉に対し、物理的方法および/または化学的方法によって吸油量を減じる処理を施し、その後、高分子に分散させることを特徴とする有機質正特性サーミスタの製造方法。
(4) 前記金属粉の吸油量が、前記処理を施すことによって、処理前の95%〜50%となる上記(3)の有機質正特性サーミスタの製造方法。
(5) 前記金属粉同士を衝突させる物理的方法により前記金属粉の吸油量を減じる上記(3)または(4)の有機質正特性サーミスタの製造方法。
(6) 前記金属粉と媒体とを衝突させる物理的方法により前記金属粉の吸油量を減じる上記(3)〜(5)のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
(7) 前記金属粉を化学的に溶解する化学的方法により前記金属粉の吸油量を減じる上記(3)〜(6)のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
(8) 前記金属粉の吸油量を減じる処理を施し、その後、高分子に分散させ、加圧によりシート化する工程、および/または、前記金属粉の吸油量を減じる処理を施し、その後、高分子に分散させたものを一対の電極で挟んで圧着する工程を有する上記(3)〜(7)のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明の有機質正特性サーミスタは、導電性物質として金属粉を用い、金属粉を高分子に分散させた複合材料を一対の電極で挟んだ構造を有し、例えば図1に示される構成のものである。図1に示されるように、本発明の有機質正特性サーミスタは、前述の複合材料で形成されたサーミスタ素体2と一対の電極3とを有し、一対の電極3がサーミスタ素体2を挟み込むようにして配置されている。
【0008】
なお、図示例は、サーミスタの断面形状の一例にすぎず、本発明のサーミスタは、要求される特性や仕様により種々のものとすることができる。
【0009】
このような有機質正特性サーミスタの一般的な製造方法を説明する。導電性物質と、マトリックス材料のポリエチレンなどの結晶性高分子を混練する。混練物を押し出し機などでシート化する。シートの両面に電極となる金属箔を熱圧着する。電子線架橋などの架橋処理が施される。シートから所定の形状に切り出し、サーミスタ素体とする。用途によって、リードの取り付け、モールドが施され製品となる。
【0010】
上記の一連の工程の中で、混練物をシート化する工程、シートの両面に電極として金属箔を熱圧着する工程で、シート面と垂直方向に強く力がかかる。このとき、金属粉同士が圧着されてしまう。このような状態で熱衝撃が繰り返されると、圧着によって生じた金属粉の結合部が高温に曝されることによって酸化し、固着される。熱衝撃が繰り返し行われ、高分子マトリックスが膨張と収縮を繰り返すと、固着してしまった部分は常に離れない状態となってしまい、本来粉体であった金属粉はしだいに擬集魂となってしまう。熱衝撃前には金属粉が粉体状で分散していたために密な導電パスが形成され低抵抗であったものが、熱衝撃後には金属粉は塊状になってしまい導電パスが疎な状態になってしまい高抵抗化してしまう。
【0011】
このような問題は、スパイク状の突起を有する粒子状の金属粉(金属粒子)および/またはスパイク状の突起を有する金属粒子が鎖状に連なっているフィラメント状の金属粉を用いた場合に特に大きくなる。
【0012】
具体的に、このようなフィラメント状ニッケル粉の走査型電子顕微鏡(SEM)写真による形態を図2に示す。これから明らかなように、スパイク状の突起が粒子の表面を覆っている。この突起の絡み合いにより、室温では極めて低い抵抗値の高分子とニッケル粉との複合材料が得られる。しかしながら、製造工程において大きな圧力がかかるとこの突起同士が圧着されるため絡み合いがほどけなくなり、ニッケル粉の擬集塊を形成してしまい抵抗値が上昇してしまう。
【0013】
本発明では、導電性物質として、このようなスパイク状の突起を有する粒子状の金属粉(スパイク状金属粉ともいう。)および/またはスパイク状の突起を有する金属粒子が鎖状に連なっているフィラメント状の金属粉(フィラメント状金属粉ともいう。)を用いているが、物理的方法および/または化学的方法によりこのような金属粉の吸油量を減じる処理を施し、突起を減少させているので、高分子に、このような金属粉を分散して複合材料を得る際の製造工程において加わる大きな圧力によって、スパイク状の突起同士が絡み合い圧着する頻度を減少させることができる。その結果、製品として得られるサーミスタに対し、熱衝撃が繰り返されたときであっても、金属粉が圧着部分から凝集塊を形成するのを抑制できるので、抵抗値の上昇を抑えることができる。すなわち、スパイク状の突起の絡み合いにより、室温で極めて低い抵抗値を示すという利点を保持しつつ、熱衝撃による抵抗値の上昇が抑えられるという特徴をもつことになる。
【0014】
金属粉の吸油量は、処理後において、初期の95%以下50%以上になるようにすることが好ましい。このような吸油量とすることで、初期の抵抗値を低く抑えたままで、熱衝撃による抵抗値の上昇を抑えることができる。これに対し、初期からの吸油量の変化があまりないと熱衝撃による抵抗値の上昇が大きくなり、反対に変化が大きくなりすぎると、高分子に分散させたときに金属粉同士の接触点が極端に減ってしまい、複合材料の抵抗値が上昇してしまい、初期特性そのものが悪化してしまう。より好ましくは、処理後において、初期の吸油量の95%以下70%以上である。
【0015】
なお、吸油量の測定はJISK5421の方法で行ったものである。また、初期の吸油量は、通常8〜10g/100g程度である。
【0016】
吸油量を減らす方法としては、物理的方法、化学的方法のいずれであってもよく、通常は単一の方法のみとされるが、場合によっては組み合わせることもできる。
【0017】
物理的方法としてはボールミル、気流粉砕など微粉化するために一般的に用いられる方法がある。また、金属粉同士を衝突させる方法もある。
【0018】
その条件は、処理対象となる金属粉の材質や目的とする吸油量等に応じて、適宜選択することができる。
【0019】
化学的方法としてはスパイク状の突起部を化学的に溶解する方法であり、酸性あるいはアルカリ性の溶液に接触させることで達成できる。例えば、ニッケル粉であれば塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸あるいはカルボン酸やスルホン酸などの有機酸を用いることが可能である。また、アルカリ性の溶液で溶解することも可能である。アルカリ金属やアルカリ土類金属などの水酸化物の溶液やアミンなどの塩基性の有機物を利用することもできる。
【0020】
このような溶液の濃度は、通常、3〜50%(質量百分率)である。また、浸漬時間等の条件は、処理対象となる金属粉の材質や目的とする吸油量等に応じて、適宜選択することができる。
【0021】
金属粉の材質としては、ニッケル、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン、銀、亜鉛、コバルト等があり、なかでもニッケル、銅が好ましく、ニッケルが一般的である。
【0022】
処理前の金属粉について説明すると、スパイク状の突起を有する金属粒子は、1個、1個が鋭利な突起をもつ一次粒子から形成されており、粒径の1/3〜1/50の高さの円錘状のスパイク状の突起が1個の粒子に複数(通常10〜500個)存在するものである。
【0023】
このような金属粒子は、前述のとおり、1個、1個が個別に存在する粉体であってもよいが、一次粒子が10〜1000個程度鎖状に連なり二次粒子を形成していることが好ましい。鎖状のものには、一部一次粒子が存在してもよい。前者の例としては、スパイク状の突起をもつ球状のニッケルパウダがあり、商品名INCO Type 123ニッケルパウダ(インコ社製)として市販されており、その平均粒径は3〜7μm 程度、見かけの密度は1.8〜2.7g/cm3程度、比表面積は0.34〜0.44m2/g程度である。また、好ましく用いられる後者の例としては、フィラメント状ニッケルパウダがあり、商品名INCO Type 210、255、270、287ニッケルパウダ(インコ社製)として市販されており、このうちINCO Type 210,255が好ましい。そして、その一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.1μm 以上、より好ましくは0.2μm 以上4.0μm以下程度である。これらのうち、一次粒子の平均粒径は0.5μm 以上3.0μm 以下が最も好ましく、これに平均粒径0.1μm 以上0.4μm未満のものを50%(質量百分率)以下混合してもよい。また、見かけの密度は0.3〜1.0g/cm3程度、比表面積は0.4〜2.5m2/g程度である。なお、この場合の平均粒径はフィッシャー・サブシーブ法で測定したものである。
【0024】
このような金属粉は、カルボニル金属粉の還元によって得られる。ニッケルを例にすれば、99.99%の純度のニッケルカルボニルを用い、Ni(CO)4→Ni+4COの反応式に従って得られる。
【0025】
このような金属粉については、特開平5−47503号公報、米国特許第5378407号明細書に記載されている。
【0026】
本発明では、導電性物質として、前述の処理を施したスパイク状金属粉やフィラメント状金属粉のみを用いることが好ましいが、これらの金属粉の他に、補助的に導電性を付与するための導電性物質として、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、金属被覆カーボンブラック、グラファイト化カーボンブラック、金属被覆炭素繊維等の炭素系導電性粒子、球状、フレーク状、繊維状等の金属粒子、異種金属被覆金属(銀コートニッケル等)粒子、炭化タングステン、窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭化チタン、ホウ化チタン、ケイ化モリブデン等のセラミック系導電性粒子、また、特開平8−31554号公報、特開平9−27383号公報に記載されている導電性チタン酸カリウムウィスカー等を添加してもよい。このような導電性粒子は、スパイク状金属粉やフィラメント状金属粉の25%(質量百分率)以下とすることが好ましい。
【0027】
本発明において、導電性物質を分散させる高分子(マトリックス材料)としては熱可塑性高分子が挙げられる。
【0028】
熱可塑性高分子としては、ポリオレフイン(例えばポリエチレン)、オレフイン系コポリマー(例えばエチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー)、ハロゲン系ポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリアセタール、熱可塑性変性セルロース、ポリスルホン類、熱可塑性ポリエステル(PET等)、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタアクリレート等が挙げられる。
【0029】
具体的には、高密度ポリエチレン[例えば、商品名ハイゼックス2100JP(三井石油化学製)、商品名Marlex6003(フィリップス社製)、商品名HY540(日本ポリケム製)等]、低密度ポリエチレン[例えば、商品名LC500(日本ポリケム製)、商品名DYNH−1(ユニオンカーバイド社製)等]、中密度ポリエチレン[例えば、商品名2604M(ガルフ社製)等]、エチレン−エチルアクリレートコポリマー[例えば、商品名DPD6169(ユニオンカーバイド社製)等]、エチレン−酢酸ビニルコポリマー[例えば、商品名LV241(日本ポリケム製)等]、エチレン−アクリル酸コポリマー[例えば、商品名EAA455(ダウケミカル社製)等]、アイオノマー[例えば、商品名ハイミラン1555(三井・デュポンポリケミカル社製)等]、ポリフッ化ビニリデン[例えば、商品名Kynar461(エルフ・アトケム社製)等]、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー[例えば、商品名KynarADS(エルフ・アトケム社製)等]などが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、ポリオレフインが好ましく、特にポリエチレンが好適に用いられる。高密度、直鎖状低密度、低密度ポリエチレンの各グレードを用いることができるが、中でも高密度、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。その溶融粘度(MFR)は15.0g /10min 以下、特に8.0g /10min 以下であることが好ましい。その下限に特に制限はないが、通常0.05g/10min程度である。なお、MFRはASTM D1238に従うものである。
【0031】
本発明ではさらに、低分子有機化合物を用いるとよい。通常の有機質正特性サーミスタは、高分子有機マトリックスの膨張により素子が動作(抵抗値が上昇)する。低分子有機化合物を動作物質に用いるときの利点は、一般に高分子に比べ結晶化度が高いため、昇温により抵抗値が増大する際の立ち上がりが急峻になることが挙げられる。また、融点の異なる低分子有機化合物を用いれば、抵抗が増大する温度(動作温度)を簡単に制御できる。さらに、高分子は過冷却状態を取りやすいため、昇温時の動作温度より降温時に抵抗値が復帰する温度の方が低くなるヒステリシスを示すが、低分子有機化合物を用いることでこれを抑えることができる。結晶性高分子の場合、分子量や結晶化度の違い、またコモノマーと共重合することによってその融点は変化し、動作温度を変化させることができるが、その際結晶状態の変化を伴うため十分なPTC特性が得られないことがある。これは特に100℃以下に動作温度を設定するときより顕著になる傾向がある。
【0032】
本発明に用いる低分子有機化合物は、分子量が2000程度まで、好ましくは1000程度まで、さらに好ましくは200〜800の結晶性物質であれば特に制限はないが、常温(25℃程度の温度)で固体であるものが好ましい。
【0033】
本発明では、動作温度が200℃以下、好ましくは100℃以下の有機質正特性サーミスタを得ることを目的としているため、低分子有機化合物は融点40〜200℃、好ましくは40〜100℃であることが望ましい。
【0034】
具体的には、ワックス(具体的には、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスのような天然ワックス等)、油脂(具体的には、脂肪または固体脂と称されるもの)などがある。ワックスや油脂の成分は、炭化水素(具体的には、炭素数22以上のアルカン系の直鎖炭化水素等)、脂肪酸(具体的には、炭素数12以上のアルカン系の直鎖炭化水素の脂肪酸等)、脂肪酸エステル(具体的には、炭素数20以上の飽和脂肪酸とメチルアルコール等の低級アルコールとから得られる飽和脂肪酸のメチルエステル等)、脂肪酸アミド(具体的には、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド等)、脂肪族アミン(具体的には、炭素数16以上の脂肪族第1アミン)、高級アルコール(具体的には、炭素数16以上のn−アルキルアルコール)、塩化パラフィンなどであるが、これら自体を単独で、もしくは併用して低分子有機化合物として用いることができる。低分子有機化合物は、各成分の分散を良好にするために、高分子マトリックスの極性を考慮して適宜選択すればよい。低分子有機化合物としては石油系ワックスが好ましい。
【0035】
これらの低分子有機化合物は、市販されており、市販品をそのまま用いることができる。このようなものとしては、パラフィンワックス(例えば、テトラコサンC24H50;mp49〜52℃、ヘキサトリアコンタンC36H74;mp73℃、商品名HNP−10(日本精蝋社製);mp75℃、HNP−3(日本精蝋社製);mp66℃など)、マイクロクリスタリンワックス(例えば、商品名Hi−Mic−1080(日本精蝋社製);mp83℃、Hi−Mic−1045(日本精蝋社製);mp70℃、Hi−Mic2045(日本精蝋社製);mp64℃、Hi−Mic3090(日本精蝋社製);mp89℃、セラッタ104(日本石油精製社製);mp96℃、155マイクロワックス(日本石油精製社製);mp70℃など)、脂肪酸(例えば、ベヘン酸(日本精化製);mp81℃、ステアリン酸(日本精化製);mp72℃、パルミチン酸(日本精化製);mp64℃など)、脂肪酸エステル(例えば、アラキン酸メチルエステル(東京化成製);mp48℃など)、脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸アミド(日本精化製);mp76℃)などがある。また、ポリエチレンワックス(例えば商品名三井ハイワックス110(三井石油化学工業社製);mp100℃)、ステアリン酸アミド(mp109℃)、ベヘン酸アミド(mp111℃)、N−N’−エチレンビスラウリン酸アミド(mp157℃)、N−N’−ジオレイルアジピン酸アミド(mp119℃)、N−N’−ヘキサメチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド(mp140℃)などもある。また、パラフィンワックスに樹脂類を配合した配合ワックスやこの配合ワックスにマイクロクリスタリンワックスを混合したものであって融点を40〜200℃にしたものも好ましく用いることができる。
【0036】
低分子有機化合物は、動作温度等によって1種あるいは2種以上を選択して用いることができる。各成分の分散性を良好にするため、熱可塑性高分子の極性を考慮して適宜選択するとよい。
【0037】
低分子有機化合物の含有量は、高分子マトリックス(硬化剤等も含む)の合計質量の0.05〜4倍、特に0.1〜2.5倍であることが好ましい。この混合比が小さくなって低分子有機化合物の含有量が少なくなると、抵抗変化率が十分得られにくくなってくる。反対に混合比が大きくなって低分子有機化合物の含有量が多くなると、低分子化合物が溶融する際に素体が大きく変形する他、導電性物質との混合が困難になってくる。
【0038】
複合材料中の導電性物質の含有量は、熱可塑性高分子、低分子有機化合物、導電性物質の合計を100体積%とした時、導電性物質の配合量は25〜50体積%とすることが望ましい。この混合比が小さくなって導電性物質の含有量が少なくなると、非動作時の室温抵抗を十分低くすることができなくなってくる。反対に導電性物質の含有量が多くなると、大きな抵抗変化率が得られにくくなり、また、均一な混合が困難になって安定した特性が得られにくくなってくる。
【0039】
複合材料には、このほか、必要に応じて、酸化防止剤、良熱導電性物質、耐久性や耐電圧、強度を改善するための添加剤、結晶核剤、アーク調節制御剤、金属害防止剤、難燃剤、等の種々の添加剤を含有させてもよい。これらの添加剤は、高分子マトリックス、低分子有機化合物および導電性物質の合計量の25%(質量百分率)以下であることが好ましい。
【0040】
また、電極材料としては、Ni、Cu等の金属が用いられ、金属箔、あるいは導電性ペーストとして用いられる。電極層の厚さは1〜500μm 程度である。
【0041】
本発明の有機質正特性サーミスタは、前にも述べたように、吸油量を減少させる所定の処理を施した金属粉、高分子、必要により低分子有機化合物やその他の添加剤を所定量用い、これらを混練し、シート化し、シートの両面に電極層を形成し、所定形状に打ち抜いて得られる。
【0042】
混練は既知の方法によればよく、用いる高分子(ポリマー)の融点以上の温度、好ましくは5〜40℃高い温度においてミル等で5〜90分程度混練すればよい。また、低分子有機化合物を用いる場合、あらかじめポリマーと低分子有機化合物を溶融混合、または溶媒中で溶解し混合することもできる。各種撹拌機、分散機、ミル、塗料用ロール機等が用いられる。混合中に気泡が混入した場合は真空脱泡を行う。粘度の調製のために、芳香族炭化水素、ケトン類、アルコール類等各種溶媒を用いてもよい。
【0043】
得られた混練物は必要に応じて架橋処理を行ってもよい。具体的には、有機過酸化物を用いる化学架橋、放射線照射による架橋、シラン系カップリング剤をグラフト化させ水の存在下でシラノール基の縮合反応を用いるシラン架橋法を用いることができる。
【0044】
シート化はプレス成形などにより、電極層の形成は、金属箔を用いる場合は熱圧着などにより、導電性ペースト等を用いる場合は塗布などにより形成すればよい。特に、本発明は、前にも述べたとおり、5〜50kgf/cm2(490〜4900kPa)程度で加圧してシート化する工程や、金属箔を用いて熱圧着する工程を含む場合において有効である。
【0045】
本発明の有機質正特性サーミスタは、非動作時における初期抵抗が低く、その室温比抵抗値は10-4〜10-2 Ω・cm程度であり、動作時における抵抗の立ち上がりが急峻であり、非動作時から動作時にかけての抵抗変化率が6桁以上と大きい。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって、具体的に説明する。
実施例1
フィラメント状ニッケルパウダ(INCO社製、商品名Type210ニッケルパウダ、吸油量9.0g/100g、平均粒径0.5〜1.0μm 、見掛け密度0.8g/cm3、比表面積1.5〜2.5m2/g)を120g、直径3mmのジルコニアボールを600g、イオン交換水を150g秤量し、これらを容量500mlのポットに入れ、粉砕条件50rpmで6時間粉砕した。粉砕後乾燥し、導電粉として使用した。導電粉の吸油量は乾燥後にJISK5421の方法で測定した。
【0047】
高分子有機マトリックスとして直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学製、商品名エボリュー2520、MFR=1.7g/10min、融点121℃)、導電粉として上記処理後のフィラメント状ニッケルパウダ、動作物質としてパラフィンワックス(Baker Petrolite社製、商品名Poly Wax655、融点99℃)を体積比で44:28:30の割合で用いた。これらを150℃に設定したミルに投入し、30分混練した。
【0048】
得られた混練物を20μm 厚のNi箔電極ではさみ、熱プレス機にて150℃、20kgf/cm2(1960kPa)の条件で熱圧着し全体を0.35mmとした。得られた電極つきシートの両面を20Mradの電子線を照射して架橋処理をし、これを直径10mmの円盤状に打ち抜いてサーミスタを得た。これをサンプルNo.1とする。
【0049】
サンプルNo.1において、ジルコニアボールを直径6mmのものに変えて、その他は同様にしてサーミスタを得た。これをサンプルNo.2とする。
【0050】
サンプルNo.1において、ジルコニアボールを使用せず、ニッケル粉だけをポットにいれ回転させて得られたものを使用するほかは同様にしてサーミスタを得た。これをサンプルNo.3とする。
【0051】
サンプルNo.1において、フィラメント状ニッケルパウダ(INCO社製、商品名Type210ニッケルパウダ)をシュウ酸の10%(質量百分率)水溶液に24時間浸潰し、イオン交換水で洗浄後、乾燥したものを導電粉とするほかはサンプルNo.1と同様にしてサーミスタを作製した。吸油量は乾燥後に測定した。これをサンプルNo.4とする。
【0052】
サンプルNo.1において、フィラメント状ニッケルパウダ(INCO社製、商品名Type210ニッケルパウダ)をクエン酸10%(質量百分率)水溶液に24時間浸漬した。イオン交換水で洗浄後、乾操したものを導電粉とするほかはサンプルNo.1と同様にしてサーミスタを作製した。吸油量は乾燥後に測定した。これをサンプルNo.5とする。
【0053】
サンプルNo.5において、クエン酸10%(質量百分率)水溶液への浸漬時間を30分に変えて、その他は同様にしてサーミスタを得た。これをサンプルNo.6とする。
【0054】
サンプルNo.1において、フィラメント状ニッケルパウダを処理することなくそのままで用いて、その他は同様にしてサーミスタを得た。これをサンプルNo.7とする。
【0055】
これらのサンプルについて、熱衝撃サイクル試験(サイクル試験は-40℃、80℃の温度に各30分を1サイクルとして200サイクル)を行い、試験前後での抵抗値を調べた。試験前のものを初期値として表1にこれらの結果を示す。吸油量は、処理前の導電粉(すなわち、サンプルNo.7に使用した導電粉)の吸油量を初期のものとし、これを100%とした相対値で表示している。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より、吸油量を減じる処理を施したニッケルパウダを用いると、熱衝撃による抵抗値の上昇が抑えられることがわかる。特に、本発明の好ましい範囲内に吸油量を減じることにより、抵抗値の上昇は小さくなり、かつ初期値も良好なレベルとできることがわかる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、スパイク状の突起を有する金属粉を用いた有機質正特性サーミスタにおいて、初期特性を良好に維持したままで、熱衝撃を繰り返しても、抵抗の上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機質正特性サーミスタの基本構成を示す断面図である。
【図2】本発明に用いるフィラメント状ニッケルパウダ(処理前)の粒子構造を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
2 サーミスタ素体
3 電極
Claims (6)
- カルボニル金属を還元して得られたスパイク状の突起を有する粒子状の金属粉(金属粒子)および/またはカルボニル金属を還元して得られたスパイク状の突起を有する金属粒子が鎖状に連なっているフィラメント状の金属粉を高分子に分散させた複合材料を一対の電極で挟んだ構造を有する有機質正特性サーミスタにおいて、
前記金属粉が、物理的方法および/または化学的方法による処理によって吸油量が処理前の8〜10g/100gからその93%〜70%に減じられていることを特徴とする有機質正特性サーミスタ。 - カルボニル金属を還元してスパイク状の突起を有する粒子状の金属粉(金属粒子)および/またはスパイク状の突起を有する金属粒子が鎖状に連なっているフィラメント状の金属粉を得、これを高分子に分散させて複合材料を得、この複合材料を一対の電極に挟んで得られる有機質正特性サーミスタの製造方法において、
前記金属粉に対し、物理的方法および/または化学的方法によって吸油量を処理前の8〜10g/100gからその93%〜70%に減じる処理を施し、その後、高分子に分散させることを特徴とする有機質正特性サーミスタの製造方法。 - 前記金属粉同士を衝突させる物理的方法により前記金属粉の吸油量を減じる請求項2の有機質正特性サーミスタの製造方法。
- 前記金属粉と媒体とを衝突させる物理的方法により前記金属粉の吸油量を減じる請求項2の有機質正特性サーミスタの製造方法。
- 前記金属粉を化学的に溶解する化学的方法により前記金属粉の吸油量を減じる請求項2〜4のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
- 前記金属粉の吸油量を減じる処理を施し、その後、高分子に分散させ、加圧によりシート化する工程、および/または、前記金属粉の吸油量を減じる処理を施し、その後、高分子に分散させたものを一対の電極で挟んで圧着する工程を有する請求項2〜5のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
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