JP3899185B2 - マイクロホンの出力コネクター装置 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明はマイクロホンの出力コネクター装置に関し、さらに詳しく言えば、マイクロホンケースをコネクターのアース端子にきわめて小さなインピーダンスで結合できるようにしたマイクロホンの出力コネクター装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
手持ち式マイクロホンには、通常、そのマイクロホンケーブルを接続するための出力コネクターが設けられているが、現在では、そのほとんどが3PINタイプ(キャノンXLR−3相当のもの)に統一されており、まず、図6に基づいて、その基本的な構成を説明する。なお、同図(a)は正面図、同図(b)はそのA−A線断面図、同図(c)は平面図である。
【0003】
これによると、3PINタイプの出力コネクター1は、ほぼ円柱状をなす耐熱性合成樹脂(例えば、PBT:ポリブチレンテレフタレート)からなる基台2を備え、同基台2には3本のプラグ、すなわちホット用プラグ3、コールド用プラグ4およびシールド用プラグ5が貫設されている。
【0004】
また、ホット用プラグ3とシールド用プラグ5との間には、アース端子板6が植設されているとともに、このアース端子板6に関連して、基台2の周面には、図6(b)に示されているように、同基台2の中心に向けてネジ収納穴21が穿設されている。
【0005】
この場合、アース端子板6には、ネジ収納穴21に対して同軸的に雌ネジ孔61が形成されており、ネジ収納穴21内にはその雌ネジ孔61に螺合する固定用の雄ネジ7が収納されている。
【0006】
この出力コネクター1は、マイクロホンケースの後端側に設けられている円筒状のコネクタケース(ここでは、ともに図示しない)内に配置され、同コネクタケースに穿設されている工具挿通孔としての透孔よりネジ回しを差し込んで雄ネジ7を回し、同雄ネジ7を図6(b)において左側に移動させてコネクタケースの内壁面に押し当てることにより、この出力コネクター1がコネクタケース内に固定される。
【0007】
ところで、この種の出力コネクターの主たる機能は、マイクロホンの出力信号を送信することにあるが、他方において、出力コネクターはマイクロホンケース(マイクロホングリップ)をシールドする際の重要な接地点でもある。
【0008】
すなわち、マイクロホンケーブルが接続される部分のインピーダンスが高い場合、高周波の強電界のもとではその高インピーダンス箇所の両端に電圧が誘起されることになり、特にマイクロホンケース内にインピーダンス変換器などの電子回路を有するコンデンサマイクロホンにおいては、その電子回路が検波器として作用し、可聴周波の雑音が発せられることになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、マイクロホンケースのコネクタケースと出力コネクターのアース端子をきわめて小さなインピーダンスで電気的に導通することが求められている。
【0010】
しかしながら、マイクロホンケースは、通常、真鍮やアルミニウムもしくは亜鉛などの金属から作成されており、防錆のためコネクタケースの部分を含めて、その表面にメッキや焼き付け塗装が施される。なお、メッキした場合でも、手で握ったあとに皮脂などが目立つため、仕上げとして透明な塗装を上塗りするようにしている。
【0011】
このため、出力コネクター1の固定時に雄ネジ7をコネクタケースの内壁面に強く押し当てたとしても、その間に塗膜が存在するため、電気的導通を確保することが困難である。
【0012】
そこで、図7に示されているように、補助的にシールド用プラグ5に板バネ8を取り付け、出力コネクター1をコネクタケース内に挿入する際、板バネ8をコネクタケースの内壁面に弾性的に摺接させて、この部分でも電気的導通をとるようにしている。
【0013】
しかしながら、板バネ8のバネ圧が強すぎると、組立難くなるばかりでなく、修理などで外す必要がある場合、板バネ8がコネクタケースの内端に引っかかり、出力コネクター1を取り外すことが困難になる。これに対して、板バネ8のバネ圧が弱すぎると、電気的導通がおろそかになるので、好ましくない。
【0014】
このように、補助的に板バネ8を併用するにしても、従来では電気的導通を確実なものとするため、雄ネジ7および板バネ8が当たる部分の塗膜を回転砥石などで事前に除去するようにしており、生産性が悪いものであった。
【0015】
また、フェイルセーフ的な観点から、図8に示されているような接続金具9を用いてシールド用プラグ5とアース端子板6とを電気的に接続するようにしているが、この点についても次のような課題がある。
【0016】
すなわち、接続金具9はシールド用プラグ5に対する嵌合部91と、アース端子板6に対する嵌合部92とを有するプレス成形品からなり、それらの嵌合部91,92を介してシールド用プラグ5とアース端子板6との間に装着されるが、そのままでは部品間にガタツキがあるため、電気的導通が不安定となる。
【0017】
そこで、最終的には各嵌合部91,92をハンダ付けするようにしているが、接続金具9はプレス成形品で機械的強度が高いことから、ハンダが冷えて固まるときの体積収縮に伴なう応力が基台2に加わり、これが原因で合成樹脂製の基台2側にひび割れなどが発生するおそれがあった。
【0018】
また、出力コネクター1を固定する別の方法として、ネジ収納穴21から雄ネジ7を外し、コネクタケースの外側からその工具挿通孔を介して雄ネジを差し込んで、アース端子板6の雌ネジ孔61に螺合し、出力コネクター1をコネクタケースの内壁面側に引き寄せて固定する方法も知られている。
【0019】
この別の方法によれば、マイクロホンケースの塗装後に、コネクタケースの工具挿通孔の周りにザグリを切削加工してその塗膜を除去することにより、コネクタケース→雄ネジ→アース端子板6に至る経路で確実に電気的導通をとることができる。
【0020】
しかしながら、マイクロホンケースに追加工を行なう必要があるとともに、外側からのネジ止め作業を行なうことになるため、加工費用と作業工数が増え、コスト的に好ましくない。
【0021】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的は、追加工や塗膜除去などの作業工数を増やすことなく、マイクロホンケースをコネクターのアース端子にきわめて小さなインピーダンスで結合できるようにしたマイクロホンの出力コネクター装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、マイクロホンケースの後端側に設けられた円筒状のコネクタケースと、同コネクタケース内に収納されるほぼ円柱状をなす合成樹脂製の基台と、同基台に貫設されたホット、コールドおよびシールド用の3つのプラグと、上記基台の周面から同基台の中心に向けて穿設されたネジ収納穴と、同ネジ収納穴と対向するように上記コネクタケースに穿設された透孔と、雌ネジ孔を有し、その雌ネジ孔が上記ネジ収納穴内に位置するように上記基台に植設されたアース端子板と、上記雌ネジ孔に螺合し、上記ネジ収納穴に沿って移動可能な固定用の雄ネジとを備え、上記コネクタケースの透孔よりネジ回し手段にて上記雄ネジを上記コネクタケースの内壁面側に移動するように回転させて、同内壁面に押し付けることにより、上記基台を上記コネクタケースに固定するようにしたマイクロホンの出力コネクター装置において、上記雄ネジは、上記透孔よりも実質的に大径とされたネジ本体と、同ネジ本体の上記透孔側に形成された同透孔よりも実質的に小径の頭部と、同頭部と上記ネジ本体との間に形成された所定の傾斜角を有するテーパ部とを備え、当該雄ネジが上記コネクタケースの内壁面側に移動するに伴なって、上記テーパ部が上記透孔の端縁にかじり付くように接触することを特徴としている。
【0023】
この場合、上記コネクタケースには、その透孔部分を含めて防錆処理層が形成されていてもよく、本発明によれば、上記テーパ部にて同防錆処理層が破壊され、確実な電気的導通が得られることになる。
【0024】
本発明において、上記雄ネジは、上記コネクタケースよりも硬い材料で形成されている。マイクロホンケースは、通常、真鍮やアルミニウムもしくは亜鉛からなるため、上記雄ネジには、それよりも硬い例えば鉄材が用いられる。
【0025】
上記雄ネジには、その頭部から上記テーパ部にかけて上記ネジ回し手段が係合される係合溝が形成されていることが好ましく、これによれば、そのテーパ部における同係合溝が上記透孔の端縁に対する切刃として作用することになる。
【0026】
また、本発明は、上記基台の一方の面上において、上記シールド用プラグと上記アース端子板は、両端にそれらの各部材に弾性的に係合する係合部を備えたバネ弾性を有する導電体にて電気的に連結されていることを特徴としている。
【0027】
これによれば、導電体がバネ弾性を有しているため、その取り付けが簡単であるとともに、各係合部がシールド用プラグとアース端子板とにガタツクことなく密接に接触するため、特にハンダ付けする必要がなくなる。
【0028】
【発明の実施の態様】
次に、本発明を図面に示された実施例に基づいてより詳しく説明する。なお、この実施例において、先に説明した従来例と同一もしくは同一と見なされる部分には、それと同じ参照符号が用いられている。
【0029】
図1には、この実施例としての出力コネクター1Aを、マイクロホンケース側のコネクタケース10内に収納した状態の図6(b)と同様の断面が示されている。
【0030】
マイクロホンケース自体は図示されていないが、コネクタケース10は、そのマイクロホンケースの後端側に一体的にネジ止めされ、マイクロホンケースと同じ材質、例えば真鍮やアルミニウムもしくは亜鉛より作成されている。なお、本発明は、コネクタケース10がマイクロホンケースと一体に作成されている場合も含む。
【0031】
この実施例においても、基台2には、その周面の所定部位から同基台2の中心に向けてネジ収納穴21が穿設されており、このネジ収納穴21内には、アース端子板6の雌ネジ孔61が臨まされている。そして、ネジ収納穴21内には、その雌ネジ孔61に螺合する固定用の雄ネジ7Aが収納されている。コネクタケース10には、ネジ収納穴21と対向する位置に工具挿通孔としての透孔101が穿設されている。
【0032】
図2(a)の平面図および同図(b)の斜視図に示されているように、雄ネジ7Aは、周囲に上記雌ネジ孔61と螺合するネジ山711が切られたネジ本体71と、同ネジ本体71の一端側、すなわちコネクタケース10側に形成された頭部72とを備えている。
【0033】
この場合、ネジ本体71はコネクタケース10の透孔101よりも実質的に大径とされており、これに対して、頭部72は透孔101よりも実質的に小径とされている。頭部72とネジ本体71との間には、所定の傾斜角を有するテーパ部(肩部)73が形成されている。
【0034】
そして、頭部72の頂面からテーパ部73に至る深さにかけて、ネジ回し手段としての例えばマイナスドライバーを係合するための係合溝721が、この雄ネジ7の直径線に沿って形成されている。なお、この実施例において、雄ネジ7Aは鉄材から形成されており、その表面にはニッケルメッキが施されている。
【0035】
コネクタケース10の透孔101からマイナスドライバーを差し込んで、雄ネジ7Aを所定方向に回転させて、同雄ネジ7Aをコネクタケース10側(図1において左側)に引き寄せることにより、この出力コネクター1Aがコネクタケース10内に固定される。
【0036】
このとき、図3の断面図に示されているように、テーパ部73が回転しながら透孔101の端縁の角部に当接するため、その角部の塗膜が剥離され、雄ネジ7Aとコネクタケース10とが確実に電気的に導通する。
【0037】
さらに、この実施例では、テーパ部73にまで係合溝721が切り込まれているため、テーパ部73における係合溝721の部分が透孔101の端縁に対する切刃722として作用するため、より効果的に塗膜が削り取られる。なお、切り子は係合溝721から排出される。
【0038】
このように、本発明によれば、雄ネジ7Aが塗膜を除去しながらコネクタケース10の透孔101の端縁に金属面同士でかじり付くため、両者が低インピーダンスにて結合されるとともに、振動などで緩むおそれがなく、したがって締め付け後に、緩み止め用の接着材などを塗布する必要もない。
【0039】
図4には、この出力コネクター1Aの平面図であるが、これにはアース端子板6とシールド用プラグ5とが弾性変形可能な導体9Aによって電気的に接続されている状態が示されている。
【0040】
図5の平面図に示されているように、この導体9Aは所定幅の板バネ材90のプレス成形品からなり、その一端にはアース端子板6に対する第1係合部901が形成されているとともに、他端側にはシールド用プラグ5に対する第2係合部902が設けられている。
【0041】
この実施例において、アース端子板6は金属の角板からなるため、第1係合部901はその片側面に沿うようにほぼコ字状とされている。また、シールド用プラグ5は丸ピンであるため、第2係合部902はその周面に沿うように半円状に形成されている。
【0042】
原寸法において、第1係合部901と第2係合部902の間隔は、アース端子板6とシールド用プラグ5の間隔よりも広くされている。取り付けは、基台2の内側から第1係合部901と第2係合部902を、それぞれアース端子板6とシールド用プラグ5に添わせた後、基台2の外側に向けて強制的に移動させることにより行なわれる。
【0043】
取り付け状態においては、第1係合部901と第2係合部902の間隔は、原寸法の間隔よりも狭められ、そのバネ反力により、各係合部901,902がアース端子板6とシールド用プラグ5にそれぞれ密に接触するため、敢えてハンダ付けする必要もない。
【0044】
このようにして、本発明によれば、アース端子板6とシールド用プラグ5とをいわゆるワンタッチ的な作業で確実に接続することができる。なお、板バネに代えて、バネ線材を用いてもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、いわゆる3PINタイプの出力コネクターにおいて、その固定用の雄ネジのネジ本体と頭部との間にテーパ部を設け、同雄ネジの締め付けに伴なって、そのテーパ部がコネクタケース側の透孔の端縁にかじり付くようにしたことにより、事前に塗膜などを除去することなく、コネクタケースとアース端子とを低インピーダンスにて結合することができる。
【0046】
また、アース端子とシールド用プラグの接続手段として、バネ弾性を有する導体を用いたことにより、アース端子とシールド用プラグとをいわゆるワンタッチ的な作業で確実に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるマイクロホンコネクターの一実施例を示した断面図。
【図2】上記実施例中の固定用雄ネジを示した正面図およびその要部斜視図。
【図3】上記固定用雄ネジの作用を説明するための要部拡大断面図。
【図4】本発明によるマイクロホンコネクターの平面図。
【図5】図4のマイクロホンコネクターに用いられる導体の平面図。
【図6】3PINタイプのマイクロホンコネクターの基本的な構成を説明するための正面図、そのA−A線断面図および平面図。
【図7】従来例としてのマイクロホンコネクターを示した正面図およびその平面図。
【図8】アース端子とシールド用プラグを接続するため、従来用いられていた接続金具を示した平面図。
【符号の説明】
1A マイクロホンコネクター
2 基台
21 ネジ収納穴
3 ホット用プラグ
4 コールド用プラグ
5 シールド用プラグ
6 アース端子板
61 雌ネジ孔
7A 固定用の雄ネジ
71 ネジ本体
72 頭部
721 係合溝
73 テーパ部
9A 導体
90 板バネ
901,902 係合部
10 コネクタケース
101 透孔(工具挿通孔)
Claims (5)
- マイクロホンケースの後端側に設けられた円筒状のコネクタケースと、同コネクタケース内に収納されるほぼ円柱状をなす合成樹脂製の基台と、同基台に貫設されたホット、コールドおよびシールド用の3つのプラグと、上記基台の周面から同基台の中心に向けて穿設されたネジ収納穴と、同ネジ収納穴と対向するように上記コネクタケースに穿設された透孔と、雌ネジ孔を有し、その雌ネジ孔が上記ネジ収納穴内に位置するように上記基台に植設されたアース端子板と、上記雌ネジ孔に螺合し、上記ネジ収納穴に沿って移動可能な固定用の雄ネジとを備え、上記コネクタケースの透孔よりネジ回し手段にて上記雄ネジを上記コネクタケースの内壁面側に移動するように回転させて、同内壁面に押し付けることにより、上記基台を上記コネクタケースに固定するようにしたマイクロホンの出力コネクター装置において、
上記雄ネジは、上記透孔よりも実質的に大径とされたネジ本体と、同ネジ本体の上記透孔側に形成された同透孔よりも実質的に小径の頭部と、同頭部と上記ネジ本体との間に形成された所定の傾斜角を有するテーパ部とを備え、当該雄ネジが上記コネクタケースの内壁面側に移動するに伴なって、上記テーパ部が上記透孔の端縁にかじり付くように接触することを特徴とするマイクロホンの出力コネクター装置。 - 上記コネクタケースは、その透孔部分を含めて防錆処理層が形成されており、上記テーパ部にて同防錆処理層が破壊されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンの出力コネクター装置。
- 上記雄ネジは、上記コネクタケースよりも硬い材料で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロホンの出力コネクター装置。
- 上記雄ネジには、その頭部から上記テーパ部にかけて上記ネジ回し手段が係合される係合溝が形成されており、上記テーパ部における同係合溝が上記透孔の端縁に対する切刃として作用することを特徴とする請求項1,2または3に記載のマイクロホンの出力コネクター装置。
- 上記基台の一方の面上において、上記シールド用プラグと上記アース端子板は、両端にそれらの各部材に弾性的に係合する係合部を備えたバネ弾性を有する導電体にて電気的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンの出力コネクター装置。
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