JP3900089B2 - 電子楽器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ギター、バイオリン等の電子弦楽器において、ハーモニクス奏法と呼ばれる特殊奏法を実現した電子楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開2002−251182号公報に開示された電子弦楽器がある。この電子弦楽器は、ギター型の電子楽器であって、ネック部(棹部)の音高スイッチ部3を押下して音高を指定するとともに、弦入力部5の疑似弦に対する撥弦操作をトリガとして楽音を発生するものである。そして、この弦入力部の撥弦操作に応じて、弱撥から強撥までのタッチ感を付与した楽音を発生することができる。すなわち、このような電子ギターにおいては、生ギターなどの一般的なギターにおける奏法と同様の指板操作及び撥弦操作によって、違和感なく演奏操作を行い、電子音を楽しむことができる。また、電子ギターが内蔵する電子回路には、ファズ、ワウ、トレモロ、ディレイ、リバーブ、サスティーンといった音響効果機能を備えるものもあり、ユーザは、特定のスイッチを操作することにより、演奏に基づいて発音される楽音にこれらの効果を付与することができる。これらの音響効果は、従来のエレクトリックギター等においても、その出力端子にそれらの音響効果を付加させるためのエフェクタ装置を接続して付加するのが通常であり、そのような音響効果の付加方式は、電子ギター等においても変わりはない。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−251182号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、例えばギター奏法自身にも、発音される楽音に音響効果を付加することのできる特殊奏法がある。その中の代表的なものとして、ハーモニクス奏法、カッティング奏法などがある。ハーモニクス奏法では、アコースティックギター、エレクトリックギターを問わずに、指板上の任意のフレットを押弦した状態または開放弦の状態において弾弦し楽音が発生されているときに、その振動中の弦を特定のフレット上で指等によって軽く押させることにより、あるいは、特定フレット上を軽く押さえて弾弦直後に離すことにより、フレットあるいは開放弦で決まる所定の音高に対して特定の倍音を有する楽音を発生させることができる。また、カッティング奏法は、ピックを使ってコード(和音)などを演奏するときにリズムを刻むように演奏する奏法であり、通常は、ピッキングした後に弦を押さえている指(ふつうは左手)を離したりして音を切るが、弦を軽く押さえてピッキングすることでもリズムを刻むような演奏を行うことができる。このような奏法をミュートカッティング奏法ということもある。
【0005】
しかし、このような特殊奏法は、弦が共鳴板側から指板上にかけて張られている伝統的なギターにおいて、弦の振動の性質を利用することによって初めてその効果を発揮する奏法であり、前述したように、指板上に音高指定用のスイッチ(音高スイッチ部)を有し胴側に発音タイミング生成用にのみ使用される疑似弦を有し、疑似弦の振動が直接には楽音の音高を制御しないような電子ギターでは、その構造上、ハーモニクス奏法やカッティング奏法などの特殊奏法を実現することは困難であった。
【0006】
本発明は、弦楽器型の電子楽器においても違和感なく特殊奏法を実現することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の電子楽器は、フレットスイッチ等の音高指定操作子で操作されたときのタッチデータが第1所定値以下で、疑似弦等のタイミング指定操作子で操作されたときのタッチデータが第2所定値以上という条件が成立した場合と、件不成立時とで、同一音高指定操作子及び同一タイミング指定操作子の操作時でも楽音パラメータを異ならせて発生するようにし、条件成立時に特殊奏法を違和感なく実現した。
【0008】
請求項2の電子楽器は、請求項1に加えて第1所定値および/または第2所定値を可変にして、特殊奏法の操作感を調節できるようにした。
【0009】
請求項3の電子楽器は、請求項1または請求項2に加えて、前記条件成立時にハーモニクスの楽音パラメータを発生し、ハーモニクス奏法を違和感なく実現した。
【0010】
請求項4の電子楽器は、フレットスイッチ等の音高指定操作子が接触する程度に弱くタッチされるとともに、疑似弦等のタイミング指定操作子の操作でタッチデータが発生されたとき、第1検出信号を発生して、ハーモニクス等の楽音パラメータを発生する。また、音高指定操作子により、そのタッチセンサでのタッチ有り検出を越えたタッチ強さ時に音高指定が決定されるとともに、タイミング指定操作子の操作でタッチデータが発生されたとき、第2検出信号を発生して、通常の楽音パラメータを発生する。
【0011】
請求項5の電子楽器は、請求項4に加えて、第1検出信号の検出時にハーモニクスとし、第2検出信号の検出時に通常の楽音とする。
【0012】
請求項6の電子楽器は、請求項3または請求項5に加えて、ハーモニクスの楽音パラメータを発生するときに楽音の音色を変更し、ハーモニクスらしい音色の楽音とする。
【0013】
請求項7の電子楽器は、請求項3または請求項5または請求項6に加えて、ハーモニクスのとき楽音の音量を下げて、ハーモニクスらしい音量の楽音とする。
【0014】
請求項8の電子楽器は、請求項7に加えて、音量を下げる量をマニュアル調整できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図8は本発明の実施形態の電子楽器の外観図である。この電子楽器はギター型の電子楽器であり、その外観形状などの概略は特開2002−196752号公報のものと同様である。ボディ100の中央にはギターの第1弦〜第6弦に対応して各弦を模した金属ワイヤ製の6つの疑似弦110aを有する弦入力部110が配設されている。ネック120には、先端のヘッド部120a側から第1〜第12フレット130が順に配設されており、ヘッド部120aと第1フレット130との間と、他の隣接する各フレット130,130の間には、各疑似弦に対応する複数のフレット操作部10が配設されている。なお、この実施形態におけるネック120は請求項の「指板部」に相当し、フレット操作部10は請求項の「音高指定操作子」に相当する。また、ボディ100は「支持体」に相当し、弦入力部110は「タイミング指定操作子」に相当する。
【0016】
ネック120のボディ100側には設定スイッチ140と表示部150が配設されている。さらに、ボディ100の後方側には、ハーモニクス時の音量を通常時よりも下げるためのパラメータ(以下、「K値」という。)を設定するためのKダイヤル160と、弦入力部110における弦タッチデータを比較する第2所定値(以下、「Tref値」という。)を変更設定可能とするTrefダイヤル170が配設されている。弦入力部110は疑似弦110aに対する撥弦操作により、その撥弦強度に応じたピエゾ素子の出力信号を得るものである。
【0017】
なお、図8の矢印▲1▼方向を「弦方向」、矢印▲2▼の方向を「フレット方向」という。すなわち、各フレット操作部10は、6つの疑似弦の各々に対応してフレット方向に6段、第1〜第12フレット130に対応して弦方向に12段配設された複数のフレットセンサであり、このフレット操作部10はネック120上に計72個がマトリクス状に配設されている。そして、各フレット操作部10には、そのフレット操作部10のあるフレット方向と弦方向の交差位置に対応するギターにおける各弦各フレット位置を押さえた時の音高と同じ音高データ(例えばキーコード)が割当てられる。
【0018】
図1は第1実施例のフレット操作部10、弦入力部110及びタッチ検出手段の要部概略図であり、フレット操作部10は図8のA−A矢視図、弦入力部110は図8のB−B矢視図である。この第1実施例のフレット操作部10は、該フレット操作部10を操作するための導電性のフレット操作子1を備えており、このフレット操作子1の摘み部1aは、弦方向に隣接するフレット130,130間のほぼ間隔相当の長さを有しフレット方向を弦幅程度の矩形状とする角の丸い短冊状(長尺状)の形状となっている。そして、この摘み部1aは指板となる上ケース120Aに形成された長形の透孔120A1から外側に突出され、このフレット操作子1は図示しない弾性部材等により、非操作時に摘み部1aの付け根のフランジ部1bが透孔120A1の周囲で上ケース120Aの裏側に当接するように付勢されている。
【0019】
フレット操作子1の下には、例えばプリント基板上に形成した固定接点と、この固定接点に対向して配設された可動接点等により、メカ式の接点スイッチ11が配設されており、フレット操作子1を押すことにより接点スイッチ11がオンとなりフレット操作子1を離すことによりオフとなる。このオン/オフはフレットオン/オフ信号Fswとして出力される。また、上ケース120の裏側には導電性の薄膜120Bが形成されており、この薄膜120Bは第1タッチセンサ12に電気的に接続されている。これにより、フレット操作子1を指で触れると、フレット操作子1及び薄膜120Bを介して第1タッチセンサ12が電気的に接地され、この第1タッチセンサ12はハムノイズにより、フレット操作子1への指の接触(タッチ)を弱タッチとして検出し、第1検出信号D1を出力する。また、フレット操作子1を押し込むと、フレット操作子1が薄膜120Bから離れて、ハムノイズは発生せず、第1タッチセンサ12は弱タッチを検出しなくなる。すなわち、「弱タッチ」とはフレット操作子1に指を触れることを意味する。
【0020】
弦入力部110において、疑似弦110aは両端に脚部110a1を有し、この脚部110a1の略中央を回動自在に軸支されている。脚部110a1の下端は弾性板110bに連結されており、疑似弦110aを弾くことにより該疑似弦110と弾性板110bが変形及び/または振動し、この弾性板110bに取付られたピエゾ素子110cにより撥弦強度に応じた撥弦信号Vが得られる。この弾性板110bとピエゾ素子110cは弾弦センサ110dを構成している。また、疑似弦110は導電性の金属ワイヤで形成されており、この疑似弦110aは第2タッチセンサ13に電気的に接続されている。これにより、疑似弦110aに指を触れると、第2タッチセンサ13はハムノイズにより、疑似弦110aへの指の接触を検出し、第2検出信号D2を出力する。なお、図1では1つのフレット操作部10及び1弦分の疑似弦110aについて示してあるが、その他のフレット操作部10及び疑似弦110aについても同様であり、各フレット操作部10に対応する第1検出信号D1及びフレットオン/オフ信号Fsw、各疑似弦110aに対応する第2検出信号D2及び撥弦信号Vにより、制御回路で楽音発生が制御される。
【0021】
図2はフレット操作部10の第2実施例を示す図であり、図8のA−A矢視図である。なお、図1の第1実施例と同様な要素には図1と同符号を付記する。フレット操作子1の摘み部1aは、樹脂製で外観が前記第1実施例と同ような形状の角の丸い短冊状の形状となっており、その下にゴム製で下面が球面状になった弾性体1cが取り付けられている。そして、摘み部1aは上ケース120Aの透孔120A1から外側に突出されている。フレット操作子1の下には、可動接点シート2が配設され、さらに可動接点シート2の下に基板3が配設されている。
【0022】
可動接点シート2はポリエステルのフィルム2aをベースに導電材を塗布することで基板3側の面に可動接点2bを形成したものである。基板3上には可動接点2bに対応して固定接点3aが形成されており、この固定接点3aは、吹き出し図で平面形状を示したように平行な端子を接近してパターン形成されたカーボン導体である。さらに、基板3の固定接点3aの両側には、厚幕のレジスト層3bが形成されることで、可動接点シート2の可動接点2bが固定接点3aに対して僅かな間隙を空けて対向するように配置され、操作子非押下時には、可動接点シート2のフィルム2aがレジスト層3bに当接している。
【0023】
以上の構成により、フレット操作子1を押下することにより、可動接点シート2の弾性力に抗して弾性体1cが押し下げられ、可動接点2bが固定接点3aに接触し、固定接点3aが導通してフレット操作部10のオン状態(フレットオン)が検出される。なお、フレット操作子1の押圧力をなくすと可動接点シート2の弾性回復力により、可動接点2b及びフレット操作子1が図2の状態に戻り、オフ状態(フレットオフ)となる。
【0024】
また、フレット操作子1の押圧により、弾性体1cがフィルム2aを介して可動接点2bを固定接点3aに押圧する。このとき、可動接点2bは固定接点3aの両端子間を導通するが、弾性体1cの下面が球面状になっているので、可動接点2bと固定接点3aの接触面積はフレット操作子1に対する押圧力が大きいほど大きくなる。この接触面積が大きくなると固定接点3aの両端子間の抵抗値は小さくなり、接触面積が小さくなると両端子間の抵抗値は大きくなる。したがって、この固定接点3aを介して得られる電圧値から、フレット操作子1に対する押圧力を検出できる。すなわち、この電圧値は、押圧力を大きくすると高くなり、押圧力を小さくすると低くなるので、この電圧値をフレットタッチデータとし、後述の制御回路に入力する。なお、図3は固定接点3aにおける抵抗値Rとフレット操作子1に対する押圧時のストロークの関係を示す図であり、同図にはフレットタッチデータを比較する第1所定値に対応する閾値レベル(弱タッチ検出)とフレットオンとして検出する閾値レベル(フレットオン)を図示してある。このように、弱タッチはフレットオンとならない押圧力で検出される。
【0025】
図4は実施形態の制御回路のブロック図であり、CPU、RAM及びROMからなるマイコン制御部21、前記多数のフレット操作部10から構成されるフレット情報入力部22、前記弦入力部110から構成される弾弦入力部23、音源ブロック24、サウンドシステム25及びメモリスロット26、を備えている。フレット情報入力部22はフレット操作部10でフレットオンとなると音高データを入力して出力する音高入力部22Aと、フレット操作部10で指の接触(第1実施例)あるいは弱い押圧(第2実施例)により弱タッチが検出されるとタッチ検出信号を出力するタッチ入力部22Bとで構成されている。また、弾弦入力部23は弾弦センサ110dからの撥弦信号Vのレベルを入力するレベル入力部23Aと疑似弦110に指の接触があったとき検出信号を出力する第2タッチセンサ13からなる指接タッチ入力部23Bから構成されている。
【0026】
マイコン制御部21はROM等に格納された後述の制御プログラムを実行して全体の制御を行い、フレット情報入力部22からフレットオン/オフ信号Fsw、該フレットオン/オフ信号Fswに対応する音高データ(キーコード)及び第1検出信号D1(弱タッチ)を入力する。また、弾弦入力部23から第2検出信号D2及び撥弦信号Vを入力する。そして、マイコン制御部21は、これらの信号に基づいて後述のように楽音発生の制御を行う。なお、マイコン制御部21は入力した音高データをピッチデータ(周波数)に変換して後述の内部処理を行い、音源ブロック24に対してピッチデータを音高データに変換して出力する。音源ブロック24は例えば波形メモリ式の音源であり、通常のギターの音に対応するノーマル楽音と、ハーモニクスに対応するハーモニクス楽音とに対応する楽音信号をそれぞれ発生することができる。そして、この楽音信号によりサウンドシステム25で楽音が発生される。なお、メモリスロット26には自動演奏データ、音色設定データなどが記憶されている。
【0027】
次に、第2実施例のフレット操作部10を用いた場合の楽音発生の制御について説明する。図5及び図6はマイコン制御部21のCPUが実行する制御プログラムのメインルーチンのフローチャートであり、図5は主にフレット操作部10の操作に対応する処理、図6は主に弦入力部110の撥弦操作に対応する処理である。なお、これらの処理は時分割処理により各弦に対応する6チャンネル分について処理するものとする。また、以下の処理でchは弦に対応するチャンネル番号を示し、PIT(ch)は発音する楽音のピッチデータ(周波数)を格納するレジスタ、PIT′(ch)はハーモニクスの基音となる基準音のピッチデータ(周波数)を格納するレジスタ、TC(ch)は撥弦信号Vのレベルを弦タッチデータとして格納するレジスタ、Tf(ch)はフレット操作部10におけるフレットタッチデータを格納するレジスタ、H(ch)はハーモニクスの上記基準音に対するピッチデータ(周波数)の変調量を格納するレジスタである。
【0028】
図5の処理では、先ず図7のパラメータ設定処理を行う。ステップS41,S42ではKダイヤル160の変化に応じた値をK値に設定し、ステップS43,S44ではTrefダイヤル170の変化に応じた値をTrefに設定し、ステップS45,S46ではその他の操作子の操作に応じたパラメータの設定を行う。
【0029】
図5のステップS1〜S3のループでは、音源ブロック24における6つの疑似弦110aに対応する6つの発音チャンネルについて楽音発生の終了に対応してオフ受信時の処理を行う。すなわち、発音中の楽音信号レベル(エンベロープ信号レベル)が極めてゼロに近くなったことを検出して(S2)、該チャンネルの全データをリセットする。ステップS4〜S7はフレットオン/オフ信号Fswによるフレットオンのイベントに対応する処理、ステップS4,S5,S8〜S10はフレットオフに対応する処理である。ステップS6,S7は、フレットオン時にそのフレットの弦に対応するチャンネルが使用中(発音中)のとき、現イベントが高音側であればステップS11でそのイベントに対応するピッチデータ(周波数)を発音用のピッチレジスタに格納し、高音側でなければ現チャンネルのピッチデータ(ピッチレジスタ)を維持する。この時、S11,S10いずれも通らないが、前回においていずれかのFswオン状態でS11を通っているはずの状態を維持することを意味する。これにより、同じ弦で発音中でもその音より高音側のフレットオンであれば新たな楽音が発生されるようになる。また、ステップS8,S9のフレットオフの処理では、オフイベントがその弦で最後にオンとなっているフレットのオンイベントであれば、その弦は開放弦となるので、その開放弦のピッチデータを格納する処理である。以上の処理によりイベントのあったフレット操作部10及び開放弦に対応するピッチデータがレジスタが格納される。
【0030】
図6の処理では、ステップS12〜S15によって、疑似弦に指が接触した場合に消音する処理をする。すなわち、S12で弦走査して、指接弦有りチャンネルを検出し(S13)、有りチャンネルのオフ処理(S14)、つまりそのチャンネルについて、音源における発音中の楽音を急速弦スリさせ、ゼロレベル近くになったところで、そのチャンネルについて全データをリセット処理する。この時発音中でないこともあるので、その場合は実質的になにもしないことを含んでいる。フレットオン/オフの状態にかかわらず撥弦が検出されるとステップS16〜S18によって、そのチャンネルに対応した開放弦が示すピッチデータをハーモニクス音発音の準備のため、PIT′(ch)に取り込み、撥弦信号Vのレベル(撥弦センサ値)をタッチデータTC(ch)として取り込み、撥弦が開放弦であるかを判定する。開放弦であればフレットタッチデータ(Tf(ch))はゼロであるはずだから、リセット処理(S19)し、結果としてステップS19〜S21で開放弦に対応するノーマル楽音を発生する。開放弦でなければステップS22で撥弦のあったチャンネルの操作されたフレット操作部10の位置(押圧フレット値)を判定して、12フレット、7フレット、5フレット、4フレットの場合は、ハーモニクスの可能性があるので、ステップS23〜S26で、次式に示す各フレットに対応するピッチ変調量R12,R7,R5,R4をレジスタに格納する。なお、上記以外のフレットの場合はステップS27で、同一弦内で高音側のフレットを優先する処理をする。
【数1】
Figure 0003900089
【0031】
ステップS28,S29は、弦タッチデータが第2所定値(Tref)以上で、且つ、フレットタッチデータ(Tf(ch))が第1所定値以下という条件が成立するかを判定する。条件が成立した場合は、ステップS30で開放弦のピッチデータに変調量を乗算して実際に発音するピッチデータとするとともに弦タッチデータを小さくして(K値を乗算して)実際に発音する音量データとする。そして、ステップS31でハーモニクスの音色を選択してステップS21でハーモニクスの楽音を発生する。なお、このステップS28,S29が「第1検出信号発生手段」及び「第2検出信号発生手段」であり、条件が成立したことを示す信号が「第1検出信号」、条件が成立しないことを示す信号が「第2検出信号」である。また、ステップS30でピッチデータを変調すること、タッチデータを変更すること、ステップS31でハーモニクスの音色を選択すること、及びステップS20でノーマル楽音を選択することは、それぞれ、対応する楽音パラメータを選択することに対応する。
【0032】
なお、上記の例では弦タッチデータTCと比較する第2所定値(Tref)をTrefダイヤルでマニュアル設定できるようにしているが、フレットタッチデータTfを比較する第1所定値もマニュアル設定できるようにしてもよいし、この第1所定値のみをマニュアル設定できるようにしてもよい。
【0033】
以上の処理は、第2実施例のフレット操作部10(図2)に対応する処理であるが、第1実施例のフレット操作部10(図1)の場合でも略同様な処理とすることができる。この場合、図6のステップS29の判定で、前記第1タッチセンサ12で第1検出信号D1(弱タッチ)が検出されているか否かを判定すればよい。検出されていればステップS30以下に進み、フレット操作子1に軽く指が触れられている場合に対応して、ハーモニクスの楽音を発生する。
【0034】
以上のように、強く撥弦したとき(弦タッチデータが大きいとき)でフレット操作子を軽く押さえたか軽く触れたとき(フレットタッチデータが小さいとき)にハーモニクスの楽音を発生するので、例えばアコースティックギターやエレクトリックギターなどにおけるハーモニクス奏法と同じ奏法でハーモニクスが実現できる。
【0035】
上記の実施例は特殊奏法としてハーモニクス奏法を例に説明したが、カッティング奏法の楽音を発生するようにしてもよい。特に請求項4では、撥弦トリガとしての第2タッチデータTCレベルが大であることを必要要件としないカッティング奏法にも適している。この場合、より適切な実施例としては、図6において、一部フローを変更した実施例とする。すなわち、S22の内容を「撥弦有りチャンネルの押圧フレット値は、4以上か」とし、S23〜S26の処理のかわりに、「なにもしない処理」として、S28へのスルー処理とし、S30の処理において「TC(ch)←TC(ch)*K」のみとし、S31の処理のかわりに「音源種類に(ミュート)カッティングを選択」とする。ただし、S28のTC(ch)が強である必要はなく、メゾピアノ以上でよい。また、S30のK値も第1実施例(ハーモニクス)より大としてよい。このような処理を実行することにより、カッティング奏法またはミュートカッティング奏法をした場合に、例えば音色効果用のローパスフィルタのカットオフ周波数をロー側にシフトして発生する楽音の音色をハイカットとしたり、楽音波形の振幅の頭をカット(クリップ)したりして、音色に変化を付けることができるので、自然なカッティングの楽音を奏することができる。ミュートカッティングの場合は、K値を上記よりやや下げるようにするとよい。なお、上記の例において、押圧フレット値を4以上に限ったのは、ローフレットにおいてミュートカッティング奏法はあまり行われないことに鑑みたものであり、ローフレットではノーマルとした。ただし、全フレットでカッティングやミュートカッティングとするようにしてもよい。
【0036】
【発明の効果】
請求項1の電子楽器によれば、同一音高指定操作子及び同一タイミング指定操作子の操作時でも楽音パラメータを異ならせて発生するようにしたので、条件成立時に特殊奏法を違和感なく実現できる。
【0037】
請求項2の電子楽器によれば、請求項1と同様な効果が得られるとともに、第1所定値および/または第2所定値を可変にして、特殊奏法の操作感を調節することができる。
【0038】
請求項3の電子楽器によれば、請求項1または請求項2と同様な効果が得られるとともに、条件成立時にハーモニクスの楽音パラメータを発生するようにしたので、ハーモニクス奏法を違和感なく実現することができる。
【0039】
請求項4の電子楽器によれば、請求項1と同様にフレットスイッチ等の音高指定操作子が接触する程度に弱くタッチされるとともに、特殊奏法を違和感なく実現できる。
【0040】
請求項5の電子楽器によれば、請求項と同様な効果が得られるとともに、第1検出信号の検出時にハーモニクスとし、第2検出信号の検出時に通常の楽音とするので、ハーモニクス奏法を違和感なく実現することができる。
【0041】
請求項6の電子楽器によれば、請求項3または請求項5と同様な効果が得られるとともに、ハーモニクスの楽音パラメータを発生するときに楽音の音色を変更し、ハーモニクスらしい音色の楽音とすることができる。
【0042】
請求項7の電子楽器によれば、請求項3または請求項5または請求項6と同様な効果が得られるとともに、ハーモニクスのとき楽音の音量を下げて、ハーモニクスらしい音量の楽音とすることができる。
【0043】
請求項8の電子楽器によれば、請求項7と同様な効果が得られるとともに、に加えて、ハーモニクスの音量を適宜マニュアル調整できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における第1実施例のフレット操作部、弦入力部及びタッチ検出手段の要部概略図である。
【図2】本発明の実施形態におけるフレット操作部の第2実施例を示す図である。
【図3】第1実施例のフレット操作部における抵抗値とフレット操作子に対する押圧時のストロークの関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における制御回路のブロック図である。
【図5】本発明の実施形態における撥弦操作に対応する処理のフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態におけるフレット操作に対応する処理のフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態におけるパラメータ設定処理のフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態の電子楽器の外観図である。
【符号の説明】
100…ボディ、110a…疑似弦、110…弦入力部、10…フレット操作部、160…Kダイヤル、170…Trefダイヤル、1…フレット操作子、12…第1タッチセンサ(第1タッチデータ発生手段)、23A…レベル入力部(第2タッチデータ発生手段)

Claims (8)

  1. 指板部に設けられた音高を指定するための音高指定操作子と、指板部以外の支持体に設けられた発音タイミングをコントロールするためのタイミング指定操作子と、上記両操作子の操作にて楽音を発生する楽音発生手段とを有する電子楽器において、
    前記音高指定操作子で操作されたときにそのタッチデータを発生する第1タッチデータ発生手段と、
    前記タイミング指定操作子で操作されたときにそのタッチデータを発生する第2タッチデータ発生手段と、
    第1タッチデータ発生手段で発生したタッチデータを検出し、タッチ有りで且つ該タッチデータの第1所定値以下を検出する第1検出手段と、
    第2タッチデータ発生手段で発生したタッチデータを検出し、該タッチデータの第2所定値以上を検出する第2検出手段と、
    を備え、
    前記両操作子の操作にて前記楽音発生手段から楽音を発生する場合、
    第1検出手段の検出と第2検出手段の検出との条件成立時と、該条件不成立時とで、前記楽音発生手段から発生する楽音の楽音パラメータを、同一音高指定操作子及び同一タイミング指定操作子の操作時でも異ならせて発生するようにしたことを特徴とする電子楽器。
  2. 前記第1所定値および/または前記第2所定値を可変にしたことを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
  3. 前記条件成立時に前記楽音パラメータをハーモニクスの楽音パラメータとし、前記条件不成立時に前記楽音パラメータを通常の楽音パラメータとするすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子楽器。
  4. 指板部に設けられた音高を指定するための音高指定操作子と、指板部以外の支持体に設けられた発音タイミングをコントロールするためのタイミング指定操作子と、上記両操作子の操作にて楽音を発生する楽音発生手段とを有する電子楽器において、
    前記音高指定操作子はタッチセンサを有するとともに、該タッチセンサでのタッチ有り検出を越えたタッチ強さ時に音高指定が決定されるようにしてなり、
    該音高指定操作子を該操作子に接触する程度に弱くタッチされたときのみに、そのタッチデータを発生する第1タッチデータ発生手段と、
    前記タイミング指定操作子で操作されたときにそのタッチデータを発生する第2タッチデータ発生手段と、
    第1タッチデータ発生手段で発生したタッチデータと第2タッチデータ発生手段で発生したタッチデータとの検出にて第1検出信号を発生する第1検出信号発生手段と、
    前記前記音高指定操作子による前記音高指定と前記第2タッチデータ発生手段で発生したタッチデータとの検出にて第2検出信号を発生する第2検出信号発生手段と、
    を備え、
    前記第1検出信号の検出時と第2検出信号の検出時とで楽音発生手段から発生する楽音の楽音パラメータを異ならせて発生するようにしたことを特徴とする電子楽器。
  5. 前記第1検出信号の検出時に前記楽音パラメータをハーモニクスの楽音パラメータとし、前記第2検出信号の検出時に前記楽音パラメータを通常の楽音パラメータとすることを特徴とする請求項4記載の電子楽器。
  6. 前記ハーモニクスの楽音パラメータを発生するときに楽音の音色を変更することを特徴とする請求項3または請求項5記載の電子楽器。
  7. 前記ハーモニクスの楽音パラメータを発生するときに楽音の音量を下げることを特徴とする請求項3または請求項5または請求項6記載の電子楽器。
  8. 前記音量を下げる量をマニュアル調整できることを特徴とする請求項7記載の電子楽器。
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