JP3900560B2 - 膜分離装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は膜分離装置に係り、特に、フッ素及び/又は重金属含有排水の凝集処理水の固液分離手段として好適な膜分離装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素及び/又は重金属含有排水の処理方法として、排水にPAC(ポリ塩化アルミニウム)やFeCl3 (塩化第二鉄)等の凝集剤を添加すると共にpH調整して凝集処理し、得られた凝集処理液を膜分離装置で固液分離する方法が知られている。
【0003】
図2は、このような排水処理に用いられる従来装置を示す。排水は、配管11よりpH計1A及び撹拌機1Bを備える凝集反応槽1に導入され、配管12からのpH調整剤(NaOH等のアルカリ又はHCl,H2 SO4 等の酸)でpH調整されると共に、配管13からの凝集剤(PAC又はFeCl3 等)で凝集処理される。凝集処理水は配管14から循環槽2に導入され、循環ポンプP1 により配管15,16を経て膜モジュール3の1次室(原水室)3Aに導入される。
【0004】
膜モジュール3の膜を透過した透過水は、膜モジュール3の2次室(透過水室)3Bから配管17、定流量弁V1 を備える配管18を経て逆洗ポット4に流入し、更に、弁V3 を備える配管19より系外へ排出される。
【0005】
一方、膜濃縮水は、配管20より循環槽2に返送され、循環処理される。なお、循環槽2内の液は、必要に応じて返送ポンプP2 により配管21を経て凝集反応槽1に返送される。
【0006】
この装置において、膜モジュール3の膜としては、MF(精密濾過)膜又はUF(限外濾過)膜が用いられることが多い。
【0007】
膜モジュール3の逆洗に際しては、循環ポンプP1 を停止して、膜モジュール3への給水を止め、逆洗ポット4内の処理水(透過水)を逆洗弁V2 を備える配管22から配管17を経て膜モジュール3に逆流させる。膜モジュール3の2次室3Bから1次室3Aに流入した逆洗水は配管20より循環槽2に送給される。
【0008】
膜モジュール3では、このような逆洗操作と凝集処理水の膜分離処理とを交互に行うが、このように、逆洗を行っても、経時的に膜モジュール3の膜面に分離汚泥が固着し、逆洗では膜分離性能を回復し得なくなる。
【0009】
そこで、この場合には、装置の運転を停止して膜モジュール3の薬品洗浄を行う。薬品洗浄は、通常の場合、HCl、(COOH)2 、H2 SO4 等の酸と、NaOH等のアルカリとを用いて実施される。この薬品洗浄後の運転の再開に当っては、系内から洗浄薬品を排出させた後、工業用水や純水で系内の薬品を十分に洗い出す。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
膜モジュール3の薬品洗浄後、工業用水や純水で押し出し洗浄を行っても系内に薬品が残留する場合がある。この場合、薬品洗浄後の運転再開時に、循環槽2から膜モジュール3に導入される膜原水のpHが洗浄薬品の酸又はアルカリにより、凝集反応槽1における設定pH範囲、即ち凝集に好適な適正pH範囲から外れることがある。
【0011】
凝集反応槽1内のpHが適正範囲を外れると、凝集汚泥の微細化、固液分離性の悪化、又は再溶解などの凝集不良が起きる。例えば、凝集剤としてPACを用いた場合、pH8.5以上又はpH5.5以下ではAl3+が溶出し、pH5.5以下では更に排水中の金属も溶出してくる。また、pH8〜8.5では、凝集汚泥は固液分離性が悪いものとなる。
【0012】
このような適正pH範囲外のpH条件下で凝集処理された凝集処理水を膜モジュール3に導入すると分離性の低下した汚泥で膜面が著しく汚染され透過水量が早期に低下したり、透過水中に金属イオンが多量に溶出して処理水質を低下したりするようになる。かかる膜汚染を防止すると共に処理水質を維持するために、適正pH範囲を外れた凝集処理水の膜モジュールへの流入を防止する必要がある。
【0013】
しかしながら、従来においては、図2に示す如く、凝集反応槽1ではpH計1Aが設けられてpH制御が行われているが、循環槽2にはpH計は設けられておらず、膜モジュール3に導入される凝集処理水のpHの監視は行われていない。
【0014】
なお、耐酸性、耐アルカリ性が低いRO(逆浸透)膜を用いた膜分離装置では、循環ラインにpH計を設け、循環ラインの水が設定pH範囲を外れた場合には、膜モジュールへの給水ポンプ(循環ポンプ)を停止して原水の流入を阻止することがある。しかしながら、この方法を図2に示すような凝集処理水を膜分離処理する装置に適用した場合には、次のような不具合が生じる。
【0015】
即ち、フッ素及び/又は重金属含有排水の凝集処理水を膜分離処理する図2の装置において、循環槽2、循環ポンプP1 を備える配管15、配管16、膜モジュール3の1次室3A及び循環配管20で構成される循環系内の水の汚泥濃度は2000〜60000mg/L程度とかなり高い濃度となっている。このため、循環ポンプP1 を停止すると、このような高汚泥濃度の水が膜モジュール3の1次室3Aに滞留し、膜モジュール3内で汚泥が沈殿して膜面に付着する。このため、循環ポンプP1 停止後には、ただちに工業用水等の清浄な水を膜モジュール3の1次室3Aに供給して沈殿した汚泥を押し出し洗浄しておく必要がある。例えば、洗浄水槽5内の水又は系外の用水を洗浄ポンプP3 で配管24,16より膜モジュール3の1次室3Aに供給して1次室3A内の汚泥を押し出す。このような洗浄には、洗浄用水が大量に必要になると共に、この洗浄排水(押出水)を処理する必要も生じる。
【0016】
本発明は上記従来の問題点を解決し、膜分離装置の原水が適正pH範囲を外れても膜汚染や処理水水質の低下を防止することができ、しかも、膜分離処理の再開に当っては、押し出し洗浄等を必要としない膜分離装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の膜分離装置は、分離膜を有する膜モジュールと、被処理水を該膜モジュールの1次室に供給し、該1次室からの濃縮水を該被処理水に混合するようにした被処理水の循環供給手段と、該膜モジュールの2次室から透過水を取り出す透過水取出手段と、を有する膜分離装置において、前記循環供給手段にpH検出手段を設けると共に、該透過水取出手段に弁を設け、該pH検出手段の検出値に基いて該弁の開閉を制御するようにしたことを特徴とする。
【0018】
本発明の膜分離装置では、循環供給手段に設けたpH検出手段の検出pHが所定範囲外の場合には、透過水取出手段の弁を閉じ、膜モジュールの1次室の水が2次室へ透過しないようにする。これにより、適正pH範囲を外れた凝集処理水などの被処理水が膜を透過することによる膜汚染や処理水水質の低下を防止することができる。
【0019】
また、循環供給手段内の水を常時循環させておくことができるため、膜モジュールの1次室での汚泥の沈殿による閉塞はなく、膜分離処理の再開に当って、押し出し洗浄を行う必要がない。
【0020】
なお、本発明の膜分離装置では、透過水取出手段の弁を閉とすると、透過水が排出されなくなり、膜モジュールの2次室側の圧力の上昇が起こる。このため、膜分離装置の耐圧性が要求されるように考えられるが、このように2次室の圧力が上昇しても、1次室側の圧力と同程度(通常の場合1.5kg/cm2 程度)までであり、通常の逆洗可能な膜分離装置が備える耐圧性で十分に対応可能である。従って、膜モジュールに特別な耐圧構造を具備させる必要はない。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る膜分離装置を備えた凝集処理装置を示す系統図である。
【0022】
図1の装置は、循環槽2にpH計2A及びpH調整剤の供給配管2Bが設けられ、膜モジュール3の2次室3Bから透過水を取り出す配管17にpH計2Aと連動する自動弁V4 が設けられている点が図2に示す従来の装置と異なり、その他は同様の構成とされている。従って、図1において、図2に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。ただし、図1において、洗浄水槽5及び洗浄ポンプP3 ,洗浄配管24は図示を省略してある。
【0023】
図1に示す装置においても、前述の図2に示す装置における処理方法と同様に、凝集処理及び膜分離処理が実施される。図1に示す装置においては、pH計2Aにより循環槽2内の液pHを計測し、この計測値が予め定めた設定pH範囲である場合には自動弁V4 を開として透過水を採水する。pH計2Aの計測値がこの設定pH範囲を外れた場合には、自動弁V4 を閉として透過水の採水を停止する。
【0024】
この採水停止期間において、配管2Bより酸又はアルカリのpH調整剤を循環槽2に添加して循環系内のpHを設定pH範囲に調整し、透過水の採水を再開できるようにする。
【0025】
この透過水の採水停止期間において、循環ポンプP1 は停止せず、配管20、循環槽2、配管15,16及び膜モジュール3の1次室3Aよりなる循環系内を水が循環するため、1次室3Aで汚泥が沈殿することはなく、膜面の閉塞が防止される。従って、透過水の採水を再開するに当っては単に自動弁4を開くだけでよく、1次室3Aを洗浄する必要はない。
【0026】
なお、透過水の採水停止期間に循環槽2内のpHを調整するには、循環槽2にpH調整剤を添加して直接調整しても良く、循環槽2内の液を返送ポンプP2 で配管21より凝集反応槽1に返送すると共に、凝集反応槽1から配管14より凝集処理液を受け入れることで調整しても良い。
【0027】
図1に示す装置において、pH計2Aによる自動弁V4 の開閉の基準となる設定pH範囲は、処理対象水系に応じて適宜決定される。例えば、スーツ混合脱硫排水等の排水にPACを添加して凝集処理し、凝集処理水を膜分離処理する場合にはpH6〜8.5程度が好ましい。即ち、後述の参考例1〜3の結果からも明らかなように、PACによる凝集処理は、特にpH6.0〜6.5で安定し、pH9以上ではAl3+の溶出や膜汚染によるフラックスの低下が起こり、pH5以下でもAl3+の溶出が起こる。また、Fe2+が存在するときもpHによってFe2+の溶出が起こる。
【0028】
なお、本発明は図示のものに限定されるものではない。
【0029】
例えば、pH計2Aは循環槽2の他、循環配管20や原水供給配管15,16に設けることもできる。また、図1の装置においては、循環供給手段は、循環配管20、循環槽2及び原水供給配管15,16で構成されるが、循環槽2は必ずしも必要とされず、循環配管を直接原水供給配管に接続し、pH計を循環配管又は原水供給配管に設けたものであっても良い。なお、通常の場合、この循環供給手段の循環配管又は循環槽には、汚泥引抜き配管(図示せず)が設けられる。
【0030】
また、本発明の膜分離装置は、図1に示すような凝集処理水の膜分離処理に限らず、その他活性汚泥等の膜分離処理にも適用することができる。
【0031】
【実施例】
以下に参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0032】
なお、以下において、フラックスは25℃、膜間差圧0.5kg/cm2 の場合に換算した値で示してある。
【0033】
参考例1
次の水質を有するフッ素含有排水(火力発電所の定常排水)に凝集剤としてPACを2000mg/L添加すると共に、酸として塩酸、アルカリとしてNaOHを添加して凝集処理し、生じたpH6〜6.5の凝集処理水(SS:20000mg/L)を下記条件で膜分離処理した。
【0034】
排水(火力発電所の定常排水)の水質
F:29mg/L
Al:0.5mg/L
pH:6.1
膜分離条件
使用した膜:膜面積2m2 のMF膜(孔径0.2μm)
膜モジュールの流入水量:0.44m3 /Hr
初期の透過水量:17m3 /m2 ・day
その結果、運転期間(30時間)中の処理水の平均水質は表1に示す通り良好であり、フラックスの低下も0.18m3 /m2・dayと比較的低い値であった。
【0035】
参考例2
参考例1において、膜分離処理する凝集処理水のpHを9〜10に制御したこと以外は同様に処理を行い、同様に処理水の平均水質及びフラックスの低下を調べ、結果を表1に示した。
【0036】
参考例3
参考例1において、膜分離処理する凝集処理水のpHを5.0〜5.5に制御したこと以外は同様に処理を行い、同様に処理水の平均水質及びフラックスの低下を調べ、結果を表1に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1より、PACによる凝集処理水は、pH6〜6.5の範囲であれば、Al3+の溶出やフラックスの低下もなく安定に膜分離処理できるが、pH9〜10の高pH域では、Al3+が溶出し、また、膜の汚染でフラックスの低下が著しく、pH4.5〜5の低pH域でも、フラックスの低下が認められる。
【0039】
実施例1
図1に示す装置により、参考例1で処理したものと同様の排水を、同様に凝集処理し、凝集処理水を下記条件で膜分離処理した。なお、自動弁V4 は、pH計2Aの計測値がpH5.7〜7.5の範囲では開,pH5.7未満、7.5超では閉となるように制御した。
【0040】
膜分離条件
使用した膜:膜面積2m2 のMF膜(孔径0.2μm)
膜モジュールの流入水量:0.44m3 /Hr
初期の透過水量:17m3 /m2 ・day
逆洗操作:15分運転毎に1回の割合で透過水4Lを5〜10秒逆流させて逆洗した。
【0041】
なお、処理に当っては、薬品洗浄後の運転再開時の状況を想定して、運転の途中で循環槽2のpHを2日に1回の割合で2時間だけpH9〜10とした(その他の期間はpH6〜6.5)。
【0042】
その結果、実施例1において循環槽2のpHが9〜10の期間は取出配管17の自動弁V4 が閉じて透過水の採水は行われず、循環槽2のpHが6〜6.5の期間のみ透過水が採水された。
【0043】
このため、運転期間(10日)中の処理水の平均水質は表2に示す通り良好であり、フラックスの低下も表2に示す通り低く抑えられた。
【0044】
実施例2
実施例1の定常排水に代えて火力発電所の非定常排水(F:5mg/L、Al:20mg/L、Fe:800mg/L、pH:2.8)を処理し、また、自動弁の開閉をpH計2Aの計測値がpH8〜8.8では開、pH8未満、pH8.8超では閉となるように制御した。通常の処理の期間中は凝集処理水のpHを8〜8.5としているが、薬品洗浄後の運転再開時の状況を想定して運転の途中で循環槽2のpHを2日に1回の割合で2時間だけ4.5〜5とした。その他は実施例1と同様に図1に示す装置により処理を行った。
【0045】
処理水の平均水質及びフラックスの低下を調べ、結果を表2に示した。
【0046】
比較例1,2
実施例1,2において、pH計2Aと自動弁V4 とによる透過水の採水停止を行わず、連続運転としたこと以外はそれぞれ同様にして処理を行い、処理水の平均水質及びフラックスの低下を調べ、結果を表2に示した。
【0047】
【表2】
【0048】
表2より、本発明の膜分離装置によれば、膜汚染によるフラックスの低下を防止して良好な水質の処理水を安定して得ることができることがわかる。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の膜分離装置によれば、適正pH範囲を外れた被処理水の膜透過を自動的に阻止することができるため、適正pH範囲外の原水を膜分離処理することによる膜汚染及びそれによるフラックスの低下や処理水水質の低下を防止することができる。しかも、透過水の採水再開に当って、膜モジュール内を押し出し洗浄する必要もないことから、洗浄用水の節水を図ると共に、洗浄排水処理量の増大も防止される。
【0050】
このため、本発明の膜分離装置によれば、効率的な膜分離処理を行って、長期に亘り高水質処理水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の膜分離装置の実施の形態を示す排水処理装置の系統図である。
【図2】従来の排水処理装置の系統図である。
【符号の説明】
1 凝集反応槽
2 循環槽
2A pH計
3 膜モジュール
3A 1次室
3B 2次室
4 逆洗ポット
5 洗浄水槽
V4 自動弁
Claims (1)
- 分離膜を有する膜モジュールと、
被処理水を該膜モジュールの1次室に供給し、該1次室からの濃縮水を該被処理水に混合するようにした被処理水の循環供給手段と、
該膜モジュールの2次室から透過水を取り出す透過水取出手段と、
を有する膜分離装置において、
前記循環供給手段にpH検出手段を設けると共に、該透過水取出手段に弁を設け、該pH検出手段の検出値に基いて該弁の開閉を制御するようにしたことを特徴とする膜分離装置。
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