JP3902363B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)を中間層に用いた包装用積層体に関し、更に詳しくは、高湿度下でのガスバリア性、高防湿性、保香性等に優れ、かつシール性や外観性に優れた包装袋を得ることができる、製袋適性にも優れた包装用積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、EVOHはその透明性、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等の各種包装材料に用いられており、従来の塩化ビニリデンコーティングフィルムの代替フィルムとしても期待されている。
すなわち、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムの表面にEVOH層が接着剤層を介して積層された積層体であって、通常は積層体の機械的強度等の向上を目的として延伸処理が施された積層体となっている。
例えば、特開昭58−118218号公報には、ポリプロピレン(PP)/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂からなる延伸フィルムの開示がある。
【0003】
しかしながら、EVOHは水分や湿気による影響でガスバリア性が低下する性質があるため、かかる延伸フィルムを各種包装用フィルムとして用いる場合には、高湿度下でのガスバリア性が不足してしまうことがある。更に包装袋としての防湿性についても改善の余地がある。
市場の多様化に伴って、高湿度下でのガスバリア性、高防湿性、保香性等に優れ、更にはシール性や外観性に優れた包装袋を得ることができる、製袋適性にも優れた積層体が望まれるところである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、かかる現況に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ポリプロピレン(PP)層/炭化水素樹脂含有ポリプロピレン(PP)層/ポリプロピレン(PP)層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ヒートシール層からなる包装用積層体が、上記の目的を達成でき、更には該EVOH層の偏光赤外二色法によるC−O基の配向係数が−0.4〜−0.01であるとき、本発明の作用効果を顕著に得ることができることを見いだして本発明を完成するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。
本発明のポリプロピレン(PP)層及び炭化水素樹脂含有ポリプロピレン(PP)層に用いられるポリプロピレン(PP)としては特に限定されず、ホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、これらのブレンド物、更にこれらのPPに高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高重合度高密度ポリエチレン、高重合度低密度ポリエチレン、不飽和カルボン酸変性ポリエチレン、不飽和カルボン酸変性ポリプロピレン等を50%以下の割合でブレンドしたもの等を用いることができ、好適には、メルトインデックス(MI)(230℃、荷重2160g)が、0.5〜20g/10分(更には1〜15g/10分、特には2〜7g/10分)のPPが用いられ、該メルトインデックスが該範囲よりも小さい場合には、押出し負荷が大きくなりすぎ、また該範囲よりも大きい場合には、PPフィルムの寸法安定性や機械的強度が低下して好ましくない。
【0006】
上記の炭化水素樹脂含有ポリプロピレン(PP)層に含有される炭化水素樹脂としては、特に限定されず、例えば、イソプレンおよび1,3−ペンタジエン等を主原料とする脂肪族炭化水素樹脂、スチレン誘導体およびインデン類を主原料とする芳香族系炭化水素樹脂、これらを共重合した脂肪族・芳香族共重合炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を水素添加した脂環族系炭化水素樹脂、脂肪族、脂環族および芳香族を含む構造をもつ合成テルペン系炭化水素樹脂、α,β−ピネンを原料とするテルペン系炭化水素樹脂、インデンおよびスチレン類を原料とするクマロンインデン系炭化水素樹脂、低分子量スチレン系樹脂、ロジン系炭化水素樹脂等を挙げることができ、好適には芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族共重合炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂が用いられる。これらの炭化水素樹脂の含有量としては特に限定されないが、PPに対して2〜40重量%(更には5〜30重量%、特に10〜20重量%)が好ましく、かかる含有量が2重量%未満では高湿度下でのガスバリア性と高防湿性の改善効果に乏しくなり、逆に40重量%を越えると得られるフィルムの外観が悪化する傾向にあり好ましくない。
また、本発明に用いられるPPには、必要に応じて、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、核剤、分散剤、着色剤、抗菌剤、無機充填剤等の添加剤を添加することができる。
【0007】
本発明のEVOH層に用いられるEVOHとしては、特に限定されないが、エチレン含有量が20〜70モル%(更には25〜60モル%)、ケン化度が80モル%以上(更には90モル%以上)のものが用いられ、該エチレン含有量が20モル%未満では高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下し、逆に70モル%を越えると充分なガスバリア性が得られず、更にケン化度が80モル%未満ではガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下して好ましくない。
また、該EVOHのメルトインデックス(MI)(210℃、荷重2160g)は、1〜50g/10分(更には2〜30g/10分)が好ましく、該メルトインデックスが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が不安定となり、また該範囲よりも大きい場合には、成形物の機械強度が不足して好ましくない。
【0008】
該EVOHは、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
該EVOHは、少量であればα−オレフィン、不飽和カルボン酸系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレンなどの他のコモノマーで「共重合変性」されても差し支えない。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など「後変性」されても差し支えない。
【0009】
更に本発明においては、EVOHとして、2種類以上の混合物を用いることも、安定した延伸が可能となり、得られる成形物の膜厚が均一になる点で好ましく、かかる場合は、混合されるEVOHのエチレン含有量及び/又はケン化度を変えることが好ましく、この時のエチレン含有量の差は4モル%以上(更には6〜20モル%、特に6〜15モル%)とすることが好ましく、かかる差が4モル%未満では、延伸性の改善効果が小さくなって好ましくない。混合されるEVOHが3種類以上の場合は、その中でエチレン含有量が最小のものと最大のものとの差が上記の条件を満足すればよい。また、ケン化度も同様にその差を1モル%以上(更には1.5〜10モル%、特に2〜5モル%)とすることが好ましく、かかる差が1モル%未満では、同様に延伸性の改善効果が小さくなって好ましくない。混合されるEVOHが3種類以上の場合は、上記と同様にその中でケン化度が最小のものと最大のものとの差が上記の条件を満足すればよい。
【0010】
また、本発明においては、EVOHに飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウム等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、抗菌剤、スリップ剤、無機充填剤、ポリオレフィン、ポリアミド等の他樹脂等を配合することも可能である。
【0011】
また、本発明の接着性樹脂層に用いられる接着性樹脂としては特に限定されないが、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂が好適に用いられ、かかる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられ、これらのエステルや無水物も用いることができ、更に該誘導体としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、等を挙げることができ、また、該ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、およびこれらの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0012】
本発明の包装用積層体は、上記の如き各樹脂層が、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ヒートシール層からなる層構成で積層されていれば特に限定されることはないが、かかるPP層/炭化水素系樹脂含有PP層/PP層の積層体が予め少なくとも一軸方向に延伸されていることが好ましい。
すなわち、本発明の包装用積層体を得るに当たっては、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層からなる積層体を作っておき、かかる積層体を少なくとも一軸方向に延伸した後に、EVOH及び接着性樹脂を積層することが好ましいのである。
かかるPP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層からなる積層体を得るに当たっては特に限定されず、例えば2種3層の共押出製膜装置にPPと炭化水素樹脂含有PPを供給して共押出する方法、PPフィルムに炭化水素樹脂含有PPをドライラミネートあるいは押出ラミネートしてからPPをドライラミネートあるいは押出ラミネートする方法、PPフィルムに炭化水素樹脂含有PP層/PP層からなる積層体を共押出ラミネートする方法等の公知の方法を用いることができる。この時得られる積層体の各層の厚みは特に限定されないが、以後延伸処理される点等を考慮すれば、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層=10〜400/100〜2000/10〜400(μm)(更には20〜200/200〜1500/20〜200(μm))が好ましい。
【0013】
また、得られたかかる積層体を少なくとも一軸方向に延伸するに当たっても特に限定されず、一軸延伸法、二軸延伸法(同時、逐次)等の公知の方法を採用することができるが、本発明では後述の如く、EVOH及び接着性樹脂を積層した後に更に幅方向(TD方向)に延伸することが好ましく、この点を考慮すれば得られた積層体を流れ方向(MD方向)に一軸延伸することが好ましい。この時の延伸倍率は2〜10倍(更には3〜7倍)が好ましく、2倍未満では、延伸による機械的強度や防湿性の向上の効果が不十分となり、逆に10倍を越えると、続く幅方向(TD方向)の延伸が不安定となって好ましくない。
【0014】
また、延伸後の積層体の各層の厚みは特に限定されないが、続いて幅方向(TD方向)に延伸することを考慮すれば、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層=5〜100/50〜500/5〜100(μm)(更には5〜50/50〜300/5〜50(μm))が好ましい。
また、かかる積層体は、必要に応じて、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、オゾン処理、サンドブラスト処理、アンカーコート処理、真空蒸着処理等の表面処理を行っても良い。
【0015】
次いで、EVOH及び接着性樹脂が上記の積層体の表面に積層されるのであるが、かかる積層に当たっても特に限定されることなく公知の方法を採用することができるが、生産性と層間接着性に優れる点で、該積層体の表面にEVOH及び接着性樹脂を接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂の積層構成で共押出ラミネートすることが好ましく、かかる共押出ラミネートについても公知の方法を採用することができ、例えば、2種3層の共押出製膜装置にEVOH及び接着性樹脂を供給して積層体表面に共押出しする方法を挙げることができる。この時の溶融温度としては、EVOHの場合は170〜300℃(更には200〜280℃)から選択することができ、接着性樹脂の場合は150〜300℃(更には180〜280℃)から選択すればよい。
かくして、接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂なる積層構成を有する積層体がPPの積層体表面に共押出ラミネートされるのであるが、この時の接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂の各厚みは、0.4〜100μm(更には1〜30μm)/2〜400μm(更には4〜150μm)/0.4〜100μm(更には1〜30μm)の範囲から選択すればよい。
【0016】
接着性樹脂層の厚みが0.4μm未満では共押出が不安定になることがあり、100μmを越えると延伸後の積層体の透明性が低下することがあり、また経済的にも不利となる。EVOH層の厚みが2μm未満では延伸時に局部的偏肉や破断が生じることがあり、400μmを越えると延伸後の厚み変動が大きくなる傾向にあり、また経済的にも不利となる。
かくして、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層からなる積層体が得られるのであるが、本発明では、かかる積層体を更に横方向(TD方向)に延伸することが好ましく、かかる延伸に当たっても、公知の方法を採用することができる。この時の延伸倍率は2〜20倍(更には4〜15倍)が好ましく、2倍未満では、延伸による機械的強度やガスバリヤー性、防湿性の向上の効果が不十分となり、逆に20倍を越えると、積層体の局部的偏肉や破断が生じて好ましくない。
【0017】
また、かかる積層体は、必要に応じて、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、オゾン処理、サンドブラスト処理、アンカーコート処理、真空蒸着処理等の表面処理を行っても良い。
かかる延伸によって得られるPP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層からなる積層構成を有する積層体の全体の厚みは10〜60μm(更には15〜40μm)、各層の厚みは、0.3μm以上(更には0.5〜5μm)/3〜50μm(更には5〜40μm)/0.3μm以上(更には0.5〜5μm)/0.2〜5μm(更には0.3〜2μm)/1〜20μm(更には1〜10μm)/0.2〜5μm(更には0.3〜2μm)の範囲から選択すればよい。
【0018】
全体の厚みが10μm未満では積層体の腰がなくなり取り扱いに支障をきたすことがあり、60μmを越えると積層体のフレキシビリティが不足気味となる。PP層の厚みが0.3μm未満では炭化水素樹脂がブリードアウトしてべとついたり層間接着性が低下したりする危険性がある。炭化水素樹脂含有PP層の厚みが3μm未満では高湿度下でのガスバリア性と高防湿性の改善効果に乏しくなることがあり、逆に50μmを越えると積層体のフレキシビリティが不足気味となり、経済的にも不利となる。接着性樹脂層の厚みが0.2μm未満ではEVOH層との層間接着性に劣り、5μmを越えると積層体の透明性が低下することがある。EVOH層の厚みが1μm未満ではガスバリア性が不足し、20μmを越えると積層体の耐屈曲性が悪化する傾向にある。
【0019】
本発明においては、かかる積層体におけるEVOH層の偏光赤外二色法によるC−O基の配向係数が−0.4〜−0.01(更には−0.3〜−0.05)であることが好ましく、かかるC−O基の配向係数が−0.4未満では積層体の耐引裂性が低下する傾向にあり、逆に−0.01を越えると延伸によるガスバリヤー性の向上効果が不十分となる傾向にあり好ましくない。ここで言う偏光赤外二色法による配向係数(F)は、以下の(1)式により求めることができる。
【数1】
F=(1−D)/(1+2D) ・・・ (1)
【0020】
ここで、Fは配向係数、Dは二色比を表し、D=At/Amで、更にAt、Amは該積層体のIR吸収スペクトルにおける、延伸方向に平行(Am)および垂直(At)方向のC−O伸縮振動の吸収ピーク(1090cm−1付近)の吸光度を表す。吸光度の算出においては、780cm−1と1550cm−1付近のピークの谷間を直線で結んだ線をベースラインとして求める。また、ここで言う延伸方向とはEVOH層が延伸された方向のことで、本文中で言う積層体の幅方向(TD方向)のことを表す。
かかる配向係数を調整するには、EVOHの組成、延伸条件(延伸温度、延伸速度、延伸倍率)等をコントロールすればよく、中でもEVOH組成物中の主成分のEVOHのエチレン含有量を20〜40モル%、ケン化度を98モル%以上とし、横方向(TD方向)の延伸倍率を4倍以上とする方法が好適に用いられる。
【0021】
また、本発明においては、上記の積層体の接着性樹脂表面にヒートシール層を設けることによりカールやねじれ等の変形が防止でき、更には包装袋としたときにシール性や外観性に優れる。かかるヒートシール層に使用される樹脂としては、ヒートシールが可能であれば特に制限されないが、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、あるいはこれらの共重合体、エチレンを主成分として炭素数3〜10のα−オレフィン類、炭素数4〜15のジエン類、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の内から選ばれた1種または2種以上のコモノマーとの共重合体等のオレフィン系重合体や、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。この中で好適には、無延伸ポリプロピレン系樹脂(CPP)層または直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)層が用いられ、更にはメタロセン触媒中で重合されたLLDPEも好適に用いられる。
また、ヒートシール層の厚みは特に限定されないが、積層体及び得られる包装袋等の変形を防止するためには、5μm以上(更には10〜80μm)が好ましい。更にシーラント樹脂の融点は、150℃以下(更には70〜150℃)が好ましく、かかる融点が150℃を越えると基材のPPとの融点差が小さくなるため、ヒートシール時に基材のPPが収縮しやすくなり、包装袋としたときの外観が悪化することがあり好ましくない。
【0022】
積層に当たっては、公知の方法を採用することができ、例えばドライラミネート法、ポリサンドラミネート法、押出ラミネート法等の方法を挙げることができるが、得られる積層体の臭気と寸法変化が少ない点で、ドライラミネート法が好ましい。
また、接着性樹脂層とヒートシール層の間に印刷層を設けることも好ましい。印刷面は接着性樹脂層側、ヒートシール層側どちらでも可能であり、印刷についてはグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等公知の印刷方法と装置、インキを用いることが可能である。
【0023】
かくして得られた本発明の包装用積層体は、食品や医薬品の防湿包装、熱殺菌包装、高温充填包装、ピロー包装、電子レンジ用包装、PTP(プレススルーパック)包装、バッグインボックスなど各種包装用途に有用で、中でも特に従来の塩化ビニリデンコーティングポリプロピレンフィルム(KOP)の代替フィルムとして、高防湿包装袋として有用で、かかる包装袋としての使用法について説明する。
製袋に当たっては、通常の製袋機を採用することができ、例えばホットバーシール式やホットロール式の製袋機が使用でき、側面シール形、2方シール形、3方シール形、合掌シール形等の袋に加工して利用される。また、製袋と充填を同時に行うピロー包装、三方シール包装、四方シール包装などの自動製袋充填機を用いることもできる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
【0025】
実施例1
2種3層Tダイ共押出製膜装置にPP[融点160℃、密度0.90g/cm3、MI3g/10分(230℃、荷重2160g)、アミン系帯電防止剤1%配合]及び炭化水素樹脂含有PP[融点160℃、密度0.90g/cm3、MI3g/10分(230℃、荷重2160g)のPPにα−メチルスチレン−ビニルトルエン−インデン共重合体を20%含有させたもの]を供給して、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層の積層体(厚み構成は40μm/720μm/40μm)を得た後、加熱ロール上で縦方向(MD方向)に4倍延伸して厚み200μmの積層体(厚み構成は10μm/180μm/10μm)を得た。
次いで、得られた積層体の片面に、2種3層Tダイ共押出ラミネート装置を用いて、接着性樹脂[密度0.89g/cm3、MI4g/10分(230℃、荷重2160g)、無水マレイン酸濃度0.05%、エチレン含有量3モル%の変性エチレン−プロピレン共重合体]/EVOH[エチレン含有量36モル%、ケン化度99.5モル%、MI4g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH70部とエチレン含有量47モル%、ケン化度96.5モル%、MI4.5g/10分(同上)のEVOH30部の混合物]/接着性樹脂[前記と同様]の積層体(厚み構成は8μm/40μm/8μm)を130m/分の速度で積層した後、これをテンター法にて横方向(TD方向)に速度27m/分、温度150℃で10倍に延伸して、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層なる積層体(厚み構成は1μm/18μm/1μm/0.8μm/4μm/0.8μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は−0.15)を得た。
【0026】
得られた積層体の酸素透過度及び水蒸気透過度を測定したところ、それぞれ9.0cc/m2・atm・day(20℃、80%RH)、3.5cc/m2・day(40℃、90%RH)で、良好な高湿度下でのガスバリア性能と高防湿性能を示した。
また該積層体はフィルムのべたつきや押出・延伸装置への炭化水素樹脂の付着汚染は認められなかった。
また、得られた延伸積層体を接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤[ポリエステル系2液溶剤型]を、固形分として2g/m2塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させた後、その塗布面にドライラミネート法にて厚み20μmのエチレン−ブテン−ポリプロピレン共重合体を積層して、得られた包装用積層体を自動充填製袋機(フジキカイ社製の横形ピロー包装機「FW3400」)を用いて、シール温度160℃、ショット数50個/分の条件で、得られた積層体のエチレン−ブテン−ポリプロピレン共重合体層をシール層として、縦20cm×横10cmの包装袋(口貼り及び背貼りからなる3方シール、充填物なし)を作製した。
かかる包装袋の背貼りシール強度(引張速度200mm/min、23℃で測定)は2200g/15mmで、包装袋の状態を目視で観察したが、口貼り及び背貼りともに異常は認められず良好であった。
更に上記の包装袋の一方の口貼り部分を切開してパラジクロルベンゼン(PDCB)3gを入れて切開部分をヒートシールして密封した後、2リットルのガラス容器に入れて密栓して23℃で保管したが、2ヶ月後においてもガラス容器中にPDCBの香りは感知されず良好な保香性能を示した。
【0027】
実施例2
2種3層Tダイ共押出製膜装置にPP[融点160℃、密度0.90g/cm3、MI3g/10分(230℃、荷重2160g)、アミン系帯電防止剤1%配合]及び炭化水素樹脂含有PP[融点160℃、密度0.90g/cm3、MI3g/10分(230℃、荷重2160g)のPPにβ−ピネン重合体を18%含有させたもの]を供給して、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層の積層体(厚み構成は85μm/670μm/85μm)を得た後、加熱ロール上で縦方向(MD方向)に4倍延伸して厚み140μmの積層体(厚み構成は15μm/110μm/15μm)を得た。
次いで、得られた積層体の片面に、2種3層Tダイ共押出ラミネート装置を用いて、接着性樹脂[密度0.89g/cm3、MI4g/10分(230℃、荷重2160g)、無水マレイン酸濃度0.05%、エチレン含有量3モル%の変性エチレン−プロピレン共重合体]/EVOH[エチレン含有量34モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH80部とエチレン含有量44モル%、ケン化度96.2モル%、MI6.5g/10分(同上)のEVOH20部の混合物]/接着性樹脂[前記と同様]の積層体(厚み構成は7μm/21μm/7μm)を150m/分の速度で積層した後、これをテンター法にて横方向(TD方向)に速度21m/分、温度145℃で7倍に延伸して、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層なる積層体(厚み構成は2μm/16μm/2μm/1μm/3μm/1μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は−1.3)を得た。
【0028】
得られた積層体の酸素透過度及び水蒸気透過度を測定したところ、それぞれ9.4cc/m2・atm・day(20℃、80%RH)、3.7cc/m2・day(40℃、90%RH)で、良好な高湿度下でのガスバリア性能と高防湿性能を示した。
また該積層体はフィルムのべたつきや押出・延伸装置への炭化水素系樹脂の付着汚染は認められなかった。
【0029】
また、得られた延伸積層体を接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤[ポリエステル系2液溶剤型]を、固形分として1.5g/m2塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させた後、その塗布面にドライラミネート法にて厚み40μmのLLDPEを積層して得られた本発明の包装用積層体を自動充填製袋機(同上)を用いて、シール温度160℃、ショット数50個/分の条件で、得られた積層体のLLDPE層をシール層として、縦25cm×横5cmの包装袋(同上)を作製した。
かかる包装袋の背貼りシール強度(同上)は4500g/15mmで、包装袋の状態を目視で観察したが、口貼り及び背貼りともに異常は認められず良好であった。
更に実施例1と同様に、包装袋にショウノウ3gを入れて切開部分をヒートシールして密封した袋についてガラス容器に入れて保管したが、2ヶ月後においてもガラス容器中にショウノウの香りは感知されず良好な保香性能を示した。
【0030】
実施例3
2種3層Tダイ共押出製膜装置にPP[融点160℃、密度0.90g/cm3、MI3g/10分(230℃、荷重2160g)、アミン系帯電防止剤1%配合]及び炭化水素樹脂含有PP[融点160℃、密度0.90g/cm3、MI3g/10分(230℃、荷重2160g)のPPにα−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体を20%含有させたもの]を供給して、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層の積層体(厚み構成は120μm/1200μm/120μm)を得た後、加熱ロール上で縦方向(MD方向)に5倍延伸して厚み290μmの積層体(厚み構成は25μm/240μm/25μm)を得た。
【0031】
次いで、得られた積層体の片面に、2種3層Tダイ共押出ラミネート装置を用いて、接着性樹脂[密度0.89g/cm3、MI4g/10分(230℃、荷重2160g)、無水マレイン酸濃度0.05%、エチレン含有量3モル%の変性エチレン−プロピレン共重合体]/EVOH[エチレン含有量29モル%、ケン化度99.7モル%、MI12g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH60部とエチレン含有量36モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH20部とエチレン含有量42モル%、ケン化度97.5モル%、MI13g/10分(同上)のEVOH20部の混合物]/接着性樹脂[前記と同様]の積層体(厚み構成は10μm/60μm/10μm)を150m/分の速度で積層した後、これをテンター法にて横方向(TD方向)に速度38m/分、温度155℃で12倍に延伸して、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂なる積層体(厚み構成は2μm/20μm/2μm/0.8μm/5μm/0.8μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は−0.20)を得た。
【0032】
得られた積層体の酸素透過度及び水蒸気透過度を測定したところ、それぞれ6.5cc/m2・atm・day(20℃、80%RH)、3.3cc/m2・day(40℃、90%RH)で、良好な高湿度下でのガスバリア性能と高防湿性能を示した。
また該積層体はフィルムのべたつきや押出・延伸装置への炭化水素樹脂の付着汚染は認められなかった。
得られた延伸積層体を接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤[ポリエステル系2液溶剤型]を、固形分として2g/m2塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させた後、その塗布面にドライラミネート法にて厚み25μmのCPPフィルムを積層して得られた本発明の包装用積層体を自動充填製袋機(同上)を用いて、シール温度160℃、ショット数50個/分の条件で、得られた積層体のCPPフィルム層をシール層として、縦25cm×横5cmの包装袋(同上)を作製した。
かかる包装袋の背貼りシール強度(同上)は3000g/15mmで、包装袋の状態を目視で観察したが、口貼り及び背貼りともに異常は認められず良好であった。
更に実施例1と同様に、包装袋に緑茶10gを入れて切開部分をヒートシールして密封した袋についてガラス容器に入れて保管したが、2ヶ月後においてもガラス容器中に緑茶の香りは感知されず良好な保香性能を示した。
【0033】
比較例1
実施例1において、PP層/炭化水素樹脂含有PP層/PP層の積層体に変えて、PP層(800μm厚)の単層とした以外は同様に行って、PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層なる積層体(厚み構成は20μm/0.8μm/4μm/0.8μm)を得て、得られた積層体の酸素透過度及び水蒸気透過度を測定したところ、それぞれ13.0cc/m2・atm・day(20℃、80%RH)、6.4cc/m2・day(40℃、90%RH)であった。
また、得られた積層体で同様(但し、接着性樹脂層面同士をヒートシールした)に包装袋を作製して、同様の評価を行ったが、背貼りシール強度(同上)は200g/15mmしかなく、更に包装袋の状態を目視で観察したが、製袋時に積層体がカールして背貼り部分にシワが入ったり、積層体がカールしたままヒートシールされている部分もあり、極めて外観性等に問題のあるものであった。
更に実施例1と同様に、包装袋にパラジクロルベンゼン(PDCB)を入れてガラス容器に保管したが、試験開始後1週間後にはガラス容器中にPDCBの香りが漏れていた。
【0034】
【発明の効果】
本発明の包装用積層体は、高湿度下でのガスバリア性、高防湿性、保香性等に優れており、更に包装袋としたときにシール性に優れ、外観性にも優れた包装袋を得ることができ、各種包装用途をはじめとして、食品や医薬品の包装袋等に有用である。
Claims (7)
- ポリプロピレン(PP)層/炭化水素樹脂含有ポリプロピレン(PP)層/ポリプロピレン(PP)層/接着性樹脂層/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)層/接着性樹脂層/ヒートシール層からなることを特徴とする包装用積層体。
- ポリプロピレン(PP)層/炭化水素樹脂含有ポリプロピレン(PP)層/ポリプロピレン(PP)層の積層体を少なくとも一軸方向に延伸した後に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、接着性樹脂およびヒートシール層を積層してなることを特徴とする請求項1記載の包装用積層体。
- ポリプロピレン(PP)層/炭化水素樹脂含有ポリプロピレン(PP)層/ポリプロピレン(PP)層からなる積層体の片面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)及び接着性樹脂を共押出した後に幅方向(TD方向)に延伸して、更に該接着性樹脂表面にヒートシール層を積層してなることを特徴とする請求項1または2記載の包装用積層体。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)層の偏光赤外二色法によるC−O基の配向係数が−0.4〜−0.01であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の包装用積層体。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)が2種のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)からなり、それぞれのエチレン含有量の差が4モル%以上及び/又はそれぞれのケン化度の差が1モル%以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の包装用積層体。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)が3種以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)からなり、エチレン含有量の最大値と最小値の差が4モル%以上及び/又はケン化度の最大値と最小値の差が1モル%以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の包装用積層体。
- 包装袋に用いることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の包装用積層体。
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