JP3904184B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、定常的に感光体表面を清浄化に保つ事によって、良好な画像品質を長期に亘って維持しうるファクシミリ、レーザービームプリンター、複写機等の電子写真法を使用した画像形成装置に関する。具体的には、トナー像転写後に感光体上に残留している、或いは付着したトナー、紙粉、コロナ生成物等、次の複写サイクルの画像品質に劣化を与えるような物質(汚染物質)を効果的に除去し、感光体表面を良好な画像品質が得られるように維持できるクリーニング装置を用いた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ファクシミリ、レーザービームプリンタ、複写機などの電子写真法を使用した画像形成装置では、感光体のまわりに帯電、画像露光、現像、転写、分離、清掃、除電等の装置が配設されており、これらの装置が順に感光体に作用することにより画像形成が行われる。感光体にはコロナ帯電装置や接触帯電装置などの帯電装置に直流電圧もしくは交番電圧を重畳した直流電圧が印加され、感光体は画像形成に必要な表面電位(例えば絶対値で400〜1000V)に帯電される。この帯電時に電荷以外に放電生成物としてオゾンや窒素酸化物等のコロナ生成物が発生する。これらのコロナ生成物は放電と時を経ずに感光体表面に付着し、解像度低下や画像流れ等の画像品質低下の要因となる。
【0003】
帯電後のLD光などによる画像露光によって、感光体には画像に対応した静電潜像が形成され、現像剤を作用させることにより顕像(トナー像)化される。トナーの構成物は顔料や樹脂、極性制御剤、シリカ等の潤滑物質等であり、この構成物の一部がクリーニングブレードの押圧やコロナ生成物の作用によって、感光体に固着しトナーフィルミング層を形成する。フィルミングが生じることによって、画像ムラや地肌汚れ、解像度低下、画像流れなどの現象が起こる。
【0004】
トナー像は転写装置により、進入してきた転写材に転写される。転写材としてコピー用紙を用いた場合、そのコピー用紙はセルロース、タルク、シリカ、結着剤等で構成されており、この構成物質がコピー用紙表面に遊離し紙粉の形で少数付着している。この紙粉が感光体に付着する事によって、フィルミングを起こし、前記した現象と同様解像度低下、画像流れ現象を引き起こす要因となる。これらの解像度低下、画像流れ等を起こす要因物質(汚染物質)は付着直後で有れば、実害はなく、比較的容易に除去可能である。通常、感光体に付着した汚染物質は現像装置やクリーニング装置により感光層や汚染物質が削られる事により或る程度除去され、ほぼ実用上問題ないレベルの画像品質が提供される。しかし、感光体が高耐摩耗化された場合や複写速度が速い場合、大量複写などの場合、クリーニングブレードのエッジの摩耗などが進むと、クリーニング装置や現像装置では感光体表面を清浄な状態で維持することが不十分となり、時として前記したような画像品質低下を起こす場合がある。
【0005】
画像品質を良好な状態に維持するためには、感光体上にトナー像の画像品質を劣化させない程度以下に汚染物質付着を抑制するか、大気中の水分の影響を受け付けない様な保護手段を講じる必要がある。コロナ生成物、感光体表面酸化、トナーフィルミング、紙粉付着等が要因として生じる画像流れ(白抜け)を改善する方法には以下に示すような開示例がある。
【0006】
1)感光体を40〜60℃に加熱させ表面抵抗低下を防止し、解像度の低下を抑制する方法、(例えば特開昭63−40181号、特開昭62−296180号、特開昭51−65941号、特開昭60−95467号 等)
2)感光体表面を水拭きし、表面に付着したコロナ生成物を除去し、解像度の劣化を防止する方法(例えば、特開昭60−173570号 等)
3)感光層を活性炭素繊維でクリーニングしコロナ生成物を除去する方法(例えば、USP5264903号、特開平3−92882号 等)
4)極細繊維の不織布でクリーニングしコロナ生成物を除去する方法(例えば、特開平5−150693号、特開平5−134585号 特開平8−248820等)
5)オゾン、NOxによる画像上の白抜け、白筋を回避し、クリーニングブレードの変形を防止し、長期に亘って安定した画像を維持するために、転写装置側から順にトナー、キャリア等を除去するための残留現像剤除去部材、オゾン、NOx等の固着物を除去する為の強制掻き取り部材を配置する(特開平9−230767)。
6)帯電ローラーを使用した画像形成装置で起こる異常画像(帯電不良による地汚れ、白筋、黒筋など)を回避するために、転写装置側から順に第1のブレードクリーニング手段、第1のブレードとは電気抵抗が低目で電圧を印加可能とした第2のブレードクリーニング手段を配置する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記したように、感光体表面にコロナ生成物、トナー構成物、紙粉などからなる汚染物質が付着することによって、感光体表面抵抗が低下し、解像度低下、画像流れ等を引き起こす。また、感光体に付着した汚染物質によりブレードのエッジが破損し、クリーニング不良、黒筋、クリーニングブレードの耐久性低下、感光体に於いては電子写真特性の劣化、スクラッチ、偏摩耗などの機械的耐久性低下を引き起こす。さらに感光体に付着したこれらの異物が帯電ローラーに再付着し、局部的に帯電不良を生じ、黒筋や画像ムラを生じる。したがって、電子写真法を使用した画像形成装置では感光体を常に清浄な状態に保持するためのクリーニング手段が特に重要となる。クリーニング゛手段或いは画像流れ等を改善する手段に関しては、開示例にも見られるように多くの解決手段が提案されているが、システム条件によっても効果の違いがあり、根本的な解決には到っていないというのが現状である。
【0008】
本発明は、良好な画像品質を長期に亘って提供し続ける為には、感光体表面を常に清浄な状態に維持していく以外に方法はないとの見地から、これらの異常画像の発生要因である感光体に付着した汚染物質を複写サイクル毎に確実に除去し、感光体の表面状態を常に清浄な状態に維持することによって、画像品質を長期に亘って、良好な状態に維持すると共に、クリーニングブレードの劣化破損を少なくし、また汚染物質の付着、クリーニングブレードの破損による感光体の耐久性低下、帯電部材の汚染抑制、摺擦音等を抑制する事で、画像品質、感光体、ブレード、帯電部材等に関して総合的信頼性を高めることのできる画像形成装置提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、帯電装置を用いて感光体に帯電を行い、画像露光によって静電潜像を形成し、現像剤によって静電潜像を現像してトナー像化した後、転写装置により感光体上のトナー像を転写材に転写し、クリーニング装置により、トナー像転写後の感光体上の残留トナーを除去する画像形成装置において、前記クリーニング装置が、感光体に当接する少なくとも第1のクリーニングブレードと第2のクリーニングブレードを有し、第1のクリーニングブレードは第2のクリーニングブレードよりも感光体表面移動方向上流側の感光体面部分に当接するように第1及び第2のクリーニングブレードをそれぞれ配設し、該第1のクリーニングブレードと第2のクリーニングブレードは、常時感光体に当接していると共に、第1のクリーニングブレードは体積抵抗率が100乃至1011Ω・cmの弾性部材で構成され、かつ当該第1のクリーニングブレードは、接地されるか、又は直流電圧、交流電圧もしくは交流電圧を重畳した直流電圧を印加され、前記クリーニング装置は、さらに感光体表面の移動方向に関し、第1のクリーニングブレードの感光体に対する当接位置よりも下流側であって、第2のクリーニングブレードの感光体に対する当接位置よりも上流側の感光体面部分に当接するクリーニングブラシを有し、該クリーニングブラシは、感光体の回転方向と反対の方向に回転することを特徴とする画像形成装置を提案する(請求項1)。
【0010】
その際、第1のクリーニングブレードの体積抵抗率が10 0 乃至10 10 Ω・cmであると有利である(請求項2)。
【0011】
また、上記請求項1に記載の画像形成装置において、第1のクリーニングブレードの体積抵抗率が10 0 乃至10 8 Ω・cmであると有利である(請求項3)。
【0013】
また、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置において、第1のクリーニングブレードの感光体に対する当接圧を、第2のクリーニングブレードの感光体に対する当接圧よりも低く設定すると有利である(請求項4)。
【0014】
さらに、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、感光層上に無機微粒子を分散した2乃至8μmの膜厚の被覆層を有する感光体を用いると有利である(請求項5)。
また、上記請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置において、感光体面に外添法により潤滑剤を付与する事により潤滑性を与え、感光体表面の静止摩擦係数を0.5以下で0.1以上の範囲とすると有利である(請求項6)。
【0015】
【発明の実施の形態】
本例の画像形成装置は、画像品質を左右する感光体上に付着した各種汚染物質を確実に排除する為に、クリーニングブレードを2本配設し、もしくは更に両クリーニングブレード間にクリーニングブラシを配設したクリーニング装置が転写装置と帯電装置間に配設されている。転写装置側のクリーニングブレードを第1のクリーニングブレード、帯電装置側のクリーニングブレードを第2のクリーニングブレードとする。第1のクリーニングブレードは、電圧印加可能な弾性部材、例えばゴム材で構成されている。第1のクリーニングブレードを電圧印加可能に構成するには、これを導電性又は半導電性とすればよく、例えば、その体積抵抗率を100乃至1011Ω・cm、好ましくは100乃至1010Ω・cm、特に好ましくは100乃至108Ω・cmに設定する。かかるクリーニングブレードは、硬度50〜80度、厚み1.5〜4mm程度の耐熱性、耐オゾン性、耐摩耗性、無公害性等の諸特性に優れた弾性部材(ゴム系が好ましい)のブレードとすることが好ましい。クリーニングブレードの導電性はカーボン粉末、カーボンとアルカリ金属塩等の材料を添加することで行うことができる。ゴム材はウレタンゴムを最適とするが、BSR、CR、シリコーンゴム等も使用することもが出来る。
【0016】
第1のクリーニングブレードを導電性又は半導電性(中抵抗体)とするのはクリーニングブレードに電圧を印加して使用することも可能とし、電圧印加により感光体に付着した紙粉、トナー等を除去し易くするためである。電圧を印加する場合、使用条件に応じ、直流電圧、交流電圧、交流電圧を重畳した直流電圧のいずれかを選択する事が可能であり、またクリーニングブレードを接地(0V)することもできる(図1、図2参照)。
【0017】
クリーニングブレードを接地し、又はこれに電圧を印加しながらクリーニングする理由は、トナーや紙粉等、感光体上に残留物を静電的に除去するためである。トナーや紙粉がクリーニング不良により感光体上に残留すると、繰り返し使用時に生じる熱や圧力などにより、感光体面に次第に固着しフィルミングに成り易い。すなわち、転写装置を通過した後のトナーや紙粉が感光体に静電的、物理的に付着しているため、従来のブレードクリーニング方式の様に1体のクリーニングブレードで長期に亘って使用するような場合や、耐摩耗性を著しく向上させた感光体や、複写スピードが速い機種などではブレードエッジの摩耗した場合等で、トナー抜けが生じ、急速にフィルミングに因る汚染が広がり、画像品質に影響を及ぼす。このクリーニング不良はブレードクリーニングを2体にする事で、クリーニング効率向上させることが出来るが、クリーニングブレード2体の取り付け位置には注意が必要で、これらのクリーニングブレードが感光体に当接する位置が接近しすぎていると、第2のクリーニングブレードで堰き止められたトナーが除去されず、感光体にフィルミングを生じたり、黒帯やクリーニング不良など、逆に悪影響を及ぼす危険性がある。従って、このような不具合が発生しないように、第1及び第2のクリーニングブレードが感光体に当接する位置を設定することが好ましい。
【0018】
クリーニングブレードに電圧を印加する事により、静電的にトナー、紙粉等を感光体より浮かせたり、吸引させ、感光体上のトナー、紙粉等の残留物は除去される。ただ、転写残トナーや紙粉は一様な極性や電荷を保持している訳ではなく、プラスであったり、マイナス或いは殆ど0Vということもあり得る。したがって、第1のクリーニングブレードに印加する電圧の極性、或いはその値(0Vも含む)などの電圧条件はシステム条件によって変える必要がある。感光体上のトナーなどを静電的に引き付けることのできる極性の電圧を第1のクリーニングブレードに印加し、或いはその第1のクリーニングブレードを接地する。
【0019】
クリーニングブレードのエッジが摩耗してくると、感光体に対するクリーニング性能は低下し、感光体が汚染されやすくなる為、可能な限り、第1のクリーニングブレードで汚染物質を取り除き、残留した汚染物質や除去されにくいコロナ生成物を第2のクリーニングブレード、さらにはクリーニングブラシで除去することによって、感光体を常に清浄な状態に維持することが好ましい。
【0020】
第1のクリーニングブレードの感光体に対する当接圧は第2のクリーニングブレードの感光体に対する当接圧よりも低く設定するのが望ましい。例えば、第2のクリーニングブレードの当接圧を60〜80mN/cmとすれば、第1のクリーニングブレードの当接圧は60mN/cm以下に設定する。これはトナー、紙粉が多いと、感光体が傷付き易く成るためであり、第1のクリーニングブレードを接地し又はこれに電圧を印加する事により、第1のクリーニングブレードの感光体に対する当接圧を低く設定することが可能となる。第1のクリーニングブレードを抜け出たトナー等は第2のクリーニングブレードや、クリーニングブラシで補完する事が出来る。ただし、第1のクリーニングブレードに電圧が印加されていても、必要以上に第1のクリーニングブレードの当接圧を軽くすると、クリーニング不良が生じるので、少なくとも40mN/cmより高くすることが望ましい。第1のクリーニングブレードで残留トナーの大部分が除去する事によって、第2のクリーニングブレードの感光体に対する当接圧は軽くすることが出来、この事によりクリーニングブレードのみならず、感光体の耐久性が低くなるのを抑止出来る。第1のクリーニングブレードに印加する電圧は、例えば絶対値で直流電圧200〜800V程度、交流電圧200〜1500V、周波数は正弦波で100〜2000Hzの間に設定すればよい。
【0021】
クリーニングブレードの感光体への当接方法は、第1のクリーニングブレードはトレーリング方式でもカウンター方式でも良いが、感光体への負荷や省スペース等を勘案すると、第1のクリーニングブレードはトレーリング方式とし、第2のクリーニングブレードはクリーニング性能からカウンター方式とすることが好ましい。
【0022】
クリーニングブラシはクリーニングブレードでは取れにくい極めて微細なコロナ生成物や、コロナ生成物による感光体上の酸化物や樹脂との反応物を掘り起こし除去するためのもので、感光体をより一層清浄化するのに有効な手段である。但し、クリーニングブラシは10〜20cpm程度の複写スピードの装置でも十分に有効性が有するが、汚染物質の蓄積性も高くなり、クリーニング部材などの消耗も高い複写スピード40cpm以上の装置では、特に有効性が高くなる。cpmは、1分当りのコピー枚数を示す。
【0023】
上述の如きクリーニング装置を使用することで、感光体上の画像品質を低減化させる汚染物質が殆ど排除可能となり、長期的に亘って良好な画像品質を提供出来る。このクリーニング装置は有機感光体に限らず、a−Si感光体、Se系感光体等、またオーバーコートのいかなる感光体にも適用可能である。ただし、感光体の物理特性や、機械特性などによっては効果に相違を生じる場合があり、本発明は有機感光体を使用した場合に有効性が高い。有機感光体はセレンやアモルファスシリコンなどの感光材料に比べて安価に製造でき、製造が容易、無公害、高感度が得られやすい等のメリットが有り、現在流通している感光体の殆どは有機感光体である。ただ、有機感光体は樹脂製であるため、感光層が柔らかく、機械的耐久性(耐摩耗性)が低いため、2段のクリーニングブレード方式を使用した場合、設定条件によっては耐摩耗性が不利になり、感光体寿命が短くなる可能性がある。したがって、有機感光体を使用する場合、感光体上に更に耐摩耗性のある被覆層を形成するのが望ましい。被覆層としての好適な方法としては、感光層上に感光層と同じバインダー樹脂(例えばポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等)に正孔移動性を向上させるためのドナー、更に必要に応じて、酸化防止剤もしくは可塑剤を添加し、さらに耐摩耗性を向上させるために酸化チタンもしくはアルミナの無機微粒子を25〜40%程度添加させた樹脂を作製し、浸漬塗工法、スプレー塗工法などを用いて、2〜8μmの被覆層を形成する。被覆層の特性例としては、電気抵抗1012〜1014Ω・cm、650〜780nmの赤外領域の透過率90%以上等である。このように、無機微粒子を酸化チタンかアルミナとする事により、電気的にも、画像品質的にもで良好な電子写真特性が維持される。また、感光体上に付着した異物が被覆層が無い状態よりも除去し易い。したがって、帯電能が高く、感度低下も少なく、良好な画像品質が提供される。このように、感光層上に無機微粒子を分散した2乃至8μmの膜厚の被覆層を有する感光体を用いることが好ましく、その際、感光体の被覆層を構成する無機微粒子が酸化チタンモしくはアルミナのいずれかであることが有利である。
【0024】
以上の構成でも感光体の耐久性は従来に比して大きく向上し、十分な特性を長期にわたって保持させることが出来るが、更に向上を望む場合には、感光体表面に潤滑剤を適当量、外添して潤滑性を与えることが望ましい。潤滑剤を感光層中に内添する方法もあるが、耐久性がない上、添加量が限られるため、実用的では無い。潤滑剤はクリーニングブレードや現像剤と感光体間の摩擦抵抗を緩和するため、感光層の摩耗が抑えられる。感光層に潤滑剤の島状薄膜が拡張していくと、次第にキャリアによる食い込みも少なくなり、トナーや、紙粉、コロナ生成物に起因して起こる、フィルミングを減少させる。
【0025】
使用可能な潤滑剤はフッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、ステアリン酸亜鉛などであり、潤滑剤添加後の摩擦係数が低いほど感光層の摩耗が抑止され機械的な高耐久化が実現できる。但し、余り摩擦係数が低下すると、感光体に付着した紙粉やコロナ生成物が削れない為に、画像流れを起こしやすくなる傾向があり、感光体表面の摩擦係数を0.1よりも低くすることは好ましくない。摩擦係数の好ましい範囲は0.1以上で0.5以下であり、特に好ましくは0.2以上で0.4以下である。ただし、感光体の表面状態(均一性)により左右されるので、摩擦係数だけでは十分に対応はとれないが、上記範囲に入って居り、摩擦係数が低い値を取れば感光体の耐久性は確実に向上させる事が出来る。なお、潤滑剤を外添しない場合の感光体表面の摩擦係数は0.6〜0.63程度である。摩擦係数が上記範囲に成るように設定することで、感光体の耐久枚数は20万枚〜40万枚あるいはそれ以上の耐久性が実現可能である。摩擦係数はいずれもオイラーベルト方式を使用した場合の数値であり、これについては後述する。潤滑剤を添加した場合の他のメリットは、流動剤としてトナー中に添加されるシリカの感光体への刺さりに起因するフィルミング現象が緩大幅に和され、外観特性ひいては画像品質の劣化を最小限にくい止める効果が認められる。
【0026】
以下、画像形成装置をより具体的に説明する。
1)複写プロセス
画像形成装置の概略を図1に示す。ここに示した画像形成装置は、時計方向に回転する感光体1を、図示した如き帯電ローラー、或いは図示していない帯電ブラシ、又はコロナ放電装置などのいずれかの帯電装置2を用いて、画像形成に必要な表面電位、例えば−400〜−1000Vに帯電する。次いでデジタル式の画像形成装置ではCCD(電荷結合素子)で読みとられた、或いは送信された電気信号を630〜820nmもしくはそれ以下の波長のLD或いはLED素子による光をポリゴンミラー、シリンドリカルレンズ及びドット径を80〜30μmに絞る為の凸レンズを使用した露光装置3により、ドットパターンの形で感光体上に画像露光を行い静電潜像を形成する。この様にして得られた静電潜像は、1成分もしくは2成分の現像剤を使用する現像装置4を用いて顕像化、すなわちトナー像化され、そのトナー像は、図示した如きローラー、又は図示していないベルト状、或いはコロナ放電法等のいずれかの転写装置5により、転写材の一例であるコピー用紙(普通紙)9に転写(95〜99%の転写効率)され、分離装置によってコピー用紙が感光体から分離される。このコピー用紙9は定着装置8に搬送され、ここで転写されたトナー像が定着され、ハードコピーとなる。転写後の感光体には現像剤(殆どトナー)が残留しているため、クリーニング装置6で清掃される。
【0027】
上述のように、図1に示した画像形成装置は、帯電装置を用いて感光体に帯電を行い、画像露光によって静電潜像を形成し、現像剤によって静電潜像を現像してトナー像化した後、転写装置により感光体上のトナー像を転写材に転写し、クリーニング装置により、トナー像転写後の感光体上の残留トナーを除去するように構成されている。
【0028】
ここで、クリーニング装置6は、感光体1に当接する少なくとも第1のクリーニングブレード10と第2のクリーニングブレード11とを有し、第1のクリーニングブレード10は第2のクリーニングブレード11よりも感光体表面移動方向上流側の感光体面部分に当接するように第1及び第2のクリーニングブレードがそれぞれ配設され、第1のクリーニングブレード10は、前述のように電圧印加可能な弾性部材で構成されている。第1のクリーニングブレード10と第2のクリーニングブレード11は、常時感光体1に当接している。また、このクリーニング装置6は、感光体表面の移動方向に関し、第1のクリーニングブレード10の感光体に対する当接位置よりも下流側であって、第2のクリーニングブレード11の感光体に対する当接位置よりも上流側の感光体面部分に当接するクリーニングブラシ12を有している。このクリーニングブラシ12は、図1における反時計方向に回転し、感光体1の回転方向と反対の方向に回転する。クリーニングブラシ12は必要に応じて設けられるものであり、図2に示すクリーニング装置6のように、クリーニングブラシを廃止することもできる。図2に示した画像形成装置は、そのクリーニング装置6がクリーニングブラシを有していない点を除き、図1に示した画像形成装置と変りはない。
【0029】
転写・分離装置に近い方の第1のクリーニングブレード10は、その設置法がカウンターもしくは図示する如くトレーリング方式で、材質は弾力性を有し、電圧が印加する事が可能な、例えば導電性ブレードであり、帯電装置に近い方の第2のクリーニングブレード11は、カウンター方式で設置される弾力性を有する絶縁材のクリーニングブレードで構成する。クリーニング後の感光体は長波長光のLED素子から成る除電装置7(除電光は必ず必要というわけではない)により、感光層内部の残留した静電潜像が消去され次の複写サイクルに入る。
【0030】
上述のように、感光体のまわりには、その表面の移動方向に沿って、順に帯電装置、画像露光、現像装置、転写装置及び2本のクリーニングブレードを配設し、もしくはさらに、クリーニングブラシを配設し、第1のクリーニングブレードに電圧を印加可能としてクリーニング装置が配置されている。このように、2体のクリーニングブレード、もしくは更にクリーニングブラシを組み込んだクリーニング装置を画像形成装置に配設する事により、オゾン臭が無く、画像品質的には良好な状態を長期に亘って提供することが可能であり、一方では画像形成時の感光体が汚染物質から開放されることにより、感光体及び、帯電部材の汚染が小さくなり、両部材の耐久性を長らめることが出来る。クリーニング装置は単独でも、プロセスカートリッジに組み込むことも可能である。
【0031】
なお、図1は単色の現像剤による複写プロセスを示しているが、1本の感光体を使用するカラー方式の画像形成装置でも、4本の感光体を使用するタンデム方式の画像形成装置でも基本的には図1に示す複写プロセスが使用される。また、転写材として、ベルト状又はドラム状の中間転写体を用い、その中間転写体に感光体上のトナー像を一次転写し、次いでそのトナー像を最終転写材、例えばコピー用紙に二次転写し、そのトナー像を最終転写材上に定着するように構成することもできる。さらに、感光体として、図示したようにドラム状の感光体を用いるほか、複数のローラに巻き掛けられて駆動される無端ベルト状の感光体を用いることもできる。
【0032】
2)感光体
上述した画像形成装置に使用される感光体は基本的としては、Se系、a−Si系等の無機系感光体及び有機系感光体のいずれも使用可能である。ただし、感光体によって現象の現れ方に相違が有り、適当に摩耗することも必要であることから、有機系感光体に好適に使用できる。以下、有機感光体について詳細に説明する。
【0033】
有機感光体は近年感光体の主流として数多く使用されており、帯電能が高く、高感度設計が可能、安価で、スプレー方式やディッピング方式で容易に作製可能、無公害である等のメリットを有する。その反面、樹脂製のため硬度が低く、脆いため、耐久性が短いという問題点がある。ただし、この耐久性に関しては、複写システムや、感光体構成の適正化により改善可能である。具体的な感光体構成は図3に拡大して示すように、導電性支持体1a上に順に下引き層1b、電荷発生層1c、電荷輸送層1d及び被覆層1fを積層した感光体である。この例では、帯電極性はマイナスである。図4は別の構成の感光体で電荷発生層と電荷輸送層が一体型になった感光体で、動作極性は主としてプラス帯電である。以下、図3の感光体構成で説明する。
【0034】
▲1▼導電性支持体
導電性支持体の素材は超仕上げ、鏡面仕上げ等の加工を施したアルミニウムが一般的に使用されるが、電気、機械、化学的などの各特性を満足するもので有れば良く、ステンレススティール、銅、真鍮などの金属の他、圧縮紙や樹脂或いはガラスに、金やアルミ、白金、クロム等を蒸着或いはスパッタリングした導電層、さらにはカーボン、錫等の微粒子を分散した導電層を塗工したものであっても良い。電気抵抗は体積固有抵抗で、106Ω・cmオーダー以下の値で有れば問題はない。形状は例えばドラム状で、肉厚は直径や材質にも因るが、アルミニウムを使用する場合、0.5〜3mm程度のものが使用される。24〜80mmφの感光体であれば0.8〜1.5mm程度の肉厚の導電性支持体が使用される。
【0035】
▲2▼下引き層
下引き層は、導電性支持体からの電荷注入阻止による帯電特性の維持、デジタル変換された画像露光の感光層内で乱反射による潜像乱れ阻止を行うため、及び導電性支持体、電荷発生層の両層の塗工性、接着性等を良好にするために形成される。下引き層はアルミナ蒸着膜、分散系の場合にはTiO2やSnO2などの金属酸化物をアルキッド樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、ポリビニールアルコール、カゼイン等に分散し、導電性支持体上に、浸漬法、スプレー法、リングコート法等を用いて1〜10μmの厚さに塗布する。好適には4μm〜8μm程度である。下引き層が厚すぎると繰り返し残留電位の増加を起こしやすく、薄い場合にはSN比が悪化し、長時間使用によりノイズ(黒ポチや、地肌汚れ等)の増加を招く。通常は109〜1012Ω・cm程度の体積抵抗の下引き層を3〜8μmの膜厚で均一に形成する事で、良好な電子写真特性が維持できる。
【0036】
▲3▼電荷発生層
電荷発生層は電荷発生材をバインダー樹脂に分散したものである。有機感光体の場合、電荷発生材としては金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系、カルバゾール、トリフェニールアミン、フルオレノン、オキサジアゾール等の骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントアンスロンなどのキノン顔料、ペリレン顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料等を単独もしくは2種以上混合して使用できる。また、必要に応じて低分子輸送物質を添加しても良い。バインダー樹脂としてはポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂などが使用できる。また、正孔輸送物質として、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン等が単独もしくは2種以上混合して使用される。これらの電荷発生材とバインダー樹脂をテトラヒドラフラン、トルエン、シクロヘキサノン、ジクロールエタンなどを分散液として、ボールミル、サンドミル、振動ミルなどで均一に分散し、スプレー塗工法、浸漬法等を用いて、下引き層上に0.05〜5μm、好ましくは0.2〜1μmの厚さで塗工する。必要以上に厚くすると、空間電荷の増大を招き、光減衰特性、残留電位等に影響が生じる。
【0037】
▲4▼電荷輸送層
電荷輸送層は電荷輸送材をバインダー樹脂中に分散したものである。低分子輸送材にはオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065,同52−139066号報に記載)、イミダール誘導体、トリフェニールアミン誘導体(特願平1−77839号報に記載)、α−フェニールスチルベン誘導体(特開昭57−73075号報に記載)、トニフェニールメタン誘導体(特公昭51−10983号報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号報に記載)などを使用することが出来る。バインダー樹脂としてはポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールCタイプ、ビスフェノールZタイプ或いはこれらの共重合体)、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂等単独もしくは2種以上混合して用いることが出来る。
【0038】
また、耐環境性を改善するために、感度低下、残留電位上昇を抑制するために酸化防止剤を添加することが出来る。酸化防止剤としては、例えば、
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどのモノフェノール系化合物
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)などのビスフェニール系化合物、
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニール)プロピオネート]メタンなどの高分子フェノール系化合物
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類
等がある。
【0039】
電荷輸送層の膜厚は均質な5〜30μmの範囲に設定することが望ましい。10〜25μm程度に設定すれば、600〜1200dpiもしくはそれ以上の高解像性を有する静電潜像の形成に有利である。コピー像の解像度はトナー、キャリアの粒径、現像方式、原稿像のドット系、転写条件、電荷輸送層の表面抵抗、バルク抵抗等によっても影響を受けるため、静電潜像での解像度は出来るだけ高いレベルに設定しておくことが望ましい。感光体における静電潜像の解像度は感光層が厚くなるにしたがい、光及び電荷の拡散が生じるため、解像度は膜厚の増加と共に次第に低下する傾向が見られる。したがって、電荷輸送層の膜厚は薄い方が解像度の点では有利となるが、薄くなるに従い、感光層は分散層であるが故に、電気抵抗の不均一性が目立つようになり、長期的にはSN比の低下や電気的耐久性が低下し、機械的な耐久性を待たずにダウンする等の問題が生じる。さらに、電荷輸送層を薄くする事によって、画像形成に必要なコントラスト電位を稼げなくなり、コントラスト、階調性の低い画像となる。
【0040】
▲5▼被覆層
被覆層は感光体の機械的、電気的な耐久性を図るために感光層上に形成するもので、高硬度の非晶質炭素膜や、非晶質シリコン膜、高抵抗の酸化錫膜などの薄膜を1〜5μm程度、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等で形成する方法、0.05〜5μm程度の微粒子をバインダー樹脂中に分散し、感光層上に薄膜塗装する方法などがある。無機微粒子をバインダー樹脂中に適当量分散することによって、感光体の耐久性を図ることができる。無機微粒子としては酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、窒化珪素等があり、特にはアルミナ、酸化チタンの順で環境安定性が良好であり、好適な無機微粒子として使用することが出来る。これらの無機微粒子にはシランカップリング材、フッ素系シランカップリング剤を使用して撥水処理する事も可能である。無機微粒子はバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等に分散して使用することが出来るが、好ましくは極性依存性が無い、透明性の良い1016〜1017Ω・cm程度に高抵抗のポリカーボネート樹脂が好適である。
【0041】
バインダー樹脂中に無機微粒子を分散する際に、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂微粒子を適当量分散することによって撥水性、潤滑性を高め、環境特性、耐摩耗特性を改善させる事も可能である。無機微粒子の分散量はバインダー樹脂に対し25〜40重量%程度添加するのが好ましく、添加量が多くなると、耐摩耗性は増大するが、反面、光透過率の低下や拡散、電荷の移動度低下などが生じ、解像度低下、残留電位上昇、感度低下等を生じやすくなる。さらに、表面に付着したコロナ生成物やトナー成分によるフィルミングなど画像形成に対して障害となる汚染物質が、摩耗されにくくなり、解像度低下を起こす要因に成ることもある。一方、無機微粒子の添加量が少ない場合には、摩擦係数が高くなり、機械的耐久性が維持できず、現像剤に因るトナーフィルミング、シリカなどの付着(突き刺さり)などが起こりやすく、白点や、ムラが発生する事がある。したがって、被覆層の膜厚は要求される耐久性によっても左右されるが2〜8μmの範囲、好ましくは3〜6μm程度に設定するのが望ましい。
【0042】
被覆層には無機微粒子が分散されているため、偏りや粒径の分散不良等が有ると、解像度、残留電位、機械的耐久性等に影響を与える。したがって、被覆層中の無機微粒子は層中にほぼ均一に分散されていることが望ましい。感光層(=電荷発生層+電荷輸送層)と被覆層を合わせた感光層の総膜厚は15〜30μmの範囲内で設定されるのが望ましい。
【0043】
3)帯電方法及び装置
感光体に静電潜像を形成するに先立つ帯電、およびトナー像をコピー用紙に転写する際の帯電方法はコロナ放電法や帯電ローラー、ブラシ等の帯電部材を使用する接触或いは非接触帯電法等で行われる。コロナ放電法は金属ケース内に帳架された40〜80μmのタングステンワイヤー、或いは鋸歯状のSUS板に絶対値で4000〜8000Vの高電圧を印加する方式のもので、高電圧を印加するため、必然的にオゾン、窒素酸化物などのコロナ生成物が低電圧駆動の接触帯電法に比べ多くなり、環境上問題が生じる。コロナ放電法(主にはスコロトロン帯電器)は非接触であるため感光体を傷付けない、感光体と10cm程度離して作動させるため均一帯電させ易い、生成したコロナ生成物が感光体に向かって飛翔する間に吸引する工程を設けることが出来るなどにより、接触帯電法より感光体に与えるコロナ生成物の化学的影響を少なくするも可能である。しかし、オゾン、窒素酸化物は多量に発生し、環境上問題が多い。
【0044】
一方、接触帯電法、及び50〜250μm程度離して設置した帯電部材から帯電する非接触帯電法では、帯電部材に直流電圧もしくは正弦波の交流電圧(絶対値で1000V〜2000V、500Hz〜2.5KHz)を直流電圧に重畳して印加し、表面電位を絶対値で400〜800V程度成るように帯電されるが、印加電圧が低いためオゾンや窒素酸化物等のコロナ生成物はコロナ放電法の1/100以下と極めて少ないため、排気処理装置も簡単でよく、したがって環境上問題は殆ど無い。しかしながら、生成量が微少であっても、感光体に対するコロナ生成物の感光体に対する影響は大きく、解像度低下、画像流れ、ハーフトーン画像の濃度むら等画像品質上大きな問題を呈する。帯電部材を感光体から僅かに隔離して帯電する方法のメリットは帯電部材が汚れても、感光体が受けるダメージが緩和されるという点で有利となる。
【0045】
このコロナ生成物は感光体上に極めて薄く付着しているため、クリーニングブレードで除去するのは容易でなく、感光体の耐摩耗性が大きい感光体ほど簡単に除去できない。したがって、感光体表面を清浄化するためのクリーニング方式は極めて重要である。本発明で使用する帯電方式は上記したどの方式でも使用可能であるが、環境特性から接触もしくは極近接して帯電を行う非接触帯電方式が好ましい。このように、感光体に帯電を行う手段として、接触帯電装置もしくは50〜250μm程度感光体から隔離して配設し帯電を行う非接触帯電部材を使用することによって、従来に比して、省電力、電源装置の小型化が図られ、オゾンの生成も極少等で、環境的にも好ましい。非接触帯電部材を使用する場合には感光体に付着する埃なども付着しにくいため、帯電部材の耐久性を更に長くすることが出来る。感光体に接触もしくは極近接配置された導電性部材から成る帯電装置で感光体に画像形成に必要な電荷を付与し、画像形成を行う。例えば、図1に示すように芯金のまわりに、例えば105乃至108Ω・cmの体積抵抗率を有する弾性層を有する帯電ローラより成る帯電装置2を用いるのである。
【0046】
4)クリーニング装置
クリーニング装置はトナーのみならず、コロナ生成物、紙粉、フィルミング等の画像形成上問題となる汚染物質を可能な限り排除する装置である。図1に示したクリーニング装置6は第1及び第2の2体のクリーニングブレード10,11と、クリーニングブラシ12を使用したもので、図2に示すクリーニング装置6はクリーニングブラシを使用しないものであり、転写・分離装置に近い第1のクリーニングブレードの材質はウレタンゴムを好適とするが、BSR、CR、シリコーンゴム等も使用できる。これらのゴム材にはカーボン粉末、カーボンとアルカリ金属塩などの材料を添加し、体積抵抗率を100〜108Ω・cm、硬度を50〜80度と成した物である。ブレードの厚みは1.5〜4mm程度で使用でき、通常は2mm前後である。第1のクリーニングブレード10の設置は感光体1に対しカウンターもしくはトレーリング方式のいずれでも良いが好ましくはトレーリング法で設置し、第2のクリーニングブレード11より当接圧を低く設定する。例えば第2のクリーニングブレードの当接圧を60〜80mN/cmとすれば、第1のクリーニングブレードの当接圧は60mN/cm以下に設定する。これはトナー、紙粉が多いと、感光体が傷付き易く成るためであり、電圧を印加する事により、低く設定することが可能となり、抜け出たトナー等は第2のクリーニングブレードや、クリーニングブラシで補完する事が出来る。クリーニング装置のクリーニング性能が高くなると、帯電ローラーの汚染もなくなり、帯電性が安定し画像品質を高く維持できる。第1のクリーニングブレード10への電圧印加又は当該ブレード10の接地により感光体に付着した紙粉、トナー等を除去し易くする。使用条件に応じ、図1及び図2に示すように、接地、直流電圧、交流電圧、交流電圧を重畳した直流電圧のいずれかを選択する事が出来る。図1及び図2における符号14は直流電源を、符号13は交流電源を示している。第1のクリーニングブレード10に印加する電圧は直流電圧200〜800V程度、交流電圧200〜1000V、周波数は正弦波で50〜2000Hz程度である。
【0047】
帯電装置側に取り付けた第2のクリーニングブレード11はウレタンゴムをカウンターに設置することで、第1のクリーニングブレード10を抜け出たトナー紙粉、及びコロナ生成物を十分に排除する。第1のクリーニングブレード10が十分に働いていれば、第2のクリーニングブレード11の当接圧は1体使用のクリーニング装置に比べれば軽くすることが可能になるため、ブレードの耐久性を長らめる事が出来る。
【0048】
第1及び第2のクリーニングブレード間に設置されるクリーニングブラシの材質は、例えば、繊維太さ15〜20デニールのポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどの繊維を樹脂ローラーに密度2000〜3500本/inch2程度に植毛し、ブラシ状ローラーに加工して使用する。
【0049】
クリーニングブラシを設置する理由は特に高速複写機やコロナ生成物の生成が多い場合などに有効となる。すなわち、高速の複写機では高耐久の感光体が使用される場合が多く、紙粉やコロナ生成物等の汚染物質は複写スピード、枚数に応じて増加する。したがって、2体のクリーニングブレードでは不足する場合も生じる。クリーニングブラシは感光体に付着した汚染物質をブラシ先端部で削り取る様にクリーニングする為、ブレード単独の場合より、クリーニング性は確実に向上する。勿論、本方式は20〜40枚程度の複写スピードの画像形成装置にも十分使用可能である。これらの一連のクリーニング装置を使用することで、感光体上の画像品質を低減化させる汚染物質が殆ど排除可能となり、長期的に亘って良好な画像品質を提供出来る。
【0050】
5)潤滑剤の外添方法
感光体上に潤滑剤を供給する理由は前記したように、感光体外観劣化、例えばトナーフィルミング、シリカなどの現像剤添加成分の感光体への突き刺さり等の影響を回避することであるが、前記現象を抑制することにより、潤滑剤が感光体に作用し易くなり、感光体の摩擦係数の低減化に寄与する。潤滑剤を感光体に供給する方法には粉末状もしくはブロック状の潤滑剤を感光体に直接もしくは間接的に供給する方法がある。例えば、現像剤中に粉末状のステアリン酸亜鉛やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、ポリフッカビニリデン等をトナーに対し0.01〜0.5%の割合で入れる。余り入れすぎると、感光体の摩擦係数が低下し過ぎたり、トナーの物理特性(例えばQ/M)が暴れ、コントロールが効かなくなり、トナーが過剰供給になる可能性がある。通常はトナーに対し、0.01〜0.3%の間で添加するのが望ましい。潤滑剤の添加量はトナーによるフィルミングや外観不良が抑制出来る程度の量で十分である。因みにこの程度の添加量は潤滑剤を単独に使用した場合(表面性調整部材を併用使用しない場合)、0.6の摩擦係数を0.45〜0.55程度に下げる程度の量でしかない。したがって、感光層の摩耗抑制には殆ど効果がない。固形状の潤滑剤を供給する方法は摩耗させる部材、例えば、専用のブラシやクリーニングブラシ(ファーブラシ)を兼用する方法等がある。この方法はブロック状の潤滑剤をブラシで摩耗させながら感光体に供給する。ブラシに潤滑剤を軽く当接することによって、供給量をコントロールする。さらに別の供給方法としては50〜200μm程度のフィルム状の潤滑剤を感光体に当接して供給する方法がある。この方式は感光体に当接する潤滑剤の押圧をコントロールしたり、他のフッ素樹脂に転換することにより摩擦係数を低減化させる事が可能である。
【0051】
6)摩擦係数
感光層の機械的耐久性を向上させる上で摩擦係数は重要な特性である。感光体の摩擦係数はレベリング剤(例えばシリコーンオイルなど)を添加する事によって、0.3〜0.5(後記オイラーベルト法で測定した値)程度になり、レベリング剤を添加しない場合は0.6以上である。但し、レベリング剤を添加した場合でも、20枚程度複写を行えば、摩擦係数は直ちに0.6をオーバーしてしまい、持続性も有しない。この様な被覆層の無い感光体を使用した場合、クリーニングブレードや、現像剤による摩耗により、感光層の摩耗が大きくなり、耐久性を維持できない。また、前記したようなシリカの付着や突き刺さり等を起こし、感光体表面に不均一にフィルミングや偏摩耗を起こす場合がある。被覆層中の無機微粒子は感光層表層に凹凸を形成し、クリーニングブレードとの間で摩擦抵抗を軽減させる。無機微粒子を30%程度添加した場合の摩擦係数は0.4〜0.6程度であり、被覆層の無い場合と異なり比較的持続性が有るので、高硬度の微粒子と相まって摩耗が少なくなる。摩擦係数を低減化させることにより、感光体に接触しているクリーニングブレードや現像剤、接触帯電装置等の圧力が軽減されるために、必然的に感光層の摩耗が少なくなる。但し、摩擦係数が余り下がりすぎると、クリーニングブレードによるクリーニング性能が著しく低下するので、コロナ生成物や紙粉、フィルミング等の汚染物質が除去されにくくなり、解像度低下や画像流れなどの画像品質低下を生じる。摩擦係数の好ましい範囲は0.1以上、0.5以下であり、好ましくは0.2〜0.4が望ましい。0.6近傍もしくはそれ以上の場合に成ると感光層の摩耗が促進されるが、感光体の表面状態によっても摩耗は左右される場合がある。感光体に潤滑剤を外添する方法は粉末状、固形状、フィルム状の形態のフッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、シリコーンオイルやフッ素系オイルなどの液状の潤滑剤、ガス状にした潤滑剤を感光体に外添法として作用させる方法の他、現像剤中に微量の潤滑剤を添加する方法がある。
【0052】
フィルム状のフッ素系樹脂を使用して被覆層表層の摩擦係数を低減させる場合、100〜400μm程度の厚さのフッ素系樹脂(例えばPTFE=ポリテトラフルオロエチレン)フィルムで感光体とソフトに当接させるための弾性部材を併用した潤滑性付与部材を作製し、その部材を被覆層表面に均一に押し当てる事によって、摩擦係数を低減させる事が出来る。前記潤滑性付与部材の感光体への押圧によっては、感光体に摺擦傷が生じさせる可能性があるが、無機微粒子が分散されている上に、摩擦係数が0.4前後に成るように軽く当接すれば、殆ど画像に与えるようなスクラッチは生じない。また、フッ素樹系脂やステアリン酸亜鉛などの潤滑剤を使用する場合には、ブラシなどの塗布部材に一旦潤滑剤を付着させた後に、塗布部材から感光体に供給する事が出来る。さらにまた、粉末状のフッ素系樹脂(PTFE)を感光体に供給する場合には、羽毛や綿状のもの等に付着させそれを少しづつ被覆層面に供給させる事が出来る。被覆層面への供給は連続的に、或いは一定間隔を於いて供給する間欠法があるが、摩擦係数が下がりすぎの場合には、機械的耐久性は大幅に延ばすことが可能であるが、下がりすぎは画像流れなどの弊害を起こす可能性が高くなるため、軽く補給するか、50ないし100枚コピーに1度作用させるような間欠的な方法で行う方が望ましい。トナー中に潤滑剤を添加する場合には、トナーに対し例えばステアリン酸亜鉛、粉末状フッ素樹脂を0.01〜0.4%程度、好ましくは0.1〜0.2%程度添加する。添加量が多いと、複写が進む内に摩擦係数が大幅に低下し、画像流れに到る。
【0053】
摩擦係数は下記測定方式で算出する。図5及び図6に示すように、測定用の感光体1を台座に固定して、幅が30mm、長さが例えば297mmにカットした厚み85μmの上質紙〔(株)リコー製タイプ6200ペーパー、縦目〕をベルト24として用意し、このベルト24を感光体1の周面に90°の角度に亘って巻き掛け、ベルト端部の一方に重量の無視できる糸20を介して100grのおもり25を取り付け、もう一方の片端に重量を無視できる糸21を介して重量測定用のデジタル・フォース・ゲージ23を取り付ける。台上に載せたデジタル・フォース・ゲージ25を矢印A方向にゆっくり引き、ベルト24が感光体上を滑って移動を開始した時の重量を読みとり、次の式で(静止)摩擦係数を計算する。
μs=2/π×ln(F/W)
ただし、μs:静止摩擦係数、F:読みとり荷重
W:分銅の重さ π:円周率
本測定法(オイラー・ベルト方式)については特開平9−166919などにも記載されている。
【0054】
以下実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
<評価用感光体の作製方法>
感光体を下記の要領で作製した。φ60mm、長さ340mm、肉厚1.2mmのアルミニウムドラムに下記組成の下引き層(UL)用塗工液、電荷発生層(CGL)用塗工液、電荷輸送層(CTL)用塗工液を用い、順に浸漬塗工を行い、加熱乾燥により、3.5μmの下引き層、0.15〜0.2μmの電荷発生層、22〜25μmの膜厚の電荷輸送層を塗工し感光体を作製した。この感光体上にさらに、バインダー樹脂とドナー、無機微粒子(金属酸化物)及び溶媒を硝子ポットに入れ、ボールミルで24時間分散させ、平均粒径(堀場製作所製CAPA500で測定)約0.45〜0.55μmの塗工液を作り、スプレー法を用いて1〜3回塗布(約1.5〜2.0μm/回)し、加熱乾燥させて1〜10μmの被覆層を形成し電子写真感光体を完成した。以下に記載の部はいずれも重量部を表す。
【0055】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL,大日本インキ化学工業社製) 6部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60,大日本インキ化学工業社製) 4部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40部
メチルエチルケトン 200部
〔電荷発生層用塗工液〕
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 2部
ポリビニルブチラール(UCC:XYHL) 0.2部
テトラヒドロフラン 50部
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールA型ポリカーボネート(帝人化成社製:Zポリカ) 10部
下記構造の低分子電荷輸送物質 12部
【化1】
塩化メチレン 100部
メチルフェニルシリコーンオイル(50cs) 1部
〔無機微粒子層用塗工液〕
無機微粒子層用塗工液はバインダー樹脂と無機微粒子が重量比で25%、電荷輸送物質とバインダー樹脂の比が7/10に成るように混合し、シクロヘキサノンを溶媒としてスプレー法で1〜3回のスプレーを行い、4種の被覆層を形成した。
バインダー樹脂:ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、帝人化成社製 Mv5万)
無機微粒子:アルミナ粉末(AA−40 住友化学工業社製)
低分子電荷輸送物質:下記構造
【化2】
溶媒:シクロヘキサノン
【0056】
<帯電部材>
8mmの真鍮製ロッド棒にカーボンを均一分散したエピクロルヒドリンゴムを塗布し、14mmφ太さに成形した電気抵抗2〜6×105Ω・cm(100VDC印加時)の帯電部材に、感光体の画像形成領域において100μm離れる様に加工した帯電部材を用意した。帯電部材の両端部に厚さ60μm、幅10mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)を1重張り付け、感光体と接触させたとき、画像形成領域に空隙を持たせるように加工した。なお、感光体に対向して配置したときの空隙は85〜100μmであった。この帯電部材をハウジングにセットして使用した。
【0057】
<クリーニング装置>
(1)2mm厚のウレタンゴムをカウンター方式で取り付けたクリーニングブレード1体のクリーニング装置、(2)第1のクリーニングブレードとして、厚み2mm、電気抵抗2〜5×106Ω・cm、硬度60度のウレタンゴム(鬼怒川ゴム製)を用い、これをトレーリング方式で図2に示すように取り付け、また第2のクリーニングブレードとして2mm厚のウレタンゴムを用い、これをカウンター方式で図2の様に取り付けたクリーニング装置、(3)17デニールのポリプロピレン繊維を2500本/inch2の密度で植毛(直毛)したφ30mmのクリーニングブラシを図1に示したように2体のクリーニングブレード間に取り付けたクリーニング装置の3種のクリーニング装置を用意した。クリーニングブラシの駆動用モーターは外づけとし、図1に示したように、感光体の回転と順方向に回転するように設定した。回転数は170rpmとした。
【0058】
<評価方法>
評価用の画像形成装置は、▲1▼1体のクリーニングブレード構成のクリーニング装置、▲2▼クリーニングブラシと2体のクリーニングブレードから成るクリーニング装置、▲3▼2体のクリーニングブレードで構成されたクリーニング装置が取り付けられるように改造された複写スピード28(枚/分)の実験用電子写真複写機を用意した。現像剤には粒径約9.5μmのシアントナー(流動剤としてSiO2=0.7%、TiO2=0.8%、潤滑剤(SZ2000)=0.05%添加)を、粒径80μmの磁性キャリア(FPC−300LC)に分散した5%濃度現像剤(リコー製試作現像剤)を使用した。帯電部材は感光体との間隙が85〜100μmのカーボン分散のエピクロルヒドリンゴム製のφ14mmの帯電ローラーを用い、印加電圧として、外部電源より高圧ケーブルで帯電部材に交番電圧を重畳した直流電圧を印加した。電圧条件は交番電圧1.5KV/1KHz、直流電圧は感光体の表面電位が−600Vとなるように調整した。なお、帯電部材用の高圧印加電源には横河製ファンクションジェネレーターFG−300+長野愛知電気HV−255を使用し、トリガー電圧で、感光体への電圧印加のタイミングを図った。
【0059】
評価項目は、常湿環境(22℃/55%RH)での通紙ランニング後の解像度と、感光体外観と、摩擦係数とであり、さらに調湿後、すなわちこの通紙ランニング後に、画像形成装置を30℃/90%RH下に3時間放置した後、画像形成を行ったときの解像度と画像品質である。表における「ラン後」はランニング後を意味する。表には示されていないが感光層の摩耗量も評価項目とした。感光層の摩耗量測定はフィッシャー社の渦電流式膜厚計(フィッシャースコープ MMS)を使用し、ランニング前後の26ポイントの膜厚を測定しその平均値で判定した。摩擦係数測定は自作の装置を使用し、30mm×297mmの上質紙(リコー製タイプ6200ペーパー、縦目)、100gの分銅、デジタル・フォース・ゲージ(シンポ工業製FGC−2)とを使用し、前記したオイラーベルト方式で行った。画像品質判定は指定の標準のテストチャートにJIS規格の竹の子チャートを貼り付けたものを原稿とし解像度、シャープ性等の判定を行い、通紙ランニング用の原稿には5%のラインチャートを使用し、1サイクル連続99枚の割合で10万枚の評価を行った。
【0060】
(実施例1)
厚み2mm、硬度60度、電気抵抗2〜5×106Ω・cm、当接圧を45、55、70、及び85mN/cmとする第1のクリーニングブレード、厚み2mm、当接圧を75mN/cmとする第2のウレタンゴム製クリーニングブレードから成るクリーニング装置を実験用電子写真複写機に装着し、第1のクリーニングブレードへの印加電圧を接地(0V)、−500VDC、1200VAC/1000Hz、+300VDC+1200VAC/1000Hzの4種の条件とした。感光体として電荷輸送層(CTL)23μm、被覆層5.0μmとなる様に設定したものを用意した。現像剤にはトナーにステアリン酸亜鉛を0.05%添加したトナー(リコー製)を使用した。結果を表1〜表に示す。第1のクリーニングブレードの当接圧を55、70mN/cmに設定した場合は感光体画像品質とも問題は生じなかったが、45、85mNにおいては、僅かでは有るが、感光体にスクラッチ、或いはフィルミングが生じたが、特に問題となる範囲ではなかった。第1のクリーニングブレードに印加した電圧条件では交流電圧が関与する条件で、より良好な結果が得られたが、他の条件に於いても、好適な条件に設定することで、問題ない品質を設定できる。感光体の摩耗は0.08〜0.12μm/1万枚であり、30〜40万枚相当の耐久性が確認された。
【0061】
【表1】
【0062】
(比較例1)
クリーニング装置をクリーニングブレード1体から成る装置に変え、ブレードの当接圧を75mN/cmとし、現像剤にはステアリン酸亜鉛0%及び、0.05%添加したものを、感光体には実施例1に同じ5μmの被覆層を有する有機感光体を使用した。評価結果を表2に示す。なお、比較例1−1,1−2はステアリン酸亜鉛が0%、比較例1−3,1−4は0.05%である。フィルミングの形成の仕方はステアリン酸亜鉛を添加した方が軽く、画像流れの程度も局部的に留まっているが、クリーニングブレード1体で構成されたクリーニング装置では感光体上の汚染物質を除去しきれず、10万枚後には画像品質的には問題が生じる可能性がある。
【0063】
【表2】
(実施例2)
第1と第2のクリーニングブレード間にクリーニングブラシを取り付けたクリーニング装置に交換し、第1のクリーニングブレードの当接圧を45、55、70、及び85mN/cm、第2のクリーニングブレードの当接圧を75mN/cmに設定した。また、現像剤をトナーに対し0.05%のステアリン酸亜鉛とし、感光体にはアルミナ(AA−40)をバインダー樹脂に対し30%添加した5μmの被覆層の実施例1に同等の有機感光体を使用した。評価結果を表3に示す。クリーニングブラシを追加した場合には、当接圧が85mN/cmを除いた以外、極めて良好な結果が得られた。摩擦係数は全体的に0.3前後であり、曇りも主に端部に筋状に生じた程度であったり、特に問題となるものではなかった。感光層の摩耗は実施例1より僅かに多い程度で、0.1〜0.17μm/1万枚の摩耗が確認された。
【0064】
【表3】
【0065】
(実施例3)
クリーニング装置にクリーニングブレードを2体配置したものを用意し、第1のクリーニング゛ブレードに0V、1100V/1KHzの交流電圧を印加し、当接圧を45、55及び70mN/cmとし、第2のクリーニングブレードの当接圧を65mN/cmに設定した。現像剤にはトナーに対しステアリン酸亜鉛を0.05%添加したもの、感光体には被覆層を形成していない有機感光体を使用し、特性の評価を実施した。結果を表4に示す。感光体に被覆層が無くても、クリーニングブレードの当接圧を軽くすることで、スクラッチの発生を軽くすることが出来、画像品質も良好な結果であった。感光層の摩耗は被覆層を形成しないために0.2〜0.4μm/1万枚となった。
【0066】
【表4】
【0067】
(比較例2)
クリーニング装置にクリーニングブレード1体構成のものを用意し、当接圧を65mN/cmに設定した。現像剤にはトナーに対しステアリン酸亜鉛を0%及び0.05%添加したものを用意し、感光体には被覆層を形成していない有機感光体を使用し、特性の評価を実施した。比較例2−1及び比較例2−2はステアリン酸亜鉛が0%、比較例2−3及び比較例2−4は0.05%である。結果を表4に示す。クリーニングブレード1体で構成されるクリーニング装置では、感光体表層に刺さったシリカ等を起点として、トナー、紙粉、コロナ生成物等の汚染物質が固着することによって生じるフィルミングが現れ、画像品質は濃度ムラ、解像度低下など問題有る結果となった。感光層の摩耗はステアリン酸亜鉛を添加したトナーを使用した場合、現象は緩和される傾向に有るが、いずれも大なり小なりフィルミングが生じた為、見掛け上削れは小さく、場所によっては増加する部位も見られた。
【0068】
【表5】
【0069】
(実施例4)
クリーニングブレードを2体配置したクリーニング装置を用い、第1のクリーニングブレードの当接圧を45、55、及び70mN/cmと可変し、印加電圧に1400V/1KHzの交流電圧を設定した。第2のクリーニングブレードの当接圧は75mN/cmに設定した。感光体には被覆層の厚みを2、5、及び8μmと可変した3種の感光体を用い、現像剤にはトナーに対し0.1%のステアリン酸亜鉛を添加したものを用いた。これらの元に評価を実施した。結果を表6に示す。被覆層が8μmの感光体については残留電位の低下による画像濃度の低下が生じたが、感光体の外観は良好であった。2μm及び5μmの感光体については当接圧が55〜70mN/cmの間で可変しても感光体外観、画像品質とも明確な異常現象は見られず、第1のクリーニングブレードの当接圧が45mN/cmと低くても画像品質、及び感光体に対する問題は無かった。被覆層を2μmとする感光体の場合、感光層が10万枚で1.5μm削れたため、耐久性的には10万枚程度と考えられるが、10万枚でも異常画像は確認できなかった。
【0070】
【表6】
【0071】
【発明の効果】
請求項1乃至3に係る発明によれば、感光体上に残留したトナー、紙粉、コロナ生成物等の画像形成に不必要な汚染物質を解除する手段としてクリーニングブレードを少なくとも2体とし、第1のクリーニングブレードに電圧を印加出来る部材を採用し、使用状況に応じ接地を含む適当な電圧条件にすることによって、従来に比して、より木目の細かいクリーニングが達成できる。しかも、第1のクリーニングブレードと第2のクリーニングブレード間に更にクリーニングブラシを配設する事により、コロナ生成物など微小な汚染物質が排除でき、感光体面は更に清浄化されるため、高湿環境でも画像品質の劣化を抑え、全環境に亘って、良好な画像品質を提供できる。さらに、第1のクリーニングブレードを接地するか、又はその印加電圧として、直流電圧、交流電圧、交流電圧を重畳した直流電圧のいずれかを選択し印加する事によって、クリーニングブレード自体の摺擦力と相まって、感光体に残留した汚染物質が効率的に除去できる。
【0073】
請求項4に係る発明によれば、トナーや紙粉が多く残留している状態で感光体表面が第1のクリーニングブレードに突入しても、感光体にスクラッチや、フィルミングを起こす不具合を抑制できる。一方、第1のクリーニングブレードで、大部分のトナーが除去されるため、第2のクリーニングブレードの感光体に対する当接圧を少し高くしてもスクラッチは起こりにくくなる。
【0075】
請求項5に係る発明によれば、感光体上に光学的、電気的に良好な耐摩耗性の被覆層を設けることで、感光体の耐久性を長持ちさせることが可能となる。被覆層が2μmよりも薄いと耐久性を保持し得なくなり、8μmよりも厚いと耐久性は高まるが、残留電位の上昇で画像品質的に問題が生じる。無機微粒子の被覆層を設けることで、感光体上への異物の付着が軽減されるというメリットも生じる。
【0076】
請求項6に係る発明によれば、感光体表面の静止摩擦係数を下げるように潤滑剤を感光体面に外添する事により、感光体の摩耗を抑制することが出来、また、潤滑剤の作用により、感光体への汚染物質の付着を抑制することが出来るため、感光体の耐久性を長くすることが出来、画像品質の低減化も無くし良好な作像を長きに亘って行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像形成装置の概略図である。
【図2】画像形成装置の他の例を示す概略図である。
【図3】感光体の拡大断面構成図である。
【図4】別の感光体の拡大断面構成図である。
【図5】オイラーベルト方式を説明する図である。
【図6】図5の矢印VI方向に感光体とベルトを見た図である。
【符号の説明】
1 感光体
2 帯電装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
9 転写材
10 第1のクリーニングブレード
11 第2のクリーニングブレード
12 クリーニングブラシ
Claims (6)
- 帯電装置を用いて感光体に帯電を行い、画像露光によって静電潜像を形成し、現像剤によって静電潜像を現像してトナー像化した後、転写装置により感光体上のトナー像を転写材に転写し、クリーニング装置により、トナー像転写後の感光体上の残留トナーを除去する画像形成装置において、
前記クリーニング装置が、感光体に当接する少なくとも第1のクリーニングブレードと第2のクリーニングブレードを有し、第1のクリーニングブレードは第2のクリーニングブレードよりも感光体表面移動方向上流側の感光体面部分に当接するように第1及び第2のクリーニングブレードをそれぞれ配設し、該第1のクリーニングブレードと第2のクリーニングブレードは、常時感光体に当接していると共に、第1のクリーニングブレードは体積抵抗率が100乃至1011Ω・cmの弾性部材で構成され、かつ当該第1のクリーニングブレードは、接地されるか、又は直流電圧、交流電圧もしくは交流電圧を重畳した直流電圧を印加され、前記クリーニング装置は、さらに感光体表面の移動方向に関し、第1のクリーニングブレードの感光体に対する当接位置よりも下流側であって、第2のクリーニングブレードの感光体に対する当接位置よりも上流側の感光体面部分に当接するクリーニングブラシを有し、該クリーニングブラシは、感光体の回転方向と反対の方向に回転することを特徴とする画像形成装置。 - 第1のクリーニングブレードの体積抵抗率が100乃至1010Ω・cmである請求項1に記載の画像形成装置。
- 第1のクリーニングブレードの体積抵抗率が100乃至108Ω・cmである請求項1に記載の画像形成装置。
- 第1のクリーニングブレードの感光体に対する当接圧を、第2のクリーニングブレードの感光体に対する当接圧よりも低く設定した請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
- 感光層上に無機微粒子を分散した2乃至8μmの膜厚の被覆層を有する感光体を用いた請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
- 感光体面に外添法により潤滑剤を付与する事により潤滑性を与え、感光体表面の静止摩擦係数を0.5以下で0.1以上の範囲とした請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
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