JP3902702B2 - 背に柔軟材を用いた本の製本方法及び表紙作成方法 - Google Patents

背に柔軟材を用いた本の製本方法及び表紙作成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上製本ライン若しくは絵本ラインで製本する本の構造に関し、特に、本文を大きく開くことができる本に関する。また、本発明はその本を製本する方法、並びにその製本に使用する表紙を作成する方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、雑誌、電話帳、マニュアル本等には、低コストで製造しうる並製本(仮製本とも言う)が使用されている。ここで、並製本とは、ソフトカバーとも呼ばれるもので、印刷された紙等の1枚の表紙で本文(刷本を丁合して一体化したもの。前後面に見返しを付ける場合もあり、その場合、本明細書ではその見返しも本文の一部とする)をくるみ、その後、表紙と本文とを同一寸法に化粧裁ちした形態のものであり、また、綴じ方式としては、無線綴じ、アジロ綴じ等が使用されている。ところが、無線綴じ、アジロ綴じ等で製本された並製本は、複数の刷本を丁合してなる本文の背を接着剤によって、表紙の背の部分に貼り付けた構造となっており、糊付けした背の部分が固いために本を大きく広げた状態にするのが難しいという欠点があった。
【0003】
一方、本を大きく開くことを可能とする本構造としては、上製本が知られている。この上製本は、本文の背を薄布等の柔軟な補強布で一体に接着固定し、その本文を表紙でくるむに際し、本文の背の補強布を、表紙の背表紙に接着せず、背表紙から離れて自由に屈曲しうるように構成したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上製本では、本の背の部分が、本文の背を接着固定した補強布と、その背後に位置する背表紙との二重構造となるため、コストがかかるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、本文の背を背表紙から離して自在に移動可能とするといった複雑な構造を採ることなく、本を容易に大きく開くことを可能とした、安価な本を製本する製本方法、並びにその製本に使用する表紙の作成方法を提供すること目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明方法によって製本する本は、上製本と同様な開き易さを確保しながら、コストダウンを図るため、背表紙自体を柔軟材で構成し、その背表紙を本文の背に貼り付ける構成としたものである。
【0007】
発明は上記構成の本を製本するため、本の背表紙とすべき柔軟材の両側に、表表紙、裏表紙をそれぞれ接続した構成の表紙を作成し、その表紙を上製本ライン若しくは絵本ラインによって本文に取り付けるという構成としたものである。柔軟材の両側に表表紙、裏表紙を接続した構成の表紙は、中央部に柔軟材が存在するため、取り扱いにくく、並製本ラインでは製本できないが、上製本ライン若しくは絵本ラインでは取り扱うことができ、従って、上製本ライン若しくは絵本ラインを用いることで、背表紙に柔軟材を用いた本を製本することができる。
【0008】
更に、本発明は、上記したように、柔軟材の両側に表表紙、裏表紙を接続した構成の表紙を作成するために、1枚の用紙に、表表紙、裏表紙となる部分を所定の間隔となるように配置し且つその表表紙、裏表紙となる部分の内側の辺に沿って長いスリットを形成した構成の、且つ作成すべき表紙よりも天地サイズの大きい1枚の表紙用紙を作成し、その表紙用紙に対して、背表紙を構成する柔軟材を、その両側縁部分を前記表表紙、裏表紙となる部分に接着することで取り付けて表紙材を作成し、その後、その表紙材を所定サイズに断裁することで、余分な部分を切り離し除去するという方法を採用したものである。このように、表表紙、裏表紙となる部分を備えた1枚の表紙用紙に柔軟材を貼り付けることで、表表紙、裏表紙を正確に位置決めした状態で、すなわち、間隔及び平行度を正しく保持した状態で、柔軟材を貼り付けることができ、正確な寸法の表紙を容易に作成できる。
【0009】
更に、本発明は、上記した表紙材を切断して表紙を構成することなく、表紙材のままで上製本ライン若しくは絵本ラインに供給して製本を行い、その後、出来上がった本の背を除いた三方を化粧裁ちするという製本方法も提供するものであり、これによっても、背表紙に柔軟材を用いた本を製本することができる。この製本方法では製本ラインに供給する表紙材が、柔軟材の両側に表表紙、裏表紙を接続した構成の表紙に比べて強度が大きいため、製本ラインでの取り扱い性が良く、このため位置決め精度が高くなり、本の品質を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明方法によって製本する本は、柔軟材からなる背表紙の両側に表表紙と裏表紙を接続した構成の表紙と、その表紙でくるんだ本文を備え、前記背表紙を本文の背に接着し、前記表表紙と裏表紙をそれぞれ、本文の前後面の紙葉の全面に接着するという構成としたものであり、本文の背が柔軟な背表紙で構成されるため、容易に大きく開くことができる。また、表表紙、裏表紙の裏面が、本文の前後面の紙葉(本文が見返しを有する場合にはその見返し)に対してべた貼りされて隠されるため、見栄えが極めて良い。本発明において、背表紙を形成するために使用する柔軟材は、クロス等の柔軟な且つ必要な強度を持ったものであれば任意であるが、通常、印刷、箔押し等が可能なものが使用される。本文の前後面に配置される表表紙、裏表紙は、特に限定されず、通常の本に使用される任意のものを使用可能であり、主として上製本に使用されるようなハードカバーでも、並製本に使用されるようなソフトカバーでもよい。また、その表表紙、裏表紙の大きさは、背を除いた3辺が、本文の3辺よりも少し外側に延びだすものであってもよいし、本文の3辺と一致するものであってもよい。
【0011】
本発明の製本方法の一つの実施の形態は、本の背表紙とすべき柔軟材の両側に、本文の前後面に配置すべき表表紙及び裏表紙をそれぞれ接続した構成の表紙を作成し、該表紙を上製本ライン若しくは絵本ラインに供給し、本文の背に前記表紙の柔軟材を貼り付け、且つ表表紙及び裏表紙をそれぞれ本文の前後面の紙葉にべた貼りすることを特徴とするものであり、この構成により、本文の背に柔軟な背表紙を貼り付け、表表紙、裏表紙を本紙の前後面に位置する紙葉(例えば、見返し)にべた貼りした構成の本を製造できる。
【0012】
また、本発明は、上記の製本方法に使用する表紙を作成する表紙作成方法も提供するものであり、その表紙作成方法の一つの実施の形態は、前記表紙よりも天地サイズの大きい用紙に、本文の前後面に配置される表表紙、裏表紙となる部分を、本文の背の幅以上の間隔を開けて配置し且つその表表紙、裏表紙となる部分の内側の辺に沿って該辺よりも長いスリットを形成した構成の表紙用紙を作成し、その表紙用紙に、背表紙を構成する柔軟材を、その両側縁部分を前記表表紙、裏表紙となる部分に接着させることで取り付けて表紙材を作成し、その後、その表紙材を前記表紙のサイズに断裁し、余分な部分を切り離し除去するという構成としたものである。このように、表表紙、裏表紙となる部分を備えた1枚の表紙用紙に対して柔軟材を貼り付ける構成としたことにより、表表紙、裏表紙を正確に位置決めした状態で、すなわち、間隔及び平行度を正しく保持した状態で、柔軟材を貼り付けることができ、正確な寸法の表紙を容易に作成できる。本発明の実施に当たって、表紙用紙に形成するスリットは、表表紙、裏表紙となる部分の内側の辺に沿ってそれぞれ形成された一対の細長いスリットであってもよいし、表表紙、裏表紙となる部分に沿って形成された単一の広い幅のスリットであってもよい。
【0013】
本発明の製本方法の第二の実施の形態は、上記した表紙作成方法で作成した表紙材を、表紙の代わりに上製本ライン若しくは絵本ラインに供給し、本文の背に前記表紙材の柔軟材を貼り付け、且つ表紙用紙の表表紙、裏表紙となる部分をそれぞれ本文の前後面の紙葉にべた貼りし、その後、本文及びそれをくるんだ表紙材の背を除いた三方を所定サイズに断裁することを特徴とするものであり、この構成により、本文の背に柔軟な背表紙を貼り付け、表表紙、裏表紙を本紙の前後面に位置する紙葉(例えば、見返し)にべた貼りした構成の本を製造でき、また、製本ラインに供給する表紙材が、柔軟材の両側に表表紙、裏表紙を接続した構成の表紙に比べて強度が大きいため、製本ラインでの位置決め精度が高くなり、本の品質を向上させることができる。
【0014】
【実施例】
以下、図面に示す本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明方法によって製本する本の1例である本1を閉じた状態で示す概略斜視図、図2はその本1を開いた状態で示す概略断面図である。この本1は、前後面に見返し2aを備えた本文2と、その本文2をくるんだ表紙10を備えている。この表紙10は本文2の背に貼り付けられたクロス等の柔軟材からなる背表紙3と、その背表紙3の両側に接続され本文2の前後面に配置された表表紙4、裏表紙4からなる。ここで、表表紙4及び裏表紙4は、ハードカバー、ソフトカバーのいずれで構成してもよく、また、その大きさは、図示したように、背を除いた3辺が本文2の3辺に一致する大きさに限らず、通常の上製本のように本文2よりも少し外側へ延びだす大きさとしてもよい。表表紙4及び裏表紙4の背側の端縁4aの位置は本1の背の位置に合わせてもよいが、図示実施例のように背の面よりも少し内側に引っ込んだ位置とすることが好ましい。このように構成しておくと、本文2を表紙10でくるむ工程において表紙10の位置が多少ずれても、表表紙4或いは裏表紙4の端縁4aが本1の背の面を越えて外側に突出するとか背に回り込んで見栄えを悪くするということを防止できる利点が得られる。ここで、端縁4aを本の背の面から引っ込める量としては、1〜10mm程度が好ましい。
【0015】
表表紙4、裏表紙4はそれぞれ、背表紙3の両側縁部分3a(本文2の前後面に貼り付けられた部分)の外側に接着剤5によって貼り付けられると共に接着剤6によって見返し2aの全面に貼り付けられている。一方、背表紙3は接着剤7によって本文2の背に貼り付けられている。このように、この本1は背表紙3を柔軟材によって構成しているので、図2に示すように、背表紙3を湾曲させることができ、本文2を容易に大きく開くことができる。また、見返し2aの全面を表表紙4、裏表紙4の裏面に貼り付けているので、表表紙4或いは裏表紙4を開いた状態での外観がきわめて良い。
【0016】
図3、図4は本発明方法によって製本する本の他の例である本1Aを示すものである。この本1Aも、図1に示す本1と同様に、本文2を、柔軟材からなる背表紙3とその両側に接続された表表紙4、裏表紙4を備えた表紙10Aでくるんだものであり、その表紙10Aの背表紙3を本文2の背に接着剤7で貼り付け、且つ表表紙4、裏表紙4をそれぞれ見返し2aの全面に接着剤6によって貼り付けているが、本1とは異なり、表表紙4、裏表紙4を背表紙3の両側縁部分の内側に接着剤5によって貼り付けており、図1の本とは外観が若干異なっている。しかしながら、この本1Aも本1と同様に本文2を容易に大きく開くことができる。
【0017】
次に、上記構成の本1を製本する本発明方法の一実施例を説明する。図5は製本工程全体を概略的に示すブロック線図である。符号Aで示すものは、シート刷刷本から、上製本ラインに供給するための本文(三方断裁する前のもの)を作成する工程であり、従来公知のものである。すなわち、この本文作成工程Aは、シート刷刷本を断裁する工程A1、折り工程A2、貼り込み工程A3、丁合工程A4、糸かがり工程A5等を有し、これらの工程によりシート刷刷本から本文を作成する。なお、糸かがり工程A5は省略する場合もある。
【0018】
符号Bで示すものは、図6(b)に示す構成の表紙10を作成する表紙作成工程である。この表紙作成工程Bは、図6(a)に示すように、柔軟材を所定形状に断裁して背表紙3を形成し且つ印刷済の表紙用紙を所定形状に断裁して表表紙4、裏表紙4を形成する断裁工程B1と、その表表紙4、裏表紙4の裏面側の側縁部分に接着剤5を塗布し、一対の表表紙4、裏表紙4を一定間隔Dをあけた状態に保持して背表紙3の両側縁部分を貼り付ける貼り工程B2と、背表紙3に背文字等を箔押し(又は印刷)する箔押し工程B3等を備えており、この工程により表紙10を作成する。ここで、間隔Dは、図1に示すように表紙10で本文2をくるんだ時に、表表紙4、裏表紙4の端縁4aが占める位置を定めるものであり、本文2の背の幅(すなわち本文2の厚さ)以上に設定される。なお、箔押し工程B3は、断裁工程B1の前に行ってもよい。
【0019】
図5において、符号Cで示すものは、上製本ラインにおける製本工程であり、この製本工程C自体は公知のものを使用可能である。すなわち、製本工程Cは、上製本ラインに供給された本文の背を整える下固め工程C1と、本文の背を除いた3辺を断裁し、所定サイズの本文2(図7参照)とする三方断裁工程C2と、本文2の背に接着剤7を塗布する背部分接着剤塗布工程C3と、その本文2を、上製本ラインに供給された表紙10でくるむくるみ工程C4(詳細は後述)と、くるんだ後の本をプレスし且つ焼付けて接着剤による接着を確実にするためのプレス及び焼付工程C5等を備えている。ここで、くるみ工程C4では、図7に示すように、本文2の前後面の見返し2aの全面に接着剤6を塗布し、次いで、所定位置で裏面を下側にして待機している表紙10に対して下から本文2を持ち上げ、本文2の背を表紙10の背表紙3の裏面に押し付け、更に本文2を持ち上げて、図8に示すように、表紙10の両側の表表紙4、裏表紙4を本文2の前後面に折り重ねるという操作を行っており、その後のプレス及び焼付工程C5で、表紙4を本文2の前後面に押し付け且つ背表紙3を本文2の背に押し付けて加熱することにより、本文2に表紙10が確実に接着される。
【0020】
かくして、本文作成工程Aで作成した本文と、表紙作成工程Bで作成した表紙10を上製本ラインに供給し、製本工程Cを実施することで、図1に示すように、柔軟材を背表紙3とし、表表紙4、裏表紙4を見返し2aにべた貼りした本1を製本することができる。なお、一般の上製本ラインでは、三方断裁後の本文2の背に接着剤を塗布した後、背紙等の補強材を貼り付ける工程があるが、本実施例の製本時には、この補強材の貼り付けを省略し、本文の背に塗布した接着剤を利用して、本文2を直接、背表紙3に貼り付けており、その分、工程が簡単となる。もし、必要なら、背紙等の補強材を貼り付ける工程を付加してもよい。ここで、本文2の背に用いる接着剤7としては、通常はにかわが用いられるが、その他にも、柔軟剤型EVA系をはじめゴム系、PUR等の各種ホットメルト或いは各種エマルジョンを用いてもよい。
【0021】
なお、この実施例では、図6(b)に示すように、背表紙3の両側縁部分を表表紙4、裏表紙4の裏面側に貼り付けた構成の表紙10を用いているが、この代わりに、背表紙3の両側縁部分を表表紙4、裏表紙4の表面側に貼り付けた構成の表紙を用いて製本することも可能であり、その場合には、図3、図4に示す構成の本1Aを製本できる。
【0022】
また、上記した製本方法では、上製本ラインを用いて製本を行っているが、この代わりに、絵本ラインを用いることも可能である。絵本ラインにおいても、図5に示す製本工程Cと同様な工程を備えており、且つ、そのくるみ工程には、本文の見返しに接着剤を塗布する代わりに、表紙10の表表紙4、裏表紙4の裏面全面に接着剤を塗布する機能を備えているので、図1〜図4に示す構成の本1、1Aを製本できる。
【0023】
上記実施例では、表紙10の作成工程として、図6に示すように、所定サイズに断裁した表表紙4、裏表紙4に背表紙3を貼り付けるものを示している。ところでこの構成では、表表紙4、裏表紙4に背表紙3を貼り合わせる際、2枚の表表紙4、裏表紙4を所定の間隔Dで且つ所定の平行度を保った位置に位置決めする必要があり、この作業が困難である。そこで、この作業を容易に実施しうるようにした本発明の表紙作成方法の実施例を以下に説明する。
【0024】
図9(a)、(b)は、本発明の一実施例による表紙作成工程における作業手順を示すものである。まず、図9(a)に示す形状、サイズの表紙用紙11とクロス等の柔軟材12を作成する。この表紙用紙11は、最終的に作成する表紙10よりも大きい天地サイズHを有すると共に、その中に、表表紙4、裏表紙4(図1参照)となる部分11b、11b(後述するスリット14及び二点鎖線15で囲まれた領域)を、本文の背の厚さ以上に選定した間隔Dを開けて配置しており、更に、表表紙及び裏表紙となる部分11b、11bで挟まれた中央領域11aに、その部分11b、11bの内側の辺に沿って、その辺よりも長い一対のスリット14、14を形成し、そのスリット14、14の両端の外側の部分11cで二つの部分11b、11bを連結した構成となっている。この表紙用紙11には、必要な印刷を施している。なお、表紙用紙11の周辺近傍の二点鎖線15は、後工程で、表紙用紙11から表紙10を切り出すために断裁する位置を示しており、一対のスリット14、14の両端は、二点鎖線15で示す断裁位置を横切るように形成されている。柔軟材12は、背表紙3となるものであり、背表紙3に必要な幅Wを有すると共に長さは、背表紙3よりも少し長く設定されており、また、その表面には、必要な印刷、箔押し等の加工を施している。
【0025】
次に、表紙用紙11の裏面の、一対のスリット14、14の外側近傍の領域に接着剤5を塗布し、柔軟材12を貼り付ける。これにより、図9(b)に示す形態の表紙材17が形成される。その後、二点鎖線15で示す位置を断裁し、その周囲の部分及び一対のスリット14ではさまれた部分を切り離し、除去する。これにより、図6(b)に示す構成の、すなわち、柔軟材からなる背表紙3の両側に表表紙4、裏表紙4を接続した構成の表紙10が作成される。このように、この実施例では、二つの表表紙4、裏表紙4となる部分11b、11bを備えた1枚の表紙用紙11に対して柔軟材12を貼り合わせ、その後、断裁しているので、表表紙4、裏表紙4を正確に位置決めした状態で、すなわち、間隔及び平行度を正しく保持した状態で、柔軟材を貼り付けることができ、正確な寸法の表紙10を容易に作成できる。なお、表紙用紙11に対して柔軟材12を貼り付ける際に、その柔軟材12を表紙用紙11の表側の面に貼り付けて表紙を作成することも可能であり、その場合には、柔軟材で形成される背表紙3が表表紙4、裏表紙4の外側に位置するので、その表紙を用いて製本することで、図3、図4に示す本1Aを製本できる。
【0026】
上記実施例では、表紙用紙11として、一対のスリット14を形成したものを用いているが、この代わりに、図10(a)に示すように、表表紙、裏表紙となる部分11b、11bではさまれた中央領域の全幅に渡る広い幅Dのスリット14Aを形成した表紙用紙11Aを用いることも可能である。この場合にも、表紙用紙11Aの裏面に接着剤5を塗布し、クロス等の柔軟材12を貼り付けて、図10(b)に示す構成の表紙材17Aを作成し、これを二点鎖線15で示す位置で断裁し、周囲の部分を切り離し除去することで、図6(b)に示す構成の表紙10を作成できる。この実施例でも、図9の実施例と同様に、正確な寸法の表紙10を容易に作成できる。
【0027】
なお、図10に示す実施例では、表紙用紙11Aに本の背の幅以上の幅Dのスリット14Aを形成しているで、この表紙用紙11Aに柔軟材12を貼り付けた状態で、その柔軟材12に対して印刷や箔押しを行うことが可能である。従って、柔軟材12に対する印刷や箔押しを、柔軟材12を表紙用紙11Aに貼り付ける前に行う代わりに、表紙用紙11Aに柔軟材12を貼り付けた後で行うように変更してもよい。また、図10に示す実施例の場合にも、柔軟材12を表紙用紙11Aの表側の面に貼り付けて表紙を作成した場合には、柔軟材で形成される背表紙3が表紙4の外側に位置することとなり、その表紙を用いて製本することで、図3、図4に示す本1Aを製本できる。
【0028】
更に、以上に説明した製本方法では、図6(b)に示す形態の表紙10を上製本ライン或いは絵本ラインに供給して製本しているが、その代わりに図9(b)、図10(b)に示した表紙材17、17Aを直接、上製本ライン或いは絵本ラインに供給して製本することも可能である。例えば、表紙材17を使用する場合には、表紙10に代えて、この表紙材17を上製本ライン或いは絵本ラインに供給し、表紙10の場合と同様に製本し、図11に示す形態の本を作成し、その後、出来上がった本を三方断裁装置に送って、2点鎖線15で示す位置を三方断裁し、周辺の部分を除去すると共に、表紙用紙11の一対のスリット14、14ではさまれた部分11aaを除去することで、図1に示す本1を作成できる。また、表紙材17Aを使用する場合も同様に、表紙10に代えて、この表紙材17Aを上製本ライン或いは絵本ラインに供給し、表紙10の場合と同様に製本し、その後、出来上がった本を三方断裁装置に送って三方断裁し、周辺の部分を除去することで、図1に示す本1を作成できる。なお、この場合には、表紙材17Aの表裏を入れ替えることで、図3に示す本1Aを作成することもできる。ここで使用する三方断裁装置は、上製本ライン内で、プレス、焼付工程の後ろに配置してもよいし、上製本ラインとは別に設けてもよい。また、この場合には、くるみ工程の後に三方断裁を行うので、くるみ工程の前の本文裁断工程を省略してもよい。
【0029】
以上に説明した本1、1Aにおいて、表紙4としてソフトカバーを用いた場合には、その表紙の外側に更にハードカバーを組み合わせて使用することも可能である。図12はその場合の一例を示すものであり、図1に示す本と同一構成の本1の裏表紙4を、ハードカバー表紙24の裏表紙に貼り付けた構成の本25を示している。この本25では、ハードカバー表紙24で全体を保護するため強度が大きく、また、その内部に配置した本1は背表紙3が柔軟材であるため、大きく開くことができるという効果を発揮できる。
【0030】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明方法によって製本する本は、本文の背に柔軟材からなる背表紙を貼り付け、前記本文の前後面に位置する紙葉全面にそれぞれ、前記背表紙に接続された表表紙、裏表紙を貼り付けた構成のものであるので、本文を容易に大きく開くことができると共に見栄えが良く、しかも、背の構造が簡単であるので安価に製本できる等の効果を有している。
【0031】
発明の製本方法は、本の背表紙とすべき柔軟材の両側に、表表紙、裏表紙をそれぞれ接続した構成の表紙を作成し、その表紙を上製本ライン若しくは絵本ラインによって本文に取り付けるという構成としたものであるので、従来通常に使用されている上製本ライン若しくは絵本ラインを用いて、本文の背に柔軟な背表紙を貼り付け、表表紙、裏表紙を本紙の前後面に位置する紙葉にべた貼りした構成の本を製造できるという効果を有している。
【0032】
また、本発明の表紙作成方法は、1枚の用紙に、表表紙、裏表紙となる部分を所定の間隔となるように配置し且つその表表紙、裏表紙となる部分の内側の辺に沿って長いスリットを形成した構成の、且つ作成すべき表紙よりも天地サイズの大きい1枚の表紙用紙を作成し、その表紙用紙に対して、背表紙を構成する柔軟材を、その両側縁部分を前記表表紙、裏表紙となる部分に接着することで取り付けて表紙材を作成し、その後、その表紙材を所定サイズに断裁することで、余分な部分を切り離し除去するものであるので、柔軟材を貼り付ける際に、表表紙、裏表紙を正しい位置に位置決めするという作業が不要となり、柔軟材からなる背表紙に対して表表紙、裏表紙を正確な位置に貼り付けた構成の表紙を容易に作成できるという効果を有している。
【0033】
更に、本発明の製本方法は、上記した表紙材を切断して表紙を作成することなく、表紙材のままで上製本ライン若しくは絵本ラインに供給して製本を行い、その後、出来上がった本の背を除いた三方を化粧裁ちするという構成としたものであるので、これによっても、本文の背に柔軟な背表紙を貼り付け、表表紙、裏表紙を本紙の前後面に位置する紙葉にべた貼りした構成の本を製造でき、しかも、表紙材が、柔軟材の両側に表表紙、裏表紙を接続した構成の表紙に比べて強度が大きいため、製本ラインでの取り扱い性が良く、このため位置決め精度が高く、本の品質を向上させることができる等の効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法によって製本する本の1例を、本を閉じた状態で示す概略斜視図
【図2】 図1に示す本を開いた状態で示す概略断面図
【図3】 本発明方法によって製本する本の他の例を、本を閉じた状態で示す概略斜視図
【図4】 図3に示す本を開いた状態で示す概略断面図
【図5】 図1に示す本の製本工程の一実施例を示すブロック線図
【図6】 (a)、(b)は、図5に示す製本工程において使用する表紙10を作成する手順を説明する概略斜視図
【図7】 上製本ラインにおけるくるみ工程において、本文2を表紙10に貼り付ける前の状態を示す概略斜視図
【図8】 本文2を表紙10でくるむ途中の状態を示す概略斜視図
【図9】 (a)、(b)は、本発明の表紙作成方法の一実施例における作成手順を説明する概略斜視図
【図10】 (a)、(b)は、本発明の表紙作成方法の他の実施例における作成手順を説明する概略斜視図
【図11】 本発明の更に他の実施例による製本方法において、本文を表紙材でくるんだ後の状態を示す概略斜視図
【図12】 本の変形例を示す概略斜視図
【符号の説明】
1、1A 本
2 本文
2a 見返し
3 背表紙
4 表表紙、裏表紙
5、6、7 接着剤
10、10A 表紙
11、11A 表紙用紙
11b 表表紙、裏表紙となる部分
12 背表紙(柔軟材)
14、14A スリット
15 断裁位置を示す線
17、17A 表紙材

Claims (3)

  1. 柔軟材からなる背表紙の両側に表表紙と裏表紙を接続した構成の表紙と、その表紙でくるんだ本文を備え、前記背表紙が本文の背に接着されており、前記表表紙と裏表紙がそれぞれ、本文の前後面の紙葉の全面に接着されている構成の、背に柔軟材を用いた本の製本方法であって、本の背表紙とすべき柔軟材の両側に、本文の前後面に配置すべき表表紙及び裏表紙をそれぞれ接続した構成の表紙を作成し、該表紙を上製本ライン若しくは絵本ラインに供給し、本文の背に前記表紙の柔軟材を貼り付け、且つ表表紙及び裏表紙をそれぞれ本文の前後面の紙葉にべた貼りすることを特徴とする、背に柔軟材を用いた本の製本方法。
  2. 柔軟材からなる背表紙の両側に表表紙と裏表紙を接続した構成の表紙を作成する方法であって、前記表紙よりも天地サイズの大きい用紙に、本文の前後面に配置される表表紙、裏表紙となる部分を、本文の背の幅以上の間隔を開けて配置し且つその表表紙、裏表紙となる部分の内側の辺に沿って該辺よりも長いスリットを形成した構成の表紙用紙を作成し、その表紙用紙に、背表紙を構成する柔軟材を、その両側縁部分を前記表表紙、裏表紙となる部分に接着させることで取り付けて表紙材を作成し、その後、その表紙材を前記表紙のサイズに断裁することを特徴とする表紙作成方法
  3. 柔軟材からなる背表紙の両側に表表紙と裏表紙を接続した構成の表紙と、その表紙でくるんだ本文を備え、前記背表紙が本文の背に接着されており、前記表表紙と裏表紙がそれぞれ、本文の前後面の紙葉の全面に接着されている構成の、背に柔軟材を用いた本の本の製本方法であって、前記表紙よりも天地サイズの大きい用紙に、本文の前後面に配置される表表紙、裏表紙となる部分を、本文の背の幅以上の間隔を開けて配置し且つその表表紙、裏表紙となる部分の内側の辺に沿って該辺よりも長いスリットを形成した構成の表紙用紙を作成し、その表紙用紙に、背表紙を構成する柔軟材を、その両側縁部分を前記表表紙、裏表紙となる部分に接着させることで取り付けて表紙材を作成し、その表紙材を上製本ライン若しくは絵本ラインに供給し、本文の背に前記表紙材の柔軟材を貼り付け、且つ表紙用紙の表表紙、裏表紙となる部分をそれぞれ本文の前後面の紙葉にべた貼りし、その後、本文及びそれをくるんだ表紙材の背を除いた三方を所定サイズに断裁することを特徴とする、背に柔軟材を用いた本の製本方法
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