JP3901090B2 - 可動式分離帯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高速道路等の対向する車線間に設けられている分離帯の一部として設置し、緊急時に緊急車両等が上記分離帯設置個所を通過して別の車線(対向車線)へ移動できるようにするために用いる可動式分離帯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、高速道路では、対向車線の間に、走行車両の対向車線への飛び出しを防止するための防護柵を分離帯(中央分離帯)として設けるようにしてある。この種の分離帯は、一般には鉄筋コンクリート製としてあり、且つ車両衝突時の床版破壊防止を考慮して、上記分離帯設置位置となる対向車線の間の基礎にアンカーボルト等で一体に連結してなる構造としてある。
【0003】
ところで、上記高速道路にて交通事故等の災害が生じた場合には、緊急車両が発災現場へ出動するようになるが、高速道路では、出入路(出入口)の個所が限定されていると共に、上述したように対向車線同士の間が分離帯によって仕切られているため、緊急車両が発災現場に到達するためには、発災現場と同方向の車線で且つ発災現場の手前側の進入路から高速道路へ進入しなければならず、このために、上記発災現場と、その発災現場のある車線の発災現場手前側に位置する進入路との距離が長い場合には、たとえ対向車線側への進入路が上記発災現場のすぐ近くにあったとしても、上記緊急車両の現場到着に多くの時間を要するという問題が生じる虞がある。
【0004】
従来用いられている分離帯は固定式のため、対向車線間における分離帯設置位置を通して緊急車両を一方の車線から反対側の車線へ搬入させることは困難であったが、対向車線間に設けてある固定式の分離帯の所要間隔位置に、緊急時には緊急車両が分離帯設置位置を通過して対向車線へ移動できるようにするための機構として、たとえば、可動式の分離帯を予め設けておくようにすれば、高速道路上における災害発生時に発災現場が該発災現場がある車線側への進入路から遠く離れていても、近くに対向車線側への進入路がある場合には、該発災現場に近い対向車線側の進入路より緊急車両を高速道路に進入させ、上記発災現場よりも走行方向の手前側となる所要の個所で可動式の分離帯の部分を経て発災現場側の車線へUターンするよう移動させた後、発災現場へ向かわせるようにすれば、高速道路における緊急車両の発災現場への到着時間の遅れの問題を改善できると考えられる。
【0005】
このような考え方に基いて、対向車線間における車両の移動を可能にするために提案されている可動式の分離帯としては、図3に示す如く、高速道路の対向する車線1aと1bの間に設置されている固定式の分離帯2の所要個所に、緊急車両等の車両が通過できるよう車線方向に沿う所要長さの開口部3を形成すると共に、該開口部3に、防壁4を車線方向(前後方向)にスライド可能に配置してなる構成として、通常時は図3に二点鎖線で示す如く、上記防壁4により上記開口部3を閉じておく一方、緊急時には、図3に実線で示す如く、該防壁4を、上記開口部3に臨む分離帯2の端部に被さるようにスライドさせて上記分離帯開口部3を開放させることにより、該開口部3を経て対向車線1a,1b間における緊急車両等の車両の移動を行えるようにしたものや、図4に示す如く、上記と同様の固定式分離帯2の開口部3に、水平方向に延びる遮断部材5の一端部を、旋回中心軸6を介して水平方向に旋回できるよう設置すると共に、該遮断部材5の他端部に、図示しない駆動輪にて長手方向と直角な方向に走行できるようにした駆動手段を設けてなる構成として、通常時は、図4に実線で示す如く、上記遮断部材5を分離帯2の開口部3を塞ぐように配置して防護柵として機能させておく一方、緊急時には、上記駆動手段の駆動輪を回転駆動させることにより、図4に二点鎖線で示す如く、上記遮断部材5を、旋回中心軸6を中心として分離帯開口部3を開放させるよう旋回させて、該開口部3を通過して車両が対向車線1aと1bの間で移動できるようにしたもの等が従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
更に、別の可動式の分離帯としては、図5(イ)(ロ)(ハ)に示す如く、道路境界線7で区切られた4つ以上の走行レーン8(図では6レーン)を有する道路における中央部の隣接する複数の走行レーン8位置の地下部分に、1つのレーン8の幅よりもやや狭い幅寸法と所要の高さ寸法を有する仕切部材10を路面上方に所要量突出する状態から上面が路面と面一になる状態まで下降できるよう昇降可能に備えてなる中央分離帯形成装置9a,9bを、それぞれ対応する各走行レーン8の方向に配列させて設置した構成として、図5(ロ)又は(ハ)のいずれか一方の状態、すなわち、一方の中央分離帯形成装置9a又は9bの仕切部材10を、路面上に突出させた配置として車両防護柵として機能させると同時に、他方の中央分離帯形成装置9b又は9aの仕切部材10を、上面が路面と面一になるように地下に収納させた配置として、その上面を車両の走行面とさせることにより、対向する車線1aと1bの交通量の割合に応じて、上記対向する各車線1aと1bの走行レーン8の数を適宜増減できるようにしたものも従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−248522号公報
【特許文献2】
特開平11−280031号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特許文献1に示された可動式の分離帯のうち、固定式分離帯2の開口部3に、車線方向にスライド可能な防壁4を設けた形式のものでは、上記開口部3に臨む固定式分離帯2の端部の部分に、上記防壁4をスライドさせるためのガイドレール等の設置工事が必要になり、又、上記防壁4にて分離帯開口部3を閉鎖させているときに該防壁4の部分に車両が衝突したときに、該衝突車両が対向車線へ飛び出さないように、上記防壁4を防護柵として機能させるようにするためには、通常時においても上記防壁4を基礎に対して強固に固定しておくことができるようにするための固定手段を必要とすることから、構造が複雑化すると共に、設置工事が大掛かりになって手間を要するという問題がある。
【0009】
一方、上記特許文献1に示された分離帯開口部3に遮断部材5を旋回可能に設けた形式のものでは、万一、車両が上記遮断部材5の反旋回中心軸6側に衝突しても、遮断部材5が旋回しないようにするための固定手段として、上記遮断部材5の長手方向の所要間隔個所に、基礎上に穿設してある支持孔に上方からストッパー部材を挿入して位置固定するための図示しない姿勢保持手段を設けなければならず、構造が複雑化すると共に、分離帯開口部3を開放させるための手間が嵩んで、迅速な対応が困難になる虞が生じるという問題がある。
【0010】
なお、特許文献2に示された可動式の分離帯の構成において、緊急時に、道路中央部に設置してある中央分離帯形成装置9aと9bにより、双方の仕切部材10を共に上面が路面と面一になるように地下に収納させた配置とすれば、緊急車両等の車両が、該各仕切部材10の上側を通過して対向する車線1aと1bの間で移動できるようになると考えられるが、上記中央分離帯形成装置9a,9bを設置するためには、複数の走行レーン部分8の地面を掘削して、仕切部材10を昇降自在に地下に収容できるようにするための大きな地下空間を設けなければならず、設置工事が非常に大規模になるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、容易に設置することができると共に、常時は車両防護柵として使用でき、且つ緊急時には緊急車両等の車両を分離帯設置位置を経て反対車線へ搬入させることができる可動式分離帯を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、対向する車線間の所要位置に、2枚の扉体を並べて起立できるように配置して、該2枚の扉体の起立時の各下端部を中心として起伏可能に設けてなり、該扉体を、起立状態とすることにより防護柵として使用でき、且つ倒伏させることにより該倒伏状態の扉体の上側を車両が通過して上記対向する車線同士の間を移動できるようにした構成とし、具体的には、対向する車線間の所要位置における基礎上に一対の回転軸を回転自在に平行に設置し、該各回転軸に、水平方向に延びる扉体の幅方向一側部を各々一体に取り付け、且つ上記各回転軸の少なくとも一端部に、互いに噛合するギアを一体に取り付けると共に、一方の回転軸に起伏駆動装置を接続して、該起伏駆動装置により、上記各回転軸と一体に各扉体を互いに近接、離反する方向へ同期させて起伏できるようにした構成とする。
【0013】
通常時には起伏駆動装置にて各扉体を幅方向に起立させた状態とさせておくようにする。この状態において、一方の扉体に車両が衝突すると、該一方の扉体に他方の扉体側へ回転するような衝突水平荷重が作用するが、この際、他方の扉体に対しては、上記一方の扉体を回転させようとする荷重が、ギアを介して該他方の扉体を上記一方の扉体の回転方向と対向する方向へ回転させようとする荷重として作用させられるようになる。したがって、車両衝突時に上記衝突水平荷重が作用しても、一方の扉体と他方の扉体が押し付け合わされるようになるのみで各扉体が転倒することなく、このため車両の対向車線への飛び出しは防止される。
【0014】
災害発生などの緊急時には、起伏駆動装置により各扉体を互いに離反する方向へ回転させて倒伏状態とさせると、該各扉体の上側を車両が走行して通過可能となるため、緊急車両等の車両を通過させることにより該車両の対向車線間での移動が行われるようになる。
【0015】
又、各扉体の反回転軸側となる幅方向他側部の厚みを薄くするようにした構成とすることにより、各扉体を倒伏状態にしたときに、該各扉体上への車両の乗り降りをスムーズに行わせることができる。
【0016】
更に、回転軸同士の間隔を、各扉体を幅方向に起立させて互いに反回転軸側端部同士を接触させたときに、該各扉体の重心が、上記回転軸間に位置するようにした構成とすることにより、各扉体を起立状態とするときに、互いの反回転軸側端部同士を接触させた状態で安定させることができるため、各扉体の起立状態を外部より力を作用させることなく容易に維持することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1及び図2は本発明の可動式分離帯の実施の一形態を示すもので、図3に示したものと同様の高速道路における対向車線1aと1bの間に設置してある固定式分離帯2の開口部3に、該開口部3に対応する長さ寸法を有し且つ幅方向に起立させたときに防護柵として機能させることができる所要の幅寸法、たとえば、1m程度の幅寸法を有する扉体11a,11bを起伏可能に設けてなる構成として、通常時は上記扉体11a,11bを幅方向に起立させた状態で保持することにより車線1aと1bの間の車両用防護柵として使用でき、且つ緊急時には上記扉体11a,11bを倒伏させることにより、緊急車両等が該倒伏された扉体11a,11bの上側を走行して、対向する車線1aと1bの間で移動できるようにする。
【0019】
具体的構成を説明すると、上記分離帯開口部3における基礎上に、車線1a,1b方向に所要寸法延びる2本の回転軸12a,12bを、後述する所要間隔を隔てて平行に配置して、該各回転軸12a,12bの長手方向の所要間隔個所を、基礎上に設けた軸受13にてそれぞれ回転自在に支持させ、該各回転軸12a,12bにおける両端部を除く長手方向のほぼ全長に亘る位置に、上記扉体11a,11bの幅方向の一側部を、それぞれ一体に取り付け、上記回転軸12aの両端部にそれぞれ一体に取り付けたギア14aと、回転軸12bの両端部にそれぞれ一体に取り付けた上記ギア14aと同様(同歯数)のギア14bとを互いに噛合させ、更に、一方の回転軸12aの一端部近傍となる基礎上に起伏駆動装置15を設置すると共に、該起伏駆動装置15の出力軸15a上の動力伝達ギア16を、上記一方の回転軸12aのギア14aに噛合させた構成として、上記起伏駆動装置15より出力される回転駆動力を、出力軸15aより動力伝達ギア16、ギア14aを介し上記一方の回転軸12aへ伝達すると同時に、上記ギア14aよりギア14bを介し他方の回転軸12bへ伝達させて、該各回転軸12a及び12bと一体に上記各扉体11a及び11bを、各々対応する回転軸12a及び12bを中心に近接又は離反する方向へ同期して回転できるようにし、したがって、上記起伏駆動装置15を適宜操作することにより、上記各扉体11aと11bを、共に幅方向に起立させて反回転軸12a,12b側となる幅方向の他側部同士にて互いに接するよう配置させる図1に実線で示す如き起立状態と、該各扉体11aと11bを、共に基礎上に倒伏するように配置させる図1に二点鎖線で示す如き倒伏状態の2つの状態で切り替えることができるようにする。
【0020】
上記回転軸12aと12bの間隔は、該各回転軸12a,12bにそれぞれ取り付けてある扉体11a,11bの厚さ寸法よりも所要寸法広くなるように設定して、上記各扉体11a,11bを、上述したような起立状態とさせるときに、該各扉体11aと11bの重心位置が、いずれも上記回転軸12aと12bの間の領域に入るようにすることにより、上記各扉体11aと11bを起立状態に配置させるときに、互いの自重によりもたれ合わせることができて、外部からの動力を要することなく上記起立状態を安定に維持できるようにしてある。
【0021】
上記各扉体11a,11bは、該扉体11a,11bに所望される幅寸法と対応する所定の長さ寸法を有するH形鋼製の桁部材17を、扉体の11a,11bの長手方向に対応させて所要間隔で平行配置すると共に、該各桁部材17の一端(基端)部におけるウェブ部を、回転軸12a,12bの外周に合わせて円弧状に切り欠いて対応する回転軸12a,12bの長手方向所要位置における外周面に溶接して一体に取り付け、更に、回転軸12a,12bの長手方向に隣接する上記各桁部材17の他端(先端)部及び中間部同士を、みぞ形鋼やH型鋼製の梁部材18にてそれぞれ一体に連結して格子状の支持枠構造を形成して、該支持枠構造を形成している各桁部材17及び各梁部材18のフランジ部の外側面に、スキンプレート19,20をそれぞれ一体に取り付けてなる構成としてある。
【0022】
なお、上記各扉体11a,11bを倒伏状態とさせるときに上側となって車両を走行させるための面部、すなわち、起立状態における各扉体11a,11b同士の対向する一側面側には、スキンプレート19を全面に取り付けて、上記支持枠構造を形成している各桁部材17と各梁部材18、及び、対応する回転軸12a,12bをすべて覆うようにしてあり、更に、上記スキンプレート19としては、車両走行時の滑りを防止すべくチェッカープレートを使用するようにしてある。
【0023】
一方、起立状態における各扉体11a,11bの離反する側となる他側面側には、車両が衝突する虞の少ない起立状態の各扉体11a,11bにおける基礎近傍の低位置となる回転軸12a,12b側端部の領域を除いてスキンプレート20を取り付けるようにすることにより、扉体11a,11bの重量の軽減化を図ることができるようにしてある。
【0024】
上記各スキンプレート19,20の厚さは、車両用防護柵に求められる所定の衝突荷重及び緊急車両の活荷重に耐えることができるようにそれぞれ設定するようにしてある。
【0025】
更に、上記各扉体11a,11bの幅方向における反回転軸12a,12b側は、厚さ寸法が端部に向けて徐々に薄くなるように形成して、上記各扉体11a,11bを倒伏状態としてその上側に車両を通過させるときに、各扉体11a,11b上への車両の乗り降りをスムーズに行えるようにしてある。
【0026】
上記起伏駆動装置15としては、手動、電動、油圧駆動等、任意の駆動方式を採用し得る。なお、電動や油圧駆動とする場合であっても手動により上記扉体11a,11bを起伏作動させるための機構を併設しておき、仮に動力供給が断たれた場合であっても扉体11a,11bの起伏作動を人力により確実にバックアップできるようにしておくことが望ましい。
【0027】
なお、上記各ギア14a,14bが基礎と干渉する個所には、基礎面に窪みを設けて干渉を防止するようにしてある。21は軸受13を、基礎面に埋設してあるベースプレート22に対して強固に固定するためのアンカーボルト、23はギア14a,14bと動力伝達ギア16を覆うように設けたカバーである。
【0028】
上記構成としてある本発明の可動式分離帯を使用する場合、通常時は、図1に実線で示す如く、起伏駆動装置15により各扉体11a,11bを幅方向に起立させると共に、反回転軸12a,12b側端部同士を接触させて互いにもたれ合わせた起立状態としておく。この状態において、一方の扉体11aに対し、該扉体11aの臨む車線1a側から車両が衝突すると、該扉体11aにおける上端側となる反回転軸12a側端部に対して対向する車線1b側へ転倒させるような衝突水平荷重が作用するが、この際、上記扉体11aが車線1b側へ転倒しようとすると、上記扉体11aに反回転軸12b側端部で接触している扉体11bに対しては、上記扉体11aの回転軸12aよりギア14a,14bと回転軸12bを介して扉体11aの転倒しようとする方向とは逆の方向へ転倒させようとする荷重が同時に作用させられて、該扉体11bが扉体11aに対し押し付けられるようになるため、結果として、車両衝突時に上記扉体11aに衝突水平荷重が作用しても、該扉体11a反対車線1b側へ転倒させられることはなく、上記衝突水平荷重は、扉体11a及び11bより軸受13を介して基礎により受けられるようになる。したがって、衝突車両の対向車線1b側へ飛び出しは防止される。
【0029】
他方の扉体11bに対し、車線1b側から車両が衝突した場合にも、上記と同様に、該扉体11bに対し対向車線1a側へ転倒させるように作用する衝突水平荷重は、扉体11aを上記扉体11bの方向に押し付けるようにする荷重が同時に作用することにより打ち消され、これにより、扉体11bの転倒は防止されることから、衝突車両の対向車線1a側への飛び出しは防止される。
【0030】
高速道路上における交通事故等の災害が発生した場合には、起伏駆動装置15を操作することにより各扉体11a,11bを互いに離反する方向に回転させて、図1に二点鎖線で示す如く、共に基礎状に倒伏させた状態とすると、緊急車両等の車両が上記各扉体11a,11bの上側に乗り上げて走行できるようになるため、上記車両は、上記本発明の可動式分離帯が設置してある固定式分離帯2の開口部3を通して対向車線1aと1bの間での移動が行われるようになる。
【0031】
このように、上記本発明の可動式分離帯によれば、通常時は各扉体11a,11bを起立状態とさせておくことで車両用防護柵として使用でき、災害発生時等の緊急時には上記各扉体11a,11bを倒伏状態とさせることにより、該各扉体1a,11bの上側を通して緊急車両等の車両を対向する車線1a,1b間にて移動させることができ、したがって、高速道路上における発災現場が、該発災現場側の車線1a又は1bにおける走行方向の手前側の進入路から遠い場合であっても、近くに対向車線1b又は1a側の進入路がある場合には、該進入路から緊急車両を対向車線1b又は1aへ進入させた後、上記発災現場側の車線における走行方向の手前側に位置する上記本発明の可動式分離帯設置個所にて、発災現場側の車線1a又は1bへ移動させてUターンさせるようにすれば、上記緊急車両の発災現場到着時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0032】
又、上記のように緊急車両等の車両を、固定式分離帯2の開口部3を通過させて対向車線1aと1bとの間で移動させる場合、上記各扉体11a,11bは、その設置位置で倒伏させるのみでよく、しかも、各扉体11a,11bは、互いに反回転軸12a,12b側端部同士を接触させた起立状態としておくことのみにより、車両衝突時の衝突水平荷重に耐える構造としてあるため、設置工事は、上記固定式分離帯2の開口部3の部分のみで行うことができると共に、別の固定手段を付加する必要はなく、このため、従来提案されている固定式分離帯2の開口部3にスライド式の防壁4を設ける形式や、旋回中心軸6を中心に水平方向に旋回する遮断部材5を設ける形式の可動式の分離帯に比して容易に設置することができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、各扉体11a,11bは、起伏作動させる際に要する労力を考慮して軽減化を図ることができるよう、桁部材17と梁部材18からなる支持枠構造の表面にスキンプレート19,20を取り付けてなる構成とすることが好ましいが、起立状態の時に車両防護柵として機能できる強度、及び、寸法を備え、且つ倒伏状態のときにその上側を車両が走行できる面を備えていれば、寸法や構造は自在に設定してよいこと、各扉体11a,11bを倒伏状態としたときに該各扉体11a,11bの上端位置と軸受13の上端部に段差が生じる場合には、該段差を解消させることができるように、各扉体11a,11bの対向する面側における厚み寸法を増加させるようにしてもよいこと、各回転軸12a,12bに取り付けるギア14aと14bは、扉体11a,11bが起立状態から倒伏状態まで回転するときに互いに噛合させることができれば、周方向の所要範囲の領域のみに設けるようにしてもよいこと、起伏駆動装置15の出力軸15a上の動力伝達ギア16は、回転軸12b上のギア14bに噛合させてもよく、更には、互いに噛合するギア14a,14bを介し連動するようにしてある回転軸12a又は12bのいずれか一方に動力を伝達できれば、回転軸12a又は12bの一端部に継手を介し出力軸15aを直接接続させる等、動力の伝達機構としてはいかなる機構を採用してもよいこと、上記実施例においては、本発明の可動式分離帯を高速道路の中央分離帯として設ける場合について説明したが、たとえば、橋、高架、トンネル等、災害発生等の緊急時に、緊急車両やその他の車両を、対向車線の間で分離帯設置個所を越えて移動させる必要が生じる可能性のある道路であれば、一般道に設けるようにしてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0034】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明の可動式分離帯によれば、対向する車線間の所要位置に、2枚の扉体を並べて起立できるように配置して、該2枚の扉体の起立時の各下端部を中心として起伏可能に設けてなり、該扉体を、起立状態とすることにより防護柵として使用でき、且つ倒伏させることにより該倒伏状態の扉体の上側を車両が通過して上記対向する車線同士の間を移動できるようにした構成とし、具体的には、対向する車線間の所要位置における基礎上に一対の回転軸を回転自在に平行に設置し、該各回転軸に、水平方向に延びる扉体の幅方向一側部を各々一体に取り付け、且つ上記各回転軸の少なくとも一端部に、互いに噛合するギアを一体に取り付けると共に、一方の回転軸に起伏駆動装置を接続して、該起伏駆動装置により、上記各回転軸と一体に各扉体を互いに近接、離反する方向へ同期させて起伏できるようにした構成としてあるので、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1) 通常時は各扉体を起立状態とさせておくことで車両用防護柵として使用でき、且つ緊急時には上記各扉体を倒伏状態とすることにより、該各扉体の上側を通して緊急車両等の車両を対向する車線間で移動させることができる。したがって、高速道路等の進入個所が制限されている道路にて災害が発生した場合に、発災現場が、該発災現場側の車線における走行方向の手前側の進入個所から遠い場合であっても、近くに対向車線側の進入個所がある場合には、該進入個所から緊急車両を対向車線へ進入させた後、上記発災現場側の車線における発災現場よりも走行方向の手前側に位置している本発明の可動式分離帯設置個所にて、発災現場側の車線へ上記緊急車両をUターンするように移動させれば、上記緊急車両の発災現場到着時間の短縮化を図ることが可能になる。
(2) 緊急車両等の車両を、対向車線間で移動させる場合、各扉体はその設置位置で倒伏させるのみでよいため位置を移動させる必要はなく、しかも、各扉体は起立状態としておくことのみにより、車両衝突時の衝突水平荷重に耐えさせることができるため、設置工事を、固定式分離帯の開口部のみで行うことができて、従来提案されている可動式の分離帯に比して容易に設置することができる。
(3) 各扉体の反回転軸側となる幅方向他側部の厚みを薄くするようにした構成とすることにより、各扉体を倒伏状態にしたときに、該各扉体上への車両の乗り降りをスムーズに行わせることができる。
(4) 回転軸同士の間隔を、各扉体を幅方向に起立させて互いに反回転軸側端部同士を接触させたときに、該各扉体の重心が、上記回転軸間に位置するようにした構成とすることにより、各扉体を起立状態とするときに、互いの反回転軸側端部同士を接触させた状態で安定させることができるため、各扉体の起立状態を外部より力を作用させることなく容易に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可動式分離帯の実施の一形態を示すもので、切断概略正面図である。
【図2】図1の可動式分離帯の一部切断側面図である。
【図3】従来提案されている可動式の分離帯の一例を示す概略斜視図である。
【図4】従来提案されている可動式の分離帯の他の例を示す概略斜視図である。
【図5】従来提案されている可動式の分離帯の更に他の例を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)と(ハ)はそれぞれ異なる位置に中央分離帯を形成させた状態を示す(イ)のA−A方向矢視図である。
【符号の説明】
1a,1b 車線
11a,11b 扉体
12a,12b 回転軸
14a,14b ギア
15 起伏駆動装置
Claims (4)
- 対向する車線間の所要位置に、2枚の扉体を並べて起立できるように配置して、該2枚の扉体の起立時の各下端部を中心として起伏可能に設けてなり、該扉体を、起立状態とすることにより防護柵として使用でき、且つ倒伏させることにより該倒伏状態の扉体の上側を車両が通過して上記対向する車線同士の間を移動できるようにしたことを特徴とする可動式分離帯。
- 対向する車線間の所要位置における基礎上に一対の回転軸を回転自在に平行に設置し、該各回転軸に、水平方向に延びる扉体の幅方向一側部を各々一体に取り付け、且つ上記各回転軸の少なくとも一端部に、互いに噛合するギアを一体に取り付けると共に、一方の回転軸に起伏駆動装置を接続して、該起伏駆動装置により、上記各回転軸と一体に各扉体を互いに近接、離反する方向へ同期させて起伏できるようにした構成を有することを特徴とする可動式分離帯。
- 各扉体の反回転軸側となる幅方向他側部の厚みを薄くするようにした請求項2記載の可動式分離帯。
- 回転軸同士の間隔を、各扉体を幅方向に起立させて互いに反回転軸側端部同士を接触させたときに、該各扉体の重心が、上記回転軸間に位置するようにした請求項2又は3記載の可動式分離帯。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002380108A JP3901090B2 (ja) | 2002-12-27 | 2002-12-27 | 可動式分離帯 |
Applications Claiming Priority (1)
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