JP3901889B2 - 定着装置に用いる加圧力の上限値と下限値の設定方法 - Google Patents

定着装置に用いる加圧力の上限値と下限値の設定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やファクシミリ、プリンタ等に用いられている静電気を利用した静電荷現像する電子写真方式を用いる画像形成方法であり、特に光沢のない艶消し画像を形成する画像形成を行う定着装置に用いる加圧力の上限値と下限値の設定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の定着方式に用いられるトナーは、軟化から完全溶融状態までのいわゆるゴム域の範囲内においては樹脂の粘度が非常に高いため、自己凝集力が高く定着ローラにトナーの一部が接着するオフセットの発生はない。しかし、完全溶融状態になると樹脂の粘度の低下が著しく、自己凝集力の低下が起こることから定着ローラに一部トナーが接着するという現象が起こる。したがって、実際の熱定着においてはトナーのゴム域範囲内における粘度範囲で定着が行われている。このように、ゴム域状態の粘度が高いトナーに使用される樹脂の融点はかなり高くなり、必然的に定着温度を上げざるを得ず、定着に必要な熱エネルギーは莫大となる。
【0003】
しかし、昨今、地球環境の保全のために省資源及び省エネルギーの要求が高まっており、電子写真方式を用いる画像形成装置においても、省エネルギーのために消費電力を抑える動きが活発化している。特に電力消費の激しい定着を行う分野においても低温度定着化が進んでいる。この低温度定着を実現するためには、当然トナーの軟化点あるいは融点を下げざるをえず、このためトナーに使用されている熱可塑性の樹脂の特性として、軟化点あるいは融点が下がると必然的に溶融粘度も下がるという性質がある。
【0004】
この性質は熱可塑性の樹脂の軟化点あるいは融点は樹脂の分子量,分子量分布,結晶化度,架橋度,分子間力等によって決まり、同一構造の樹脂の軟化点あるいは融点を下げるためには、このうちの分子量,架橋度を下げるか、分子量分布を狭くせざるを得ない。そして、分子量分布は樹脂の保存性の限界から下限が決まってくるので、分子量自体を下げると必然的に狭くなってしまう。一般に分子量を下げると分子鎖は短くなるために絡み合いが緩くなり溶融粘度は下がる。また、分子量分布が狭くなってもやはり分子鎖の絡み合いが緩くなり溶融粘度は下がる。さらに、分子間の架橋度を下げるとそれぞれの分子が動きやすくなるために溶融粘度は下がる。
【0005】
このような溶融粘度が下がった状態のトナーであっても、特公昭51―29825号公報の電子写真の定着方法や、特開昭63−118291号公報,特開昭63−118292号公報,特開昭63−118293号公報の熱転写記録方法に開示されるような技術により、オフセットすることなく定着することができる。
【0006】
特公昭51―29825号公報に記載されるものは、フィルムシートを利用した定着部で被定着物に熱を印加した後、フィルムシートと被定着物の密着を保ったまま冷却を行いトナーが固化した後引き剥がすというものであり、さらに強制冷却の概念も盛り込まれており、具体的な強制冷却方法として送風、水冷が挙げられている。
【0007】
また、ホットメルト印字媒体の公知技術として特開昭63−118291号公報,特開昭63−118292号公報,特開昭63−118293号公報に記載されるように、ワックスを主成分としたような粘度の低いホットメルト印字媒体であっても連続的な稼働状態でフィルムに対してオフセットの生ずることのない定着ができるようになった。一般に熱転写の印字媒体は主成分がワックスであり、ワックスの粘度は10から104程度であり、このような低粘度の印字媒体であってもオフセットが発生することはない。
【0008】
具体的には、これら技術は加熱溶融後、示差走査熱量計(DSC)で測定した温度がトップピーク値以下の温度に下がってからフィルムシートを引き剥がすというものである。特に、特開昭63―118291号公報では冷却方法として空気吹き付け、または冷媒として水、フレオンガス等で強制的に冷却を行うことが、特開昭63―118292号公報ではフィルムシートと被転写体とを密着した状態で冷却部を通過させることが、また特開昭63―118293号公報ではフィルムシートと被転写体とを引き剥がす機構を設け、また引き剥がすまでの間フィルムシートと被転写体を密着した状態に保つ機構も設けていることが記載されている。
【0009】
これらの効果としてはフィルムシート(定着部材)上に印字媒体(トナー)が残る現象(いわゆるオフセット)を防止している。したがって、この方式によれば従来の方式に比べて、溶融粘度の低いトナーでもオフセットを起こすことなく使用することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成の画像形成方法においても、従来使用しているような1013 [c poise]以上の溶融粘度が高めのトナーであれば特に問題はないが、1013 [c poise]以下のトナーを用いると、艶消しのレベルが下り光沢が出てしまう。特に、この傾向は溶融粘度が下がるとより顕著である。そして、モノクロ(白黒)の文字画像は光沢があると見にくく、光沢がないものが好まれている。実際に市場に流通している製品の殆どが光沢のない文字画像となっている。
【0011】
つまり、溶融粘度の高いゴム域状態において定着を行うと、この時トナーは完全に溶融していないので溶融粘度が非常に高く、比較的平滑な定着ローラ等で挟み込み加圧してもトナー層の表面は完全な平滑面にはならず凹凸がかなり残り、この凹凸面で光が乱反射し艶消し画像となる。
【0012】
一般に艶消しのモノクロトナーは、樹脂のいわゆるゴム域状態の範囲内で使用される。これはトナーにかかる温度が上昇するにつれて、トナーの樹脂の軟化が始まりゴム域状態となり、それと共に樹脂の溶融粘度が低下していく、さらに温度が高くなると樹脂の溶融粘度もさらに低下して完全溶融状態となる。この完全溶融状態になるとトナーの溶融粘度も低下して、定着ローラで挟み込みながら加圧するとトナー層は完全に押しつぶされ表面が平滑となり光沢が出てしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、前記従来技術の問題を解決することに指向するものであり、低温度定着を行う際に、溶融粘度の低いトナーによる画像形成を行ってもオフセットを起こすことなく、かつ光沢のない艶消しの画像を得る画像形成を行う定着装置に用いる加圧力の上限値と下限値の設定方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明に係る加圧力の上限値と下限値の設定方法は、加熱体を有しローラ状あるいはベルト状である定着部材と一対の加圧部材から成る定着部に、トナーによる粉像が形成された被定着物を搬送させ、トナーの軟化点あるいは融点以上の状態まで加熱を行い、トナーの溶解後に加熱を停止して冷却し、トナーの温度が軟化点あるいは融点以下となったときに、定着部において被定着物を定着部材から引き剥がして被定着物に対する画像形成を行う定着装置に用いる加圧力の上限値と下限値の設定方法であって、定着部材と加圧部材間の加圧力により被定着物を挟持させて画像形成する定着部材に艶消し画像を得る表面粗さを有し、定着部材の表面粗さRzが0.01μm以上500μm以下、またトナーの軟化点あるいは融点以上の温度における溶融粘度が10〜10 13 [c poise]であり、定着部材と加圧部材間の加圧力を溶融粘度をηとして、加圧力の上限値を線圧でP=((9/5)×Logη−4/5)/15以下の値に設定し、加圧力の下限値を線圧でP=((1/100)×Logη)/15[kg・f/cm]以上の値に設定することを特徴とする。
【0015】
また、定着部材が、定着ベルトであることを特徴とする。
【0016】
また、定着ベルトが掛けまわされる冷却ローラを備えたことを特徴とする
【0017】
前記設定方法によれば、被定着物に当たる定着部材の面の表面粗さRzが0.01〜500μmであれば、トナー溶融時にトナーの溶融粘度が低下して押しつぶされても表面粗さにより凹凸が形成されて、表面の光は乱反射することから光沢のない艶消し画像が得られ、また加圧力をトナーの軟化点あるいは融点以上の温度における溶融粘度をηとすると、線圧でP=((9/5)×Logη−4/5)/15からP=((1/100)×Logη)/15[kg・f/cm]であれば、トナーの接着性やトナー画像の再現性を損なうことなく光沢のない艶消しの画像得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態における実施例1である画像形成装置の定着部の機構を示した図である。図1において、1は定着ローラ、2は発熱体、3は加圧ローラ、4は冷却部、5は被定着物、5aはトナーである。
【0020】
図1に示す実施例1では、ハロゲンランプ等の発熱体2で加熱された定着ローラ1と加圧ローラ3で被定着物5を挟持して被定着物5上のトナー5aを加熱溶融する。さらに冷却部4により定着ローラ1が冷却され被定着物5上のトナー5aが冷却されて軟化点あるいは融点以下になった後、定着ローラ1より被定着物5が引き剥がされる。このとき、定着ローラ1のトナー5aに接触する側の面は表面粗さRzが0.01μm以上500μm以下としてあるため、トナー5aの表面に凹凸が形成されて、定着ローラ1上のトナー5aの表面は光沢の無い艶消しの画像となり易い。この図1において、冷却部4は回転するローラ状の形状でも良いし、固定されていてもよく、どのような形状であっても良い、また、内部に水等の冷媒を通して積極的に冷却を行っても良い。
【0021】
図2は本実施の形態における実施例2である画像形成装置の定着部の機構を示した図である。図2において、1は定着ローラ、1aは定着ベルト、1bは補助ベルト、2は発熱体、3,3′は加圧ローラ、5は被定着物、5aはトナー、6は冷却ローラである。
【0022】
図2に示す実施例2では実施例1の定着ローラ1の代わりに、定着ローラ1を使用してその上にエンドレスのフィルムまたはシートから成る無端ベルトの定着ベルト1aが冷却ローラ6と共にかけられている。また、加圧ローラ3は定着ベルト1aを介して定着ローラ1と被定着物5を挟持する加圧ローラであり、加圧ローラ3′と共に補助ベルト1bがかけられている。したがって、これは図1に示す実施例1の定着ローラ1に代えて定着ベルト1aを介するようにした形状でありその効果は同様である。また、このとき加圧ローラ3′及び補助ベルト1bはなくても良い。
【0023】
また、冷却ローラ6で冷却せずに定着ローラ1及び冷却ローラ6の間で空気等を吹き付けて冷却しても良いし、あるいは定着ローラ1及び冷却ローラ6の距離を充分とって自然冷却しても良い。
【0024】
そして、トナー5aが冷却され軟化点あるいは融点以下になった後、定着ベルト1aより被定着物5が引き剥がされる。さらに、定着ベルト1aがトナー5aに接触する側の面は、表面粗さRzを0.01μm以上500μm以下としてあるため被定着物5上のトナー5aの表面は光沢の無い艶消し画像となり易い。
【0025】
図3は本実施の形態における実施例3である画像形成装置の定着部の機構を示した図である。図3において、1aは定着ベルト、1bは補助ベルト、2aは線状発熱体、3は加圧ローラ、5は被定着物、5aはトナー、6は冷却ローラ、7,7′は補助ローラである。
【0026】
図3に示す実施例3では、実施例1の定着ローラ1の代わりに固定された線状発熱体2aにより定着ベルト1aを介して被定着物5を加熱する。加圧ローラ3は定着ベルト1aを介して線状発熱体2aで被定着物5を挟持する加圧ローラであり、この図3では補助ローラ7′と共に補助ベルト1bがかけられているが、補助ベルト1bと補助ローラ7′はなくても良い。冷却ローラ6は補助ローラ7と共に、線状発熱体2aを通る定着ベルト1aがかけられている。この場合にも補助ローラ7はなくてもよい。また、冷却ローラ6では冷却せず線状発熱体2aと冷却ローラ6の間で空気を吹き付ける等の自然冷却を利用しても良い。
【0027】
そして、トナー5aが冷却され軟化点あるいは融点以下になった後、定着ベルト1aより被定着物5が引き剥がされ、また定着ベルト1aのトナー5aに接触する側の面は表面粗さRzを0.01μm以上500μm以下としてあるため、定着ベルト1a側のトナー5aの表面は光沢の無い艶消し画像となり易い。
【0028】
なお、本発明の画像形成方法における現像方式としては、どのような方法でも可能であり、例えば、乾式現像の場合、一成分現像であっても良いし、または二成分現像であっても良く、トナージェットのような他の現像方式であっても良い。あるいは、湿式現像のようなものでも良い。
【0029】
以上の各実施例に示した構成において、低エネルギー低溶融粘度のトナーに対応すべく、低エネルギーでも可能な定着性改良の定着器を設け、定着においては熱を印加して挟み込み加圧するときに、定着部材がローラ状であるか、フィルムまたはシートから成るベルト状であって、被定着物に当たる面の平滑度として表面粗さRzが0.01μm以上500μm以下であれば、トナー溶融時にトナーの溶融粘度が低下して押しつぶされても定着面の表面粗さにより凹凸が形成され、表面は粗れた状態となって表面の光は乱反射することから光沢のない艶消し画像が得られることが明らかとなった。
【0030】
また、この画像形成方法において、従来通りの溶融粘度の高いトナーを使うこともできるが、特に省エネルギーの観点から使用されるトナーの溶融粘度が10〜1013 [c poise]以下であるような低エネルギー低溶融粘度のトナーと組み合わせることにおいても、本発明の課題を解決することができた。
【0031】
この傾向は定着部の表面粗さが大きければ大きいほど効果が高く、好ましくはRzで1μm以上、もっと好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上が望ましく、さらにもっと好ましくは10μm以上が好ましい。しかしあまり表面粗さが大きいと今度はトナー表面のぼそつき(トナー表面の定着圧力が表面粗さによって部分的に下がることにより、トナーのエッジ部での定着率が下がる部分ができ、形成されたライン等のエッジ部でトナーが少し脱落し切れ切れになったり、ベタ内においても一部トナーの脱落が発生する状態)が大きくなったり、画像の再現性が悪くなる他、表面が粗れすぎると、トナー画像の強度が下がりトナーの画像からの脱落の問題が生じるので、好ましくは400μm以下、もっと好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下、更にもっと好ましくは100μm以下が望ましい。
【0032】
また、定着時の加圧力が低すぎるとトナー表面の凹凸を潰しきることができずに表面の平滑性が下がり艶消しになり易いが、被定着物に対するトナーの接着が弱くなりトナーの脱落等の問題が起こりやすくなり、逆に高すぎるとトナー粉の粒子は潰されて表面が粗された定着部材の表面にそって密着し、トナー層の表面は定着部材の表面粗さにより凹凸が形成され艶消しとなるが、トナー層を潰しすぎて実際のトナーの粉像が太ってしまい画像の正確な再現性がなくなってしまう。
【0033】
加圧ローラの両側加圧で実験したところ加圧力が図4に示すグラフの範囲内であればよいことがわかった。図4に示すグラフ中の○印は5℃10%から35℃80%の環境で本発明の意図する品質が得られたことを示している。また、△印は常温常湿に於いては本発明の意図する品質が得られるが、高温高湿、低温低湿の環境ではそれぞれ問題があり、高温高湿の環境で圧力が高い場合、ドットが潰れすぎて画像が太りぎみになり、低温低湿の環境で圧力が低い場合、トナーの接着が少し甘くなりやすい。さらに、×は高温高湿の環境に於いて画像が完全に潰れて画像再現性に問題があり、低温低湿の環境に於いてはトナーの接着が甘くトナーの脱落が簡単に生じる。なお、グラフ中の縦軸は加圧の片側を表しているので両側加圧では2倍の加圧となっており、実験に使用した加圧ローラの実長は30cmであった。
【0034】
したがって、溶融粘度η [c poise]である時、定着部材と一対の加圧部材の加圧力が線圧でP=((9/5)×Logη−4/5)/15からP=((1/100)×Logη)/15[kg・f/cm]であれば充分実用の範囲内ではあるが、好ましくはP=((9/7)×Logη−2/7)/15からP=((9/700)×Logη−2/700)/15[kg・f/cm]、もっと好ましくはP=(Logη)/15からP=((19/1200)Logη−7/1200)/15[kg・f/cm]が良く、この範囲であればトナーの接着性、トナー画像の再現性のそれぞれを損なうことなく光沢のない艶消しの画像が得られることがわかった。
【0035】
なお、実際に定着材の表面を粗す方法としてはいろいろな方法が考えられるが、本発明はその方法に制約を受けるものではない。一例として定着材の表面をサンドブラストのようなもので機械的に粗しても良いし、定着材の表面に二次粒子径で0.01〜100μm程度のピグメントを分散した樹脂をコーティングしても良く、また成膜条件で表面に凹凸を付けてもよく、その他のどのような方法であっても表面粗さRzが0.01μm以上500μm以下となれば良い。
【0036】
また、トナーそれぞれに使用されるバインダー樹脂の一例としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できるが特にこれらに限定するものではなく、これらの樹脂に、必要に応じてカーボンブラックやカラー顔料を混練分散して使用すればよく、当然帯電制御剤の併用も可能である。
【0037】
また、粉体化した後、トナーの流動性を調整するためにシリカ、チタン、ストロンチウム等の添加剤を加えても良い。
【0038】
次に、前記の各実施例における画像形成装置の定着部の機構にて、(表1)に示す溶融粘度ηのトナーを用いて、光沢度(%)は日本電色工業(株)製の光沢度計を使用し、JISZ8741に基づいて、照射角度60°で測定を行った被定着部上に画像形成された艶消しの測定結果の例を示す。
【0039】
【表1】
Figure 0003901889
【0040】
第1例として、定着部材の表面粗さRzを1μm、使用トナーを(表1)に示すイエロー1、マゼンタ1、シアン1、ブラック1として、定着時のトナーの温度を140℃として、画像形成処理を行ったところ、すべての有彩色部及びブラック部ともに光沢のない艶消しの画像を得ることができた。
【0041】
また、第2例として、定着部材の表面粗さRzを2μm、使用トナーをイエロー2、マゼンタ2、シアン2、ブラック2、定着時のトナーの温度を110℃として、画像形成処理を行ったところ、すべての有彩色部及びブラック部ともに光沢のない艶消しの画像を得ることができた。
【0042】
同様に、第3例として、定着部材の表面粗さRzを3μm、使用トナーをイエロー1、マゼンタ1、シアン1、ブラック3、定着時トナーの温度を110℃として、画像形成処理を行ったところ、すべての有彩色部及びブラック部ともに光沢のない艶消しの画像を得ることができた。
【0043】
第4例として、定着部材の表面粗さRzを10μm、使用トナーをイエロー1、マゼンタ1、シアン1、ブラック2、定着時のトナー温度を110℃として、画像形成処理を行ったところ、すべての有彩色部及びブラック部ともに光沢のない艶消しの画像を得ることができた。
【0044】
第5例として、定着部材の表面粗さRzを4μm、使用トナーをイエロー2、マゼンタ2、シアン2、ブラック3、定着時のトナー温度を110℃として、画像形成処理を行ったところ、すべての有彩色部及びブラック部ともに光沢のない艶消しの画像を得ることができた。
【0045】
第6例として、定着部材の表面粗さRzを5μm、使用トナーをイエロー2、マゼンタ2、シアン2、ブラック3、定着時のトナー温度を140℃として、画像形成処理を行ったところ、すべての有彩色部及びブラック部ともに光沢ない艶消しの画像を得ることができた。
【0046】
第7例として、定着部材の表面粗さRzを10μm、使用トナーをイエロー1、マゼンタ1、シアン1、ブラック1、定着時のトナー温度を110℃として、画像形成処理を行ったところ、すべての有彩色部及びブラック部ともに完全に光沢のない艶消しの画像を得ることができた。
【0047】
以上の各例の光沢度の測定結果をまとめると、(表2)のようになる。
【0048】
【表2】
Figure 0003901889
【0049】
以上のことから、本発明の定着部の定着部材に表面粗さRzで0.01〜500μmとして、定着部材と一対を成す加圧部材が、線圧でP=((9/5)×Logη−4/5)/15からP=((1/100)×Logη)/15[kg・f/cm](η;溶融粘度)で加圧することにより、溶融粘度の低いトナーでもオフセットを起こすことなく、さらにトナーの接着性、トナー画像の再現性を損なうことなく光沢のない艶消しの画像を得ることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、被定着物に当たる定着部材の面の表面粗さRzが0.01〜500μmとすることで、トナー溶融時にトナーの溶融粘度が低下して押しつぶされても表面粗さRzにより凹凸が形成されて、表面の光は乱反射することから光沢のない艶消し画像が得ることができ、また加圧力をトナーの軟化点あるいは融点以上の温度における溶融粘度ηにおいて、線圧でP=((9/5)×Logη−4/5)/15からP=((1/100)×Logη)/15[kg・f/cm]とすることにより、被定着物へのトナーの接着性や、トナー層の潰しすぎによるトナー画像の再現性を損なうようなことなく光沢のない艶消しの画像が得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における実施例1である画像形成装置の定着部の機構を示す図
【図2】本発明の実施の形態における実施例2である画像形成装置の定着部の機構を示す図
【図3】本発明の実施の形態における実施例3である画像形成装置の定着部の機構を示す図
【図4】加圧ローラの加圧力とトナーの溶融粘度の関係を示す図
【符号の説明】
1 定着ローラ
1a 定着ベルト
1b 補助ベルト
2 発熱体
2a 線状発熱体
3,3′ 加圧ローラ
4 冷却部
5 被定着物
5a トナー
6 冷却ローラ
7,7′ 補助ローラ

Claims (3)

  1. 熱体を有しローラ状あるいはベルト状である定着部材と一対の加圧部材とから成る定着部に、トナーによる粉像が形成された被定着物を搬送させ、前記トナーの軟化点あるいは融点以上の状態まで加熱を行い、前記トナーの溶解後に加熱を停止して冷却し、前記トナーの温度が軟化点あるいは融点以下となったときに、前記定着部において前記被定着物を前記定着部材から引き剥がして前記被定着物に対する画像形成を行う定着装置に用いる加圧力の上限値と下限値の設定方法であって、
    前記定着部材の表面粗さRzが0.01μm以上500μm以下、またトナーの軟化点あるいは融点以上の温度における溶融粘度が10〜10 13 [c poise]であり、前記定着部材と前記加圧部材間の加圧力を前記溶融粘度をηとして、前記加圧力の上限値を線圧でP=((9/5)×Logη−4/5)/15以下の値に設定し、前記加圧力の下限値を線圧でP=((1/100)×Logη)/15[kg・f/cm]以上の値に設定することを特徴とする定着装置に用いる加圧力の上限値と下限値の設定方法。
  2. 前記定着部材が、定着ベルトであることを特徴とする請求項1記載の定着装置に用いる加圧力の上限値と下限値の設定方法
  3. 前記定着ベルトが掛けまわされる冷却ローラを備えたことを特徴とする請求項2記載の定着装置に用いる加圧力の上限値と下限値の設定方法
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