JP3900303B2 - 大表面積の窒化物、炭化物及び硼化物電極並びにその製造方法 - Google Patents

大表面積の窒化物、炭化物及び硼化物電極並びにその製造方法 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、一般に、キャパシタ、バッテリ、燃料セル、電気化学的な合成反応炉、センサ及びその他のエネルギー蓄積/変換装置に係り、より詳細には、このような装置に使用するための電極に係る。
先行技術の説明
電極は、例えば、バッテリ、燃料セル及びキャパシタを含む多数の種類のエネルギー蓄積及び変換装置において重要な要素である。電子業界における技術的な進歩は、電気的及び電気化学的エネルギー及び電力密度の増加を達成するために電極の体積及び重量を減少する著しいニーズを生み出した。一般に、エネルギー蓄積装置の小型化及び軽量化の進歩は、他の電子部品の小型化及び携帯性と歩調が合っていない。
電気的及び電気化学的なエネルギー蓄積及びピーク電力は、一般的に、電極の使用可能な表面積で評価される。即ち、蓄積エネルギー及びピーク電力と電極の重量及び体積との比を増加する1つの方法は、電極の表面積を増加することである。
公知技術は、大きな比面積(かさのある材料の質量又は体積で表面積を除算したもの)をもつ材料を形成するための多数の方法を教示している。米国特許第4,515,763号及び米国特許第4,851,206号は、金属炭化物及び窒化物粉末触媒のような材料の調製を教示している。しかしながら、これらの特許は、電解溶液の導電率又は安定性も、これら粉末触媒を電極にいかに塗布するかも教示していない。
また、公知技術は、大表面積電極の3つの基本的な形式を識別している。1つの形式は、粗面及び大きな比表面積を与えるように機械的又は化学的にエッチングされた金属性本体より成る。エッチング又はパターン化された金属表面に基づく大表面積電極は、米国特許第5,062,025号に開示されている。第2の形式の大表面積電極は、炭素粉末又は発泡物に基づくもので、米国特許第5,079,674号及び米国特許第4,327,400号に開示されている。第3の種類の大表面積電極は、例えば、酸化ルテニウムのような導電性金属酸化物に基づくもので、米国特許第5,185,679号に開示されている。これら形式の各電極は、商業的な電気的又は電気化学的エネルギー蓄積及び変換装置の基礎となるが、以下に取り上げる1つ以上の基準に対して性能が欠如している。
特に、現在入手できる大表面積の金属電極は、電気化学的な安定性に限度がある。金属は、一般に酸化環境において不安定であり、従って、それらの使用は、正の還元電極又はアノードに限定される。
大表面積の炭素電極は、導電率が比較的低くそして孔サイズの分布及び表面積の制御が困難であるという制約がある。ほとんどの大表面積の炭素系電極は、炭素物質をそれより高い導電性の支持体又は基板に分散及び接合することによって形成される。これらの多段階プロセスは、分散剤、バインダー及び導電率向上添加物の使用を必要とする。
大表面積の酸化ルテニウム系電極も、電気化学的安定性並びに電極材料のコスト及び入手性に制約がある。公知技術は、酸化ルテニウムが負の酸化電極又はカソードとして使用されるときにその大表面積を安定化するのに添加物を使用できることを示している。不都合にも、酸化ルテニウム及び金属酸化物は、一般に、正の還元電極又はアノードとして使用する場合に安定化できない。これらの材料は、1.2ボルト程度の正の電位に限定され、これを越えると、電気化学的反応が生じて、電極材料が不可逆に劣化する。
発明の要旨
電極として使用するためには、付加的な化学的及び物理的特性が所望される。電極材料は、露出面の薄い誘電体層又は不動態化層を除いて、実質的に且つ非常に導電性でなければならない。又、大表面積電極材料は、広範囲の処理及び動作環境のもとで化学的及び物理的に安定でなければならない。より詳細には、電極材料は、電気的及び電気化学的蓄積及び変換装置に一般に使用されるイオン移動電解液の存在中で大きな表面積及び孔サイズ分布を保持しなければならない。更に、電極材料は、エネルギー蓄積及び変換装置の動作中に設計上又は偶発的に生じる広範囲な正及び負の電位のもとで、これら所望の特性を保持するのが望ましい。更に、大きな表面積、高い導電率及び物理的/化学的安定性をもつために、電極材料は、イオン移動電解液で容易に湿らされねばならず、既存の製造プロセス及び製造装置に対して変更できねばならず、そして安価で、広く入手でき且つ環境に受け入れられる材料から組み立てられねばならない。
本発明は、電気的及び電気化学的なエネルギー蓄積及び変換装置に使用するための新規な形式の大表面積電極を提供する。この電極は、導電性の遷移金属窒化物、炭化物、硼化物又はその組合体を含み、金属は、典型的に、モリブデン又はタングステンである。
別の実施形態においては、本発明の電極を製造する方法であって、金属が典型的にモリブデン又はタングステンとすれば、金属酸化物の層を形成又は付着し;そして金属酸化物の層を高い温度で化学的還元環境において窒素、炭素又は硼素の発生源に曝して、所望の金属窒化物、炭化物又は硼化物フィルムを形成する段階を含む方法が提供される。露出条件を入念に制御することにより、窒素処理、炭素処理又は硼素処理化学反応は、フィルム先駆物質に対して相当に改善された比表面積を生じることができる。通常、窒素、炭素及び硼素の発生源は、各々、アンモニア、メタン及びジボランである。
更に別の実施形態においては、100mF/cm2の比容量及び100mj/cm3のエネルギー密度を有し、そして現在入手できる電極に比して導電率及び化学的安定性が改善された本発明の大表面積電極を備えた超キャパシタ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1は、大表面積電極を製造する方法の段階を示すブロック流れ線図である。
図2は、酸化物フィルムを大表面積電極に変換するのに使用される温度グラフの例示である。
図3は、大表面積電極を製造する別の方法の段階を示すブロック流れ線図である。
図4は、本発明によるキャパシタの拡大図である。
図5は、窒素処理、炭素処理及び/又は硼素処理の前の酸化物フィルムを1000倍の倍率で示す走査電子顕微鏡写真である。
図6は、窒素処理、炭素処理及び/又は硼素処理の後のフィルムを8000倍の倍率で示す走査電子顕微鏡写真である。
好ましい実施形態の詳細な説明
比表面積の大きな窒化物、炭化物及び硼化物は、先駆物質を高い温度において窒素、炭素又は硼素源と反応させるか、又は窒素、炭素又は硼素の適当な発生源との反応により窒化物、炭化物又は硼化物を相互変換することによって生成される。
図1を参照すれば、金属酸化物又は可溶性先駆物質が所望の濃度で適当な溶媒に混合される。適当な化合物は、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、チタン及びジルコニウムのような金属の水溶性の塩、有機金属錯体及びアルコシドのような材料である。これらの金属及び他のものは、周期律表のIII、IV、V、VI及びVII族から選択される。溶液は、ディップコーティング又はスプレー付着により基板に付着される。物理的な蒸着(蒸着コーティング)又はプラズマアークスプレーのような他の付着方法も選択できる。適当な基板は、チタン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、タングステン及びルテニウム酸化物のような材料である。これらの金属及び他のものは、周期律表のIV、V、VI、VII及びVIII族から選択される。先駆物質の溶液が基板に付着されると、適当な温度において材料が乾燥される。
乾燥した材料は、酸化剤と反応することにより酸化物に化学的に変換される。或いは又、適当な基板材料の表面を適当な酸化剤との反応により酸化することもできるし、又は酸化物フィルムを蒸着段階により基板に付着することもできる。適当な酸化剤は、酸素、水、窒素酸化物及び炭素酸化物のような材料である。
酸化物フィルムは、温度を制御しながら上昇するときに、還元剤との反応により窒化物、炭化物及び/又は硼化物に化学的に変換される。温度の上昇率は、例えば、図2に示すように、直線的(0°K/時ないし500°K/時)であってもよいし、比直線的であってもよいが、増加率に急激な変化を伴うことなく均一でなければならない。適当な還元剤は、アンモニア、ヒドラジン、窒素、メチルアミン、メタン、エタン、ボラン及びジボランを含む。反応は、完了後に急冷するか、又は最終的な反応温度(500°Kないし1300°K)にある時間保持した後に室温まで冷却しなければならない。変換を助けるために、水素及び/又は不活性ガスを添加してもよい。窒化物、炭化物及び/又は硼化物フィルムの厚みは、最終的な表面積又はキャパシタンスを決定する。キャパシタンスは、一般に、フィルム厚みで決まるが、厚みが充分に増加した状態では、キャパシタンスは、最終的に、漸近線限界に達する。
図3を参照すれば、図1に示された方法を用いて形成された大表面積の窒化物フィルムは、炭化物又は硼化物に変換することができる。窒化物は、メチルアミン、メタン、エタン、ボラン及び/又はジボランのような適当な反応剤との反応により炭化物及び/又は硼化物に化学的に変換される。この反応は、等温的に行われてもよいし、又は温度プログラム式に行われてもよい。完了後に、反応は、急冷するか、又は最終的な反応温度にある時間保持した後に室温まで冷却しなければならない。変換を助けるように、水素及び/又は不活性ガスを添加してもよい。炭化物及び/又は硼化物フィルムの厚みは、最終的な表面積又はキャパシタンスを決定する。
窒化物の中間段階の後に炭化物又は硼化物へ変換することは、超キャパシタにとって良好な特性を与えると考えられるが、酸化物から炭化物又は硼化物への直接的な変換を上記のように適当な還元剤で行うことができる。
大表面積の窒化物、炭化物及び/又は硼化物フィルムは、酸化剤の希釈混合物に材料を短時間曝することにより不動態化することができる。
キャパシタの構造を良く理解するために、図4の装置の一部分の拡大図を参照する。大表面積の電極zzにはセパレータxxが付着される。セパレータxxをサンドイッチするように第2の電極yyが使用される。第1及び第2の電極は、同じ材料で形成する必要はない。例えば、一方の電極が大表面積の窒化物、炭化物及び/又は硼化物で、他方の電極が酸化ルテニウム系の材料であってもよい。酸化物系の電極材料は、基礎金属表面又はフォイル上に形成された酸化物であってもよい。サンドイッチ部は、イオン移動性電解溶液が含浸される。適当な電解液は、硫酸液、プロピレンカルボネートにおけるリチウムパークロレートの溶液又はアセトニトリルにおけるテトラブチルアンモニウムフルオライドの溶液を含む。非水性電解質の乾燥には特に注意を払わねばならない。残留水分は、電気分解(2ないし4ボルトの正の電位を印加)により含浸されたサンドイッチ部から除去することができる。
電解液及びセパレータに代わって固体電解質を使用することにより別のキャパシタを製造することもできる。固体電解質は、大表面積の電極の孔構造体に浸透又は拡散されねばならない。
ここに述べる電極及び装置の構造の変形は、詳細には説明しないが、当業者には自明であり、本発明の範囲を越えて形成されるものではない。例えば、電気化学の現状において実施されるものは、ここに述べる電極材料の変形が燃料セル、電気化学合成炉、触媒反応及びセンサに不都合に適用されることが認められる。

以下のテスト例は、一例として示すもので、これに限定されるものではない。
酸化モリブデンフィルムを、高純度のTi(99.7%、0.0127mm、Aldrich)Mo(99.9%、0.025mm、Aldric)フォイルに付着した。Tiフォイルは、12Mの硝酸及び50%のフッ化水素酸の2:1の混合物を用いて室温において洗浄した。このフォイル基板は、赤い煙が発生するまで酸性溶液に浸漬し、その発生時に基板を取り出しそして大量の蒸留水で洗浄した。Moフォイルは、〜75℃の18Mの硫酸水槽に浸漬することにより洗浄した。フォイルの洗浄手順は、「金属仕上げガイドブック及びディクショナリー(Metal Finishing Guidebook and Dictionary)」(1993年)に記載された方法から適用した。15分間の後又はウオータブレーク(water-break)自由面が得られた後、フォイルが酸から取り出され、そして蒸留水で洗浄された。洗浄の後、付着前の酸化を最少するために、基板を直ちにコーティング溶液に入れた。
アンモニウムパラモリブデン酸塩(NH46Mo724・4H2O(99.999%、Johnson Matthey)を用いて、酸化モリブデン被覆を付着した。適当な量の塩が蒸留水に分解した後に、溶液は、10%の硝酸で酸化した。被覆溶液は、最初に、溶液濃度が均一になるよう確保するために基板を用いて攪拌した。基板は液面より少なくとも1cm下に5分間懸垂した。次いで、基板は、1s/cmの引出し率で溶液から引き出した。被覆された基板は、焼成の前にホットプレート(温度は90℃未満)において乾燥した。
モリブデン酸塩被覆は、550℃未満の温度において沈滞した空気中で30分間焼成することによりMoO3に変換した。
MoO3フィルムの温度プログラムされた窒素処理を、特別設計の反応炉において行った。この反応炉は、1インチ直径の石英チューブから構成され、そして放出ガスを冷却するために水ジャケットが取り付けられた。焼成された基板は、反応炉内の耐火レンガに配置し、そしてこの反応炉をリンドバーグSBチューブ炉に入れた。クロメル−アルメル熱電対を伴うオメガCN2010プログラマブル温度制御器を用いて温度を制御した。窒素処理のために高純度のNH3(99.99%)を使用した。図2を参照すれば、反応温度は、室温から350℃まで30分間で迅速に上昇した。酸化物フィルムを窒素処理するのに2つの直線加熱セグメントを使用した。温度は、350℃から450℃まで率β1で上昇し、次いで、450℃から700℃まで率β2で上昇した。その後、温度は、700℃に一定に1時間保持した。窒素処理プログラムが完了した後に、NH3を流して材料を室温まで冷却し、次いで、体積酸化を防止するために、Heに1.06%O2を含んだ混合物の流れにおいて1時間不動態化した。ガス流量は、校正されたロタメータを用いて監視し、ニードルバルブによって制御した。
Mo基板に支持されたMoO3フィルムは、多孔性のマイクロ構造を有し、そして厚みが平均2μm及び直径が10μmのプレート状粒子で構成される(図5を参照)。Ti基板に支持されたMoO3も、多孔性であるが、直径が約2μmの非常に微細な粒子で構成される。窒素処理されたフィルムの総形態は、酸化物の場合と同様であるが、窒化物粒子は、非常に微細なクラックを含む(図6)。クラックの発生は、内部表面領域の露出と、大きな表面積の材料の形成をもたらす。更に、窒化物フィルムの場合には、酸化物フィルムよりも、走査電子顕微鏡写真撮影(SEM)中の表面の荷電が相当に小さいことが観察され、これは、窒化物フィルムが導電性であることに合致する。
Mo窒化物フィルムの重量及びBET(ブルナウア・エメット・テラー)表面積は、各浸漬と共に増加した。テーブル1にリストした材料は、第1及び第2の加熱率各々40及び200℃/hを用いてNH3(100cm3/分)の流れにおいてMoO3の温度プログラムされた窒素処理により調製されたものである。基体の選択は、発生するγ−Mo2Nの重量に大きな影響を及ぼす。Mo基板に支持された窒化物フィルムの重量及び表面積は、一般に、Ti基板に支持されたフィルムの場合より大きい。表面積は、両方の基板の場合にフィルム重量と共にほぼ直線的に増加し、比表面積が、使用する基板に大きく左右されないことを指示する。層剥離、閉塞又は固化の兆候は見られなかった。これらの観察は、フィルムが多孔性であり、そして基板の単位面積当たりの窒化物表面積を被覆の質量及び厚みの増加によって増加できることを示唆している。
Figure 0003900303
表面積は、窒素処理中に使用される加熱率及び流量の関数である。Mo窒化物フィルムの表面積に対する窒素処理条件の影響は、テーブル2に記載する結果から推定することができる。β1及びβ2が各々100及び200℃/hに等しい状態の窒素処理プログラムを用いたときには、流量が増加するときに表面積が減少する。両方の加熱率が100℃/hであったときにも、同様の特性が観察された。β1及びβ2が各々40及び200℃/hに等しい状態の加熱スケジュールを用いたときには、逆の作用が観察された。
第1の加熱率β1を変えたときにも、同様の大きさの作用が観察された。低い流量(100cm3/分)を用いて窒化処理を行ったときには、β1を増加すると、表面積が減少した。高い流量(1000cm3/分)を用いて調製したフィルムの場合には、β1を増加すると、表面積が増加した。第2の加熱率を変化させたときには、最も大きな変化が観察された。β2を増加すると、表面積が著しく減少した。更に、β2の低い値を用いると、70m2/gr以上の表面積が得られた。
Figure 0003900303
キャパシタテストセルは、テーパ付けされた曇りガラスの接合部をもつ100mlの底の丸いフラスコで構成した。リード線のための穴をもつゴムのストッパを用いてフラスコをシールした。炭酸プロピレン(99%無水、Johnson Matthey)に含まれた2.39MのLiClO4(99.99%、Aldrich)か又は蒸留水に含まれた4.16MのH2SO4かのいずれかを電解液として使用した。水分への露出を回避するために、過塩素酸塩溶液を含むセルをN2充填グローブボックスにおいて組み立てた。H2SO4溶液を用いた電気的測定を周囲の空気中で行った。粗い孔のフィルタペーパであるフィッシャーブランドPBを用いて過塩素酸塩溶液中で電極を分離する一方、フィッシャーブランドのガラスファイバの環(粗い孔)を酸性溶液に対して使用した。2つの電極間にセパレータを配置しそして鰐口クリップでそれらを一緒にクランプして組立体を固定することによりキャパシタを作成した。更に別のシールドされた鰐口クリップを用いてフォイルのリードを電源及び電量計に接続した。1.5Vdcのバッテリを別々に使用するか又は6Vdc以上の電圧を得るように4本直列に使用したものにより給電される定電圧源でセルを充電した。キャパシタセルを完全に放電できるようにしつつ、全充電容量を測定した。キャパシタンスは、全蓄積電荷を充電電圧で除算したものとして得た。キャパシタに蓄積された全電荷は、2つの市販のキャパシタに対して校正されたEG&G279A電量計を用いて測定した。
デーブル3及び4は、テストキャパシタの電気的性能に対するフィルム特性、電解液組成及び充電電圧の作用の概要である。1ないし10分の充電時間を使用し、そして比キャパシタンスは、基板の表皮面積(≒1cm2)に基づくものであった。窒化物フィルムで形成されたセルのキャパシタンスは、未被覆の金属基板を用いて組み立てられたブランクセルよりも相当に大きかった。これは、キャパシタンスが窒化物フィルムの存在によるものであることを明確に示している。更に、電気的特性は、多数の充電/放電サイクルを通して再現可能であり、6Vより大きな電圧においてもフィルムが安定していることを示唆している。
各々の場合に、Mo基板を用いて形成されたキャパシタは、Ti基板より成るキャパシタよりもキャパシタンスが大きい。又、電解液の選択は、電荷蓄積容量の決定に大きな役割を果たした。H2SO4電解液を用いて得た比キャパシタンスは、1F/cm2に達したが、LiClO4電解液の場合は、0.02ないし0.14F/cm2の範囲であった。
キャパシタンスは、H2SO4を電解液として使用するセルの場合にMo窒化物フィルムの表面積と共に直線的に増加した。この結果は、Mo窒化物の4つの特性を明確に立証した。即ち、(1)γ−Mo2Nは導電相である。(2)上記の方法を用いて作成された大表面積のMo窒化物は、隣接するフィルムを形成した。(3)γ−Mo2Nをベースとする電極のキャパシタンスは、おそらく表面によるものであり、体積電荷蓄積プロセスによるものではない。(4)200μF/cm2のキャパシタンスは、H2SO4電解液での大表面積の酸化ルテニウム電極について報告されているもの(ライストリック・アンド・シャーマン、1987年)よりも優れている。
Figure 0003900303
Figure 0003900303
又、パラモリブデン酸塩の先駆物質のスプレー付着により窒化モリブデン電極も作成した。パラモリブデン酸塩の先駆物質の溶液を、酸化物被覆のスプレー付着のために上記のように調製した。超音波スプレーシステム又は霧化スプレー付着を用いて、酸化物先駆物質を基板に付着することができる。スプレー付着及び焼成のプロセスを交互に行って、酸化物の多層を形成した。基板は、約150℃の温度に加熱し、溶媒を蒸発して接着を促進し、そして上記のように焼成した。スプレー被覆された窒化モリブデン電極の加熱率(β1及びβ2)及びキャパシタンスの結果をテーブル5に示す。
Figure 0003900303
テーブル5の電極キャパシタンスは、上記のように電量測定により得た。使用した電解液は、4.5Mの硫酸であった。各キャパシタは、充電飽和を確保するために1.0Vにおいて150mAの電流を5分間流して充電した。これらの結果は、スプレー付着を使用しても、有益な大表面積の窒化モリブデン電極を形成できることを示している。
本発明の材料及び方法を立証するために、他の新たな大表面積の電極も形成した。
上記のようにスプレー付着、焼成及び窒素処理方法を用いて形成した窒化モリブデン電極から炭化モリブデン電極を形成した。メタン/水素の1:3混合物の流れとの温度プログラムされた反応により窒化物が炭化物に変換された。温度プログラムされた反応の加熱プロファイル及び反応剤の流量は、以下のテーブル6に示す通りであった。繰り返しの電圧電流測定を行い、飽和したKCL及びLiCl電解溶液における炭化物フィルムのキャパシタンス及び安定性を決定した。キャパシタンスCは、電圧電流図のプラトー領域にわたって電圧電流測定値iを電位ステップ率(dE/dt)で除算することにより決定した:C=i/(dE/dt)。サンプル電極は、標準的な3電極サイクルの電圧電流測定構成において作用電極として機能した。キャパシタンスデータは、酸化モリブデンの先駆物質を、有益な大きな表面積をもつ炭化物電極に変換できることを示す。
Figure 0003900303
パラタングステン酸塩/パラモリブデン酸塩溶液のスプレー付着により窒化タングステン/モリブデン電極を作成した。(NH46Mo724・4H2Oと(NH4101241・5H2Oの飽和溶液を同量混合することにより混合W/Mo酸化物先駆物質の溶液を形成した。上記例で述べたように、スプレー付着、焼成及び窒素処理を行った。繰り返しの電圧電流測定によりキャパシタンスを評価した。これらフィルムのキャパシタンスをテーブル7に示す。このキャパシタンスデータは、W/Mo固体酸化物の溶液を、有用な大表面積の電極フィルムに変換できることを確認するものである。又、テーブル7は、セルの充填物をmg/cm2で示している。比キャパシタンスは、充填物と共に変化するので、充填物を増加することにより電極キャパシタンスを増加することができる。
飽和したバナジン酸アンモニウム(NH4)VO3溶液のスプレー付着により窒化バナジウム電極を形成した。窒化モリブデン電極について上記した先駆物質を用いて、スプレー付着、焼成及び窒素処理を行った。繰り返しの電圧電流測定によりキャパシタンスを評価した。テーブル7に示すこれらフィルムのキャパシタンスは、Va族の元素であるバナジウムも、有用な大表面積の電極フィルムに変換できることを確認するものである。
Figure 0003900303

Claims (2)

  1. 周期律表のIV、V、VI、VII及びVIII族から選択される基板と、その上のフィルム層であって、周期律表のIII、IV、V、VI及びVII族の金属の窒化物、炭化物及び硼化物より成るグループから選択されたフィルム層とを備え、BET方法で測定したときに、上記基板の単位面積当たりの上記フィルム層の表面積が少なくとも100cm2/cm2であり、
    上記フィルム層は、先ず、周期律表のIII、IV、V、VI及びVII族からの少なくとも1つの金属の酸化物として基板に付着され、その後に、フィルム層は、窒素、炭素又は硼素の源と反応されることを特徴とする表面積の大きい電極。
  2. 周期律表のIV、V、VI、VII及びVIII族から選択される基板と、その上のフィルム層であって、周期律表のIII、IV、V、VI及びVII族の金属の窒化物、炭化物及び硼化物より成るグループから選択されたフィルム層とを備え、BET方法で測定したときに、上記基板の単位面積当たりの上記フィルム層の表面積が少なくとも100cm2/cm2であり、
    上記フィルム層は、先ず、基板に先駆物質として付着され、先駆物質が反応して、周期律表のIII、IV、V、VI及びVII族の金属の少なくとも1つの酸化物を形成し、次に、酸化物フィルム層は、窒素、炭素又は硼素の源と反応されることを特徴とする表面積の大きい電極。
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