JP3902929B2 - 車上装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安全性を確保しつつ、列車の加速制御、定速度運転制御、ブレーキ制御、定位置停止制御等を自動で行うための車上装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
無人運転やワンマン運転を可能とするために列車を自動運転する装置として、自動列車運転装置(ATO…Automatic Train Operation)がある。この装置は、列車の位置により予め決められた運転パターンに従い、加速制御、定速度運転制御、ブレーキ制御、定位置停止制御等を行うものである。
【0003】
かかる自動列車運転装置を用いて列車の自動運転を行う場合には、安全性向上のため、通常、自動列車制御装置(ATC…Automatic Train Control)を同時に車上に設備するようになっている。自動列車制御装置は、列車が先行列車との間隔や進路の条件等によって決定される制限速度を超えると、自動的にブレーキを作動させて減速制御する装置である。
【0004】
自動列車運転装置と自動列車制御装置とは互いに目的や機能が異なるため、それぞれ独立した装置として構成され、車上にはこれら2つの装置が搭載されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、自動列車運転装置と自動列車制御装置の2つの装置を別々に車上に搭載していたので、必要な設置スペースが大きくなるとともに、装置間の配線も複雑になっていた。特に、一般の鉄道車両と比較して小型である新交通車両では、床下の機器設置スペースが制約されているため機器を室内に設置せざるを得ない場合が多く、機器の小型化が切望されていた。
【0006】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、少ない設置スペースで自動列車運転装置としての機能と自動列車制御装置としての機能とを果たすことのできる車上装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0008】
[1]自動で列車の運転制御を行う車上装置において、
自動列車制御装置としての機能と自動列車運転装置としての機能とを有し、
自動列車制御装置としての機能を果たすATC処理と自動列車運転装置としての機能を果たすATO処理とを同一のCPUで行うとともに、
前記CPUが前記ATC処理を実行した後の空き時間に前記ATO処理を前記CPUに実行させ、
前記ATC処理と前記ATO処理との機能および制御論理を独立させた
ことを特徴とする車上装置。
【0009】
[2]前記ATC処理で用いる変数とATO処理で用いる変数とを独立にし、
前記ATC処理で前記ATO処理の処理結果を参照しない構成とした
ことを特徴とする[1]に記載の車上装置。
【0010】
[3]前記ATC処理用のプログラムの後に前記ATO処理用のプログラムが実行されるように構成した一連のプログラムを、単一の一定周期割込が発生するごとにCPUに実行させる
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の車上装置。
【0011】
[4]自動列車制御装置としての機能で使用するハードウェアの故障が検知されたとき、自動列車運転装置としての機能も停止させるものとする
ことを特徴とする[1]から[3]の何れかに記載の車上装置。
【0012】
[5]自動列車制御装置としての機能に係わる入出力信号の履歴と自動列車運転装置としての機能に係わる入出力信号の履歴とを共通の動作記録部に記録した
ことを特徴とする[1]から[4]の何れかに記載の車上装置。
【0013】
前記本発明は次のように作用する。
車上装置は、自動列車制御装置としての機能と自動列車運転装置としての機能を1つの装置で果たすので、これらを独立した装置とする場合に比べて、省スペース化、低価格化および配線の簡略化を図ることができる。
【0014】
一体化において、自動列車制御装置としての機能を果たすATC処理と自動列車運転装置としての機能を果たすATO処理とを同一のCPU(中央処理装置)で行うようにし、かつこのCPUがATC処理を実行した後の空き時間にATO処理を実行するようにする。またATC処理とATO処理との機能および制御論理を独立させ、ATC処理で用いる変数とATO処理で用いる変数とを独立にし、ATC処理でATO処理の処理結果を参照しないように構成する。このように、自動列車運転装置としての機能の独立性を確保することで、安全性を損なわずにCPUの共通化を図ることができる。
【0015】
ATC処理用のプログラムの後にATO処理用のプログラムが実行されるように構成した一連のプログラムを、単一の一定周期割込が発生するごとにCPUに実行させるものでは、ATCとATOの2つの機能を簡単なプログラム構造で統合することができ、安全性の検証や機能検証を容易に行うことが可能になる。
【0016】
自動列車制御装置としての機能で使用するハードウェアの故障が検知されたとき、自動列車運転装置としての機能も停止させるものとするものでは、高い安全性を確保することができる。
【0017】
このほか、自動列車制御装置としての機能に係わる入出力信号の履歴と自動列車運転装置としての機能に係わる入出力信号の履歴とを共通の動作記録部に記録するものでは、装置のさらなる小型化と低価格化を図ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。
各図は、本発明の一実施の形態を示している。図1に示すように、新交通システムなどに用いる車両10には、本実施の形態にかかる車上装置としてのATC/ATO制御装置100と、ATO送受信装置20と、ATCアンテナ30と、ATOアンテナ40と、速度発電機50とが搭載されている。
【0019】
ATCアンテナ30は、床下等に設置され、図示省略の地上装置からレール等の伝送路に流したATC信号を受信するものである。ATC信号は、制限速度等を表したものである。ATOアンテナ40は、間隔をあけて地上に配置された図示省略のATO地上子から列車制御のための情報を受信するためのアンテナであり、床下等に設置される。速度発電機50は、車両10の車軸に連動して回転し、その回転数に応じた数のパルス信号を出力するものである。
【0020】
ATC/ATO制御装置100は、図5に示す従来の装置構成のうち、ATC制御装置501とATO制御装置502の機能を同一CPU化・ハードウェアの共通化により一体化したATC/ATO制御部110と、図2のATC受信装置503に相当するATC受信部120とを有している。
【0021】
より詳細には、図2に示すように、ATC/ATO制御装置100は、ATC/ATO制御部110、ATC受信部120のほか、信号判別部130と、車両制御出力部140と、動作記録部150とを備えている。ATC受信部120は、2重系で構成され、ATCアンテナ30を介してATC信号を受信し復調するものである。信号判別部130は、ATC受信部120から出力される信号を判別し、その結果の低位優先処理を行い、ATC/ATO制御部110と図示省略の車内信号機に出力する。
【0022】
また信号判別部130は、駅停止中には、ドア開方向保安機能や車両の前後進切換機能を果たす。ドア開方向保安機能は、ATC信号の1つである、車両のドア開方向を示す信号を受信した場合に、車両のドア開方向を制御する機能である。車両の前後進切換機能は、ATC信号の1つである、車両の前後進切換を指令する信号を受信した場合に、車両に前後進の切換を指令する機能である。
【0023】
ATC/ATO制御部110は、ATC信号と速度発電機50からの速度とを比較し、速度がATC信号の制限速度を超えた場合にはブレーキ指令を出力して制限速度以内に制御するATC機能と、車両の自動運転(ATO)機能とを果たす部分である。ATO機能としては、出発制御、定速走行制御、定位置停止制御、勾配起動制御等がある。
【0024】
このうち出発制御は、発車可能な状態(車両のドアが閉まり、進路が開通し、車両が力行可能な条件)の成立により、車両を出発させる制御である。定速走行制御は、出発後、ATCによる制限速度を超えない速度範囲で自動走行させる制御である。定位置停止制御は、自動走行中に速度発電機50からの速度情報に基づいて計測している車両の走行位置をATO送受信装置20の受信した地点情報によって補正し、乗り心地を損なわず滑らかに定位置停止させる制御である。
【0025】
勾配起動制御は、車両が現在走行している場所の勾配に応じて力行・ブレーキ制御を行うものであり、たとえば、上り勾配上で停止したときには、再出発時に後退することを防ぐために勾配起動制御が行われる。現在位置の勾配等の情報は、車両が走行するすべての経路についての曲率や勾配等を記憶している車上のデータベースから取得するようになっている。
【0026】
車両制御出力部140は、ATC/ATO制御部110で判断された演算結果(力行・ブレーキ指令)を車両の駆動装置やブレーキ装置へ送出する機能を果たすものである。
【0027】
動作記録部150は、ATO制御状態(ATC信号受信内容、地上子からの受信内容、力行・ブレーキノッチ指令、定位置停止パターンなど)および車両の状態(速度・非常ブレーキ状態など)を監視し、機器の異常時または車両の異常時には、異常発生前後の合計1分間の制御状態をICカードに記録するものである。なお、モニタパソコンを接続することで、装置の稼動状態をリアルタイムにパソコンの画面に表示されることが可能になっている。
【0028】
ATC/ATO制御部110は、ATC制御装置にかかわる機能とATO制御装置にかかわる機能の双方を果たすように構成されているが、本来ATC制御装置とATO制御装置とは、互いに目的や性格の異なる装置である。そこで、これらの機能を一体化するにあたって、ATC制御装置としての安全性が損なわれないように配慮してある。
【0029】
入出力系統に関しては、ATC制御装置としての機能で使用する入出力と、ATO制御装置としての機能で使用する入出力とを整理し、ATCとATOの両方で使用している入力信号については、1つの端子から入力する構成になっている。これにより、装置の小型化が可能になるとともに、ぎ装配線が削減される。
【0030】
次に、保安装置であるATCの機能を確保するために、ATC制御装置としての機能を果たすソフトウェア(ATC処理)とATO制御装置としての機能を果たすソフトウェア(ATO処理)とを分離し、かつATO処理は、ATC処理の空き時間(CPUが利用されていない時間)で実行するようになっている。さらにATC処理の機能や制御論理をATO処理とは完全に独立させた構成としてある。ATC処理とATO処理で、変数の共有は、原則として無くし、ATO処理がATC処理の処理結果を参照する場合のみを許可した。以上により、本装置のソフトウェアは、ATC制御装置としての機能とATO制御装置としての機能とが明確に分離されて独立性を有し、保安装置としての役割や安全性を維持するようになっている。
【0031】
図3(b)は、本装置のソフトウェアの構成を示したものである。ここでは、ATC制御装置としての機能とATO制御装置としての機能の2つを一体化するにあたって、並列処理の構造は採用せず、単一の定期周期割込により一連のプログラムを順次直列に処理する、シングルスレッド構造を採用している。すなわち、図3(a)に示すように、従来のATC制御装置およびATO制御装置においても、単一の定期周期割込によって一連のプログラムを順次実行する形態がとられていた。本装置では、一体化においてもこれを踏襲し、一連のプログラムの中のATC処理の後にATO処理を追加して、これらが直列に実行されるような構造をとっている。これにより、プログラム構造が複雑にならず、安全性の検証や機能検証を的確に行うことが可能になっている。
【0032】
またATC制御に関する機能は並列二重系に、ATO制御に関する機能は待機二重系の構成になっている。ATC制御とATO制御は、同一CPUシステム内で動作するが、機能上はATCにかかわる部分とATOにかかわる部分とに分離されている。そのため故障の内容もATCに関するものとATOに関するものの2種類が存在する。
【0033】
各系においては2つのCPUで同じ処理を行わせ、それらの結果を照合しならがら処理を継続するフェールセーフ構成になっている。そして、CPUの故障照査などによるハードウェアの自己診断はATCに関する機能とし、照査の結果、故障と判断した場合には他系に切り換えるようになっている。
【0034】
またATCの故障の内容には、ATCとATOの共有ハードウェア故障が含まれるため、ATCでの故障が発生した場合にはATOについても故障が発生したとして取り扱うようになっている。ATOに関する機能では、ATOでのみ使用している入出力ハードウェアの故障照査を行う。ATOに関する機能における照査の結果、入出力故障と判断された場合は、ATO故障としてATOに関する出力を全て遮断した上で他系に切り換えるが、ATCはそのまま制御を継続するように、ソフトウェアおよびハードウェアを構成してある。
【0035】
図4は、上述の関係を示している。基板には一系用基板151と二系用基板152がある。各系において、ATCに関する機能を果たす処理においてハードウェア異常等が検出されてATC正常リレー161が復旧すると、ATO正常リレー162も同時に復旧する構成になっている。一方、ATOに関する機能を果たす処理において異常が検出された場合には、ATO正常リレー162は復旧するが、これに伴ってATC正常リレー161が復旧することはない。
【0036】
以上説明した実施の形態では、ATC受信装置にかかわる部分(ATC受信処理)についてもATC/ATO制御装置100に取り込んで一体化したが、必ずしもこれを含めて一体化しなくてもよい。逆にATO送受信装置にかかわる機能をさらに含むように一体化してもよい。
【0037】
【発明の効果】
本発明にかかる車上装置によれば、自動列車制御装置としての機能と自動列車運転装置としての機能を1つの装置で果たすように一体化したので、これらを独立した装置とする場合に比べて、省スペース化と低価格化と配線の簡略化を図ることができる。
【0038】
また一体化において、自動列車制御装置としての機能を果たすATC処理と自動列車運転装置としての機能を果たすATO処理とを同一のCPUで行うようにし、このCPUがATC処理を実行した後の空き時間にATO処理を実行するようにし、ATC処理とATO処理との機能および制御論理を独立させ、ATC処理で用いる変数とATO処理で用いる変数とを独立にし、ATC処理でATO処理の処理結果を参照しないように構成したものでは、安全性を損なわずにCPUを共通化することができる。
【0039】
ATC処理用のプログラムの後にATO処理用のプログラムが実行されるように構成した一連のプログラムを、単一の一定周期割込が発生するごとにCPUに実行させるものでは、ATCとATOの2つの機能を簡単なプログラム構造で統合することができ、安全性の検証や機能検証を容易に行うことが可能になる。
【0040】
自動列車制御装置としての機能で使用するハードウェアの故障が検知されたとき、自動列車運転装置としての機能も停止させるものとするものでは、高い安全性を確保することができる。
【0041】
自動列車制御装置としての機能に係わる入出力信号の履歴と自動列車運転装置としての機能に係わる入出力信号の履歴とを共通の動作記録部に記録するものでは、装置のさらなる小型化と低価格化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車上装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るATC/ATO制御部の機能構成を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るATC/ATO制御部のソフトウェア構成を示す流れ図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るATC/ATO制御部等の故障に対する健全性を示す説明図である。
【図5】従来の車上装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
10…車両
20…ATO送受信装置
30…ATCアンテナ
40…ATOアンテナ
50…速度発電機
100…ATC/ATO制御装置
110…ATC/ATO制御部
120…ATC受信部
130…信号判別部
140…車両制御出力部
150…動作記録部
151…一系用基板
152…二系用基板
161…ATC正常リレー
162…ATO正常リレー
501…ATC制御装置
502…ATO制御装置
503…ATC受信装置
Claims (5)
- 自動で列車の運転制御を行う車上装置において、
自動列車制御装置としての機能と自動列車運転装置としての機能とを有し、
自動列車制御装置としての機能を果たすATC処理と自動列車運転装置としての機能を果たすATO処理とを同一のCPUで行うとともに、
前記CPUが前記ATC処理を実行した後の空き時間に前記ATO処理を前記CPUに実行させ、
前記ATC処理と前記ATO処理との機能および制御論理を独立させた
ことを特徴とする車上装置。 - 前記ATC処理で用いる変数とATO処理で用いる変数とを独立にし、
前記ATC処理で前記ATO処理の処理結果を参照しない構成とした
ことを特徴とする請求項1に記載の車上装置。 - 前記ATC処理用のプログラムの後に前記ATO処理用のプログラムが実行されるように構成した一連のプログラムを、単一の一定周期割込が発生するごとにCPUに実行させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車上装置。 - 自動列車制御装置としての機能で使用するハードウェアの故障が検知されたとき、自動列車運転装置としての機能も停止させるものとする
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の車上装置。 - 自動列車制御装置としての機能に係わる入出力信号の履歴と自動列車運転装置としての機能に係わる入出力信号の履歴とを共通の動作記録部に記録した
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の車上装置。
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