JP4526770B2 - 2軸延伸積層evohフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は2軸延伸積層EVOHフィルムに関し、より詳しくは、接着性樹脂層を介してEVOH層の両面に炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層が積層された2軸延伸積層EVOHフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
EVOH(エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物)フィルム、特に2軸延伸EVOHフィルムは酸素透過度が小さく、保香性にも優れているが、吸湿するとこれらの特性が大幅に低下するという欠点がある。又、耐衝撃性に欠けるという欠点もある。
これらの欠点を解消するために、防湿性に優れ耐衝撃性にも優れるポリプロピレン層を積層することが考えられるが、この積層フィルムを高倍率で2軸延伸しようとすると、フィルムの破断、EVOH層の白化、フィブリル化、網状化等が発生し、良好な2軸延伸フィルムを得ることができない。
【0003】
そこで良好な2軸延伸フィルムを得るための提案が種々なされている。その1つは、高エチレン含有量のEVOHを使用するものである(例えば、特許文献1参照)。
また、高エチレン含有量及び/又は低ケン化度のEVOHを低エチレン含有量高ケン化度のEVOHに混合して延伸性の改良を図るものもある(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
また、低融点のEVOHを高融点のEVOHに混合して延伸性の改良を図るものもある(例えば、特許文献4参照)。
また、ポリプロピレン層として高立体規則性、高結晶性のポリプロピレンを使用し、EVOH層として低融点のEVOHと高融点のEVOHとの混合物を使用して延伸性の改良を図るものもある(例えば、特許文献5参照)。
また、EVOH層は1軸延伸ではあるが、ポリプロピレン/炭化水素系樹脂含有ポリプロピレン層/ポリプロピレン層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層の構成とし、防湿性に優れる炭化水素系樹脂含有ポリプロピレン層を設けることによって酸素透過度を小さくするというものもある(例えば、特許文献6参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−159232号公報(第3頁左上欄5〜7行)
【特許文献2】
特開平8−311276号公報(第3頁右欄20〜27行、実施例)
【特許文献3】
特開2001−277352号公報(第3頁右欄27〜44行、実施例)
【特許文献4】
特開2000−318095号公報(第3頁右欄22〜31行、第3頁右欄48〜第4頁左欄4行、実施例)
【特許文献5】
特開2000−351181号公報(第4頁右欄19〜26行、第5頁右欄40〜42行、第6頁左欄8〜21行、実施例)
【特許文献6】
特開2000−168008号公報(請求項1、3、実施例)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の各提案は効果の点で未だ不十分であり、結局のところエチレン含有量の多いEVOHを使用せざるを得ないものであるので、得られた2軸延伸フィルムの酸素透過度が大きいという欠点を有す。
例えば、特許文献2の実施例のEVOH層の厚さは約2μmで、フィルムの酸素透過度は10〜30cc/m2・day・atm(20℃×65%RH)である。
また、特許文献3の実施例では、EVOH層の厚さが5μmであるフィルムの酸素透過度は3.0cc/m2・day・atm(20℃×50%RH)、EVOH層の厚さが4μmであるフィルムの酸素透過度は3.7〜4.1cc/m2・day・atm(20℃×50%RH)、EVOH層の厚さが3μmであるフィルムの酸素透過度は4.7cc/m2・day・atm(20℃×50%RH)である(測定時の湿度が50%RHと低いことに注意。湿度が低いと酸素透過度は小さくなる)。
また、特許文献4の同時共押出成形の実施例では、EVOH層の厚さを20μmに換算したときのフィルムの酸素透過度は1.5〜2.9cc/m2・day・atm(20℃×85%RH)である。
また、特許文献5の同時共押出成形の実施例では、EVOH層の厚さを20μmに換算したときのフィルムの酸素透過度は7〜25cc/m2・day・atm(20℃×85%RH)である。
また、特許文献6の実施例では、EVOH層の厚さが3μmであるフィルムの酸素透過度は9.4cc/m2・day・atm(20℃×80%RH)、EVOH層の厚さが4μmであるフィルムの酸素透過度は9.0cc/m2・day・atm(20℃×80%RH)、EVOH層の厚さが5μmであるフィルムの酸素透過度は6.5cc/m2・day・atm(20℃×80%RH)である。なお、特許文献1の実施例の延伸後の積層フィルム厚さは計算上0.37〜0.63μmであり、とても製造することのできない薄さである。又、実施例で使用したEVOHがどのようなものであるかの記載もない。しかしながら、発明の詳細な説明にはエチレン含有量が少なくとも45モル%のEVOHが好ましいとある。そこで45モル%のEVOHを使用して製造可能な通常の厚さのフィルムを製造したとすれば、EVOHの内容、延伸条件等から、その酸素透過度は特許文献4とほぼ同様の値になると推測される。
【0006】
本発明の課題は、従来技術品よりも酸素透過度がさらに小さく、透明性(ヘーズ)に優れ、且つ、層間剥離強度に優れる2軸延伸積層EVOHフィルムを提供することにある。
また本発明は、2軸延伸積層EVOHフィルムにヒートシール性を付与することを課題とする。
さらに本発明は、2軸延伸積層EVOHフィルムを用いた包装体を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため本発明は、炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層(A)と接着性樹脂層(B)とEVOH層(C)とが(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の順に積層された2軸延伸積層EVOHフィルムであって、ポリプロピレン層(A)がポリプロピレン/炭化水素樹脂=90〜75重量%/10〜25重量%のブレンド物からなり、EVOH層(C)がエチレン含有量26〜36モル%で、ケン化度98%以上のEVOHからなり、縦方向に110〜125℃、横方向に130〜145℃で延伸することにより得られることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前記の従来技術に係る欠点に鑑み鋭意研究の結果、ポリプロピレン層に炭化水素樹脂をブレンドすると、エチレン含有量が少なく、且つ、ケン化度が大きいEVOHであっても、驚くべきことに高倍率の2軸延伸積層EVOHフィルムが低温延伸で良好に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明のポリプロピレンとは、好ましくは13C−NMRで測定したペンタッド分率(%mmmm)が95%以上、より好ましくは96%以上の高アイソタクチック構造を有するものである。ペンタッド分率(%mmmm)が95%未満ではフィルムの剛性が劣る傾向にあるので、用途によっては好ましくない場合もある。
【0010】
前記のポリプロピレンにブレンドされる炭化水素樹脂とは、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族−芳香族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、又はそれらの水素添加物等の一般に炭化水素樹脂と呼称されるもの(石油樹脂と呼称される場合もある)、あるいはロジン、ロジンエステル、テルペン樹脂等をいい、これらの中でも、脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物が好ましく、特に軟化点が120℃以上のジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂の水素添加物がより好ましい。
ポリプロピレンと炭化水素樹脂とのブレンド比は、重量比で、好ましくはポリプロピレン/炭化水素樹脂=95/5〜70/30、より好ましくはポリプロピレン/炭化水素樹脂=90/10〜75/25、更に好ましくはポリプロピレン/炭化水素樹脂=82/18〜78/22である。
ブレンド物に含まれる炭化水素樹脂が5重量%未満の場合、延伸性の改善効果が小さくなり、エチレン含有量の多いEVOHでないと高倍率の2軸延伸積層EVOHフィルムが良好に得られない傾向にあり、従ってフィルムの酸素透過度が大きくなる傾向にある。一方、ブレンド物に含まれる炭化水素樹脂が30重量%を超える場合、後記する易ヒートシール性樹脂層とのラミネート強度が弱くなり 好ましくない傾向にある。
【0011】
本発明のEVOH(エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物)とは、エチレン含有量が好ましくは26〜36モル%、より好ましくは28〜34モル%、更に好ましくは29〜32モル%で、ケン化度が好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上のものである。
エチレン含有量が26モル%未満で且つケン化度が98%以上のEVOHの場合、酸素透過度においてはより好ましいが、横延伸時にフィルムの破断が起こり易くなる傾向にある。
一方、エチレン含有量が36モル%を超え且つケン化度が98%以上のEVOHの場合、酸素透過度が大きくなり好ましくない傾向にある。
また、ケン化度が98%未満のEVOHの場合、酸素透過度が大きくなり好ましくない傾向にある。
【0012】
本発明の接着性樹脂とは、前記の炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層とEVOH層とを接着するものであれば特に限定するものではなく、例えば、酸変性ポリオレフィンが例示できる。好ましいのものとして無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。より好ましいものとしてホモポリプロピレン又はエチレン含有量が1重量%未満のプロピレン−エチレンランダム共重合体の無水マレイン酸変性物が挙げられ、融点が155℃以上のホモポリプロピレンの無水マレイン酸変性物が特に好ましいものとして挙げられる。
【0013】
本発明のフィルムである、炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層(A)と接着性樹脂層(B)とEVOH層(C)とが(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の順に積層された2軸延伸積層EVOHフィルムの各層の厚さは好ましくは、炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層(A)が2〜15μm、接着性樹脂層(B)が1〜5μm、EVOH層(C)が1〜10μmである。そして、2軸延伸積層EVOHフィルムのトータルの厚さは、好ましくは10〜50μmである。
なお、各層には本発明の特性を損なわない範囲で、安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等の公知の添加剤やその他の樹脂を合目的的に添加してもよい。
【0014】
次に2軸延伸積層EVOHフィルムの好ましい製造方法について説明する。先ず5層の積層シートを作成する。この方法としては公知の如何なる方法を用いてもよいが、共押出によるのが簡便でより好ましい。次いで、このシートを縦方向に好ましくは110〜125℃で3〜5倍ロール延伸し、横方向に好ましくは130〜145℃で8〜10倍テンター延伸し、熱固定し、必要ならフィルム表面にコロナ放電処理を施して、巻き取る。次いで、エージング後、所望の幅にスリットして、所期のフィルムが得られる。
なお、前記は逐次2軸延伸についてのものであるが、フラット状又はチューブ状のシートを同時2軸延伸してフィルムを得てもよい。
【0015】
かくして得られた2軸延伸積層EVOHフィルムの酸素透過度は、EVOH層(C)の厚さを3μmに換算したとき、好ましくは2〜4cc/m2・day・atm(20℃×65%RH)、より好ましくは2.5〜3.5cc/m2・day・atm(20℃×65%RH)である。
そして、フィルムのヘーズ値は2%以下と透明性に優れたものであり、炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層(A)とEVOH層(C)との層間剥離強度は350g/15mm以上と優れたものである。
【0016】
本発明のフィルムは、炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層(A)の少なくとも片面上に易ヒートシール性樹脂層(D)がさらに設けられた2軸延伸積層EVOHフィルムとしてもよい。
このような構成にすると、ヒートシールにより合掌シール袋や三方シール袋のような包装用袋を作成することができる。また、易ヒートシール性樹脂を適宜選定することによって、各種容器の蓋材としても使用可能となる。そして、中味商品が入った包装体を得ることができる。
易ヒートシール性樹脂としては、特に限定するものではなく、例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリブタジエン、及びそれらのブレンド物が例示できる。
易ヒートシール性樹脂層(D)を設ける方法は公知の如何なる方法によってもよい。例えば、ドライラミ、押出しラミ、サンドラミ、コーティング等の方法が例示できる。
また、炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層(A)と易ヒートシール性樹脂層(D)との間に印刷層を設けてもよい。
【0017】
【実施例】
次に代表的な実施例を比較例と共に挙げて説明する。
【0018】
酸素透過度の測定は以下の方法によった。即ち、MODERN CONTROL社製OX−TRAN 200型を使用し、ASTM D 3985に準拠して測定した。
【0019】
ヘーズ値の測定は以下の方法によった。即ち、日本電色工業株式会社製NDH2000を使用し、JIS K 7105に準拠して測定した。
【0020】
水蒸気透過度の測定は以下の方法によった。即ち、MODERN CONTROL社製PERMATRAN W−200形を使用し、ASTM F 372−73に準拠して測定した。
【0021】
炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層(A)とEVOH層(C)との層間剥離強度は以下の方法によった。即ち、試料を幅15mmに切り出し、180°剥離、引っ張り速度200mm/minで測定した。
【0022】
(実施例1)
ホモポリプロピレン(融点:160℃、MFR(230℃、21.18N):2.3、13C−NMRで測定したペンタッド分率(%mmmm):96%)80重量%とジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂の水素添加物(トーネックス 株式会社製エスコレッツE5320、軟化点:125℃)20重量%とのブレンド物からなる層(A)と、ホモポリプロピレンの無水マレイン酸変性物(三井化学株式会社製QF500、融点:165℃、MFR(230℃、21.18N):3)からなる層(B)と、EVOH(日本合成化学工業株式会社製 DC3203、エチレン含有量:32モル%、ケン化度:99%以上、融点:183℃、MFR(210℃、21.18N):4)からなる層(C)とが(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の順に積層するようにして、温度220℃のTダイから3種5層のシートを共押出し、23℃の冷却ロールで引き取った。
次いでこのシートを、115℃で縦方向に3.4倍ロール延伸し、135℃で予熱し、135℃で横方向に9倍テンター延伸し、160℃で熱固定し、フィルムの片面を処理強度30W/分・m2でコロナ放電処理を施して、巻き取った。次いで、40℃で24時間エージングした後、所定の幅にスリットして所期の2軸延伸積層EVOHフィルムを得た。各層の厚さは4μm/2μm/3μm/2μm/4μmで、フィルムのトータルの厚さは15μmであった。
このフィルムの酸素透過度、ヘーズ値、水蒸気透過度、及び層間剥離強度を表1に示す。
【0023】
(比較例1)
炭化水素樹脂をポリプロピレンにブレンドしない以外、実施例1と同様にして2軸延伸積層EVOHフィルムを得ようとしたが、フィルムの破断が断続的に発生し、2軸延伸積層EVOHフィルムを得ることができなかった。
【0024】
(比較例2)
炭化水素樹脂をポリプロピレンにブレンドせず、且つ、予熱温度と横方向の延伸温度を共に155℃とした以外、実施例1と同様にして2軸延伸積層EVOHフィルムを得た。
得られたフィルムは、網目状の無数の層間剥離部が存在しており、よく観察すると、その部分でEVOH層の破断も観察された。
このフィルムの酸素透過度、ヘーズ値、水蒸気透過度、及び層間剥離強度を表1に示す。
【0025】
【0026】
【発明の効果】
本発明は以上のような構成からなるので、以下の効果を奏す。
【0027】
本発明によれば、エチレン含有量が少なく、且つ、ケン化度が大きいEVOHであっても、高倍率の2軸延伸積層EVOHフィルムが低温延伸で良好に得られる。従って、炭化水素樹脂の防湿効果と相まって、従来にない酸素透過度の小さい2軸延伸積層EVOHフィルムが得られる。
【0028】
また、炭化水素樹脂の防湿効果と相まって、水蒸気透過度の小さい2軸延伸積層EVOHフィルムが得られる。
【0029】
また、ヘーズ値の小さい(透明性に優れる)、層間剥離強度に優れる2軸延伸積層EVOHフィルムが得られる。
Claims (1)
- 炭化水素樹脂を含むポリプロピレン層(A)と接着性樹脂層(B)とEVOH層(C)とが(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の順に積層された2軸延伸積層EVOHフィルムであって、ポリプロピレン層(A)がポリプロピレン/炭化水素樹脂=90〜75重量%/10〜25重量%のブレンド物からなり、EVOH層(C)がエチレン含有量26〜36モル%で、ケン化度98%以上のEVOHからなり、縦方向に110〜125℃、横方向に130〜145℃で延伸することにより得られる2軸延伸積層EVOHフィルムの製造方法。
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